説明

フレキシブルケーブルが装着されたメッシュシート付き樹脂成形品の製造方法

【課題】 金属メッシュ層に耐湿性、耐スクラッチ性、防塵性の問題がないフレキシブルケーブルが装着されたメッシュシート付き樹脂成形品を得ることができ、容易にメッシュシート付き樹脂成形品にフレキシブルケーブルを装着することができる。
【解決手段】
支持シートが成形キャビティ面に面するように耐熱テープ付きのメッシュシートを成形用金型に配置した後に成形キャビティ内に成形樹脂を射出後冷却し、
樹脂成形品の表面に露出した部分の耐熱テープを樹脂成形品から剥離した後に耐熱テープを引き抜くことによって金属メッシュ層と樹脂成形品との間に空隙を形成し、
金属メッシュ層と樹脂成形品との間の空隙にフレキシブルケーブルを挿入するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上波や衛星放送の電波を送受信するためのアンテナや静電容量方式のタッチパネルなどの機能を備えたメッシュシートを樹脂成形品と一体化させた、各種電子機器用の筐体に用いられる、メッシュシート付き樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メッシュシート付き樹脂成形品121を得る方法として以下の方法がある(図5(a)、(b)参照)。まず、支持シート102の表面側に接着層103、金属メッシュ層104を積層し、支持シート102の裏面側に接着層105を形成したメッシュシート101を用意する。そして、金属メッシュ層104が成形キャビティ面に面するようにメッシュシート101を成形用金型111に配置する。次に、成形キャビティ内に成形樹脂112を射出後冷却する(図6(a)参照)。最後に、成形用金型111を型開きして、成形樹脂112が冷却されて形成された樹脂成形品122上にメッシュシート101が形成されたメッシュシート付き樹脂成形品121を得る(図6(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−212545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の方法で形成されたメッシュシート付き樹脂成形品121は、金属メッシュ層104が表面にむき出しになっている(図6(b)参照)。そのため、この金属メッシュ層104には耐湿性、耐スクラッチ性、防塵性に問題があった。これらの問題に対応するため、メッシュシート101を金属メッシュ層104が成形キャビティ内側に向くように配置すると、今度は金属メッシュ層104が支持シート102と樹脂成形品122との間に挟まれ、金属メッシュ層104にフレキシブルケーブルを装着することが困難になってしまう(図6(c)参照)。
【0005】
本発明は、金属メッシュ層に耐湿性、耐スクラッチ性、防塵性の問題がなく、かつフレキシブルケーブルの装着が容易であるフレキシブルケーブルが装着されたメッシュシート付き樹脂成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するため、以下のような特徴を備える。
【0007】
本発明のフレキシブルケーブルが装着されたメッシュシート付き樹脂成形品の製造方法は、
支持シート上に金属メッシュ層を積層して形成したメッシュシートに対し、金属メッシュ層の一部に耐熱テープの一部を重ね合わせることにより耐熱テープ付きのメッシュシートを形成し、
支持シートが成形キャビティ面に面するように耐熱テープ付きのメッシュシートを成形用金型に配置した後に成形キャビティ内に成形樹脂を射出後冷却することによって、金属メッシュ層と樹脂成形品との間に耐熱テープの一部が形成され、かつ、金属メッシュ層と重ならない部分の耐熱テープがメッシュシートの外部で樹脂成形品の表面に露出したメッシュシート付き樹脂成形品を形成し、
樹脂成形品の表面に露出した部分の耐熱テープを樹脂成形品から剥離した後に耐熱テープを引き抜くことによって金属メッシュ層と樹脂成形品との間に空隙を形成し、
金属メッシュ層と樹脂成形品との間の空隙にフレキシブルケーブルを挿入する工程を備える。
【0008】
また、上記の発明において、金属メッシュ層と重ならない部分の耐熱テープに形成された弱粘着層により成形キャビティ内の耐熱テープ付きのメッシュシートの位置を固定してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフレキシブルケーブルが装着されたメッシュシート付き樹脂成形品の製造方法によると、支持シートが成形キャビティ面に面するように耐熱テープ付きのメッシュシートが成形用金型に配置される。したがって、メッシュシート付き樹脂成形品の金属メッシュ層は表面に露出せずに支持シートで保護される。その結果、金属メッシュ層に耐湿性、耐スクラッチ性、防塵性の問題がないフレキシブルケーブルが装着されたメッシュシート付き樹脂成形品を得ることができる。また、金属メッシュ層の一部に耐熱テープの一部を重ね合わせることにより、金属メッシュ層と樹脂成形品との間に耐熱テープの一部が形成され、かつ、金属メッシュ層と重ならない部分の耐熱テープがメッシュシートの外部で樹脂成形品の表面に露出したメッシュシート付き樹脂成形品が形成される。したがって、樹脂成形品の表面に露出した部分の耐熱テープを樹脂成形品から剥離した後に耐熱テープを引き抜くことによって、容易に金属メッシュ層と樹脂成形品との間に空隙を形成し、フレキシブルケーブルを挿入することにより、容易にメッシュシート付き樹脂成形品にフレキシブルケーブルを装着することができる。
【0010】
また、金属メッシュ層と重ならない部分の耐熱テープに形成された弱粘着層により成形キャビティ内の耐熱テープ付きのメッシュシートの位置を固定すると、メッシュシートの位置を任意の位置に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のフレキシブルケーブルが装着されたメッシュシート付き樹脂成形品の製造方法に用いるメッシュシートを示す断面図である。
【図2】本発明のフレキシブルケーブルが装着されたメッシュシート付き樹脂成形品の製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明のフレキシブルケーブルが装着されたメッシュシート付き樹脂成形品の製造方法を示す断面図である。
【図4】本発明のフレキシブルケーブルが装着されたメッシュシート付き樹脂成形品の製造方法を示す断面図である。
【図5】本発明のフレキシブルケーブルが装着されたメッシュシート付き樹脂成形品の製造方法を示す断面図である。
【図6】従来のメッシュシート付き樹脂成形品の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0013】
まず、本発明のフレキシブルケーブルが装着されたメッシュシート付き樹脂成形品の製造方法に用いるメッシュシート1について説明する(図1参照)。
【0014】
メッシュシート1は携帯電話端末などのアンテナとして使用可能であり、また、アンテナ以外に静電容量式のタッチパネルとしても使用可能なものである。
【0015】
メッシュシート1は、樹脂シートで構成された絶縁性を有する支持シート2上に金属メッシュ層4が積層された構成である。支持シート2と金属メッシュ層4の間の接着には熱可塑性樹脂を主原料とする接着剤3が使用される。
【0016】
支持シート2は、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの樹脂シートを用いることができる。
【0017】
接着層3として、プレフォーム時あるいは溶融樹脂の射出時に加わる熱により、わずかに可塑性が増す材料で構成されることが好ましい。具体的には、プレフォーム時あるいは溶融樹脂の射出時において、メッシュシート1は、概ね180℃程度に加熱されるため、これらの温度において可塑性が増すアクリル系材料等の材料を使用することができる。また、接着層3は後述するように、伸展時に変形しやすいように、30から50μm程度に少し厚め(通常は20μm程度とされている。)に構成されることが好ましい。接着層3はシルク印刷などにより形成できる。
【0018】
金属メッシュ層4としては、ほぼ厚み10μm程度の金属箔で構成されており、銅、ニッケル、アルミニウム、金、銀などの金属薄膜を用いることができる。そして、金属メッシュ層4は、例えば、フォトエッチングによって、又は印刷レジストによるエッチングの方法によって、微細な網目状パターンに形成されている。
【0019】
網目状パターンをフォトエッチングにより形成する場合、まず、支持シート2の表面に接着層3を解して金属箔を貼着する。次いで、図示しないフォトレジスト膜を形成し、フォトマスクを用いて露光し、現像液で現像することによりレジスト膜の網目状パターンを形成する。これをエッチング液によりエッチングし、レジスト膜を剥離除去することにより、極細金属線からなる網目パターンを有する金属メッシュ層4を形成する。
【0020】
メッシュパターンを構成する細帯の帯幅は、概ね40μm以下に構成されている。細帯の帯幅を太くするとメッシュパターンが視認しやすくなり、筐体の意匠性を損なう原因となる。ただし、意匠性を求められないような部分における使用では、帯幅を上記範囲より大きくすることもできる。
【0021】
金属メッシュ4上にはさらに後述する樹脂成形品22に貼り付けるための接着層5が形成される。接着層5は前記した接着層3と同様の材質、厚み、形成方法で形成すればよい。但し、次に述べるように金属メッシュ4の一部は耐熱テープ6の一部と重ね合わせるため、金属メッシュ4の全面には接着層5は形成しない。
【0022】
こうして形成したメッシュシート1に対し、後述のフレキシブルケーブル32を装着する箇所となる金属メッシュ層4の一部に耐熱テープ6の一部を重ね合わせることによって、耐熱テープ6付きのメッシュシート1を形成する(図1参照)。耐熱テープ6としては、後述する成形樹脂12が冷却されて形成される樹脂成形品22とは接着されないような材質を選択する。耐熱テープ6はポリイミド、テフロン(登録商標)、ガラス、マイカ等の材質、厚さ20〜500μmの耐熱シートを使用できる。
【0023】
次いで、支持シート2が成形キャビティ面に面するように耐熱テープ6付きのメッシュシート1を成形用金型11に配置し型閉じする(図2参照)。このとき、金属メッシュ層4と重ならない部分の耐熱テープ6に形成された弱粘着層(図示せず)により成形キャビティ内の耐熱テープ6付きのメッシュシート1の位置を固定するようにすると、メッシュシート1の位置を任意の位置に設定でき、好適である(図2参照)。また、メッシュシート1は曲面部の表面に設けてもよい。弱粘着層はアクリル系材料などを10μm程度、シルク印刷などによって耐熱テープ6上に形成するとよい。
【0024】
ここで、成形用金型11内に挟み込まれる耐熱テープ6付きのメッシュシート1は、予め成形キャビティの面に沿った形状にプレフォームされていてもよい。プレフォームは、プレフォーム用のプレス装置などを用いてメッシュシート1を加熱しながらプレスすることによって行う。メッシュシート1は、プレス装置によるプレス力又は次に述べる成形樹脂12の射出圧力により変形する。
【0025】
成形用金型11の型閉じ後、成形キャビティ内に成形樹脂12を射出後冷却する(図3参照)。そして、成形樹脂12の冷却後成形用金型11を型開きすると、メッシュシート付き樹脂成形品21が形成される(図4参照)。成形樹脂12の材質としてはポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースなどを使用することができる。
【0026】
メッシュシート付き樹脂成形品21は、樹脂成形品22を主構成層とし、かつ樹脂成形品22の表面にメッシュシート1で構成されたアンテナ等のパターンが形成されたものである。ここで樹脂成形品22は、透明窓部を備えた所望する筐体部材の形状に成形し、その縁部の周辺が曲げられた曲面部となるように構成してもよい。透明窓部は、例えば、二色成型などの方法により一体的に構成されていてもよいし、樹脂成形品22の透明窓部用の開口に別の樹脂成形体で構成された透明部材を嵌め込むように構成されていてもよい。
【0027】
メッシュシート付き樹脂成形品21において金属メッシュ層4は、不透明であるが極細く構成すると、一見すれば、金属製の極細帯がわずかな階調の変化としてしか認識されず、樹脂成形品22の意匠性を害することがない。しかも、比較的広い面積をアンテナとして使用することができ、受信感度を向上させることができる。また金属メッシュ層4は、表面に露出せずに支持シート2で保護されている。その結果、金属メッシュ層4に耐湿性、耐スクラッチ性、防塵性の問題が生じることはない。なお、メッシュシート1は、ディスプレイ用透明窓部の表面にまで設けられていてもよい。
【0028】
ここでメッシュシート付き樹脂成形品21は、金属メッシュ層4と樹脂成形品22との間に耐熱テープ6の一部が形成され、かつ、金属メッシュ層4と重ならない部分の耐熱テープ6がメッシュシート1の外部で樹脂成形品22の表面に露出したものとなっている(図4参照)。このメッシュシート付き樹脂成形品21から、樹脂成形品22の表面に露出した部分の耐熱テープ6を樹脂成形品22から剥離し(図5(a)参照)、引き続き耐熱テープ6を引き抜くと、金属メッシュ層4と樹脂成形品22との間に空隙が形成される(図5(b)参照)。そして、金属メッシュ層4と樹脂成形品22との間の空隙にフレキシブルケーブル32を挿入することによって、容易にメッシュシート付き樹脂成形品にフレキシブルケーブル32を装着することができ、最終的に、フレキシブルケーブルが装着されたメッシュシート付き樹脂成形品31が形成される(図5(c)参照)。フレキシブルケーブル32の挿入後は、メッシュシート1に熱と圧力を加えてフレキシブルケーブル32を圧着させてもよい。
【0029】
樹脂成形品22の表面には、図示しない不透明な装飾部が設けられていてもよい。具体的には、樹脂成形品の表面に加飾層を設ける。加飾層の形成方法としては、転写法や成形同時転写法を用いることができる。転写法とは、基体シート上に剥離層、加飾層、接着層等からなる転写層を形成した転写材を用い、加熱加圧して転写層を被転写物である樹脂成形品22に密着した後、基体シートを剥離して、被転写面に転写層のみを転写して装飾を行う方法である。また、成形同時転写法とは、転写材を成型用金型11内に挟み込み、成形キャビティ内に成形樹脂12を射出充満させ、冷却して樹脂成形品22を得るのと同時にその面に転写材を接着させた後、基体シートを剥離して、被転写物面に転写層を転移して装飾を行う方法である。なお、成形同時転写法においては、樹脂成形品22の接着力が高いので、接着層を省略することもできる。また、メッシュシート1の表面に加飾層を設けて装飾を行うこともできる。
【0030】
転写材の基体シートは、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの樹脂シートを用いることができる。
【0031】
剥離層の材質としては、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、等の他、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂などのコポリマーを用いるとよい。剥離層に硬度が要求される場合には、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを選定して用いることができる。
【0032】
接着層としては、被転写物の素材に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。例えば、被転写物の材質がポリアクリル系樹脂の場合は、ポリアクリル系樹脂を用いるとよい。また、被転写物の材質が、ポリフェニレンオキシド共重合体、ポリスチレン景況重合体樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用すればよい。
【符号の説明】
【0033】
1 メッシュシート
2 支持シート
3 接着層
4 金属メッシュ層
5 接着層
6 耐熱テープ
11 成形用金型
12 成形樹脂
21 メッシュシート付き樹脂成形品
22 樹脂成形品
31 フレキシブルケーブルが装着されたメッシュシート付き樹脂成形品
32 フレキシブルケーブル
101 メッシュシート
102 支持シート
103 接着層
104 金属メッシュ層
105 接着層
112 成形樹脂
121 メッシュシート付き樹脂成形品
122 樹脂成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持シート上に金属メッシュ層を積層して形成したメッシュシートに対し、金属メッシュ層の一部に耐熱テープの一部を重ね合わせることにより耐熱テープ付きのメッシュシートを形成し、
支持シートが成形キャビティ面に面するように耐熱テープ付きのメッシュシートを成形用金型に配置した後に成形キャビティ内に成形樹脂を射出後冷却することによって、金属メッシュ層と樹脂成形品との間に耐熱テープの一部が形成され、かつ、金属メッシュ層と重ならない部分の耐熱テープがメッシュシートの外部で樹脂成形品の表面に露出したメッシュシート付き樹脂成形品を形成し、
樹脂成形品の表面に露出した部分の耐熱テープを樹脂成形品から剥離した後に耐熱テープを引き抜くことによって金属メッシュ層と樹脂成形品との間に空隙を形成し、
金属メッシュ層と樹脂成形品との間の空隙にフレキシブルケーブルを挿入することを特徴とするフレキシブルケーブルが装着されたメッシュシート付き樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
金属メッシュ層と重ならない部分の耐熱テープに形成された弱粘着層により成形キャビティ内の耐熱テープ付きのメッシュシートの位置を固定する請求項1に記載のフレキシブルケーブルが装着されたメッシュシート付き樹脂成形品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−240679(P2011−240679A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116979(P2010−116979)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】