説明

フレキシブルプリント基板

【課題】異方性導電材による接続強度を安定的に確保することが可能なフレキシブルプリント基板を提供する。
【解決手段】フレキシブルプリント基板は、回路が形成される有機物層間を異方性導電材により接着するフレキシブルプリント基板であって、有機物層はポリイミドからなり、該ポリイミドの被接着面の表面粗さは8nm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フレキシブルプリント基板に関し、より特定的には、回路が形成された有機物層間を異方性導電材により接着したフレキシブルプリント基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、異方性導電膜(ACF)によるフレキシブルプリント基板の接続構造は、たとえば特開平11−121892号公報(特許文献1)、特開平4−352486号公報(特許文献2)、特開2008−166401号公報(特許文献3)および特開2003−46231号公報(特許文献4)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−121892号公報
【特許文献2】特開平4−352486号公報
【特許文献3】特開2008−166401号公報
【特許文献4】特開2003−46231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、異方導電性接着剤の接続強度を向上する端子の構造が開示されている。端子パターンに接着剤収容凹部が設けられる。
【0005】
特許文献2では、接続信頼性の高いFPC(フレキシブルプリント回路)の異方性導電膜による接続構造が開示されている。
【0006】
特許文献3では、異方導電性接着剤による密着強度を向上する端子の構造として、端子表面に溝部を設けることが開示されている。
【0007】
特許文献4では、薄膜化できる異方性導電層の接続構造が開示されており、端子間の樹脂露出部をエッチング等で掘り下げてから異方性導電層を接続することが開示されている。
【0008】
上記文献に記載された技術では、異方性導電層による必要な接着強度が安定的に確保できないという問題があった。
【0009】
そこで、この発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであり、異方性導電材による接続強度を安定的に確保することが可能なフレキシブルプリント基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に従ったフレキシブルプリント基板は、回路が形成される有機物層間を異方性導電材により接着するフレキシブルプリント基板であって、前記有機物層はポリイミドからなり、該ポリイミドの被接着面の表面粗さは8nm以上であり、好ましくは、8nm以上30nm以下である。本発明者は、有機物層の表面粗さが8nm以上なければ、異方性導電材により必要な接着強度を安定的に確保できないことを見出した。表面粗さが大きくなり過ぎると、イオンマイグレーション性の低下を招き、さらに有機物層の表面粗さと関係する回路面の凹凸は屈曲耐性、配線密着性などに影響を与えるため、有機物層の表面粗さは30nm以下であることが好ましい。
【0011】
有機物層に対するピール強度は例えば4N/cm以上であり、好ましくは4N/cm以上20N/cm以下である。
【発明の効果】
【0012】
この発明に従えば、接合強度を向上させることが可能な異方性導電層の接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に従った多層フレキシブルプリント基板の接続構造を示す断面図である。
【図2】異方性導電材により形成された異方性導電層内における電気的な接続を得るための構成を詳細に示す断面図であり、図1中のIIで囲んだ部分の断面図である。
【図3】この発明に従ったフレキシブルプリント基板の配線パターンの一例を示す図である。
【図4】異方性導電層としてソニーケミカルインフォメーションデバイス社製CP8016(商品名)を用い、有機物層としてポリイミドを用いた場合の、ポリイミドの被接着面における面粗さとピール強度との関係を示すグラフである。
【図5】この発明に従った方法でピール強度を測定する工程において用いたカンチレバーを示す図である。
【図6】図5で示すカンチレバーの先端部分だけを拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では、同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従った多層フレキシブルプリント基板の接続構造を示す断面図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1に従った異方性導電層の接続構造5では、有機物層10上に層間接着層20が設けられている。有機物層10はポリイミドからなる。層間接着層20は有機物層10と接続している。層間接着層20上に有機物層40が設けられている。有機物層40と接触するように層間接着層20内に導電層30が設けられている。導電層30は銅からなる配線層である。
【0016】
層間接着層20上に有機物層40が設けられる。有機物層40上には、異方性導電層50が配置されている。有機物層40と接触するように異方性導電層50内に導電層60が配置されている。また、導電層60と反対側に導電層70が異方性導電層50内に設けられている。異方性導電層50は有機物層80と接触している。有機物層80は層間接着層90により、ポリイミドからなる層間接着層110と接続されている。有機物層100は、層間接着層110と、層間接着層110内に設けられて有機物層100と接触する導電層120が設けられている。層間接着層110上に有機物層130が配置されている。
【0017】
有機物層40と異方性導電層50との界面41において、有機物層40の表面粗さは8nm以上30nm以下とされる。
【0018】
異方性導電層50と有機物層80との間の界面81においても、有機物層80表面の表面粗さは8nm以上30nm以下とされる。
【0019】
有機物層40,80はポリイミドから構成される。
図2は、異方性導電層内における電気的な接続を得るための構成を詳細に示す断面図であり、図1中のIIで囲んだ部分の断面図である。図2を参照して、導電層60と導電層70との間には、ニッケル粒子51が介在している。このニッケル粒子51により、導電層60と導電層70との間の導通が図られる。
【0020】
ニッケル粒子51の全体がニッケルである必要はなく、中央部が樹脂で、その外周にニッケル層が設けられていればよい。
【0021】
さらに、ニッケル層表面が別の導電性材料で覆われていてもよい。
図3は、この発明に従った異方性導電層の接続構造が用いられるフレキシブルプリント基板を示す図である。図3を参照して、フレキシブルプリント基板1には複数の配線2が設けられる。各々配線2は、図1の断面における導電層30、60、70および120で構成される。これらの配線が厚み方向に重なった領域において、それらの配線間に図2で示すように異方性導電層が配置される。そして配線に何らかの力が加わった場合に配線間の導通が図られる。
【0022】
図4は、異方性導電層としてソニーケミカルインフォメーションデバイス社製CP−8016K(商品名)を用い、有機物層としてポリイミドを用いた場合の、ポリイミドの面粗さと異方性導電層のピール強度との関係を示すグラフである。図4は、異方性導電層と有機物層とを接触させた初期のピール強度を示し、未使用の状態に対応する。
【0023】
図4より、平均面粗さが8nm以上30nm以下であれば好ましいピール強度であることがわかる。
【0024】
好ましいピール強度とは4N/cm以上20Ncm以下であることをいう。
なお、「平均面粗さ」とは、1辺が1μm×1μmの領域における平均面粗さ(Ra)をいい、JIS B 0601によって規定されるものである。具体的には、1辺が1μmの正方形領域の対角線上における平均粗さRaを「平均面粗さ」とした。
【0025】
このピール強度は以下の方法により測定した。
図5は、この発明に従った方法でピール強度を測定する工程において用いたカンチレバーを示す図である。図6は、図5で示すカンチレバーの先端部分だけを拡大して示す斜視図である。図5および図6を参照して、カンチレバー200は、本体部210、本体部210に接続されたアーム部220、および、アーム部220に取り付けられた針部230を有する。カンチレバー200において、先端半径Rは10nm以上30nm以下とした。なお、この先端部に関し、先端形状は集束イオンビームで加工される。そしてこの先端半径Rを10nm以上30nm以下とすることで、集束イオンビームで加工でき、かつ電子顕微鏡で先端を確認できる範囲となる。
【0026】
また、針の高さDは5μm以上10μm以下であることが好ましい。これは、カンチレバーにおいて、ポリイミド表面の凹凸を調べる場合に、ポリイミド表面には、大きな凹凸がある場合があり、この大きな凹凸に対応するために最低の高さを5μmとした。また高さDが高すぎると機械的強度が低下するため上限を10μmとした。
【0027】
また、レバーの幅Wは20μm以上50μm以下、レバー長さLは100μm以上250μm以下であることが好ましい。
【0028】
ピール強度の測定に関しては、有機物層を構成する銅エッチングされたポリイミドフィルム上にACFを貼り、5mm×10mmのサイズに切り出して、有機物層40と異方性導電層50との接合界面を含む試料とした。その試料をガラスに圧着し、カンチレバー200を用いて短辺の端からポリイミドの有機物層40を剥離し、その応力を測定した。圧着時間は10秒、圧力は10MPa、圧着温度は常温から180℃とした。引き剥がし角度は90°、引き剥がし速度は50mm/minで行なった。
【0029】
また、有機物層40,80としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)および液晶ポリマー(LCP)でもよい。
【0030】
異方性導電層は、上記のソニーケミカルインフォメーションデバイス社製CP−8016Kだけでなく、日立化成製MF−504(商品名)を用いることができる。
【0031】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明は、異方性導電層を有する基板の分野で用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路が形成される有機物層間を異方性導電材により接着するフレキシブルプリント基板であって、
前記有機物層はポリイミドからなり、該ポリイミドの被接着面の表面粗さは8nm以上であるフレキシブルプリント基板。
【請求項2】
前記ポリイミドの被接着面の表面粗さが8nm以上30nm以下である請求項1記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項3】
前記有機物層に対するピール強度が4N/cm以上である請求項1又は請求項2記載のフレキシブルプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−79934(P2012−79934A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224052(P2010−224052)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】