説明

フレキシブルプリント配線板、コイル、トランス

【課題】製造効率の向上とコスト削減を図ることができると共に、トランス等のコイルを備える機器の薄型化、小型化を図ることができるフレキシブルプリント配線板、該フレキシブルプリント配線板を用いたコイル及び前記フレキシブルプリント配線板を用いたトランスの提供を課題とする。
【解決手段】基板10上に、コイル形成用の導体ライン20(21、22、23)を直線状に設けると共に、該導体ライン20に連続して、コイル端子部を形成するための引き出しライン21a、22a、23aを、前記導体ライン20の両端から前記基板10の端部まで延長して設けてあるフレキシブルプリント配線板1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板、該フレキシブルプリント配線板を用いたコイル及び前記フレキシブルプリント配線板を用いたトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFET等のスイッチング素子をゲートドライブする絶縁回路として、従来より、パルストランスが用いられている。
パルストランス等のトランスは、EE型コアやEI型コアに絶縁物を介してコイルを巻回した構造のものが一般的である。またその製造工程においては、1次コイルと2次コイルとを、それぞれコアに巻き付けるものが一般的である。
近年、電子機器の小型化に対する要求に伴い、トランスにも小型化が要求されている。
しかしながら、既述したEE型コアやEI型コアに絶縁物を介してコイルを巻回した構造のトランスでは、小型化に限界があると共に、1次コイルと2次コイルとをそれぞれコアに巻き付ける工程が必要となり、製造工程が複雑となることから、小型化を可能とすると共に、製造効率の良いトランスの開発が課題となっている。
コアにコイルを巻回した構造を備えるパルストランスに関する従来技術として、例えば下記特許文献1がある。
またEE型コアにコイルを巻回した構造を備えるトランスとして、特願2009−213552号がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−330822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、パルストランスに関する発明で、線材価格の上昇を招くことなく、コイルの巻回工程を簡単化する技術が開示されている。
また上記特願2009−213552号は、トランス、スイッチング装置、コンバータに関する発明で、コンバータの大型化を防止することができると共に、部品点数を増加させることがなく、スイッチング損失を低減できるトランス、該トランスと接続してなるスイッチング装置、及び該スイッチング装置を用いたコンバータに関する技術が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1及び特願2009−213552号に示すトランスは、何れもコアにコイルを巻回した構造のトランスで、トランスの小型化を前提としていなかった。また1次コイルと2次コイルとをそれぞれコアに巻回する工程が必要であった。
【0005】
そこで本発明は上記従来における問題点を解決し、製造効率の向上とコスト削減を図ることができると共に、トランス等のコイルを備える機器の薄型化、小型化を図ることができるフレキシブルプリント配線板、該フレキシブルプリント配線板を用いたコイル及び前記フレキシブルプリント配線板を用いたトランスの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、基板上に、コイル形成用の導体ラインを直線状に設けると共に、該導体ラインに連続して、コイル端子部を形成するための引き出しラインを、前記導体ラインの両端から前記基板の端部まで延長して設けてあることを第1の特徴としている。
【0007】
上記本発明の第1の特徴によれば、フレキシブルプリント配線板は、基板上に、コイル形成用の導体ラインを直線状に設けると共に、該導体ラインに連続して、コイル端子部を形成するための引き出しラインを、前記導体ラインの両端から前記基板の端部まで延長して設けてあることから、屈曲容易なコイル形成用の導体ライン及び引き出しラインとすることができる。
【0008】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1の特徴に加えて、前記フレキシブルプリント配線板を、同心状に巻回して、前記導体ラインをコイル形状として用いることを第2の特徴としている。
【0009】
上記本発明の第2の特徴によれば、上記本発明の第1の特徴による作用効果に加えて、前記フレキシブルプリント配線板を、同心状に巻回して、前記導体ラインをコイル形状として用いることから、フレキシブルプリント配線板をコイルとして用いることができる。
またシート状のフレキシブルプリント配線板を同心状に巻回するだけで、複数ターンからなるコイルを容易に形成することができる。
またフレキシブルプリント配線板は、屈曲性を備えることから、巻回作業を容易に行うことができ、フレキシブルプリント配線板を製造容易なコイルとして用いることができる。
【0010】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1の特徴に加えて、前記導体ラインは、複数本からなると共に、前記フレキシブルプリント配線板を、同心状に巻回した状態でケース内に配置することで、前記導体ラインをトランスの1次コイルと2次コイルとして用いることを第3の特徴としている。
【0011】
上記本発明の第3の特徴によれば、上記本発明の第1の特徴による作用効果に加えて、前記導体ラインは、複数本からなると共に、前記フレキシブルプリント配線板を、同心状に巻回した状態でケース内に配置することで、前記導体ラインをトランスの1次コイルと2次コイルとして用いることから、フレキシブルプリント配線板をトランスの1次コイルと2次コイルとして用いることができる。また1枚のフレキシブルプリント配線板に複数本の導体ラインを形成することで、1回の巻回作業で複数本のコイルを同時に形成することができるため、製造効率の向上とコスト削減を図ることができる。更に複数本のコイルの長さ、線厚、線幅に変化をもたせるだけで、ターン数、電圧比の異なる1次コイル、2次コイルを形成することができる。よってフレキシブルプリント配線板を製造効率の良いトランスの1次コイル、2次コイルとして用いることができる。
またフレキシブルプリント配線板は、屈曲性を備えることから、巻回作業を容易に行うことができ、フレキシブルプリント配線板を製造効率の良いトランス用コイルとして用いることができる。
【0012】
また本発明のコイルは、上記本発明の第1の特徴に記載のフレキシブルプリント配線板を、同心状に巻回して、前記導体ラインによるコイルを形成してあることを第4の特徴としている。
【0013】
上記本発明の第4の特徴によれば、コイルは、上記本発明の第1の特徴に記載のフレキシブルプリント配線板を、同心状に巻回して、前記導体ラインによるコイルを形成してあることから、製造効率の向上とコスト削減を図ることができると共に、薄型化、小型化を図ることができるコイルとすることができる。
【0014】
また本発明のコイルは、上記本発明の第4の特徴に加えて、前記導体ラインは、複数本からなることを第5の特徴としている。
【0015】
上記本発明の第5の特徴によれば、上記本発明の第4の特徴による作用効果に加えて、前記導体ラインは、複数本からなることから、1枚のフレキシブルプリント配線板に形成される導体ラインの内、最大ターン数分を同心状に巻回するだけで、複数ターンからなる、複数本のコイルを同時に形成することができる。よって線材を巻回することで複数本のコイルを形成する場合に比べ、巻回作業を簡素化することができる。また直線状の導体ラインの長さ、線厚、線幅を変えるだけで、ターン数、電圧比の異なるコイルを同時に形成することができる。よって製造効率の向上とコスト削減を図ることができるコイルとすることができる。
また複数本の導体ラインに間隔を設けるだけで、コイル間の絶縁を確保することができる。よってコイルをトランス等の機器に用いる場合、コイル間の絶縁を確保するための処理を設ける必要がない。よってトランス等のコイルを用いる機器の製造効率の向上とコスト削減を図ることができるコイルとすることができる。
【0016】
また本発明のコイルは、上記本発明の第4又は第5の特徴に加えて、前記導体ラインは、基板の表裏両面に形成されていることを第6の特徴としている。
【0017】
上記本発明の第6の特徴によれば、上記本発明の第4又は第5の特徴による作用効果に加えて、前記導体ラインは、基板の表裏両面に形成されていることから、1枚のフレキシブルプリント配線板で、複数層のコイルを容易に形成することができる。
またターン数が同じコイルを形成する場合であっても、導体ラインを基板の表裏に形成することで、コイルの交差を防止することができる。よって製造効率の良いコイルとすることができる。
【0018】
また本発明のトランスは、上記本発明の第1の特徴に記載のフレキシブルプリント配線板を、同心状に巻回した状態でケース内に配置することで、前記導体ラインを1次コイルと2次コイルとしてあることを第7の特徴としている。
【0019】
上記本発明の第7の特徴によれば、トランスは、上記本発明の第1の特徴に記載のフレキシブルプリント配線板を、同心状に巻回した状態でケース内に配置することで、前記導体ラインを1次コイルと2次コイルとしてあることから、製造効率の向上とコスト削減を図ることができると共に、薄型化、小型化を図ることができるトランスとすることができる。
【0020】
また本発明のトランスは、上記本発明の第7の特徴に加えて、前記導体ラインは、複数本からなることを第8の特徴としている。
【0021】
上記本発明の第8の特徴によれば、上記本発明の第7の特徴による作用効果に加えて、前記導体ラインは、複数本からなることから、1枚のフレキシブルプリント配線板に形成される導体ラインの内、最大ターン数分を同心状に巻回するだけで、トランスの1次コイルと2次コイルとを同時に形成することができる。よって線材を巻回することで複数本のコイルを形成する場合に比べ、巻回作業を簡素化することができる。また直線状の導体ラインの長さ、線厚、線幅を変えるだけで、1次コイルと2次コイルとのターン数、電圧比の異なる1次コイル、2次コイルを容易に形成することができる。よって製造効率の向上とコスト削減を図ることができるトランスとすることができる。
また複数本の導体ラインに間隔を設けるだけで、コイル間の絶縁を確保することができる。よってコイル間の絶縁を確保するための処理を設ける必要がない。よって製造効率の向上とコスト削減を図ることができるトランスとすることができる。
【0022】
また本発明のトランスは、上記本発明の第7又は第8の特徴に加えて、前記導体ラインは、基板の表裏両面に形成されていることを第9の特徴としている。
【0023】
上記本発明の第9の特徴によれば、上記本発明の第7又は第8の特徴による作用効果に加えて、前記導体ラインは、基板の表裏両面に形成されていることから、1枚のフレキシブルプリント配線板で、複数層のコイルを容易に形成することができる。
またターン数が同じコイルを形成する場合であっても、導体ラインを基板の表裏に形成することで、コイルの交差を防止することができる。よって製造効率の良いトランスとすることができる。
【0024】
また本発明のトランスは、上記本発明の第7〜第9の何れか1つに記載の特徴に加えて、前記フレキシブルプリント配線板を、磁心に巻回してあることを第10の特徴としている。
【0025】
上記本発明の第10の特徴によれば、上記本発明の第7〜第9の何れか1つに記載の特徴による作用効果に加えて、前記フレキシブルプリント配線板を、磁心に巻回してあることから、磁心を高透磁率磁性体で形成することで、低損失なトランスとすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のフレキシブルプリント配線板、該フレキシブルプリント配線板を用いたコイル及び前記フレキシブルプリント配線板を用いたトランスによれば、トランス等のコイルを備える機器の薄型化、小型化を実現できると共に、製造効率の良いフレキシブルプリント配線板、該フレキシブルプリント配線板を用いたコイル及び前記フレキシブルプリント配線板を用いたトランスとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を示す図で、(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は導体ラインの正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るコイルを簡略化して示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るトランスを示す図で、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の変形例を示す図で、(a)は導体ラインの平面図、(b)は導体ラインの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図1〜図3を参照して、本発明に係るフレキシブルプリント配線板、該フレキシブルプリント配線板を用いたコイル及び前記フレキシブルプリント配線板を用いたトランスを説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。
【0029】
まず図1、図2を参照して、本発明に係るフレキシブルプリント配線板及びフレキシブルプリント配線板を用いたコイルを説明する。
本発明に係るフレキシブルプリント配線板1は、基板上に、コイル形成用の導体ラインとコイル端子部を設けてあるフレキシブルプリント配線板である。
【0030】
このフレキシブルプリント配線板1は、図1(a)に示すように、基板10と、導体ライン20とから構成される。
【0031】
前記基板10は、フレキシブルプリント配線板1の基板となる絶縁基板である。
なお絶縁基板としては、ポリイミドを用いることができる。勿論、ポリイミドに限るものではなく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等、フレキシブルプリント配線板を形成する絶縁基板として通常用いられるものであれば如何なるものであってもよい。
【0032】
前記導体ライン20は、フレキシブルプリント配線板1における配線回路たるコイル形成用の導電体である。
【0033】
この導体ライン20は、図1(a)、図1(b)に示すように、直線状に形成される第1導体ライン21と、第2導体ライン22と、第3導体ライン23とから構成される。
なお、第2導体ライン22と第3導体ライン23とは、同一幅、同一長の導体ラインである。
また図1(a)、図1(b)に示すように、第1導体ライン21と第2導体ライン22とは、基板10の表側面10aに形成されると共に、第3導体ライン23は、基板10の裏側面10bに形成されている。
【0034】
このように1枚のフレキシブルプリント配線板1の表裏両面に、直線状からなるコイル形成用の導体ライン20を複数本形成する構成とすることで、1枚のフレキシブルプリント配線板1を同心状に巻回するだけで、図2に示すように、フレキシブルプリント配線板1で、複数本、複数層からなるコイル30を容易に形成することができる。
よって線材を巻回することで複数本のコイルを形成する場合に比べ、巻回作業を簡素化することができる。
また直線状の導体ライン20の長さ、線厚P、線幅Qを変えるだけで、ターン数、電圧比の異なる複数本のコイルを容易に形成することができる。
また同一幅、同一長からなる第2導体ライン22と、第3導体ライン23とを、基板10の表裏に形成する構成とすることで、同一長からなる導体ライン20の交差を防止することができると共に、別途絶縁処理を施すことなく、第2導体ライン22、第3導体ライン23間の絶縁を容易に確保することができる。
よって製造効率の向上とコスト削減を図ることができると共に、薄型化、小型化を図ることができるコイル30とすることができる。
【0035】
なお図2におけるコイル30は、基板10の表側面10aが外側になるようにフレキシブルプリント配線板1を巻回した場合を例示的に示すものである。
【0036】
更に図1(a)、図1(b)に示すように、同一面に形成される第1導体ライン21と第2導体ライン22とは、一定の間隔を設けて形成してある。このような構成とすることで、別途絶縁処理を施すことなく、第1導体ライン21、第2導体ライン22間の絶縁を容易に確保することができる。
よって製造効率の向上とコスト削減を図ることができるコイル30とすることができる。
【0037】
なお図1(c)に示す、導体ライン20の線厚Pと、線幅Qとの比は、少なくとも0.5〜1.5程度とすることが望ましい。より好適には0.9〜1.1程度とすることが望ましい。このような構成とすることで、導体ライン20の表皮効果(特に高周波数における)を小さくすることができる。よってフレキシブルプリント配線板1を、漏れ磁束を効果的に防止することができるコイル30とすることができる。
【0038】
また図1(a)、図1(b)に示すように、第1導体ライン21と、第2導体ライン22と、第3導体ライン23とには、それぞれの導体ラインに連続して、コイル端子部を形成するための引き出しライン21a、22a、23aを、導体ラインの両端から基板10の端部まで延長して設けてある。
【0039】
なお導体ライン20を形成する導電体としては、銅を用いることができる。
また導体ライン20は、スクリーン印刷等のパターン印刷により形成することができる。勿論、導体ライン20の形成方法としては、パターン印刷に限るものではなく、電気銅めっき等、フレキシブルプリント配線板の配線回路を形成する方法として通常用いられるものであれば、如何なる方法であってもよいが、パターン印刷を用いることが望ましい。
また導体ライン20の線厚Pは0.2mm〜0.4mm程度とすることが望ましく、線幅Qは0.2mm〜0.4mm程度とすることが望ましい。
【0040】
また本実施形態においては、1枚のフレキシブルプリント配線板1の表側面に2本、裏側面に1本の導体ラインを形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、1枚のフレキシブルプリント配線板に形成する導体ライン20の数は、1本以上であれば適宜変更可能である。
また導体ライン20の長さ、線厚P、線幅Q、基板10上における配置位置等も本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0041】
次に図1、図3を参照して、本発明に係るフレキシブルプリント配線板1を用いたトランス100を説明する。
【0042】
前記トランス100は、磁心を備えたパルストランスであり、図1に示すフレキシブルプリント配線板1に形成される導体ライン20を1次コイルと2次コイルとして用いてあるものである。
このトランス100は、図3に示すように、主として磁心110と、ボビン120と、フレキシブルプリント配線板1とから構成される。
【0043】
前記磁心110は、フェライト等の高透磁率磁性体からなる、いわゆるE型コア111と、I型コア112とで形成されている。
【0044】
前記ボビン120は、フレキシブルプリント配線板1を巻き付けて、磁心110に取り付けるためのものである。
フレキシブルプリント配線板1をボビン120に巻き付けた状態で、磁心110に取り付け、図示しないケース内に配置することで、導体ライン20をトランス100の1次コイル、2次コイルとすることができる。
より具体的には、図3に示すように、フレキシブルプリント配線板1をボビン120に巻き付けた状態で、E型コア111に取り付け、I型コア112と一体化することで、第1導体ライン21を1次コイルとし、第2導体ライン22及び第3導体ライン23を2次コイルとしてある。
【0045】
このようにフレキシブルプリント配線板1を用いたトランス100は、以下の効果を有する。
最大ターン数を形成することとなる第2導体ライン22(又は第3導体ライン23)に合わせて、同心状にボビン120に巻回し、磁心110に取り付けるだけで、トランス100の1次コイルと2次コイルとを同時に形成することができる。よって線材を巻回して1次コイルと2次コイルとを形成する場合に比べ、巻回作業を簡素化することができる。
また直線状の導体ライン20の長さ、線厚P、線幅Qを変えるだけで、ターン数、電圧比の異なる1次コイル、2次コイルを容易に形成することができる。
よって製造効率の向上とコスト削減を図ることができると共に、薄型化、小型化を図ることができるトランス100とすることができる。
【0046】
また第1導体ライン21と第2導体ライン22とは、一定の間隔を設けて基板10の表側面10aに形成されると共に、第3導体ライン23は、基板10の裏側面10bに形成されていることから、第1コイル、第2コイルを形成する各導体ライン21、22、23間の絶縁を容易に確保することができる。つまり各導体ライン21、22、23間に絶縁テープ等の絶縁処理を別途施す必要がない。
また同一長(ターン数が同じになる)の導体ライン20をトランス100のコイルとして用いる場合であっても、基板10の表裏に形成することで、導体ライン20の交差を容易に防止することができる。
よって製造効率の向上とコスト削減を図ることができると共に、薄型化、小型化を図ることができるトランス100とすることができる。
【0047】
またボビン120を介して、高透磁率磁性体からなる磁心110にフレキシブルプリント配線板1を巻回する構成とすることで、低損失なトランス100とすることができる。
なお図3に示すように、第1導体ライン21、第2導体ライン22、第3導体ライン23は、それぞれのコイル端子部を形成する引き出しライン21a、22a、23aにより、外部配線との電気接続が行われる。
【0048】
なおトランス100に流す電流値としては、1A程度とすることが望ましい。
また本実施形態においては、トランス100の1次コイルを1本、2次コイルを2本とする構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、1次コイル及び2次コイルの数、ターン数等は、適宜変更可能である。
【0049】
次に図4を参照して、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1の変形例を説明する。
本変形例は、フレキシブルプリント配線板1に形成する導体ラインの構成を変化させたものである。その他の構成については、既述した本発明の実施形態と同一である。同一部材、同一機能を果たすものには、同一番号を付し、以下の説明を省略する。
なお第2導体ライン22、第3導体ライン23も第1導体ライン21と同様な構成であることから、図4においては、第1導体ライン21のみを示すものとする。
【0050】
図4に示すように、第1導体ライン21には、スリットRを形成してある。
このような構成とすることで、導体ライン20の線幅Qを幅広な構成とした場合でも、導体ライン20の線厚Pと線幅Q(スリットRの幅を除いた、Q+Q)との比を1.0程度に近づけることができる。よって導体ライン20の表皮効果(特に高周波数における)を小さくすることができ、フレキシブルプリント配線板1を、漏れ磁束を効果的に防止することができるコイルとして用いることができる。
またスリットRを形成することで、1本の導体ライン20を、2本に分けることができる。よって一段と製造効率の良いコイルとしてフレキシブルプリント配線板1を用いることができる。
なお導体ライン20に形成するスリットの数、形状等は、本実施形態のものに限る必要はなく、適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明はトランス等のコイルを備える機器用のフレキシブルプリント配線板、該フレキシブルプリント配線板を用いたコイル、前記フレキシブルプリント配線板を備えるトランスとして利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 フレキシブルプリント配線板
10 基板
10a 表側面
10b 裏側面
20 導体ライン
21 第1導体ライン
21a 引き出しライン
22 第2導体ライン
22a 引き出しライン
23 第3導体ライン
23a 引き出しライン
30 コイル
100 トランス
110 磁心
111 E型コア
112 I型コア
120 ボビン
P 線厚
Q 線幅
R スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、コイル形成用の導体ラインを直線状に設けると共に、該導体ラインに連続して、コイル端子部を形成するための引き出しラインを、前記導体ラインの両端から前記基板の端部まで延長して設けてあることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記フレキシブルプリント配線板を、同心状に巻回して、前記導体ラインをコイル形状として用いることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記導体ラインは、複数本からなると共に、前記フレキシブルプリント配線板を、同心状に巻回した状態でケース内に配置することで、前記導体ラインをトランスの1次コイルと2次コイルとして用いることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板を、同心状に巻回して、前記導体ラインによるコイルを形成してあることを特徴とするコイル。
【請求項5】
前記導体ラインは、複数本からなることを特徴とする請求項4に記載のコイル。
【請求項6】
前記導体ラインは、基板の表裏両面に形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のコイル。
【請求項7】
請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板を、同心状に巻回した状態でケース内に配置することで、前記導体ラインを1次コイルと2次コイルとしてあることを特徴とするトランス。
【請求項8】
前記導体ラインは、複数本からなることを特徴とする請求項7に記載のトランス。
【請求項9】
前記導体ラインは、基板の表裏両面に形成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載のトランス。
【請求項10】
前記フレキシブルプリント配線板を、磁心に巻回してあることを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載のトランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−192711(P2011−192711A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55691(P2010−55691)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】