説明

フレキシブルプリント配線板の製造方法

【課題】筐体や部品などに外形縁部分が接触してもめっき用リードが外形加工線に露出せず、回路の電気的な短絡が生じないフレキシブルプリント配線板を容易に製造する。
【解決手段】可撓性の絶縁物基板10上に接続パッド12a,12bを含む回路配線11及び接続パッドに電気的に接続されるめっきリード13を形成し、接続パッド12a,12bを露出するように絶縁層で被覆して接続パッドに電解めっきを形成し、電解めっき後に外形加工線15に沿って外形加工により配線板16を切り出すフレキシブルプリント配線板の製造方法において、めっきリード13に接続されるめっきリード給電パッド18を外形加工線の内側に形成し、このめっきリード給電パッド18に対応して外形加工線外側のめっき電極導体17の給電パッド28を設け、めっきリード給電パッド18とめっき電極導体の給電パッド28をめっき用接続導体19により接続して、接続パッドをめっきする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレキシブルプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント基板は機器内に折り曲げて実装することが可能であり、例えば液晶表示装置の電極引き出しや、また可動部をもつプリンタなどに実装される。さらにtab方式の採用により、機器の小型化に寄与している。
【0003】
フレキシブルプリント配線板は、図6に示すようにポリイミドの可撓性絶縁フィルム60上に銅箔のプリント配線61を形成し、配線の一部に外部回路や実装部品との接続パッド62を配置したもので、接続パッド62に金などの金属層を電解めっきによって被覆している。電解めっきを用いるのは無電解めっきよりも厚く強固な被膜を形成することができるからで、このために配線61とともに接続パッド62とめっき電極導体67間を接続するためのめっきリード63を可撓性絶縁フィルム上にパターン化している。
【0004】
すなわち、フレキシブル配線板66の形状をきめる外形加工線65の外周にめっき電極導体67が形成されており、接続パッド62から延長されためっきリード63がめっき電極導体67に接続される。カバーレイで接続パッドだけを露出するようにし、めっき電極導体67をめっき電極としてめっき浴に浸漬することによって接続パッド62上面に金めっきを施こす。その後、外形加工線65にそって絶縁フィルム60を切り抜き、同時に外形加工線内側のプリント配線61と接続パッド62を外形加工線外側のめっき電極導体67に短絡しているめっきリード63を切断する。さらに外形加工線内でパッド間を短絡しているめっきリード63aの部分を穴あけ加工して穿孔64を形成して切断し、めっきリードでつながっている接続パッドを電気的に分離してフレキシブル配線板66を得る。なお穴あけ加工と外形加工は前後してもよい。
【0005】
外形加工時に外形加工端でめっきリードの切断端63bが露出する。この切断端の露出によりフレキシブルプリント配線板を機器に実装する際に、筐体や部品に配線板の外形が接触していると、短絡する可能性がある。
【0006】
従来は対策としてめっきリードをエッチングで除去する(特許文献1参照)か、外形加工線をめっきリードの露出部で凹ませて凹溝をつくり、リード露出部を外形で隣接する外接線から後退させる(特許文献2参照)ことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−358257号公報
【特許文献2】特開2007−317981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前者は加工が複雑化し、後者はめっきリード密度が高いところでは一括して共通の凹溝を形成するので溝幅を狭くできず、凹溝自体が外形の外接線と変わらなくなる。
【0009】
本発明はめっきリードが外形加工線から露出することのないフレキシブルプリント配線板の製造方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、可撓性の絶縁物基板上に接続パッドを含む回路配線および前記接続パッドに電気的に接続されるめっきリードの導体パターンを形成し、前記接続パッドを露出するように絶縁層で被覆して前記接続パッドに電解めっきを形成し、電解めっき後に外形加工線にそって外形加工により配線板を切り出すフレキシブルプリント配線板の製造方法において、
前記めっきリードに接続されるめっきリード給電パッドを前記外形加工線の内側に形成し、このめっきリード給電パッドに対応して前記外形加工線外側のめっき電極導体の給電パッドを設け、前記めっきリード給電パッドと前記めっき電極導体の給電パッドをめっき用接続導体により接続して、前記接続パッドをめっきすることを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明により外形加工線にめっきリードの切断端がなく、機器への実装において筐体や部品などに外形縁部分が接触しても回路の電気的な短絡が生じないフレキシブルプリント配線板を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を説明するためのフレキシブルプリント配線板の平面図。
【図2】本発明の一実施形態の製造工程を示すもので、(a)は給電パッドとめっき用接続導体の接続前の斜視図、(b)は給電パッドとめっき用接続導体の接続後の斜視図。
【図3】本発明の他の実施形態の製造工程を示すもので、給電パッドとめっき用接続導体の接続前の斜視図。
【図4】図3のI−I線にそう矢視断面略図。
【図5】本発明の他の実施形態の給電パッドとめっき用接続導体の接続後の斜視図。
【図6】従来の製造方法を説明するためのフレキシブルプリント配線板の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の一実施形態の製造方法を説明するフレキシブルプリント配線板を模式的に示すものである。可撓性の絶縁物基板で構成されるフレキシブルプリント配線板16はポリイミド樹脂などの可撓性絶縁フィルム母材10上に貼られた銅箔などの導体を、エッチングにより導体パターンとして、これを回路配線11とする。一枚のフィルム母材10に複数の配線板16をパターニングしておき個々に切り出して取り出す。切り出す線が外形加工線15である。外形加工線の外側をめっき電極導体17が囲んでいる。めっきリード給電パッド18が外形加工線の内側に設けられている。このめっきリード給電パッドにめっきリード13が延びて接続される。
【0014】
回路配線の導体パターンは配線板16を外部機器と接続するための回路配線11、電極端子となる接続パッド12a、配線板内に実装されるICやその他の部品を接続固定するための接続パッド12bを形成しており、各パッドの表面は配線回路の所定位置で金や銀などの金属が電解めっきされる。
【0015】
回路配線11は複数の導体ラインの集合であり、それぞれが絶縁されているが、接続パッド12a,12bが形成される導体ラインは電解めっきのためにめっきリード13に接続され、めっきリード13は回路配線間を通ってめっきリード給電パッド18まで引き出される。めっきリード13は電解めっき時にのみ必要なものであるから、短く単純パターンにすることが望ましく、各導体ラインを相互に接続しながらめっきリード給電パッド18に集中するように配線される。
【0016】
このめっきリード給電パッド18にめっき用接続導体19が電気的に接続できるように、ねじ構造の給電端子20が設置できるようになっている。本例では図2(a),(b)に示すように、給電パッド18の中心に配線板16を貫く透孔21を形成し、ボルト22、ナット23で形成した給電端子20を用いてねじ止めするようになっている。給電パッドの露出部25がリボン状のめっき用接続導体19の一端と接触するように配線板16の表裏からボルト22、ナット23でめっき用接続導体19を挟んで取り付ける。この端子に対向して外形加工線15を挟んで、めっき電極導体17に接続されているめっき電極導体側給電端子27も同様のねじ止め構造としており、これらの端子20,27間をめっき用接続導体19がジャンパ導線として電気的に接続できるようにしている。
【0017】
めっきされる配線板の接続パッド12a,12bおよびめっきリード給電パッド18、外形加工線15外側のめっき電極導体の給電パッド28を除き、めっきレジストが塗布されてマスクされている。めっき用接続導体19も端子との接触部以外を絶縁膜で被覆しておく。
【0018】
つぎに製造方法について説明する。
【0019】
<配線パターンの形成工程>
可撓性絶縁フィルム例えば厚さ50μmのポリイミド樹脂でできた基板上に例えば25μm厚の銅箔の導体層を接着剤で積層した配線基板母材10を用意する。この導体層に感光性レジストを積層し所定のパターンにエッチングする。パターンは回路配線11、接続パッド12a,12b、めっきリード13、めっきリード給電端子用の給電パッド18の導体ラインおよびめっき電極導体17を含んでいる。レジストを除去し、接続パッド12a,12bおよび給電パッド18、めっき電極導体17の給電パッド28のみを露出させてカバーレイでパターンを被覆する。母材10には配線板パターンが複数個形成される。
【0020】
<メッキ工程>
めっきリード給電パッド18およびめっき電極導体側給電パッド28のそれぞれにねじ例えばボルト、ナットによるねじを取り付けて給電端子20,27とし、両給電端子間をめっき用接続導体19で電気的に結線する。めっき用接続導体は薄いリボン状の金属平板の両端を広げてボルト貫通孔19aを形成し、ビス、ナットに十分に接触できるようにする。接触部以外は絶縁被膜を形成してめっきされないようにする。
【0021】
めっき電極導体をめっき浴の電極の一方に接続し、めっき浴にフィルム母材10を浸漬して、回路配線から露出した接続パッド12a,12bに金めっきを施す。電解めっきにより2μm程度の厚めっきが可能である。めっきした後に給電パッドに設置した端子20,27およびめっき用接続導体19を外す。
【0022】
<外形加工工程>
配線板16内のめっきリード13上の所定位置を穴あけ加工により穿孔部14を形成し、めっきリードを切断して相互に切り離し、各導体ラインを絶縁する。めっきリード給電パッド18はすべてのリードと接続されているが、穿孔により各めっきリードを切断するので必ずしも穴あけ加工で切断除去する必要がない。しかし、ねじなどの端子跡がめっきされずに残るため電極パッドを穴あけ加工により除去することが望ましい。
【0023】
つぎに、外形加工線15にそって基板母材を打ち抜き加工し切り離して個々にフレキシブル配線板16とする。めっきリードおよびめっきリード給電パッドは外形加工線の内側にあるため、外形加工によって外形加工部分に露出することがない。
【0024】
図3および図4に示す実施形態は、配線板のメッキリード給電パッドとめっき電極導体の給電パッド間の接続構造を絶縁フィルム母体に形成した複数の配線基板パターンに対して一括して接続する構造を示している。以下図1と同一符号の部分は同様部分を示している。
【0025】
複数の配線板16は給電パッド18が同一ラインに並ぶようにフィルム母材10上にパターン化されており、同様に配線板16に給電パッド18に対して対設されためっき電極導体17側の給電パッド28が前記ラインに平行に配列されている。これらの給電パッド18,28には貫通孔を設けていない。なお図4において符号37で示す部分はカバーレイである。
【0026】
めっき用接続導体として、一対の細長い板状金属導体30,31を用意し、母材10を挟んで給電パッド18,28間を一括して電気的に接続する。基板裏面側の第2の金属導体31の表面に、母材に位置する給電パッド18,28に対応してディスク状の凸部32を形成してあり、両端に母材との位置決めと、締め付けのためのボルト35を取り付ける。母材の表面側に第1の金属導体30を配置する。第1の金属導体30は両端にボルト受け孔を有して母材10の透孔34を貫通する第2の金属導体のボルト33を貫通させて蝶ナット35で締め付けられるようにしている。さらに、それぞれの給電パッドに対応する位置に針状突起36を形成している。
【0027】
母材10を挟んでねじ締めすると、第1の金属導体30の針状突起36が給電パッド18,28に食い込み接触して導通する。第2の金属導体のディスク状凸部32は金属導体が反り等を生じて針状突起が給電パッドから離れやすくなるのを防止する。
【0028】
第1の金属導体30および第2の金属導体31は表面は絶縁被覆され、不要にめっきされるのを防いでいる。針状突起36のみを露出させる。
【0029】
この実施形態によれば、母材10に形成した複数の配線板16を一括して電解めっき処理できるので製造を容易にすることが可能である。
【0030】
図5は他の実施形態を示し、めっき用接続導体19と給電パッドをボンディングにより接着したものである。図では銀ペーストなどの導電性ペースト50を用いたもので、めっき用接続導体19を銅、アルミニウム、鉄、ニッケルなどの金属リボンで形成し、配線基板の給電パッド18とめっき電極導体側の給電パッド28とを接続する。めっき後は配線基板側の給電パッドの部分を穴あけ加工してリボンを切り離す。ボンディング法に、導電接着剤や超音波ボンディングを採用することができる。この構造によれば、接続構造が簡単なため製造が容易になる。
【0031】
以上、実施形態では配線基板の給電パッドを各基板に単数形成する場合につき説明したが、必要に応じて複数個形成することができる。
【符号の説明】
【0032】
10:フィルム母材(可撓性絶縁基板)、11:回路配線、12a,12b:接続パッド、13:めっきリード、14:穿孔部、15:外形加工線、16:配線板、17:めっき電極導体、18:めっきリード給電パッド、19:めっき用接続導体、20,27:給電端子、28:めっき電極導体側給電パッド、30,31:板状金属導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の絶縁物基板上に接続パッドを含む回路配線および前記接続パッドに電気的に接続されるめっきリードの導体パターンを形成し、前記接続パッドを露出するように絶縁層で被覆して前記接続パッドに電解めっきを形成し、電解めっき後に外形加工線にそって外形加工により配線板を切り出すフレキシブルプリント配線板の製造方法において、
前記めっきリードに接続されるめっきリード給電パッドを前記外形加工線の内側に形成し、このめっきリード給電パッドに対応して前記外形加工線外側のめっき電極導体の給電パッドを設け、前記めっきリード給電パッドと前記めっき電極導体の給電パッドをめっき用接続導体により接続して、前記接続パッドをめっきすることを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記めっきリード給電パッドと前記めっき電極導体の給電パッドにねじによる給電端子が設置され、この給電端子に前記めっき用接続導体が接続されていることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記めっき用接続導体が第1及び第2の板状金属導体でなり、前記絶縁物基板を挟んで前記めっきリード給電パッドと前記めっき電極導体の給電パッドを電気的に接続することを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記めっき用接続導体が前記めっきリード給電パッドと前記めっき電極導体の給電パッドにボンディング接続されていることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−176004(P2011−176004A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37142(P2010−37142)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000113322)東芝ホクト電子株式会社 (172)
【Fターム(参考)】