説明

フレキシブル多層回路基板の製造方法

【課題】フレキシブル多層回路基板を安定して製造することができるフレキシブル多層回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】フレキシブル多層回路基板の製造方法は、ベースフィルム15、25上に第1、第2回路層が形成された第1、第2転写用回路基板16、26、及び、貫通孔31a、31bが形成された絶縁フィルム30を準備する準備工程と、貫通孔31a、31bと第1接続部11a、11bと第2接続部21a、21bとが重なるようにして、絶縁フィルム30の両面に第1、第2転写用回路基板16、26を貼り合わせる貼り合せ工程と、ベースフィルム15、25を第1、第2回路層から剥離する剥離工程と、貫通孔31a、31bにおいて絶縁フィルム30の両面の第1、第2回路層同士を溶接により接続する接続工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル多層回路基板の製造方法に関し、特に、フレキシブル多層回路基板を安定して生産することができるフレキシブル多層回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)に代表される小型電子機器には、可撓性を有するベースフィルム上に回路層が形成されたフレキシブル回路基板が複数積層されたフレキシブル多層回路基板が用いられる場合がある。
【0003】
下記特許文献1には、このようなフレキシブル多層回路基板の製造方法が記載されている。このフレキシブル多層回路基板の製造方法においては、可撓性を有するベースフィルム上に銅箔等から成る回路層を形成してフレキシブル回路基板とする。そして、それぞれのフレキシブル回路基板における回路層が形成されている部分の一部において、回路層のみを残し、ベースフィルムを剥離することで、ベースフィルムが剥離された部分において、回路層を両面が露出して支えの無いブリッジ状とする。そして、回路層のブリッジ状とされた部分同士が重なるように、それぞれのフレキシブル回路基板を積層して接着することで多層化する。その後、それぞれのフレキブル回路基板の回路層がブリッジ状とされている部分において、回路層同士を溶接により接続し、それぞれのフレキシブル回路基板に形成された回路層同士を電気的に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−204160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のフレキシブル多層回路基板の製造方法においては、それぞれのフレキシブル回路基板におけるベースフィルムが剥離された周辺の強度が弱くなるため、この部分は、他の部分よりも変形しやすい。そして、それぞれのフレキシブル回路基板を重ね合わせて多層化する際に、フレキシブル回路基板に応力がかかる場合があり、この場合、フレキシブル回路基板のベースフィルムが剥離された周辺が変形して、ブリッジ状の回路層が断線してしまう虞がある。このため、フレキシブル多層回路基板を安定して製造することができる製造方法が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、フレキシブル多層回路基板を安定して製造することができるフレキシブル多層回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフレキシブル多層回路基板の製造方法は、可撓性を有するベースフィルム上に回路層が形成された一対の転写用回路基板、及び、貫通孔が形成された絶縁フィルムを準備する準備工程と、それぞれの前記転写用回路基板の前記回路層が形成された面を前記絶縁フィルム側に向け、前記貫通孔と前記回路層の一部とが重なるようにして、前記絶縁フィルムの両面に前記転写用回路基板を貼り合わせる貼り合せ工程と、前記絶縁フィルムに貼り合わされたそれぞれの前記転写用回路基板の前記ベースフィルムを前記回路層から剥離する剥離工程と、前記貫通孔において前記絶縁フィルムの両面の回路層同士を溶接により接続する接続工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
このようなフレキシブル多層回路基板の製造方法によれば、絶縁フィルムの両面にそれぞれの転写用回路基板を貼り合せた後にベースフィルムを剥離するので、絶縁フィルムに転写用回路基板を貼り合せる際に、転写用回路基板に応力がかかる場合においても、ベースフィルムにより貫通孔付近の絶縁フィルムが変形することを抑制することができ、絶縁フィルムの変形によって回路層が断線することを防止することができる。そして、このように断線が防止されて積層された後、ベースフィルムを剥離して、露出した回路層同士を溶接することで、それぞれの回路層を電気的に接続する。こうしてフレキシブル多層回路基板を安定して製造することができる。
【0009】
また、上記フレキシブル多層基板の製造方法における前記接続工程後において、少なくとも一方の回路層の少なくとも一部を覆うように絶縁性の保護層を設ける保護工程を更に備えることが好ましい。
【0010】
このような保護層を設けることにより、回路層が他の部材を触れて損傷することや短絡することを防止することができる。
【0011】
また、上記フレキシブル多層基板の製造方法において、前記回路層の少なくとも一部がアンテナであることとしても良い。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、フレキシブル多層回路基板を安定して製造することができるフレキシブル多層回路基板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るフレキシブル多層回路基板を示す平面図である。
【図2】図1のII-II線における断面図である。
【図3】図1のフレキシブル多層回路基板の製造方法を示すフローチャートである。
【図4】準備工程後の様子を示す図である。
【図5】貼り合せ工程後の様子を示す図である。
【図6】剥離工程後の様子を示す図である。
【図7】接続工程の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るフレキシブル多層基板の製造方法の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るフレキシブル多層回路基板を示す平面図であり、図2は、図1のII-II線における断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のフレキシブル多層回路基板1は、絶縁フィルム30と、絶縁フィルム30の一方側の面に設けられた第1回路層10と、絶縁フィルム30の他方側の面に設けられた第2回路層20とを主な構成として備える。
【0017】
絶縁フィルム30は、可撓性を有した絶縁性の樹脂から成る。そして、絶縁フィルム30には、図1、図2に示すように、一対の円形の貫通孔31a、31bが形成されている。この絶縁フィルム30の材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)等が挙げられる。
【0018】
第1回路層10は、アンテナ13と、アンテナ13の両端に接続される一対の第1接続部11a、11bとから構成されている。一対の第1接続部11a、11bは、貫通孔31a、31bよりも直径が大きな円形とされており、フレキシブル多層回路基板1を平面視する場合に、絶縁フィルム30に形成されている一対の貫通孔31a、31bを覆うように形成されている。また、アンテナ13は、薄い導体が、外形が略四角形のループ状となる線路状に形成されており、アンテナ13の外周側の端部には、第1接続部11aが接続されており、アンテナ13の内周側の端部には、第1接続部11bが接続されている。
【0019】
なお、アンテナ13の材料としては、導電性の材料であれば、特に限定されないが、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)や、アルミニウム(Al)等の金属が挙げられる。また、第1接続部11a、11bの材料は、溶接が可能な導電性の材料から成り、このような材料としては、アンテナ13と同様の金属が挙げられる。なお、アンテナ13と第1接続部11a、11bとは、同じ材料から構成されても良く、それぞれ、別の材料から構成されても良い。
【0020】
第2回路層20は、一対の回路層20a、20bから構成されており、一対の回路層20a、20bは、線路23a、23bと、それぞれの線路23a、23bの一方の端部に接続されている第2接続部21a、21bと、それぞれの線路23a、23bの他方の端部に接続されている端子22a、22bとから構成されている。それぞれの第2接続部21a、21bは、第1接続部11a、11bと略同じ大きさで同じ形状をしており、図1に示すように、フレキシブル多層回路基板1を平面視する場合に、それぞれ第1回路層10の第1接続部11a、11bと重なる位置に設けられている。ただし、各図においては、理解の容易のため、第2接続部21a、21bの大きさを第1接続部11a、11bよりも僅かに大きく書いている。また、端子22a、22bは、アンテナ13の外周よりも外側に設けられており、第2接続部21a、21bと略同じ大きさで同じ形状をしている。そして、一対の線路23a、23bは、それぞれ第2接続部21a、21bから端子22a、22bまで直線状に形成されている。
【0021】
なお、それぞれの端子22a、22b、及び、それぞれの線路23a、23bの材料としては、導電性の材料であれば、特に限定されないが、例えば、アンテナ13の材料と同様の材料を挙げることができる。また、第2接続部21a、21bの材料は、溶接が可能な導電性の材料から成り、このような材料としては、第1接続部11a、11bと同様の材料をあげることができる。なお、それぞれの端子22a、22b、及び、それぞれの線路23a、23b、及び、それぞれの第2接続部21a、21bは、同じ材料から構成されても良く、それぞれ、別の材料から構成されても良い。
【0022】
そして、図2に示すように、第1接続部11aと第2接続部21aとは、貫通孔31aにおいて、溶接により接続されており、第1接続部11bと第2接続部21bとは、貫通孔31bにおいて、同様の方法により接続されている。
【0023】
また、図2に示すように、第1回路層10は、絶縁フィルム30側と反対側の面が、保護層41により被覆されており、第2回路層20は、絶縁フィルム30側と反対側の面が、端子22a、22bを除いて、保護層42により被覆されている。このような、保護層41、42の材料としては、絶縁性の材料であれば、特に限定されないが、例えば、ポリイミド等の樹脂を挙げることができる。なお、図1においては、保護層41、42の記載を省略している。
【0024】
また、絶縁フィルム30には、フレキシブル多層回路基板1の製造過程で用いられる複数の貫通孔39が形成されている。
【0025】
こうしてフレキシブル多層回路基板1は、外部端子として端子22a、22bを有するアンテナ装置とされている。
【0026】
次に、フレキシブル多層回路基板1の製造方法について説明する。
【0027】
図3は、図1のフレキシブル多層回路基板の製造方法を示すフローチャートである。
【0028】
図3に示すように、本実施形態のフレキシブル多層回路基板1の製造方法は、準備工程P1と、貼り合せ工程P2と、剥離工程P3と、接続工程P4と、保護工程P5とを備える。
【0029】
(準備工程P1)
まず、図4に示すように、可撓性を有するベースフィルム15の一方の面上に第1回路層10が形成された第1転写用回路基板16、及び、可撓性を有するベースフィルム25の一方の面上に第2回路層20が形成された第2転写用回路基板16、及び、貫通孔31a、31bが形成された絶縁フィルム30を準備する。なお、このベースフィルムの材料としては、特に限定されないが、PIやPETが挙げられる。
【0030】
第1転写用回路基板16は次の様に準備する。まず、ベースフィルム15を準備して、ベースフィルム15の一方の面の全体に第1回路層10となる金属層を形成する。金属層の形成は、粘着剤を用いて金属層をベースフィルム上に貼り付けることにより行う。次に第1回路層10と同様の形状とされているピナクルカッターを準備して、このピナクルカッターで、金属層のみを第1回路層10と同じ形に切断する。そして、不要な金属層を剥離して取り除くことにより、図4に示す第1転写用回路基板16を得ても良い。なお、この金属層の厚さは、特に制限されないが、所定の強度を得る観点から、6μm〜18μmであることが好ましい。或いは、上記と同様にして、ベースフィルム15の一方の面の全体に金属層を形成した後、金属層の第1回路層10となる部分にレジスト等によりマスクを形成し、エッチングにより不要な金属層を除去し、その後、レジストを除去することで、図4に示す第1転写用回路基板16を得る。また、ベースフィルム15には、図4に示すように、図1に示す絶縁フィルム30に形成されている複数の貫通孔39と同じ位置に複数の貫通孔19を形成する。貫通孔19は、打ち抜き等で形成すれば良い。
【0031】
また、第2転写用回路基板26は、ベースフィルム25を準備して、ベースフィルム15上に第1回路層10を形成したのと同様の方法により、ベースフィルム25の一方の面上に第2回路層20を形成する。この第2転写用回路基板26においても、ベースフィルム25には、図4に示すように、図1に示す絶縁フィルム30に形成されている複数の貫通孔39と同じ位置に複数の貫通孔29を形成する。なお、第2回路層20の形成においては、第1転写用回路基板16のベースフィルム15に形成された複数の貫通孔19の位置と、第2転写用回路基板26のベースフィルム25に形成された複数の貫通孔29の位置とを合わせて、第1転写用回路基板16と第2転写用回路基板26とを重ねたときに、第2接続部21a、21bが、それぞれ第1回路層10の第1接続部11a、11bと重なり、端子22a、22bが、アンテナ13の外周よりも外側となるように設ける。こうして、図4に示す第2転写用回路基板26を得る。
【0032】
絶縁フィルム30は、絶縁フィルム30を構成する可撓性を有する絶縁性のフィルムを準備して、貫通孔31a、31b、及び、複数の貫通孔39を形成する。複数の貫通孔39は、第1転写用回路基板16のベースフィルム15に形成されている複数の貫通孔19と同様の位置に形成する。そして、貫通孔31a、31bは、複数の貫通孔39を、第1転写用回路基板16の複数の貫通孔19と合わせて、絶縁フィルムと第1転写用回路基板16とを重ねたときに、第1接続部11a、11bと重なる位置において、第1接続部11a、11bよりも小さな大きさの円形で形成する。貫通孔31a、31b、及び、複数の貫通孔39の形成としては、特に限定されないが、例えば、打ち抜き等により形成すれば良い。また、図示しないが、絶縁フィルム30の両面には、接着剤としての熱可塑性樹脂が塗布されている。この熱可塑性樹脂の接着力は、第1転写用回路基板16のベースフィルム15と第1回路層10とを接着している粘着剤、及び、第2転写用回路基板26のベースフィルム25と第2回路層20とを接着している粘着剤よりも強力な接着力を有している。こうして、図4に示す絶縁フィルム30を得る。
【0033】
(貼り合せ工程P2)
貼り合せ工程P2においては、まず、第1転写用回路基板16の第1回路層10が絶縁フィルム30側を向くようにして、絶縁フィルム30と第1転写用回路基板16とを重ね合わせる。このとき、図示しない治具の複数のピンに、第1転写用回路基板16の複数の貫通孔19、及び、絶縁フィルム39の複数の貫通孔39を通すことにより、絶縁フィルム30と第1転写用回路基板16との位置を合わせる。次に、絶縁フィルム30と第2転写用回路基板26とを重ね合わせる。このとき、第2転写用回路基板26の複数の貫通孔29を上述の治具のピンにとすことにより、絶縁フィルム30と第2転写用回路基板26との位置を合わせる。こうして、第1転写用回路基板16と絶縁フィルム30と第2転写用回路基板26とが、互いに位置合わせされて重ね合わされて、絶縁フィルム30の貫通孔31a、31bと第1転写用回路基板16の第1接続部11a、11bと、第2転写用回路基板26の第2接続部21a、21bとが重ね合わされる。なお、このとき、第1転写用回路基板16及び絶縁フィルム30及び第2転写用回路基板26は、図示しない粘着剤により仮止めされることが、位置ずれを防止する観点から好ましい。
【0034】
次に、第1転写用回路基板16と絶縁フィルム30と第2転写用回路基板26とが重なった積層体を、高温でロールプレスする。ロールプレスの温度は、絶縁フィルム30に塗布された接着剤としての熱可塑性樹脂が溶融し、第1転写用回路基板16及び絶縁フィルム30及び第2転写用回路基板26が損傷しない温度であれば、特に限定されないが、例えば、150℃とされる。
【0035】
こうして、図5に示すように、第1接続部11a、11bと第2接続部21a、21bとが貫通孔31a、31bを介して対向した状態で、絶縁フィルム30の一方の面に第1転写用回路基板16が貼り合わされ、絶縁フィルム30の他方の面に第2転写用回路基板26が貼り合わされた状態とされる。なお、図5に示すように、少なくとも絶縁フィルム30と、第1回路層10及び第2回路層20とが接着されていれば良く、ベースフィルム15及びベースフィルム25は、絶縁フィルム30に接着されなくても良い。
【0036】
(剥離工程P3)
次に、第1転写用回路基板16からベースフィルム15を剥離する。すなわち第1回路層10からベースフィルム15を剥離する。ベースフィルム15の剥離は、ベースフィルム15を絶縁フィルム30から引き剥がせば良い。このとき、上述のように、第1転写用回路基板16におけるベースフィルム15と第1回路層10とを接着している粘着剤よりも強力な接着力を有する接着剤を用いて、第1転写用回路基板16と絶縁フィルム30とが貼り合されているため、ベースフィルム15を引き剥がすことにより、第1回路層10が絶縁フィルム30の一方の面上に残る。次に、ベースフィルム15を剥離したのと同様にして、第2転写用回路基板26からベースフィルム25を剥離する。すなわち第2回路層20からベースフィルム25を剥離する。このとき、上述のように、第2転写用回路基板26におけるベースフィルム25と第2回路層20とを接着している粘着剤よりも強力な接着力を有する接着剤を用いて、第2転写用回路基板26と絶縁フィルム30とが貼り合されているため、ベースフィルム25を引き剥がすことにより、第2回路層20が絶縁フィルム30の他方の面上に残る。こうして、図6に示すように、絶縁フィルム30の一方の面に第1回路層10が形成され、絶縁フィルム30の他方の面に第2回路層20が形成された状態となる。
【0037】
(接続工程P4)
次に、それぞれの貫通孔31a、31bにおいて、絶縁フィルム30の一方の面に形成された第1回路層10のそれぞれの第1接続部11a、11bと、絶縁フィルム30の他方の面に形成された第2回路層20のそれぞれの第2接続部21a、21bを接続する。この接続は、図7に示すように、第1接続部11a、第2接続部21aを電極51a、52aで挟み込んで溶接を行う。この溶接としては、例えば、抵抗溶接、超音波溶接、レーザ溶接等を挙げることができる。また、同様の方法により、第1接続部11b、第2接続部21bを電極51b、52bで挟み込んで溶接を行う。
【0038】
(保護工程P5)
次に、第1回路層10が形成された絶縁フィルム30の一方の面の全体を保護層41で被覆する。この保護層41は、例えば、未硬化状態の紫外線硬化性樹脂を塗布した後に、この紫外線硬化性樹脂を硬化させることにより設けたり、絶縁性のフィルムを貼り付けることにより設けることができる。次に、第2回路層20が形成された絶縁フィルム30の他方の面における、端子22a、22b以外の部分を保護層42で被覆する。保護層42は、例えば、保護層41と同様の方法により設ければ良い。こうして、図1、図2に示すフレキシブル多層回路基板1を得る。
【0039】
本実施形態のフレキシブル多層回路基板1の製造方法によれば、絶縁フィルム30のそれぞれの面に第1転写用回路基板16、第2転写用回路基板26を貼り合せた後に、それぞれのベースフィルム15、25を剥離するので、絶縁フィルム30に第1転写用回路基板16、第2転写用回路基板26を貼り合せる際に、第1転写用回路基板16、第2転写用回路基板26に応力がかかる場合においても、ベースフィルム15、25により、貫通孔31a、31b付近の絶縁フィルムが変形することが抑制できるので、絶縁フィルムの変形によって第1回路層10或いは第2回路層20が断線することを防止することができる。そして、このように第1回路層10或いは第2回路層20の断線が防止されて第1転写用回路基板16、第2転写用回路基板26積層された後、それぞれのベースフィルム15、25を剥離して、露出した第1回路層10、第2回路層20を溶接することで、それぞれの第1回路層10と第2回路層20とを電気的に接続する。こうしてフレキシブル多層回路基板1を安定して製造することができる。
【0040】
さらに、本実施形態のフレキシブル多層回路基板1の製造方法によれば、絶縁フィルム30のそれぞれの面に第1転写用回路基板16、第2転写用回路基板26を貼り合せた後に、それぞれのベースフィルム15、25を剥離し、その後溶接による接続を行うので、第1、第2回路層10、20の接続部が、貫通孔31a、31b上において、支えの無い状態でいる時間を短くすることができる。
【0041】
また、本実施形態のフレキシブル多層回路基板1の製造方法においては、保護層41、42を設けることにより、第1回路層10、第2回路層20が他の部材を触れて損傷することや短絡することを防止することができる。
【0042】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
例えば、上記実施形態においては、第1回路層10のみがアンテナ13を有していたが、第2回路層20にもアンテナを形成しても良い。この場合、アンテナ同士を接続して、より放射強度の強いアンテナとしたり、面積の小さいアンテナとすることができる。
【0044】
また、上記実施形態においては、フレキシブル多層回路基板1として、アンテナ装置を例に説明したが、本発明はこれに限らず、他の回路にも応用できる。
【0045】
また、上記実施形態においては、第1、第2転写用回路基板16、26におけるベースフィルム15、25と第1、第2回路層10、20とを接着している粘着剤よりも強力な接着力を有する接着剤を用いて、第1、第2転写用回路基板16、26と絶縁フィルム30とが貼り合わされるとしたが、剥離工程において、第1、第2回路層10、20が絶縁フィルム30上に残れば良く、例えば、第1、第2転写用回路基板16、26におけるベースフィルム15、25と第1、第2回路層10、20とを接着している粘着剤と、第1、第2転写用回路基板16、26と絶縁フィルム30とを接着している接着剤の接着力が同じ強度であっても良い。或いは、接着剤を用いる以外の方法により、ベースフィルム15、25に第1、第2回路層10、20を設けても良く、第1、第2転写用回路基板16、26におけるベースフィルム15、25と第1、第2回路層10、20とが強度の弱い接着剤により接着されても良い。
【0046】
また、上記実施形態においては、保護層41、42を設けて、第1回路層10、第2回路層20を保護しているが、保護層41、42は、必須ではなく、保護層41、42の内、一方のみを設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上、説明したように、本発明によれば、フレキシブル多層回路基板1を安定して製造することができるフレキシブル多層回路基板の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0048】
1・・・フレキシブル多層回路基板
10・・・第1回路層
11a、11b・・・第1接続部
13・・・アンテナ
15・・・ベースフィルム
16・・・第1転写用回路基板
19・・・貫通孔
20・・・第2回路層
21a、21b・・・第2接続部
22a、22b・・・端子
23a、23b・・・線路
25・・・ベースフィルム
26・・・第2転写用回路基板
29・・・貫通孔
30・・・絶縁フィルム
31a、31b、39・・・貫通孔
41、42・・・保護層
P1・・・準備工程
P2・・・貼り合せ工程
P3・・・剥離工程
P4・・・接続工程
P5・・・保護工程
51a、51b、52a、52b・・・電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するベースフィルム上に回路層が形成された一対の転写用回路基板、及び、貫通孔が形成された絶縁フィルムを準備する準備工程と、
それぞれの前記転写用回路基板の前記回路層が形成された面を前記絶縁フィルム側に向け、前記貫通孔と前記回路層の一部とが重なるようにして、前記絶縁フィルムの両面に前記転写用回路基板を貼り合わせる貼り合せ工程と、
前記絶縁フィルムに貼り合わされたそれぞれの前記転写用回路基板の前記ベースフィルムを前記回路層から剥離する剥離工程と、
前記貫通孔において前記絶縁フィルムの両面の回路層同士を溶接により接続する接続工程と、
を備える
ことを特徴とするフレキシブル多層基板の製造方法。
【請求項2】
前記接続工程後において、少なくとも一方の回路層の少なくとも一部を覆うように絶縁性の保護層を設ける保護工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル多層基板の製造方法。
【請求項3】
前記回路層の少なくとも一部がアンテナであることを特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブル多層基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−109406(P2012−109406A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257237(P2010−257237)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】