説明

フレキシブル放熱器

【課題】 電子部品から発生する熱を効率よく放熱し、かつ自由に伝熱経路を設定できるフレキシブルな、かつ液晶表示部などへ熱を移動させる伝熱経路上の熱抵抗が小さい放熱器を提供するものである。
【解決手段】 電子機器内の電子部品から発生する熱を電子機器外へ伝える放熱器において、可撓性の熱伝導性繊維からなる伝熱体の一端に、内部に液体が封入されている受熱部と、他端に放熱部を有するフレキシブル放熱器である。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】本発明は、パソコン、携帯用電子機器等の電子機器内に設置され、電子機器内部の電子部品から発生する熱を、電子機器外部に伝える放熱器に関するものである。
【従来の技術】近年の電子機器の発展はめざましく、特にパーソナルコンピュータや携帯端末は、高機能化、高集密度化の一途をたどっている。これにともない、機器内部の電子部品も高機能化し、同時に熱を発生するようになっている。ところが、電子部品は熱に弱いため、この発生した熱を機器外部へ放出する必要がある。従来は、機器内部に冷却ファンを取付け電子部品上に風流を起こし機器内部の熱を外部へ送り出していた。特にノートパソコンはいろいろな対策がなされている。図7に示すような一般的なノートパソコンは、外形寸法がA4またはB5ノートサイズで、厚さ50ミリまたはそれ以下であって、キーボードを含む本体部13と、液晶表示部14を含む蓋体部15とからなり、本体部と蓋体部とを蝶番10等によって取付け、蓋体部が自由開閉できるものである。このノートパソコンの総消費電力のうち60パーセント程度が本体部で消費され、残りの40パーセントが液晶表示部で消費されている。そして、ノートパソコンの内部のICやCPU等の電子部品が発する熱の放散を行うために、冷却ファンに加え種々のヒートシンク、もしくはヒートパイプ等が使用されている。従来の放熱器(ヒートパイプ)の実装例は、図6に示すように、ノートパソコンには、ヒートパイプ11、冷却ファン12および蝶番10が一体化された放熱器が設置されており、伝熱経路は、発熱体であるCPU8から、形状付随性のある熱伝導性ゴム9、ヒートパイプ11、冷却ファン12、蝶番10、蓋体部15の順となっている。ヒートシンクは、電子部品上に設けられ、電子部品の熱を本体内部空間に放熱する構造のものである。ヒートパイプは受熱プレートと熱放散プレートの両方を搭載し、電子部品に受熱プレートが接して受けた熱を、熱放散プレートから本体内部空間に放熱する構造のものか、または熱放散プレートを本体部底面、または蝶番を介して蓋体部に配置してノートパソコンの外部に放熱する構造のものである。
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ヒートシンクは、構造上、本体内部空間に多くのスペースを必要とするため小型化に適しなかった。一方、ヒートパイプは、構造上、本体内部空間に放熱する前者構造の場合、本体内部空間に多くのスペースを必要とするため小型化に沿わなかったし、ヒートパイプ全体が均一温度になるように作用するため、使用可能な上限温度の異なる電子部品が密集する回路配置の場合、放熱効果の低い電子部品が生じた。ノートパソコンの外部に放熱する後者構造の場合、前者同様に使用可能な上限温度の異なる電子部品が密集する回路配置の場合、放熱効果の低い電子部品が生じたり、さらに熱放散プレートが蝶番を介し配置された場合、密着性が悪いため可撓部の接触熱抵抗が大きくなり放熱能力が弱くなった。これらの問題は、単に構造上の問題だけではなく放熱器の特性として、熱伝導性が等方性であること、また柔軟性すなわち自由度の高い可撓性を持たないことが原因であった。
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するため、電子部品から発生する熱を効率よく放熱し、かつ自由に伝熱経路を設定できるフレキシブルな放熱器であり、例えばノートパソコンにおける電子部品等の発熱源の配置変更をすることなく、また、液晶表示部などへ熱を移動させる伝熱経路上の熱抵抗が小さい放熱器を提供するものである。すなわち、電子機器内の電子部品から発生する熱を電子機器外へ伝える放熱器において、可撓性の熱伝導性繊維からなる伝熱体の一端に受熱部と、他端に放熱部を有するフレキシブル放熱器である。さらに、受熱部および放熱部が、内部に液体が封入されている容器であることを特徴とするフレキシブル放熱器である。さらに、受熱部および放熱部に、伝熱体が挿入されているフレキシブル放熱器である。さらに、伝熱体が、可撓性の絶縁材で被覆されているフレキシブル放熱器である。さらに、可撓性の熱伝導性繊維が、カーボン繊維からなる伝熱体であるフレキシブル放熱器である。本発明の伝熱体としては、可撓性のある熱伝導性の高い繊維なら全て用いることができる。好ましくは、熱伝導性が20W/mk以上の繊維が良く、例えば、カーボン繊維、ポリエチレン繊維、ポリベンザゾール繊維などが挙げられる。なかでも、繊維の径方向よりも軸方向に熱伝導性が良い、熱伝導異方性を有する繊維が好適である。特に、径方向の熱伝導性に対し軸方向に500〜1000倍の熱伝導性を示すカーボン繊維が好ましい。
【発明の実施の形態】本発明は、図1に示すように、可撓性の熱伝導性繊維からなる伝熱体1の一端に受熱部2と、他端に放熱部3とを有するフレキシブル放熱器である。受熱部2と放熱部3は同じ構成であり、電子部品等の発熱源と接する一端を受熱部2とし、熱放散プレート等の放熱部材と接する他端を放熱部3とした。さらに、図2に示すように、伝熱体1は熱伝導性繊維5の束を可撓性の絶縁材4で被覆した構成が、剪断やねじり等の応力による破損や、傷による破断から保護することができ好ましい。本発明の受熱部や放熱部の構成は、図3に示すように、熱伝導体からなる中空状の容器6で、熱伝導性繊維5が挿入固着され、内部に液体7が封入されている。本発明は、上記構成に限られるものではなく、受熱部の熱吸収の効率が良くなるように集熱プレートを設置したり、伝熱体の全長の一部または全部に補強材を巻き付てもかまわない。また電子部品との接触部分には、熱伝導性ゴムや熱伝導性グリス等を介することで、更に接触熱抵抗を低減できる。なお、本発明の放熱器は、端部の受熱部、放熱部に液体を封入したことでサイフォン効果が得られ、受熱部、伝熱体、放熱部間の接触熱抵抗が低減される。端部の熱伝導性繊維は受熱部、放熱部の各容器内に充満しており、従来のヒートパイプにおいてみられたような、電子機器内において設置される向きに熱伝導性が左右されない。本発明の受熱部および放熱部を構成する容器の材料は、熱伝導性の大きいヒートパイプで用いられる材料がよく、好ましくは、熱伝導性が20W/mk以上の材料が良い。例えば銅、アルミニウム等の金属が挙げられる。さらにその表面には、耐腐食性等の理由からニッケルメッキなどが施されていてもかまわない。本発明の受熱部および放熱部の内部に封入される液体は、ヒートパイプで用いられているような低沸点の液体であれば全て用いることができ、例えば水、アルコール、代替フロン等の単体または混合物が挙げられる。本発明の可撓性の絶縁材は、電気絶縁性の有機高分子であれば全て用いることができ、耐熱性を考慮するとシリコーンゴムが最も好ましい。
【実施例】本発明における実施例を図4に示す。長手方向に熱伝導性繊維5であるカーボン繊維の束をシリコーンゴムからなる絶縁材4で包み込んだ伝熱体1の両端部に、それぞれアルミニウム製の受熱部2と放熱部3を設けた。受熱部および放熱部の内部には、液体7として低沸点であるエタノールを封入した。そして、熱伝導性繊維5の末端が液体7に浸る状態で受熱部2、放熱部3内に挿入し、伝熱体1と受熱部2および放熱部3を固着させた。なお、受熱部2、放熱部3にはアルミニウム製のプレートを備えた。本発明のフレキシブル放熱器の実装例は図5に示すようになり、伝熱経路は、発熱体であるCPU8から、形状付随性のある熱伝導性ゴム9、本発明のフレキシブル放熱器、蓋体部15の順となっている。フレキシブル性を生かして、他の電線ケーブルと同様に蝶番10の付近を経た配置をとることで、放熱部材である蓋体部へ熱を伝えて放散させることができた。評価試験として、CPU、グラフィックチップ等に負荷を与えるベンチマークテストを連続2時間行ない、本発明のフレキシブル放熱器と従来の放熱器(ヒートパイプ)との比較を行なった。なお、放熱部には蓋体部を接触固定させ、蓋体部の温度を測定することで熱伝導性を評価した。
【表1】


また同じ構成で、ノートパソコンを横倒しにすることで、放熱器が直立し、更に発熱体であるCPUが放熱器の上側に位置する場合の蓋体部の温度を測定した。
【表2】


表1の測定結果から、本発明のフレキシブル放熱器は蝶番による熱抵抗がない分、蝶番を介するヒートパイプよりも熱伝熱性が高かった。表2の測定結果から、比較例では直立したヒートパイプの上側に発熱体が有るため、ヒートパイプ内部の液体が発熱体と離れてしまい、熱伝導能力の低下が見られた。本発明のフレキシブル放熱器は、熱伝導性繊維であるカーボン繊維がウィック的役割を果たすように受熱部、放熱部内に挿入されているため、表1における測定結果との差異が小さかった。つまり、設置される向きに熱伝導性が依存しないことがわかった。
【発明の効果】本発明は、電子部品等から発生する熱を効率よく機器本体外に放熱するものであり、かつ伝熱経路を自由に設定できるフレキシブル放熱器である。例えばヒートパイプのように、決められた伝熱経路に拘束されることはなく、ノートパソコン本体内の熱を電子部品等の発熱体の配置の変更も必要なく、さらに伝熱経路構造が原因となる熱抵抗が発生することなく、蓋体部等へ効率良く熱を移動させるための手段を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の上面図
【図2】本発明の伝熱体の切断面図
【図3】本発明の受熱部又は放熱部の断面図
【図4】本発明のフレキシブル放熱器の実施例
【図5】本発明のフレキシブル放熱器の実装例
【図6】従来の放熱器の実装例
【図7】代表的なノートパソコンの模式図
【符号の説明】
1 伝熱体
2 受熱部
3 放熱部
4 絶縁材
5 熱伝導性繊維
6 容器
7 液体
8 CPU
9 熱伝導性ゴム
10 蝶番
11 ヒートパイプ
12 冷却ファン
13 本体部
14 液晶表示部
15 蓋体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子機器内の電子部品から発生する熱を電子機器外へ伝える放熱器において、可撓性の熱伝導性繊維からなる伝熱体の一端に熱伝導性の受熱部、そして他端に熱伝導性の放熱部を有することを特徴とするフレキシブル放熱器。
【請求項2】 受熱部および放熱部が、内部に液体が封入されている容器であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル放熱器。
【請求項3】 受熱部および放熱部に、伝熱体の端部が挿入されていることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のフレキシブル放熱器。
【請求項4】 伝熱体が、柔軟性の絶縁材で被覆されていることを特徴とする請求項1、2あるいは3に記載のフレキシブル放熱器。
【請求項5】 柔軟性の熱伝導性繊維が、カーボン繊維であることを特徴とする請求項1、2、3あるいは4に記載のフレキシブル放熱器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2001−257492(P2001−257492A)
【公開日】平成13年9月21日(2001.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−68515(P2000−68515)
【出願日】平成12年3月13日(2000.3.13)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】