説明

フレネルレンズシート、その製造方法およびそれに用いるスタンパの製造方法並びにフレネルレンズシートを含む太陽光発電装置

【課題】精度よく位置決めされて配列された多眼フレネルレンズから構成されるフレネルレンズシートを提供すること。
【解決手段】 各フレネルレンズ10は多角形からなり、互いのフレネルレンズが隣接して配列されることによりフレネルレンズ群100として配列される。少なくとも一つの領域におけるピッチP1が300μm以下である細ピッチ領域1(R)を含み、細ピッチ領域1(R1)の半径内側に隣接する領域を領域2(R2)と、半径外側に隣接する領域を領域3(R3)とピッチがそれぞれ20%以上異なっている。また、細ピッチ領域1のフレネルレンズを構成する円弧または円周の少なくとも一つは、多角形を構成する少なくとも1辺に内接するか又は多角形を構成する少なくとも一辺を横切っている(T)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形により形成されるフレネルレンズシート、特に太陽光発電装置に用いられるフレネルレンズシートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーの利用が注目されている。そのひとつに太陽光を利用する太陽電池(ソーラセル)による発電がある。
【0003】
またソーラセルの発電量を増加させるため、反射鏡やレンズを組み合わせてソーラセルに集光する装置も提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0004】
例えば特許文献1によれば、平面視で四角形、五角形、及び六角形の少なくとも一つの形状に成形したフレネルレンズを隙間無く隣接させることにより多数の集光用フレネルレンズを同一平面上に配設し、各フレネルレンズの集光位置にソーラセルを配設した集光装置付きの太陽光発電装置が公開されている。このような集光装置付の太陽光発電装置ではレンズの組立て誤差等によってレンズの向きや位置が僅かに太陽方向から外れると太陽電池の受光面上の照度が急激に低下して発電量が大きく損なわれる。
【0005】
また、特許文献2によれば、集光レンズと太陽電池の間に二次集光器を設けて、集光レンズから射出される光が本来の位置から多少ずれても、二次集光器の内部で反射させることによって上記光を太陽電池の受光面へ常に確実に入射させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−026800号
【特許文献2】特開2001−148501号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フレネルレンズの成形は、一般に旋盤によって金属板を切削した金属成形型を用い、プレス成形、射出成形などの転写成形などの樹脂成形による成形方法が採用される。これにより、特許文献1に開示される図1に記載のような、多数の集光用フレネルレンズが同一平面上に配設されたフレネルレンズ群(または多眼フレネルレンズ)(このフレネルレンズ群又は多眼フレネルレンズを、以下に説明する本発明では単に「フレネルレンズシート」と呼称する。)が製造される。
【0008】
ここで、特許文献1に開示されるように、多数の集光用フレネルレンズが同一平面上に隣接して配設させる方法をタイリングと一般には呼称されている。この特許文献1においては、タイリングする手法の詳細については開示されていないが、タイリングするに際して、個々のフレネルレンズを樹脂成形した後、これらを隙間無く配列する方法を採用することもできる。
【0009】
しかしながら、樹脂成形により形成された多数のフレネルレンズ同士をタイリングして多眼フレネルレンズを製造する方法に比べて、多眼フレネルレンズ型を作製し、互いのフレネルレンズがタイリングされた多眼フレネルレンズ(フレネルレンズシート)が一度の成形により形成する製造方法の方が、成形の効率の点で好ましいと考えられる。
【0010】
ここで、このような多眼フレネルレンズ型の製造には金属板を切削した金属成形型を多数連結してもよいが、金属成形型の製造には時間を要する。そこで1個の金属成形型から複数の2次成形型を転写製造し、それらを連結する事が製造効率の点で好ましいと考えられる。
【0011】
このような工程を考慮した場合、それぞれのソーラセルの面積は小さい方がコストの点で好ましいため、多眼フレネルレンズの個々のレンズはその集光位置をそれぞれのソーラセル位置に対して正確に一致させる必要が生じる。そのため、個々のフレネルレンズあるいはフレネルレンズ成形型を効率よく、寸法を精密に切断し、さらに精度よく位置決めしてタイリングする技術が想定される。
【0012】
しかしながら、個々のフレネルレンズあるいはフレネルレンズ成形型の寸法を精密に切断し、さらに精度よく位置決めしてフレネルレンズあるいはフレネルレンズ成形型を配列させる、効率の良い技術は確立されていない。
【0013】
そこで、本発明は、精度よく位置決めされて配列された多眼フレネルレンズから構成されるフレネルレンズシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
フレネルレンズは、通常のレンズを同心円状の領域に分割し厚みを減らしたレンズである。このようなフレネルレンズでは、表面に「のこぎり状の断面」を持つが、その同心円のピッチを変えても厚みに多少の変更が生じる場合があることを除いては太陽光発電装置の集光装置に用いる目的では、実質的に遜色のない同一機能を備えたフレネルレンズとすることができることに着目した。
【0015】
すなわち、本発明者等は、フレネルレンズ群(多眼フレネルレンズ)を構成する個々のフレネルレンズ(以下、個々の単位をユニットと呼称する場合がある。)の同心円のピッチを変えることによりこのピッチの変更位置を切り出しや配列工程(タイリング工程)における目印として利用できるのでは無いかと考えた。
【0016】
そこで、同心円のピッチを変えてフレネルレンズユニット(またはフレネルレンズユニット型)を作製すれば、どこに切り出すべき位置があるかの確認が容易となる。また、切り出すべき位置のピッチを一定幅以下とすることにより、切り出し工程(S3)における精度が確保できる。
【0017】
そこで、本発明者等は、太陽光発電装置に利用できる複数の集光用のフレネルレンズの位置合わせが簡易に行える条件について鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
【0018】
すなわち本発明に係るフレネルレンズは、隣接する互いのピッチPが異なる複数の領域を備えるとともに、少なくとも一つの領域におけるピッチP1は、300μm以下である細ピッチ領域1を含み、前記細ピッチ領域1の半径内側に隣接する領域を領域2とし、前記細ピッチ領域1の半径外側に隣接する領域を領域3としたとき、前記細ピッチ領域1におけるピッチP1は、前記領域2におけるピッチP2及び、前記領域3におけるピッチP3とはそれぞれ20%以上異なることを特徴とする。
【0019】
このようなフレネルレンズを用いれば、フレネルレンズを所定の多角形状に切り出す際に、異なるピッチの同心円または円弧を目印として精度良く切断することができる。また、この多角形状に切り出す際の切り出し線が、異なるピッチの同心円または円弧に内接するかまたは横断する位置を、フレネルレンズ同士を隣接する際の位置合わせの目印とすることができる。これにより、フレネルレンズ同士を隣接接合させることが容易となり、かつ、フレネルレンズ同士を精度よく隣接配設させることができる。
【0020】
また、本発明に係るフレネルレンズシートは、樹脂成形により形成された複数の集光用のフレネルレンズが互いに隣接して配列されたフレネルレンズ群からシート状に形成されたフレネルレンズシートであって、
前記各フレネルレンズは多角形からなり、前記複数のフレネルレンズの各々は、隣接する互いのピッチPが異なる複数の領域を備えるとともに、少なくとも一つの領域におけるピッチP1は、300μm以下である細ピッチ領域1を含み、前記細ピッチ領域1の半径内側に隣接する領域を領域2とし、前記細ピッチ領域1の半径外側に隣接する領域を領域3としたとき、前記細ピッチ領域1におけるピッチP1は、前記領域2におけるピッチP2及び、前記領域3におけるピッチP3とはそれぞれ20%以上異なり、かつ、前記細ピッチ領域1におけるフレネルレンズを構成する円弧または円周の少なくとも一つは、前記多角形を構成する少なくとも1辺に内接するか又は前記多角形を構成する少なくとも一辺を横切ることを特徴とする。
【0021】
このようなフレネルレンズシートでは、複数のフレネルレンズの各々の焦点位置近傍にそれぞれ太陽電池セルの受光面または太陽電池用の二次集光器の受光面を配設することにより、太陽光発電装置として利用できる。
【0022】
ここで、前記ピッチP2又はP3は、200μm以上、5mm以下の範囲内から選択されることが好ましい。
【0023】
また、前記細ピッチ領域1の最外周半径と最内周半径との差ΔRは細ピッチ領域1にお
けるピッチP1の2倍以上であることが好ましい。
【0024】
また、前記細ピッチ領域1のフレネルレンズ群の有効面内に占める面積は、フレネルレンズ群の有効面積の10%以下とすることが好ましい。
【0025】
また、前記領域2を含む内周部においてピッチは段階的あるいは連続的に異なっていてもよいが、前記細ピッチ領域1に隣接する領域2では、少なくとも前記ΔRと同じ幅以上
の半径範囲でピッチP1と異なるピッチP2を有することが好ましい。
【0026】
又本発明のフレネルレンズシートの製造方法は、前記多角形の一辺を切り出す切り出し工程(S3)を含み、かつ、該切り出し工程(S3)における切り出し線は、前記細ピッチ領域1を構成する同心円に内接するか又は横断することを特徴とする。
【0027】
このようなフレネルレンズシートの製造方法の好ましい一例は、この切り出し工程(S3)において切り出される対象物は切り出し加工が簡易な材料により複製された表面にフレネルレンズまたはフレネルレンズ金型を形成するための凹凸面を有する複製物であるマスターユニットであり、切り出し工程(S3)により切り出された切り出し面は、互いの切断面が隣接するように配列されるマスタースタンパ形成工程(S4)により、表面にフレネルレンズ群またはフレネルレンズ群金型を形成するための凹凸面を有するマスタースタンパが形成され、該マスタースタンパ形成工程(S4)により得られたマスタースタンパを用いて少なくとも一回の電鋳工程を含むことにより前記フレネルレンズ群を樹脂成形により形成させるためのスタンパを複製するスタンパ複製工程を含んでいる。
【0028】
また、このようなフレネルレンズシートの製造方法の好ましい一例は、金型製造用の基板表面に所定形状の刻印をして前記細ピッチ領域1〜領域3を満たすフレネルレンズの逆形状の凹凸面を備える金型ユニットを形成する金型ユニット形成工程(S1)、前記金型ユニット形成工程(S1)により形成された金型ユニットを用いて樹脂成形により多数の樹脂成形マスターユニットを成形する樹脂マスターユニット複製工程(S2)、前記樹脂マスターユニット複製工程(S2)により形成された多数の樹脂成形マスターユニットの各辺を切り出して該樹脂マスターユニットを多角形状とする切り出し工程(S3)、 互いの切断面が隣接するように配列されることにより、表面にフレネルレンズ群を形成するための凹凸面を有するマスタースタンパを形成するマスタースタンパ形成工程(S4)、該マスタースタンパ形成工程(S4)により得られたマスタースタンパを用いて少なくとも一回の電鋳工程を含むことにより前記フレネルレンズ群を樹脂成形により形成させるためのスタンパを複製するスタンパ複製工程、スタンパ複製工程により得られたスタンパを用いて樹脂成形により請求項1に記載の太陽光発電装置に用いられるフレネルレンズ群を樹脂成形する樹脂成形工程、の各工程を含み、前記切り出し工程(S3)における切り出し線は、前記細ピッチ領域1を構成する同心円に内接するか又は横断することを特徴とする。
【0029】
また、本発明のフレネルレンズシートを樹脂成形するためのスタンパの製造方法は、金型製造用の基板表面に所定形状の刻印をして前記細ピッチ領域1〜領域3を満たすフレネルレンズの逆形状の凹凸面を備える金型ユニットを形成する金型ユニット形成工程(S1)、前記金型ユニット形成工程(S1)により形成された金型ユニットを用いて樹脂成形により多数の樹脂成形マスターユニットを成形する樹脂マスターユニット複製工程(S2)、前記樹脂マスターユニット複製工程(S2)により形成された多数の樹脂成形マスターユニットの各辺を切り出して該樹脂マスターユニットを多角形状とする切り出し工程(S3)、互いの切断面が隣接するように配列されることにより、表面にフレネルレンズ群を形成するための凹凸面を有するマスタースタンパを形成するマスタースタンパ形成工程(S4)、該マスタースタンパ形成工程(S4)により得られたマスタースタンパを用いて少なくとも一回の電鋳工程を含むことにより前記フレネルレンズ群を樹脂成形により形成させるためのスタンパを複製するスタンパ複製工程、の各工程を含み、前記切り出し工程(S3)における切り出し線は、前記細ピッチ領域1を構成する同心円に内接するか又は横断することを特徴とする。
【0030】
ここで、前記マスタースタンパ形成工程(S4)は、前記切り出し工程(S3)を含んで形成されるとともに、 前記切り出し工程(S3)は、切り出すべき各辺の少なくとも一部において余剰領域を残して切断後、該余剰領域が長手方向に延設されるように隣接せつして配列させつつ複数のマスターユニットの切断面が互いに対向するように配設させるタイリングの後に、前記長手方向に隣接して配列された余剰領域を切断除去することもできる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のフレネルレンズは多角形状であり、多角形の少なくとも1辺に内接する円弧の半径近傍の領域とそれに隣接する領域とでそのピッチが異なるため、フレネルレンズを所定の多角形状に切断する際、異なるピッチの同心円または円弧が目印となり、精度よく簡易に切断することができる。また、フレネルレンズを構成する同心円が切断された同心円の切断端部または同心円の円弧の一部が2つ以上のフレネルレンズをタイリングする際の位置合わせの目印となり、精度よく簡易にタイリングが行える。
【0032】
これにより、多眼フレネルレンズを構成する個々のフレネルレンズの集光位置をそれぞれ正確に一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明に係る太陽光発電装置に用いられるフレネルレンズ群(フレネルレンズシート)を樹脂成形する工程の一例を説明する工程図である。
【図2】図2は、図1のスタンパを形成する一工程としての樹脂マスターユニットから周辺を切断する工程を説明する図である。
【図3】図3は、樹脂マスターユニットをタイリングする場合に本発明に係る工程の一例を説明する図である。
【図4】図4は、本発明に係る樹脂マスターユニットの変形例の一例を説明する図である。
【図5】図5は、樹脂マスターユニットをタイリングする場合の変形例に係る工程の一例を説明する図である。
【図6】図6は、多数のフレネルレンズユニットがタイリングされて形成されたフレネルレンズ群、スタンパ又はスタンパマスターの全体構成の一例を平面図により説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0035】
まず、図1は、本発明に係る太陽光発電装置に用いられるフレネルレンズ群を樹脂成形する工程の一例を説明する工程図である。
【0036】
この実施の形態で説明する工程図は、金型ユニット形成工程(S1)、樹脂マスターユニット複製工程(S2)、切り出し工程(S3)、マスタースタンパ形成工程(S4)、スタンパ複製工程(S5)、樹脂成形工程(S6)を包含している。
【0037】
ここで、金型ユニット形成工程(S1)では、金型製造用の基板表面に、詳細には、後述される細ピッチ領域1〜領域3を満たすような所定形状の刻印を複製するためのレンズの逆形状の凹凸面を備える金型ユニットを形成する金型製造工程(又は金型刻印工程)である。このような金型製造工程は、例えば、旋盤によって金属板を切削することにより得ることができる。その他、本発明においては、樹脂マスターユニット複製工程(S2)に用いることが可能な金型を製造できれば、金属板に限らず、いかなる素材でもよい。また、刻印による製造が一般的であるが、刻印によらずに形成してもよい。
【0038】
次に、樹脂マスターユニット複製工程(S2)を説明する。本発明における樹脂マスターユニット複製工程(S2)は、切り出しが簡易にかつ正確に行える材料によりフレネルレンズまたはフレネルレンズ金型を形成するための凹凸面を有する複製物であるマスターユニット20を形成する工程である。
【0039】
一般に金型ユニット形成工程(S1)により所定形状の金型面を備える金型を製造するのは多大な労力と費用が必要なことから、本件発明の好ましい実施の形態では、所定形状の金型から多数のマスターユニットを複製することを提案している。
【0040】
このため、この樹脂マスターユニット複製工程(S2)に用いる材料は、切り出しが行える材料であり、かつ、切り出した後の取扱や精度が良好であることも必要である。このような材料の一例は、樹脂成形であり、樹脂成形によれば、金型形状を容易に転写することができる。この工程における樹脂成形の手法は特には問わないが、例えば、後述する樹脂成形工程(S)の製造方法を包含する。この樹脂マスターユニット複製工程(S2)では、得られるマスターユニットの光学特性は不要であるので、透明な材料に限らない。また、複製法も限定されない。
【0041】
ついで行われる切り出し工程(S3)の詳細は、本発明の本質に係り詳細には後述される。この工程においては、マスターユニットに形成されている細ピッチ領域1〜領域3における互いに異なるピッチP1〜P3を利用して、マスターユニットにおける多角形の形状に合わせた切り出し線の位置を特定することができる。また、後述する説明により明らかとなるとおり、この切り出し工程(S3)は、マスタースタンパ形成工程(S4)の工程遂行中に行われるのがよい場合もある。
【0042】
つぎに、本発明においては、マスタースタンパ形成工程(S4)において、細ピッチ領域1に形成されている同心円の位置を目印にして、互いの隣接位置の位置合わせが行われつつ、配列位置が固定される。これにより、多数のマスターユニットが平面方向に配列されたスタンパを得ることができる。このマスターユニットの表面には、フレネルレンズ群またはフレネルレンズ金型群の表面に相当する刻印が施されている。
【0043】
ついでスタンパ複製工程(S5)は、光ディスクのスタンパの複製法を応用した技術である。常法により、電鋳工程を含んでマスターユニットの表面に対象な凹凸面または同一な凹凸面を有する樹脂成形用のスタンパを得ることができる。この工程は、電鋳工程を含むので、表面の導電化処理工程、電鋳工程を含んで構成され、必要に応じて金型の背面にステンレスシートなどの補強体を貼付するなどしてスタンパ成形に備えるための強度等を備えるものとされる。
【0044】
さらには、この複製スタンパの表面に剥離用の処理を施した後、再度電鋳処理をすることにより、複製スタンパとは凹凸が逆転した複製スタンパを得ることもできる。このような複製は、最初の刻印工程での金型表面がフレネルレンズの凹凸が逆転して刻印される場合に応用可能である。
【0045】
得られたスタンパは、フレネルレンズを形成するための樹脂成形工程(S6)により本発明に係る多眼のフレネルレンズ(フレネルレンズ群)から構成されるフレネルレンズシートを一度に賦形させることができる。このような賦形方法には、射出成形、プレス成形、2P(Photo−polymer)成形法など、凹凸パターンが精密に転写されてフレネルレンズとしての光学特性を備えることができる、一般的な大量生産品を製造することも可能である。
【0046】
本発明において、マスタースタンパ形成工程(S4)に付される切り出した後のマスターユニット(切り出し後)10は、多角形状である。多角形状がよい理由は、従来技術と同等であり、互いに隣接して配列させた場合の太陽光発電に用いるフレネルレンズ群として用いる場合の集光効率が良好となるからである。
【0047】
このような多角形状は、例えば三角形、四角形、六角形が好ましく、中でも四角形、六角形がより好ましい。これにより、複数のフレネルレンズを隣接して配列させることによりタイリングを構成する場合、平面を有効に利用することができる。このような多角形状としては、各辺の長さが互いに実質的に等しい正方形、正三角形、正六角形が好ましい一例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
得られた多眼フレネルレンズより構成されるフレネルレンズシート100は、例えば、図6に示すように、多数のフレネルレンズユニット10が平面上に隣接配列されて一体成形により接合されて形成されている。このようなフレネルレンズシート(多眼フレネルレンズ)100は、不図示の太陽光発電装置の所定位置に配設させることにより、個々のフレネルレンズユニット10との焦点位置にそれぞれの太陽電池が位置決めされる。これにより、多眼フレネルレンズ100と太陽電池と最適な位置合わせが容易に行うことができる。
【0049】
ここで、多角形状が正方形である場合を例にとり、図面を参照しつつ本発明をさらに詳細に説明する。
【0050】
なお、樹脂成形する際に用いる金型としてのスタンパ、またはこれにより樹脂成形された樹脂成形品、乃至はスタンパの製造工程で用いられるマスタースタンパなどの各部材においては、断面図により示す場合には凹凸が逆転する場合があっても、平面図においては、実質的に同一の平面図を構成する。以下の説明では、説明の簡略化のために、特に理のない限り、同一図面、同一番号を付して説明することがある。例えば、以下の図面において、符号100を樹脂マスターの全体構成を説明する図とする場合には、それぞれの符号10は、切り出し後の樹脂マスターユニットに相当する。また、符号100を多眼フレネルレンズ(またはフレネルレンズシート)を説明する図とする場合には、それぞれの符号10は、多眼フレネルレンズの構成要素としてのフレネルレンズユニットに相当する。
【0051】
まず、図2に示すように、フレネルレンズユニット10は切り出した後の形状が平面視正方形である。この図において、フレネルレンズユニット10は、実線により示される平面視が正確に正方形である形状である。また、図2の二点鎖線は、切り出し前のマスターユニット20の外径形状である。
【0052】
ここで、このマスターユニット20は、図1のステップ2の樹脂マスターユニット複製工程(S2)により複製されたものであり、切り出し工程(S3)に付された後のマスターユニット10は、フレネルレンズユニット10と平面視の図面上では同一図面となる。
【0053】
この図2において、符号Rは領域を示し、また、符号Pは、フレネルレンズを平面図により表現した場合の同心円の頂点(又は凹点)の形状を示している。
【0054】
ここで、細ピッチ領域1(R1)には、ピッチP1が300μm以下である3本の同心円の円周C11〜C13が設けられている。また、この細ピッチ領域1(R1)に隣接する領域であって、半径内側に隣接する領域を領域2(R2)とし、この細ピッチ領域1(R1)に隣接する領域であって、半径外側に隣接する領域を領域3(R3)とする。ここで、領域2(R2)または領域3(R3)には、それぞれ領域1(R1)に位置する同心円のピッチP1に対して少なくとも20%以上異なる(大きい)複数の同心円の円周C2またはC3がそれぞれ設けられている。これにより、細ピッチ領域1(R1)は、領域2(R2)および領域3(R3)とはピッチが大きく異なることにより、その位置が直ぐに視認できる。
【0055】
また、ここで、細ピッチ領域1(R1)に位置する3本の円周C11〜C13の中で、中央に位置する円周C12は、各辺11〜14にそれぞれ内接され、最外周に位置する円周C13は、各辺11〜14により切断されている。これにより、細ピッチ領域1(R1)は、切り出し前のマスターユニット20から切り出し後のマスターユニット10を切り出す際の目印として機能する。また、このピッチP1が300μm以下に刻まれていることにより、切り出しの精度を300μm以下に刻まれたピッチP1を目安として高精度に維持することができ、これにより切り出し線の位置を常に一定に保つことができる。
【0056】
このように切り出された後のマスターユニット10では、フレネルレンズを形成する同心円の重心Ogと同心円の中心Ocとが一致している。このように、重心Ogと同心円の中心Ocとが一致すれば、図2に示すように、1辺(11)に内接する円周C12は、その重心Ogと同心円の中心Ocとが一致する事により、この一辺(11)を含む全ての辺(11〜14)で円周P12が内接する。また、この円周C12よりも外側に位置する円周P13は、いずれの辺(11〜14)においても切断されることになる。この円周P13が各辺(11〜14)を横断するそれぞれ2点の端部を符号Tにより示す。
【0057】
このようにその重心Ogと同心円の中心Ocとが一致すれば、切り出し工程(S3)の確実さ、容易さに加えて、マスタースタンパ形成工程(S4)における精度向上に寄与することを次に説明する。
【0058】
このマスタースタンパ形成工程(S4)は、切断面の位置合わせを行いつつ複数のマスターユニット10を平面上に隣接して配列させる工程(タイリング工程ともいう。)である。マスタースタンパ形成工程(S4)(タイリング工程)では、フレネルレンズの重心Og乃至は中心Ocの位置を正確に位置付けする必要がある。
【0059】
ここで、上述の切り出し工程(S3)により切り出されたマスターユニット10の2個を、隣接し合う各辺(ここでは辺11と辺13)に位置する端部Tを結ぶ線L´(図3の右拡大図参照。)が互いに平行となるように位置合わせを行えば、それぞれの重心Og、中心Oc位置を結ぶ一点鎖線により示された中心線Lが線L´と平行となる。
【0060】
これにより、隣接する端部Tの位置を目印として確認しつつ隣接するマスターユニット10を配設させれば、正確に位置合わせを行える。また、このような目印となる端部Tが各辺(11〜14)のそれぞれに露出するように設計すれば良いことが判る。
【0061】
また少なくとも1辺を横切る特定半径の細ピッチ領域1において、隣接する領域2および領域3とピッチが異なる場合、図3(左拡大図)に示すようにピッチが異なる円弧端部(辺を横切る部分)を目印として、隣り合う1対のフレネルレンズの位置を正確かつ効率的に配置する事ができる。
【0062】
つぎに、フレネルレンズが長方形の場合を図4を参照しつつ説明する。なお、図3と同一乃至は均等な部位部材については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0063】
この図4において、短辺(11、13)に内接する円周C12を含む細ピッチ領域1(領域R1)を設けるとともに、長辺(12,14)にも内接する円周C12´を含む細ピッチ領域1´(R1´)を設ける。図3の例と同様に、各細ピッチ領域1(R1)及び細ピッチ領域1´(R1´)の内側にそれぞれ領域2(R2)及び領域2´(R2´)を設ける。また、図3の例と同様に、各細ピッチ領域1(R1)及び細ピッチ領域1´(R1´)の外側にそれぞれ領域3(R3)及び領域3´(R3´)を設ける。細ピッチ領域1(R1)及び細ピッチ領域1´(R1´)のピッチPがそれぞれ300μm以下を満たすこと、また、細ピッチ領域1(R1)及び細ピッチ領域1´(R1´)に隣接する他の領域のピッチをそれぞれ20%以上異ならせることは図3の例と同様になるように設計する。
【0064】
これにより、短辺(11、13)に露出した端部Tまたは長辺(12,14)に露出した端部T´,T´を目印として、左右または上下に隣接させて正確に位置合わせを行えることは容易に理解される。
【0065】
ここで、フレネルレンズのピッチP1は、少なくとも1辺に内接する円弧の半径近傍、または少なくとも1辺を横切る特定の半径近傍である細ピッチ領域1においては300μm以下である必要がある。これより大きいと、各辺の切断やタイリングの際に円弧を目印としても十分な精度が得られない(寸法精度は最大±300μmの誤差を生む)。200μm以下、特に100μm以下である事が精度を向上する上で一層好ましい。
【0066】
ピッチP2およびP3は集光効率や太陽電池のサイズや金型の製造を考慮した好ましい数値が選択される。例えば200μm以上、5mm以下である。
【0067】
これより小さいと回折によって光を集光する効率が低下したり、金型の切削に要する時間が掛かり過ぎたりする場合がある。一方、5mmを越えると太陽電池の寸法が例えば10mm四方未満などと小さい場合には集光する効率が低下する場合がある。またフレネルレンズの凹凸が大きすぎ、樹脂成形による複製する場合の転写成形に問題を生じたりする場合がある。ピッチP2およびP3は300μm以上3mm以下の範囲から選択するのがより好ましい。ここで、ピッチP2およびP3は同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0068】
フレネルレンズのピッチP1は、ピッチP2およびP3に対し、20%以上異なる必要がある。これより差異が小さいと、ピッチを変化する事による目印としての効果が不十分となる場合がある。50%以上異なる事が好ましい。2倍以上、特には3倍以上異なる事がより好ましい。異なる程度の上限は100倍以下が好ましい。これより差異が大きいと、フレネルレンズの金型を切削するバイトや旋盤の精度と耐久性の両立が困難になったり、鋸歯状凹凸の大きさが異なりすぎるため、転写成形に問題が生じたりする場合がある。
【0069】
本発明において、細ピッチ領域1の最外周半径と最内周半径との差△Rは細ピッチ領域
1におけるピッチP1の2倍以上である事が好ましい。これより小さいと、細ピッチ領域1の面積が狭すぎ、目印としての効果が不十分となる場合がある。細ピッチ領域1の最外周半径と最内周半径との差△RはP1の3倍以上、特に5倍以上である事が好ましい。
【0070】
一方で、細ピッチ領域1は光学性能上および製造上好ましいピッチP2およびP3とは異なるピッチP1を有する領域であるため、過大である事は好ましくない。細ピッチ領域1のうち、フレネルレンズ有効面内の面積は、フレネルレンズ有効面積の10%以下とする事が好ましい。好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下、さらにより好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.3%以下である。
【0071】
また領域2を含む内周部においてピッチは段階的あるいは連続的に異なっていても良い。しかし細ピッチ領域1に隣接する領域2は、少なくとも前記△Rと同じ幅以上の半径範
囲でピッチP1と異なるピッチP2を有する必要がある。このように設計する事で細ピッチ領域1が切断やタイリングの目印として効果を発揮する。領域2は好ましくは△Rの5
倍以上の半径範囲である。より好ましくは△Rの20倍以上の半径範囲である。
【0072】
領域3を含む外周部においても同様にピッチは段階的あるいは連続的に異なっていても良い。また細ピッチ領域1に隣接する領域3は、少なくとも△Rと同じ幅以上の半径範囲
でピッチP1と異なるピッチP3を有する必要がある。領域3は好ましくは△Rの5倍以
上の半径範囲である。より好ましくは△Rの20倍以上の半径範囲である。
【0073】
なお金属成形型から複数の2次成形型を転写製造した場合や、転写成形の際、熱膨張などによって寸法が数%変化する場合がある。その場合、切断後の成形品の細ピッチ領域1となる半径位置が、太陽光発電装置完成後のフレネルレンズの辺の位置近傍となるように、その寸法変化を見越して金属成形型を製造することが好ましい。
【0074】
個々のフレネルレンズを切断する際、タイリングの前に全ての辺を細ピッチ領域1に接するようにしても良いが、1つ以上の辺について細ピッチ領域1の0.5mm〜1mm程度の余分領域を残して大きめに切断し、タイリング後に前記余分領域を除去する場合が好ましい場合がある。
【0075】
図5に示すように、タイリング前のフレネルレンズAについては、一辺A3のみをフレネルレンズAの細ピッチ領域1に接するように、そしてそれ以外の辺については例えば50μmほど余分領域を残して大きめに切断する。タイリング前のフレネルレンズBについては、一辺B1のみをフレネルレンズBの細ピッチ領域1に接するように、そしてそれ以外の辺については例えば50μm余分領域を残して大きめに切断する。
【0076】
その後フレネルレンズAの辺A3とフレネルレンズBの辺B1をと対向させ、タイリングを行う。
【0077】
またフレネルレンズCとフレネルレンズDについても同様に切断、タイリングを行う。
次いで、フレネルレンズAの辺A2とフレネルレンズBの辺B2の余分領域をそれぞれの細ピッチ領域1を目安に一度に除去する。同様にフレネルレンズCの辺C4とフレネルレンズDの辺D4の余分領域をそれぞれの細ピッチ領域R1を目安に一度に除去する。このようにすれば辺A2と辺B2、辺C4と辺D4それぞれの切断寸法誤差によって生じる段差を除去して、つながった辺を同一平面とする事が出来る。
【0078】
その後、辺A2および辺B2と、辺C4および辺D4とを対向させて接合させることで、高精度のタイリングを行うことができる。
【0079】
更にその後、同様にタイリング工程を進めて多眼フレネルレンズを作製した後、前記多眼フレネルレンズの周囲に存在する余分領域をそれぞれの細ピッチ領域R1を目安として一度に除去すれば全体として切断寸法精度の高い多眼フレネルレンズ100を作製する事が出来る。
【0080】
このようにして作製された多眼フレネルレンズ100は、そのまま太陽光発電装置に用いる多眼フレネルレンズとして利用できるが、同様に多眼フレネルレンズ100を一体成形するためのスタンパ複製用のマスターとして利用できることはいうまでもない。
【0081】
また、このようにして作製された多眼フレネルレンズ100では、フレネルレンズシートを構成する個々のフレネルレンズの集光位置が太陽電池セルのそれぞれの受光面または二次集光器のそれぞれの受光面に効率よく、正確に一致させることができる。
【実施例】
【0082】
以下に、実施例により詳細に本発明を説明する。
[金型の作製]
ダイヤモンド切削バイトを用いて黄銅製基板表面にフレネルレンズの逆形状を彫刻した。個々のフレネルレンズユニット10の寸法は、各辺の長さが250mmの正方形状であり、概略5mm程度を切り出した後の、切り出し後の各辺の長さが等しく240mmである正方形状とする。
【0083】
フレネルレンズの焦点距離:450mm
細ピッチ領域1:半径119.9mm〜120.1mm(つまり±100μm)
細ピッチ領域1におけるピッチP1:0.05mm(つまり4ピッチ分)
領域2,3:上記細ピッチ領域1以外のフレネルレンズ全面
領域2におけるピッチP2:0.38mm
領域3におけるピッチP3:0.38mm
[2次成形型(スタンパ)の作製]
前記金型を使用し、アクリル樹脂シートへプレス加工をする事によってフレネルレンズを複数製造した。次いで前記フレネルレンズの一辺の5mm程度を細ピッチ領域1を目印として切断しつつ、他の辺を細ピッチ領域1を目安として、50μm程度の余剰領域を残して切断する。目標とする位置で切断された切断面を対向させて配列させることによりタイリングし、余分領域の除去という操作を繰り返すことにより、5列×4段の多眼フレネルレンズを作製した。この多眼フレネルレンズをマスターと呼称する。なお余分領域の除去はルーター切削機を使用して行った。
【0084】
さらに多眼フレネルレンズ用のマスターに常法にしたがってニッケル蒸着およびニッケル電鋳を行った後、背面にイミド系耐熱接着剤を用いてステンレスシートと貼り合わせて金型を補強した。次いで金型からマスターからを剥離し、前記ステンレスシートおよびニッケルメッキからなる2次成形金型(スタンパまたはマスタースタンパ)を作製した。
[樹脂成形]
得られたスタンパを用い、射出成形機によってアクリル樹脂製の多眼フレネルレンズを成形した。これを10mm四方の化合物半導体系太陽電池および逆角錐状の2次集光器がそれぞれ5列×4段に配列された太陽電池ユニットと組み合わせて太陽光発電装置を作製した。各フレネルレンズは対応する太陽電池の位置に正確に配置されていた。
【0085】
本発明において作製された多眼フレネルレンズは、位置決めが正確に行えるという特徴を備えるので特許文献1に記載の太陽光発電装置に用いるフレネルレンズ群として利用できることはもちろんであるが、太陽光発電装置の使用環境での温度変化等が激しく想定されるので、設計位置が使用環境の状況により変更することも予想される。それ故、特許文献2に記載の二次集光器の受光面を改良したタイプを含めて、その他一般的な太陽光発電装置に応用することにより一層本発明の作用効果が顕著となる。
【0086】
以上、実施例により本発明を説明したが、切断前のフレネルレンズユニット10の形状は円形であっても、切断後に所定の形状に切断できればよい。
【符号の説明】
【0087】
100:スタンパ、マスタースタンパ、樹脂マスター、フレネルレンズシート、フレネルレンズ群、多眼フレネルレンズ
10:フレネルレンズユニット、切り出し後フレネルレンズ、マスターユニット(切り出し後)
11〜14:辺
20:マスターユニット、切り出し前フレネルレンズ
C11〜C13:円周
C2.C3:円周
L:中心線
L´:端部Tを結ぶ線
Og:重心
Oc:中心
R:領域
R1:細ピッチ領域1
R2:領域2
R3:領域3
T:端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形により形成された複数の集光用のフレネルレンズが互いに隣接して配列されたフレネルレンズ群からシート状に形成されたフレネルレンズシートであって、
前記各フレネルレンズは多角形からなり、
前記複数のフレネルレンズの各々は、隣接する互いのピッチPが異なる複数の領域を備えるとともに、
少なくとも一つの領域におけるピッチP1は、300μm以下である細ピッチ領域1を含み、
前記細ピッチ領域1の半径内側に隣接する領域を領域2とし、前記細ピッチ領域1の半径外側に隣接する領域を領域3としたとき、前記細ピッチ領域1におけるピッチP1は、前記領域2におけるピッチP2及び、前記領域3におけるピッチP3とはそれぞれ20%以上異なり、かつ、
前記細ピッチ領域1におけるフレネルレンズを構成する円弧または円周の少なくとも一つは、前記多角形を構成する少なくとも1辺に内接するか又は前記多角形を構成する少なくとも一辺を横切ることを特徴とするフレネルレンズシート。
【請求項2】
前記ピッチP2又はP3は、200μm以上、5mm以下の範囲内から選択されることを特徴とする請求項1記載のフレネルレンズシート。
【請求項3】
前記細ピッチ領域1の最外周半径と最内周半径との差△Rは細ピッチ領域1におけるピ
ッチP1の2倍以上であることを特徴とする請求項1記載のフレネルレンズシート。
【請求項4】
前記細ピッチ領域1のフレネルレンズ群の有効面内に占める面積は、フレネルレンズ群の有効面積の10%以下とすることを特徴とする請求項1記載のフレネルレンズシート。
【請求項5】
前記領域2を含む内周部においてピッチは段階的あるいは連続的に異なっていてもよいが、前記細ピッチ領域1に隣接する領域2では、少なくとも前記△Rと同じ幅以上の半径
範囲でピッチP1と異なるピッチP2を有することを特徴とする請求項2に記載のフレネルレンズシート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のフレネルレンズシートを製造する方法であって、
該製造方法は、前記多角形の一辺を切り出す切り出し工程(S3)を含み、
かつ、該切り出し工程(S3)における切り出し線は、前記細ピッチ領域1を構成する同心円に内接するか又は横断することを特徴とするフレネルレンズシートの製造方法。
【請求項7】
請求項6記載に記載のフレネルレンズシートを製造する方法であって、
前記切り出し工程(S3)において切り出される対象物は切り出し加工が簡易な材料により複製された表面にフレネルレンズまたはフレネルレンズ金型を形成するための凹凸面を有する複製物であるマスターユニットであり、
前記切り出し工程(S3)により切り出された切り出し面は、互いの切断面が隣接するように配列されるマスタースタンパ形成工程(S4)により、表面にフレネルレンズ群またはフレネルレンズ群金型を形成するための凹凸面を有するマスタースタンパが形成され、
該マスタースタンパ形成工程(S4)により得られたマスタースタンパを用いて少なくとも一回の電鋳工程を含むことにより前記フレネルレンズ群を樹脂成形により形成させるためのスタンパを複製するスタンパ複製工程(S5)を含んで製造されることを特徴とするフレネルレンズシートの製造方法。
【請求項8】
前記マスタースタンパ形成工程(S4)は、前記切り出し工程(S3)を含んで形成されるとともに、
前記切り出し工程(S3)は、切り出すべき各辺の少なくとも一部において余剰領域を残して切断後、該余剰領域が長手方向に延設されるように隣接せつして配列させつつ複数のマスターユニットの切断面が互いに対向するように配設させるタイリングの後に、前記長手方向に隣接して配列された余剰領域を切断除去することを特徴とする請求項7に記載のフレネルレンズシートの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載のフレネルレンズシートを製造する方法であって、
金型製造用の基板表面に所定形状の刻印をして前記細ピッチ領域1〜領域3を満たすフレネルレンズの逆形状の凹凸面を備える金型ユニットを形成する金型ユニット形成工程(S1)、
前記金型ユニット形成工程(S1)により形成された金型ユニットを用いて樹脂成形により多数の樹脂成形マスターユニットを成形する樹脂マスターユニット複製工程(S2)、
前記樹脂マスターユニット複製工程(S2)により形成された多数の樹脂成形マスターユニットの各辺を切り出して該樹脂マスターユニットを多角形状とする切り出し工程(S3)、
互いの切断面が隣接するように配列されることにより、表面にフレネルレンズ群を形成するための凹凸面を有するマスタースタンパを形成するマスタースタンパ形成工程(S4)、
該マスタースタンパ形成工程(S4)により得られたマスタースタンパを用いて少なくとも一回の電鋳工程を含むことにより前記フレネルレンズ群を樹脂成形により形成させるためのスタンパを複製するスタンパ複製工程(S5)、
スタンパ複製工程(S5)により得られたスタンパを用いて樹脂成形により請求項1に記載のフレネルレンズシートに用いられるフレネルレンズ群を樹脂成形する樹脂成形工程、の各工程を含み、
前記切り出し工程(S3)における切り出し線は、前記細ピッチ領域1を構成する同心円に内接するか又は横断することを特徴とするフレネルレンズシートの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載のフレネルレンズシートを樹脂成形するためのスタンパの製造方法であって、
金型製造用の基板表面に所定形状の刻印をして前記細ピッチ領域1〜領域3を満たすフレネルレンズの逆形状の凹凸面を備える金型ユニットを形成する金型ユニット形成工程(S1)、
前記金型ユニット形成工程(S1)により形成された金型ユニットを用いて樹脂成形により多数の樹脂成形マスターユニットを成形する樹脂マスターユニット複製工程(S2)、
前記樹脂マスターユニット複製工程(S2)により形成された多数の樹脂成形マスターユニットの各辺を切り出して該樹脂マスターユニットを多角形状とする切り出し工程(S3)、
互いの切断面が隣接するように配列されることにより、表面にフレネルレンズ群を形成するための凹凸面を有するマスタースタンパを形成するマスタースタンパ形成工程(S4)、
該マスタースタンパ形成工程(S4)により得られたマスタースタンパを用いて少なくとも一回の電鋳工程を含むことにより前記フレネルレンズ群を樹脂成形により形成させるためのスタンパを複製するスタンパ複製工程、の各工程を含み、
前記切り出し工程(S3)における切り出し線は、前記細ピッチ領域1を構成する同心円に内接するか又は横断することを特徴とするスタンパの製造方法。
【請求項11】
太陽電池と、請求項1〜5のいずれかに記載のフレネルレンズシートとを含んで構成される太陽光発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−276845(P2010−276845A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129104(P2009−129104)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】