説明

フレーム補償装置及びフレーム補償方法

【課題】サンプリング周波数が異なる2つの放送素材を多重した信号がフレーム単位で編集された場合に、一方の放送素材についてのフレームの不連続によるノイズ発生を回避し得るフレーム補償装置を提供する。
【解決手段】編集により不連続となるフレームの組み合わせを示す情報と、補償量との対応関係を表す補償テーブル1731を廃棄/補完処理部173に設け、編集点検出部172にて音声信号から不連続となるフレームの組み合わせ、つまり編集点を検出することで、廃棄/補完処理部173にて編集点検出部172からの検出結果に基づいて、補償テーブル1731から編集点に対応する補償量を読み出し、この補償量を音声信号の編集点に加算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば放送局に適用される放送番組送出システムに係り、特に映像及び音声のフレーム同期制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、放送番組送出システムにあっては、放送番組の送出素材となる映像信号及び音声信号を予めサーバに格納しておき、自動番組送出制御装置(APC)からの指示に従って該当する素材を再生し、オンエアを行うようになっている。このようなオンエア処理において、番組で使用する映像信号及び音声信号をそれぞれTS(Transport Stream)パケット化して多重伝送し、受信側で各TSパケットを復調し、適宜タイミングを合わせて合成再生することで、放送番組を視聴可能としている。
【0003】
ところで、上記放送番組送出システムでは、オンエア処理前に、映像に重畳された音声の編集がフレーム単位で行われることがある。この編集は、非圧縮の音声に対し行われることになる。このため、編集点で音声フレーム番号が不連続となり、ノイズが発生することになる。このことは、編集が頻繁に行われるほど顕著となり非常に好ましくない。
【0004】
なお、この種に関連する従来技術として、特許文献1に、GOP(Group Of Pictures)を構成するビデオ情報データの境界となる編集位置で、ビデオ情報の途中でオーディオ情報が途中に存在する場合には、分割位置から前方のストリームには分割位置を跨ぐオーディオフレームデータが完全な構成となるようにビデオ情報を持つTSパケットをダミーTSパケットデータに書き替える構成が示されている。但し、この特許文献1に記載のものは、TSパケット化された音声信号を取り扱う場合を問題としており、非圧縮の音声信号に関するものではない。
【特許文献1】特開2005−117556公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上述べたように、放送番組送出システムにおいては、オンエア処理前に、映像に重畳された音声の編集がフレーム単位で行われた場合に、編集点で音声フレーム番号が不連続になりノイズが発生することになる。この音声フレーム番号の不連続を回避する手段については、まだ検討段階であって実現されていないのが現状である。
【0006】
そこで、この発明の目的は、サンプリング周波数が異なる2つの放送素材を多重した信号がフレーム単位で編集された場合に、一方の放送素材についてのフレームの不連続によるノイズ発生を回避し得るフレーム補償装置及びフレーム補償方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明に係るフレーム補償装置は、放送番組を構成し互いにサンプリング周波数が異なるフレーム構造でかつ非圧縮の第1の素材信号及び第2の素材信号を多重し、放送信号として送出する送出装置に用いられ、第1及び第2の素材信号を多重した信号に対し選択的にフレーム単位で編集が行われた場合に、この編集に応じたフレーム補償を行うフレーム補償装置であって、第2の素材信号とフレーム位相が一致する第1の素材信号のフレーム数を単位長とし、この単位長の第1の素材信号を入力して、編集により不連続となるフレームの組み合わせを検出する検出手段と、この検出手段で検出されたフレームの組み合わせから補償量を生成し、この補償量で第1の素材信号を補償する補償手段とを備えるようにしたものである。
【0008】
また、補償手段は、編集により不連続となるフレームの組み合わせを示す情報と、補償量との対応関係を表す補償テーブルを格納する記憶手段を備え、検出手段による検出結果に基づいて、補償テーブルから対応する補償量を読み出して第1の素材信号の編集点に加算することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、編集により不連続となるフレームの組み合わせを示す情報と、補償量との対応関係を表す補償テーブルを用意したことにより、第1の素材信号から不連続となるフレームの組み合わせを検出した場合に、この補償テーブルからフレームの組み合わせに対応する補償量を読み出し、この補償量を第1の素材信号の編集点に加算することでフレームが連続するように補償することができる。
【0010】
従って、第1及び第2の素材信号がフレーム単位で編集されても、簡単な制御で、第1の素材信号に対しフレームの不連続によるノイズ発生を回避できる。
【発明の効果】
【0011】
以上詳述したようにこの発明によれば、サンプリング周波数が異なる2つの放送素材を多重した信号がフレーム単位で編集された場合に、一方の放送素材についてのフレームの不連続によるノイズ発生を回避し得るフレーム補償装置及びフレーム補償方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明に係るフレーム補償装置が適用される放送番組送出システムの構成を示すブロック図である。
【0013】
図1において、ビデオサーバ11,12は予めオンエア用放送番組の素材データ(映像及び音声を含む)を記憶手段(図示せず)に格納しておくもので、バス13を通じてAPC14から与えられるオンエア指示信号に応じて、該当する素材データを記憶手段から読み出して選択的に再生して出力する。この再生データは、スイッチャー15によりマルチプレクサ16に選択的に導かれる。なお、この再生データは、非圧縮のデータである。
【0014】
また、スイッチャー15は、ビデオサーバ11,12の出力を入力し、APC14からの切替指示信号に応じて選択的にマルチプレクサ16に導出可能となっている。
【0015】
一方、マルチプレクサ16は、ビデオサーバ11,12の各出力の多重処理を行うものであるが、このマルチプレクサ16は、特に本発明に係るフレーム補償部17を搭載する。
【0016】
図2は、この発明の一実施形態とするフレーム補償部17の構成を示すブロック図である。
【0017】
このフレーム補償部17では、マルチプレクサ16中の映像・音声分離部(図示せず)により分離された音声信号が入力され、入力バッファ部171に一旦保持される。この入力バッファ部171に保持された音声信号は、編集点検出部172及び廃棄/補完処理部173にそれぞれ供給される。編集点検出部172は、5フレーム分の音声信号を入力し、自走フレームカウンタ174によりカウントされるフレーム番号と照合することにより、フレーム番号の不連続による編集点を検出する。この検出結果は、廃棄/補完処理部173に供給される。
【0018】
廃棄/補完処理部173は、補償テーブル1731を備えている。この補償テーブル1731には、図3に示すように、編集により不連続となるフレームの組み合わせを示す情報と、補償量(サンプル数1,0,−1)との対応関係を表すデータが記憶されている。ここでは、編集点が1フレームと2フレームとの間に存在する場合の例を示す。Aは1602サンプル、Bは1601サンプルのフレームを示し、後ろの数字は音声フレーム番号を示す。通常は、A1,B2,A3,B4,A5の5フレームで1周期となり、合計8008サンプルとなる。表の右側は、編集点の位置とどのフレームとどのフレームの間のサンプルを補償するかを示している。全ての場合について抽出すると全部で80通りとなる。
【0019】
廃棄/補完処理部173は、音声信号入力し、編集点検出部172による検出結果に応じた補償量を補償テーブル1731から読み出して、その補償量を入力された音声信号の編集点に加算して音声フレーム付け替え部175に出力する。
【0020】
音声フレーム付け替え部175は、自走フレームカウンタ174によりカウントされたフレーム番号に従って、廃棄/補完処理部173で補償された音声信号のフレーム番号を連続するように付け替えて、出力バッファ176に出力する。出力バッファ176は、音声フレーム付け替え部175の出力を格納し、適宜出力する。
【0021】
この出力バッファ176から出力された音声信号は、映像信号に多重される。
【0022】
次に、上記構成における動作について説明する。
ビデオサーバ11、12から出力される映像信号は、画面走査線数525本、フレーム周波数29.97Hzであり、そのフレーム同期信号は映像サンプリングクロック13.5MHzを水平サンプリング数858と、画面走査線数525によりカウントダウンして得られる。
【0023】
一方、ビデオサーバ11、12から出力される音声信号は、48kHzのサンプリングクロックが多用される。デジタル映像伝送に通常用いられるSDI信号形式では、映像信号の補助信号領域の一定位置に音声同期信号を重畳しているものの音声フレーム情報が含まれていないため、音声フレームの正確なタイミングを生成することができない。そこで、この発明では、音声サンプリングクロックが8008サンプル数周期毎に映像信号の5フレームと位相が合致することに着目する。
【0024】
映像信号に48kHzの音声信号を重畳するときは、5フレーム周期で1601または1602サンプルを重畳している。このとき、音声フレーム番号として1〜5の番号を付けている。1,3,5フレームが1602サンブルとなり、2,4フレームが1601サンプルとなる。
【0025】
ところで、映像信号を編集して任意のフレームで接続すると、音声フレームが不連続となり、5フレーム期間で8008サンプルが保てなくなり、音声用バッファがアンダーフローやオーバーフローを起こして音声ノイズが発生する。
【0026】
なお、以前は、雑音発生を防ぐために、大容量のバッファが必要であった。
【0027】
そこで、この発明では、編集を行っても音声フレームが不連続にならないようにするために、自走フレームカウンタ174を用いて、音声フレーム付け替え部175でフレーム番号が連続するように付け替える。編集されていなければ、5フレーム期間で8008サンプルは保たれる。編集点が存在すると8008+1または8008−1となるため、廃棄/補完処理部173にてサンプル数が足りないときは編集点で1サンプル補完し、多いときは編集点の1サンプルを捨てる処理を行う。
【0028】
図4は、フレーム補償部17の処理手順を示すフローチャートである。
フレーム補償部17は、入力バッファ部171に格納される音声信号を5フレーム分読み出して編集点検出部172及び廃棄/補完処理部173に入力し、編集点検出部172にて入力フレーム番号を検出する(ステップST4a)。そして、自走フレームカウンタ174によりカウントされるフレーム番号と比較してフレーム番号が連続しているか否かの判断を行う(ステップST4b)。
【0029】
ここで、不連続である場合(No)、編集点検出部172は不連続の旨とその位置を廃棄/補完処理部173に通知する。廃棄/補完処理部173は、編集点検出部172から通知される検出結果から編集点がA1、A3と不連続の場合に、対応する補償量(サンプル数1)を補償テーブル1731から読み出し(ステップST4c)、この補償量を入力した音声信号のフレーム番号1、2の編集点に加算する(ステップST4d)。
【0030】
また、編集点がB2、B4と不連続の場合に、廃棄/補完処理部173は対応する補償量(サンプル数−1)を補償テーブル1731から読み出し、この補償量を入力した音声信号のフレーム番号1、2のいずれかから廃棄する。
【0031】
一方、上記ステップST4bにおいて、連続していると判定された場合(Yes)、編集点検出部172は連続の旨を廃棄/補完処理部173に通知する。これにより、廃棄/補完処理部173は、入力された音声信号をそのまま音声フレーム付け替え部175に出力する(ステップST4e)。
【0032】
このように、編集点で音声サンプルの廃棄/補完処理を行うことにより、5フレーム期間で8008サンプルは保たれ、出力バッファ176のアンダーフローやオーバーフローを防ぐことができる。
【0033】
以上のように上記実施形態では、編集により不連続となるフレームの組み合わせを示す情報と、補償量との対応関係を表す補償テーブル1731を廃棄/補完処理部173に設けたことにより、編集点検出部172にて音声信号から不連続となるフレームの組み合わせ、つまり編集点を検出することで、廃棄/補完処理部173にて編集点検出部172からの検出結果に基づいて、補償テーブル1731から編集点に対応する補償量を読み出し、この補償量を音声信号の編集点に加算することで5フレームで8008サンプルを保て、かつフレーム番号が連続するように補償することができる。
【0034】
従って、マルチプレクサ16に入力される映像・音声信号がフレーム単位で編集されていても、簡単な制御で、音声信号に対しフレームの不連続によるノイズ発生を回避できる。
【0035】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えばデータ信号(文字、テキスト、画像)と音声信号とを多重する場合にも適用できる。また、サンプリング周波数48kHz以外の音声を扱う場合にも適用できる。さらに、音声以外の素材信号を扱う場合にも適用できる。
【0036】
また、図1は、2台のビデオサーバ11,12の出力を切り替えて出力する例を示したが、1台のビデオサーバで蓄積されている複数の素材を切り替えて出力する場合もあり、その場合はこの発明のフレーム補償部17をビデオサーバに内蔵することにより実現できる。
【0037】
すなわち、ビデオサーバでは、記憶手段から読み出し出力された再生データが、前述のマルチプレクサ内での処理と同様に、ビデオサーバ内の映像・音声分離手段によって音声信号が分離され、その音声信号に対しフレーム補償が行われる。
【0038】
また、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明に係るフレーム補償装置が適用される放送番組送出システムの構成を示すブロック図。
【図2】この発明の一実施形態とするフレーム補償部の構成を示すブロック図。
【図3】上記図2に示した補償テーブルの記憶内容の一例を示す図。
【図4】同実施形態におけるフレーム補償部の処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0040】
11,12…ビデオサーバ、13…バス、14…APC、15…スイッチャー、16…マルチプレクサ、17…フレーム補償部、171…入力バッファ部、172…編集点検出部、173…廃棄/補完処理部、174…自走フレームカウンタ、175…音声フレーム付け替え部、1731…補償テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送番組を構成し互いにサンプリング周波数が異なるフレーム構造でかつ非圧縮の第1の素材信号及び第2の素材信号を多重し、放送信号として送出する送出装置に用いられ、前記第1及び第2の素材信号を多重した信号に対し選択的にフレーム単位で編集が行われた場合に、この編集に応じたフレーム補償を行うフレーム補償装置であって、
前記第2の素材信号とフレーム位相が一致する前記第1の素材信号のフレーム数を単位長とし、この単位長の第1の素材信号を入力して、編集により不連続となるフレームの組み合わせを検出する検出手段と、
この検出手段で検出されたフレームの組み合わせから補償量を生成し、この補償量で前記第1の素材信号を補償する補償手段とを具備したことを特徴とするフレーム補償装置。
【請求項2】
前記補償手段は、編集により不連続となるフレームの組み合わせを示す情報と、前記補償量との対応関係を表す補償テーブルを格納する記憶手段を備え、前記検出手段による検出結果に基づいて、前記補償テーブルから対応する補償量を読み出して前記第1の素材信号の編集点に加算することを特徴とする請求項1記載のフレーム補償装置。
【請求項3】
前記第1の素材信号は音声信号であり、前記第2の素材信号は映像信号であることを特徴とする請求項1記載のフレーム補償装置。
【請求項4】
前記映像信号のフレームと位相が一致する前記音声信号のサンプル数が8008であるとき、前記補償手段は、前記検出手段による検出結果に基づいて、前記単位長の音声信号のサンプル数が8008になるように、前記音声信号中の編集点に前記補償量を加算することを特徴とする請求項3記載のフレーム補償装置。
【請求項5】
さらに、前記補償手段により補償された第1の素材信号に対し、不連続となるフレーム番号を連続するように付け替える付け替え手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のフレーム補償装置。
【請求項6】
放送番組を構成し互いにサンプリング周波数が異なるフレーム構造でかつ非圧縮の第1の素材信号及び第2の素材信号を多重し、放送信号として送出する送出装置に用いられ、前記第1及び第2の素材信号を多重した信号に対し選択的にフレーム単位で編集が行われた場合に、この編集に応じたフレーム補償を行うフレーム補償方法であって、
前記第2の素材信号とフレーム位相が一致する前記第1の素材信号のフレーム数を単位長とし、この単位長の第1の素材信号を入力して、編集により不連続となるフレームの組み合わせを検出し、
この検出されたフレームの組み合わせから補償量を生成し、この補償量で前記第1の素材信号を補償することを特徴とするフレーム補償方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−28223(P2010−28223A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184055(P2008−184055)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】