説明

フロック形成状態判定方法、フロック形成状態判定装置、凝集反応槽、pH調整槽、及び異常発生通報システム

【課題】凝集反応におけるフロック形成状態を簡単な方法で判定可能にする。
【解決手段】凝集反応槽3の水面より上方に、フロックまでの距離を検出するレーザ光によるフロック検出用センサ9を配置する。フロックまでの距離Lを検出し、十分短いサンプリング間隔(第1設定時間T)での検出距離の変化量ΔLを検出し、変化量ΔLが設定段差距離ΔL以上の時OFF信号、未満の時ON信号を出す。フロック形成が正常の場合、フロックは水中で不規則に移動するので、検出距離は大きな変化を繰り返し、変化量ΔLが設定段差距離ΔL以上になったり未満になったりし、OFF信号とON信号とを繰り返すので、フロック形成が正常と判定する。フロック形成不良の場合、微細なフロックが密集した状態となるので、レーザ光は常に水面又は水面近くのフロックで反射し、変化量ΔLは常にΔL未満となりON信号が連続するので、フロック形成が異常と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属水酸化物のフロックを形成させる凝集反応工程を有する金属含有排水処理設備でのフロック形成状態の正常・異常を判定するフロック形成状態判定方法、及びフロック形成状態判定装置、及び、前記フロック形成状態判定装置を備えた凝集反応槽、及び、前記凝集反応槽の前工程に設置されるpH調整槽、及び、凝集反応槽やpH調整槽における異常発生を通報する異常発生通報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛、マンガン、鉄その他の重金属を含有する金属含有排水の排水処理において、凝集沈殿法による排水処理は広く採用されている。この排水処理方法を採用する金属含有排水処理設備では、原水(金属含有排水)中の金属水酸化物をコロイド状に析出させ、凝集反応槽において前記金属水酸化物のフロックを形成させる。原水を処理して、汚濁物質の濃度を水質汚濁防止法で定められた排水基準以下に下げた処理水は、調整池などの公共水域に排出される。
【0003】
この種の排水処理設備において、凝集反応が正常に行われて処理排水の汚濁物質濃度が基準値以下となるようにするための排水処理システムが種々提案されている。
例えば、特許文献1(特開2005−193203「水処理システム」)は、凝集状態計測手段にて計測された被処理水の凝集状態とpH調整剤注入制御手段によるpH調整剤の注入状態とに従って、凝集剤の注入を制御するものであり、特に被処理水のpHが適正範囲から外れている場合には、pH調整剤注入制御手段における制御目標値を補正して被処理水のpHを適正化した後、凝集剤の注入を制御する、というものである。
この特許文献1における凝集状態計測手段(凝集センサ11)は、発光部10から第1の光ファイバ1を経て導いたレーザ光を微小領域Sに照射し、その微小領域Sにおける微小なコロイド粒子によって生じる散乱光を、微小領域Sに向けた第2の光ファイバ2を経て導き受光部20で受光する。凝集が進むと微小コロイド粒子の数が減るので、散乱光の強度が低下する。したがって、散乱光強度を測定することで、フロック形成状態を検知する、というものである(段落番号[0015])。
凝集センサの詳細は特許文献4(段落番号[0016]、[0017]、図2、図3など)に記載されている。
【0004】
特許文献2(特開2005−193204「水処理システム」)は、凝集反応槽に懸濁液における凝集フロックの状態を検出する凝集状態計測手段を設けると共に、固液分離処理水の水質を評価する水質評価手段を設け、要因判定手段にて凝集状態計測手段および水質評価手段によりそれぞれ求められる情報と対比して固液分離処理水の水質変動の要因を判定する。凝集状態計測手段(凝集センサ11)は引用文献1におけるものと同じである。
【0005】
特許文献3(特開2002−195947「凝集モニタリング装置」)は、レーザ光照射部3が第1の光ファイバ2を介してレーザ発振器1と接続し、散乱光受光部4が第2の光ファイバ5を介して光電変換回路6と接続して構成されており、レーザ発振器1から出力されたレーザ光がレーザ光照射部3から被測定流体(被処理水)中に照射され、被処理水中の粒子により散乱する散乱光を散乱光受光部4で受光して、光電変換回路6にて電気信号に変換した後、AM検波を行い、この検波後の信号を最低値検出回路8に取り込んで信号強度(散乱光強度)の最低値を検出する、というものである。
この特許文献3は、変動する散乱光強度の最低値は、液体中の微小コロイド粒子(未凝集のコロイド粒子)のみが存在する時の散乱光強度と見て、未凝集のコロイド粒子の粒子数を測定(すなわち凝集状態を測定)する(段落番号[0016]、[0030])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−193203「水処理システム」
【特許文献2】特開2005−193204「水処理システム」
【特許文献3】特開2002−195947「凝集モニタリング装置」
【特許文献4】特開2002−257715「粒子状態検出用プロープ」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の排水処理システムにおいてそれぞれ、凝集反応が正常に行われて処理排水の汚濁物質濃度が基準値以下となるようにするための方法が示されており、それぞれに有効な方法と思われるが、本発明は、工場の既存の金属含有排水処理設備を、市販の機器を利用して、比較的簡単な方式により、安価に、しかも、実際的に汚濁物質濃度を有効に管理することが可能な金属含有排水処理設備にしようとするものであり、そのような金属含有排水処理設備を実現可能にするためのフロック形成状態判定方法、及びフロック形成状態判定装置、及び、凝集反応槽、及び、異常発生通報システムを提供することを目的とする。
また、上記従来の凝集センサは排水に浸漬しているが、常時、排水処理を監視しようとしてセンサを排水に浸漬しておくと、センサ回りに汚れが付着し、センサ機能を果たさなくなってくる。しかし、センサを水面上に設置すると汚れが付着する問題は解決するが、水面の変動による誤動作を起す。そこで、本発明は、水面上から測定でき、かつ、水面の変動による誤動作を起さない方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する請求項1の発明は、金属水酸化物のフロックを形成させる凝集反応工程を有する金属含有排水処理設備でのフロック形成状態の正常・異常を判定するフロック形成状態判定方法であって、
レーザ光を水面に向けて照射しその水中のフロックでの反射光に基づき前記フロックまでの距離を検出することが可能なフロック検出用センサを金属含有排水処理設備の処理槽の水面より上方に配置し、このフロック検出用センサによりフロックまでの距離Lを第1設定時間Tの間隔毎にサンプリングして検出するとともに、この検出距離Lの前記第1設定時間T毎の変化量ΔLが設定段差距離ΔL以上である時にOFF信号、未満である時にON信号を発するようにし、その信号が第2設定時間内にON信号とOFF信号とを含む場合にフロック形成状態が正常、同じON信号又はOFF信号が前記第2設定時間以上続く場合にフロック形成状態が異常と判定することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、金属水酸化物のフロックを形成させる凝集反応工程を有する金属含有排水処理設備でのフロック形成状態の正常・異常を判定するフロック形成状態判定装置であって、
レーザ光を水面に向けて照射しその水中のフロックでの反射光に基づき前記フロックまでの距離を検出することが可能なフロック検出用センサを金属含有排水処理設備の処理槽の水面より上方に配置し、このフロック検出用センサは、フロックまでの距離Lを第1設定時間Tの間隔毎にサンプリングして検出するとともに、この検出距離Lの前記第1設定時間T毎の変化量ΔLが設定段差距離ΔL以上である時にOFF信号、未満である時にON信号を発する機能を有するものであり、
前記フロック検出用センサが発する信号が第2設定時間内にON信号とOFF信号とを含む場合にフロック形成状態が正常、同じON信号又はOFF信号が前記第2設定時間以上続く場合にフロック形成状態が異常と判定するフロック形成状態判定部を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、金属水酸化物のフロックを形成させる凝集反応工程を有する金属含有排水処理設備でのフロック形成状態の正常・異常を判定するフロック形成状態判定装置であって、
いずれも金属含有排水処理設備の処理槽の水面より上方に配置されてレーザ光である投射光を水面に向けて照射する投光部及び照射された投射光が水中のフロックで反射した反射光を受光する受光部と、受光部の出力に基づいてフロックまでの距離Lを第1設定時間Tの間隔毎にサンプリングして検出するフロック距離検出部と、このフロック距離検出部が検出した検出距離Lの前記第1設定時間T毎の変化量ΔLが設定段差距離ΔL以上である時にOFF信号、未満である時にON信号を発するON/OFF信号発生部とを備えたフロック検出用センサを備え、
前記フロック検出用センサのON/OFF信号発生部から出力された信号が第2設定時間内にON信号とOFF信号とを含む場合にフロック形成状態が正常、同じON信号又はOFF信号が前記第2設定時間以上続く場合にフロック形成状態が異常と判定するフロック形成状態判定部を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2又は3における処理槽が凝集反応槽である場合における前記フロック形成状態判定装置を備えた凝集反応槽であって、
凝集反応槽の上蓋の上に、凝集反応槽内への開口部を持つセンサ設置箱を設置するとともに、このセンサ設置箱内に前記フロック検出用センサを配置し、このセンサ設置箱の側壁の下部位置に換気孔を設け、天井部に換気塔を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項2又は3における処理槽が凝集反応槽である場合における前記フロック形成状態判定装置を備えた凝集反応槽であって、
凝集反応槽の上蓋の上に、凝集反応槽内への開口部を持つセンサ設置箱を設置するとともに、このセンサ設置箱内に前記フロック検出用センサを配置し、前記開口部の近傍で一端が凝集反応槽内に開口し他端が外部に通じる通気管を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項2又は3における処理槽が凝集反応槽である場合における前記フロック形成状態判定装置を備えた凝集反応槽であって、
フロック検出用センサを、上面から見て凝集反応槽における処理水を次の工程へ送出する送出口の近傍に配置するとともに、フロック検出用センサの直下位置領域を、凝集反応槽下層部のみを連通させる態様で他の領域から仕切る隔壁を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項2又は3における処理槽が凝集反応槽である場合における前記フロック形成状態判定装置を備えた凝集反応槽の前工程に設置されるpH調整槽であって、
pH調整槽内の被処理水のpHを測定するpH計及びこのpH計の測定値に応じてpH調整剤を注入するpH調整剤注入ポンプを備え、前記pH計が測定したpH値を記録するpH記録計を設け、このpH記録計は、測定したpH値が設定範囲内にあるか否かを判定するpH合否判定部を有することを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項2又は3における処理槽が凝集反応槽である場合における前記フロック形成状態判定装置を備えた凝集反応槽を有する金属含有排水処理設備に設けられるpH調整槽であって、
pH調整槽内の被処理水のpHを測定するpH計及びこのpH計の測定値に応じてpH調整剤を注入するpH調整剤注入ポンプを備え、前記pH計が測定したpH値を、時間を横軸として連続的に記録するpH記録計を設け、このpH記録計は、pHが周期的に変化する時に、記録されたpHの記録波形の周期幅を検出するとともに、検出した周期幅が第1設定周期幅以下である時はpH計の電極が清浄、周期幅が前記第1設定周期幅より長い第2設定周期幅以上である時に電極が汚れていると判定する電極汚れ判定部を有することを特徴とする。
【0016】
請求項9は、請求項8のpH調整槽が、pH計及びこのpH計の測定値に応じてpH調整剤を注入するpH調整剤注入ポンプを設けた凝集反応槽自体であることを特徴とする。
【0017】
請求項10の発明は、請求項2又は3における処理槽が凝集反応槽である場合における前記フロック形成状態判定装置を備えた凝集反応槽、及び、請求項7又は8のpH調整槽における異常を通報する異常発生通報システムであって、
請求項2又は3におけるフロック形成状態判定部を内蔵するシーケンサーと、このシーケンサーで制御される自動ダイヤル装置と、システム専用の固定電話機と、構内電話交換機とを備え、
前記シーケンサーは、請求項2又は3におけるフロック検出用センサからのON/OFF信号に基づいて前記フロック形成状態判定部がフロック形成状態不良と判定した時、及び/又は、請求項7又は8におけるpH記録計からpH異常信号又は電極汚れ信号が入力した時に、前記自動ダイヤル装置を制御して前記固定電話機にアクセスして、構内電話交換機を経由して、指定された担当者の携帯電話機に異常発生警報を発する自動通報処理部を内蔵していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1又は請求項2の発明において、フロック検出用センサはレーザ光を出射し、その反射光により水中のフロックまでの距離Lを第1設定時間Tの間隔毎にサンプリングして検出できる。
フロック形成状態を判定しようとする処理槽が凝集反応槽であるとして説明すると、凝集反応槽内の被処理水は攪拌されるので、凝集反応が正常に行われている場合、発生したフロックは水槽内を不規則に運動する。したがって、フロック検出用センサから出射されたレーザ光は、浅い層にあるフロックを照射したり、深い層にあるフロックを照射したりする。その時にフロック検出用センサがサンプリングして検出した検出距離(フロックまでの距離)Lの変化は、攪拌のために水面が上下している程度の緩やかな変化でなく、急激な変化となる(すなわち、十分短いサンプリング間隔である第1設定時間T毎の変化量ΔLが設定段差距離ΔL以上となる)。この時にOFF信号を発する。
また、フロックは不規則に運動するので、緩やかな変化の場合(すなわち、第1設定時間T毎の変化量ΔLが設定段差距離ΔL以下の場合)もあり、その時はON信号を発する。したがって、凝集反応が正常に行われている場合、その信号は第2設定時間内にON信号とOFF信号とを含むことになる。通常はONとOFFとを繰り返すパルス状の信号となる。このように、攪拌により水面が上下していても、第2設定時間内にON信号とOFF信号とを含む信号が発生していることを確認することで、凝集反応槽においてフロックが正常に形成されていると判定できる。
一方、フロック形成状態が不良の場合、フロックの粒が微細になり、この微細なフロックが密集した状態となるので、センサから出射したレーザ光は水面で反射するか、少なくとも水面近くの密集したフロックで反射する(レーザ光の径は約1.2mmであり、水面近くの密集したフロック間の隙間を透過することができない)。したがって、サンプリングして検出した検出距離Lの変化は小さく(すなわち、サンプリング間隔である第1設定時間T毎の変化量ΔLは設定段差距離ΔL未満となる)、ON信号を出す。
フロック形成状態が不良の場合、上記のように水面で反射するか水面近くで反射する状態が続き、センサの出力信号はON信号が少なくとも第2設定時間T以上続く連続ON状態の信号となる。シーケンサー10は、センサ9からのこの連続ON状態の信号に基づいてフロック形成状態異常と判定する。
なお、前記の通り、フロックは不規則に運動するので、OFF信号状態、すなわち変化量ΔLが設定段差距離ΔL以上である状態が第2設定時間T以上続くことは確率的に極めて少ないと考えられるので、OFF信号が第2設定時間T以上続く場合も何らかの異常と判定する。
なお、フロック形成状態を判定しようとする処理槽が、凝集反応槽でなく例えば凝集沈殿槽や中和槽である場合も同様である。
【0019】
凝集反応槽の上部に設置されるフロック検出用センサは、フロックからの反射光を受光する受光部を有するが、冬季の特に朝方などにおいて、センサ外面のガラスの受光面に結露が発生することがある。結露が生じると、フロックからの反射光が乱反射して誤検出する場合ある。
しかし、請求項4の凝集反応槽のように換気孔及び換気塔を設けることで、結露によって発生する誤検出を防止できる。
また、外気温が例えば10℃程度以下に低下した時に、凝集反応槽内の水温は例えば30℃などと高いので、水面より湯気が発生して、反射光(レーザービーム)が湯気が捉えてしまい、やはり誤検出が発生する場合がある。
しかし、請求項5凝集反応槽のように、通気管を設けるという簡単な対策で、湯気を除去することができ、湯気による誤検出を防止することができる。
【0020】
請求項6の凝集反応槽のように、フロック検出用センサの直下位置を、次の工程への送出口の近傍に配置し、かつ、下層部を除き隔壁で他の領域から仕切ることで、攪拌により発生した泡でフロック検出用センサに誤検出が発生することを防止できる。
【0021】
請求項8のpH調整槽は、pH記録計に記録されたpHの記録波形の周期幅を検出し、検出した周期幅がある定周期幅より短いかそれより長い設定時間幅より長いかで電極汚れを検出するものであり、極めてシンプルかつ安価に電極汚れを検出できる。
【0022】
請求項10の異常発生通報システムによれば、フロック形成状態判定装置、凝集反応槽、pH調整槽の各性能を有効に活かして、金属含有排水処理設備における異常を的確に判定した上で、異常発生を迅速に、かつ、確実に適切な担当者に通報して、対策を素早く講じることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明が対象とする金属含有排水処理設備の一例を説明する概略構成図である。
【図2】図1における凝集反応槽の概略構造を示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は図1のA−A断面図である。
【図3】図2におけるセンサ設置箱の近傍の拡大図である。
【図4】本発明のフロック形成状態判定装置の概略のブロック構成を説明する図(図はフロック形成状態が正常な場合で示している)である。
【図5】(イ)はフロック形成状態が正常な場合に、フロック検出用センサが正常なフロックを検出する動作状態を時系列で模式的に説明する図、(ロ)はその時にフロック検出用センサが出力する信号のパターンを説明する図である。
【図6】(イ)はフロック形成状態が不良である場合に、フロック検出用センサが水面近傍の微細なフロックを検出する動作状態を時系列で模式的に説明する図、(ロ)はその時にフロック検出用センサが出力する信号のパターンを説明する図である。
【図7】上記フロック形成状態判定装置、及びシーケンサーの概略構成を説明するブロック図である。
【図8】図1における5箇所に設けたpH計とこれらが接続されるpH記録計8を有するpH管理システムを説明する図である。
【図9】図8のpH記録計において、各pH計の電極汚れを判定する汚れ判定原理を説明する図で、(イ)は電極が清浄(正常)な場合、(ロ)は電極汚れが生じている場合を示す。
【図10】本発明の異常発生通報システムの概略構成を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施したフロック形成状態判定方法、フロック形成状態判定装置、凝集反応槽、pH調整槽、及び異常発生通報システムにについて、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は本発明の実施例で対象とする金属含有排水処理設備の要部を説明する概略構成図である。この金属含有排水処理設備は、亜鉛メッキ設備から排出される亜鉛排水を処理する亜鉛排水処理設備である。図1に示したものは、実際の亜鉛排水処理設備の要部であり、設備全体の中の原水槽11と、第1pH調整槽1と、第2pH調整槽2と、凝集反応槽3と、凝集沈殿槽4と、活性炭吸着塔5と、放流監視槽6である。
【0026】
この亜鉛排水処理設備は凝集沈殿法により亜鉛排水処理を行うものである。凝集沈殿法による亜鉛排水処理の概要を説明すると、亜鉛メッキ設備から排出される水洗水中には亜鉛がイオンの状態で存在する(溶けている)ので、まず、被処理水のpHをpH調整剤注入により適性範囲に調整して、亜鉛水酸化物の微小粒子としてコロイド状に析出させる。コロイド粒子のサイズは0.1〜10μmと微細であり沈降速度が遅いので、沈殿せずに水と共に流れてしまう。
そこで、凝集剤を用いた凝集反応により、コロイド(コロイド粒子)の集合体を作ってサイズを大きくする。コロイドはその表面が同符号の電荷に帯電しており、互いに反発して安定した分散状態にあるので、反対電荷の電解質溶液を加えてコロイド表面の電荷を中和させる。帯電していないコロイドは、分子間引力で互いに引き付け合うので、コロイドの集合体(小さな集合体)が作られる。さらに、凝集助剤の吸着架橋の作用によって、コロイドの小さな集合体を集めてさらに大きな集合体、すなわち1cm程度の大きさの塊りであるフロックを作る。フロックが正常に形成されると、沈降速度が速くなり、処理水に流されずに沈殿させることができ、粒子と水とを分離させることが容易になる。このように、析出したコロイド粒子が凝集反応により集められて、沈殿し易い、サイズの大きなフロックとなる。
【0027】
この実施例では、亜鉛メッキ設備から排出される水洗水を貯留する原水槽11に続く第1pH調整槽1及び第2pH調整槽2の2つのpH調整槽で苛性液(pH調整剤)を注入してpHを制御している。亜鉛水酸化物を生成させる適正pH範囲としてpH8〜10を設定し、その範囲に維持されるように調整する。なお、適正pH範囲はpH8〜10に限らず、種々の条件、状況により適切に設定するとよい。
【0028】
pHを調整された被処理水は凝集反応槽3に送られる。凝集反応槽3では例えば塩化第二鉄などの凝集剤が添加され、かつ、凝集助剤が添加される。
凝集反応槽3において凝集反応が正常に行われるということは、フロック形成が正常に行われていることである。すなわち、適正なpH調整により析出した亜鉛水酸化物のコロイド粒子が凝集剤、凝集助剤の作用で、コロイド粒子の集合体となり、さらにその集合体がまとめられて例えば径が1cm程度の塊であるフロックとなる場合が、フロック形成が正常な状態である。
しかし、凝集反応が正常に行われない場合がある。
pH調整槽1、2に苛性ソーダが注入されると、凝集反応槽3に入ってからだけでなく、第2pH調整槽2から凝集反応槽3までの過程においても、亜鉛水酸化物のコロイド粒子が生成されさらにコロイド粒子の集合体が生成されるが、第2pH調整槽において苛性ソータ(pH調整剤)が入り過ぎてpHが上昇した場合、第2pH調整槽2から凝集反応槽3までの過程であるいは凝集反応槽3内で、コロイド粒子の集合体が再溶解してしまい、フロックを形成しない、という場合がある。
また、pH調整槽1、2でのpH調整で被処理水が例えばpH11以上となって、被処理水がコロイド状態にならない(亜鉛水酸化物が粒子として析出しない)場合、フロックはもとより集合体もできない。
このようなフロック形成状態の異状は後述するフロック形成状態判定方法で検出する。
【0029】
凝集反応槽3でフロックを形成した被処理水は下部にある送出管から次の凝集沈殿槽4に送られる。
凝集沈殿槽4において、フロックは早く沈むので、処理水の流れに流されずに沈んで沈殿槽の底に堆積する。なお、堆積したフロックはスラッジとして処理される。
しかし、フロックにならなかったコロイド粒子や小さなフロックは、キャリーオーバーしてしまい処理水とともに次の活性炭吸着塔5に流れ込む。
活性炭吸着塔5では、それらのコロイド粒子や小さなフロックを砂や活性炭で捕集する。
汚濁物質と分離されたきれいな水だけが放流監視槽6に流れ込み、放流監視槽6においてpH計でpHが所定範囲にあることを確認する。こうして、汚濁物質を除去したきれいな水だけが処理水として公共水域に排出される。
【0030】
前記第1、第2の2つのpH調整槽1、2と、凝集反応槽3と、凝集沈殿槽4と、放流監視槽6の5箇所にpH計7が設置されている。5つのpH計7は、詳細は後述するpH記録計8に接続されている。
前記凝集反応槽3には、詳細は後述するフロック検出用センサ9が設置されている。
前記pH記録計8とフロック検出用センサ9は、詳細は後述するシーケンサー10に接続されている。
【0031】
前記凝集反応槽3は、図2(イ)、(ロ)に示すように、槽本体3aが上面から見て一辺約1mで高さ約1.2mの四角形をなし、その1つの角部の近傍における槽本体上部に、当該凝集反応槽3での処理水を次の凝集沈殿槽4へ送出する送出管12が接続され、その送出口12aのある角部と対角線上の反対側の角部の近傍に、攪拌プロペラにより被処理水を攪拌する攪拌機13を配置している。
前記送出口12aの近傍、すなわち攪拌機13と反対側の角部の近傍に、槽本体下層部のみを連通させる態様で角部側を他の領域から仕切る隔壁14を設けている。
図3にも示すように、凝集反応槽3の上蓋3bにおける、前記隔壁14で仕切られた角部の近傍にセンサ設置箱15が設置され、このセンサ設置箱15内に前記フロック検出用センサ9(9a)が収容されている。フロック検出用センサ9の投受光面から水面(静止している場合の水面)までの距離Lsは200mmにしている。
【0032】
凝集沈殿法による排水処理設備において、放流する処理排水の水質を確保するには、凝集反応槽3においてフロック形成が正常に行われていることが極めて重要である。そこで、凝集反応槽3においてフロック形成が正常に行われているか否かを判定するフロック形成状態判定装置を設けている。
このフロック形成状態判定装置について説明すると、図4に模式的に示すように、センサ本体9aと信号処理部9bとからなるフロック検出用センサ9と、このフロック検出用センサ9の出力に基づいてフロック形成状態が正常か異常かを判定する、シーケンサー10に内蔵された後述のフロック形成状態判定部27とを備えている。
フロック検出用センサ9とシーケンサー10内のフロック形成状態判定部27とはフロック形成状態判定装置17を構成する。
【0033】
フロック検出用センサ9は、図7に示すように、いずれも凝集反応槽の水面より上方に配置されてレーザ光である投射光を水面に向けて照射する投光部21及び照射された投射光が水中のフロックで反射した反射光を受光する受光部22と、受光部22の出力に基づいてフロックまでの距離Lを第1設定時間Tの間隔毎にサンプリングして検出するフロック距離検出部23と、このフロック距離検出部23が検出した検出距離Lの前記第1設定時間T毎の変化量ΔLが設定段差距離ΔL以上である時にOFF信号、未満である時にON信号を発するON/OFF信号発生部24とを備えている。
25は設定段差距離データを格納する設定段差距離メモリ、26は第1設定時間Tを格納する第1設定時間メモリである。
フロック検出用センサ9は、機器としては、投光部21と受光部22とを備えたセンサ本体9aと、このセンサ本体9aの受光部22の出力信号を処理する信号処理部9bとからなる。
【0034】
前記シーケンサー10は、前記フロック検出用センサ9のON/OFF信号発生部24から出力された信号が第2設定時間T内にON信号とOFF信号とを含む場合にフロック形成状態が正常、同じON信号又はOFF信号が前記第2設定時間T以上続く場合にフロック形成状態が異常と判定するフロック形成状態判定部27を備えている。28は第2設定時間データを格納する第2設定時間メモリである。
【0035】
上記のフロック形成状態判定装置17によるフロック形成状態の具体的判定要領について説明する。
図5はフロック形成状態が正常の場合に、フロック検出用センサ9がフロックを検出する動作状態を時系列で模式的に説明する図である。Sは水面、横軸は時間である。センサが第1設定時間Tのサンプリング間隔で図示のようにフロックを検出しているとする。
凝集反応槽3内の被処理水は攪拌されるので、凝集反応が正常に行われている場合、発生したフロックは水槽内を不規則に運動する。したがって、センサ9から出射されたレーザ光は、浅い層にあるフロックを照射したり、深い層にあるフロックを照射したりする。その時にセンサ9がサンプリングして検出した検出距離(フロックまでの距離)Lの変化は、攪拌のために水面が上下している程度の緩やかな変化でなく、急激な変化となる(すなわち、十分短いサンプリング間隔である第1設定時間T毎の変化量ΔLが設定段差距離ΔL以上となる)。この時にOFF信号を発する(ΔL、ΔL、ΔL、ΔL、ΔL)。
また、深さが近い位置のフロックを続けて検出する場合もあるので、検出距離Lの変化が緩やかな場合(すなわち、第1設定時間T毎の変化量ΔLが設定段差距離ΔL以下の場合)もあり、その時はON信号を発する(ΔL、ΔL、ΔL)。
したがって、凝集反応が正常に行われている場合、その信号は図5(ロ)に示すように、第2設定時間T内にON信号とOFF信号とを含むことになる。通常はONとOFFとを繰り返すパルス状の信号となる。
このように、攪拌により水面が上下していても、適切な長さに設定した第2設定時間T内にON信号とOFF信号とを含む信号が発生していることを確認することで、凝集反応槽においてフロックが正常に形成されていると判定できる。
【0036】
図6はフロック形成状態が不良の場合に、フロック検出用センサ9がフロックを検出する動作状態を時系列で模式的に説明する図である。
フロック形成状態が不良の場合、図示のようにフロックの粒が微細になり、この微細なフロックが密集した状態となるので、センサ9から出射したレーザ光は水面で反射するか、少なくとも水面近くの密集したフロックで反射する(レーザ光のビーム径は約1.2mmであり、水面近くの密集したフロック間の隙間を透過することができない)。したがって、センサが検出する検出距離Lの変化は常に小さい。したがって、サンプリング間隔で検出された、ある時点の検出距離とその時点から第1設定時間T後の他の時点の検出距離との差ΔLは、少なくとも設定段差距離ΔL未満となり、ON信号を出す。
フロック形成状態が不良の場合、上記のように水面で反射するか水面近くで反射する状態が続き、図6(ロ)に示すように、センサの出力信号はON信号が少なくとも第2設定時間T以上続く連続ON状態の信号となる(ΔL’、ΔL’、・・・(以下図示は省略))。シーケンサー10は、センサ9からのこの連続ON状態の信号に基づいてフロック形成状態異常と判定する。
なお、前記の通り、フロックは不規則に運動するので、OFF信号状態、すなわち変化量ΔLが設定段差距離ΔL以上である状態が第2設定時間T以上続くことは確率的に極めて少ないと考えられるので、OFF信号が第2設定時間T以上続く場合も何らかの異常と判定する。
上記の通り、攪拌により水面が上下動しても、その水面上下動の影響を受けずに、フロック形成状態を判定することができる。
なお、設定段差距離ΔL、第2設定時間Tは具体的状況に応じて適切に設定するが、実施例では、例えば設定段差距離ΔLを5mm、第2設定時間Tを7秒に設定して、フロック形成状態を適切に判定することができた。
【0037】
凝集沈殿法による排水処理設備において、各段階におけるpH管理も極めて重要である。図8及び前述した図1に示すように、第1、第2の2つのpH調整槽1、2と、凝集反応槽3と、凝集沈殿槽4と、放流監視槽6の5つの槽にそれぞれpH計7a、7b、7c、7d、7eが設置され、各pH計7(7a、…)は、各pH計が測定したpH値を記録するpH記録計8に接続されている。
このpH記録計は、各pH計7が測定したpH値を個別に、時間を横軸として連続的に記録するpH記録部8aと、各pH計7で測定したpH値が、適正pH範囲として設定した範囲内にあるか否かを判定するpH合否判定部を8bと、後述する電極汚れ判定部8cとを有している。pH計の電極を7sで示す。
第1pH調整槽1及び第2pH調整槽2はそれぞれpH調整剤注入ポンプ30を備え、その2つのpH調整槽1、2の各pH計7a、7bは、測定したpH値に応じて苛性ソーダなどのpH調整剤の注入を指示するpH指示調節計であり、pH調整剤注入ポンプ30を作動させて、pH調整剤注入を制御し、第1、第2pH調整槽1、2内の被処理水のpHを前述した適正pH範囲8〜10に維持する。
【0038】
前記電極汚れ判定部8cは特に、pH調整剤注入制御を行う第1、第2の2つのpH調整槽1、2のpH計7a、7bについて、電極汚れを判定するものである。
pH計が検出した槽内水のpH測定値がある設定値(pH)になると、注入ポンプ30が苛性液を注入するのでpHが上がる。しかし原水槽11からpHの低い原水が常時送り込まれてpHが低くなるので、再び苛性液を注入する、ということを繰り返してpH調整を行うので、pH記録計8が記録するpH値は周期的な変動をする。
電極が汚れてくると、pHの変動に対してpH計の反応が鈍ってくる。反応が鈍ると、pHが実際には適正値になってもpH計の測定値が適正値を達していないので、注入ポンプに対する停止の指示が遅れ、過剰に苛性液が添加されてしまい、実際のpHが適正pH範囲から外れてしまう(高くなってしまう)。これは凝集反応不良の原因となる。
そこで、前記電極汚れ判定部8cは、pHの変動に対するpH計の反応の遅速を検出して、電極汚れの有無を検出するというものであり、pH記録計8で記録されたpHの記録波形の周期幅を検出するとともに、検出した周期幅が第1設定周期幅以下である時はpH計の電極が清浄(正常)、周期幅が前記第1設定周期幅より長い第2設定周期幅以上である時に電極が汚れていると判定する構成である。この実施例では検出する周期幅として、pH記録波形においてpHがある設定値(図示例ではpH9)を超えている部分の時間幅を周期幅tとしている。
図9(イ)は電極が清浄(正常)な場合であり、周期幅tが短い。一方、 図9(ロ)は電極が限度を超えて汚れた場合であり、周期幅tが長くなる。実施例では例えばpH=9.0のレベルでの周期幅が第1設定周期幅(例えば20秒)より短い時に清浄(正常)、第2設定周期幅(例えば30秒)より長い時に電極汚れと判定している。
なお、実施例では第1pH調整槽1と第2pH調整槽2に設置したpH計の電極について電極汚れ判定を行っているが、この電極汚れ判定手段は、pH計を備えるとともにpH調整剤を間欠的に注入する手段を備えた槽であれば、そのpH計に適用することができる。
【0039】
ところで、凝集反応槽3において凝集反応が正常な範囲でも、亜鉛等のコロイド粒子が全て完全にフロック化されるとは限らず、通常、ごく一部は凝集沈殿槽4から次の活性炭吸着塔5に流れ出すが、コロイド粒子が活性炭に吸着されることで、最終的な処理排水の亜鉛濃度を規制値以下に抑えることができる。
しかし、活性炭吸着塔5において活性炭に吸着されたコロイド粒子が飽和状態になると、凝集反応槽3においてフロック形成状態が正常でも、じわじわと処理水中に亜鉛が析出し、亜鉛濃度の高い処理水を排出する恐れがある。
一方、凝集反応槽3において凝集反応不良が発生してフロックが十分に形成されなかった場合でも、凝集沈殿槽4から流れ出たコロイド粒子が、次の活性炭吸着塔5において活性炭に吸着されることで、最終的な処理排水の亜鉛濃度がそれ程高くならない場合もある。したがって、凝集反応槽3におけるフロック形成状態を正常に保つ管理とともに、放流監視槽6での監視も十分に行う必要がある。
【0040】
凝集反応槽3における凝集反応が異常の場合、又は、第1、第2pH調整槽1、2におけるpH異常の際に、それらの異常を通報する異常発生通報システムについて説明する。
図10に示すように、この異常発生通報システム35は、前述のシーケンサー10と、このシーケンサー10で制御される自動ダイヤル装置31と、システム専用の固定電話機32と、構内電話交換機33と、指定された例えば図示例では3人の担当者が持つ3つの携帯電話機34とからなっている。
前記の通り、シーケンサー10にはフロック検出用センサ9の出力、及び、pH記録計8の出力が入力される。このシーケンサー10は、前述したフロック形成状態判定部27を内蔵し、前記pH記録計8のpH合否判定部8b及び電極汚れ判定部8cからの判定結果の信号を受信する受信部28を内蔵し、それらからの信号に基づいて自動通報処理を行う自動通報処理部29を内蔵している。
このシーケンサー10は、フロック検出用センサ9からのON/OFF信号に基づいてフロック形成状態判定部27がフロック形成状態不良と判定した時、又は、pH記録計8からpH異常信号又は電極汚れ信号が入力した時、自動通報処理部29の自動通報プログラムが作動して自動ダイヤル装置31を制御し、専用の固定電話機32にアクセスして、構内電話交換機33を経由し、指定された担当者の3つの携帯電話機34a、34b、34cにローテーションで順次接続し、いずれかの携帯電話機が応答するまで、それを繰り返す。これにより、担当者が直ちに現場に出動し異常内容を確認して、対処することができる。なお、自動通報処理部29には、当番者選択スイッチ36の操作により前記ローテーションの順番が設定される。
【0041】
フロック検出用センサ9は、図3に示すように、凝集反応槽3の上蓋3bの上に設置した、凝集反応槽内への開口部15aを持つセンサ設置箱15内に配置されているが、冬季の特に朝方などにおいて、受光部に面したセンサ外面のガラスの受光面(投受光面(窓))に結露が発生することがある。結露が生じると、フロックからの反射光が乱反射して誤検出する場合ある。
そこで、同図に示すように、センサ設置箱15の側壁の下部位置に複数の換気孔15bを設け、かつ、天井部に換気塔15cを設けている。
この換気孔15b及び換気塔15cにより、センサ設置箱15の内外の気温差が小さくなり、フロック検出用センサ9の受光面に結露が生じることを防止でき、結露によって発生する誤検出を防止できる。
【0042】
外気温が例えば10℃程度以下に低下した時、凝集反応槽3内の水温は例えば30℃などと高いので、水面より湯気が発生し、センサ設置箱15内に入る。すると、受光部への反射光(レーザービーム)が湯気が捉えてしまい、やはり誤検出が発生する場合がある。
そこで、前記開口部15aの近傍で一端が凝集反応槽内に開口(開口部16a)し他端が外部に通じる通気管16を設けている。
このように、通気管16を設けるという簡単な対策で、湯気を除去することができ、湯気による誤検出を防止することができる。なお、図示は省略したが、通気管16の他端側(外部側)に送風ファンを取り付けるとよい。
【実施例2】
【0043】
上述した実施例は含有金属が亜鉛である亜鉛排水処理設備を対象として説明したが、亜鉛に限らず、マンガン、鉄、銅、ニッケル、クロムその他の金属を含有する金属含有排水処理設備を対象として適用することができる。
また、実施例では、金属含有排水のpH調整を、凝集反応槽3の前の別工程として設置した第1pH調整槽及び第2pH調整槽の2つのpH調整槽により行っているが、1つのpH調整槽であってもよいし、また、別工程とせずに凝集反応槽3自体でpH調整を行うことも可能である。
また、金属含有排水から金属水酸化物を析出させる手段として、実施例ではpH調整による方法を採用しているが、他の方法を採用することができる。
また、実施例ではフロック形成状態を判定しようとする対象の処理槽が凝集反応槽であるが、例えば凝集沈殿槽や中和槽などにおいてフロック形成状態の判定が必要になる場合にはそれらの処理槽にも適用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 第1pH調整槽
2 第2pH調整槽
3 凝集反応槽
3a 槽本体
3b 上蓋
4 凝集沈殿槽
5 活性炭吸着塔
6 放流監視槽
7(7a、7b、7c、7d、7e) pH計
7s 電極
8 pH記録計
8a pH記録部
8b pH合否判定部
8c 電極汚れ判定部
9 フロック検出用センサ
9a センサ本体
9b 信号処理部
10 シーケンサー
12 送出管
12a 送出口
13 攪拌機
14 隔壁
15 センサ設置箱
15a 開口部
15b 換気孔
15c 換気塔
16 通気管
16a 開口部
17 フロック形成状態判定装置
20 受信部
21 投光部
22 受光部
23 フロック距離検出部
24 ON/OFF信号発生部
25 設定段差距離メモリ
26 第1設定時間メモリ
27 フロック形成状態判定部
28 第2設定時間メモリ
29 自動通報処理部
30 pH調整剤注入ポンプ
31 自動ダイヤル装置
32 専用の固定電話機
33 構内電話交換機
34(34a、34b、34c) 携帯電話機
35 異常発生通報システム
第1設定時間(サンプリング間隔)
第2設定時間
L 検出距離(センサからフロックまでの距離)
ΔL (検出した検出距離のサンプリング間隔毎の)変化量
ΔL 設定段差距離
t 周期幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属水酸化物のフロックを形成させる凝集反応工程を有する金属含有排水処理設備でのフロック形成状態の正常・異常を判定するフロック形成状態判定方法であって、
レーザ光を水面に向けて照射しその水中のフロックでの反射光に基づき前記フロックまでの距離を検出することが可能なフロック検出用センサを金属含有排水処理設備の処理槽の水面より上方に配置し、このフロック検出用センサによりフロックまでの距離Lを第1設定時間Tの間隔毎にサンプリングして検出するとともに、この検出距離Lの前記第1設定時間T毎の変化量ΔLが設定段差距離ΔL以上である時にOFF信号、未満である時にON信号を発するようにし、その信号が第2設定時間内にON信号とOFF信号とを含む場合にフロック形成状態が正常、同じON信号又はOFF信号が前記第2設定時間以上続く場合にフロック形成状態が異常と判定することを特徴とするフロック形成状態判定方法。
【請求項2】
金属水酸化物のフロックを形成させる凝集反応工程を有する金属含有排水処理設備でのフロック形成状態の正常・異常を判定するフロック形成状態判定装置であって、
レーザ光を水面に向けて照射しその水中のフロックでの反射光に基づき前記フロックまでの距離を検出することが可能なフロック検出用センサを金属含有排水処理設備の処理槽の水面より上方に配置し、このフロック検出用センサは、フロックまでの距離Lを第1設定時間Tの間隔毎にサンプリングして検出するとともに、この検出距離Lの前記第1設定時間T毎の変化量ΔLが設定段差距離ΔL以上である時にOFF信号、未満である時にON信号を発する機能を有するものであり、
前記フロック検出用センサが発する信号が第2設定時間内にON信号とOFF信号とを含む場合にフロック形成状態が正常、同じON信号又はOFF信号が前記第2設定時間以上続く場合にフロック形成状態が異常と判定するフロック形成状態判定部を設けたことを特徴とするフロック形成状態判定装置。
【請求項3】
金属水酸化物のフロックを形成させる凝集反応工程を有する金属含有排水処理設備でのフロック形成状態の正常・異常を判定するフロック形成状態判定装置であって、
いずれも金属含有排水処理設備の処理槽の水面より上方に配置されてレーザ光である投射光を水面に向けて照射する投光部及び照射された投射光が水中のフロックで反射した反射光を受光する受光部と、受光部の出力に基づいてフロックまでの距離Lを第1設定時間Tの間隔毎にサンプリングして検出するフロック距離検出部と、このフロック距離検出部が検出した検出距離Lの前記第1設定時間T毎の変化量ΔLが設定段差距離ΔL以上である時にOFF信号、未満である時にON信号を発するON/OFF信号発生部とを備えたフロック検出用センサを備え、
前記フロック検出用センサのON/OFF信号発生部から出力された信号が第2設定時間内にON信号とOFF信号とを含む場合にフロック形成状態が正常、同じON信号又はOFF信号が前記第2設定時間以上続く場合にフロック形成状態が異常と判定するフロック形成状態判定部を備えたことを特徴とするフロック形成状態判定装置。

【請求項4】
請求項2又は3における処理槽が凝集反応槽である場合における前記フロック形成状態判定装置を備えた凝集反応槽であって、
凝集反応槽の上蓋の上に、凝集反応槽内への開口部を持つセンサ設置箱を設置するとともに、このセンサ設置箱内に前記フロック検出用センサを配置し、このセンサ設置箱の側壁の下部位置に換気孔を設け、天井部に換気塔を設けたことを特徴とする凝集反応槽。
【請求項5】
請求項2又は3における処理槽が凝集反応槽である場合における前記フロック形成状態判定装置を備えた凝集反応槽であって、
凝集反応槽の上蓋の上に、凝集反応槽内への開口部を持つセンサ設置箱を設置するとともに、このセンサ設置箱内に前記フロック検出用センサを配置し、前記開口部の近傍で一端が凝集反応槽内に開口し他端が外部に通じる通気管を設けたことを特徴とする凝集反応槽。
【請求項6】
請求項2又は3における処理槽が凝集反応槽である場合における前記フロック形成状態判定装置を備えた凝集反応槽であって、
フロック検出用センサを、上面から見て凝集反応槽における処理水を次の工程へ送出する送出口の近傍に配置するとともに、フロック検出用センサの直下位置領域を、凝集反応槽下層部のみを連通させる態様で他の領域から仕切る隔壁を設けたことを特徴とする凝集反応槽。
【請求項7】
請求項2又は3における処理槽が凝集反応槽である場合における前記フロック形成状態判定装置を備えた凝集反応槽の前工程に設置されるpH調整槽であって、
pH調整槽内の被処理水のpHを測定するpH計及びこのpH計の測定値に応じてpH調整剤を注入するpH調整剤注入ポンプを備え、前記pH計が測定したpH値を記録するpH記録計を設け、このpH記録計は、測定したpH値が設定範囲内にあるか否かを判定するpH合否判定部を有することを特徴とするpH調整槽。
【請求項8】
請求項2又は3における処理槽が凝集反応槽である場合における前記フロック形成状態判定装置を備えた凝集反応槽を有する金属含有排水処理設備に設けられるpH調整槽であって、
pH調整槽内の被処理水のpHを測定するpH計及びこのpH計の測定値に応じてpH調整剤を注入するpH調整剤注入ポンプを備え、前記pH計が測定したpH値を、時間を横軸として連続的に記録するpH記録計を設け、このpH記録計は、pHが周期的に変化する時に、記録されたpHの記録波形の周期幅を検出するとともに、検出した周期幅が第1設定周期幅以下である時はpH計の電極が清浄、周期幅が前記第1設定周期幅より長い第2設定周期幅以上である時に電極が汚れていると判定する電極汚れ判定部を有することを特徴とするpH調整槽。
【請求項9】
前記pH調整槽が、pH計及びこのpH計の測定値に応じてpH調整剤を注入するpH調整剤注入ポンプを設けた凝集反応槽自体であることを特徴とする請求項8記載のpH調整槽。
【請求項10】
請求項2又は3における処理槽が凝集反応槽である場合における前記フロック形成状態判定装置を備えた凝集反応槽、及び、請求項7又は8のpH調整槽における異常を通報する異常発生通報システムであって、
請求項2又は3におけるフロック形成状態判定部を内蔵するシーケンサーと、このシーケンサーで制御される自動ダイヤル装置と、システム専用の固定電話機と、構内電話交換機とを備え、
前記シーケンサーは、請求項2又は3におけるフロック検出用センサからのON/OFF信号に基づいて前記フロック形成状態判定部がフロック形成状態不良と判定した時、及び/又は、請求項7又は8におけるpH記録計からpH異常信号又は電極汚れ信号が入力した時に、前記自動ダイヤル装置を制御して前記固定電話機にアクセスして、構内電話交換機を経由して、指定された担当者の携帯電話機に異常発生警報を発する自動通報処理部を内蔵していることを特徴とする異常発生通報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−35152(P2012−35152A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174641(P2010−174641)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】