説明

ブチルヒドロキシアニソールの多形

ブチルヒドロキシアニソール(BHA)の新規な多形及びBHAの抗酸化特性を改善する方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的な酸化防止剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
この出願は、米国仮出願第60/492,135号(2003年8月1日出願)及び米国仮出願第60/505,672号(2003年9月24日出願)(内容は全体を参照することにより、ここに取り込む)に対する利益を主張する。
【0003】
多くの製品は、酸化可能基を含む物質を必然的に含むか、酸化可能基を含む物質で製造される。これらの物質は、保存中、比較的不安定であり、時間とともに劣化する。よって、保存安定性が増大した製品が強く求められている。従来の技術の問題点及び欠陥を考慮すると、それ故に化学的に安定した、1つ又はそれ以上の酸化感受性部分を含む製品を提供することが望ましい。
【0004】
ブチルヒドロキシアニソール(BHA)(2(3)−tert−ブチル−4−メトキシ−フェノール)は一般的かつ効果的な酸化防止剤である。BHAは、通常、その合成経路により、2つの異性体の混合物(2−tert−ブチル−4−メトキシ−フェノール及び3−tert−ブチル−4−メトキシ−フェノール)として市販されている。前者は市販されている混合物の主要な異性体であり、構造式(I)で表される。
【0005】
【化1】

この化合物の欠点のひとつは、特定の条件下においては酸化防止剤として望ましい信頼性に満たないことである。実際、BHAは、特定の製剤中及び/又は特定の条件下では、フリーラジカルの存在により感受性部分の酸化を引き起こすようである。そのような状況下、改良された酸化防止剤又は現在使用されている酸化防止剤の有効性を高める目的で改良された製剤化方法を見出すことは有利である。
【0006】
一般的に、BHAは、約90から93%の主要な異性体(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール)を含む。この異性体は二重螺旋構造状に結晶化する(フォームI)。従って、より有効な酸化防止剤を提供することが本発明の目的である。
本発明のさらなる目的は、より有効な酸化防止剤の製造方法を提供することである。
【発明の開示】
【0007】
第1の実施形態において、本発明は、六方配置で6つの分子の自己集合によって結晶充填が起こる2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールの新規な多形(フォームII)を提供する。
【0008】
他の実施形態において、本発明は、
(a)純粋な2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールを得、及び
(b)2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールのフォームIIの形成を導く条件下で、適切な溶媒から2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールを結晶化させることを含む2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールのフォームIIの製造方法を提供する。
【0009】
本発明は、さらに、フォームIIを含む2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールの混合物を提供する。他の実施形態では、少なくとも約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は約99%を超えるフォームIIを含む組成物を含む。
【0010】
他の実施形態では、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールの濃度が少なくとも約150mg/mLである炭化水素溶媒中で2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールのフォームIIを結晶化する。
【0011】
他の実施形態では、本発明は、
(a)BHAを得、及び
(b)2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールのフォームIIの形成を導く条件下で、適切な溶媒から2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールを結晶化させることを含む2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールのフォームIIの製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、さらに、
(a)2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールを炭化水素溶媒に混合し、
(b)溶液から2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールのフォームIIを結晶化させ、
(c)結晶化した生成物を集めることを含む2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールの抗酸化特性を改善する方法を提供する。
【0013】
他の実施形態では、結晶化した生成物を酸化可能部分を含む製剤と組み合わせるさらなる工程を含む。
他の実施形態で、本発明は、フォームIとフォームIIの混合物から2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールの純粋なフォームIIを結晶化させる方法を提供する。
【0014】
本発明は、さらに
(a)BHAを炭化水素溶媒と混合し、
(b)溶液からBHAを結晶化させ、及び
(c)結晶化した生成物を集めることを含むBHAの抗酸化特性を改善する方法を提供する。
【0015】
他の実施形態では、結晶化した生成物を、酸化可能部分を含む製剤と組み合わせるさらなる工程を含む。
ある実施形態では、結晶化した生成物は純粋なフォームIIからなる。他の実施形態では、結晶化した生成物は、フォームIIの量が50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%又はそれ以上である、フォームIIと二次的な異性体の混合物を含む。他の実施形態では、結晶化した生成物は、フォームIIの量が50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%又はそれ以上である、フォームI、フォームII及び二次的な異性体の混合物を含む。
【0016】
本発明は、さらに、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールのフォームII多形を含む組成物を提供する。1つの観点では、組成物は医薬組成物である。ある実施形態では、医薬組成物は、さらに、限定されないが、アミノ、フェノール系、ヒドロキシアミノ、アルデヒド、アルケン、ベンジル、イソキサゾール、メルカプト、スルフォン又はスルフォキシド基を含む1つ又はそれ以上の酸化可能な官能基を有する活性薬剤成分(API)を含む。その医薬組成物は、さらに1つ又はそれ以上の医薬的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含んでいてもよい。他の実施形態では、担体、希釈剤又は賦形剤は、限定されないが、アミノ、フェノール系、ヒドロキシアミノ、アルデヒド、アルケン、ベンジル、イソキサゾール、メルカプト、スルフォン又はスルフォキシド基を含む1つ又はそれ以上の酸化可能官能基を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】フォームIの単結晶X線回折図である。
【図2】フォームIのDSCサーモグラムである。
【図3】フォームIIの単結晶X線回折図である。
【図4】フォームIIのDSCサーモグラムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ここで、用語「BHA」及び「ブチルヒドロキシアニソール」は、市販品において通常見出されるような主要な異性体(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール)及び二次的な異性体(3−tert−ブチル−4−メトキシフェノール)の双方の混合物を指す。主要な異性体と二次的な異性体の重量%は変化させることができるが、一般的には、主要な異性体が約80から95%(w/w)の範囲内、例えば、主要な異性体が90から93%(w/w)である。
【0019】
化合物の結晶状態は、いくつかの結晶パラメータにより明確に表わすことができる。単位格子定数、空間群及びその単位格子の起源に関する化合物における全ての原子の原子配置である。これらのパラメータは、単結晶X線回折による実験的に測定される。化合物は1種以上の結晶のタイプを形成することができる。これらの種々の結晶形は多形と呼ばれる。2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールの2つの多形が存在することが見い出されている。この発見は2つの別々の単結晶X線回折により確認された。フォームIはブチルヒドロキシアニソール(BHA)中の主要な異性体である。フォームIIは、酸化防止剤として、フォームIよりも優れた特性を有する新規な多形である。
【0020】
単結晶X線解析がフォームIの特徴づけをするために用いられた。その結晶構造は2つの絡み合った四重螺旋構造であると測定された。この多形(フォームI)は、頭から尻尾まで、OH…エーテル水素結合によって(via OH…ether hydrogen bonds)組み立てられる。これらの水素結合における酸素原子間の距離(O…O)は、約2.707、2.710及び2.740オングストロームと測定された。この二重螺旋構造は、さらに、外側に配置されるtert−ブチル基による疎水性の外表面によって特徴づけられる。そのような開いている立体配置は、それぞれの螺旋の末端を、フリーラジカルからの攻撃に影響されやすいものにする。2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールのフォームIIの発見は、結晶構造に基づく時期尚早なラジカル形成のリスクをなくすものであり、有用な革新である。
【0021】
本発明は、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールの新規な多形(フォームII)を提供する。単結晶X線回折が、フォームIIの特徴付けをするために用いられた。この結晶構造は閉鎖している六量体(closed hexamer)であると測定された。この多形(フォームII)はフォームIと同様に、OH…エーテル水素結合によって組み立てられる。これらの水素結合の酸素原子間の距離は、約2.778と測定された。フォームIIの閉鎖性は、ラジカルの形成を防止する。従って、本発明は、自己酸化癖を大幅に抑えた酸化防止剤の製造方法を提供する。
【0022】
2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールは、結晶化によってBHAを精製することにより得ることができ、あるいは純粋な形態に合成することができる。ある実施形態では、フォームIIの製造は、炭化水素溶媒から2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールを結晶化させることにより行うことができる。他の実施形態では、その溶媒は溶媒の混合物である。他の実施形態では、その溶媒は温n−ペンタン又はn−ヘプタン(例えば、約40℃)である。溶液中の2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールの濃度は、通常約50から約300mg/mLであり、特に約100から約250mg/mLであり、より詳細には約150から約200mg/mLであり、例えば、約150mg/mLである。
【0023】
また、フォームI及びフォームIIの混合物は、純粋なフォームIよりも優れた酸化防止剤として使用することができる。例えば、95%(w/w)のフォームIIとの混合物、又は90%(w/w)のフォームIIとの混合物、又は85、80、75、70、65、60、55、50、40、30、20もしくは10%(w/w)のフォームIIとの混合物は、酸化防止に使用することができる。他の実施形態では、フォームII(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール)及び二次的な異性体(3−tert−ブチル−4−メトキシフェノール)の混合物は、BHAよりも優れた酸化防止剤として用いることができる。例えば、95%(w/w)のフォームIIとの混合物、又は90%(w/w)のフォームIIとの混合物、又は85、80、75、70、65、60、55、50、40、30、20もしくは10%(w/w)のフォームIIとの混合物は、酸化防止に使用できる。他の実施形態では、フォームII、フォームI及び二次的な異性体(3−tert−ブチル−4−メトキシフェノール)の混合物はBHAよりも優れた酸化防止剤として用いることができる。
【0024】
他の実施形態では、本発明は、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールのフォームIIの形態におけるBHAの重量(w/w)が少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、95又は99%である組成物を含む。他の実施形態では、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールのフォームIIの形態における重量(w/w)が5、4、3、2又は1%以下のBHAを含む組成物は、本発明からは特に除外してもよい。
【0025】
2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールの酸化防止特性は、サンプルのいくらか又は全てをフォームIIの結晶に変換することにより改善することができる。これは、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールを炭化水素溶媒(例えば、n−ペンタン又はn−ヘプタン)と、少なくとも約150mg/mLの濃度で溶質を溶解するように混合することにより成し遂げられる。溶解時に、フォームIIは、温溶媒から結晶化させることができ、その結晶を、当業者に公知の種々の方法により集めることができる。他の実施形態では、フォームIIは、フォームI結晶の採取物にフォームIIの種結晶を加えることにより製造することができる。フォームIの結晶は、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールの高い蒸気圧の助けをかりて、自発的にフォームIIに変換する。そのようなフォームII結晶は、適量で、酸化可能な製剤又は部分に加えてもよい。酸化防止剤の適切な量は、特定用途に基づいて、0.001から5%(w/w)又はより詳細には0.01から0.1%(w/w)と変化させてもよい。フォームIIの酸化防止活性は、溶解時又はそのような酸化可能な官能基の存在下での非晶質状態への変換時に開始する。フォームIIの閉鎖している六量体結晶構造は、溶解又は非晶質状態への変換を介して結晶構造が壊されるまで、分子を損なわないよう維持する、シールドとしての役割を果たす。
【0026】
多くの組成物は、防腐剤又は保護剤として、BHA又は他の酸化防止剤を含む。一般に、医薬組成物及び医薬は、薬物の貯蔵期間を延ばす手段として酸化防止剤を組み入れる。他の実施形態では、フォームIIは、酸化しやすい1つ又はそれ以上の成分を含む医薬組成物又は医薬に、酸化防止剤として用いられている。BHAは、一般に腐敗しやすい多くの食品(例えば、野菜、果物など)の貯蔵期間を延ばすために食品添加剤として使用されている。他の実施形態では、フォームIIは、食品防腐剤(例えば、スプレー、コーティング)として使用されている。また、酸化防止剤は、ポリマー構造においても使用されている。他の実施形態では、フォームIIはポリマー構造及び混合物中で、酸化防止剤として用いられている。他の実施形態では、フォームIIは、防腐剤として、化粧品、ゴム及び石油製品に使われている。
【0027】
本発明の結晶化合物は、同様に処理された2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールを含まない同じ組成物と比べ、著しく酸化活性が低いことを示している。
本発明は、さらに、実施例を用いて説明するが、この記載は本発明の範囲を制限するものではない。
【0028】
分析方法
サンプルのDSC解析を、Advantage for QW-シリーズ、バージョン1.0.0.78、Thermal Advantage Release2.0(2001 TA Instruments-Water LLC)を用いているQ1000示差走査熱量計(TA Instruments,ニューキャッスル,DE,U.S.A.)を使って行った。また、使用された解析ソフトウェアは、Windows(登録商標)95/95/2000/NT用のUniversal Analysis 2000、バージョン3.1E、Build 3.1.0.40(2001 TA Instruments-Water LLC)であった。
【0029】
DSC解析に使用された浄化ガスは乾燥窒素であり、参照物質は圧着された空のアルミニウムパンであり、サンプルのパージは50mL/分とした。
サンプルのDSC解析は、サンプルを圧着して密閉されたアルミニウムパン中に載置して行った。開始温度は通常20℃で、10℃/分の割合で加熱し、終了温度を200℃とした。
【0030】
サンプルの単結晶X線回折パターンは、制御ソフトウェアとしてRINT Rapid Control Software,Rigaku Rapid/XRD,バージョン1.0.0(1999 Rigaku Co.)を使用しているD/Max Rapid、Contact(Rigaku/MSC,The Woodlands,TX,U.S.A.)を用いて得た。また、使用された解析ソフトウェアはRINT Rapid表示ソフトウェア、バージョン1.18(Rigaku/MSC)及びJADE XRD Pattern Processing、バージョン5.0及び6.0(1995-2002,Materials Data,Inc.)であった。
【0031】
その単結晶XRD解析のための取得パラメータは以下のとおりである。ソースはK線が1.5406AのCu、x-yステージは手動、コリメータのサイズは0.3mm、毛細管(Charles Supper Company,Natick,MA,U.S.A.)は0.3mm ID、反射型を使用、X線管への電力は46kV、X線管への電流は40mA、オメガ軸は1°/分の速度で0から5°の範囲で振動、ファイ軸は2°/ 秒の速度で360°の角度で回転、0.3mmコリメータ、収集時間60分、気温は室温、暖房器具は不使用であった。サンプルはホウ素リッチの毛細ガラス管の中でX線源にあてられた。
【0032】
また、解析パラメータは以下のとおりである。インテグレーション2シータの範囲は2から60°、インテグレーションカイの範囲は0から360°、カイ切片の数は1、使用された刻み幅は0.02、インテグレーションユティリティはシリント(cylint)であり、標準化を使用、ダークカウントは8、オメガ補正値は180及びカイとファイとの補正値は0であった。
【0033】
ピーク強度はサンプルによって(例えば、結晶中の不純物などによって)変化しうるため、回折図におけるピークの相対強度は必ずしもその単結晶XRDパターンに限定されるものではない。さらに、それぞれのピークの角度は、約+/−0.1°、好ましくは+/−0.05°で変化しうる。また、パターン全体又はパターンのほとんどのピークは、器具やオペレーターによって、較正や設定の違い及び他の変化のため、約+/−0.1°で変化することがある。図、実施例、その他ここで記録されている全ての単結晶XRDピークは、約±0.1°2シータの誤差で記録されている。
【0034】
単結晶X線データはBulker SMART-APEX CCD回折メーター(M. J. Zaworotko,Department of Chemistry,サウス・フロリダ大学)によって集められた。格子パラメータは、最小二乗法により測定された。反射データは、SAINTプログラムを用いてまとめられた。構造は直接法により解析され、SHELXTL(Sheldrick,G.M. SHELXTL,Release 5.03; Siemens Analytical X-ray Instruments Inc.: Madison,WI)プログラムを用いて、フルマトリクス最小二乗法で精密化された。
【0035】
ここでの単結晶XRDデータのために、本発明の両多形は、2シータ角度ピークのいずれかの1つ、いずれかの2つ、いずれかの3つ、いずれかの4つ、いずれかの5つ、いずれかの6つ、いずれかの7つ、いずれかの8つ又はそれ以上の2シータ角度ピークによっても特徴付けることができる。いずれかの1つ、2、3つ、4つ、5つ又は6つのDSC遷移も本発明の多形を特徴づけるのに用いることができる。単結晶XRDピーク及びDSC遷移のさまざまな組み合わせでも、特徴づけるのに用いることができる。単結晶X線回折データも多形を特徴づけるのに用いることができる。
【0036】
実施例1
BHAの主要な異性体の分離
BHAは、主要な異性体2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール及び二次的な異性体3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールからなる。全ての多形/結晶の研究は、二次的な要異性体からの分離後の2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールにおいて行われている。分離は、温かいn-ヘプタンからの結晶化により行われた。n-ペンタンのような他の炭化水素溶媒も2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールを分離するのに使われた。
【0037】
実施例2
フォームIの単結晶X線回折
純粋な2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールを得る際、単結晶XRD分析のために結晶を準備した。フォームIはn-ヘプタン及びn-ペンタンから結晶化することにより作った。フォームIの結晶は、フォームIIが形成された溶液よりも低濃度(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール150mg/mLより薄い)の溶液から形成した。単結晶X線解析のために、溶媒のゆっくりした蒸発によって、長いロッドを得た。バイアル中で、その形状は、結晶状態によって(例えば、濃度、温度など)、綿の玉又は分離した棒のように見えるかもしれない。フィームIは、約61℃で吸熱転移を有し、そして計測密度は1.158g/cm3であった。
【0038】
単結晶XRD回折図は、フォームIの結晶構造を特徴づけるのに用いることができるピークを有しており、5.09、6.31、6.97、13.99、14.87、15.35、15.93、16.37、17.43、18.09、18.89、19.29、20.49、21.03、22.21及び23.71又は図1のいずれかの他のピークの2シータ角ピークの1つ、あるいはいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、いずれか5つ、いずれか6つ、いずれか7つ又は7つ以上のいずれかの組み合わせをも含む。
【0039】
フォームIの単結晶データ:C11H16O2、M=180.24、三斜晶系、空間群P-1; a=6.3179(11)オングストローム、b=14.364(3)オングストローム、c=17.960(3)オングストローム、α=74.636(3)度、β=80.608(4)度、γ=86.767(3)度、V=1550.5(5)立方オングストローム、T=100(2)K、Z=6、μ=(Mo-Kα)=0.078mm-1、Dc=1.158Mg m-3、λ=0.71073A、F(000)=588、2θmax=28.24度、9728反射と計測された、6805ユニーク(Rint=0.0320)。352パラメータに対する最終残余は、R1=0.0547、I>2σ(I) 及びR1=0.0871に対しwR2=0.1403、全ての6805データに対しwR2=0.1618。
【0040】
フォームIの示差走査熱量測定
採集されたサンプルの2.0760mgを、蓋付の圧着されたアルミニウムDSCパンに配置した。DSCサーモグラム(図2)の結果は、強度が約136J/gで、約61℃にて吸熱転移を示している。
【0041】
実施例3
フォームII多形の製造方法
n-ペンタンの中の2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールの溶液を、濃度約150mg/mLで調製し、約40℃に加熱した。次いで、その溶液を冷却した。冷却中、大きな固体の塊の形状に結晶化した。光学顕微鏡(倍率50×)で見ると、得られた結晶の塊から繊維組織が伸びているのが分かる。しかし、単結晶XRD(図3)は、純粋なフォームIIと一致しており、それは、フォームIIがフォームIで観察されたものと類似した繊維組織様形態で存在し得ることを示唆している。フォームIIは、約64℃で吸熱転移を有することが分かった。計測密度は1.136g/cm3である。
【0042】
単結晶XRD回折は、フォームIIの結晶構造を特徴付けるのに用いることができるピークを有しており、7.25、10.29、12.57、14.55、17.83、19.29、20.61、21.89、25.31、28.39及び31.09又は図3のいずれかの他のピークの2シータ角ピークの1つ、あるいはいずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、いずれか5つ、いずれか6つ、いずれか7つ又は7つ以上のいずれかの組み合わせをも含む。
【0043】
フォームIIの単結晶データ:C11H16O2、M=180.24、三角形、空間群R=-3; a=24.2612(11)オングストローム、b=24.2612(11)オングストローム、c=9.3049(8)オングストローム、γ=120度、V=4743.1(5)立方オングストローム、T=100(2)K、Z=18、μ(Mo-Kα)=0.076mm-1、Dc=1.136Mg m-3、λ=0.71073A、F(000)=1746、2θmax=28.30度、10131反射と計測された、2504ユニーク(Rint=0.0600)。130パラメータに対する最終残余は、R1=0.0435、I>2σ(I) 及びR1=0.0552に対しwR2=0.1185、全ての2504データに対しwR2=0.1269。
【0044】
フォームIIの示差走査熱量測定
採集されたサンプルの1.0540mgを、蓋付の圧着されたアルミニウムDSCパンに載置した。DSCサーモグラムの結果(図4)は、強度約114J/gで、約64℃にて吸熱転移を示している。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールフォームIIを含む組成物。
【請求項2】
2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールフォームIをさらに含む請求項1の組成物。
【請求項3】
3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールをさらに含む請求項1の組成物。
【請求項4】
2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールフォームI及び3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールをさらに含む請求項1の組成物。
【請求項5】
組成物が医薬組成物である請求項1の組成物。
【請求項6】
組成物がポリマー構造又は混合物である請求項1の組成物。
【請求項7】
組成物が食品防腐剤である請求項1の組成物。
【請求項8】
(a)該多形は、2シータ角で表わしたピークを含む単結晶X線回折パターンにより特徴づけられ、
(i)該X線回折パターンが、7.25、14.55及び19.29にピークを含み、
(ii)該X線回折パターンが、7.25、10.29及び17.83にピークを含み、
(iii)該X線回折パターンが、14.55、19.29及び20.61にピークを含み、
(iv)該X線回折パターンが、7.25及び14.55にピークを含み、
(v)該X線回折パターンが、19.29及び20.61にピークを含み、
(vi)該X線回折パターンが、7.25にピークを含み、
(vii)該X線回折パターンが、14.55にピークを含み、
(viii)該X線回折パターンが、20.61にピークを含み、
(ix)該X線回折パターンが、7.25、10.29、14.55及び20.61にピークを含み、又は
(x)該X線回折パターンが、7.25、14.55、19.29、20.61及び25.31にピークを含み
(b)前記多形は、単結晶X線パラメータにより特徴づけられ、
(i)a=24.2612(11)オングストローム、b=24.2612(11)オングストローム、c=9.3049(8)オングストローム、γ=120°、
(ii)空間群R-3; a=24.2612(11)オングストローム、b=24.2612(11)オングストローム、c=9.3049(8)オングストローム、γ=120°、V=4743.1(5)立方オングストローム、又は
(iii)空間群R-3; a=24.2612(11)オングストローム、b=24.2612(11)オングストローム、c=9.3049(8)オングストローム、γ=120°、V=4743.1(5)立方オングストローム、Z=18、Dc =1.136 Mg m-3、又は
(c)前記多形は、DSC解析による観察で64℃での吸熱転移により特徴づけられる、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールの多形。
【請求項9】
2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールフォームIIからなる組成物。
【請求項10】
(a)純粋な2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールを得、及び
(b)2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールフォームIIの形成を導く条件下で、適切な溶媒から2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールを結晶化させることを含む2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールフォームIIの製造方法。
【請求項11】
溶媒がn-ヘプタン、又はn-ペンタンである請求項10の方法。
【請求項12】
溶媒が温n-ヘプタン又は温n-ペンタンである請求項10の方法。
【請求項13】
条件が、少なくとも約150mg/mLの2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール濃度であることを含む請求項10の方法。
【請求項14】
(a)BHAを得、及び
(b)2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールフォームIIの形成を導く条件下で、適切な溶媒から2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールを結晶化することを含む2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールフォームIIの製造方法。
【請求項15】
(a)2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールを炭化水素溶媒と混合し、
(b)溶液から2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールのフォームIIを結晶化させ、及び
(c)該結晶化物を集めることを含む2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールの抗酸化特性を改善する方法。
【請求項16】
結晶化物を、酸化可能部分を含む製剤に添加することをさらに含む請求項15の方法。
【請求項17】
(a)BHAを炭化水素溶媒と混合し、
(b)溶液からBHAを結晶化させ、
(c)該結晶化物を集めることを含むBHAの抗酸化特性を改善する方法。
【請求項18】
該結晶化物を、酸化可能部分を含む製剤に添加することをさらに含む請求項17の方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−501187(P2007−501187A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522042(P2006−522042)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/024418
【国際公開番号】WO2005/011588
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(505036065)トランスフォーム・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】TRANSFORM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】