説明

ブラシレス交流発電機

【課題】 整流器の故障を防止すると共に、整流器の端子とこの端子を挟持する突起部との接触不良による発熱を防止することができるブラシレス交流発電機を提供すること。
【解決手段】 このブラシレス交流発電機は、回転軸11の外周側に配置されると共に、前記回転軸11の軸方向に向けて突出した端子142を有する整流器14と、前記回転軸11の外周面に沿って配置されると共に、互いに対向する面で前記端子142を挟持する突起部212を有する複数の短絡サポート部材21と、前記端子142を挟持する一対の突起部212をこれらの両表面より挟締するためのリテーナ26とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレス交流発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機などの電源に使われるブラシレス交流発電機は、小型軽量であること、信頼性が高いことなどが要求される。特許文献1記載のブラシレス交流発電機では(以下、括弧内の符号は特許文献1における各要素の符号を示す。)、回転軸(7)の円周を囲むように励磁ロ−タ(1)が配置され、励磁ロ−タ(1)の内側に整流器(2)が配置されている。整流器(2)の端子(2b)を端子サポ−ト(10)で保持するように構成することで、コイルボビン(6)は端子(2b)を保持する役目から解放される。これにより、回転軸(7)の回転により3個の端子(2b)に加わる遠心力は円周方向に等分角に配置された端子サポ−ト(10)で相殺されて釣合い、コイルボビン(6)が破壊される懸念がなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2589509号公報(段落[0009]、[0010]、図1及び図2など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のブラシレス交流発電機によれば、コイルボビンが破壊される懸念がなくなり、確かに信頼性は非常に高いものとなった。しかしながら、本発明者らの知見によれば、次のような新たな課題が案出された。
【0005】
ブラシレス交流発電機では、一般的な産業用に使われる場合には、回転軸の回転数が2000〜4000rpm程度であるが、航空機などの電源に使われる場合には、小型化による出力不足を補うために、回転軸の回転数が12000rpm程度の高速回転となる。このため、航空機などの電源に使われるブラシレス交流発電機では、端子サポ−ト(10)における整流器(2)の端子(2b)を挟持する突起部(13a〜13e)が遠心力により外周方向に膨らむ。特に、端子サポ−ト(10)自体が導電性を有する短絡部材として機能することから、端子サポ−ト(10)の材質として比較的柔らかな銅が選ばれる。このため、突起部(13a〜13e)の膨らみは大きく、端子(2b)に曲げモーメントが加わり、整流器(2)における端子(2b)の基部付近に亀裂が生じるおそれがある。整流器(2)にこのような亀裂が生じると、その周囲の潤滑油が亀裂を介して整流器(2)内に侵入し、整流器(2)の故障の原因となる。なお、特許文献1の図3では、符号(15a)の絶縁性のひもが端子(2b)を挟持する一対の突起部(13a〜13e)の周囲を巻締めていることから、結果的に突起部(13a〜13e)が遠心力により外周方向に膨らむことをある程度抑制し得るとも考えられる。しかし、突起部(13a〜13e)が外周方向に少しでも膨らむことで、ひも(15a)と突起部(13a〜13e)とが擦れてひも(15a)が切れてしまう。絶縁性のひも(15a)が切れると、整流器(2)の故障の原因となるばかりか、端子サポ−ト(10)の短絡不良の原因ともなる。
【0006】
また、特許文献1記載のブラシレス交流発電機では、一対の突起部(13a〜13e)間に整流器(2)の端子(2b)を挟持し、この挟持した部分をねじ(11)とナット(12)より締め付けている構成であるが、回転軸の回転により端子(2b)を挟持する一対の突起部(13a〜13e)が離間しようとして突起部(13a〜13e)と整流器(2)の端子(2b)との接触が不十分となって接触抵抗が大きくなり、発熱の原因となるおそれがある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、整流器の故障を防止すると共に、整流器の端子とこの端子を挟持する突起部との接触不良による発熱を防止することができるブラシレス交流発電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るブラシレス交流発電機は、回転軸の外周側に配置されると共に、前記回転軸の軸方向と平行するように突出した端子を有する整流器と、前記回転軸の外周面に沿って配置されると共に、互いに対向する面で前記端子を挟持する突起部を端部に有する複数の短絡サポート部材と、前記端子を挟持する一対の短絡サポート部材の突起部を、当該一対の短絡サポート部材の突起部の両表面より前記端子と共に挟締するためのリテーナとを具備する。
本発明では、回転軸が回転したときに短絡サポート部材に遠心力が加わり、一対の短絡サポート部材の突起部が離間して短絡サポート部材が外周に膨らみ、突起部は外周方向に動こうとするが、リテーナが一対の短絡サポート部材の突起部をこれらの両表面より挟締するので、一対の短絡サポート部材の突起部どうしが離間することはなく、短絡サポート部材の外周への膨らみや突起部の外周方向への動きが規制される。これにより、一対の短絡サポート部材の突起部によって挟持された端子に曲げモーメントが加わることもなくなり、整流器の故障が防止される。
また、回転軸が回転したときに、上記のように一対の短絡サポート部材の突起部どうしが離間することはなくなるので、突起部と整流器の端子との接触が不十分となることはなくなる。これにより、突起部と整流器の端子との間で接触不良によって電気抵抗が大きくなることはなく、これを原因とする発熱は防止される。
【0009】
本発明に係るブラシレス交流発電機は、前記端子、前記一対の短絡サポート部材の突起部及び前記リテーナには、それぞれ、前記端子、前記一対の短絡サポート部材の突起部及び前記リテーナを貫通するように貫通孔が設けられ、前記貫通孔を介して前記リテーナの両表面より前記端子、前記一対の短絡サポート部材の突起部及び前記リテーナを挟締する挟締部材をさらに具備するように構成してもよい。
本発明では、挟締部材が貫通孔を介してリテーナの両表面より端子、一対の短絡サポート部材の突起部及びリテーナを挟締するように構成しているので、端子及び一対の短絡サポート部材の突起部との挟締ばかりでなく、リテーナによる挟締も一つの挟締部材によって構成でき、部品点数を削減すること及びこれらの組み立てを少ない工程で行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、整流器の端子の破壊を防止すると共に、整流器の端子とこの端子を挟持する突起部との接触不良による発熱を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るブラシレス交流発電機の概略的な回路構成図である。
【図2】図1に示した整流器の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るブラシレス交流発電機の構成を示す断面図である。
【図4】図3の部分分解斜視図である。
【図5】図4の組立状態を示す斜視図である。
【図6】図4の断面図である。
【図7】図3の部分断面図である。
【図8】本発明の作用効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1に示すブラシレス交流発電機1は、例えば3相交流電源として航空機に実装される。航空機のエンジンの軸に連結された回転軸11には、回転軸11の軸方向に沿って、永久磁石からなるロータ12、巻線からなるエキサイタロータ13、全波整流用の整流器14、巻線からなるメインロータ15などが回転軸11と一体的に回転するように配置されている。
回転軸11の外周には、ロータ12と対応する位置に巻線からなるステータ16、エキサイタロータ13と対応する位置に巻線からなるエキサイタステータ17、メインロータ15と対応する位置に巻線からなるメインステータ18が配置されている。
GCU(Generator Controll Unit)19は、負荷20側に供給される電源の電圧とステータ16に供給される電源の周波数(回転軸11の回転数)とを比較し、エキサイタステータ17に供給する電流を制御し、負荷20側に供給される電源の電圧を一定にする。
エキサイタロータ13に供給された電流は、整流器14により整流されてメインロータ15に供給され、メインステータ18より負荷20側に電源が供給される。
【0013】
図2に示すように、整流器14は、整流器本体141と、整流器本体141の一方の面より突き出た端子142とを有する。端子142に先端には平板状の挟持面143が設けられており、この挟持面143には1個の貫通孔144が設けられている。
【0014】
図3に示すように、回転軸11の外周側にはこのような整流器14が6個配置されている。回転軸11の外周に沿って固定された3本の短絡サポート部材21によって3個の整流器14の端子142(挟持面143)が挟持されている。各短絡サポート部材21は、長さが等しく、これら3本の短絡サポート部材21によって回転軸11の一周を取り囲んでいる。これら短絡サポート部材21より外側で回転軸11の外周に沿って固定された3個の短絡サポート部材22によって残りの3個の整流器14の端子142(挟持面143)が挟持されている。各短絡サポート部材22も、長さが等しく、これら3本の短絡サポート部材22によって回転軸11の一周を取り囲んでいる。
【0015】
短絡サポート部材21及び22は、例えば銅やアルミニウムなどの電気抵抗の小さな金属からなり、短絡サポート部材21は、絶縁スリーブ23を介して回転軸11に固定され、短絡サポート部材22は、固定用の支柱24を介して絶縁スリーブ23に固定されている。短絡サポート部材22の外周は、コイルボビン25が配置されている。
図4〜図6に示すように、各短絡サポート部材21は、両端部に外周に向けて突起する突起部212を有する。突起部212は、例えば短絡サポート部材21を折り曲げて構成される。隣接する突起部212は、互いに対向する面で端子142を挟持する。各突起部212における、端子142の貫通孔144に対応する位置には、貫通孔213が設けられている。
同様に、各短絡サポート部材22は、図7に示すように、両端部に内周に向けて突起する突起部222を有する。隣接する突起部222は、互いに対向する面で端子142を挟持し、また各突起部222にも同様の貫通孔223が設けられている。
【0016】
リテーナ26は、端子142を挟持する一対の突起部212(222)をこれらの両表面より挟締するための、すなわち挟んで締めるための部材である。リテーナ26は、短絡サポート部材21、22を構成する金属よりも硬い金属、例えばステンレスや鉄といった鉄鋼などからなり、例えば平板のステンレスをU字形状となるように折り曲げて構成される。
リテーナ26における、端子142の貫通孔144、突起部212、222の貫通孔213、223に対応する位置には、貫通孔261が設けられている。すなわち、端子142、一対の突起部212(222)及びリテーナ26には、それぞれ、これらを貫通するように貫通孔144、213、223、261が設けられている。
挟締部材としてのボルト271及びナット272は、貫通孔144、213、223、261を介してリテーナ26の両表面より端子142、一対の突起部212(222)及びリテーナ26を挟締する。これにより、端子142、一対の突起部212(222)及びリテーナ26が一体的に固定される。
なお、挟締部材としては、端子、一対の突起部及びリテーナを挟締可能であれば、リベットなど他の締結手段であっても良い。
【0017】
以上のように構成されたブラシレス交流発電機1では、図8に示すように、仮にリテーナ26がないとすると回転軸11が回転したときに短絡サポート部材21に遠心力が加わり、一対の突起部212が離間して短絡サポート部材21が外周に膨らみ、突起部212は外周方向に動こうとする。突起部212が外周方向に動くと、一体の突起部212により挟持された整流器14の端子142に対して外周方向に曲げモーメントMが加わり、例えば整流器14における端子142の基部付近に亀裂を生じ、整流器14の故障の原因となる。
しかし、図4〜図6に示したように、リテーナ26が一対の突起部212をこれらの両表面より挟締するので、一対の突起部212どうしが離間することはなく、短絡サポート部材21の外周への膨らみや突起部212の外周方向への動きが規制されることになる。これにより、一対の突起部212によって挟持された端子142に曲げモーメントが加わることもなくなり、整流器14の故障が防止される。
また、一対の突起部212どうしが離間すると、突起部212と整流器14の端子142との接触部分が離れてこの部分における電気抵抗が大きくなり発熱を生じる。この発熱はエネルギー損となるばかりか整流器14の故障の原因ともなる。したがって、リテーナ26が一対の突起部212をこれらの両表面より挟締し、一対の突起部212どうしが離間することがなくことで、突起部212と整流器14の端子142との接触部分の電気的接続が確実に維持され、この部分における発熱は防止される。
短絡サポート部材22における一対の突起部222についてもリテーナ26によって挟締していることで、同様の作用効果を奏する。
【0018】
ここで、リテーナ26のうち、折り曲げた部分を折り曲げ領域、一対の突起部212の一方の表面を覆う部分を第1の表面被覆領域、一対の突起部212の他方の表面を覆う部分を第2の表面被覆領域とする。
第1及び第2の表面被覆領域は、それぞれ同一の大きさであることが好ましく、それぞれの突起部212の表面の全面を覆うことが好ましいが、突起部212の表面の全面を覆うものではなく、一部を覆う構成であってもよい。第1及び第2の表面被覆領域は、突起部212の表面よりはみ出るような構成であってももちろん構わない。
折り曲げ領域並びに第1及び第2の表面被覆領域の下端(短絡サポート部材本体に近い側の端)は、短絡サポート部材21における突起部212の折り曲げ部分(短絡サポート部材本体に近い位置)にできる限り近い方が好ましく、折り曲げ部分に接触乃至接触に近い状態がより好ましい。これにより、回転軸11の回転時に短絡サポート部材21の膨らみをより効果的に抑制できる。つまり、この下端が突起部212の折り曲げ部分より高くなるに従い、突起部212においてリテーナ26により挟締されない領域が生じ、その領域は回転軸11の回転による短絡サポート部材21の膨らみの原因となるからである。
【0019】
U字形状のリテーナ26は、一対の突起部212の、整流器14が配置された側とは反対側より着脱可能となるように、一対の突起部143を挟締することが好ましい。一対の突起部143に対するリテーナ26の着脱が整流器14が配置された側よりも容易に行うことができ、メンテナンスの作業をより簡単に行うことができる。
また、既に説明した特許文献1の図3では、絶縁性のひも(15a)が切れたときには、それを交換するには全体を分解する必要があり、非常に手間のかかる作業となるが、上記構成のリテーナ26によれば作業性が遥かに良いことが分かる。
【0020】
リテーナ26の材質や形状などについては、上記の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲で様々な形態があり、それらはこの発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0021】
1…ブラシレス交流発電機、11…回転軸、14…整流器、142…端子、21…短絡サポート部材、212…突起部、26…リテーナ、144、213、223、261…貫通孔、271…ボルト、272…ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の外周側に配置されると共に、前記回転軸の軸方向と平行するように突出した端子を有する整流器と、
前記回転軸の外周面に沿って配置されると共に、互いに対向する面で前記端子を挟持する突起部を端部に有する複数の短絡サポート部材と、
前記端子を挟持する一対の短絡サポート部材の突起部を、当該一対の短絡サポート部材の突起部の両表面より前記端子と共に挟締するためのリテーナと
を具備するブラシレス交流発電機。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシレス交流発電機であって、
前記端子、前記一対の短絡サポート部材の突起部及び前記リテーナには、それぞれ、前記端子、前記一対の短絡サポート部材の突起部及び前記リテーナを貫通するように貫通孔が設けられ、
前記貫通孔を介して前記リテーナの両表面より前記端子、前記一対の短絡サポート部材の突起部及び前記リテーナを挟締する挟締部材
を具備するブラシレス交流発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−38866(P2013−38866A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171500(P2011−171500)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】