説明

ブルーヘイズの評価方法とブルーへイズ評価装置

【課題】近赤外線遮蔽材料微粒子分散体に太陽光等が当たったときに青白色に変色するブルーヘイズを直接評価できる方法を提供する。
【解決手段】積分球4に標準反射板を取付けかつ測定試料を取付けない状態で光源1から光を球状空間内に入射させて反射光の分光データを得るブランク透過光強度測定工程と、積分球にライトトラップ部品6を取付けかつ測定試料2を取り付けた状態で光源から光を球状空間内に入射させて散乱光の分光データを得る拡散透過光強度測定工程と、各分光データに基づき拡散透過光強度とブランク透過光強度の波長毎の比をそれぞれ演算して波長毎の拡散透過率を得る拡散透過率演算工程と、波長360nmから500nm間の拡散透過率から測定試料のブルーへイズを評価する評価工程を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光領域において透明で、近赤外線領域に吸収がある近赤外線遮蔽材料微粒子分散体の評価方法に係り、特に、この分散体に太陽光等が照射されたときに青白色に変色する現象(以後、ブルーヘイズと称する)が発生し易いか否かについて事前に評価できるブルーヘイズの評価方法とブルーへイズ評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物や輸送機器等の窓等に使用される遮光部材として、可視光領域から近赤外線領域に吸収があるカーボンブラックやチタンブラック等の無機顔料、アニリンブラック等の有機顔料等の黒色系顔料を含有する遮光フィルムや、アルミ等の金属を蒸着したハーフミラータイプの遮光部材が知られている。これ等材料は、彩度が低く色調は黒色系であるものの、意匠性や実用性の面から黒色系の色調が好まれることが多いため多用されている。
【0003】
また、建築物や輸送機器等の窓等に使用される遮光部材として、上述した黒色系顔料や金属蒸着膜の他に、1000nm程度の近赤外線を選択的に吸収する特性を有する6ホウ化物の微粒子分散膜(例えば、特許文献1、2参照)や、1000nm程度の近赤外線を選択的に吸収する特性を有し、380nm〜780nmの可視光領域を透過する特性を有するタングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子を含有する近赤外線遮蔽材料微粒子分散体(特許文献3参照)も提案されている。
【0004】
そして、可視光領域を透過する特性を有し、近赤外線を選択的に吸収する特性を有する近赤外線遮蔽材料微粒子分散膜や近赤外線遮蔽材料微粒子分散体は、可視光領域を透過する特性を有することからヘイズを評価することが必要となり、その評価方法として、試料の透明性を測定し、濁度(曇度)を表す方法が用いられている。この濁度(曇度)については、近赤外線遮蔽材料微粒子分散体等評価試料における拡散透過光の、全光線透過光に対する割合から求められており、具体的には、ヘイズメーターで上記濁度(曇度)が測定されている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
ところで、近赤外線遮蔽材料微粒子分散膜や近赤外線遮蔽材料微粒子分散体においては、これ等分散膜や分散体に太陽光等が照射されたときに青白色に変色する現象(ブルーヘイズ)を生ずることが分かってきた。
【0006】
しかし、このブルーヘイズの発生原因については把握されておらず、しかも、ブルーへイズがどの程度発生するかを直接評価する方法も存在しないことから問題となってきている。例えば、ヘイズが低く透明性が高い分散体について、太陽光等が照射されたときに青白く変色してしまう分散体と青白く変色しない分散体とを区別することは不可能であった。
【0007】
そして、ブルーヘイズが発生する近赤外線遮蔽材料微粒子分散膜あるいは近赤外線遮蔽材料微粒子分散体(以下、上記分散膜も分散体の範疇に含ませる)を車のフロントガラス等に用いた場合、太陽光を受けると青白く変色して視界不良となるため安全上問題となることが懸念されている。また、建材用の窓ガラス等ではブルーヘイズの発生により美観を損ねてしまい、プラズマディスプレイパネル等においてはブルーヘイズの発生によりコントラストを大きく低下させ、鮮やかさや見易さを損ねてしまう問題が懸念される。
【特許文献1】特開2000−96034号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2000−72484号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2006−10759号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2000−211063号公報(段落0015)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、近赤外線遮蔽材料微粒子分散体に太陽光やスポットライトが当たったときに青白色に変色するブルーヘイズを直接評価できる方法とブルーへイズ評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明者は、建材用の近赤外線遮蔽材料等に太陽光やスポットライトが当たったときに青白色に変色するブルーヘイズの現象について、その発生原因から調査を行った。
【0010】
通常のヘイズは、入射光が媒体中のフィラー等により散乱されることに起因しており、フィラーの粒子径が200nmよりも大きいときには、幾何学散乱またはミー散乱により400nm〜780nmの可視光線領域の光を散乱して曇りガラスのようになることが知られており、このヘイズは従来のヘイズメーターにより測定できるものであった。
【0011】
他方、粒子径が200nm以下になると、幾何学散乱またはミー散乱は低減し、散乱の大部分は散乱係数が下記式(1)で定義されるレイリー散乱に従うことが知られている。
【0012】
S=[16π56/3λ4]・[(m2−1)/(m2+2)]2・[m] (1)
[但し、上記式(1)中、Sは散乱係数、λは波長、rは粒子径、m=n/n、nは基質の屈折率、および、nは分散物質の屈折率である]
上記レイリー散乱は、光の波長よりも小さいサイズの粒子による光の散乱で、透明な液体や固体中でも起きるが典型的な現象は気体中の散乱である。因みに、太陽光が大気で散乱されて空が青く見える現象はレイリー散乱によるものとして知られている。
【0013】
そして、上記レイリー散乱は式(1)から波長の4乗に反比例するため、固体中においても波長の短い青い光を多く散乱して青白色に変色させることが推測される。従って、本発明者は、これがブルーヘイズ発生の原因であると推定した。このレイリー散乱領域では、式(1)から、散乱光は粒子径の6乗に比例するため、粒子径が小さくなることに伴いレイリー散乱が低減して透明性は向上する。
【0014】
しかし、上記ブルーヘイズは、従来のヘイズメーター(特許文献4参照)では直接測定することができないため、本発明者は、フィラーの粒径が200nm以下である複数の試料(近赤外線遮蔽材料微粒子分散体)を作製し、これ等試料に光を当てたときの透過光の成分として直線入射光と散乱光とに着目し、かつ、波長毎の拡散透過率を求めることによりブルーヘイズを直接評価できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、請求項1に係る発明は、
球状本体内面が拡散反射性を有し、かつ、測定試料が取り付けられる第一開口部、標準反射板またはライトトラップ部品が取り付けられる第二開口部、受光器が取り付けられる第三開口部を球状本体外面に有する積分球を用いて、近赤外線遮蔽材料微粒子分散体のブルーへイズを評価する方法において、
上記積分球の第二開口部に標準反射板を取り付け、第一開口部に測定試料を取り付けない状態で外部光源からの直線光を上記第一開口部を介し球状空間内に入射させると共に、標準反射板で反射された反射光を上記受光器で受光し、かつ、分光器により分光して上記反射光の分光データを得るブランク透過光強度測定工程と、
上記積分球の第二開口部にライトトラップ部品を取り付け、第一開口部に測定試料を取り付けた状態で外部光源からの直線光を上記測定試料と第一開口部を介し球状空間内に入射させると共に、ライトトラップ部品でトラップされた光以外の散乱光を上記受光器で受光し、かつ、分光器により分光して上記散乱光の分光データを得る拡散透過光強度測定工程と、
保存された上記ブランク透過光強度と拡散透過光強度の各分光データに基づき、拡散透過光強度とブランク透過光強度の波長毎の比をそれぞれ演算して、波長毎の拡散透過率を得る拡散透過率演算工程と、
波長毎の拡散透過率から、測定試料である近赤外線遮蔽材料微粒子分散体のブルーへイズを評価する評価工程、
を具備することを特徴とし、
また、請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の発明に係るブルーへイズの評価方法において、
上記拡散透過率の波長360nmから500nm間における極大値から、ブルーへイズの大きさを評価することを特徴とするものである。
【0016】
次に、請求項3に係る発明は、
請求項1または2に記載の評価方法に用いられるブルーヘイズ評価装置において、
球状本体内面が拡散反射性を有し、かつ、測定試料が取り付けられる第一開口部、標準反射板またはライトトラップ部品が取り付けられる第二開口部、受光器が取り付けられる第三開口部を球状本体外面に有する積分球と、
上記第一開口部を介し球状空間内に入射される直線光を出射する光源と、
上記受光器に取り付けられかつ受光された反射光または散乱光を分光する分光器と、
上記分光器に接続されかつ分光された反射光または散乱光の分光データを保存するデータ保存手段と、
保存された上記ブランク透過光強度と拡散透過光強度の各分光データから、拡散透過光強度とブランク透過光強度の波長毎の比をそれぞれ演算して波長毎の拡散透過率を得る演算手段、
を具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るブルーへイズの評価方法は、積分球の第二開口部に標準反射板を取り付け、第一開口部に測定試料を取り付けない状態で外部光源からの直線光を上記第一開口部を介し球状空間内に入射させると共に、標準反射板で反射された反射光を上記受光器で受光し、かつ、分光器により分光して上記反射光の分光データを得るブランク透過光強度測定工程と、上記積分球の第二開口部にライトトラップ部品を取り付け、第一開口部に測定試料を取り付けた状態で外部光源からの直線光を上記測定試料と第一開口部を介し球状空間内に入射させると共に、ライトトラップ部品でトラップされた光以外の散乱光を上記受光器で受光し、かつ、分光器により分光して上記散乱光の分光データを得る拡散透過光強度測定工程と、保存された上記ブランク透過光強度と拡散透過光強度の各分光データに基づき、拡散透過光強度とブランク透過光強度の波長毎の比をそれぞれ演算して、波長毎の拡散透過率を得る拡散透過率演算工程と、波長毎の拡散透過率から、測定試料である近赤外線遮蔽材料微粒子分散体のブルーへイズを評価する評価工程、を具備することを特徴としている。
【0018】
従って、波長毎の拡散透過率から近赤外線遮蔽材料微粒子分散体のブルーへイズを直接評価することができるため、車のフロントガラス等に適用される近赤外線遮蔽材料微粒子分散体、建材用の窓ガラス等に適用される近赤外線遮蔽材料微粒子分散体あるいはプラズマディスプレイパネル等表示装置に適用される近赤外線遮蔽材料微粒子分散体について、ブルーへイズ発生の有無やその大きさを事前に予測することができる効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1および図2は本発明のブルーヘイズ評価装置の原理を示す説明図である。
【0021】
まず、本発明に係るブルーヘイズ評価装置は、図1および図2に示すように球状本体内面が拡散反射性を有しかつ測定試料2が取り付けられる第一開口部(図示せず)、標準反射板5またはライトトラップ部品6が取り付けられる第二開口部(図示せず)、受光器3が取り付けられる第三開口部(図示せず)を球状本体外面に有する積分球4と、上記第一開口部を介し球状空間内に入射される直線光を出射する光源1と、上記受光器3に取り付けられかつ受光された反射光または散乱光を分光する分光器(図示せず)と、上記分光器3に接続されかつ分光された反射光または散乱光の分光データを保存するデータ保存手段(図示せず)と、保存された上記ブランク透過光強度と拡散透過光強度の各分光データから拡散透過光強度とブランク透過光強度の波長毎の比をそれぞれ演算して波長毎の拡散透過率を得る演算手段(図示せず)を具備することを特徴としている。
【0022】
ここで、球状本体外面に第一、第二および第三開口部(図示せず)を有する積分球4は、球状本体内面に硫酸バリウム若しくはスペクトラロン(SPECTRALON:登録商標)等が塗布されて拡散反射性を有するもので、標準反射板5への入射角は、標準側、対照側とも10°であればよい。また、上記受光器3としては、例えば、光電子倍増管(紫外・可視域)、冷却硫化鉛(近赤外域)を使用したものを用いることができる。また、受光器3に取り付けられる分光器(図示せず)については、紫外・可視域の波長測定範囲、測光正確さ(±0.002Abs)が必要である。
【0023】
次に、球状空間内に入射される直線光を出射する光源1としては、例えば、紫外域は重水素ランプ、可視・近赤外域は50Wハロゲンランプが適用される。
【0024】
また、標準反射板5には、例えば材質がスペクトラロン(SPECTRALON:登録商標)の白板を用いることができ、上記ライトトラップ部品6には、入射された直線光を反射させずにトラップする機能が必要で、例えば、入射された直線光をほぼ完全に吸収するダークボックスが用いられる。
【0025】
そして、このブルーヘイズ評価装置を用いて、測定試料である近赤外線遮蔽材料微粒子分散体のブルーへイズを評価するには、ブランク透過光強度測定工程と、拡散透過光強度測定工程と、拡散透過率演算工程と、評価工程の各工程を要する。
【0026】
まず、上記ブランク透過光強度測定工程においては、図1に示すように積分球4の第二開口部に標準反射板5を取り付け、第一開口部に測定試料を取り付けない状態で外部光源1からの直線光を第一開口部を介し球状空間内に入射させると共に、標準反射板5で反射された反射光を受光器3で受光し、かつ、受光器3に取り付けられた分光器(図示せず)により分光して上記反射光の分光データを得る。
【0027】
次に、上記拡散透過光強度測定工程においては、図2に示すように積分球4の第二開口部にライトトラップ部品6を取り付け、第一開口部に測定試料2を取り付けた状態で外部光源1からの直線光を測定試料2と第一開口部を介し球状空間内に入射させると共に、ライトトラップ部品6でトラップされた光以外の散乱光を上記受光器3で受光し、かつ、受光器3に取り付けられた分光器(図示せず)により分光して散乱光の分光データを得る。
【0028】
そして、上記拡散透過率演算工程において、データ保存手段(図示せず)により保存されたブランク透過光強度と拡散透過光強度の各分光データに基づき、演算手段(図示せず)により拡散透過光強度とブランク透過光強度の波長毎の比をそれぞれ演算して波長毎の拡散透過率を得ると共に、得られた波長毎の拡散透過率から測定試料である近赤外線遮蔽材料微粒子分散体のブルーへイズを評価(評価工程)することができる。
【0029】
尚、従来のヘイズメーター(特許文献4参照)を用いた測定では、波長毎の拡散透過率を求めることはできず、上述したように評価試料における拡散透過光の全光線透過光に対する割合が求められるに過ぎないため、近赤外線遮蔽材料微粒子分散体のブルーへイズを評価することは困難であった。
【0030】
ここで、本発明に係るブルーヘイズ評価装置においては、上記光源1と測定試料2との間に光線調整用の光学系を設けてもよい。そして、この光学系では、例えば複数枚のレンズを組み合わせて平行光を調整し、絞りにより光量の調整を行う。場合によっては、フィルターによって特定波長のカットを行ってもよい。また、上記測定試料2としては、近赤外線遮蔽材料微粒子分散体(近赤外線遮蔽材料微粒子が溶媒中に分散された塗料)をそのままの状態でセルに収容し配置してもよいし、あるいは、上記塗料を透明基材に薄膜塗工して得られた近赤外線遮蔽材料微粒子分散体(透明基材上に成膜された近赤外線遮蔽材料微粒子の分散膜)を配置してもよい。
【0031】
そして、この評価方法で得られた波長毎の拡散透過率に基づき、例えば波長360nmから500nm間における拡散透過率の極大値からブルーへイズの大きさを推定することが可能となる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
[実施例1−3]
粒子径1〜3μmのLaB粉末13重量部と、2−プロパノール87重量部を攪拌混合し、3kgのスラリーを調製した。
【0033】
次に、このスラリーをビーズと共に媒体攪拌ミルに投入し、スラリーを循環させて粉砕分散処理を行った。使用した媒体攪拌ミルは横型円筒形のアニュラータイプ[アシザワ(株)社製]であり、ベッセル内壁とローター(回転攪拌部)の材質はZrOとした。また、上記ビーズには、直径0.3mmのYSZ(Yttria-Stabilized Zirconia:イットリア安定化ジルコニア)製のビーズを使用した。ローターの回転速度は12m/秒とし、スラリー流量1kg/分として、粉砕時間を10時間(実施例1)、20時間(実施例2)、30時間(実施例3)と変えて粉砕し、フィラーLaB粉末の粒径が異なる分散液を作製した。
【0034】
尚、実施例1におけるLaB粉末の平均分散粒子径は110nm、実施例2におけるLaB粉末の平均分散粒子径は85nm、実施例3におけるLaB粉末の平均分散粒子径は65nmであった。また、これ等平均分散粒子径は、動的光散乱法を用いた測定装置[大塚電子(株)社製 ELS−800]により測定した値の平均値とした。
【0035】
得られた実施例1−3の分散液を紫外線硬化樹脂と混合し、これをガラス基板上にバーコーターで成膜し、かつ、溶媒を蒸発させた後に紫外線を照射して硬化させた。
【0036】
ここで、LaB粉末の粒径が異なると可視光透過率が変化するため、上記分散液に添加する紫外線硬化樹脂量によって濃度を調節するか、成膜時の膜厚を調整することによりほぼ同じ可視光透過率が得られる薄膜でヘイズを測定した。結果を表1に示す。
【0037】
尚、可視光透過率の測定はJIS R3106に従った。ヘイズ値の測定はJIS K7105に従った。また、得られた膜の拡散透過プロファイルを、本発明に係る評価方法である図1と図2に示す方法で測定した。この結果を表1と図3に示す。
【0038】
更に、得られた膜に人口太陽光ランプ[セリック(株)社製 XC-100]を照射しブルーヘイズを目視で確認した。この結果を図4に示す。
[実施例4]
フタロシアニン系色素からなる有機の赤外線遮蔽材料と二液架橋型のアクリル系粘着材とを1:10の重量比で混合し、ガラス基板上に成膜し、かつ、溶媒を蒸発させた後、熟成させて厚さ100μmの赤外線遮蔽膜試料を作製した。
【0039】
そして、得られた実施例4に係る赤外線遮蔽膜試料を、実施例1−3と同様の方法により評価した。この結果を、表1および図3と図4に示す。
【0040】
【表1】

「評 価」
(1)表1の「ヘイズ(%)」欄から実施例1に係る試料と実施例4に係る試料は共にヘイズ値が0.8%になっている。
【0041】
しかし、図4に示されたブルーヘイズの写真図からは、実施例1に係る試料ではブルーヘイズが非常に強いのに対し、実施例4に係る試料ではブルーヘイズが発生していないことが確認できる。このような差異が生じている理由は、実施例4に係る試料ではフタロシアニン系色素からなる有機の赤外線遮蔽材料(この材料はブルーヘイズを発生しない)が適用されていることによる。
【0042】
他方、表1の波長360nmから500nm間における「拡散透過率のピーク値」欄からは、実施例1に係る試料ではピーク(極大)値が2.6%であり、実施例4に係る試料のピーク(極大)値0.7%より大きな値となっている。
【0043】
従って、波長360nmから500nm間における「拡散透過率のピーク値」欄の数値から(あるいは、図3に示す拡散透過プロファイルから)、各試料におけるブルーヘイズの発生の有無とその大きさを事前に評価することが可能となることが分かる。
(2)次に、実施例1−3においてはLaB粉末がそれぞれ適用されているにもかかわらず、上記波長360nmから500nm間における「拡散透過率のピーク値」欄のピーク(極大)値が大きく相違していることが確認される。
【0044】
すなわち、実施例1に係る試料ではピーク(極大)値が2.6%であるのに対し、実施例2に係る試料では1.0%、実施例3に係る試料では0.7%になっている。
【0045】
このような差異が生じている理由は、実施例1に較べて実施例2、3では粉砕が進んで粒径が小さくなっているため、ブルーヘイズが徐々に改善されたことによる。すなわち、実施例3のブルーヘイズはわずかに認められる程度であり、有機材料が適用された実施例4と同レベルである。そして、波長360nmから500nm間における「拡散透過率のピーク値」欄の数値は実施例3と実施例4は共に0.7%であり、波長360nmから500nm間における「拡散透過率のピーク値」欄の数値から(あるいは、図3に示す拡散透過プロファイルから)ブルーヘイズの大きさを事前に評価することが可能となることが分かる。
(3)このように従来のヘイズ値測定のみでは判断が困難であったブルーヘイズの評価について、本発明に係る評価方法により可能となることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係るブルーへイズの評価方法によれば近赤外線遮蔽材料微粒子分散体のブルーへイズを直接評価することができるため、車のフロントガラス、建材用窓ガラスあるいはプラズマディスプレイパネル等に適用される近赤外線遮蔽材料微粒子分散体に関し、ブルーへイズの発生の有無やその大きさを事前に予測できる産業上の利用可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るブルーヘイズ評価装置を用いてブランク透過光強度を測定する方法を示す説明図。
【図2】本発明に係るブルーヘイズ評価装置を用いて拡散透過光強度を測定する方法を示す説明図。
【図3】本発明に係るブルーヘイズ評価方法により求められた波長と拡散透過率との関係を示す拡散透過率プロファイルのグラフ図。
【図4】実施例1−4における試料のブルーヘイズ現象を示す写真図。
【符号の説明】
【0048】
1 光源
2 測定試料
3 受光器
4 積分球
5 標準反射板
6 ライトトラップ部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状本体内面が拡散反射性を有し、かつ、測定試料が取り付けられる第一開口部、標準反射板またはライトトラップ部品が取り付けられる第二開口部、受光器が取り付けられる第三開口部を球状本体外面に有する積分球を用いて、近赤外線遮蔽材料微粒子分散体のブルーへイズを評価する方法において、
上記積分球の第二開口部に標準反射板を取り付け、第一開口部に測定試料を取り付けない状態で外部光源からの直線光を上記第一開口部を介し球状空間内に入射させると共に、標準反射板で反射された反射光を上記受光器で受光し、かつ、分光器により分光して上記反射光の分光データを得るブランク透過光強度測定工程と、
上記積分球の第二開口部にライトトラップ部品を取り付け、第一開口部に測定試料を取り付けた状態で外部光源からの直線光を上記測定試料と第一開口部を介し球状空間内に入射させると共に、ライトトラップ部品でトラップされた光以外の散乱光を上記受光器で受光し、かつ、分光器により分光して上記散乱光の分光データを得る拡散透過光強度測定工程と、
保存された上記ブランク透過光強度と拡散透過光強度の各分光データに基づき、拡散透過光強度とブランク透過光強度の波長毎の比をそれぞれ演算して、波長毎の拡散透過率を得る拡散透過率演算工程と、
波長毎の拡散透過率から、測定試料である近赤外線遮蔽材料微粒子分散体のブルーへイズを評価する評価工程、
を具備することを特徴とするブルーへイズの評価方法。
【請求項2】
上記拡散透過率の波長360nmから500nm間における極大値から、ブルーへイズの大きさを評価することを特徴とする請求項1に記載のブルーへイズの評価方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の評価方法に用いられるブルーヘイズ評価装置において、
球状本体内面が拡散反射性を有し、かつ、測定試料が取り付けられる第一開口部、標準反射板またはライトトラップ部品が取り付けられる第二開口部、受光器が取り付けられる第三開口部を球状本体外面に有する積分球と、
上記第一開口部を介し球状空間内に入射される直線光を出射する光源と、
上記受光器に取り付けられかつ受光された反射光または散乱光を分光する分光器と、
上記分光器に接続されかつ分光された反射光または散乱光の分光データを保存するデータ保存手段と、
保存された上記ブランク透過光強度と拡散透過光強度の各分光データから、拡散透過光強度とブランク透過光強度の波長毎の比をそれぞれ演算して波長毎の拡散透過率を得る演算手段、
を具備することを特徴とするブルーへイズ評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−150979(P2009−150979A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327177(P2007−327177)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】