説明

ブレンドフルオロシリコーン剥離物質

フルオロ官能シリコーン剥離ポリマーとフルオロポリマーのブレンドを含むブレンド剥離物質が記載される。代表的なフルオロポリマーとして、フルオロオレフィン系ポリマー及び、直鎖フルオロアクリレート(fluoroacryalte)などの直鎖フルオロポリマーが挙げられる。剥離ライナーなどのこのような剥離物質を含む物品、及び、シリコーン接着剤物品などの接着剤物品も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも1つの追加のフルオロポリマーとブレンドされる、フルオロシリコーン剥離ポリマーを含む剥離物質に関する。代表的なフルオロポリマーとして、フルオロオレフィン系ポリマー及び側枝フルオロアルキル基を有する直鎖アクリレートポリマーが挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
簡潔には、一態様では、本開示は、フルオロ官能シリコーン剥離ポリマー及び第2のフルオロポリマーのブレンドを含む剥離物質を提供する。いくつかの実施形態では、第2のフルオロポリマーは直鎖フルオロポリマーである。いくつかの実施形態では、フルオロ官能シリコーン剥離ポリマーと直鎖フルオロポリマーの重量比は、10:1以下である。いくつかの実施形態では、フルオロ官能シリコーン剥離ポリマーと直鎖フルオロポリマーの重量比は、1:10以下である。
【0003】
いくつかの実施形態では、直鎖フルオロポリマーは非シリコーン直鎖フルオロポリマーである。いくつかの実施形態では、直鎖フルオロポリマーはフルオロアクリレートポリマーである。いくつかの実施形態では、フルオロアクリレートポリマーは少なくとも1つのC4MHモノマー由来である。いくつかの実施形態では、直鎖フルオロポリマーはフルオロオレフィン系ポリマーである。
【0004】
別の態様では、本開示は、フルオロ官能シリコーン剥離ポリマー及びフルオロオレフィン系ポリマーのブレンドを含む剥離物質を提供する。いくつかの実施形態では、フルオロオレフィン系ポリマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、及びフッ化ビニリデンからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーの反応生成物を含む。いくつかの実施形態では、フルオロオレフィン系ポリマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンのターポリマーを含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、フルオロオレフィン系ポリマーは、エラストマー性フルオロオレフィン系ポリマーである。いくつかの実施形態では、フルオロオレフィン系ポリマーは、熱可塑性フルオロオレフィン系ポリマーである。
【0006】
別の態様では、本開示は、基材と、基材の主表面に結合される本開示の剥離物質と、を含む、剥離ライナーを提供する。
【0007】
更に別の態様では、本開示は、第1主表面及び第2主表面を有し、接着剤の第1主表面が本開示の剥離物質と接触している接着剤を含む、接着剤物品を提供する。いくつかの実施形態では、接着剤物品は、第1主表面及び第2主表面を有し、剥離物質が第1基材の第1主表面に結合される、第1基材を更に含む。いくつかの実施形態では、接着剤の第2主表面は、第1基材の第2主表面と接触する。いくつかの実施形態では、接着剤の第2主表面は、第1基材の第2主表面に結合される第2の独立して選択された剥離物質と接触している。いくつかの実施形態では、接着剤物品は、接着剤の第2主表面が第2基材の主表面と接触している第2基材を更に含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、接着剤は、シリコーン接着剤を含む。いくつかの実施形態では、シリコーン接着剤は、ポリ(ジオルガノシロキサン)を含む。いくつかの実施形態では、シリコーン接着剤は、ポリジオルガノシロキサン−ポリ尿素ブロックコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、シリコーン接着剤は、ポリジオルガノシロキサン−ポリオキサミドコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、シリコーン接着剤は、粘着付与剤を更に含む。
【0009】
別の態様では、本開示は、本開示の剥離物質を含むコーティングを提供する。
【0010】
本開示の上記の概要は、本発明の各実施形態を説明することを意図したものではない。また、本発明の1つ以上の実施形態の詳細を、以下の説明に記載する。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、その説明から、また特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本開示のいくつかの実施形態による剥離ライナーを示す。
【図2】本開示のいくつかの実施形態による接着剤物品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
感圧性接着剤(PSA)は、重要な部類の材料である。一般に、PSAは、軽い圧力(例えば、指の圧力)で基材に接着し、一般にその最大結合力を達成するために後硬化(例えば、熱又は放射)を必要としない。様々なPSAの化学的性質が存在する。シリコーンPSAは、低界面エネルギー(LSE)面への接着、短い保圧時間での素早い接着、広い使用温度(即ち、極端に高い温度及び低い温度での性能)、耐候性(紫外線(UV)放射、酸化及び湿度に対する耐性を含む)、応力変化(例えば、印加応力の形態、頻度及び角度)の影響を受けにくいこと、化学薬品(例えば、溶媒及び可塑剤)及び生物学的物質(例えば、かび及び菌類)に対する耐性などの有用な特徴のうちの1つ又は複数を提供する。
【0013】
フッ素化剥離剤コーティングは、所望の剥離特性を与えるため、シリコーンPSAと共に使用することが多い。いくつかの実施形態では、180°の剥離角度及び230cm/分(90インチ/分)における所望の剥離力は、50g/25mm以下であり、例えば、30g/25mm以下である。しかし、特にウェットキャスト(例えば、溶媒系、水系、及びホットメルトコーティング)シリコーンPSAにおいて、所望の剥離性を達成するために、利用可能なフッ素化剥離剤コーティングの選択は限られている。例えば、ウェットキャストシリコーン接着剤の安定した、一定で、なめらかな剥離をもたらす剥離物質は少ない。
【0014】
最も一般的なフッ素化剥離剤コーティングはフルオロシリコーン材料である。しかし、市販のフルオロシリコーン剥離剤コーティングは、典型的には、シリコーン剥離物質及び多くの一般的なフッ素化材料よりも高価である。
【0015】
本発明の発明者らは、追加のフッ素化材料自体が剥離物質でない場合でも、フルオロシリコーン剥離物質が、フルオロシリコーン材料の所望の低剥離性を維持しながらも、1つ以上の追加のフッ素化材料(例えばフルオロポリマー)とブレンドできることを発見した。更に、いくつかの実施形態では、本開示のブレンド剥離物質の除去後の接着剤の再接着力に悪影響を与えずに、高いブレンド率を使用できる。
【0016】
一般に、任意の既知のフルオロシリコーン剥離ポリマーを使用できる。用語「フルオロシリコーン」は、少なくともいくつかのフッ素原子を含むシリコーン材料を意味する。
【0017】
代表的なフルオロシリコーン剥離剤コーティングとしては、フッ素含有有機基及びアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、有機水素シロキサン架橋剤、及びプラチナ含有触媒から得られる剥離剤コーティング組成物が挙げられる。その他のフルオロシリコーン剥離剤コーティングを、例えば、フッ素含有有機基及びシリコン結合水素基を有するオルガノポリシロキサン、アルケニル官能性オルガノポリシロキサン、及びプラチナ含有触媒から得てもよい。
【0018】
多くの有用な市販のフルオロシリコーンポリマーが、Dow Corning Corp.(Midland,Michigan)から、例えば、SYL−OFF Q2−7785及びSYL−OFF Q2−7786などの商品名のSYL−OFF及びSYL−OFF ADVANTAGEシリーズとして入手可能である。これらのフルオロシリコーンポリマーは、好適な架橋剤と組み合わされるとき、剥離剤コーティング組成物の形成に特に有用である。1つの有用な架橋剤は、Dow Corning Corp.からSYL−OFF Q2−7560の商品名で入手できる。その他有用な架橋剤は、米国特許第5,082,706号(Tangney)及び同第5,578,381号(Hamadaら)に開示される。その他のフルオロシリコーンポリマーは、General Electric Co.(Albany,New York)、Wacker Chemie(Germany)、Akrosil(Menasha,Wisconsin)、及びLoparex(Willowbrook,Illinois)から市販される。
【0019】
フルオロシリコーン剥離ポリマーとブレンドしてよい代表的なフルオロポリマーとしては、本明細書に記載するものを含む追加のフルオロシリコーンポリマー、並びに非シリコーンフルオロポリマーが挙げられる。
【0020】
様々なフッ素化及び非フッ素化モノマーからフルオロポリマーを調製できる。本明細書で用いるとき、用語「フッ素化」には、ペルフルオロ化及び部分的フッ素化材料の両方を含む。
【0021】
1つの部類のフルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(vinylidene and fluoride)(VDF)などのフッ素化オレフィンモノマーに基づく。いくつかの実施形態では、フルオロオレフィン系フルオロポリマーは、フッ素化オレフィンモノマーのホモポリマー又はコポリマーであってよい。いくつかの実施形態では、フルオロオレフィン系フルオロポリマーは、1つ以上のフッ素化オレフィンモノマー及び、例えば、エチレンなどの非フッ素化オレフィン、クロロトリフルオロエチレンなどの塩素化オレフィン、及びトリフルオロメチルビニルエーテルなどのフッ素化ビニルエーテルなどの、1つ以上の他のモノマーのコポリマーであってよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、フルオロオレフィン系ポリマーは非晶質フルオロポリマーであってよい。本明細書で用いるとき、非晶質フルオロポリマーは、本質的に結晶化度を示さないか、例えば示差走査熱量計(DSC)で決定すると有意な融点を持たない材料である。いくつかの実施形態では、非晶質フルオロポリマーはエラストマー性である。いくつかの実施形態では、エラストマー性フルオロポリマーは、例えば、VDF、HFP、及び任意にTFEモノマー由来のインターポリマー化単位を含んでよい。これらの例は、3M Companyから商品名Dyneon(商標)フルオロエラストマーFC 2145及びFT 2430として市販される。追加の非晶質フルオロポリマーとして、例えば、3M Companyから商品名Kel−F(商標)3700として市販される、VDF−クロロトリフルオロエチレンコポリマーが挙げられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、フルオロオレフィン系ポリマーは、結晶融点を示すホモポリマー及びコポリマーであってよい。代表的な結晶性フルオロポリマーとしては、TFE又はVDFなどのフッ素化モノマーに基づくもの、例えば、3M CompanyからDyneon(商標)PVDFとして市販されるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又は、TFE−HFP−VDFの結晶性ミクロ構造に基づくものなどのTFEの熱可塑性コポリマー、例えば、商品名Dyneon(商標)フッ素プラスチックTHV(商標)220で3Mから市販されるものが挙げられる。
【0024】
いくつかの実施形態では、フルオロオレフィン系ポリマーとして、HFPを非常に低いモル濃度で有するPVDF含有フッ素プラスチック材料、例えば、Dyneon LLC(St.Paul,Minnesota)から入手できる商品名Dyneon(商標)PVDF 6010又は3100として販売されるもの、及び、Elf Atochem North America Inc.から入手できるKynar(商標)740、2800、9301を挙げてよい。
【0025】
本開示のいくつかの実施形態で有用なフルオロポリマーの別の部類は、側枝フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(すなわち、アクリレート及び/又はメタクリレート)に基づくフルオロアクリレートポリマーである。フルオロアクリレートモノマー、及び、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)又は1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)などの多−(メタ)アクリレートから得られるフルオロアクリレートポリマーは、非直鎖(例えば、分枝鎖及び/又は架橋)フルオロポリマーを形成するであろう。フルオロアクリレートモノマー、及び、C1〜C50のアクリレートなどのモノ−(メタ)アクリレート(例えば、ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、及びオクタデシルアクリレートなどのC4〜C20のアクリレート)から得られるフルオロアクリレートポリマーは、直鎖フルオロポリマーを形成する。
【0026】
いくつかの実施形態では、直鎖フルオロアクリレートポリマーは、式:
【0027】
【化1】

【0028】
(式中、nは1〜6(1と6を含む)の範囲の整数であり、例えば、nは1、2、3、4、又は5であってよく、
pは2〜30(2と30を含む)の範囲の整数であり、
R’はH、CH、又はFであり、
Xは
【0029】
【化2】

【0030】
−OC2q−、又は−C2q−であり、
式中、
RはH又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル)であり、
mは2〜8(2と8を含む)の範囲の整数であり、
は、C2n+1であり、nは先に定義したものであり、
yは0〜6(0と6を含む)の範囲の整数であり、
qは1〜8(1と8を含む)の範囲の整数である)で表されるフルオロアクリレートモノマーを含む構成成分の反応生成物を含む。
【0031】
「A」は、ヒドロカルビレン基、例えば、メチレン、エチレン、フェニレン、又は、
【0032】
【化3】

【0033】
を表す。
【0034】
いくつかの実施形態では、ヒドロカルビレン基は、18個未満、16個未満、12個未満、又は更には7個未満の炭素原子を有してよい。ヒドロカルビレン基は、直鎖又は分枝鎖であってよく、1つ以上の環を含んでよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、nは4であり、pは2であり、Aは
【0036】
【化4】

【0037】
であり、Xは
【0038】
【化5】

【0039】
である。
【0040】
このような場合、フルオロアクリレートモノマーを、式
【0041】
【化6】

【0042】
(式中、R’は先に定義した物である)で表してよい。R’がHである場合、モノマーは、通常MeFBSE−MDI−HEAと呼ばれ、以下「C4MH」と呼ぶ。
【0043】
米国特許第7,199,197号に記載されるように、このようなフルオロアクリレートモノマーを重合し、フッ素化アクリルポリマーを得ることができる。フルオロアクリレートモノマーを1つ以上のコモノマー、例えばモノ−(メタ)アクリレートモノマーと共重合し、本開示のいくつかの実施形態による直鎖フルオロポリマーを製造することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、コモノマーはアルキルモノ−(メタ)アクリレートであってよい。いくつかの実施形態では、アルキルモノ−(メタ)アクリレートは、C1〜C50、例えば、C4〜C20のアルキルモノ−(メタ)アクリレートである。有用なアルキルモノ−(メタ)アクリレートの代表例として、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0045】
フルオロシリコーン剥離ポリマーとフルオロポリマー(例えば、直鎖フルオロアクリレートポリマー又はフルオロオレフィンポリマー)の比率は大きく異なり得る。例えば、いくつかの実施形態では、フルオロ官能シリコーン剥離ポリマーと直鎖フルオロポリマーの重量比は、10:1以下、5:1以下、又は更に3:1以下である。いくつかの実施形態では、必要な剥離性及び再接着性を保持しつつも、比較的高価なフルオロシリコーン材料の量を最小限にすることが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、フルオロ官能シリコーン剥離ポリマーと直鎖フルオロポリマーの重量比は、1:1以下、1:5以下、1:10以下、又は更に1:20以下である。例えば、いくつかの実施形態では、フルオロ官能シリコーン剥離ポリマーと直鎖フルオロポリマーの重量比は、10:1〜1:20、例えば3:1〜1:20(3:1と1:20を含む)、2:1〜1:10(2:1と1:10を含む)(例えば、1:1〜1:10、1:1と1:10を含む)、又は更に2:1〜1:3である。
【0046】
本開示のブレンド剥離組成物は、様々な接着剤を伴って有用であり得る。一般に、フルオロシリコーン系剥離物質は、シリコーン接着剤と共に用いられる。好適なシリコーンポリマーの例として、シリコーン、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマー、ポリジオルガノシロキサンポリマー、シリコーンポリアミド、ポリシロキサングラフトコポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0047】
シリコーン接着剤の1つの部類として、シロキサン主鎖を有するもの、例えば、ポリ(ジオルガノシロキサン)材料が挙げられる。代表的なポリ(ジオルガノシロキサン)材料として、ポリ(ジアルキルシロキサン)、例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(アルキルアリールシロキサン)、例えば、ポリ(メチルフェニルシロキサン)及びポリ(ジメチルジフェニルシロキサン)、並びに、ポリ(ジアリールシロキサン)、例えば、ポリ(ジフェニルシロキサン)が挙げられる。いくつかの実施形態では、接着剤は2つ以上のポリ(ジオルガノシロキサン)材料を含んでよい。
【0048】
一般に、シリコーン系感圧性接着剤組成物は、シリコーンポリマー及び任意に、例えば、粘着付与剤、可塑剤及びこれらの組み合わせを含む他の構成成分を含む。いくつかの実施形態では、接着剤は、好適な粘着付与剤を更に含む。一般に、任意の既知の粘着付与樹脂が使用されてよく、例えば、幾つかの実施形態では、ケイ酸塩粘着付与樹脂が使用されてよい。幾つかの例示的接着剤組成物においては、複数のケイ酸塩粘着付与樹脂を使用して、望ましい性能を得ることができる。
【0049】
適切なケイ酸塩粘着付与樹脂には、以下の構造単位M(即ち、1価のR’SiO1/2単位)、D(即ち、2価のR’SiO2/2単位)、T(即ち、3価のR’SiO3/2単位)、及びQ(即ち、4級のSiO4/2単位)、並びにこれらの組み合わせから成る樹脂が挙げられる。典型的な例示的ケイ酸塩樹脂としては、MQケイ酸塩粘着付与樹脂、MQDケイ酸塩粘着付与樹脂、及びMQTケイ酸塩粘着付与樹脂が挙げられる。これらのケイ酸塩粘着付与樹脂は、通常、100〜50,000gm/モル、例えば、500〜15,000gm/モルの範囲の数平均分子量を有し、一般にR’基はメチル基である。
【0050】
MQケイ酸塩粘着付与樹脂は、共重合体樹脂であり、ここで、各M単位はQ単位に結合され、各Q単位は少なくとも1つの他のQ単位に結合される。Q単位のうちの幾つかは、他のQ単位だけに結合される。しかしながら、幾つかのQ単位は、ヒドロキシルラジカルに結合されてHOSiO3/2単位(即ち「TOH」単位)、をもたらし、それがケイ酸塩粘着付与樹脂のある程度のシリコン結合ヒドロキシル含量の原因となる。
【0051】
MQDシリコーン粘着付与樹脂は、M、Q及びD単位を有する三元重合体である。幾つかの実施形態では、D単位のメチルR’基の幾つかを、ビニル(CH2=CH−)基(「DVi」単位)と置き換えることができる。MQTケイ酸塩粘着付与樹脂は、M、Q及びT単位を有する三元重合体である。
【0052】
好適なケイ酸塩粘着付与樹脂は、Dow Corning(例えばDC−7066)及びMomentive Performance Materials(例えばSR545及びSR1000)などの供給元から市販されている。
【0053】
1つの好適なシリコーン系感圧性接着剤組成物としては、MQ粘着付与樹脂及びシリコーンポリマーが挙げられる。MQ粘着付与樹脂及びシリコーンポリマーは、例えば、MQ粘着付与樹脂及びシリコーンポリマーのブレンド、MQ粘着付与樹脂及びシリコーンポリマーの反応生成物(例えば、縮合硬化又は付加硬化型反応生成物)又はこれらの混合物の形態で存在することができる。
【0054】
シリコーンポリマーの有用な部類の別の例は、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーである。シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーとしては、ポリジオルガノシロキサンジアミン(シリコーンジアミンとも称される)、ジイソシアネート、及び所望により有機ポリアミンの反応生成物が挙げられる。
【0055】
シリコーンポリマーの有用な部類の更に別の例は、ポリジオルガノシロキサン−ポリオキサミドコポリマーシリコーン接着剤である。有用なポリジオルガノシロキサン−ポリオキサミドコポリマーシリコーン接着剤は、例えば、米国特許第7,371,464号(Sherman)に開示されている。
【0056】
広範囲の市販のシリコーン感圧性接着剤組成物もまた好適である。このようなシリコーン感圧性接着剤組成物の例としては、ダウ・コーニング社製の280A、282、7355、7358、7502、7657、Q2−7406、Q2−7566及びQ2−7735;ゼネラル・エレクトリック社製のPSA 590、PSA 600、PSA 595、PSA 610、PSA 518(中程度のフェニル含有量)、PSA 6574(高含有量のフェニル)及びPSA 529、PSA 750−D1、PSA 825−D1、及びPSA 800−Cが挙げられる。2つの異なるジメチルシロキサン系シリコーン感圧性接着剤組成物のブレンド、又はジメチルシロキサン系シリコーン感圧性接着剤組成物とジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン系感圧性接着剤組成物のブレンドなどの、シリコーン感圧性接着剤組成物の様々なブレンドもまた有用である。
【実施例】
【0057】
【表1】

【0058】
ADH−1このポリ(ジメチルシロキサン)(「PDMS」)系シリコーン接着剤を以下のように調製した。3.0gの過酸化物ペースト(GelestのSID 3352.0)、7.2gのトルエン、及び1.8gのMEKを加えることにより、過酸化物溶液を作製した。このペーストは、50%過酸化ジクロロベンゾイル及び50%シリコーン流体を含有していた。生じた過酸化物溶液は、トルエン:MEKの重量比が80:20の25%固体であった。100gのQ2−7735シリコーン感圧性接着剤(56%固体)、58.6gのトルエン、及び2.24gの過酸化物溶液を混合した。これにより、最終固体含有量が35%で、(接着剤固体に基づき)0.5重量%の活性過酸化ジクロロベンゾイルを含有する接着剤溶液を得た。組成物をジャーローラー上に一晩おいて溶解し、接着剤溶液を製造した。
【0059】
ADH−2このPDMS系シリコーン接着剤を、100gのQ2−7556シリコーン感圧性接着剤(56%固体)を用いた以外は、ADH−1において記載したように調製した。
【0060】
ADH−3この粘着付与化ポリジオルガノシロキサン−ポリ尿素ブロックコポリマーシリコーン接着剤を以下のように調製した。シリコーンポリ尿素感圧性接着剤を、以下の例外を伴う、米国特許第6,730,397号、名称「Preparation of Silicone Polyurea Polymer」の節に記載される手順に従って調製した。シリコーンポリ尿素エラストマーを30%ではなく20%固体で調製し、70/30ではなく75/25の重量比のトルエン/2−プロパノールを有する溶媒ブレンド中でエラストマーを調製した。得られたエラストマーを、63重量部のエラストマー溶液、24.3部のMQ樹脂、11.63部のトルエン、及び1.08部の2−プロパノールを混合し、確実に均質になるまでよく混和することにより、シリコーンポリ尿素感圧性接着剤組成物に処方した。MQ樹脂は処理されてシラノール含量が低下し、M/Q比が1.2、SiOH含量が0.8%、Mn=2820、及びMw=4600、キシレン中63.4重量%固体を有するM、Q、及びTOH構造ユニットで構成された。
【0061】
ADH−4この粘着付与化ポリジオルガノシロキサン−ポリオキサミドコポリマーシリコーン接着剤を以下のように調製した。ポリジオルガノシロキサン−ポリオキサミドコポリマーを、米国特許第7,371,464号(Sherman)に示された手順に従って調製した。コポリマーを50重量%の粘着付与剤(DC−7066)とブレンドした。
【0062】
サンプル調製ドライラミネーションプロセス又はウェットキャスティングプロセスのいずれかを用いて、検査用のサンプルを調製した。ドライラミネーションでは、50マイクロメートル(2.0ミル)でプライミングしたPETフィルム(Mitsubishiの製品3SAB)上に接着剤をコーティングし、乾燥した。2kgのゴムローラーを2回通過させて、生じたPET裏打ちテープの接着剤を剥離ライナーに積層した。ウェットキャスティングでは、剥離コーティングされたライナー上に直接接着剤をコーティングし、乾燥した。次いで、50マイクロメートルのPETフィルムを乾燥した接着剤に積層し、ライナーに接着するPET裏打ちテープを形成する。
【0063】
剥離試験PET裏打ちテープサンプルを、180°の角度および230cm/分(90インチ/分)の速度でライナーから剥がした。IMASS,Inc.(Accord,Mass.)から入手したIMass model SP2000剥離試験機を用いて、剥離力を記録した。
【0064】
再接着試験再接着値を決定するため、PET裏打ちテープサンプルを剥離試験の方法を用いてライナーから剥がし、続いて、清潔なステンレス製パネルの表面にテープを貼付した。2kgのゴムローラーを61cm/分(24インチ/分)で2回通過(前方向及び後方向)させる手段により、パネルに対してテープサンプルをローラーで付けた。再接着値は、30.5cm/分(12インチ/分)の速度にて、180°の角度で、スチール表面からテープを引張るために必要な力の大きさとした。IMass model SP2000剥離試験機を用いて、剥離力を記録した。
【0065】
比較例1(CE−1)ヘプタン中で、フルオロシリコーン剥離ポリマー(Q2−7785)をフルオロ官能シリコーン架橋剤(Q2−7560)と重量比97:3で混合し(総じて「FS−1」)、非フッ素化溶媒中、16重量%固体のFS−1溶液を得た。
【0066】
比較例2(CE−2)米国特許第7,199,197号の実施例27に従って、C4MH及びODAの70:30(重量で)コポリマーを調製した。生じたC4MH−ODA直鎖フルオロアクリレートコポリマーをトルエン及びEtOAc(1:1重量比)で希釈し、3重量%固体の溶液を得た。
【0067】
実施例1(EX−1)EtOAc及びヘプタン(4:1)中、10重量%のFS−1溶液(「SOLN−1」)、並びに、トルエン及びEtOAc(1:1重量比)中、10重量%のC4MH−ODA直鎖フルオロアクリレートコポリマー溶液(「SOLN−2」)をブレンドし、ヘプタン/トルエン/EtOAc溶媒混合液中、3:1重量比のFS−1:C4MH−ODAを達成した。
【0068】
実施例2(EX−2)SOLN−1及びSOLN−2をブレンドし、ヘプタン/トルエン/EtOAc溶媒混合液中、1:1重量比のFS−1:C4MH−ODAを達成した。
【0069】
実施例3(EX−3)SOLN−1及びSOLN−2をブレンドし、ヘプタン/トルエン/EtOAc溶媒混合液中、1:3重量比のFS−1:C4MH−ODAを達成した。
【0070】
これらの溶媒系剥離組成物をそれぞれを、8番メイヤーロッドを用いてポリエステルフィルム上にコーティングした。コーティングされたサンプルを、続いて、120℃で5分間硬化した。剥離性及び再接着性を決定するため、様々なシリコーン接着剤を用いて生じた剥離ライナーを評価した。
【0071】
PET裏打ちシリコーン接着剤テープをADH−1を用いて調製した。ドライラミネーションプロセスを用いて、生じたテープを様々なライナーに接着させた。生じたサンプルを、22℃及び50%相対湿度(「7d−RT」)、又は70℃(「7d−HT」)のいずれかで7日間放置した。剥離試験により測定した剥離力を表2aに示す。
【0072】
ライナーから剥がされた接着剤の再接着力は、再接着試験を用いて評価した。この結果も表2aにまとめている。比較目的で、PET裏打ちテープのサンプルをステンレス製パネルに直接積層した。このテープの接着剤は、決して剥離物質と接触させなかった。この参照再接着力は1,850g/25mmであった。
【0073】
【表2】

【0074】
PET裏打ちシリコーン接着剤テープをADH−1を用いて調製した。ウェットキャスティングプロセスを用い、様々なライナーを有するテープを調製した。生じたサンプルを、22℃及び50%相対湿度(「7d−RT」)、又は70℃(「7d−HT」)のいずれかで7日間放置した。剥離試験により測定した剥離力を表2bに示す。
【0075】
【表3】

【0076】
CE−2の剥離ライナーを用いて調製したウェットキャスティングサンプルは剥がれなかった、すなわち、接着剤テープはライナーから取り除けなかった。したがって、C4MH−ODA単独ではウェットキャスティング接着剤ADH−1の剥離物質として機能しなかったが、この同じ直鎖フルオロアクリレートコポリマーの有意な量をフルオロシリコーンと、例えば、FS1:C4MH−ODAを1:3でブレンドしたときでさえ、良好な剥離性を得た。
【0077】
PET裏打ちシリコーン接着剤テープをADH−3を用いて調製した。ドライラミネーションプロセスを用いて、生じたテープを様々なライナーに接着させた。生じたサンプルを、22℃及び50%相対湿度(「7d−RT」)、又は70℃(「7d−HT」)のいずれかで7日間放置した。剥離試験により測定した剥離力を表3aに示す。ライナーから剥がされた接着剤の再接着力は、再接着試験を用いて評価した。この結果も表3aにまとめている。比較目的で、PET裏打ちテープのサンプルをステンレス製パネルに直接積層した。この参照再接着力は1,770g/25mmであった。
【0078】
【表4】

【0079】
PET裏打ちシリコーン接着剤テープをADH−3を用いて調製した。ウェットキャスティングプロセスを用い、様々なライナーを有するテープを調製した。生じたサンプルを、22℃及び50%相対湿度(「7d−RT」)、又は70℃(「7d−HT」)のいずれかで7日間放置した。剥離試験により測定した剥離力を表3bに示す。C4MH−ODA単独では許容できる剥離物質として機能しなかったが、C4MH−ODAの有意な量をフルオロシリコーンと、例えば、FS1:C4MH−ODAを1:3でブレンドしたときでさえ、良好な剥離性を得た。
【0080】
【表5】

【0081】
比較例3(CE−3)HFE−7200中で、フルオロシリコーン剥離ポリマー(Q2−7786)をフルオロ官能シリコーン架橋剤(Q2−7560)と重量比94:6で混合し(総じて「FS−2」)、フッ素化溶媒中、10重量%固体のFS−2溶液を得た。
【0082】
比較例4(CE−4)FS−2(94重量部のQ2−7786及び6重量部のQ2−7560架橋剤)を、EtOAc/ヘプタン/トルエン(重量で3.6/1/1.2)中で混合し、非フッ素化溶媒ブレンド中、18重量%固体のFS−2溶液を得た。
【0083】
比較例5(CE−5)CE−5は、EtOAc中、5重量%固体のC4MH−ODAコポリマー(重量比70:30)溶液であった。
【0084】
実施例4(EX−4)EtOAc/ヘプタン(重量で4/1)中、16重量%固体のFS−2溶液を、EtOAc中、10重量%固体のC4MH−ODAコポリマー(重量比70:30)溶液と混合した。得られた15重量%固体の溶液は、FS−2:C4MH−ODAの重量比が84:16(すなわち、5.25:1)であった。
【0085】
実施例5(EX−5)EtOAc/ヘプタン(重量で4/1)中、20重量%固体のFS−2溶液を、EtOAc中、10重量%固体のC4MH−ODAコポリマー(重量比70:30)溶液と混合した。得られた16重量%固体の溶液は、FS−2:C4MH−ODAの重量比が75:25(すなわち、3:1)であった。
【0086】
実施例6(EX−6)EtOAc/ヘプタン(重量で4/1)中、10重量%固体のFS−2溶液を、EtOAc中、10重量%固体のC4MH−ODAコポリマー(重量比70:30)溶液と混合した。得られた10重量%固体の溶液は、FS−2:C4MH−ODAの重量比が50:50(すなわち、1:1)であった。
【0087】
実施例7(EX−7)EtOAc/ヘプタン(重量で4/1)中、10重量%固体のFS−2溶液を、EtOAc中、10重量%固体のC4MH−ODAコポリマー(重量比70:30)溶液と混合した。得られた10重量%固体の溶液は、FS−2:C4MH−ODAの重量比が25:75(すなわち、1:3)であった。
【0088】
これらの溶媒系剥離組成物をそれぞれを、8番メイヤーロッドを用いてポリエステルフィルム上にコーティングした。コーティングされたサンプルを、続いて、120℃で5分間硬化した。剥離性及び再接着性を決定するため、様々なシリコーン接着剤を用いて生じた剥離ライナーを評価した。
【0089】
PET裏打ちシリコーン接着剤テープをADH−1を用いて調製した。ドライラミネーションプロセスを用いて、生じたテープを様々なライナーに接着させた。生じたサンプルを、22℃及び50%相対湿度(「7d−RT」)、又は70℃(「7d−HT」)のいずれかで7日間放置した。剥離試験により測定した剥離力を表4に示す。ライナーから剥がされた接着剤の再接着力は、再接着試験を用いて評価した。この結果も表4にまとめている。比較目的で、PET裏打ちテープのサンプルをステンレス製パネルに直接積層した。このテープの接着剤は、決して剥離物質と接触させなかった。この参照再接着力は1,990g/25mmであった。
【0090】
【表6】

【0091】
実施例8(EX−8)EtOAc/ヘプタン(重量比4/1)中、10重量%固体のFS−2(94重量部のQ2−7786及び6重量部のQ2−7560架橋剤)溶液を、MEK中、10重量%固体のTHV−tp(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン熱可塑性ターポリマー(Dyneon,LLCのTHV−220))溶液と混合した。得られた10重量%固体の溶液は、FS−2:THV−tpの比が1:1であった。
【0092】
PET裏打ちシリコーン接着剤テープをADH−1を用いて調製した。ドライラミネーションプロセスを用いて、生じたテープをEX−7のライナーに接着させた。生じたサンプルを、22℃及び50%相対湿度(「7d−RT」)、又は70℃(「7d−HT」)のいずれかで7日間放置した。剥離力を剥離試験により測定し、ライナーから剥がされた接着剤の再接着力は、再接着試験を用いて評価した。7d−RTで放置したサンプルは、剥離力が13.9g/25mmであり、再接着力が1,940g/25mmであった。7d−HTで放置したサンプルは、剥離力が10.1g/25mmであり、再接着力が1,900g/25mであった。
【0093】
比較例7(CE−7)FS−1(97重量部のQ2−7785及び3重量部のQ2−7560架橋剤)を、EtOAc/ヘプタン(重量比4/1)中、10重量%溶液となるように調製した。
【0094】
比較例8(CE−8)CE−8は、MEK中、10重量%のTHV−tp(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン熱可塑性ターポリマー)溶液であった。
【0095】
実施例8(EX−8)CE−7及びCE−8の溶液をブレンドし、溶媒混合液中の10重量%固体において、3:1重量比のFS−1:THV−tpを達成した。
【0096】
実施例9(EX−9)CE−7及びCE−8の溶液をブレンドし、溶媒混合液中の10重量%固体において、1:1重量比のFS−1:THV−tpを達成した。
【0097】
実施例10(EX−10)CE−7及びCE−8の溶液をブレンドし、溶媒混合液中の10重量%固体において、1:3重量比のFS−1:THV−tpを達成した。
【0098】
これらの溶媒系剥離組成物をそれぞれを、10番メイヤーロッドを用いてポリエステルフィルム上にコーティングした。コーティングされたサンプルを、続いて、120℃で10分間硬化した。剥離性及び再接着性を決定するため、シリコーン接着剤を用いて生じた剥離ライナーを評価した。
【0099】
PET裏打ちシリコーン接着剤テープをADH−1を用いて調製した。ドライラミネーションプロセス及びウェットキャスティングプロセスの両方を用いてサンプルを調製した。生じたサンプルを、22℃及び50%相対湿度(「3d−RT」)、又は70℃(「3d−HT」)のいずれかで3日間放置した。剥離力を剥離試験により測定し、ライナーから剥がされた接着剤の再接着力は、再接着試験を用いて評価した。結果を表5a及び表5bにまとめる。
【0100】
【表7】

【0101】
【表8】

【0102】
CE−8の剥離ライナーを用いて調製したドライラミネートサンプル及びウェットキャスティングサンプルの両方は剥がれなかった、すなわち、接着剤テープはライナーから取り除けなかった。したがって、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン熱可塑性ターポリマー単独では剥離物質として機能しなかったが、THV−tpの有意な量をフルオロシリコーンと、例えば、FS1:THV−tpを1:3でブレンドしたときでさえ、良好な剥離性を得た。
【0103】
比較例9(CE−9)FS−2(94重量部のQ2−7786及び6重量部のQ2−7560架橋剤)を、EtOAc/ヘプタン(重量比4/1)中、10重量%溶液に希釈した。最初は、この溶液はPETフィルム基材を濡らさない。しかし放置後、溶液は基材を濡らし、試験ライナーの形成に使用できた。
【0104】
実施例11(EX−11)10重量%のCE−9溶液(90重量部)を、MEK中、10重量%のTHV−tp溶液(CE−8、10重量部)と混合し、FS−2:THVの重量比9:1を得た。
【0105】
実施例12(EX−12)10重量%のCE−9溶液(80重量部)を、MEK中、10重量%のTHV−tp溶液(CE−8、20重量部)と混合し、FS−2:THVの重量比4:1を得た。
【0106】
実施例13(EX−13)。10重量%のCE−9溶液(50重量部)を、MEK中、10重量%のTHV−tp溶液(CE−8、50重量部)と混合し、FS−2:THVの重量比1:1を得た。
【0107】
PET裏打ちシリコーン接着剤テープをADH−1を用いて調製した。ドライラミネーションプロセス及びウェットキャスティングプロセスの両方を用いてサンプルを調製した。生じたサンプルを、22℃及び50%相対湿度(「7d−RT」)、又は70℃(「7d−HT」)のいずれかで7日放置した。剥離力を剥離試験により測定し、ライナーから剥がされた接着剤の再接着力は、再接着試験を用いて評価した。結果を表6a及び表6bにまとめる。
【0108】
【表9】

【0109】
【表10】

【0110】
非直鎖フルオロアクリレートポリマーを用いる比較例。
【0111】
C4MH−PEGDA C4MH及び二官能性アクリレート(PEGDA)のコポリマーを米国特許第7,279,210号に記載されるように調製し、EtOAc及びDMFの95:5ブレンド中、10%固体に希釈した。
【0112】
比較例10(CE−10)EtOAc/ヘプタン(比4:1)中、10重量%のFS−1溶液(「SOLN−3」)及びEtOAc/DMF(95:5)中、10重量%のC4MH−PEGDA溶液(「SOLN−4」)の部分を混合し、3:1の重量比のFS−1とC4MH−PEGDAを得た。
【0113】
比較例11(CE−11)SOLN−3及びSOLN−4を混合し、1:1の重量比のFS−1とC4MH−PEGDAを得た。
【0114】
比較例12(CE−12)SOLN−3及びSOLN−4を混合し、1:3の重量比のFS−1とC4MH−PEGDAを得た。
【0115】
これらの剥離組成物をそれぞれを、10番メイヤーロッドを用いてポリエステルフィルム上にコーティングした。コーティングされたサンプルを、続いて、120℃で10分間硬化したCE−10を除いて、150℃で10分間硬化した。
【0116】
PET裏打ちシリコーン接着剤テープをADH−1を用いて調製した。ドライラミネーションプロセス及びウェットキャスティングプロセスの両方を用いてサンプルを調製した。生じたサンプルを、22℃及び50%相対湿度(「3d−RT」)、又は70℃(「3d−HT」)のいずれかで3日間放置した。剥離力を剥離試験により測定し、ライナーから剥がされた接着剤の再接着力は、再接着試験を用いて評価した。結果を表7a及び表7bにまとめる。未ブレンドFS1をフルオロシリコーン剥離物質として使用するCE−7の結果を、比較目的で含める。
【0117】
【表11】

【0118】
【表12】

【0119】
実施例14(EX−14)フルオロオレフィン系エラストマー性TFE/VF2コポリマー(Elf Atochem North America,Inc.(Pennsylvania)から商品名KYNAR 7201として入手可能)をMEKに溶解し、10重量%の溶液を得た。この溶液を、EtOAc/ヘプタン(重量比4/1)中、10重量%のFS−2溶液(94重量部のQ2−7786及び6重量部のQ2−7560架橋剤)と混合した。得られるブレンドにおけるFS−1とエラストマー性フルオロオレフィンコポリマーの重量比は1:1であった。
【0120】
実施例15(EX−15)。THV−el、フルオロオレフィン系エラストマー性テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンターポリマー(Dyneon LLCから商品名FT−2430として入手可能)を、MEKに溶解し、10重量%の溶液を得た。この溶液を、EtOAc/ヘプタン(重量比4/1)中、10重量%のFS−2溶液(94重量部のQ2−7786及び6重量部のQ2−7560架橋剤)と混合した。得られるブレンドにおけるFS−1とエラストマー性フルオロオレフィンターポリマーの重量比は1:1であった。
【0121】
これらの剥離組成物をそれぞれを、10番メイヤーロッドを用いてポリエステルフィルム上にコーティングした。コーティングされたサンプルを、続いて、120℃で10分間硬化した。
【0122】
PET裏打ちシリコーン接着剤テープをADH−1を用いて調製した。ドライラミネーションプロセス及びウェットキャスティングプロセスの両方を用いてサンプルを調製した。生じたサンプルを、22℃及び50%相対湿度(「3d−RT」)、又は70℃(「3d−HT」)のいずれかで3日間放置した。剥離力を剥離試験により測定し、ライナーから剥がされた接着剤の再接着力は、再接着試験を用いて評価した。結果は表8に要約されている。
【0123】
【表13】

【0124】
実施例16(EX−16)FS−1とC4MH−ODAフルオロポリマー(重量で70:30)の1:1ブレンド(重量で)を、EtOAc、トルエン、及びヘプタンの溶媒ブレンド中、16重量%溶液となるように調製した。
【0125】
実施例17(EX−17)FS−1とTHV−tpフルオロポリマーの1:1ブレンド(重量で)を、EtOAc、MEK、及びヘプタンの溶媒ブレンド中、10重量%溶液となるように調製した。
【0126】
これらの剥離組成物をそれぞれを、ポリエステルフィルム上にコーティングし、硬化した。PET裏打ちシリコーン接着剤テープをADH−4を用いて調製した。ドライラミネーションプロセスを用いてサンプルを調製した。生じたサンプルを、22℃及び50%相対湿度(「3d−RT」)、又は70℃(「3d−HT」)のいずれかで3日間放置した。剥離力を剥離試験により測定し、ライナーから剥がされた接着剤の再接着力は、再接着試験を用いて評価した。結果を表9にまとめる。
【0127】
【表14】

【0128】
C4MHとその他アクリレート及びビニルアセテートのコポリマーを以下のように調製した。
【0129】
C4MH/BA/ODA 13.67gのEtOAc中、0.050gの2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(DuPontから商品名Vazo−67として入手可能)の存在下で、23.33gのEtOAc中30重量% C4MH溶液(7.0g固体、MW=723、9.68mmol)を1.0gのBA及び2.0gのODA(MW=324.55、6.16mmol)と反応させることにより、C4MH(70重量%)、ブチルアクリレート(BA、10重量%)、及びオクタデシルアクリレート(ODA、20重量%)のコポリマーを調製した。電磁撹拌棒を加えた。溶液は、窒素で1分間バブリングした。封をしたボトルを70℃の油浴に置き、24時間撹拌しながら重合した。FTIRからは、アクリレートのシグナルは得られなかった。以降の処方のため、25%溶液をEtOAcで10%まで希釈した。
【0130】
C4MH/BMA同様に、0.05gの2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の存在下で、7.0gのC4MH(23.33gの30% EtOAc溶液)を23.67g EtOAc中3.0gのBMAと70℃で24時間反応させることにより、C4MH(70重量%)及びブチルメタクリレート(BMA、30重量%)のコポリマーを調製した。FTIRからは、アクリレートのシグナルは得られなかった。以降の処方のため、得られた25%溶液をEtOAcで10%まで希釈した。
【0131】
C4MH/IOA米国特許第7,199,197号の実施例24に従って、C4MH(80重量%)及びイソオクチルアクリレート(IOA、20重量%)のコポリマーを調製した。
【0132】
C4MH/VA 0.05gの2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の存在下で、6.0gのC4MH(20gの30重量% EtOAc溶液)及び16g EtOAc中4.0gのビニルアセテート(VA)を反応させることにより、C4MH(60重量%)及びビニルアセテート(VA、40重量%)のコポリマーを調製した。溶液は、窒素で1分間バブリングした。封をしたボトルを70℃の油浴中で重合し、24時間電磁撹拌しながら重合した。FTIRからは、アクリレートのシグナルは得られなかった。更なる処方のため、25重量%溶液をEtOAcで10重量%まで希釈した。
【0133】
続いて、表10にまとめるように、直鎖フッ素化コポリマーを、FS−2フルオロシリコーン(94重量部のQ2−7786及び6重量部のQ2−7560架橋剤、4/1重量比のEtOAc/ヘプタン中10重量%)とブレンドした。
【0134】
【表15】

【0135】
得られたブレンドを10番メイヤーロッドを用いてポリエステルフィルム上にコーティングし、120℃で10分間硬化した。PET裏打ちシリコーン接着剤テープをADH−1を用いて調製した。生じたサンプルを、22℃及び50%相対湿度(「7d−RT」)、又は70℃(「7d−HT」)のいずれかで7日間放置した。表11にまとめるように、剥離力を剥離試験により測定し、再接着力は再接着試験を用いて評価した。比較目的で、PET裏打ちテープのサンプルをステンレス製パネルに直接積層した。このテープの接着剤は、決して剥離物質と接触させなかった。この再接着力は1,620g/25mmであった。
【0136】
【表16】

【0137】
本開示の剥離組成物を用い、接着剤物品、例えばテープ及びラベルと用いるものなどの剥離ライナーを形成できる。代表的な剥離ライナーを図1に示す。剥離ライナー20は、第1基材25及び、基材20の第1主表面21に接着される剥離層30を備える。いくつかの実施形態では、第2剥離層は、基材20の第2主表面22に接着されてよい。代表的な接着剤物品を図2に示す。接着剤物品10は、第1基材25と、第1基材25の第1主表面に接着される剥離層30と、を含む剥離ライナー20を備える。接着剤物品10は、剥離層30と接触する接着剤層40も備える。いくつかの実施形態では、第2基材50は接着剤層40に粘着する。いくつかの実施形態では、接着剤物品はそれ自体又は接着剤物品の一部に巻かれてもよく、接着剤層40が、別の剥離層でコーティングされてよい第1基材25の第2主表面と接触するように、互いに積み重なってもよい。この任意の第2剥離層は、第1剥離層から独立して選択してよい。いくつかの実施形態では、第2剥離層は、フルオロ官能シリコーン剥離ポリマー、例えば、本開示の剥離物質を含んでよい。
【0138】
代表的な接着剤物品としては、接着剤転写テープ、引き伸ばし剥離物品、発泡体コアテープなどの一重及び二重コーティングテープ、自己巻き取りテープ、印刷用粘着テープ、ラベルストック、及び二重ライナー構成体が挙げられる。いくつかの実施形態では、剥離層、及び任意にその下部の基材を、型押ししてよい。いくつかの実施形態では、本開示の剥離物質を、撥水及び/又は撥油コーティングとして用いることもできる。
【0139】
本発明の様々な改良及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロ官能シリコーン剥離ポリマーと直鎖フルオロポリマーとのブレンドを含み、前記フルオロ官能シリコーン剥離ポリマーと前記直鎖フルオロポリマーの重量比が、3:1〜1:20である、剥離物質。
【請求項2】
フルオロ官能シリコーン剥離ポリマーと直鎖フルオロアクリレートポリマーとのブレンドを含み、前記直鎖フルオロアクリレートポリマーが下式で画定される少なくとも1つのモノマーから得られる
【化1】

(式中、nは1〜6の範囲の整数であり、
pは2〜30の範囲の整数であり、
R’はH、CH、又はFであり、
Xは
【化2】

−OC2q−、又は−C2q−であり、
Rは水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、
mは2〜8の範囲の整数であり、
は、C2n+1であり、
yは0〜6の範囲の整数であり、
qは1〜8の範囲の整数であり、
Aがヒドロカルビレン基を表す)、剥離物質。
【請求項3】
前記フルオロ官能シリコーン剥離ポリマーと直鎖フルオロポリマーとの重量比が10:1〜1:20である、請求項2に記載の剥離物質。
【請求項4】
前記直鎖フルオロポリマーが非シリコーン直鎖フルオロポリマーである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の剥離物質。
【請求項5】
前記直鎖フルオロポリマーがフルオロアクリレートポリマーである、請求項4に記載の剥離物質。
【請求項6】
前記フルオロアクリレートポリマーが下式で画定される少なくとも1つのモノマーから得られる
【化3】

(式中、nは1〜6の範囲の整数であり、
pは2〜30の範囲の整数であり、
R’はH、CH、又はFであり、
Xは
【化4】

−OC2q−、又は−C2q−であり、
Rは水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、
mは2〜8の範囲の整数であり、
は、C2n+1であり、
yは0と6を含む0〜6の範囲の整数であり、
qは1と8を含む1〜8の範囲の整数であり、
Aがヒドロカルビレン基を表す)、請求項5に記載の剥離物質。
【請求項7】
前記フルオロアクリレートポリマーが下式で画定される少なくとも1つのC4MHモノマーから得られる
【化5】

(式中、R’が水素である)、請求項6に記載の剥離物質。
【請求項8】
前記直鎖フルオロポリマーが、C4MHモノマーと少なくとも1つのモノ−(メタ)アクリレートのコポリマーとを含む、請求項7に記載の剥離物質。
【請求項9】
前記直鎖フルオロポリマーがフルオロオレフィン系ポリマーである、請求項1に記載の剥離物質。
【請求項10】
フルオロ官能シリコーン剥離ポリマーとフルオロオレフィン系ポリマーとのブレンドを含む剥離物質。
【請求項11】
前記フルオロオレフィン系ポリマーが、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、及びフッ化ビニリデンからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーの反応生成物を含む、請求項9又は10に記載の剥離物質。
【請求項12】
前記フルオロオレフィン系ポリマーがエラストマー性フルオロオレフィン系ポリマーである、請求項9〜11のいずれか一項に記載の剥離物質。
【請求項13】
前記フルオロオレフィン系ポリマーが熱可塑性フルオロオレフィン系ポリマーである、請求項9〜11のいずれか一項に記載の剥離物質。
【請求項14】
前記フルオロオレフィン系ポリマーが、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンのターポリマーである、請求項12又は13に記載の剥離物質。
【請求項15】
前記フルオロオレフィン系ポリマーが、非フッ素化オレフィン、塩素化オレフィン、及びフッ素化ビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つの追加のモノマーの反応生成物を含む、請求項14に記載の剥離物質。
【請求項16】
基材と、前記基材の少なくとも1つの主表面に結合される請求項1〜15のいずれか一項に記載の剥離物質と、を含む、剥離ライナー。
【請求項17】
第1主表面及び第2主表面を有する接着剤を含み、前記接着剤の前記第1主表面が請求項1〜16のいずれか一項に記載の剥離物質と接触する、接着剤物品。
【請求項18】
前記接着剤がシリコーン接着剤を含む、請求項17に記載の接着剤物品。
【請求項19】
前記シリコーン接着剤がポリ(ジオルガノシロキサン)を含む、請求項18に記載の接着剤物品。
【請求項20】
前記シリコーン接着剤がポリジオルガノシロキサン−ポリ尿素ブロックコポリマーを含む、請求項18に記載の接着剤物品。
【請求項21】
前記シリコーン接着剤がポリジオルガノシロキサン−ポリオキサミドコポリマーを含む、請求項18に記載の接着剤物品。
【請求項22】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の剥離物質を含むコーティング。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−512315(P2012−512315A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542303(P2011−542303)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/067855
【国際公開番号】WO2010/077811
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】