説明

ブレーキシステム

【課題】ABS、ESPのセンサ信号を送る為、ブレーキラインを使用する。
【解決手段】車両の少なくとも1つのホイール16を制動するためのブレーキシステム10であって、ホイール16に配属された少なくとも1つのブレーキアクチュエータ20と、液圧ユニット18と、液圧ユニットをブレーキアクチュエータ20に接続する、少なくとも1つの導電性のブレーキラインを備える少なくとも1つのブレーキライン経路32と、液圧を制御および/または調整するための制御装置24と、ホイール16に配属されたセンサ26と、制御装置24をセンサ26に信号技術的に接続する信号線路40とを備えるブレーキシステムにおいて、ブレーキライン38または少なくともいずれか1つのブレーキライン38が信号線路40を形成しているか、または共に形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の少なくとも1つのホイールを制動するためのブレーキシステムであって、ホイールに配属された少なくとも1つのブレーキアクチュエータと、液圧ユニットと、液圧ユニットをブレーキアクチュエータに接続する、少なくとも1つの導電性のブレーキラインを備える少なくとも1つのブレーキライン経路と、液圧を制御および/または調整するための制御装置と、ホイールに配属されたセンサと、制御装置をセンサに信号技術的に接続する信号線路とを備えるブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなブレーキシステムは、例えば、アンチロック・ブレーキシステム(ABS)および/またはエレクトロニック・スタビリティ・プログラム(ESP)などの電気的支援装置を備える自動車のホイールを制動するためのブレーキシステムとして既知である。このブレーキシステムは、ホイールの数に対応した数だけ配属されたブレーキアクチュエータと、液圧ユニットと、液圧ユニットをブレーキアクチュエータに接続する、それぞれ少なくとも1つの導電性のブレーキラインを備える複数のブレーキライン経路と、液圧を制御および/または調整するための制御装置と、ホイールの数に対応した数だけ配属された適宜な回転数センサ(または別のセンサ)、および回転数センサと信号技術的に接続された信号線路を備える制御装置とを備える。
【発明の概要】
【0003】
本発明によるシステムでは、ブレーキラインまたは少なくともいずれか1つのブレーキラインは信号線路を形成しているか、または共に形成している。このようなブレーキシステムは、対応した車両がより小さい空車重量を有するので、信号線路で重量低減、ひいてはCO排出量の低減を可能にする。本発明との関連では、少なくとも1つのブレーキラインの信号線路を共に形成するとは、適宜なブレーキラインの少なくとも一部が信号線路の一部をも形成するということである。車両は、好ましくは自動車、特に乗用車または商用車である。
【0004】
特に、信号伝達のために必要な基準電位(接地電位)は、少なくとも部分的に、自動車の車体を介して伝達される。少なくとも、信号線路を形成するために使用される導電性のブレーキライン部分は車体から電気絶縁されている。
【0005】
ブレーキシステムは、特に電気的な支援装置、例えば、アンチロック・ブレーキシステム(ABS)および/またはエレクトロニック・スタビリティ・プログラム(ESP)を備えるブレーキシステムである。アンチロック・ブレーキシステムは、主に自動車で使用されるが、しかしながら鉄道および飛行機着陸装置でも使用され、走行確実性を改善し、ホイールの走行面における摩耗を低減するための技術システムである。強い制動時にはホイールに生じ得るロックにブレーキ圧を低減することにより反作用を加える。エレクトロニック・スタビリティ・プログラム(ESC)は、個々のホイールの意図的な制動によって車両の発進に反作用する自動車の電子制御式走行支援システムを示す。センサは、特にこの電子的支援装置の構成素子である。
【0006】
センサ信号を伝達するためにブレーキラインを使用することの別の利点は、ABSシステム(ABSプラグ・アンド・プレイ)を簡単に後から装着できることである。多くの国々で既存の車両にはABSが後から設けられている。この点で、このシステムは、ブレーキラインのみを設けた場合に同時に1つまたは複数の信号線路の部分をも設けられるという利点を有する。したがって、ケーブルハーネスの組込みは不可欠ではない。
【0007】
本発明の好ましい実施形態によれば、液圧ユニットに向いたブレーキライン経路の終端部は信号線によって制御装置に信号技術的に接続されており、および/またはブレーキアクチュエータに向いたブレーキライン経路の終端部は別の信号線によってセンサに信号技術的に接続されている。
【0008】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、制御装置が液圧ユニットに固定されており、これらの2つの構成素子は液圧ユニットを形成している。このような構成では、制御装置および液圧ユニットは直接に互いに空間的に近傍に配置されている。したがって、ブレーキライン経路の特に長い部分および信号線路を使用することができる。
【0009】
さらに有利には、ブレーキラインまたはいずれか1つのブレーキラインは液圧ユニットに直接に接続されている。制御ユニットおよび液圧ユニットが液圧ユニットを形成している場合には、ブレーキラインと信号ユニットとの間に適宜に短い信号線のみが必要となる。
【0010】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、ブレーキラインはねじ結合によって液圧ユニットに接続されている。このようなねじ結合は現在では既に一般的である。多くの場合、付加的なシールは不要となる。
【0011】
本発明の別の有利な構成では、ブレーキラインまたは少なくともいずれか1つのブレーキラインは少なくとも1つの終端部に少なくとも1つの接続部を設けるためにフランジを備える。有利には、信号線はブレーキラインにフランジで接触する。
【0012】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、信号線は制御装置との接続のために完全に液圧ユニットの外部に延びている。このようなラインのガイドは、特に後から装備することがもともと想定されていなかった信号線を後から装備するためには特に有利である。
【0013】
代替的に、信号線の少なくとも一部は制御装置との接続のために液圧ユニットの内部に延びている。
【0014】
このようにラインをガイドした場合には、信号線は特に良好に保護されている。
【0015】
電圧供給を必要とするセンサでは、特にセンサは信号線を介して電圧を供給され、同時に調整されたセンサ信号が伝送される。
【0016】
最後に、有利には、センサは回転数センサとして形成されている。回転数センサは、例えば電圧供給を必要とするセンサである。
【0017】
次に本発明を対応した図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好ましい実施形態による自動車として形成された車両のためのブレーキシステムを示す概略図である。
【図2】ブレーキラインとブレーキラインに接続された信号線との接続部および接続部を収容するための液圧ユニット内の収容部を示す図である。
【図3】ブレーキラインの接続部ならびに液圧ユニットの収容部および液圧ユニットに接続された信号線を示す図である。
【図4】ブレーキアクチュエータに接続された、信号線を介してセンサに電気接続された接続部を備えるブレーキラインを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、自動車として形成された車両のためのブレーキシステム10を概略図で示す。ブレーキシステム10の他に車両の前車軸および後ろ車軸12,14に配置された車両のホイール16も概略的に示されている。ブレーキシステム10は、しばしばブレーキ装置とも呼ばれる。ここに示したブレーキシステム10は、電気的な支援装置、例えば、アンチロック・ブレーキシステム(ABS)を備える。このブレーキシステム10は、液圧ユニット18、ホイールブレーキ・アクチュエータとして形成されたブレーキアクチュエータ20、液圧ユニット18をブレーキアクチュエータ20と流体技術的に接続するブレーキラインシステム22、制御装置24、ホイール16のそれぞれの回転数を検出する回転数センサとして形成された複数のセンサ26、およびセンサ26を制御装置24に信号技術的に接続する信号線システム28を備える。この場合、ブレーキラインシステム22の導電性部分は同時に信号線システム28の部分として機能する。制御装置24は、ブレーキシステム10を制御および/または調整するための制御および/または調整装置である。この制御器24は液圧ユニット18に固定されており、ブレーキシステム10の2つの構成素子18,24は液圧ユニット30を形成している。
【0020】
ブレーキラインシステム22は、2つの部分システム32,34からなっており、一方の部分システム32は前車軸12のホイール16に配属されており、他方の部分システム34は後ろ車軸14のホイール16に配属されている。この場合、ブレーキラインシステム22は、中央の液圧ユニット18と個々のブレーキアクチュエータ20との間の複数のブレーキライン経路36を形成している。ブレーキアクチュエータ20は、例えば、ドラムブレーキではホイールシリンダとして形成されており、および/またはディスクブレーキではブレーキパッドを変位するピストンとして形成されている。それぞれのブレーキライン経路36は少なくとも1つのブレーキライン38を備える。それぞれのブレーキライン38は、柔軟なブレーキラインまたは堅固なブレーキラインとして形成されていてよい。図1に示したブレーキシステム10では、それぞれのブレーキライン経路36は、液圧ユニット18に接続された堅固なブレーキラインと、対応したブレーキアクチュエータ20に接続された柔軟なブレーキラインとを直列に配置して形成されている。例えば、このためにそれぞれの部分システム32,34は、液圧ユニット18に向いた中央の堅固なブレーキラインを備え、この堅固なブレーキラインは、T字形部材によって、それぞれのホイール16に配属された2つの柔軟なブレーキラインに接続されている。堅固および/または柔軟なブレーキライン34は、導電性のブレーキライン34として構成されている。この導電性のブレーキライン34は、例えば、鋼またはニッケル銅(NiCu)からなっている。随意に、導電性ではないブレーキラインもしくはブレーキライン部分を設けることももちろん可能である。
【0021】
信号線システム28は制御装置24もしくは信号装置24の適宜な端子をセンサ26もしくセンサ26の適宜な端子に接続している。信号線システム28は制御装置24とセンサ26との間の信号線路40を形成している。この場合、信号線路40の少なくとも一部はブレーキライン38の少なくとも一部にわたって延びている。図1に示した実施例では、それぞれの信号線路40の内部では、独立した信号線42が制御装置24を、液圧ユニット18に接続されたブレーキライン38に接続しており、他の独立した信号線44がセンサ26を、ブレーキアクチュエータ20に接続されたブレーキライン38に接続している。
【0022】
図2は、ブレーキライン38の終端部分を示す。ブレーキライン38もしく少なくともいずれか1つのブレーキライン38には、いずれか一方の終端部または両方の終端部に折曲げフランジとして形成されたフランジ46が設けられている。このフランジ46はねじ結合部48によって液圧ユニット18に結合されている。このために、フランジ46は雄ねじ山によって、液圧ユニット18に雌ねじ山を備える止まり穴として形成されている収容部50にねじ込まれる。収容部50にはユニット内部通路52が接続している。フランジ46によって、付加的なシールなしに(液)密な接続が形成される。
【0023】
制御装置24に接続された信号線42は、ブレーキライン38に、接触カラーとして形成された接触素子54によって電気的にフランジ46で接触する。液圧ユニット18との接続を形成するこのフランジ46は、さらにブレーキライン38との導電的な接続のためにも働く。ブレーキライン38と、基準電圧としての(車両)接地との間の電気絶縁が、例えば、液圧ユニット18の非導電性に形成された領域に収容部50が形成されており、および/またはねじ結合部48を形成するために用いられるフランジ46の部分が非導電性材料からなっていることによって得られる。制御装置24は、適宜な制御装置コネクタによって接地との接続を有している。
【0024】
図3は、液圧ユニット18の内部に延びる信号線42によってフランジ46と制御装置24との信号技術的な接続が得られる代替的な信号接続部を示す。この代替的な実施形態は、実質的に図2に示した実施形態に対応しているので、ここでは相違点のみを説明する。信号線42は、この実施形態では液圧ユニット18の内部の孔56に延びている。これにより、差込み接続部と制御ユニット24との接続の数を減じることができる。
【0025】
最後に、図4は、配属されたホイール16の領域のブレーキアクチュエータ20、センサ26、柔軟なブレーキライン38および信号線44からなる装置を示す。ブレーキライン38によって形成されたブレーキ線路36は、柔軟なブレーキラインと堅固なブレーキラインとによる直列配置を有し、ブレーキアクチュエータ20に向いた、柔軟なブレーキラインを備える終端部のみが示されている。堅固なブレーキラインは図4には示さず、2つのブレーキライン38の間で車体部分58に固定された移行部のみが示されている。この移行部は特に柔軟なブレーキラインのフランジ46によって形成される。このフランジ46は、接触素子54によって別の信号線44に電気接続されている。この(柔軟な)信号線44は、他方の端部で、回転数センサとして形成されたセンサ26に接触する。
【0026】
柔軟なブレーキラインの他方の端部には同様にフランジ46が設けられている。このフランジ46によって、ブレーキラインはブレーキアクチュエータ20に流体技術的に接続されている。このために、フランジ46は雄ねじ山によって、雌ねじ山を備える止まり穴として形成されているブレーキアクチュエータ20の収容部50にねじ込まれている。
【0027】
堅固なブレーキラインは、液圧ユニット18から車体の車体部分58まで延びており、柔軟なブレーキラインはブレーキアクチュエータ20のための終端部を形成している。対応したブレーキライン経路36のこの部分は、ホイールの運動に基づき柔軟である必要がある。このために、センサ26との接続も柔軟な信号線44によって行う必要がある。センサ26は、例えば、ホイール16のホイールハブ60に固定されている。
【符号の説明】
【0028】
16 ホイール
18 液圧ユニット
20 ブレーキアクチュエータ
24 制御装置
26 センサ
30 液圧ユニット
32 ブレーキライン経路
34 ブレーキライン
36 ブレーキライン経路
38 接続ライン
40 信号線路
42,44 信号線
46 フランジ
50 収容部
54 接触素子
56 孔
58 車体部分
60 ホイールハブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の少なくとも1つのホイール(16)を制動するためのブレーキシステム(10)であって、ホイール(16)に配属された少なくとも1つのブレーキアクチュエータ(20)と、液圧ユニット(18)と、該液圧ユニットをブレーキアクチュエータ(20)に接続する、少なくとも1つの導電性のブレーキラインを備える少なくとも1つのブレーキライン経路(32)と、液圧を制御および/または調整するための制御装置(24)と、ホイール(16)に配属されたセンサ(26)と、制御装置(24)をセンサ(26)に信号技術的に接続する信号線路(40)とを備えるブレーキシステムにおいて、
ブレーキライン(38)または少なくともいずれか1つのブレーキライン(38)が信号線路(40)を形成しているか、または共に形成していることを特徴とする、ブレーキシステム(10)。
【請求項2】
前記液圧ユニット(18)に向いたブレーキライン経路(36)の終端部が、信号線(44)によって前記制御装置(24)に信号技術的に接続されており、および/またはブレーキアクチュエータ(20)に向いたブレーキライン経路(36)の終端部が、信号線(42)によって前記センサ(26)に信号技術的に接続されている、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記制御装置(24)が前記液圧ユニット(18)に固定されており、これらの2つの構成素子(18,24)が液圧ユニット(30)を形成している、請求項1または2に記載のブレーキスステム。
【請求項4】
前記ブレーキライン(38)またはいずれか1つのブレーキライン(38)が、前記液圧ユニット(18)に直接に接続されている、請求項1から3までのいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記ブレーキライン(38)が、ねじ結合によって前記液圧ユニット(18)に接続されている、請求項3に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
ブレーキライン(38)または少なくともいずれか1つのブレーキライン(38)は少なくとも1つの終端部に少なくとも1つの接続部を設けるためにフランジを備える、請求項1から5までのいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項7】
信号線(42,44)が、ブレーキライン(34)にフランジで接触する、請求項1から6までのいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項8】
信号線(44)が、制御装置(24)との接続のために完全に液圧ユニット(18)の外部に延びている、請求項1から7までのいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項9】
信号線(44)の少なくとも一部が前記制御装置(24)との接続のために前記液圧ユニット(24)の内部に延びている、請求項1から8までのいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項10】
前記センサ(26)が、回転数センサとして形成されている、請求項1から9までのいずれか一項に記載のブレーキシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−10496(P2013−10496A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140648(P2012−140648)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】