説明

ブレーキプーリのバランス確認用装置

【課題】 ブレーキプーリのバランスを予め確認して不良品を発見する。
【解決手段】 軸21の両端部にグリースを抜いた軸受25を取り付け、取付台26上のVブロック部27上に支持させる。ブレーキプーリ18のボス部19の孔20に挿入する軸21の部分を、該孔20の内径よりも僅かに小さい大径部22とする。軸21の大径部22にねじ部22aと22bを形成する。このねじ部22aと22bに円錐ナット23aと23bを螺合させて、該円錐ナット23aと23bの各円錐部24を、上記ボス部19の孔20内にねじ込みに挿入することにより調芯させるようにする。この状態で軸21を中心にブレーキプーリ18を回転させてバランスを確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体駐車場やクレーン、その他で用いられる巻上機のブレーキを構成するブレーキプーリのバランス確認用装置に関するもので、主として、摩擦ブレーキのようにブレーキシューで押されて制動させられるようなブレーキプーリのバランス確認用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、立体駐車場とか天井クレーン等の巻上機のブレーキには、摩擦により回転が止められるようにしてあるブレーキプーリが用いられている。
【0003】
図4及び図5は一例として、従来の巻上式エレベータのかごを運転する巻上機のブレーキについて示すもので、巻上式エレベータの昇降路2に上下移動可能に配設されたかご1があり、このかご1には、釣合い錘り3がロープ4を介して連結されている。ロープ4は昇降路2の上部に位置する駆動シーブ5、そらしシーブ6に掛けられており、駆動シーブ5をモータ7により駆動軸8を介して回転することにより、かご1が上下移動するようにしてある。上記駆動軸8にはブレーキ9が設けられ、このブレーキ9が作動することにより駆動軸8を制動するようにしてある。又、上記ブレーキ9は、駆動軸8に連結されたブレーキプーリ10と、このブレーキプーリ10に付勢力を受けて摩擦接触する一対のブレーキレバー11,12と、このブレーキレバー11,12を支点13,14を中心に揺動(開閉)させるソレノイド15からなっている。ブレーキレバー11,12には、ライニング16,17が貼着され、ソレノイド15の作動の停止によってブレーキレバー11,12のライニング16,17がブレーキプーリ10に摩擦接触して制動するようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
上記のように駆動軸8に連結されているブレーキプーリ10は、駆動軸8とともに高速回転(たとえば、1000rpm)させられるものであり、このようなブレーキプーリ10自体がバランスの崩れたものであると、上記のように高速回転させるときに大きな振動を発生させることになる。
【0005】
そのため、上記のような巻上機に用いられるブレーキプーリは、バランスの良いものであることが要求される。
【0006】
【特許文献1】特開平10−279216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記のようなブレーキプーリは、ほとんどが鋳物製品であり、鋳型に溶触した金属を注入する鋳造によって製作されている。そのため、製品としてのブレーキプーリの内部に空洞、いわゆる鋳巣が生じることがあり、この鋳巣が大きいと、その鋳巣のある部分は他の部分に比して重量が軽くなり、回転方向に重心位置のずれが生じ、バランスが崩れたものとなる。
【0008】
このようなバランスが崩れたブレーキプーリは、高速回転させたときに、前記したとおりの振動を発生させる原因となる。
【0009】
このようなブレーキプーリの鋳造においては、成形品内部に大小に拘らず鋳巣が形成されることがないように細心の注意をしながら熟練技術者により鋳造されていたときは、バランスの良いものが製作されていたが、近年における熟練技術者の不足に伴い、鋳造されるブレーキプーリの内部に鋳巣があるものも出現している。
【0010】
これまでは、上記ブレーキプーリのバランスを確認する手段はなく、鋳造されたブレーキプーリを実機として巻上機のブレーキに採用した後、振動が発生したときは、バランスが悪いブレーキプーリであると判断して、別のブレーキプーリに取り替えるようにしているのが実状である。そのため、多くの無駄な時間と労力を消費するという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、新しく鋳造されたブレーキプーリを実機に使用する前にバランスの確認を行って、バランスが崩れているか否かの判断をし、バランスの悪いものは使用しないようにするための見分け作業を簡単に行えるようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、両端部に軸受を備えて取付台上に軸受を介して回転自在に支持させるようにした軸を、ブレーキプーリのボス部の孔の内径よりも僅かに小さい外径とし、且つ該軸の上記ボス部の孔に挿入する部分の外周面をねじ部とし、該ねじ部に螺合させた2つの円錐ナットの各円錐部を上記ボス部の両端側から孔内に挿入して調芯できるようにし、上記軸とともにブレーキプーリを回転させて該ブレーキプーリのバランスを確認できるようにした構成とする。
【0013】
又、上記構成において、軸受を、グリースが除去されている軸受として、軸の両端部を支持するようにした構成とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のブレーキプーリのバランス確認用装置によれば、以下の如き優れた効果を奏し得る。
(1)両端部に軸受を備えて取付台上に軸受を介して回転自在に支持させるようにした軸を、ブレーキプーリのボス部の孔の内径よりも僅かに小さい外径とし、且つ該軸の上記ボス部の孔に挿入する部分の外周面をねじ部とし、該ねじ部に螺合させた2つの円錐ナットの各円錐部を上記ボス部の両端側から孔内に挿入して調芯できるようにし、上記軸とともにブレーキプーリを回転させて該ブレーキプーリのバランスを確認できるようにした構成としてあるので、軸をブレーキプーリのボス部の孔に正確に調芯させることができて、軸を中心にブレーキプーリを少しずつ回転させることにより容易にバランスの良否を判断することができ、ブレーキプーリの不良品を容易に発見することができる。
(2)軸の両端部を支持する軸受は、グリースを抜いたものとしてあるので、グリースが回転時の抵抗となることもなく、精度の高いバランス確認をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1乃至図3は本発明の実施の一形態を示すもので、鋳造されたブレーキプーリ18のボス部19の孔20に挿入して取り付ける軸21と、該軸21の両端部を支持するVブロック部27と、該各Vブロック部27を上面に取り付けて内側にブレーキプーリ18が位置できるようにした取付台26とからなる構成とする。
【0017】
上記軸21は、上記ブレーキプーリ18のボス部19の位置に合わせて一端側の外径を、該ボス部19の孔20の内径より僅かに小さい程度の大径部22とすると共に、該大径部22の両端側を外周面にねじを刻設してねじ部22a,22bとし、且つ該ねじ部22aと22bに、それぞれ一端側を先細形状となるようにした円錐ナット23aと23bを、円錐部24がねじ部22a,22bとボス部19の孔20の内周面との間に入り得るように対向させて着脱可能に螺着させるようにする。
【0018】
更に、上記軸21の両端部には、グリースが除去してある小型の軸受(玉軸受)25を取り付け、該軸受25を上記取付台26上のVブロック部27に載置させて支持することにより、軸21を水平状態に支持して、自在に回転できるようにする。
【0019】
ブレーキプーリ18が鋳造されると、本発明のバランス確認用装置によりバランスが崩れているか否かの判断をするようにする。
【0020】
この場合は、新しく製造されたブレーキプーリ18のボス部19の孔20に軸21の大径部22を差し込むようにする。この際、軸21上の両ねじ部22aと20bに円錐ナット23aと23bが螺合させてある状態では、ボス部19の孔20に軸21を挿入することができないので、いずれか、一方、たとえば、円錐ナット23aをねじ部22aから取り外した状態として、該円錐ナット23aを取り外した側の軸21の一端側から軸21をボス部19の孔20内に挿入し、軸21の大径部22をボス部19の孔20の中央部分に位置させるようにする。
【0021】
このようにして軸21を一端側からボス部19の孔20に挿入して該ボス部19の一端側から軸21のねじ部22aが突出した状態になると、そのねじ部22aに円錐ナット23aを円錐部24が内側となるように螺合させ、しかる後、両ねじ部22a,22bに螺合させてある円推ナット23a,23bをそれぞれねじ込み方向に回転させるようにする。これにより、両方の円錐ナット23a,23bの各円錐部24がボス部19の両端部から孔20内に図3に拡大して示す如く楔状に入り込んでロックされ、軸21とブレーキプーリ18のボス部19とが固定される。
【0022】
この際、ブレーキプーリ18のボス部19の孔20径よりも軸21の大径部22の外径が小さくしてあるので、該軸21の大径部22を上記ボス部19の孔20内に挿入しただけでは、ボス部19の孔20の内周面と軸21の大径部22の外周面との間の隙間の存在により、ボス部19の孔20の中心と軸21の中心との芯ずれが生じるが、本発明では、円錐ナット23a,23bをねじ部22a,22bに螺合させて円錐ナット23a,23bの円錐部24を上記のようにボス部19の孔20内に喰い込ませるようにするので、自動的に且つ正確に調芯させることができる。
【0023】
上記のように軸21がブレーキプーリ18のボス部19に固定されると、上記軸21の両端部の軸受25を、取付台26上のVブロック部27上に載せ、取付台26の内側にブレーキプーリ18を位置させるようにして、ブレーキプーリ18のバランス確認作業を行うようにする。
【0024】
ブレーキプーリ18のバランスを確認するときは、軸21に取り付けられてVブロック部27上に軸受25を介して支持されたブレーキプーリ18を、たとえば、4分の1回転から6分の1回転位の僅かな角度ずつ回転させては止める動作を行う。このとき、ブレーキプーリ18を少し回転させて止める動作を繰り返しながら1回転させ、それぞれ止めたときに、ブレーキプーリ18がそのまま止っていれば、バランスがよく、一方、ブレーキプーリ18を少し回転させながらその都度止めたときにブレーキプーリ18が止っておられずに回転する場合は、バランスが悪いと判断する。これにより鋳巣によるバランス不良を発見し、不良品として使用しないようにする。
【0025】
上記のバランス確認において、軸21の両端部の軸受25は、グリースを抜いたものとしてあるため、グリースが抵抗となることもなく僅かな重量のアンバランスでも軸21が回るので、高精度に確認することができる。
【0026】
ブレーキプーリ18は、これが用いられるブレーキの大きさによりいろいろなサイズのものがあり、ボス部19の孔20もいろいろな大きさのものがあるが、本発明のブレーキプーリのバランス確認用装置における軸21は、ブレーキプーリ18のサイズに応じて数種類の大きさのものを用意しておき、ボス部19の孔20の大きさに合った大径部22の大きさのものを用い、円錐ナット23a、23bの円錐部24によりブレーキプーリ18のボス部19の孔20と軸21との調芯を行ってから、ブレーキプーリ18のバランスの確認を行うようにする。
【0027】
なお、本発明は、上記実施の形態のものに限定されるものではなく、たとえば、軸21の一端側に、ボス部19の孔20の内径よりも僅かに小さい外径の大径部22を設け、その両端部にねじ部22a,22bを設けたものを示したが、大径部22をねじ部22a,22bの外径とほぼ同じようにしても、ねじ部22a,22bに螺合させた円錐ナット23a,23bの円錐部24がボス部19の孔20内に入り込むことによって調芯されるものであればよいこと、又、本発明の装置でバランス確認を行うものとして、立体駐車設備や天井クレーン等の巻上機として用いられているブレーキのブレーキプーリを例示したが、ブレーキシューで押えて制動させる形式のものであれば、図示以外の形状を有するものでもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のブレーキプーリのバランス確認用装置の実施の一形態を示す一部切断側面図である。
【図2】図1のII−II方向矢視図である。
【図3】図1の一部の拡大断面図である。
【図4】従来のエレベータの概略正面図である。
【図5】図4に示される巻上機のブレーキを示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
18 ブレーキプーリ
19 ボス部
20 孔
21 軸
22 大径部
22a,22b ねじ部
23a,23b 円錐ナット
24 円錐部
25 軸受
26 取付台
27 Vブロック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部に軸受を備えて取付台上に軸受を介して回転自在に支持させるようにした軸を、ブレーキプーリのボス部の孔の内径よりも僅かに小さい外径とし、且つ該軸の上記ボス部の孔に挿入する部分の外周面をねじ部とし、該ねじ部に螺合させた2つの円錐ナットの各円錐部を上記ボス部の両端側から孔内に挿入して調芯できるようにし、上記軸とともにブレーキプーリを回転させて該ブレーキプーリのバランスを確認できるようにした構成を有することを特徴とするブレーキプーリのバランス確認用装置。
【請求項2】
軸受を、グリースが除去されている軸受として、軸の両端部を支持するようにした請求項1記載のブレーキプーリのバランス確認用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−267476(P2008−267476A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110450(P2007−110450)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】