説明

ブレーキ制御システム

【課題】ブレーキ操作量検出装置を使用する複数の制御装置を有するブレーキ制御システムにおいて、ブレーキ操作量検出装置を1つにするブレーキ制御システムを提供する。
【解決手段】ブレーキ操作量に基づいて、マスタシリンダ圧を制御するマスタシリンダ圧制御装置と、各車輪のホイールシリンダ圧を制御するホイールシリンダ圧制御装置と、マスタシリンダ圧を算出するための信号を出力する一つのマスタシリンダ圧検出装置と、を有し、マスタシリンダ圧制御装置は、一つのマスタシリンダ圧検出装置で出力された出力結果に基づいてマスタシリンダ圧を制御し、ホイールシリンダ圧制御装置は、一つのマスタシリンダ圧検出装置で出力された出力結果に基づいてホイールシリンダ圧を制御し、一つのマスタシリンダ圧検出装置は、ホイールシリンダ圧制御装置と電気的に接続されてホイールシリンダ圧制御装置から電源電圧が供給され、マスタシリンダに設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキ倍力装置としては、真空倍力装置が一般的であり、真空倍力装置では、内燃機関の吸込み圧力が使用されている。内燃機関の吸込み圧力の代用として真空ポンプを用いる場合もあるが、この場合、従来よりもブレーキ倍力装置故障の可能性が大きくなるため、ブレーキ倍力装置の故障時にアンチロックコントロールシステムのポンプを使用して制動力の低下を抑制することが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−513041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1によれば、ブレーキ倍力装置の故障時におけるアンチロックコントロールシステムによる制動力低下の抑制方法が不明確である。仮に、アンチロックコントロールシステムのポンプを使用して制動力の低下を抑制する際、当該システムのマスタシリンダ圧検出装置でブレーキ操作状態を検知し、マスタシリンダ圧を目標値として制御する場合、アンチロックコントロールシステムにマスタシリンダ圧検出装置が必要である。また、ブレーキ倍力装置に、自動ブレーキ機能,回生協調ブレーキ機能を付加した、マスタシリンダ圧制御装置においても、マスタシリンダ圧検出装置で検出したマスタシリンダ圧を用いてマスタシリンダ圧制御をする必要があるため、マスタシリンダ圧検出装置が必要となる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、マスタシリンダ圧を使用する複数の制御装置を有するブレーキ制御システムにおいて、マスタシリンダ圧検出装置を1つにするブレーキ制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のブレーキ制御システムは、ブレーキ操作量に基づいて、マスタシリンダ圧を制御するマスタシリンダ圧制御装置と、各車輪のホイールシリンダ圧を制御するホイールシリンダ圧制御装置と、マスタシリンダ圧を算出するための信号を出力する一つのマスタシリンダ圧検出装置と、を有し、マスタシリンダ圧制御装置は、一つのマスタシリンダ圧検出装置で出力された出力結果に基づいてマスタシリンダ圧を制御し、ホイールシリンダ圧制御装置は、一つのマスタシリンダ圧検出装置で出力された出力結果に基づいてホイールシリンダ圧を制御し、一つのマスタシリンダ圧検出装置は、ホイールシリンダ圧制御装置と電気的に接続されてホイールシリンダ圧制御装置から電源電圧が供給され、マスタシリンダに設置される構成とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マスタシリンダ圧を使用する複数の制御装置を有するブレーキ制御システムにおいて、マスタシリンダ圧検出装置を1つにするブレーキ制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るブレーキ制御システムの第1の実施形態の全体構成を示す。
【図2】本発明に係るマスタシリンダ圧制御装置の第1の実施形態の回路構成を示す。
【図3】本発明に係るブレーキ制御システムの第1の実施形態の電気的結線および回路構成を示す。
【図4】本発明に係るブレーキ制御システムの第2の実施形態の全体構成を示す。
【図5】本発明に係るブレーキ制御システムの第2の実施形態の電気的結線および回路構成を示す。
【図6】本発明に係るマスタシリンダ圧制御装置の第3の実施形態の回路構成を示す。
【図7】本発明に係るブレーキ制御システムの第3の実施形態の電気的結線および回路構成を示す。
【図8】本発明に係るマスタシリンダ圧制御装置の第4の実施形態の回路構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて、実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
本実施例1では、マスタシリンダ圧センサ56をマスタシリンダ9に設置され、マスタシリンダ圧制御装置3とホイールシリンダ圧制御装置5の両方がマスタシリンダ圧センサ56と電気的に結線された構成について説明する。マスタシリンダ圧検出装置であるマスタシリンダ圧センサ56は、マスタシリンダ圧を算出するための信号を検出し、検出結果を出力する、言い換えれば供給された電源電圧から液圧に応じて信号電圧を検出結果として出力する。
【0011】
図1は、ブレーキ制御システムの全体構成を示す図である。図において、矢印付きの破線は信号線であり、矢印の向きによって信号の流れを表している。
【0012】
ブレーキ制御システム1は、マスタシリンダ圧制御装置3,マスタシリンダ圧制御機構4,ホイールシリンダ圧制御装置5,ホイールシリンダ圧制御機構6,インプットロッド7,ブレーキ操作量検出装置8,マスタシリンダ9,リザーバタンク10、及びホイールシリンダ11a〜11dと補助電源12から構成される。第1の加減圧部は、ブレーキペダル100,インプットロッド7を含み、第2の加減圧部は、マスタシリンダ圧制御装置3,マスタシリンダ圧制御機構4,プライマリピストン40を含む。
【0013】
マスタシリンダ圧制御装置3とホイールシリンダ圧制御装置5とは双方向の通信を行っており、制御指令,車両状態量(ヨーレート,前後加速度,横加速度,ハンドル舵角,車輪速,車体速,故障情報,作動状態等)を共有している。
【0014】
マスタシリンダ圧制御装置3(ブレーキ制御装置に相当)は、検出されたブレーキ操作量に基づいて、また、マスタシリンダ圧検出装置であるマスタシリンダ圧センサ56で検出された検出結果に基づいて、マスタシリンダ圧を制御するものであり、具体的には、車両電源から供給される電力により動作し、ブレーキ操作量検出装置8の信号、ホイールシリンダ圧制御装置5からの制御指令等に基づいて駆動モータ20を制御する。ここで車両電源とは、車両バッテリと車両発電機のことを示しており、ハイブリッド自動車もしくは、電気自動車の場合は、高電圧の車両電源から12V系もしくは24V系の低電圧電源へ電圧変換するDC/DCコンバータと低電圧バッテリも含む。マスタシリンダ圧制御機構4は、マスタシリンダ圧制御装置3の制御指令に従って、プライマリピストン40を押圧するものであり、回転トルクを発生する駆動モータ20、この駆動モータの回転トルクを増幅する減速装置21と、回転動力を並進動力に変換する回転−並進変換装置25とからなる。
【0015】
ホイールシリンダ圧制御装置5(アンチロックコントロールシステムに相当)は、マスタシリンダ圧制御装置3と電気的に接続され、各車輪のホイールシリンダ圧を制御する、具体的には、車両電源から供給される電力により動作し、先行車との車間距離、道路情報、車両状態量に基づいて各輪で発生させるべき目標ブレーキ力を算出し、この結果に基づいてホイールシリンダ圧制御機構6を制御する。つまりホイールシリンダ圧制御装置5は、各車輪にホイールシリンダ圧を出力するホイールシリンダ圧制御機構6を制御する。ホイールシリンダ圧制御機構は、ホイールシリンダ圧制御装置5の制御指令に従って、マスタシリンダ9で加圧された作動液の各ホイールシリンダ11a〜11dへの供給を制御する。ホイールシリンダ圧制御装置5は、マスタシリンダ圧センサ56と電気的に接続され、マスタシリンダ圧センサ56で検出された検出結果に基づいてホイールシリンダ圧を算出する。
【0016】
インプットロッド7は、ブレーキペダル100に連結され、その片端がプライマリ液室42に挿入されている。このような構成を採ることにより、運転者のブレーキ操作によってもマスタシリンダ圧を上昇させられるため、万一、駆動モータ20が停止した場合にも、所定のブレーキ力が確保される。また、マスタシリンダ圧に応じた力がインプットロッド7を介してブレーキペダル100に作用しブレーキペダル反力として運転者に伝達されるので、バネ等のブレーキペダル反力を生成する装置が不要となる。これにより、ブレーキ制御システム1の小型・軽量化を実現して車両への搭載性が向上する。
【0017】
ブレーキ操作量検出装置8は、運転者のブレーキ操作量を検出するセンサ、つまり運転者のペダル操作量から要求ブレーキ力を検出するセンサであり、インプットロッド7の変位量を検出する複数個の変位センサを組み合わせた構成となっている。ここで、変位センサでブレーキ操作量を検出する物理量として、インプットロッド7の変位量,ブレーキペダル100のストローク量,ブレーキペダル100の移動角度、ブレーキペダル100の踏力又はこれらから複数のセンサ情報を組み合わせて検出してもよい。
【0018】
また、ブレーキ操作量検出装置8として、ブレーキペダル100の踏力を検出する踏力センサを複数個組み合わせた構成、変位センサと踏力センサを組み合わせた構成であってもよい。これにより、一つのセンサからの信号が途絶えた場合にも、残りのセンサによって運転者のブレーキ要求を検出又は認知できるので、フェイルセーフが確保される。
【0019】
マスタシリンダ9は、プライマリピストン40によって加圧されるプライマリ液室42と、セカンダリピストン41によって加圧されるセカンダリ液室43の二つの加圧室を有するタンデム式のものである。プライマリピストン40の推進によって各加圧室で加圧された作動液は、マスタ配管102a,102bを経由してホイールシリンダ圧制御機構6に供給される。リザーバタンク10は、図示しない隔壁によって仕切られた少なくとも二つの液室を有するものであり、各液室はマスタシリンダ9の各加圧室と連通可能に接続されている。
【0020】
ホイールシリンダ11a〜11dは、図示しないシリンダ,ピストン,パッド等から構成されており、ホイールシリンダ圧制御機構6から供給された作動液によってピストンが推進され、ピストンに連結されたパッドがディスクロータ101a〜101dに押圧される。ディスクロータは、車輪と一体に回転するため、ディスクロータに作用するブレーキトルクは、車輪と路面との間に作用するブレーキ力となる。なお、図示されたFL輪は左前輪、FR輪は右前輪、RL輪は左後輪、RR輪は右後輪を意味している。
【0021】
補助電源12は、電力を蓄電すると共に、車両電源が失陥した時に、マスタシリンダ圧制御装置3へ電力を供給することが可能であり、キャパシタを用いるのが適当である。また、小型のバッテリもしくは別系統の車両電源を用いてもよい。
【0022】
次に、マスタシリンダ圧制御機構4の構成と動作について説明する。駆動モータ20は、マスタシリンダ圧制御装置3の制御指令に基づいて供給される電力によって動作し、所望の回転トルクを発生する。駆動モータ20としては、DCモータ,DCブラシレスモータ,ACモータ等を使用するのが適当であるが、制御性,静粛性,耐久性の点において、DCブラシレスモータが望ましい。駆動モータには、位置センサ(図示省略)が備わっており、この信号がマスタシリンダ圧制御装置3に入力されるように構成されている。これにより、マスタシリンダ圧制御装置3は、位置センサの信号に基づいて駆動モータ20の回転角を算出することができ、これに基づいて回転−並進変換装置25の推進量、すなわちプライマリピストン40の変位量を算出することができる。
【0023】
減速装置21は、駆動モータ20の回転トルクを、減速比分だけ増幅させるものである。減速の方式としては、歯車減速,プーリ減速等が適当であるが、図1に示された例では、駆動側プーリ22と、従動側プーリ23と、ベルト24とからなるプーリ減速による方式を採用している。駆動モータ20の回転トルクが十分に大きく、減速によるトルクの増幅が必要でない場合には、減速装置21を備えずに駆動モータ20と回転−並進変換装置25とを直結することが可能である。これにより、減速装置の介在に起因して発生する信頼性,静粛性,搭載性等に係る諸問題を回避することができる。
【0024】
回転−並進変換装置25は、駆動モータ20の回転動力を並進動力に変換してプライマリピストン40を押圧するものである。変換の機構としては、ラックピニオン,ボールネジ等を用いることが適当であるが、図示された例では、ボールネジによる方式を採用している。
【0025】
ボールネジナット26の外側には、従動側プーリ23が嵌合されており、その回転によるボールネジナット26の回転によりボールネジ軸27が並進運動し、この推力によって可動部材28を介してプライマリピストン40が押圧される。
【0026】
可動部材28には、片端が固定部に接続された戻しバネ29の一端が係合されており、ボールネジ軸27の推力と逆方向の力が可動部材を介してボールネジ軸27に作用するように構成されている。これにより、ブレーキ中、すなわちプライマリピストン40が押圧されてマスタシリンダ圧が加圧されている状態において、駆動モータ20が停止しボールネジ軸の戻し制御が不能となった場合にも、戻しバネ29の反力によってボールネジ軸27が初期位置に戻されてマスタシリンダ圧が概ね零付近まで低下するので、ブレーキ力の引きずりに起因して車両挙動が不安定になることが回避される。
【0027】
次に、インプットロッド7の推力の増幅について説明する。実施形態1では、運転者のブレーキ操作によるインプットロッド7の変位量に応じてプライマリピストン40を変位させることにより、インプットロッド7の推力が増幅される形でプライマリ液室42が加圧される。その増幅比(以下「倍力比」という。)は、インプットロッド7とプライマリピストン40の変位量の比、インプットロッド7とプライマリピストン40の断面積の比等によって任意の値に決定される。
【0028】
特に、インプットロッドの変位量と同量だけプライマリピストンを変位させる場合、インプットロッドの断面積を「AIR」とし、プライマリピストンの断面積を「APP」とすると、倍力比は、(AIR+APP)/AIRとして一意に定まることが一般に知られている。すなわち、必要な倍力比に基づいて、AIRとAPPを設定し、その変位量がインプットロッドの変位量に等しくなるようにプライマリピストン40を制御することで、常に一定の倍力比を得ることができる。なお、プライマリピストンの変位量は、図示しない位置センサの信号に基づいてマスタシリンダ圧制御装置3によって算出される。
【0029】
次に、倍力可変機能を実施する際の処理について説明する。
倍力可変制御処理は、インプットロッド7の変位量に比例ゲイン(K1)を乗じた量だけプライマリピストン40を変位させる制御処理である。なお、K1は、制御性の点からは1であることが望ましいが、緊急ブレーキ等により運転者のブレーキ操作量を超える大きなブレーキ力が必要な場合には、一時的に1を超える値に変更することができる。これにより、同量のブレーキ操作量でも、マスタシリンダ圧を通常時(K1=1の場合)に比べて引き上げられるため、より大きなブレーキ力を発生させることができる。ここで、緊急ブレーキの判定は、例えば、ブレーキ操作量検出装置8の信号の時間変化率が所定値を上回るか否かで判定することができる。
【0030】
以上述べたとおり、倍力可変制御処理によれば、運転者のブレーキ要求に従うインプットロッド7の変位量に応じてマスタシリンダ圧が増減圧されるため、運転者の要求通りのブレーキ力を発生させることができる。また、K1を1未満の値に変更することで、ハイブリッド車において、液圧ブレーキを回生ブレーキ力分だけ減圧する回生協調ブレーキ制御に適用することも可能である。
【0031】
次に、自動ブレーキ機能を実施する際の処理について説明する。自動ブレーキ制御処理は、マスタシリンダ9の作動圧を自動ブレーキの要求液圧(以下「自動ブレーキ要求液圧という。」に調節するようにプライマリピストン40を前進又は後退させる処理である。この場合のプライマリピストン40の制御方法としては、テーブルに記憶された事前に取得したプライマリピストンの変位量とマスタシリンダ圧との関係に基づいて、自動ブレーキ要求液圧を実現するプライマリピストンの変位量を抽出して目標値とする方法、マスタシリンダ圧センサ56で検出して算出した実マスタシリンダ圧もしくは通信手段で取得した実マスタシリンダ圧をフィードバックする方法等があり、いずれの方法を採っても構わないが、要求液圧に対して発生させる実液圧の精度を高くしたい場合は、後者の実マスタシリンダ圧をフィードバックする制御方法の方が望ましい。なお、自動ブレーキ要求液圧は、外部ユニットから受信することが可能であり、例えば車両追従制御,車線逸脱回避制御,障害物回避制御等でのブレーキ制御に適用可能である。
【0032】
また、前述した回生強調ブレーキ制御には、前記マスタシリンダ圧センサ56で検出されたマスタシリンダ圧をフィードバックする方法を用いる方が好ましい。液圧ブレーキを回生ブレーキ力分だけ減圧する際に、全体のブレーキ力から回生ブレーキ力分差し引いたブレーキ力相当のマスタシリンダ圧に換算した値を目標液圧として、マスタシリンダ圧をフィードバック制御液圧することで、油圧ブレーキで減圧する分のブレーキ力を、回生ブレーキ力に近づけることができるからである。
【0033】
次に、ホイールシリンダ圧制御機構6の構成と動作について説明する。
ホイールシリンダ圧制御機構6は、マスタシリンダ9で加圧された作動液を各ホイールシリンダ11a〜11dへ供給するのを制御するゲートOUT弁50a,50b、マスタシリンダで加圧された作動液をポンプへの供給するのを制御するゲートIN弁51a,51b、マスタシリンダ又はポンプから各ホイールシリンダへ作動液を供給するのを制御するIN弁52a〜52d、ホイールシリンダ11a〜11dを減圧制御するOUT弁53a〜53d、マスタシリンダ9で生成された作動圧を昇圧するポンプ54a,54b、ポンプを駆動するモータ55とからなる。なお、ホイールシリンダ圧制御機構6としては、アンチロックブレーキ制御用の液圧制御ユニット,車両挙動安定化制御用の液圧制御ユニット等が適当である。
【0034】
ホイールシリンダ圧制御機構6は、プライマリ液室42から作動液の供給を受け、FL輪とRR輪のブレーキ力を制御する第1のブレーキ系統と、セカンダリ液室43から作動液の供給を受け、FR輪とRL輪のブレーキ力を制御する第2のブレーキ系統の二つの系統から構成されている。このような構成を採ることにより、一方のブレーキ系統が失陥した場合にも、正常な他方のブレーキ系統によって対角2輪分のブレーキ力を確保できるので、車両の挙動が安定に保たれる。
【0035】
ゲートOUT弁50a,50bは、マスタシリンダ9とIN弁52a〜52dとの間に備えられ、マスタシリンダで加圧された作動液をホイールシリンダ11a〜11dに供給する際に開弁される。ゲートIN弁51a,51bは、マスタシリンダ9とポンプ54a,54bとの間に備えられ、マスタシリンダで加圧された作動液をポンプで昇圧してホイールシリンダに供給する際に開弁される。IN弁52a〜52dは、ホイールシリンダ11a〜11dの上流に備えられ、マスタシリンダ又はポンプで加圧された作動液をホイールシリンダに供給する際に開弁される。OUT弁53a〜53dは、ホイールシリンダの下流に備えられ、ホイール圧を減圧する際に開弁される。なお、ゲートOUT弁,ゲートIN弁,IN弁,OUT弁は、いずれもソレノイド(図示省略)への通電によって弁の開閉が行われる電磁式であり、ホイールシリンダ圧制御装置5が行う電流制御によって各弁の開閉量を独立に調節できるものである。
【0036】
実施形態1では、ゲートOUT弁50a,50bとIN弁52a〜52dが常開弁、ゲートIN弁51a,51bとOUT弁53a〜53dが常閉弁である。このような構成を採ることにより、故障時に弁への電力供給が停止した場合にも、ゲートIN弁とOUT弁が閉じ、ゲートOUT弁とIN弁が開いて、マスタシリンダ9で加圧された作動液が全てのホイールシリンダ11a〜11dに到達するので、運転者の要求通りのブレーキ力を発生させることができる。
【0037】
ポンプ54a,54bは、例えば車両挙動安定化制御,自動ブレーキ等を行うために、マスタシリンダ9の作動圧を超える圧力が必要な場合に、マスタシリンダ圧を昇圧してホイールシリンダ11a〜11dに供給する。ポンプとしては、プランジャポンプ、トロコイドポンプ、ギヤポンプ等の使用が適当であるが、静粛性の点において、ギヤポンプが望ましい。
【0038】
モータ55は、ホイールシリンダ圧制御装置5の制御指令に基づいて供給される電力により動作してモータに連結されたポンプ54a,54bを駆動する。モータとしては、DCモータ、DCブラシレスモータ、ACモータ等の使用が適当であるが、制御性,静粛性、耐久性の点において、DCブラシレスモータが望ましい。
【0039】
マスタシリンダ圧センサ56は、マスタ配管102の液圧を検出する圧力センサである。
【0040】
以上、ホイールシリンダ圧制御機構6の構成と動作について説明したが、マスタシリンダ圧制御装置3の故障の際には、ホイールシリンダ圧制御装置6は、マスタシリンダ圧検出装置の検出結果に基づいてホイールシリンダ圧を制御する、具体的にはマスタシリンダ圧センサ56で検知する作動液圧により、運転者のブレーキ操作量を検出し、この検出値に応じたホイールシリンダ圧を発生させるようにポンプ54a,54b等を制御することができる。
【0041】
図2は、本実施例1の図1に示されたマスタシリンダ圧制御装置3の回路構成の一例を示す。マスタシリンダ圧制御装置3の回路は、図2において太線枠201で示されており、マスタシリンダ圧制御機構4の回路は、同じく点線枠202で示されている。同じく太線枠203は、例えばVDC等のホイールシリンダ圧制御装置5を示す。また、点線枠208は、ブレーキ操作量検出装置8のセンサを示しており、図2に示された例では、2個の変位センサ(8a,8b)を備えているが、この変位センサの数は2個に限定されるものではなく、1個でもよいし、2を超える個数であってもよい。また、ブレーキペダル100の踏力を検出する踏力センサを複数個組み合わせた構成、変位センサと踏力センサを組み合わせた構成であってもよい。
【0042】
まず、太線枠201で囲まれた電気回路は、車両電源ラインからECU電源リレー214を介して供給される電力が5V電源回路1(215)と5V電源回路2(216)に入力されるようになっている。ECU電源リレー214は、起動信号とCAN通信I/F218でCAN受信により生成する起動信号のいずれか一つによりオンする構成となっており、起動信号は、ドアスイッチ信号,ブレーキスイッチ,IGNスイッチ信号等を使用することができ、複数使用する場合は、マスタシリンダ圧制御装置3に全て取り込み、複数信号のいずれか一つのスイッチがオンした時に、起動信号がECU電源リレー214をオンする側に作動する回路構成とする。また、車両電源が失陥した時には、補助電源から補助電源リレー236を介して供給される電力が5V電源回路1(215)と5V電源回路2(216)に入力できるようになっている。
【0043】
5V電源回路1(215)によって得られる安定した電源(VCC1)は、中央制御回路(CPU)211に供給される。5V電源回路2(214)によって得られる安定した電源(VCC2)は監視用制御回路219に供給される。
【0044】
フェイルセーフリレー回路213は、車両電源ラインから三相モータ駆動回路222に供給する電力を遮断できるようになっており、CPU211と監視用制御回路219によって、三相モータ駆動回路222への電力の供給と遮断を制御できるようになっている。また、車両電源が失陥した時には、補助電源から補助電源リレー235を介して三相モータ駆動回路222に電力を供給できるようになっている。外部から供給される電力は、フィルタ回路212を介することによってノイズが除去され、三相モータ駆動回路222に供給されるようになっている。
【0045】
ここで、車両電源が失陥した時に、補助電源からの電力供給に切替える方法について説明する。ここでいう車両電源の失陥とは、車両バッテリの故障,車両発電機の故障、そしてハイブリッド自動車,電気自動車の場合は、モータジェネレータの故障,高電圧バッテリの故障,DC/DCコンバータの故障,低電圧バッテリの故障等により、車両電源が車両に搭載されている電気機器および電子制御装置へ電力を供給できなくなることを示す。 まず、車両電源失陥の検出は、車両電源からの電力供給ラインの電圧をモニタし、モニタ電圧が所定値以下になった場合に検出する。こうして車両電源の失陥を検出した時に、オフしている補助電源リレー235と236をオンすることで、補助電源から電力を供給することができる。また、車両電源の失陥を検出して補助電源リレー235と236をオンする時に、ECU電源リレー214とフェイルセーフリレー回路213をオフした方が望ましい。もし、車両電源の失陥が車両電源系のどこかがGNDへの短絡故障であった場合、短絡箇所上流の車両ヒューズが溶断するまで、補助電源の電力を消費してしまうからである。また、ECU電源リレー214とフェイルセーフリレー回路213の上流か下流のいずれかに、アノードを車両電源側にしてダイオードを入れる回路構成としてもよい。
【0046】
CPU211には、CAN通信I/F回路218a,218bを介してマスタシリンダ圧制御装置3の外部からの車両情報と自動ブレーキ要求液圧等の制御信号が入力されるようになっていると共に、マスタシリンダ圧制御機構4側に配置された回転角検出センサ205,モータ温度センサ206,変位センサ8a,8b,マスタシリンダ圧センサ56からの出力が、それぞれ回転角検出センサI/F回路225,モータ温度センサI/F回路226,変位センサI/F回路227,228,マスタシリンダ圧センサI/F回路229を介して入力されるようになっている。
【0047】
CPU211には、外部装置からの制御信号と現時点における各センサの検出値等が入力され、これらに基づいて三相モータ駆動回路222に適切な信号を出力して、マスタシリンダ圧制御装置4を制御する。三相モータ駆動回路222は、マスタシリンダ圧制御機構4内のモータ204に接続されてCPU211による制御に応じた駆動がなされるようになっている。この場合、三相モータ駆動回路222の三相出力の各相には、相電流モニタ回路223と相電圧モニタ回路224が具備されており、これら相電流モニタ回路223と相電圧モニタ回路224によって、それぞれ相電流及び相電圧が監視され、これらの情報により、CPU211は、マスタシリンダ圧制御機構4内のモータ204を適切に動作させるように三相モータ駆動回路222を適切に動作させる制御を行っている。そして、相電圧モニタ回路でのモニタ値が正常範囲外となった場合、制御指令どおりに制御できていない場合等には、故障と判断されるようになっている。
【0048】
マスタシリンダ圧制御装置3の回路201内には、例えば故障情報等が格納されたEEPROMからなる記憶回路230が備えられ、CPU211との間で信号の送受がなされる。CPU211は、検出した故障情報と、マスタシリンダ圧制御機構4の制御で用いる学習値、例えば制御ゲイン,各種センサのオフセット値、等を記憶回路230に記憶させる。また、マスタシリンダ圧制御装置3の回路201内には、監視用制御回路219が備えられ、CPU211との間で信号の送受がなされる。監視用制御回路219は、CPU211の故障,VCC1電圧等を監視している。そして、CPU211,VCC1電圧等の異常を検出した場合は、速やかにフェイルセーフリレー回路213を動作させ、三相モータ駆動回路222への電源供給を遮断する。監視用制御回路219とVCC2電圧の監視は、CPU211で行う。
【0049】
本実施例では、補助電源リレー235と236をマスタシリンダ圧制御装置3内に実装し、マスタシリンダ圧制御装置3内部で車両電源からの電力供給と補助電源からの電力供給とを切替える構成としているが、車両側の電源制御装置で車両電源からの電力供給と補助電源からの電力供給とを切替える構成とし、マスタシリンダ圧制御装置3への電力供給ラインは、図2の車両電源からのみとすることもできる。
【0050】
以上、説明した第1の実施形態のブレーキ制御システムについて、その構成、特にマスタシリンダ圧センサ56の電気的な結線と搭載位置について、以下、説明する。
【0051】
本発明のマスタシリンダ圧検出装置であるマスタシリンダ圧センサ56の電気的な結線と搭載位置とマスタシリンダ圧の算出方法について図3と図4を用いて説明する。
【0052】
図3は、本発明のマスタシリンダ圧センサ56がマスタシリンダ9に搭載されている場合のマスタシリンダ圧センサ56とホイールシリンダ圧制御装置5との電気的な結線およびホイールシリンダ圧制御装置5内の回路構成と、マスタシリンダ圧センサ56とマスタシリンダ圧制御装置3との電気的な結線およびマスタシリンダ圧制御装置3内の回路構成を示す。なお、本実施例では、ホイールシリンダ圧制御装置5からマスタシリンダ圧センサ56へ電源電圧(電源電力)を供給する。
【0053】
図3(a)は、マスタシリンダ圧センサ56の電源と信号とGNDライン(接地ライン)の全ての電圧(電源電圧,信号電圧,接地電圧)を、マスタシリンダ圧制御装置3の中央制御回路(CPU)211で取得する場合について示す。つまり、マスタシリンダ圧制御装置3は、これらマスタシリンダ圧センサ56の電源電圧と、検出結果である信号電圧と、接地電圧と、に基づいてマスタシリンダ圧を算出する場合を示す。
【0054】
まず、ホイールシリンダ圧制御装置5とマスタシリンダ圧センサ56の電気的な結線とマスタシリンダ圧の算出方法について説明する。
【0055】
ホイールシリンダ圧制御装置5に、マスタシリンダ圧センサ56の電源,信号、およびGNDライン(接地ライン)を電気的に結線する。
【0056】
ホイールシリンダ圧制御装置5のマスタシリンダ圧センサI/F回路253は、センサ電源回路280,電源モニタ回路281,信号モニタ回路282から構成されている。
【0057】
センサ電源回路280は、レシオメトリックなセンサに基準電圧を印加する回路であり、出力電流に対する出力電圧の変動を小さくするため、車両電源で駆動されるオペアンプを用い、5V電源回路251によって得られる安定した電源(VCC1)を基準電圧としたボルテージフォロア回路でマスタシリンダ圧センサ56へ供給するための電源を生成する。つまりセンサ電源回路280は、電源電圧をマスタシリンダ圧センサ56へ供給する。また、センサ電源ラインのGNDショート保護、及びバッテリ電圧VBショート保護,センサ電源ラインの静電気サージ保護の役割も果たしている。
【0058】
電源モニタ回路281では、前記センサ電源回路280で生成された電源電圧を第1の処理装置である中央制御回路(CPU)252のA/Dコンバータへ入力する前段の処理を行う回路であり、ノイズフィルタおよび過電圧保護の役割を果たしている。
【0059】
マスタシリンダ圧センサ56は、前記センサ電源回路280で生成された電源電圧から液圧に応じた信号電圧を出力する。
【0060】
信号モニタ回路282は、前記マスタシリンダ圧センサ56から出力された信号電圧を第1の処理装置である中央制御回路(CPU)252のA/Dコンバータへ入力する前段の処理を行う回路であり、ノイズフィルタおよび過電圧保護の役割を果たしている。
【0061】
第1の処理装置である中央制御回路(CPU)252は、A/Dコンバータで入力された電源電圧と信号電圧からマスタシリンダ圧を算出する。例えば、マスタシリンダ圧センサ56の出力特性が、液圧0MPaで電源電圧の10%(0.1Vpwr)を出力し、マスタシリンダ圧17MPaで電源電圧の90%(0.9Vpwr)を出力する場合、マスタシリンダ圧をPmc、電源電圧をVpwr、信号電圧をVsigとおくと、マスタシリンダ圧は、
Pmc=(Vsig/Vpwr−0.1)×17/(0.9−0.1) (式1)で算出する。
【0062】
以上、ホイールシリンダ圧制御装置5の中央制御回路(CPU)252でのマスタシリンダ圧の算出方法について説明したが、ホイールシリンダ圧制御装置5は、供給された電源電圧と、マスタシリンダ圧検出装置であるマスタシリンダ圧センサ56から入力された信号電圧と、に基づいてマスタシリンダ圧を算出する。また、マスタシリンダ圧センサ56の電源電圧と、5V電源回路251で生成される中央制御回路(CPU)252のA/Dコンバータの基準電圧がほぼ等しいため、電源電圧をモニタせずに、式1のVpwrを5V電源回路251の出力電圧設計値を使用して算出しても良い。ただし、この場合、マスタシリンダ圧センサ56の実電源電圧の誤差分、マスタシリンダ圧算出値にも誤差が発生する。
【0063】
次にマスタシリンダ圧制御装置3とマスタシリンダ圧センサ56の電気的な結線とマスタシリンダ圧の算出方法について説明する。
【0064】
マスタシリンダ圧制御装置3には、マスタシリンダ圧センサ56の電源,信号、およびGNDラインを電気的に結線する。
【0065】
マスタシリンダ圧制御装置3のマスタシリンダ圧センサI/F回路229は、電源モニタ回路283,信号モニタ回路284,GNDモニタ回路285から構成されている。
【0066】
ホイールシリンダ圧制御装置5のセンサ電源回路280から供給される電源電圧を第2の処理装置であるCPU211に出力する電源モニタ回路283とマスタシリンダ圧検出装置であるマスタシリンダ圧センサ56から入力された信号電圧を第2の処理装置であるCPU211に出力する信号モニタ回路284は、ホイールシリンダ圧制御装置5のマスタシリンダ圧センサI/F回路253と同様のため説明を省略する。
【0067】
GNDモニタ回路285は、マスタシリンダ圧センサ56への電源供給を、ホイールシリンダ圧制御装置5のマスタシリンダ圧センサI/F回路253のセンサ電源回路280から行っているため、マスタシリンダ圧制御装置3のGND(接地点)とホイールシリンダ圧制御装置5のGND(接地点)に電位差がある場合、マスタシリンダ圧制御装置3のマスタシリンダ圧センサI/F回路229の電源モニタ回路283と信号モニタ回路284でモニタした電圧にも電位差が生じるため、この電位差を補正するために使用する電圧をモニタするために必要な回路である。
【0068】
前記GNDモニタ回路285は、マスタシリンダ圧検出装置であるマスタシリンダ圧センサ56の接地ラインに電気的に接続され、ホイールシリンダ圧制御装置5の接地点とマスタシリンダ圧制御装置3の接地点との電位差を補正する接地電圧を第2の処理装置であるCPU211へ出力する。具体的にはマスタシリンダ圧センサ56からホイールシリンダ圧制御装置5のGNDライン電圧をマスタシリンダ圧制御装置3の中央制御回路(CPU)211のA/Dコンバータへ入力する前段の処理を行う回路であり、ノイズフィルタおよび過電圧保護の役割を果たしている。
【0069】
次に、マスタシリンダ圧制御装置3の中央制御回路(CPU)211でのマスタシリンダ圧算出方法について説明する。
【0070】
第2の処理装置である中央制御回路(CPU)211は、マスタシリンダ圧センサI/F回路229からA/Dコンバータで入力された電源電圧と信号電圧とGND電圧を用いてマスタシリンダ圧を算出する。ここで、GND電圧は、マスタシリンダ圧制御装置3のGNDとホイールシリンダ圧制御装置5のGNDに電位差を補正するために使用する。
【0071】
つまり、マスタシリンダ圧制御装置3は、供給された電源電圧と、マスタシリンダ圧検出装置であるマスタシリンダ圧センサ56から入力された信号電圧と、ホイールシリンダ圧制御装置5の接地点(GND)とマスタシリンダ圧制御装置3の接地点(GND)との電位差を補正する接地電圧と、に基づいてマスタシリンダ圧を算出する。
【0072】
例えば、マスタシリンダ圧センサ56の出力特性が、液圧0MPaで電源電圧の10%(0.1Vpwr)を出力し、マスタシリンダ圧17MPaで電源電圧の90%(0.9Vpwr)を出力する場合、マスタシリンダ圧をPmc、電源電圧をVpwr、信号電圧をVsig、GND電圧をVgndとおくと、マスタシリンダ圧は、
Pmc=((Vsig−Vgnd)/(Vpwr−Vgnd)−0.1)×17/(0.9−0.1) (式2)で算出する。
【0073】
以上により、マスタシリンダ圧制御装置3とホイールシリンダ圧制御装置5のマスタシリンダ圧センサ56との電気的な結線とマスタシリンダ圧の算出方法について説明したが、電気的な結線をすることにより、マスタシリンダ圧センサ56が一つでもマスタシリンダ圧制御装置3とホイールシリンダ圧制御装置5の両方でマスタシリンダ圧を算出することができる。また、マスタシリンダ圧センサ56の電源電圧をホイールシリンダ圧制御装置5から供給することにより、ホイールシリンダ圧制御装置5は、マスタシリンダ圧制御装置3に電源系の故障もしくは、中央制御回路(CPU)252の故障が発生した場合においても、マスタシリンダ圧センサ56を用いてマスタシリンダ圧を検出することができ、マスタシリンダ圧制御機構4を駆動できない故障が発生した場合、ブレーキ操作量をマスタシリンダ圧で検出し、ブレーキ操作量に基づいてホイールシリンダ圧を制御することができる。
【0074】
図3(b)は、マスタシリンダ圧センサ56の電源と信号とGNDラインの全ての電圧(電源電圧,信号電圧,接地電圧)を、マスタシリンダ圧制御装置3に入力するが、電源と信号の2本のみマスタシリンダ圧制御装置3の中央制御回路(CPU)211で取得する場合について示す。つまり、マスタシリンダ圧制御装置3は、マスタシリンダ圧センサ56の電源電圧と接地電圧との電位差と、マスタシリンダ圧センサ56の検出結果である信号電圧と接地電圧との電位差と、に基づいてマスタシリンダ圧を算出する場合を示す。
【0075】
ホイールシリンダ圧制御装置5とマスタシリンダ圧センサ56の電気的な結線とマスタシリンダ圧の算出方法については、図3(a)と同じため、説明を省略する。
【0076】
次に、マスタシリンダ圧制御装置3とマスタシリンダ圧センサ56の電気的な結線とマスタシリンダ圧の算出方法について説明する。
【0077】
マスタシリンダ圧制御装置3には、マスタシリンダ圧センサ56の電源,信号、およびGNDラインを電気的に結線する。
【0078】
マスタシリンダ圧制御装置3のマスタシリンダ圧センサI/F回路229は、電源モニタ回路283,信号モニタ回路284,電源モニタ回路283の出力電圧とGNDライン電圧との差分を出力する第1の減算回路、および信号モニタ回路284の出力電圧からGNDライン電圧との差分を出力する第2の減算回路から構成されている。
【0079】
マスタシリンダ圧制御装置3のマスタシリンダ圧センサI/F回路229の電源モニタ回路283,信号モニタ回路284も図3(a)と同じため、説明を省略する。
【0080】
電源モニタ回路283とGNDライン電圧との第1の減算回路は、電源モニタ回路283の出力電圧に対して、マスタシリンダ圧制御装置3のGNDとホイールシリンダ圧制御装置5のGNDの電位差を補正する。
【0081】
信号モニタ回路284とGNDライン電圧との第2の減算回路は、信号モニタ回路284の出力電圧に対して、マスタシリンダ圧制御装置3のGNDとホイールシリンダ圧制御装置5のGNDの電位差を補正する。
【0082】
次に、マスタシリンダ圧制御装置3の中央制御回路(CPU)211でのマスタシリンダ圧算出方法について説明する。
【0083】
第2の処理装置である中央制御回路(CPU)211は、マスタシリンダ圧センサI/F回路229からA/Dコンバータで入力されたマスタシリンダ圧制御装置3のGNDとホイールシリンダ圧制御装置5のGNDとの電位差を補正済みの電源電圧および信号電圧を用いてマスタシリンダ圧を算出する。図3(b)の構成の場合、マスタシリンダ圧制御装置3の中央制御回路(CPU)211でのマスタシリンダ圧算出方法は、ホイールシリンダ圧制御装置5の中央制御回路(CPU)252でのマスタシリンダ圧算出方法と同じである。
【0084】
例えば、マスタシリンダ圧センサ56の出力特性が、液圧0MPaで電源電圧の10%(0.1Vpwr)を出力し、マスタシリンダ圧17MPaで電源電圧の90%(0.9Vpwr)を出力する場合、マスタシリンダ圧をPmc、補正済み電源電圧をVpwr、補正済み信号電圧をVsigとおくと、マスタシリンダ圧は、
Pmc=(Vsig/Vpwr−0.1)×17/(0.9−0.1) (式1)で算出する。
【0085】
以上のように、図3(b)は、図3(a)に対して、マスタシリンダ圧制御装置3のGNDとホイールシリンダ圧制御装置5のGNDの電位差をマスタシリンダ圧制御装置3のマスタシリンダ圧センサI/F回路229で電源モニタ回路283の出力電圧とGNDライン電圧との差分、および信号モニタ回路284の出力電圧とGNDライン電圧との差分を電子回路で補正するための回路構成としている。このように、マスタシリンダ圧制御装置3のGNDとホイールシリンダ圧制御装置5のGNDの電位差をマスタシリンダ圧制御装置3のマスタシリンダ圧センサI/F回路229で補正することにより、マスタシリンダ圧制御装置3の中央制御回路(CPU)211のA/Dコンバータ入力が2つで済む。また、中央制御回路(CPU)211の演算処理が少なくなる。
【0086】
なお、図3ではマスタシリンダ圧センサ56からホイールシリンダ圧制御装置5への電気的な結線とマスタシリンダ圧制御装置3への電気的な結線との分岐を車両ハーネスで設けているが、マスタシリンダ圧センサ56内で分岐し、マスタシリンダ圧センサ56のコネクタ端子を、ホイールシリンダ圧制御装置5との電源,信号,GNDライン用の3つの端子と、マスタシリンダ圧制御装置3との電源,信号,GNDライン用の3つの端子を合わせた6端子の物にしても良い。
【0087】
以上、マスタシリンダ圧制御装置3のGNDとホイールシリンダ圧制御装置5のGNDの電位差を補正するマスタシリンダ圧の算出方法について説明したが、マスタシリンダ圧センサ56からマスタシリンダ圧制御装置3へのGNDラインへの分岐をせずに、マスタシリンダ圧制御装置3でのマスタシリンダ圧の算出方法を、ホイールシリンダ圧制御装置5のマスタシリンダ圧の算出方法と同様に、電源電圧と信号電圧のみ用いた算出方法にしてもよい。ただし、この場合、マスタシリンダ圧制御装置3のGNDとホイールシリンダ圧制御装置5のGNDに電位差が小さいほど好ましい。
【0088】
また、本実施例1では、ホイールシリンダ圧制御装置5は、マスタシリンダ圧制御機構4を駆動できない故障が発生した場合、ブレーキ操作量をマスタシリンダ圧で検出し、ブレーキ操作量に基づいてホイールシリンダ圧を制御する場合について説明したが、ブレーキ操作量をブレーキ操作量検出装置8で検出しても良く、この場合、ブレーキ操作量検出装置8をホイールシリンダ圧制御装置5とマスタシリンダ圧制御装置3の両方と電気的に結線し、少なくとも一つの変位センサもしくは踏力センサの電源をホイールシリンダ圧制御装置5から供給するようにし、図3のホイールシリンダ圧制御装置5とマスタシリンダ圧制御装置3内のマスタシリンダ圧センサI/F回路253,229と同様に変位センサもしくは踏力センサI/F回路を設けることで実現することができる。
【実施例2】
【0089】
本実施例2では、実施例1に対して、マスタシリンダ圧センサ56の搭載位置をホイールシリンダ圧制御機構6の中に搭載された構成について説明する。
【0090】
図4は、実施例2のブレーキ制御システムの全体構成を示す図である。図において、矢印付きの破線は信号線であり、矢印の向きによって信号の流れを表している。
【0091】
本実施例2のブレーキ制御システムの全体構成では、マスタシリンダ圧センサ56の搭載位置がホイールシリンダ圧制御機構6の中に搭載されている。
【0092】
図5は、本発明のマスタシリンダ圧検出装置であるマスタシリンダ圧センサ56がホイールシリンダ圧制御機構6の中に搭載されている場合のマスタシリンダ圧センサ56とホイールシリンダ圧制御装置5との電気的な結線およびホイールシリンダ圧制御装置5内の回路構成と、マスタシリンダ圧センサ56とマスタシリンダ圧制御装置3との電気的な結線およびマスタシリンダ圧制御装置3内の回路構成を示す。マスタシリンダ圧制御装置3は、ホイールシリンダ圧制御装置5から電圧信号を取得する構成である。図5(a)は、マスタシリンダ圧センサ56の電源と信号とGNDラインの全ての電圧を、マスタシリンダ圧制御装置3の中央制御回路(CPU)211で取得する場合について示し、図5(b)は、マスタシリンダ圧センサ56の電源と信号とGNDラインの全ての電圧を、マスタシリンダ圧制御装置3に入力するが、電源と信号の2本のみマスタシリンダ圧制御装置3の中央制御回路(CPU)211で取得する場合について示す。
【0093】
図5(a),図5(b)共に、ホイールシリンダ圧制御装置5内の回路構成およびマスタシリンダ圧の算出方法、マスタシリンダ圧制御装置3内の回路構成およびマスタシリンダ圧の算出方法は、図3(a),図3(b)と同じため説明を省略する。ただし、マスタシリンダ圧センサ56からマスタシリンダ圧制御装置3へ分岐する電源,信号,GNDのそれぞれのラインに、バッファ回路286p,286s,286gを設けてもよい。これらバッファ回路を設けることで、バッファ回路のマスタシリンダ圧制御装置側からの影響を防ぐことができ、例えば、ノイズの影響を防ぐために用いることができる。また、バッファ回路のマスタシリンダ圧制御装置側がGNDショートした場合においても、バッファ回路のホイールシリンダ圧制御装置5側への影響を防ぐこともできる。
【0094】
図5(a),図5(b)共に、マスタシリンダ圧センサ56とホイールシリンダ圧制御装置5との電気的な結線は、車両ハーネスを用いず、ホイールシリンダ圧制御機構6内のバスバーで、接続することもできる。また、マスタシリンダ圧センサ56とマスタシリンダ圧制御装置3との電気的な結線は、ホイールシリンダ圧制御機構6のコネクタに、マスタシリンダ圧センサ56の電源,信号,GND用の3つの端子を追加し、マスタシリンダ圧制御装置3とを車両ハーネスで接続することで実現できる。
【0095】
このように、マスタシリンダ圧センサ56をホイールシリンダ圧制御機構6の中に搭載することにより、マスタシリンダ圧センサ56とホイールシリンダ圧制御装置5との電気的な結線をホイールシリンダ圧制御機構6内で実施することで、マスタシリンダ圧センサ56にコネクタを設けなくて済み、車両ハーネスを簡素化することができる。
【0096】
以上、実施例1,実施例2共にマスタシリンダ圧センサ56をプライマリ側の配管に備えている例で説明したが、マスタシリンダ圧センサ56をセカンダリ側の配管に備えても良い。
【0097】
また、マスタシリンダ圧センサ56の搭載場所について、マスタ配管102の中間にマスタシリンダ圧センサ56を設置しても良いが、この場合、配管部品を2パーツに分け、センサ取付用のパーツを設置する必要があるため、本実施例1のようにマスタシリンダ9に直接設置する、もしくは、本実施例2のようにホイールシリンダ圧制御機構6の中に搭載することで、部品コストの低減,車両への組付け作業性の向上,車両側レイアウトスペースの拡大の効果がある。
【実施例3】
【0098】
本実施例3では、ホイールシリンダ圧制御装置5のみマスタシリンダ圧センサ56と電気的に結線され、マスタシリンダ圧制御装置3とホイールシリンダ圧制御装置5との間に専用の通信線を備えた構成について説明する。つまりホイールシリンダ圧制御装置5と電気的に結線されたマスタシリンダ圧制御装置3は、マスタシリンダ圧センサ56と直接的に結線されていないため、ホイールシリンダ圧制御装置5で算出されたマスタシリンダ圧を取得する。
【0099】
図6は、本実施例3のマスタシリンダ圧制御装置3の回路構成の一例を示す。
【0100】
本実施例3では、マスタシリンダ圧センサ56とマスタシリンダ圧制御装置3との電気的な結線が無く、マスタシリンダ圧制御装置3にはマスタシリンダ圧センサI/F回路229が無い。その代わりに、マスタシリンダ圧制御装置3は、ホイールシリンダ圧制御装置5で算出されたマスタシリンダ圧を通信手段(通信ライン)により受信するため、マスタシリンダ圧制御装置3とホイールシリンダ圧制御装置5のそれぞれに、通信I/F回路238,通信I/F回路255が設けられ、通信I/F回路238と通信I/F回路255は通信ラインで結線されている。なお、マスタシリンダ圧制御装置3とホイールシリンダ圧制御装置5との専用の通信手段(通信ライン)としては、CANもしくはLINもしくはFlexRey等を用いる。つまり、これらの通信手段を介してマスタシリンダ圧制御装置3は、ホイールシリンダ圧制御装置5で算出されたマスタシリンダ圧を取得する。
【0101】
つまり、マスタシリンダ圧制御装置3は、ホイールシリンダ圧制御装置5で算出したマスタシリンダ圧を通信ライン(第1の通信部である通信I/F回路255と第2の通信部である通信I/F回路238をつなぐ通信ライン)を介して取得する。
【0102】
また、図6では、マスタシリンダ圧制御装置3の車両全体のCAN通信手段として、CAN1通信I/F218aとCAN2通信I/F218bの2つ設けているが、本実施例3の場合、CAN通信I/Fを1つのみとしても良い。この場合、マスタシリンダ圧制御装置3とホイールシリンダ圧制御装置5との通信手段は、車両のCAN通信と、本実施例3で説明した専用の通信の2つ備えることになるので、ホイールシリンダ圧制御装置5は、車両のCAN通信と専用の通信の両方とも通信不能となった場合に、マスタシリンダ圧制御装置3の中央制御回路(CPU)211が正常動作しない故障発生により、マスタシリンダ圧制御機構4を制御できないと判断して、ブレーキ操作量に基づいてホイールシリンダ圧を制御するバックアップブレーキモードにすることができる。
【0103】
図7は、マスタシリンダ圧センサ56とホイールシリンダ圧制御装置5との電気的な結線およびホイールシリンダ圧制御装置5内の回路構成と、マスタシリンダ圧制御装置3内の回路構成、ホイールシリンダ圧制御装置5とマスタシリンダ圧制御装置3との電気的な結線を示す。ホイールシリンダ圧制御装置5は、通信ラインとCPU252を接続する第1の通信部である通信I/F回路255を有し、マスタシリンダ圧制御装置3は、通信ラインとCPU211を接続する第2の通信部である通信I/F回路238を有し、CPU211は、通信ラインと通信I/F回路238を介してホイールシリンダ圧制御装置5からマスタシリンダ圧を取得する。
【0104】
図7(a)は、本実施例3のマスタシリンダ圧センサ56がマスタシリンダ9に直接設置されている場合について示し、図7(b)は、本実施例3のマスタシリンダ圧センサ56がホイールシリンダ圧制御機構6の中に設置されている場合について示す。
【0105】
図7(a),図7(b)共に、マスタシリンダ圧センサ56とホイールシリンダ圧制御装置5との電気的な結線、ホイールシリンダ圧制御装置5内の回路構成およびマスタシリンダ圧の算出方法は、図3(a),図5(a)とほぼ同じため説明を省略する。
【0106】
図7(a),図7(b)共に、図6でも説明したが、マスタシリンダ圧センサ56とマスタシリンダ圧制御装置3との電気的な結線が無く、マスタシリンダ圧制御装置3にはマスタシリンダ圧センサI/F回路229が無い。その代わりに、マスタシリンダ圧制御装置3とホイールシリンダ圧制御装置5のそれぞれに、通信I/F回路238,255が設けられ、通信I/F回路238と通信I/F回路255は通信ラインで結線されている。
【0107】
本回路構成により、ホイールシリンダ圧制御装置5の中央制御回路(CPU)252では図3(a)で説明したマスタシリンダ圧の算出方法により、マスタシリンダ圧を算出し、通信I/F回路255を介してマスタシリンダ圧制御装置3に送信する。マスタシリンダ圧制御装置3の中央制御回路(CPU)211では、マスタシリンダ圧制御装置3の通信I/F回路238を介してマスタシリンダ圧を受信することにより、マスタシリンダ圧を取得することができる。
【0108】
このように、マスタシリンダ圧制御装置3が、ホイールシリンダ圧制御装置5で算出されたマスタシリンダ圧を通信手段を用いて取得する構成にすることにより、マスタシリンダ圧センサ56とマスタシリンダ圧制御装置3との電気的な結線を設けなくて済む。そしてマスタシリンダ圧制御装置3でマスタシリンダ圧センサI/F回路を設けなくて済み、中央制御回路(CPU)211でのマスタシリンダ圧の算出処理も設けなくて済む。また、車両ハーネスの分岐を設けなくて済み、車両ハーネスを簡素化することができる。また、専用の通信手段により、マスタシリンダ圧制御装置3とホイールシリンダ圧制御装置5との情報の送受信を早い周期で実施することが可能であり、マスタシリンダ圧制御装置3は、ホイールシリンダ圧制御装置5で算出したマスタシリンダ圧を早い周期で取得することができる。
【実施例4】
【0109】
本実施例4では、ホイールシリンダ圧制御装置5のみマスタシリンダ圧センサ56と電気的に結線され、マスタシリンダ圧制御装置3とホイールシリンダ圧制御装置5との間に専用の通信線を備えない構成について説明する。
【0110】
図8は、本実施例4のマスタシリンダ圧制御装置3の回路構成の一例を示す。
【0111】
本実施例4では、図2に対してマスタシリンダ圧センサ56とマスタシリンダ圧制御装置3との電気的な結線が無く、マスタシリンダ圧制御装置3にはマスタシリンダ圧センサI/F回路229が無い。また、図6に対してマスタシリンダ圧制御装置3が、ホイールシリンダ圧制御装置5で算出されたマスタシリンダ圧を通信手段により受信するための、マスタシリンダ圧制御装置3とホイールシリンダ圧制御装置5との専用の通信手段も備えない構成となっている。
【0112】
本構成におけるマスタシリンダ圧制御装置3の中央制御回路(CPU)211がマスタシリンダ圧を取得する方法について説明する。
【0113】
ホイールシリンダ圧制御装置5の中央制御回路(CPU)252では図3(a)で説明したマスタシリンダ圧の算出方法により、マスタシリンダ圧を算出し、第1のCAN通信部であるCAN通信I/F回路254を介してマスタシリンダ圧制御装置3に送信する。マスタシリンダ圧制御装置3の中央制御回路(CPU)211では、マスタシリンダ圧制御装置3の第2のCAN通信部(CAN1通信I/F218aもしくはCAN2通信I/F218b)を介してマスタシリンダ圧を受信することにより、マスタシリンダ圧を取得することができる。
【0114】
このように、マスタシリンダ圧制御装置3が、ホイールシリンダ圧制御装置5で算出されたマスタシリンダ圧を車両のCAN通信を用いて取得する構成にすることにより、マスタシリンダ圧センサ56とマスタシリンダ圧制御装置3との電気的な結線を設けなくて済む。そしてマスタシリンダ圧制御装置3でマスタシリンダ圧センサI/F回路を設けなくて済み、中央制御回路(CPU)211でのマスタシリンダ圧の算出処理も設けなくて済む。また、車両ハーネスの分岐を設けなくて済み、車両ハーネスを簡素化することができる。
【0115】
ただし、この場合、マスタシリンダ圧制御装置3は、車両のCAN通信を用いてホイールシリンダ圧制御装置5で算出したマスタシリンダ圧を取得するため、マスタシリンダ圧制御装置3は、ホイールシリンダ圧制御装置5で算出したマスタシリンダ圧を早い周期で取得することができるとは限らない。
【0116】
そこで、マスタシリンダ圧制御装置3でマスタシリンダ圧を使用する制御機能を限定することで対応することもできる。
【0117】
例えば、通常のサービスブレーキ制御を実施する際には、運転者のブレーキペダル操作のフィーリングを良くするために、早い周期で制御する必要があるが、インプットロッド7の変位量に応じてプライマリピストン40の目標変位量を算出し、プライマリピストン40を目標変位量にするように制御を用いることで、マスタシリンダ圧を使用せずに、本制御機能を実現することができる。ここで、サービスブレーキ時に運転者のブレーキペダル操作のフィーリングを良くするために、早い周期で制御する必要がある理由は、運転者が早い速度でブレーキペダル踏んだ際に、インプットロッド7の動作に対して、プライマリピストン40の動作がついていけずに、インプットロッド7でプライマリピストン40を押し当てる際に衝撃が発生することを防ぐためと、運転者がブレーキペダルの踏み込み動作と戻し動作を早い速度で行った場合に、位相遅れによりペダルフィーリングが悪くなることを防ぐためである。
【0118】
また、自動ブレーキ機能では、実施例1でも説明したように、マスタシリンダ9の作動圧を自動ブレーキの要求液圧に調節するようにプライマリピストン40を制御するため、実マスタシリンダ圧をフィードバックする制御方法の方が望ましい。この場合、マスタシリンダ圧を使用するが、運転者のブレーキペダル操作のフィーリングを良くするために早い周期で制御する必要がないため、車両CANを用いて取得したマスタシリンダ圧で本制御機能を実現することができる。
【0119】
また、回生協調ブレーキ機能においても、実施例1で説明したように、液圧ブレーキを回生ブレーキ力分だけ減圧する際に、全体のブレーキ力から回生ブレーキ力分差し引いたブレーキ力相当のマスタシリンダ圧に換算した値を目標液圧として、マスタシリンダ圧をフィードバック制御液圧することで、油圧ブレーキで減圧する分のブレーキ力を、回生ブレーキ力に近づけることができるため、実マスタシリンダ圧をフィードバックする制御方法の方が望ましい。この場合においても、マスタシリンダ圧を使用するが、運転者のブレーキペダル操作のフィーリングを良くするために早い周期で制御する必要がないため、車両CANを用いて取得したマスタシリンダ圧で本制御機能を実現することができる。
【0120】
また、本実施例4は車両の通信手段がCANの場合について説明したが、車両の通信手段がCAN以外のLINもしくはFlexRey等であった場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0121】
1 ブレーキ制御システム
3 マスタシリンダ圧制御装置
4 マスタシリンダ圧制御機構
5 ホイールシリンダ圧制御装置
6 ホイールシリンダ圧制御機構
7 インプットロッド
8 ブレーキ操作量検出装置
9 マスタシリンダ
10 リザーバタンク
11a〜11d ホイールシリンダ
12 補助電源
20 駆動モータ
21 減速装置
22 駆動側プーリ
23 従動側プーリ
24 ベルト
25 回転−並進変換装置
26 ボールネジナット
27 ボールネジ軸
28 可動部材
29 戻しバネ
30 伝達部材
40 プライマリピストン
41 セカンダリピストン
42 プライマリ液室
43 セカンダリ液室
50a,50b ゲートOUT弁
51a,51b ゲートIN弁
52a〜52d IN弁
53a〜53d OUT弁
54a,54b ポンプ
55 モータ
56,57 マスタシリンダ圧センサ
100 ブレーキペダル
101a〜101d ディスクロータ
102a,102b マスタ配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操作量に基づいて、マスタシリンダ圧を制御するマスタシリンダ圧制御装置と、各車輪のホイールシリンダ圧を制御するホイールシリンダ圧制御装置と、
マスタシリンダ圧を算出するための信号を出力する一つのマスタシリンダ圧検出装置と、を有し、
前記マスタシリンダ圧制御装置は、前記一つのマスタシリンダ圧検出装置で出力された出力結果に基づいてマスタシリンダ圧を制御し、
前記ホイールシリンダ圧制御装置は、前記一つのマスタシリンダ圧検出装置で出力された出力結果に基づいてホイールシリンダ圧を制御し、
前記一つのマスタシリンダ圧検出装置は、前記ホイールシリンダ圧制御装置と電気的に接続されてホイールシリンダ圧制御装置から電源電圧が供給され、前記マスタシリンダに設置されるブレーキ制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ制御システムにおいて、
前記マスタシリンダ圧制御装置と前記ホイールシリンダ圧制御装置は、電気的に結線され、
前記マスタシリンダ圧制御装置は、前記ホイールシリンダ圧制御装置で算出された前記マスタシリンダ圧を取得するブレーキ制御システム。
【請求項3】
請求項2記載のブレーキ制御システムにおいて、
前記マスタシリンダ圧制御装置の故障時に前記ホイールシリンダ圧制御装置で算出された前記マスタシリンダ圧に基づいて、ブレーキ操作量に応じたホイールシリンダ圧に制御するブレーキ制御システム。
【請求項4】
請求項2または3記載のブレーキ制御システムにおいて、
前記ホイールシリンダ圧制御装置及び前記マスタシリンダ圧制御装置は、マスタシリンダ圧を送受信する通信手段で電気的に接続され、
前記ホイールシリンダ圧制御装置は、前記マスタシリンダ圧検出装置の出力結果に基づいてマスタシリンダ圧を算出し、
前記マスタシリンダ圧制御装置は、前記通信手段を介して前記ホイールシリンダ圧制御装置で算出した前記マスタシリンダ圧を取得するブレーキ制御システム。
【請求項5】
請求項4記載のブレーキ制御システムにおいて、
前記通信手段は、CANであるブレーキ制御システム。
【請求項6】
請求項5記載のブレーキ制御システムにおいて、
前記ホイールシリンダ圧制御装置は、
マスタシリンダ圧を算出する第1の処理装置と、
前記マスタシリンダ圧検出装置に電源電圧を供給するセンサ電源回路と、
前記センサ電源回路から供給される電源電圧を前記第1の処理装置に出力する電源モニタ回路と、
前記マスタシリンダ圧検出装置から入力された前記出力結果を前記第1の処理装置に出力する信号モニタ回路と、
前記CANと前記第1の処理装置を接続する第1のCAN通信部と、を有し、
前記マスタシリンダ圧検出装置の接地ラインに電気的に接続されたブレーキ制御システム。
【請求項7】
請求項6記載のブレーキ制御システムにおいて、
前記マスタシリンダ圧制御装置は、
前記マスタシリンダ圧を取得する第2の処理装置と、
前記CANと前記第2の処理装置を接続する第2のCAN通信部と、を有し、
前記第2の処理装置は、前記CANを介して前記ホイールシリンダ圧制御装置から前記マスタシリンダ圧を取得するブレーキ制御システム。
【請求項8】
請求項4記載のブレーキ制御システムにおいて、
前記ホイールシリンダ圧制御装置は、
マスタシリンダ圧を算出する第1の処理装置と、
前記通信手段と前記第1の処理装置を接続する第1の通信部と、を有し、
前記マスタシリンダ圧制御装置は、
前記マスタシリンダ圧を取得する第2の処理装置と、
前記通信手段と前記第2の処理装置を接続する第2の通信部と、を有するブレーキ制御システム。
【請求項9】
請求項1に記載のブレーキ制御システムにおいて、
前記マスタシリンダ圧検出装置は、前記マスタシリンダ圧制御装置と電気的に接続されたブレーキ制御システム。
【請求項10】
請求項2または3記載のブレーキ制御システムにおいて、
前記マスタシリンダ圧制御装置は、前記ホイールシリンダ圧制御装置から電圧信号を取得するブレーキ制御システム。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のブレーキ制御システムにおいて、
前記マスタシリンダ圧制御装置は、前記マスタシリンダ圧検出装置の電源電圧と前記出力結果と接地電圧に基づいてマスタシリンダ圧を算出するブレーキ制御システム。
【請求項12】
請求項9又は10に記載のブレーキ制御システムにおいて、
前記マスタシリンダ圧制御装置は、前記マスタシリンダ圧検出装置の電源電圧と接地電圧との電位差と、前記出力結果である信号電圧と接地電圧との電位差と、に基づいてマスタシリンダ圧を算出するブレーキ制御システム。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のブレーキ制御システムにおいて、
前記ホイールシリンダ圧制御装置は、
マスタシリンダ圧を算出する第1の処理装置と、
前記マスタシリンダ圧検出装置に電源電圧を供給するセンサ電源回路と、
前記センサ電源回路から供給される電源電圧を前記第1の処理装置に出力する電源モニタ回路と、
前記マスタシリンダ圧検出装置から入力された前記出力結果である信号電圧を前記第1の処理装置に出力する信号モニタ回路と、を有し、
前記マスタシリンダ圧検出装置の接地ラインに電気的に接続されたブレーキ制御システム。
【請求項14】
請求項13記載のブレーキ制御システムにおいて、
前記マスタシリンダ圧制御装置は、
マスタシリンダ圧を算出する第2の処理装置と、
前記ホイールシリンダ圧制御装置の前記センサ電源回路から前記マスタシリンダ圧検出装置に供給される電源電圧を前記第2の処理装置に出力する電源モニタ回路と、
前記マスタシリンダ圧検出装置から入力された前記出力結果である信号電圧を前記第2の処理装置に出力する信号モニタ回路と、
前記マスタシリンダ圧検出装置の接地ラインに電気的に接続され、前記ホイールシリンダ圧制御装置の接地点と前記マスタシリンダ圧制御装置の接地点との電位差を補正する接地電圧を前記第2の処理装置へ出力するGNDモニタ回路と、を有するブレーキ制御システム。
【請求項15】
請求項13記載のブレーキ制御システムにおいて、
前記マスタシリンダ圧制御装置は、
マスタシリンダ圧を算出する第2の処理装置と、
前記ホイールシリンダ圧制御装置の前記センサ電源回路から前記マスタシリンダ圧検出装置に供給される電源電圧を前記第2の処理装置側に出力する電源モニタ回路と、
前記マスタシリンダ圧検出装置から入力された前記出力結果である信号電圧を前記第2の処理装置側に出力する信号モニタ回路と、
前記電源モニタ回路の出力電圧と前記マスタシリンダ圧検出装置の接地ラインの電圧との差分を前記第2の処理装置に出力する第1の減算回路と、
前記信号モニタ回路の出力電圧と前記マスタシリンダ圧検出装置の接地ラインの電圧との差分を前記第2の処理装置に出力する第2の減算回路と、を有するブレーキ制御システム。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載のブレーキ制御システムにおいて、
前記マスタシリンダ圧検出装置は、供給された電源電圧から液圧に応じて信号電圧を前記出力結果として出力するブレーキ制御システム。
【請求項17】
請求項1乃至16に記載のブレーキ制御システムにおいて、
前記マスタシリンダは、プライマリピストンとセカンダリピストンとの2つのピストンを有し、該プライマリピストンの移動によって液圧を発生するプライマリ液室が形成されており、
前記マスタシリンダ圧検出装置は、前記プライマリ液室の液圧を算出するための信号を出力するブレーキ制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−56575(P2012−56575A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−276607(P2011−276607)
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【分割の表示】特願2009−225941(P2009−225941)の分割
【原出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】