説明

ブレーキ制御装置

【課題】滑走防止と強制緩解の機能を備えるブレーキ制御装置において、信頼性を損なうことなく、強制緩解を停止するための遮断回路の構成が複雑なものになることを回避するとともにコスト高になることを抑制する。
【解決手段】ブレーキ制御装置は、常用ブレーキ指令に応じた信号と車輪滑走検知部から出力された信号とが入力され、これらの信号の入力に応じた出力を行う電磁弁59と、電磁弁59からの出力がパイロット圧として入力され、ブレーキシリンダ49に供給されるブレーキ圧力を生成する中継弁部56と、給電に応じた出力を行う開放用電磁弁60と、開放用電磁弁60からの出力がパイロット圧として入力され、ブレーキ圧力を排出可能な排気弁58と、非常ブレーキ指令線35と開放用電磁弁60との間に設けられ、強制緩解指令に応じて接点を閉じる遮断回路33と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、ブレーキハンドル位置に応じて常用ブレーキ指令を出力する一方、非常ブレーキ装置にも指令を出力可能なブレーキ受量器を有するブレーキ制御装置が知られている。この特許文献1に開示されたブレーキ制御装置では、車輪の滑走が検知されると、車輪ごとに設けられた滑走防止弁にもブレーキ受量器から指令が出されるようになっている。これにより、車輪の滑走防止を図ることができ、またブレーキ不緩解の回避も可能となっている。
【特許文献1】特開8−290766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1には、滑走防止弁を動作させてブレーキの不緩解の回避を行う強制緩解制御の最中に非常ブレーキ装置に指令が出力される場合があることについては言及されていないが、強制緩解制御中に非常ブレーキ装置を作動させる事態が生ずることは起こり得る。この場合には、非常ブレーキを優先させるべく強制緩解制御を停止することが必要となる。強制緩解制御を停止するには、遮断回路を設けておいて、この遮断回路を制御することにより強制緩解制御を停止することができる。しかしながら、このような遮断回路は故障すると強制緩解制御を停止できなくなることから、高い信頼性が要求される。従って回路構成が複雑なものとなり、コスト高の一因となってしまうという問題が生ずる。
【0004】
そこで、本発明の目的とするところは、滑走防止と強制緩解の機能を備えるブレーキ制御装置において、信頼性を損なうことなく、強制緩解を停止させるための遮断回路の構成が複雑なものになることを回避するとともにコスト高になることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するため、本発明は、ブレーキシリンダ、このブレーキシリンダへ供給される流体の供給源である流体供給源及び非常ブレーキを作用させるための非常ブレーキ指令線を有する車両に設けられるブレーキ制御装置であって、前記非常ブレーキよりも弱いブレーキを作用させるための常用ブレーキ指令に応じた信号と前記車両の車輪の滑走を検知する車輪滑走検知部から出力された信号に応じた圧力を出力する電磁弁と、前記電磁弁からの前記出力がパイロット圧として入力され、前記ブレーキシリンダに供給されるブレーキ圧力を生成する中継弁部と、入力されたパイロット圧によって、前記ブレーキ圧力を排出可能な排気弁と、前記ブレーキ圧力を強制的に低下させる強制緩解指令に応じて接点を閉じる遮断部と、前記排気弁のパイロット圧を生成するために、前記遮断部を介して、前記非常ブレーキ指令線から給電される開放用電磁弁と、を備えているブレーキ制御装置である。
【0006】
本発明では、非常ブレーキ指令がなければ、常用ブレーキ指令に基づいて中継弁部を動作させることができるので、常用ブレーキ指令に応じたブレーキ圧力を生成することができる。また、車輪滑走検知部から出力された信号に基づいて中継弁部を動作させることができるので、この信号に基づいて滑走防止制御が可能である。そして、強制緩解指令があると、遮断部が接点を閉じる。このとき非常ブレーキ指令がなければ、非常ブレーキ指令線の電力(一般的には直流100ボルトが給電されている。)を開放用電磁弁に供給でき、開放用電磁弁を動作させることができる。したがって、開放用電磁弁からのパイロット圧により、排気弁がブレーキ圧力を排出する。これにより、不緩解が解除される。
【0007】
一方、非常ブレーキ指令があった場合には、非常ブレーキ指令線の電圧は0ボルトとなることから、遮断部の接点の開閉によらず、開放用電磁弁には電力が供給されない。このため、開放用電磁弁は非通電時の状態を維持するので、排気弁は動作せず、強制緩解指令に優先して非常ブレーキをかけることができる。また、仮に遮断部が故障していて接点の断接ができない状態にあったとしても、非常ブレーキ指令が出されたときには非常ブレーキ指令線の電圧は0ボルトとなっているため、強制緩解が継続することは回避され、非常ブレーキを確実に作動させることができる。したがって、遮断部が非常ブレーキ指令線に接続されることにより、遮断部の構成によって信頼性を担保する必要はなくなり、これにより、遮断部の構成を簡素化して低コスト化を図ることができる。
【0008】
ここで、前記排気弁は、前記ブレーキ圧力を排出する際に、前記ブレーキシリンダ内のブレーキ圧力と前記中継弁部内のブレーキ圧力とを一緒に排出するのが好ましい。
【0009】
この態様では、ブレーキ圧力を排出する際に中継弁部内の圧力も排出されるので、ブレーキシリンダ内の圧力と中継弁部内の圧力とが略同じ圧力となる。このため、再度中継弁部からブレーキシリンダにブレーキ圧力を供給開始する際の衝撃を緩和することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、滑走防止と強制緩解の機能を備えるブレーキ制御装置において、信頼性を損なうことなく、強制緩解を停止するための遮断回路の構成が複雑なものになることを回避でき、しかも、コスト高になることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るブレーキ制御装置10の圧力制御系統を示している。同図に示すように、ブレーキ制御装置10は、圧縮空気回路47を有する。圧縮空気回路47は、圧縮空気の供給元の空気源であるエアタンク45(図4参照)から得られた空気圧力を調整した上でブレーキシリンダ49(図4参照)に付与するための空気回路であり、応荷重圧力VLを生成する応荷重圧力生成部47a(図2参照)と、応荷重圧力VLに基づいてブレーキ圧力BCを生成するブレーキ圧力生成部47b(図3参照)とを有する。
【0013】
応荷重圧力生成部47aは、応荷重弁21の構成要素となっている。応荷重弁21は、調圧弁50と、出力弁51と、電磁弁52とを有している。
【0014】
調圧弁50は、空気源から供給される元圧SRを満車相当の応荷重圧力に相当する圧力に制限するための弁である。満車相当の応荷重圧力とは、車両が満員の場合において、非常ブレーキを作用させる際にブレーキシリンダ49に付与されるべき圧力に相当する圧力を意味している。
【0015】
調圧弁50は、入力ポートを有する入力室50aと、出力ポートを有する出力室50bと、ピストン50cと、満車相当の応荷重圧力に相当する圧力に制限するための満車保証ばね50dを有する調圧室50eと、満車保証ばね50dの付勢力を調整するための満車圧力調整ねじ50fと、を有する。入力室50aには、入力ポートを通して元圧SRが入力される。
【0016】
ピストン50cは、満車保証ばね50dによる押圧力と出力室50b内の空気圧力との差圧によって、入力室50aと出力室50bとの仕切りに形成された開口の開口量を調整し、差圧が無くなるとこの開口を閉じる。開口が開くことによって、入力室50aの圧縮空気が出力室50bに流入し、出力室50b内の圧力が満車相当の応荷重圧力に相当する圧力に調整され、この圧力が出力ポートを通して出力される。
【0017】
満車圧力調整ねじ50fの内端部は、調圧室50e内で、押え部材50gを介して満車保証ばね50dの一端部を押圧している。調整ねじ50fのねじ込み量を調整することにより、満車相当の応荷重圧力に相当する圧力を調整することができる。
【0018】
電磁弁52は、給気部AVと排気部RVと接続路52aとを有し、調圧弁50から出力された圧力を、乗客が乗っている現在の車両荷重に応じて調整する。給気部AVは、2位置3ポートの切換弁によって構成されており、調圧弁50の出力ポートに繋がる入口ポートINと、接続路52aが接続された出口ポートOUTと、排出ポートEXとを有する。排気部RVは、2位置3ポートの切換弁によって構成されており、接続路52aに繋がる入口ポートINと、出口ポートOUTと、排出ポートEXとを有する。電磁弁52は、制御信号に基づいて、給気部AV及び排気部RVの弁位置を制御することにより、調圧弁50から出力された圧力を調整する。電磁弁52によって調整された圧力HVLは、パイロット圧力として出力弁51に入力される。制御信号は、マイコン回路からなる制御回路31(図4参照)から電磁弁52に送信される信号であり、車両の荷重を受ける図外の空気ばねの圧力を検出する圧力センサASからの信号に応じて、また、接続路52aに設けられたパイロット圧力センサ52bの検出値に応じて、応荷重圧力VLが生成されるように出力される。なお、図4では、制御回路31と電磁弁52との接続関係については便宜上図示していない。
【0019】
給気部AV及び排気部RVは、通電されていない状態のときに図2の状態となっている。すなわち、この状態では、調圧弁50と出力弁51との間が遮断され、かつ排気部RVの入口ポートINが閉じられている。このため、停電時等のように電気的フェール時の場合であって、電磁弁52に制御信号が入力できない場合でも、その直前まで設定されていた圧力HVLが維持されるため、出力弁51の調圧室51eでの圧力が確保されることとなる。
【0020】
出力弁51は、電磁弁52によって調整された圧力HVLをパイロット圧力として、元圧SRを乗客が乗っている現在の車両荷重に応じた応荷重圧力VLに調整して、応荷重弁21から出力する。出力弁51は、元圧SRが入力される入力ポートを有する入力室51aと、出力ポートを有する出力室51bと、ピストン51cと、調圧ポートを有する調圧室51eと、を有する。調圧ポートには、圧力HVLがパイロット圧力として入力される。調圧室51e内には、空車相当の応荷重圧力を発生させるための空車保証ばね51dが配設されている。空車相当の応荷重圧力とは、車両が空車の場合において、非常ブレーキを作用させる際にブレーキシリンダ49に付与されるべき圧力に相当する圧力を意味している。
【0021】
出力弁51には、空車相当の応荷重圧力に相当する圧力を発生させる空車保証ばね51dが設けられているので、仮に故障等によりパイロット圧力が消失したとしても、空車保証ばね51dによって少なくとも空車相当の応荷重圧力に相当する圧力が確保されることになる。つまり、調圧弁50から給気がされない状態になったとしても、空車保証ばね51dの付勢力で入力室51aと出力室51bとの間の開口が開放可能となっているため、出力室51b内は空車保証ばね51dの付勢力による圧力相当の圧力に維持される。
【0022】
ピストン51cは、空車保証ばね51dによる付勢力による圧力及び調圧室50e内の空気圧力の合計圧力と、出力室51b内の空気圧力との差圧によって、入力室51aと出力室51bとの仕切りに形成された開口の開口量を調整し、差圧が無くなるとこの開口を閉じる。開口が開くことによって、入力室51aの圧縮空気が出力室51bに流入し、出力室51b内の圧力が応荷重圧力VLに調整される。
【0023】
出力弁51には、空車保証ばね51dの付勢力による圧力を調整するための空車圧力調整ねじ51fが設けられている。空車圧力調整ねじ51fの内端部は調圧室51e内にあり、押え部材51gを介して空車保証ばね51dの一端部を押圧している。この調整ねじ51fのねじ込み量を調整することにより、空車相当の応荷重圧力に相当する圧力を調整することができる。
【0024】
前記ブレーキ圧力生成部47bは、中継弁22の構成要素となっている。図1に示すように、本実施形態では、ブレーキ圧力生成部が2つ形成されている。中継弁22は、中継弁部56と供給カット弁57と排気弁58と電磁弁59と開放用電磁弁60とを有する。
【0025】
図3に示すように、電磁弁59は、給気部AVと排気部RVと接続路59aとを有する。給気部AVは、2位置3ポートの切換弁によって構成されており、応荷重圧力VLが入力される入口ポートINと、接続路59aが接続された出口ポートOUTと、排出ポートEXとを有する。排気部RVは、2位置3ポートの切換弁によって構成されており、接続路59aに繋がる入口ポートINと、出口ポートOUTと、排出ポートEXとを有する。
【0026】
電磁弁59には、マイコン回路からなる制御部としての制御回路31(図4参照)から出力された制御信号が入力される。制御信号は、車両側からブレーキ制御装置10に送られる常用ブレーキ指令に応じた信号と、接続路59aに設けられたパイロット圧力センサ63による検出値に基づく信号と、後述のブレーキ圧力センサ64による検出値に基づく信号と、図外の車輪滑走検知部から出力された信号に応じた信号と、に基づいて生成される。なお、車輪滑走検知部は、車輪の回転速度、車速等から車輪の滑走を検知するものである。
【0027】
制御回路は、常用ブレーキ指令を受信すると、それに応じて中継弁部56から出力されるべきブレーキ圧力BCを設定し、制御信号を電磁弁59へ送信する。そして、電磁弁59は、制御信号に応じて給気部AV及び排気部RVの弁位置を調整することにより、応荷重弁21から出力された応荷重圧力VLを調整し、接続路59aを通して中継弁部56に入力させる。また、制御回路31は、パイロット圧力センサ63の検出値及びブレーキ圧力センサ64の検出値に応じて、給気部AV及び排気部RVの弁位置を調整する。
【0028】
また、制御回路31は、車輪滑走検知部からの信号を受信すると、それに応じて、中継弁部56から出力されるべきブレーキ圧力BCを修正する。このとき、制御回路31は、車輪滑走検知部からの車輪の滑走を示す信号が受信されなくなるまで、ブレーキ圧力BCを緩める。このとき、ブレーキ圧力BCは段階的に緩めるようにしてもよい。
【0029】
中継弁部56は、電磁弁59によって調整された圧力がパイロット圧力(ブレーキ指令圧)として入力され、ブレーキ圧力BCを出力する。具体的に、中継弁部56は、入力ポートを有する入力室56aと、出力ポートを有する出力室56bと、パイロットポートを有する制御室56cと、排出ポートを有する排出室56dと、中空のピストン56eと、膜板56fと、ばね56gと、弁体56hと、ばね56iとを有する。
【0030】
入力室56aには、供給カット弁57を介して供給された元圧SRが入力ポートを通して入力される。パイロットポートは、電磁弁59の接続路59aに接続されており、制御室56cには、パイロットポートを通してパイロット圧力が入力される。出力室56bは、パイロット圧力に応じたブレーキ圧力を生じさせ、出力ポートを通して出力する。排出室56dは、排出ポートを通して余剰圧力を排気する。排出ポートに繋がる排出管路66には、消音器67(図1参照)が設けられている。
【0031】
膜板56fは、制御室56c内の空気圧力と出力室56b内の空気圧力との差圧によって撓み、ばね56gの付勢力に抗しながらピストン56eを変位させる。ピストン56eが上方に変位する場合は、弁体56hがばね56iの付勢力に抗しながら、上方に移動させられ、入力室56aと出力室56bが連通状態となる。そして差圧が無くなるとピストン56eは下方に変位し、弁体56hはばね56iによって移動させられ、入力室56aと出力室56bは非連通状態となる。逆にピストン56eが下方に変位する場合は、ピストン56eの中空部を介して出力室56bと排出室56dが連通状態となる。そして差圧が無くなるとピストン56eは上方に変位し、出力室56bと排出室56dは非連通状態となる。
【0032】
すなわち、入力室56aの圧縮空気が出力室56bに流入したり、出力室56bの圧縮空気が排出室56dに排出されることにより、出力室56b内の圧力がパイロット圧力に応じたブレーキ圧力BCに調整される。
【0033】
なお、出力室56bの過渡的な変化にピストン56eが過敏に反応し過ぎるのを防ぐために、ばね室56jと出力室56bとは絞り56kを介して連通している。
【0034】
開放用電磁弁60は、2位置3ポート切換弁によって構成されており、入口ポートIN、出口ポートOUT及び排出ポートEXを有する。開放用電磁弁60は、第1状態と第2状態とに切り換え可能である。第1状態では、図3に示すように、入口ポートINが遮断されるとともに、出口ポートOUTと排出ポートEXとが連通されている。排出ポートEXは、ブレーキ制御装置10の排気口に繋がっている。このため、第1状態では、供給カット弁57は、ばね室57fのばね力によって図3の状態となっている。第2状態には、運転席からの強制緩解指令に基づいて切り換えられ、この第2状態では、入口ポートINに入力された元圧SRが出口ポートOUTから出力される。
【0035】
供給カット弁57は、入口ポート57aと出口ポート57bと制御ポート57cとピストン57dとを有する。供給カット弁57内の空間は、ピストン57dによって、制御室57eと、ばね室57fと、第1室57gと、第2室57hとに仕切られている。制御室57eには制御ポート57cが設けられている。制御ポート57cは、開放用電磁弁60の出口ポートに連通されていて、開放用電磁弁60の状態に応じてピストン57dを第1位置と第2位置との間で変位させる。そして、開放用電磁弁60が第1状態にある場合には、ピストン57dは、入口ポート57aと出口ポート57bとがばね室57fに開口する第1位置となり、第2状態にある場合には、入口ポート57aが第1室57gに開口する一方、出口ポート57bが第2室57hに開口する第2位置となる。したがって、供給カット弁57は、開放用電磁弁60が第1状態にある場合に、元圧SRを中継弁部56の入力室56aに入力する一方、開放用電磁弁60が第2状態に切り換えられることに伴って、中継弁部56に入力される元圧SRを遮断する。
【0036】
排気弁58は、入口ポート58aと出口ポート58bと制御ポート58cと排気ポート58eとピストン58dとを有する。排気弁58内の空間は、ピストン58dによって、制御室58fと、ばね室58gと、切換室58hとに仕切られている。入口ポート58aは、中継弁部56の出力ポートに接続されている。したがって中継弁部56の出力室56bの内圧と排気弁58の切換室58hの内圧は同じになっている。出口ポート58bは、ブレーキシリンダ49(図4)に接続されていて、出口ポート58bから出力される圧力はブレーキ圧力BCとなる。出口ポート58bからブレーキシリンダ49に繋がる管路には、ブレーキ圧力センサ64が設けられている。排気ポート58eは、排出管路66に接続されている。制御室58fには前記制御ポート58cが設けられている。制御ポート58cは、開放用電磁弁60の出口ポートOUTに連通されていて、開放用電磁弁60の状態に応じてピストン58dを第1位置と第2位置との間で変位させる。そして、開放用電磁弁60が第1状態にある場合には、ピストン58dは、入口ポート58aと出口ポート58bとが切換室58hに開口するとともに、排気ポート58eがばね室58gに開口する第1位置となり、開放用電磁弁60が第2状態にある場合には、ピストン58dは、入口ポート58aと出口ポート58bと排気ポート58eとが何れもばね室58gに開口する第2位置となる。この場合には、入口ポート58aと排気ポート58eとが連通するので、中継弁部56の出力室56b内の圧縮空気も排気ポート58eを通して排出される。したがって、排気弁58は、開放用電磁弁60が第1状態にある場合に、出口ポート58bからブレーキ圧力BCを出力する一方、開放用電磁弁60が第2状態に切り換えられることに伴って、排気ポート58eを通してブレーキ圧力BCを排気する。
【0037】
図4に示すように、開放用電磁弁60は、遮断部である遮断回路33を介して非常ブレーキ指令線35と電気的に接続されている。非常ブレーキ指令線35は、非常ブレーキ指令が出されていない通常時は例えば直流100ボルトの電圧が印加されている。その一方、非常ブレーキ指令が出されたときには非常ブレーキ指令線35の電圧は0(ゼロ)ボルトとなる。つまり、非常ブレーキ指令線35は、非常ブレーキ指令が出されていなければ、開放用電磁弁60に電力を供給できる程度に電圧が印加されているが、非常ブレーキ指令が出されたときには電圧の印加がなくなり、開放用電磁弁60に電力を供給できなくなる。
【0038】
遮断回路33は、接点33aを有しており、制御回路31からの給電に応じてオンオフ制御される。制御回路31は、電源が入っていれば、通常遮断回路33に給電を行う。遮断回路33は、制御回路31から給電されていないときには接点33aを閉じているが、制御回路31からの給電によって接点33aを開く。すなわち、遮断回路33は、通常の状態では、非常ブレーキ指令線35と開放用電磁弁60との間を遮断している。そして、遮断回路33は、非常ブレーキ指令がない場合において、制御回路31からの給電が停止すると、接点33aを閉じて非常ブレーキ指令線35の電力(直流100ボルト)を開放用電磁弁に供給する。また、制御回路31は、強制緩解指令を受信すると、遮断回路33への給電を停止する。これにより遮断回路33の接点33aが閉じられる。したがって、開放用電磁弁60は、通常第1状態にあるが、制御回路31に強制緩解指令が入力されると、これを受けて、開放用電磁弁60は第2状態に切り換えられる。
【0039】
制御回路31は、非常ブレーキ指令を受信したときには、給電を継続し、遮断回路33による遮断状態を維持するようになっている。ただし、非常ブレーキ指令を受信したときには、遮断回路33への給電を停止するようにしてもよく、あるいは非常ブレーキ指令の入力の有無については監視しないようにしてもよい。非常ブレーキ指令が出されたときには非常ブレーキ指令線35が0(ゼロ)ボルトとなるため、遮断回路33の断接状態の如何に係わりなく開放用電磁弁60への給電がなされないからである。
【0040】
なお、強制緩解指令は、ブレーキシリンダ49の不緩解状態が検出されたときに、運転席から運転手等の操作によりブレーキ制御装置10へ送られる信号である。また、非常ブレーキ指令は、運転手等の操作によって運転席からブレーキ制御装置10へ送られる信号である。図4では、便宜上制御回路31を2つ(遮断回路33に繋がる制御回路31と、電磁弁59に繋がる制御回路31)に分けて示しているが、これらは同じものである。
【0041】
次に、本実施形態に係るブレーキ制御装置10の動作制御について、図5を参照しつつ説明する。
【0042】
まず、マイコン回路からなる制御回路31の電源が投入されると、制御回路31から遮断回路33への給電がなされる(ステップST1)。これにより、遮断回路33は接点33aを開く(ステップST2)。このため、開放用電磁弁60は第1状態に維持される。
【0043】
そして、常用ブレーキ指令を受信するとブレーキ制御を行う(ステップST3)。このステップでは、制御回路31はそれに応じて、圧力HVL、応荷重圧力VL、ブレーキ圧力を設定し、応荷重弁21の電磁弁52及び中継弁22,22の電磁弁59,59に制御信号を送信する。
【0044】
応荷重弁21では、調圧弁50から満車相当圧力が出力されており、電磁弁52の給気部AV及び排気部RVがパイロット信号に応じて動作することにより、出力弁51に圧力HVLが入力される。応荷重弁21の出力弁51では、圧力HVLをパイロット圧力としてピストン51cを変位させ、応荷重圧力VLを出力する。
【0045】
この応荷重圧力VLは、応荷重弁21から出力されて中継弁22,22に入力される。中継弁22,22では、制御信号に応じて電磁弁59の給気部AV及び排気部RVの弁位置が調整され、これにより、応荷重圧力VLが所定の圧力に調整される。この圧力(ブレーキ指令圧)は接続路59aを通して中継弁部56にパイロット圧力として入力される。中継弁部56では、このパイロット圧力に応じてピストン56eが変位し、出力ポートからブレーキ圧力BCを出力する。このとき、パイロット圧力センサ63の検出値及びブレーキ圧力センサ64の検出値に応じて、給気部AV及び排気部RVの弁位置が調整される。
【0046】
また、制御回路31が車輪滑走検知部(図示省略)からの信号を受信すると、それに応じて、制御回路31は、中継弁部56から出力されるべきブレーキ圧力BCを修正する。このとき、制御回路31は、車輪滑走検知部からの車輪の滑走を示す信号が受信されなくなるまで、ブレーキ圧力BCを緩める。このとき、ブレーキ圧力BCは段階的に緩めるようにしてもよい。そして、車輪の滑走が検知されなくなると、中継弁部56において、再び、出力室56b内の圧力と制御室56c内のパイロット圧力との差圧に応じて容量増幅が行われ、出力されるブレーキ圧力BCが徐々に上昇する。したがって、ブレーキ圧力BCが急激に変化することがないので、衝撃が抑制される。なお、滑走検知は、車両の速度と車輪の回転速度から算出される速度との不一致によって検知される。
【0047】
ステップST3のブレーキ制御においては、不緩解が発生したか否かを判断し(図示しない)、不緩解が発生していれば、強制緩解指令の入力の有無が監視され(ステップST4)、不緩解が発生していなければ、ステップST3のブレーキ制御を継続する。さて、中継弁22の開放用電磁弁60は、通常第1状態にあるが、運転席での操作に応じて出力された強制緩解指令が制御回路31に入力されると、制御回路31からの出力が停止されるので、遮断回路33は、接点33aを閉じていなければ、接点33aを閉じる(ステップST5,ST6)。そして、制御回路31への非常ブレーキ指令の入力があったか否かを判定し(ステップST7)、非常ブレーキ指令が入力されていなければ、非常ブレーキ指令線35の電圧が開放用電磁弁60に印加され、開放用電磁弁60は第2状態に切り換えられる。これにより、排気弁58を通してブレーキ圧力BCが排気され、不緩解が解除される(ステップST8)。
【0048】
一方、非常ブレーキ指令があった場合には、ステップST9に移る。すなわち、非常ブレーキ指令があった場合には、非常ブレーキ指令線35は0(ゼロ)ボルトとなるため、開放用電磁弁60への電圧印加がなくなり、開放用電磁弁60は再び第1状態となる。これにより、排気弁からの排気は停止され、ブレーキシリンダ49のブレーキ圧力BCによって非常ブレーキをかけることができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態では、非常ブレーキ指令がない場合において、常用ブレーキ指令に基づいて中継弁部56を動作させることができるので、常用ブレーキ指令に応じたブレーキ圧力BCを生成することができる。また、車輪滑走検知部から出力された信号に基づいて中継弁部56を動作させることができるので、この信号に基づいて滑走防止制御が可能である。そして、強制緩解指令があると、遮断回路33が接点33aを閉じる。このとき非常ブレーキ指令がなければ、非常ブレーキ指令線35の電力を開放用電磁弁60に供給でき、開放用電磁弁60を動作させることができる。したがって、開放用電磁弁60からのパイロット圧力により、供給カット弁57が中継弁部56への流体供給をカットするとともに、排気弁58がブレーキ圧力を排出する。これにより、不緩解が解除される。
【0050】
一方、非常ブレーキ指令があった場合には、非常ブレーキ指令線35の電圧は0(ゼロ)ボルトとなることから、遮断回路33の接点33aの開閉によらず、開放用電磁弁60には電力が供給されない。このため、開放用電磁弁60は非通電時の状態を維持するので、供給カット弁57及び排気弁58は動作せず、強制緩解制御に優先して非常ブレーキをかけることができる。また、遮断回路33が仮に故障していて接点の断接ができない状態にあったとしても、非常ブレーキ指令が出されたときには非常ブレーキ指令線35の電圧は0(ゼロ)ボルトとなっているため、強制緩解制御が継続することは回避され、非常ブレーキを確実に作動させることができる。したがって、遮断回路33が非常ブレーキ指令線35に接続されることにより、遮断回路33の構成によって高い信頼性を担保する必要がなくなり、これにより、遮断回路33の構成を簡素化して低コスト化を図ることができる。
【0051】
また本実施形態では、ブレーキ圧力BCを排出する際にブレーキシリンダ49内の圧力が中継弁部56内の圧力と一緒に排出されるので、ブレーキシリンダ49内の圧力と中継弁部56内の圧力とが略同じ圧力となる。このため、再度中継弁部56からブレーキシリンダ49にブレーキ圧力BCを供給開始する際の衝撃を緩和することができる。
【0052】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、中継弁22が2つ設けられる構成としたが、中継弁22が1つだけ設けられる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置の圧縮空気回路を示す回路図である。
【図2】前記圧縮空気回路の応荷重圧力生成部を示す回路図である。
【図3】前記圧縮空気回路のブレーキ圧力生成部を示す回路図である。
【図4】前記ブレーキ制御装置の制御動作を説明するためのブロック図である。
【図5】前記ブレーキ制御装置の制御動作を説明するためのフロー図である。
【符号の説明】
【0054】
33 遮断回路
33a 接点
35 非常ブレーキ指令線
45 エアタンク(流体供給源の一例)
49 ブレーキシリンダ
56 中継弁部
58 排気弁
59 電磁弁
60 開放用電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキシリンダ、このブレーキシリンダへ供給される流体の供給源である流体供給源及び非常ブレーキを作用させるための非常ブレーキ指令線を有する車両に設けられるブレーキ制御装置であって、
前記非常ブレーキよりも弱いブレーキを作用させるための常用ブレーキ指令に応じた信号と前記車両の車輪の滑走を検知する車輪滑走検知部から出力された信号に応じた圧力を出力する電磁弁と、
前記電磁弁からの前記出力がパイロット圧として入力され、前記ブレーキシリンダに供給されるブレーキ圧力を生成する中継弁部と、
入力されたパイロット圧によって、前記ブレーキ圧力を排出可能な排気弁と、
前記ブレーキ圧力を強制的に低下させる強制緩解指令に応じて接点を閉じる遮断部と、
前記排気弁のパイロット圧を生成するために、前記遮断部を介して、前記非常ブレーキ指令線から給電される開放用電磁弁と、を備えているブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記排気弁は、前記ブレーキ圧力を排出する際に、前記ブレーキシリンダ内のブレーキ圧力と前記中継弁部内のブレーキ圧力とを一緒に排出する請求項1に記載のブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−125875(P2010−125875A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299349(P2008−299349)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】