説明

ブレーキ制御装置

【課題】 回生制動力を有効に行うことができるブレーキ制御装置を提供すること。
【解決手段】 回生制動装置の作動時にポンプによってリザーバ内に貯留したブレーキ液をホイルシリンダへ送る回生協調増圧制御部と、回生制動装置の作動時にホイルシリンダに送られたブレーキ液をポンプアウト弁を経由しポンプを介してリザーバへ流入させる回生協調減圧制御部とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、下記の特許文献1に記載の技術が開示されている。この公報には、液圧制動装置と回生制動装置を有する制動装置において、ドライバの制動要求に応じた要求制動力と圧力制動力との差を目標回生制動力として設定しているものが開示されている。これにより回生制動時のブレーキペダルフィーリング悪化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−29173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、要求制動力と圧力制動力との差を目標回生制動力としているため、回生制動を十分に行うことができず、回生制動時の電力回収を効率よく行うことができないおそれがあった。
本発明は上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、回生制動力を有効に行うことができるブレーキ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本願発明では、回生制動装置の作動時にポンプによってリザーバ内に貯留したブレーキ液をホイルシリンダへ送る回生協調増圧制御部と、回生制動装置の作動時にホイルシリンダに送られたブレーキ液をポンプアウト弁を経由しポンプを介してリザーバへ流入させる回生協調減圧制御部とを設けた。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、回生制動力を有効に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の液圧制動装置の液圧回路図である。
【図2】実施例1のコントロールユニットの制御ブロック図である。
【図3】実施例1のモータ駆動制御部の制御ブロック図である。
【図4】実施例1の通常増圧制御時の液圧経路を示す図である。
【図5】実施例1の通常減圧制御時の液圧経路を示す図である。
【図6】実施例1の回生協調増圧制御時の液圧経路を示す図である。
【図7】実施例1の回生協調減圧制御時の液圧経路を示す図である。
【図8】実施例1のペダルストローク創生回制御時の液圧経路を示す図である。
【図9】実施例1の動作モードを示す図である。
【図10】実施例1は動作例を示すタイムチャートである。
【図11】実施例1のポンプの断面図である。
【図12】実施例2のペダルストローク創生回制御時の液圧経路を示す図である。
【図13】実施例3の液圧制動装置の液圧回路図である。
【図14】実施例4の液圧制動装置の液圧回路図である。
【図15】実施例4の回生協調減圧制御時の液圧経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施例1〕
実施例1の液圧制動装置について説明する。実施例1の液圧制動装置は、ハイブリッド自動車や電気自動車など回生制動装置を備えた車両に用いられるものである。
[液圧回路の構成]
図1は液圧制動装置の液圧回路図である。ブレーキペダル1はドライバの踏力によって操作され、ブレーキペダル1にはブレーキペダルストローク量を検出するブレーキペダルストロークセンサ2が設けられている。ブレーキペダル1に取り付けられたブレーキロッド3の先には、電動倍力ユニット4が設けられている。電動倍力ユニット4は、電動モータによりブレーキロッド3に推進力を付与して、ドライバのブレーキ操作時の踏力をアシストしている。
マスタシリンダ5は、ブレーキペダル1のストローク量に応じてリザーバタンク6に貯留されたブレーキ液を液圧回路に供給する。液圧回路は、右前輪、左後輪のホイルシリンダ19FR,19RLにブレーキ液を供給するプライマリ液圧回路と、左前輪、右後輪のホイルシリンダ19FL,19RRにブレーキ液を供給するセカンダリ液圧回路により構成されている。
【0009】
図面にはプライマリ液圧回路の構成の符号には「p」を、セカンダリ液圧回路の構成の符号には「s」を付しているが、プライマリ液圧回路と、セカンダリ液圧回路の構成はほぼ同一であるので、以下の説明において特に分けて説明を必要としない箇所についてはプライマリ液圧回路とセカンダリ液圧回路の区別をつけずに説明する。
液圧制御装置は電動モータ20により駆動するポンプ10を備え、ドライバのブレーキペダル操作による液圧発生とは別にポンプ10により液圧を発生することができる。またこのポンプ10は双方向回転可能なギヤポンプであり液圧発生時とは逆回転してホイルシリンダ19からブレーキ液を回収することもできる。
液圧制動装置は、図1においてマスタシリンダ5からP1,P2,P3,P4を経由してホイルシリンダ19へと繋がる第1ブレーキ回路21、ポンプ10の液圧発生時の吐出側からP2へと繋がる第2ブレーキ回路22、P1からポンプ10の液圧発生時の吸入側へと繋がる第3ブレーキ回路23、P4から後述するリザーバ9へと繋がる第4ブレーキ回路24を有している。
【0010】
第1ブレーキ回路21には、第2ブレーキ回路22との接続位置(P2)よりもマスタシリンダ5側にゲートアウト弁14が設けられている。このゲートアウト弁14は、常開型の比例弁である。またゲートアウト弁14と並列にリリーフ弁15が設けられており、ゲートアウト弁14に対してマスタシリンダ5側の圧力がホイルシリンダ19側の圧力よりも予め設定された圧力以上高くなると開弁するようになっている。これは回生協調時にゲートアウト弁14のマスタシリンダ5側の圧力がホイルシリンダ19側の圧力よりも設定された圧力以上小さく成ることを避けるためである。つまり、リリーフ弁15の開弁圧力差は回生協調制御時に回収する液圧相当としている。
また第1ブレーキ回路21には、各ホイルシリンダ19への分岐位置(P3)と第4ブレーキ回路24の接続位置(P4)との間に増圧弁16が設けられている。この増圧弁16は常開型の比例弁である。
またセカンダリ側の第1ブレーキ回路21sには、マスタシリンダ5と第3ブレーキ回路23sとの接続位置(P1s)よりもマスタシリンダ5側には、マスタシリンダ液圧を検出するマスタシリンダ液圧センサ7が設けられている。また第1ブレーキ回路21上であって第2ブレーキ回路22との接続位置(P2)にはポンプ10の吐出圧を検出する吐出圧センサ13が設けられている。
【0011】
第2ブレーキ回路22にはポンプアウト弁11が設けられている。このポンプアウト弁11は常閉型のオン/オフ弁である。また第2ブレーキ回路22と並列にポンプアウト弁11を迂回するように吐出油路25が設けられている。吐出油路25には一方弁12が設けられている。この一方弁12は、ポンプ10がブレーキ液をホイルシリンダ19側に向かって吐出する方向のブレーキ液の流れを許容し、逆方向のブレーキ液の流れを禁止する。
第3ブレーキ回路23には、リザーバ9が設けられている。また第3ブレーキ回路23には、マスタシリンダ5とリザーバ9との間にゲートイン弁8が設けられている。このゲートイン弁8は常閉型の比例弁である。
第4ブレーキ回路24には、減圧弁18が設けられている。この減圧弁18は常閉型のオン/オフ弁である。
【0012】
[コントロールユニットの構成]
図2は統合コントロールユニット30および液圧コントロールユニット31の制御ブロック図である。
統合コントロールユニット30は、要求制動力算出部30a、目標回生制動力算出部30b、必要ホイルシリンダ液圧算出部30cから構成されている。要求制動力算出部30aは、ブレーキペダルストロークセンサ2から入力したブレーキペダルストローク量に基づいてドライバの要求制動力を算出する。目標回生制動力算出部30bは、回生制動により発生させる目標回生制動力を算出する。目標回生制動力は、例えばバッテリの充電量等に基づいて効率良く回生可能な制動力を算出する。必要ホイルシリンダ液圧算出部30cは、ドライバの要求制動力との目標回生制動力との差から液圧制動装置により発生させる制動力を算出し、算出した制動力を発生させる際に必要なホイルシリンダ液圧を算出している。
液圧コントロールユニット31は、ペダルストローク創生制御部31a、回生協調増圧制御部31b、回生協調減圧制御部31c、通常増圧制御部31d、通常減圧制御部31e、ホイルシリンダ液圧算出部31f、モータ駆動制御部31gから構成されている。
【0013】
ペダルストローク創生制御部31aは、回生制動時にブレーキペダルストローク量を確保するように制御する。具体的には、ゲートアウト弁14を閉弁しゲートイン弁8を開弁する。これによりドライバのブレーキ操作によってマスタシリンダ5から流出したブレーキ液をリザーバ9に貯留する。
回生協調増圧制御部31bは、回生制動による制動力が要求制動力に満たないときにホイルシリンダ液圧を増圧するように制御する。具体的には、ゲートアウト弁14を閉弁し、リザーバ9に貯留したブレーキ液をポンプ10によってホイルシリンダ19に送りホイルシリンダ液圧を増圧する。
回生協調減圧制御部31cは、回生制動による制動力が要求制動力を満たすときにホイルシリンダ液圧を減圧するように制御する。具体的には、ゲートアウト弁14を閉弁するとともにポンプアウト弁11を開弁して、ホイルシリンダ19内のブレーキ液をポンプ10によってリザーバ9に送りホイルシリンダ液圧を減圧する。
【0014】
回生協調減圧制御部31cは、戻り量制御部31hを有している。戻り量制御部31hはホイルシリンダ19からリザーバ9へのブレーキ液戻り量を制御している。ポンプアウト弁11を開弁するとホイルシリンダ液圧がポンプ10に作用して、ポンプ10を逆回転方向に駆動しようとする。戻り量制御部31hは、電動モータ20によりポンプ10に正回転方向に回転抵抗を与えることによってブレーキ液戻り量を制御している。言い換えると、戻り量制御部31hは、電動モータ20の逆回転方向の回転数を制御することによりブレーキ液戻量を制御している。
通常増圧制御部31dは、ドライバのブレーキ操作によりホイルシリンダ液圧を増圧させるように制御する。具体的には、ゲートアウト弁14を開弁して、マスタシリンダ5から流出したブレーキ液をホイルシリンダ19に供給してホイルシリンダ液圧を増圧する。
通常減圧制御部31eは、ドライバのブレーキ操作によりホイルシリンダ液圧を減圧させるように制御する。具体的には、ゲートアウト弁14を開弁して、ホイルシリンダ19のブレーキ液をリザーバタンク6に戻してホイルシリンダ液圧を減圧する。
ホイルシリンダ液圧算出部31fは、吐出圧センサ13からのポンプ10の吐出圧と増圧弁16の制御量から各ホイルシリンダ19の液圧を算出している。
【0015】
モータ駆動制御部31gは、電動モータ20に送る電流デューティ比を制御している。図3はモータ駆動制御部31gの制御ブロック図である。モータ駆動制御部31gは、速度制御器32a、電流補償器32b、減圧時基準デューティ比設定部32c、リザーバ液量推定部32dを有している。
速度制御器32aは、目標吐出圧と実吐出圧の偏差を入力して偏差回転数指令値を演算する。目標吐出圧は必要ホイルシリンダ液圧に応じて設定する。偏差回転数指令値は、目標吐出圧に足りない分のブレーキ液圧を発生できる電動モータ20の回転数に設定する。
電流補償器32bは偏差回転数指令値とモータ速度推定値の偏差を入力して指令電流デューティ比を演算する。
減圧時基準デューティ比設定部32cは、実吐出圧からポンプ10によりリークするブレーキ液量を電流デューティ比に換算している。この換算したデューティ比を指令電流デューティ比に足し込んで電動モータ20の指令電流デューティ比としている。
リザーバ液量推定部32dは、吐出圧の変化をモニタしリザーバ9に貯留されたブレーキ液量を推定している。リザーバ9のブレーキ液量が多くなると、ABS制御時に減圧することができないおそれがある。またリザーバ9のブレーキ液量が多くなり、圧力が高くなるとポンプ10のシール性能を確保することができない恐れがある。そのため、リザーバ9のブレーキ液量が増加し、リザーバ9内の液圧が吐出圧センサ13で検出した吐出圧よりも高くなるときには電動モータ20の逆回転を禁止する。このポンプ10のシール性能確保については後で詳述する。
【0016】
[液圧制動装置の動作]
次に液圧制動装置の動作について説明する。実施例1の液圧制動装置は、回生制動装置とともに制動制御を行うため、ドライバの制動要求に変化に加えて回生制動の変化に応じて制御が異なる。以下では、(a)通常増圧制御、(b)通常減圧制御、(c)回生協調増圧制御、(d)回生協調減圧制御、(e)ペダルストローク創生制御に分けて、各制御について説明する。
(a) 通常増圧制御
図4は通常増圧制御時の液圧経路を示す図である。通常増圧は、ドライバのブレーキ操作によりブレーキペダルストローク量が増加したときに、マスタシリンダ5から直接ホイルシリンダ19にブレーキ液を供給する制御である。このときゲートイン弁8、ゲートアウト弁14、増圧弁16、減圧弁18、ポンプアウト弁11、ポンプ10は次のように制御される。
ゲートイン弁:閉弁
ゲートアウト弁:開弁
増圧弁:開弁
減圧弁:閉弁
ポンプアウト弁:閉弁
ポンプ:停止
ブレーキ液は、リザーバタンク6→マスタシリンダ5→ゲートアウト弁14→増圧弁16→ホイルシリンダ19の順で供給される。
【0017】
(b) 通常減圧
図5は通常減圧制御時の液圧経路を示す図である。通常減圧制御は、ドライバのブレーキ操作によりブレーキペダルストローク量が減少したときにホイルシリンダ19からリザーバタンク6にブレーキ液を回収する制御である。またリザーバ9にブレーキ液が貯留されているときは、リザーバ9からリザーバタンク6にブレーキ液を回収する。このときゲートイン弁8、ゲートアウト弁14、増圧弁16、減圧弁18、ポンプアウト弁11、ポンプ10は次のように制御される。
ゲートイン弁:閉弁
ゲートアウト弁:開弁
増圧弁:開弁
減圧弁:閉弁
ポンプアウト弁:開弁
ポンプ:正回転
ブレーキ液は、ホイルシリンダ19→増圧弁16→ゲートアウト弁14→マスタシリンダ5→リザーバタンク6の順で回収される。リザーバ9にブレーキ液が貯留されているときは、加えて、ポンプが正回転するように電動モータが20通電され、リザーバ9→ポンプ10→ポンプアウト弁11→ゲートアウト弁14→マスタシリンダ5→リザーバタンク6の順で回収される。
【0018】
(c) 回生協調増圧制御
図6は回生協調増圧制御時の液圧経路を示す図である。回生協調増圧制御は、回生制動中に回生制動で不足する制動力に相当する液圧分のブレーキ液をポンプ10によりリザーバ9からホイルシリンダ19に供給する制御である。このときゲートイン弁8、ゲートアウト弁14、増圧弁16、減圧弁18、ポンプアウト弁11、ポンプ10は次のように制御される。
ゲートイン弁:閉弁
ゲートアウト弁:閉弁
増圧弁:開弁
減圧弁:閉弁
ポンプアウト弁:開弁
ポンプ:正回転
ブレーキ液は、リザーバ9→ポンプ10→ポンプアウト弁11(または一方弁12)→増圧弁16→ホイルシリンダ19の順で供給される。
【0019】
(d) 回生協調減圧制御
図7は回生協調減圧制御時の液圧経路を示す図である。回生協調減圧制御は、回生制動中に回生制動による制動力に相当する液圧分のブレーキ液をポンプ10によりホイルシリンダ19からリザーバ9に回収する制御である。このときゲートイン弁8、ゲートアウト弁14、増圧弁16、減圧弁18、ポンプアウト弁11、ポンプ10は次のように制御される。
ゲートイン弁:閉弁
ゲートアウト弁:閉弁
増圧弁:開弁
減圧弁:閉弁
ポンプアウト弁:開弁
ポンプ:逆回転
ブレーキ液は、ホイルシリンダ19→増圧弁16→ポンプアウト弁11→ポンプ10→リザーバ9の順で供給される。
【0020】
(e) ペダルストローク創生制御
図8はペダルストローク創生回制御時の液圧経路を示す図である。ペダルストローク創生制御とは、回生制動中にブレーキペダル1のストロークを確保するために行われる制御である。このときゲートイン弁8、ゲートアウト弁14、増圧弁16、減圧弁18、ポンプアウト弁11、ポンプ10は次のように制御される。
ゲートイン弁:開弁
ゲートアウト弁:閉弁
増圧弁:開弁
減圧弁:閉弁
ポンプアウト弁:閉弁
ポンプ:停止
ブレーキ液は、マスタシリンダ5→ゲートイン弁8→リザーバ9の順で供給される。
【0021】
(動作モード)
図9は、状況に応じて上記(a)から(e)で示した制御のうちどの制御を行うかを示した図である。ドライバ制動要求(ブレーキペダル1のストローク量)、回生制動力、液圧制動力に応じて制御を選択する。
ドライバ制動要求:減少、回生制動力:減少、液圧制動力:減少のときは制御(b)を行う。ドライバ制動要求:減少、回生制動力:減少、液圧制動力:保持のときは制御(b)と制御(c)を行う。ドライバ制動要求:減少、回生制動力:減少、液圧制動力:増加のときは制御(b)と制御(c)を行う。ドライバ制動要求:減少、回生制動力:保持、液圧制動力:減少のときは制御(b)を行う。ドライバ制動要求:減少、回生制動力:増加、液圧制動力:減少のときは制御(b)と制御(d)を行う。
ドライバ制動要求:保持、回生制動力:減少、液圧制動力:増加のときは制御(c)を行う。ドライバ制動要求:保持、回生制動力:保持、液圧制動力:保持のときはゲートアウト弁14とゲートイン弁8をともに閉弁して液圧を保持する。ドライバ制動要求:保持、回生制動力:増加、液圧制動力:減少のときは制御(d)を行う。
ドライバ制動要求:増加、回生制動力:減少、液圧制動力:増加のときは制御(c)と制御(e)を行う。ドライバ制動要求:増加、回生制動力:保持、液圧制動力:増加のときは制御(a)を行う。ドライバ制動要求:増加、回生制動力:増加、液圧制動力:減少のときは制御(d)と制御(e)を行う。ドライバ制動要求:増加、回生制動力:増加、液圧制動力:保持のときは制御(e)を行う。ドライバ制動要求:増加、回生制動力:増加、液圧制動力:増加のときは制御(c)と制御(e)を行う。
【0022】
[作用]
(動作例)
液圧制動装置の制御の動作例について説明する。図10は動作例を示すタイムチャートである。時間t1でドライバ要求制動力が発生するとまずは回生制動により制動力を立ち上げる。このときゲートアウト弁14を閉弁、ゲートイン弁8を開弁してマスタシリンダ5からリザーバ9へブレーキ液を供給し、ブレーキペダル1のストロークを確保する。
時間t2で回生制動力がドライバ要求制動力に追従できなくなると、電動モータ20を正回転させてドライバ要求制動力に対して不足する制動力に相当するブレーキ液をリザーバ9からホイルシリンダ19に供給し、ホイルシリンダ液圧を増圧する。
時間t3でドライバ要求制動力が保持されるが回生制動力が増加しているため、電動モータ20を逆回転させて余剰の制動力に相当するブレーキ液をホイルシリンダ19からリザーバ9に回収して、ホイルシリンダ液圧を減圧する。このときゲートイン弁を閉弁しポンプアウト弁11を開弁する。
時間t4でドライバ要求制動力が低下すると、ホイルシリンダ19のブレーキ液をリザーバタンク6に回収する。このとき、ポンプアウト弁11を閉弁しゲートアウト弁14を開弁する。
時間t5でホイルシリンダ液圧がなくなると、ドライバ要求制動力に対して、リザーバ9に余剰な液が生まれてしまうため、電動モータ20を正回転させてリザーバ9の余剰な液もリザーバタンク6に送る。このとき、ゲートアウト弁14は開弁する。時間t5'でドライバ要求制動力が一定になると、電動モータ20を停止させ、ゲートアウト弁14を閉弁する。
時間t6でドライバ要求制動力に対して回生制動力が不足し始めると電動モータ20を正回転させてドライバ要求制動力に対して不足する制動力に相当するブレーキ液をリザーバ9からホイルシリンダ19に供給し、ホイルシリンダ液圧を増圧する。
時間t7以降ではゲートアウト弁14、ゲートイン弁8を共に閉弁して、ホイルシリンダ液圧を保持する。
【0023】
(回生制動の効率化)
実施例1のようにマスタシリンダ5とホイルシリンダ19とが液圧回路で繋がっている液圧制動装置の場合、ブレーキペダル1を保持しているにも関わらず液圧制動力を変えようとするとマスタシリンダ液圧が変化してブレーキペダルフィーリングが悪化してしまう。
従来では、ドライバ要求制動力に対して液圧制動力が不足する分を回生制動力で補うようにしていた。つまり、液圧制動力を主に使用し、液圧制動力だけでは不足する分として回生制動力を補助的に使用していた。そのため回生制動を十分に行うことができず、回生制動時の電力回収を効率良く行うことができないおそれがあった。
そこで実施例1では、回生制動装置の作動時にゲートアウト弁14を閉弁方向に制御しリザーバ9内に貯留したブレーキ液をポンプ10によりホイルシリンダ19に送りホイルシリンダ液圧を増圧する回生協調増圧制御を行うこととした。また、回生制動装置の作動時にゲートアウト弁14を閉弁方向に制御しホイルシリンダ内のブレーキ液をポンプ10を介してリザーバ9へ流入させてホイルシリンダ液圧を減圧する回生協調減圧制御を行うこととした。
これによりブレーキペダルストロークに関わらず、ホイルシリンダ液圧を増減圧することができ、回生制動力に応じて液圧制動力を制御することができる。そのため、回生制動を十分に行うことができ、回生制動時の電力回収を効率良く行うことができる。
さらに実施例1では、ドライバのブレーキ操作によってマスタシリンダ5から流出したブレーキ液をリザーバ9内に貯留させるペダルストローク創生制御を行うこととした。
これによりブレーキペダルストロークは確保しつつ、ブレーキペダルストロークに関わらず回生制動力に応じて液圧制動力を制御することができる。そのため、回生制動を十分に行うことができ、回生制動時の電力回収を効率良く行うことができる。
【0024】
(減圧弁の小型化)
ブレーキ液をホイルシリンダ19からリザーバ9に回収するには、減圧弁18を開弁すれば良い。オン/オフ弁の減圧弁18でホイルシリンダ液圧を制御しようとすると頻繁に開閉弁を繰り返すこととなり、通常のブレーキ操作時に騒音の発生が頻発することとなる。騒音低減のために減圧弁18を比例弁にしても良いが、比例弁はオン/オフ弁に比べてコストが高い上、ホイルシリンダ圧のような比較的高い液圧が作用する位置に設けた常閉型の比例弁は大型化してしまう。なぜなら、高い液圧のもとでも閉弁状態を確保するために強いバネを用いる必要があり、開弁制御時にはこの強いバネに打ち勝って制御できる大きなソレノイドが必要となるからである。
そこで実施例1では、ポンプ10を双方向回転可能なギヤポンプとした。
これにより、減圧弁18をオン/オフ弁とすることができ、コストを抑制するとともに小型化を図ることができる。
【0025】
(電力消費の抑制)
ポンプ10を常に回転停止または正回転させておくことで、ブレーキ液の逆流を防ぐことができる。しかしながら、ポンプ10を回転停止または正回転させるためには、ホイルシリンダ圧に対抗することができるように電動モータ20を常に通電しておかなければならない。
そこで実施例1では、ポンプアウト弁11と、ポンプ10から吐出される方向のブレーキ液の流れのみを許容する一方弁12を設けることとした。
これにより電動モータ20に通電しない状態であってもブレーキ液の逆流を防ぐことができ、電力消費を抑制することができる。
【0026】
(戻り量制御)
実施例1では、ポンプアウト弁11を開弁方向に作動させ、ポンプアウト弁11を経由しポンプ10を介してホイルシリンダ19からリザーバ9に流入するブレーキ液の戻り量を制御するようにした。具体的には、ポンプ10に回転抵抗を与えるようにした。つまり、電動モータ20の回転数を制御するようにした。
これにより、ポンプ10によってホイルシリンダ液圧を制御することができる。
【0027】
(ポンプアウト弁の小型化)
上述した減圧弁18と同様、比例弁ではコストが高い上、大型化してしまう。
そこで実施例1では、ポンプアウト弁11を常閉型のオン/オフ弁とした。これにより、ポンプアウト弁11のコストを抑制するとともに小型化を図ることができる。
(リザーバ液量制御)
第3ブレーキ回路23のマスタシリンダ5とリザーバ9との間に常閉型のゲートイン弁8を設けた。
これによりリザーバ9内の液量を細かく制御することができる。
【0028】
(ポンプの吐出量制御)
実施例1では、ドライバ要求制動力に基づいて得られた必要ホイルシリンダ液圧を算出し、ホイルシリンダ液圧と必要ホイルシリンダ液圧に基づいてモータに作用する電流値を調整するようにした。
これによりポンプ10のブレーキ液吐出量を細かく制御することができ、不足する制動力に応じてホイルシリンダ19にブレーキ液圧を供給することができる。
(要求駆動力増加に対応した制動力増加)
実施例1では、ブレーキペダルストロークセンサ2によりドライバの制動力増加傾向を検出すると、ゲートアウト弁を開弁方向に作動させるようにした。
これによりドライバの要求制動力増加に応じて制動力を増加することができる。
【0029】
(要求駆動力減少に対応した制動力減少)
実施例1では、ブレーキペダルストロークセンサ2によりドライバの制動力減少傾向を検出すると、ゲートアウト弁を開弁方向に作動させるようにした。
これによりドライバの要求制動力減少に応じて制動力を減少することができる。
(回生制動力減少時の制動力確保)
実施例1では、ポンプ10は、回生制動装置の回生制動力が減少した分の制動力をリザーバ9へ流入したブレーキ液をホイルシリンダ19へ送り、ホイルシリンダ液圧を増圧して確保するようにした。
これにより、回生制動力と液圧制動力の合計はドライバ要求制動力を維持することができる。
【0030】
(ブレーキペダルストローク確保)
実施例1では、ドライバによるブレーキ操作時に、ゲートアウト弁14を閉弁方向に制御し、ゲートイン弁8を開弁方向に制御し、マスタシリンダ5から流出したブレーキ液をリザーバ9へ流入させるようにした。
これにより、回生制動力のみで制動力を確保する場合であってもブレーキペダルストロークを確保することができ、ブレーキペダルフィーリングを向上させることができる。
【0031】
(ポンプのシール性能確保)
図11はポンプ10の断面図である。ポンプ10は、電動モータ20の回転軸と一体に開展する駆動軸10aと、駆動軸10aに取り付けられ一体に回転する駆動ギヤ10bと、駆動ギヤ10bと噛み合う従動ギヤ10cと、従動ギヤ10cが取り付けられ一体に回転する従動軸10dと、駆動ギヤ10bおよび従動ギヤ10cの刃先をシールするシールブロック10eとこれらを収容するハウジング10fから構成されている。
ハウジング10fにはシールブロック10eと駆動ギヤ10bおよび従動ギヤ10cとに囲まれた空間内に吸入孔10gが形成されている。この吸入孔10gは第3ブレーキ回路23に接続している。またハウジング10fには駆動ギヤ10bおよび従動ギヤ10cの外周側に吐出孔10hが形成されている。この吐出孔10hは第2ブレーキ回路22に接続している。
駆動ギヤ10bおよび従動ギヤ10cの歯間が吸入孔10gを通過するときにブレーキ液が供給され、刃先がシールブロック10eにシールされた状態で回転し、吐出孔10h側にブレーキ液を供給する。
ポンプ10が正回転しているときには、図11に斜線で示す領域は高圧領域となり、ドットで示す領域は低圧領域となる。このため、駆動ギヤ10bおよび従動ギヤ10cはシールブロック10e側(図11の矢印方向)に押しつけられ、駆動ギヤ10bおよび従動ギヤ10cの刃先とシールブロックとの間にシール部が形成される。
仮に図11にドットで示す領域が高圧領域となり、斜線で示す領域が低圧領域となると駆動ギヤ10bおよび従動ギヤ10cはシールブロック10eから離れる方向に押しつけられるため、駆動ギヤ10bおよび従動ギヤ10cの刃先がシールブロック10eから離れてしまいシール性能を確保することができない。
そこで実施例1では、リザーバ9のブレーキ液量が増加し、リザーバ9内の液圧が吐出圧センサ13で検出した吐出圧よりも高くなるときには電動モータ20の逆回転を禁止するようにしている。
これにより、吸入孔10g側の液圧が吐出孔10h側の液圧よりも高くなることを防止し、ポンプ10のシール性能を確保することができる。
【0032】
[効果]
次に、実施例1の効果について以下に列記する。
(1)回生制動装置を備えた車両に用いられるブレーキ制御装置であって、ブレーキ回路中に設けられ、電動モータ20によって駆動するポンプ10と、ドライバのブレーキ操作によってブレーキ液圧を発生するマスタシリンダ5と、ブレーキ液圧が作用するように構成されたホイルシリンダ19とを接続する第1ブレーキ回路21と、第1ブレーキ回路21とポンプ10の吐出側とを接続する第2ブレーキ回路22と、第1ブレーキ回路21上であって第2ブレーキ回路22の接続位置よりもマスタシリンダ5側に設けられたゲートアウト弁14と、第1ブレーキ回路21上であってゲートアウト弁14よりもマスタシリンダ5側の位置とポンプ10の吸入側とを接続する第3ブレーキ回路23と、第3ブレーキ回路23上であってポンプ10の吸入側に設けられ、マスタシリンダ5から流出したブレーキ液を貯留可能なリザーバ9と、ドライバのブレーキ操作によってマスタシリンダ5から流出したブレーキ液をリザーバ9内に貯留させるペダルストローク創生制御部31a(ブレーキ液貯留制御部)と、回生制動装置の作動時にゲートアウト弁14を閉弁方向に制御しリザーバ9内に貯留したブレーキ液をポンプ10によりホイルシリンダ19に送りホイルシリンダ液圧を増圧する回生協調増圧制御部31bと、回生制動装置の作動時にゲートアウト弁14を閉弁方向に制御しホイルシリンダ19内のブレーキ液をポンプ10を介してリザーバ9へ流入させてホイルシリンダ液圧を減圧する回生協調減圧制御部31cと、を有する液圧コントロールユニット31と、を備えた。
よって、回生制動を十分に行うことができ、回生制動時の電力回収を効率良く行うことができる。
【0033】
(2)ポンプ10を双方向回転可能なギヤポンプをした。
よって、減圧弁18をオン/オフ弁とすることができ、コストを抑制するとともに小型化を図ることができる。
(3)第2ブレーキ回路22に設けられたポンプアウト弁11と、第2ブレーキ回路22に並列に設けられたポンプ10から吐出される方向のブレーキ液の流れのみを許容する一方弁12を備えた吐出油路25を備えた。
よって、電動モータ20に通電しない状態であってもブレーキ液の逆流を防ぐことができ、電力消費を抑制することができる。
(4)回生協調減圧制御部31cは、ポンプアウト弁14を開弁方向に作動させ、ポンプアウト弁14を経由しポンプ10を介してホイルシリンダ19からリザーバ9に流入するブレーキ液の戻り量を制御する戻り量制御部31hを備えた。
よって、ポンプ10によりホイルシリンダ液圧を制御することができる。
【0034】
(5)戻り量制御部31hは、ポンプ10に回転抵抗を与えるようにした。
よって、ポンプ10によりホイルシリンダ液圧を制御することができる。
(6)戻り量制御部31hは、電動モータ20の回転数を制御するようにした。
よって、ポンプ10によりホイルシリンダ液圧を制御することができる。
(7)ポンプアウト弁11を、常閉型のオン/オフ弁とした。
よって、ポンプアウト弁11のコストを抑制するとともに小型化を図ることができる。
(8)第3ブレーキ回路23のうちマスタシリンダ5とリザーバ9との間に常閉型のゲートイン弁8を設けた。
これによりリザーバ9内の液量を細かく制御することができる。
【0035】
(9)ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキペダルストロークセンサ2(ブレーキ操作状態検出部)を備え、検出されたブレーキ操作状態からドライバの要求制動力を算出する要求制動力算出部30aと、ホイルシリンダ液圧を算出するホイルシリンダ液圧算出部31fと、要求制動力算出部30aにより算出された要求制動力に基づいて得られた必要ホイルシリンダ液圧を算出する必要ホイルシリンダ液圧算出部30cと、を備え、液圧コントロールユニット31に、算出されたホイルシリンダ液圧と必要ホイルシリンダ液圧に基づいて電動モータ20に作用する電流値を調整するモータ駆動制御部31gを備えた。
よって、ポンプ10のブレーキ液吐出量を細かく制御することができ、不足する制動力に応じてホイルシリンダ19にブレーキ液圧を供給することができる。
(10)液圧コントロールユニット31は、ブレーキペダルストロークセンサ2によってドライバの制動力増加傾向を検出すると、ゲートアウト弁14を開弁方向に作動させる通常増圧制御部31dを備えた。
よって、ドライバの要求制動力増加に応じて制動力を増加することができる。
(11)液圧コントロールユニット31は、ブレーキペダルストロークセンサ2によってドライバの制動力減少傾向を検出すると、ゲートアウト弁14を開弁方向に作動させる通常減圧制御部31eを備えた。
よって、ドライバの要求制動力減少に応じて制動力を減少することができる。
【0036】
(12)ポンプ10により、回生制動装置の回生制動力が減少した分の制動力をリザーバ9へ流入したブレーキ液をホイルシリンダ19へ送り、ホイルシリンダ液圧を増圧して確保するようにした。
よって、回生制動力と液圧制動力の合計はドライバ要求制動力を維持することができる。
(13)ペダルストローク創生制御部31a(ペダルストローク創生制御部)は、ドライバによるブレーキ操作時に、ゲートアウト弁14を閉弁方向に制御し、ゲートイン弁8を開弁方向に制御し、マスタシリンダ5から流出したブレーキ液をリザーバ9へ流入させるようにした。
よって、回生制動力のみで制動力を確保する場合であってもブレーキペダルストロークを確保することができ、ブレーキペダルフィーリングを向上させることができる。
【0037】
〔実施例2〕
実施例2の液圧制動装置について説明する。実施例1では、ペダルストローク創生制御時にはゲートイン弁8を開弁し、ゲートアウト弁14を閉弁して、ブレーキ液を第3ブレーキ回路23を経由してリザーバ9に供給していた。実施例2ではその経路が異なる。
[液圧制動装置の動作]
図12はペダルストローク創生回制御時の液圧経路を示す図である。ペダルストローク創生制御ではゲートイン弁8、ゲートアウト弁14、増圧弁16、減圧弁18、ポンプアウト弁11、ポンプ10は次のように制御される。
ゲートイン弁:閉弁
ゲートアウト弁:開弁
増圧弁:開弁
減圧弁:閉弁
ポンプアウト弁:開弁
ポンプ:逆回転
ブレーキ液は、マスタシリンダ5→ゲートアウト弁14→ポンプ10→リザーバ9の順で供給される。電動モータ20には通電しないが、ポンプ10はブレーキ液圧の抵抗により逆回転する。
【0038】
[作用]
実施例2では、ドライバによるブレーキ操作時に、ゲートアウト弁14とポンプアウト弁11を開弁方向に制御し、マスタシリンダ5から流出したブレーキ液をリザーバ9へ流入させるようにした。
これにより、回生制動力のみで制動力を確保する場合であってもブレーキペダルストロークを確保することができ、ブレーキペダルフィーリングを向上させることができる。
[効果]
(14)ペダルストローク創生制御部31aは、ドライバによるブレーキ操作時に、ゲートアウト弁14とポンプアウト弁11を開弁方向に制御し、マスタシリンダ5から流出したブレーキ液をリザーバ9へ流入させるようにした。
よって、回生制動力のみで制動力を確保する場合であってもブレーキペダルストロークを確保することができ、ブレーキペダルフィーリングを向上させることができる。
【0039】
〔実施例3〕
実施例3の液圧制動装置について説明する。実施例1ではゲートイン弁8を設けていたが、実施例3ではゲートイン弁8を設けず、リザーバ9にチェック弁26を設けるようにした。
図13は液圧制動装置の液圧回路図である。リザーバ9は、チェック弁26を備える。チェックバルブ9aは、リザーバ9に所定量のブレーキ液が貯留された場合、または第3ブレーキ回路23の圧力が所定液圧を超える高圧となった場合に閉弁する。リザーバ9内へのブレーキ液の流入を禁止することで、ポンプ10の吸入孔10gに高圧が印加されるのを防止する。なお、チェックバルブ9aは、ポンプ10が作動して第3ブレーキ回路23の圧力が低くなった場合にはリザーバ9内へのブレーキ液の流入を許容する。
また、ブレーキペダル1に取り付けられたブレーキロッド3の先には、負圧倍力ユニット28が設けられている。負圧倍力ユニット28は、エンジンの負圧を用いてブレーキロッド3に推進力を付与して、ドライバのブレーキ操作時の踏力をアシストしている。またこの負圧倍力ユニット28は、所定のブレーキペダルストロークまでは作動しないようになっている(ロスストローク)。
[効果]
(15)リザーバ9にチェック弁26を備えるようにした。
よって、第3ブレーキ回路23にゲートイン弁8を設ける必要がなく、構成を簡略化することができる。
【0040】
〔実施例4〕
実施例4の液圧制動装置について説明する。実施例1ではポンプアウト弁11を第2ブレーキ回路22に設けていた。実施例4ではポンプアウト弁11の設置位置が異なる。
図14は液圧制動装置の液圧回路図である。前輪側の第1ブレーキ回路21の増圧弁16FR,16FLとホイルシリンダ19FR,19FLとの間の位置(P5)から第2ブレーキ回路22とを接続する第5ブレーキ回路27を設けた。この第5ブレーキ回路27にポンプアウト弁11を設けた。また第5ブレーキ回路27と第2ブレーキ回路22との接続位置(P6)に対してポンプ10と反対側に一方弁12を設けた。
また各ホイルシリンダ19には、ホイルシリンダ液圧を検出するホイルシリンダ液圧センサ29が設けられている。
[液圧制動装置の動作]
図15は回生協調減圧制御時の液圧経路を示す図である。回生協調減圧制御は、回生制動中に回生制動による制動力に相当する液圧分のブレーキ液をポンプ10によりホイルシリンダ19からリザーバ9に回収する制御である。このときゲートアウト弁14、増圧弁16、減圧弁18、ポンプアウト弁11、ポンプ10は次のように制御される。
ゲートアウト弁:閉弁
増圧弁:開弁
減圧弁:閉弁
ポンプアウト弁:開弁
ポンプ:逆回転
ブレーキ液は、ホイルシリンダ19→増圧弁16→ポンプアウト弁11→ポンプ10→リザーバ9の順で供給される。
[効果]
(16)前輪側の第1ブレーキ回路21の増圧弁16FR,16FLとホイルシリンダ19FR,19FLとの間の位置から第2ブレーキ回路22とを接続する第5ブレーキ回路27を設け、この第5ブレーキ回路27にポンプアウト弁11を設けた。
ゲートアウト弁14を閉弁すれば、リリーフ弁15により、ブレーキ回路のP2はP1よりも低圧にすることが可能であるため、この状態でポンプを逆回転させ、ポンプアウト弁を開弁することにより、ホイルシリンダの液をリザーバ9に回収することが可能である。
【0041】
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施例1ないし実施例4に基づいて説明してきたが、各発明の具体的な構成は各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、実施例1では電動倍力ユニット4を用いているが、ハイブリッド車両の場合には負圧倍力ユニットを用いても良い。
また実施例1の回生協調増圧制御においてポンプアウト弁11を開弁するように制御しているが、ポンプアウト弁11は閉弁しておいても良い。
【0042】
更に、上記実施例から把握しうる請求項以外の技術的思想について、以下にその効果と共に記載する。
(イ)請求項5に記載のブレーキ制御装置において、
前記戻り量制御部は、前記電動モータの回転数を制御することを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、ポンプによりホイルシリンダ液圧を制御することができる。
(ロ)請求項3に記載のブレーキ制御装置において、
前記ポンプアウト弁は、常閉型のオン/オフ弁であることを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、ポンプアウト弁のコストを抑制するとともに小型化を図ることができる。
【0043】
(ハ)請求項3に記載のブレーキ制御装置において、
前記第3ブレーキ回路のうち前記マスタシリンダと前記リザーバとの間に常閉型ゲートイン弁を設けたことを特徴とするブレーキ制御装置。
これによりリザーバ内の液量を細かく制御することができる。
(ニ)請求項3に記載のブレーキ制御装置において、
ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキ操作状態検出部を備え、
前記検出されたブレーキ操作状態からドライバの要求制動力を算出する要求制動力算出部と、
前記ホイルシリンダ液圧を算出するホイルシリンダ液圧算出部と、
前記要求制動力算出部により算出された要求制動力に基づいて得られた必要ホイルシリンダ液圧を算出する必要ホイルシリンダ液圧算出部と、
を備え、
前記コントロールユニットは、前記算出されたホイルシリンダ液圧と前記必要ホイルシリンダ液圧に基づいて前記電動モータに作用する電流値を調整するモータ駆動制御部と、
を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、ポンプ10のブレーキ液吐出量を細かく制御することができ、不足する制動力に応じてホイルシリンダ19にブレーキ液圧を供給することができる。
【0044】
(ホ)上記(ニ)に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記ブレーキ操作状態検出部によってドライバの制動力増加傾向を検出すると、前記ゲートアウト弁を開弁方向に作動させる通常増圧制御部を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、ドライバの要求制動力増加に応じて制動力を増加することができる。
(へ)上記(ニ)に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記ブレーキ操作状態検出部によってドライバの制動力減少傾向を検出すると、前記ゲートアウト弁を開弁方向に作動させる通常減圧制御部を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、ドライバの要求制動力減少に応じて制動力を減少することができる。
(ト)請求項4に記載のブレーキ制御装置において、
前記ポンプは、前記回生制動装置の回生制動力が減少した分の制動力を前記リザーバへ流入したブレーキ液を前記ホイルシリンダへ送り、前記ホイルシリンダ液圧を増圧して確保することを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、回生制動力と液圧制動力の合計はドライバ要求制動力を維持することができる。
【0045】
(チ)上記(ハ)に記載のブレーキ制御装置において、
ドライバによるブレーキ操作時に、前記ゲートアウト弁を閉弁方向に制御し、前記ゲートイン弁を開弁方向に制御し、前記マスタシリンダから流出したブレーキ液を前記リザーバへ流入させるペダルストローク創生制御部を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、回生制動力のみで制動力を確保する場合であってもブレーキペダルストロークを確保することができ、ブレーキペダルフィーリングを向上させることができる。
(リ)請求項3に記載のブレーキ制御装置において、
ドライバによるブレーキ操作時に、前記ゲートアウト弁と前記ポンプアウト弁を開弁方向に制御し、前記マスタシリンダから流出したブレーキ液を前記リザーバへ流入させるペダルストローク創生制御部を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、回生制動力のみで制動力を確保する場合であってもブレーキペダルストロークを確保することができ、ブレーキペダルフィーリングを向上させることができる。
【0046】
(ヌ)回生制動装置を備えた車両に用いるブレーキ制御装置であって、
ブレーキ回路中に設けられ、電動モータによって駆動するポンプと、
ドライバのブレーキ操作によってブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、前記ブレーキ液圧が作用するように構成されたホイルシリンダとを接続する第1ブレーキ回路と、
前記第1ブレーキ回路と前記ポンプの吐出側とを接続する第2ブレーキ回路と、
前記第1ブレーキ回路上であって前記第2ブレーキ回路の接続位置よりも前記マスタシリンダ側に設けられたゲートアウト弁と、
前記第1ブレーキ回路上であって前記ゲートアウト弁よりも前記マスタシリンダ側の位置と前記ポンプの吸入側とを接続する第3ブレーキ回路と、
前記第3ブレーキ回路上であって前記ポンプの吸入側に設けられたマスタシリンダから流出したブレーキ液を貯留可能なリザーバと、
前記第2ブレーキ回路に設けられたポンプアウト弁と、
前記第2ブレーキ回路に並列に設けられ前記ポンプから吐出される方向のブレーキ液の流れのみを許容する一方弁を備えた吐出油路と、
前記回生制動装置の作動時に前記ポンプによって前記リザーバ内に貯留したブレーキ液を前記ホイルシリンダへ送る回生協調増圧制御部と、前記回生制動装置の作動時に前記ホイルシリンダに送られたブレーキ液を前記ポンプアウト弁を経由し前記ポンプを介して前記リザーバへ流入させる回生協調減圧制御部と有するコントロールユニットと、
を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、回生制動を十分に行うことができ、回生制動時の電力回収を効率良く行うことができる。
【0047】
(ル)上記(ヌ)に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記ゲートアウト弁を閉弁方向に制御し、ドライバのブレーキ操作によって前記マスタシリンダから流出したブレーキ液を前記リザーバ内に貯留させるブレーキ液貯留制御部を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、ブレーキペダルストロークを確保することができ、ブレーキペダルフィーリングを良好にすることができる。
(ヲ)上記(ル)に記載のブレーキ制御装置において、
前記回生協調減圧制御部は、前記ポンプアウト弁を開弁方向に作動させ、前記ポンプアウト弁を経由し前記ポンプを介して前記ホイルシリンダから前記リザーバへ流入するブレーキ液の戻り量を制御する戻り量制御部を設け、
前記戻り量制御部は、前記モータの回転数を制御することを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、ポンプによりホイルシリンダ液圧を制御することができる。
【0048】
(ワ)上記(ヲ)に記載のブレーキ制御装置において、
ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキ操作状態検出部と、
前記検出されたブレーキ操作状態からドライバの要求駆動力を算出する要求制動力算出部と、
前記ホイルシリンダ液圧を算出するホイルシリンダ液圧算出部と、
前記要求制動力算出部により算出された要求制動力に基づいて得られた必要ホイルシリンダ液圧を算出する必要ホイルシリンダ液圧算出部と、
を備え、
前記コントロールユニットは、算出された前記ホイルシリンダ液圧と前記必要ホイルシリンダ液圧に基づいて前記モータに作用する電流値を調整するモータ駆動制御部を備えことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、ポンプ10のブレーキ液吐出量を細かく制御することができ、不足する制動力に応じてホイルシリンダ19にブレーキ液圧を供給することができる。
【0049】
(カ)上記(ワ)に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記ブレーキ操作状態検出部によってドライバの制動力増加傾向を検出すると、前記ゲートアウト弁を開弁方向に作動させ、
前記ブレーキ操作状態検出部によって、ドライバの制動力低下傾向を検出すると、前記ゲートアウト弁を開弁方向に作動させることを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、ドライバの要求制動力増加に応じて制動力を増加することができる。
(ヨ)ドライバのブレーキ操作によってマスタシリンダから流出したブレーキ液を貯留するリザーバと、
正方向に回転することで前記リザーバに貯留したブレーキ液を吸入してホイルシリンダへ圧送するポンプと、
車両に搭載された回生制動装置を回生制動力の増加に伴って、前記ホイルシリンダ内のブレーキ液を前記ポンプを逆方向に回転させ前記リザーバに戻すことを特徴とするブレーキ制御方法。
よって、回生制動を十分に行うことができ、回生制動時の電力回収を効率良く行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
5 マスタシリンダ
9 リザーバ
10 ポンプ
11 ポンプアウト弁
14 ゲートアウト弁
19 ホイルシリンダ
20 電動モータ
21 第1ブレーキ回路
22 第2ブレーキ回路
23 第3ブレーキ回路
31a ペダルストローク創生制御部
31b 回生協調増圧制御部
31c 回生協調減圧制御部
31h 戻り量制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回生制動装置を備えた車両に用いられるブレーキ制御装置であって、
ブレーキ回路中に設けられ、電動モータによって駆動するポンプと、
ドライバのブレーキ操作によってブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、前記ブレーキ液圧が作用するように構成されたホイルシリンダとを接続する第1ブレーキ回路と、
前記第1ブレーキ回路と前記ポンプの吐出側とを接続する第2ブレーキ回路と、
前記第1ブレーキ回路上であって前記第2ブレーキ回路の接続位置よりも前記マスタシリンダ側に設けられたゲートアウト弁と、
前記第1ブレーキ回路上であって前記ゲートアウト弁よりも前記マスタシリンダ側の位置と前記ポンプの吸入側とを接続する第3ブレーキ回路と、
前記第3ブレーキ回路上であって前記ポンプの吸入側に設けられ、前記マスタシリンダから流出したブレーキ液を貯留可能なリザーバと、
ドライバのブレーキ操作によって前記マスタシリンダから流出したブレーキ液を前記リザーバ内に貯留させるブレーキ液貯留制御部と、前記回生制動装置の作動時に前記ゲートアウト弁を閉弁方向に制御し前記リザーバ内に貯留したブレーキ液を前記ポンプにより前記ホイルシリンダに送りホイルシリンダ液圧を増圧する回生協調増圧制御部と、前記回生制動装置の作動時に前記ゲートアウト弁を閉弁方向に制御し前記ホイルシリンダ内の前記ブレーキ液を前記ポンプを介して前記リザーバへ流入させて前記ホイルシリンダ液圧を減圧する回生協調減圧制御部と、を有するコントロールユニットと、
を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記ポンプは双方向回転可能なギヤポンプであることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のブレーキ制御装置において、
前記第2ブレーキ回路に設けられたポンプアウト弁と、
前記第2ブレーキ回路に並列に設けられた前記ポンプから吐出される方向のブレーキ液の流れのみを許容する一方弁を備えた吐出油路を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のブレーキ制御装置において、
前記回生協調減圧制御部は、前記ポンプアウト弁を開弁方向に作動させ、前記ポンプアウト弁を経由し前記ポンプを介して前記ホイルシリンダから前記リザーバに流入するブレーキ液の戻り量を制御する戻り量制御部を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のブレーキ制御装置において、
前記戻り量制御部は、前記ポンプに回転抵抗を与えることを特徴とするブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−47032(P2013−47032A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185625(P2011−185625)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】