ブレーキ液圧調整装置の配置構造
【課題】ブレーキ液圧調整装置を飛水や飛石等から保護するとともに、該ブレーキ液圧調整装置を車体フレームに取り付けるための取付ブラケットの小型化を図ることができるブレーキ液圧調整装置の配置構造を提供すること。
【解決手段】車両のブレーキ液圧を調整するブレーキ液圧調整装置80の配置構造として、運転席90の下方の車体フロア101を上方に膨出させて運転席90とその下方の車体フレーム100との間に空間Sを形成し、該空間Sに前記ブレーキ液圧調整装置80を配置する構成を採用する。又、前記運転席90のシートクッション91を車体に移動可能に取り付けるとともに、該シートクッション91の下方の車体フロア101に、前記ブレーキ液圧調整装置80への配管作業を可能とする開口部を形成する。更に、前記ブレーキ液圧調整装置80をその配管接続部が車幅方向中央側に向くよう配置する。
【解決手段】車両のブレーキ液圧を調整するブレーキ液圧調整装置80の配置構造として、運転席90の下方の車体フロア101を上方に膨出させて運転席90とその下方の車体フレーム100との間に空間Sを形成し、該空間Sに前記ブレーキ液圧調整装置80を配置する構成を採用する。又、前記運転席90のシートクッション91を車体に移動可能に取り付けるとともに、該シートクッション91の下方の車体フロア101に、前記ブレーキ液圧調整装置80への配管作業を可能とする開口部を形成する。更に、前記ブレーキ液圧調整装置80をその配管接続部が車幅方向中央側に向くよう配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキ液圧を調整するブレーキ液圧調整装置の配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、ブレーキ液圧を調整するブレーキ液圧調整装置が設けられているが、このブレーキ液圧調整装置には、ABSアクチュエータやヒルホールドバルブ、液圧センサ等が含まれている。
【0003】
上記ABSアクチュエータは、例えば車両が凍結した路面上を走行している場合に急ブレーキを掛けても車輪がロックしないようにするためのABS(アンチロック・ブレーキ・システム)に設けられるものであって、車両の減速度を検出する加速度センサ(Gセンサ)、各車輪の回転速度を検出する車輪速センサ、ブレーキ液圧を検出する液圧センサ等の検出値に基づいて各車輪の最適回転速度を算出するコントローラから出力される制御信号によって各車輪のブレーキにそれぞれ供給される液圧を制御するものである。
【0004】
又、前記ヒルホールドバルブは、ブレーキのマスタシリンダとホイールシリンダとを接続するブレーキ配管に設けられるものであって、車両が坂道で停止したときに運転者によってブレーキペダルが開放された後も所定の制動力を保持するためのヒルホールド装置に設けられるものであって、車両が停止したときに閉じてホイールシリンダ側のブレーキ配管に所定のブレーキ液圧を保持することによって車両の移動を阻止し、車両の発進時には開き、今まで保持していたブレーキ液圧を抜いて制動力を開放する機能を果たすものである。
【0005】
而して、ブレーキ液圧調整装置に含まれるABSアクチュエータは、作動時の音や振動が車室に伝播するのを防ぐため、車両側部において前後方向に延びる一対のサイドメンバの一方の内側にABSアクチュエータ取付ブラケットを介して取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ところが、ABSアクチュエータは前輪の後方に配置されているため、前輪が跳ね上げた泥水や小石を該ABSアクチュエータが受け易く、ABSアクチュエータに水が侵入したり、損傷を受ける等の問題が発生する可能性があった。
【0007】
そこで、特許文献2には、ABSアクチュエータをABSアクチュエータ取付ブラケットを介して車体フレームのクロスメンバの後方、且つ、一方のサイドメンバの車幅方向内側面に設置する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−297457号公報
【特許文献2】特開2007−055422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2において提案されているようにABSアクチュエータ取付ブラケットを介してABSアクチュエータを車体フレームのクロスメンバの後方、且つ、一方のサイドメンバの車幅方向内側面に設置しても、その設置箇所は前輪が跳ね上げた泥水や小石を受け易い場所であるため、ABSアクチュエータ取付ブラケットの底面部を大きくしてカバー機能を持たせる必要があり、ABSアクチュエータ取付ブラケットが大型化するという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ブレーキ液圧調整装置を飛水や飛石等から保護するとともに、該ブレーキ液圧調整装置を車体フレームに取り付けるための取付ブラケットの小型化を図ることができるブレーキ液圧調整装置の配置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、車両のブレーキ液圧を調整するブレーキ液圧調整装置の配置構造として、運転席下方の車体フロアを上方に膨出させて運転席とその下方の車体フレームとの間に空間を形成し、該空間に前記ブレーキ液圧調整装置を配置する構成を採用したことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記運転席のシートクッションを車体に移動可能に取り付けるとともに、該シートクッション下方の車体フロアに、前記ブレーキ液圧調整装置への配管作業を可能とする開口部を形成したことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記ブレーキ液圧調整装置をその配管接続部が車幅方向中央側に向くよう配置したことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記ブレーキ液圧調整装置を取付ブラケットを介して車体フレームに取り付けるとともに、前記取付ブラケットを、前記車体フレームに予め取り付けられる第1ブラケットと、前記ブレーキ液圧調整装置が予め取り付けられた第2ブラケットとで構成し、前記第2ブラケットを前記第1ブラケットの上部に車幅方向中央側から外側方に向けて締付固定するようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記ブレーキ液圧調整装置を、ABSアクチュエータとヒルホールドバルブ及び液圧センサを含んで構成し、前記ヒルホールドバルブを前記ABSアクチュエータの車幅方向中央側に配置するとともに、該ヒルホールドバルブをその配管接続部が車幅方向中央側に向くよう取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、ブレーキ液圧調整装置を飛水や飛石等を受けない比較的高い位置に配置することができ、該ブレーキ液圧調整装置を車体フレームに取り付けるための取付ブラケットの底面部を大きくして該取付ブラケットに飛水や飛石に対する保護機能を持たせる必要がなく、取付ブラケットを小型化することができる。又、ブレーキ液圧調整装置を車体フレーム上に設置する配置構造となるため、小さくて簡単な取付ブラケットによって支持剛性の高い取付構造を実現することができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、運転席のシートクッションを移動させれば該シートクッション下方の車体フロアに開口部が開口するため、車体フロアの下側からだけでなく、開口部を介して上側(車室内側)からもブレーキ液圧調整装置への配管やメンテナンスを作業性良く簡単に行うことができる。又、車体フロアの開口部は通常(ブレーキ液圧調整装置に対して配管やメンテナンスを行わないとき)はシートクッションによって塞がれているため、この開口部を覆う蓋部材が不要となる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、ブレーキ液圧調整装置をその配管接続部が車幅方向中央側に向くよう配置したため、前後と外側方がフロアパネルによって覆われるブレーキ液圧調整装置に対するブレーキ配管の接続を車幅方向中央側(内側方)から作業性良く行うことができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、ブレーキ液圧調整装置を車体フレームに取り付けるための取付ブラケットを、車体フレームに予め取り付けられる第1ブラケットと、ブレーキ液圧調整装置が予め取り付けられた第2ブラケットとで構成し、第2ブラケットを第1ブラケットの上部に車幅方向中央側から外側方に向けて締付固定するようにしたため、平面視においてABSアクチュエータを避けた位置に第1及び第2ブラケットの締付固定部を配置する必要がなく、締付固定部を平面視でABSアクチュエータにオーバーラップする位置に配置することができ、取付ブラケットの小型化と軽量化を図ることができる。又、第2ブラケットを第1ブラケットに車幅方向中央側から外側方に向けて作業性良く簡単に取り付けることができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、ブレーキ液圧調整装置を構成するABSアクチュエータとヒルホールドバルブ及び液圧センサを1つの取付ブラケットに集約して取り付けるようにしたため、ABSアクチュエータとヒルホールドバルブ及び液圧センサを各々別個のブラケットによってそれぞれ取り付ける従来の構成に対して取付ブラケットの取付工数が削減されるとともに、ABSアクチュエータとヒルホールドバルブ及び液圧センサにそれぞれ接続されるブレーキ配管の長さが短縮される。このため、軽量化とコストダウンを図ることができるとともに、ABSアクチュエータとヒルホールドバルブ及び液圧センサの設置スペースを縮小することができる。
【0021】
又、ヒルホールドバルブをABSアクチュエータの車幅方向中央側に配置するとともに、該ヒルホールドバルブをその配管接続部が車幅方向中央側に向くよう取り付けたため、ヒルホールドバルブとABSアクチュエータを車幅方向にコンパクトに配置することができるとともに、ヒルホールドバルブへのブレーキ配管の接続を車幅方向中央側から作業性良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】車両のブレーキ配管系の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るブレーキ液圧調整装置の配置構造を示す車両の運転席下方の破断側面図である。
【図3】車両の車体フロアに開口する開口部からブレーキ液圧調整装置を見た平面図である。
【図4】取付ブラケットの斜視図である。
【図5】取付ブラケットの第1ブラケットの斜視図である。
【図6】取付ブラケットの第1ブラケットの平面図である。
【図7】図6の矢視A方向の図である。
【図8】図6の矢視B方向の図である。
【図9】取付ブラケットの第2ブラケットの斜視図である。
【図10】取付ブラケットの第2ブラケットの平面図である。
【図11】図10の矢視C方向の図である。
【図12】図10の矢視D方向の図である。
【図13】図10の矢視E方向の図である。
【図14】図10の矢視F方向の図である。
【図15】ブレーキ液圧調整装置の取付ブラケットへの取付構造を示す分解斜視図である。
【図16】図15の矢視G方向に図である。
【図17】取付ブラケットによるブレーキ液圧調整装置の車体フレームへの取付構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は車両のブレーキ配管系の構成を示す斜視図であり、同図において、50は不図示のブレーキペダルに加えられる運転者の踏力を負圧を利用して倍力するブレーキブースタであって、該ブレーキブースタ50の中央部に突出するロッド50aには不図示のブレーキ装置のブレーキアームが連結されている。そして、ブレーキアームの下端に設けられたブレーキペダルを運転者が踏み込むと、ロッド50aが押されてマスタシリンダ51にブレーキ液圧が発生するが、運転者の踏力は大気圧と負圧との差圧を利用して発生する力を駆動源として作動する前記ブレーキブースタ50によって倍力されるために運転者の肉体的負担が軽減される。
【0025】
又、図1において、80はブレーキ液圧調整装置であって、このブレーキ液圧調整装置80は、ABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40によって構成されており、これらのABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40は取付ブラケット1に取り付けられている。
【0026】
而して、前記マスタシリンダ51から延びる2本のブレーキ配管52は、ブレーキ液圧調整装置80の前記ヒルホールドバルブ30に接続されており、ヒルホールドバルブ30から延びる2本のブレーキ配管53,54のうちの一方のブレーキ配管53はABSアクチュエータ20に接続され、他方のブレーキ配管54は液圧センサ40に接続されている。又、ABSアクチュエータ20の上部から延びる2本のブレーキ配管55は左右の前輪にそれぞれ設けられた不図示のホイールシリンダに接続され、ABSアクチュエータ20の上部から延びる1本のブレーキ配管56は、取付ブラケット1に取り付けられたジョイント60に接続されており、ジョイント60から延びるブレーキ配管57は左右の後輪にそれぞれ設けられた不図示のホイールシリンダに接続されている。
【0027】
ここで、前記ブレーキ液圧調整装置80の車体への配置構造を図2及び図3に基づいて以下に説明する。
【0028】
図2はブレーキ液圧調整装置の配置構造を示す車両の運転席下方の破断側面図、図3は車両の車体フロアに開口する開口部からブレーキ液圧調整装置を見た平面図である。
【0029】
図2に示すように、本実施の形態に係る車両においては、運転席90の下方の車体フロア101が上方に膨出しており、運転席90とその下方の車体フレーム100との間には空間Sが形成されている。そして、空間Sにはブレーキ液圧調整装置80が配置されているが、このブレーキ液圧調整装置80は、そのヒルホールドバルブ30のブレーキ配管52の接続部が車幅方向中央側(図2の手前側)に向くよう配置されている。つまり、運転席90の下方の車体フロア101は、運転者の足の後方にて上方に立ち上がる前壁と、運転席の後方の後ろ壁と、前壁と後ろ壁を連結して車体フレーム100よりも車両の側方側に配置される側壁とで、上方に膨出する膨出部が形成され、車体フレーム100の上方に空間Sが形成されている。そして、前壁と後ろ壁と側壁及び車体フレーム100とで囲まれた空間S内に、車体フレーム100の上方にブレーキ液圧調整装置80が配置されている。
【0030】
又、前記運転席90のシートクッション91は車体に前後方向(図2及び図3の左右方向)に移動可能に取り付けられており、該シートクッション91の下方の車体フロア101には、ブレーキ液圧調整装置80へのブレーキ配管55の接続作業を可能とする開口部101aが形成されている。尚、シートクッション91は開口部101aを現出させるように移動可能であれば良く、シートクッション91の前端や後端を軸に上方に回動させるものでも良い。
【0031】
次に、ブレーキ液圧調整装置80を取り付けるための前記取付ブラケット1の構成を図4〜図14に基づいて以下に説明する。
【0032】
図4は取付ブラケットの斜視図、図5は同取付ブラケットの第1ブラケットの斜視図、図6は同第1ブラケットの平面図、図7は図6の矢視A方向の図、図8は図6の矢視B方向の図、図9は取付ブラケットの第2ブラケットの斜視図、図10は同第2ブラケットの平面図、図11は図10の矢視C方向の図、図12は図10の矢視D方向の図、図13は図10の矢視E方向の図、図14は図10の矢視F方向の図である。
【0033】
取付ブラケット1は、図4に示すように、下側の第1ブラケット2と上側の第2ブラケット3とに2分割されており、下側の第1ブラケット2は、前記車体フレーム100(図2参照)に取り付けられるものであり、この第1ブラケット2の上部に上側の第2ブラケット3が締付固定されている。尚、第2ブラケット3にはブレーキ液圧調整装置80を構成する前記ABSアクチュエータ20と前記ヒルホールドバルブ30及び前記液圧センサ40(図1参照)を取り付けるための後述の取付部がそれぞれ形成されている。
【0034】
ここで、第1ブラケット2の構成の詳細を図5〜図8に基づいて説明する。尚、取付ブラケット1の説明では、ヒルホールドバルブ30が配置される側を前、ABSアクチュエータ20が配置される側を後ろとして説明する。
【0035】
車体フレーム100への取り付け面となる第1ブラケット2の水平で平坦な取付面2Aの前後(車幅方向内側と外側)には、2つの取付座2aと1つの取付座2bがそれぞれ直角に上方に折り曲げられて垂直に立設されている。そして、前側(図6の下側)の左右に配置された2つの取付座2aには円孔4がそれぞれ形成されており、各取付座2aの裏面の円孔4の周りには角ナット5がそれぞれ溶接されている。同様に、後側(図6の上側)の1つの取付座2bには円孔6が形成されており、取付座2bの裏面の円孔6の周りには角ナット7が溶接され、取付座2bは左右方向(車両前後方向)で2つの取付座2aの間のほぼ中央位置に設けられている。
【0036】
又、図6に示すように、第1ブラケット2の取付面2Aには左右方向(車両前後方向)には3つの円孔8が適当な間隔で形成されている。尚、取付面2Aには剛性を高めるためのビード2c,2dが形成されている。
【0037】
次に、第2ブラケット3の構成の詳細を図9〜図14に基づいて説明する。
【0038】
第2ブラケット3は、板金のプレス成形品である3つの部材3A,3B,3Cを溶接して構成されており、ベース部材としての水平な部材3Aの前後(車幅方向内側と外側)には垂直下方に折り曲げられた取付座3a,3bがそれぞれ形成されている。そして、第1ブラケット2の2つの取付座2aに対応するように前側(図11の手前側)に設けられた左右2箇所の取付座3aには横方向に長い長孔9が形成されており、後側(図11の奥側)の左右方向(車両前後方向)中央に設けられた1つの取付座3bには下方が開口する切欠き孔10が形成されている。尚、部材3Aの前側に設けられた一方(図9及び図10の右側)の取付座3aの下端は直角に前側に折り曲げられて水平な舌片3cを形成している。
【0039】
又、図10に示すように、部材3Aの後端側(車幅方向外側)には互いに連通する大小異径の円孔11,12が形成されており、小径側の円孔12は前記ABSアクチュエータ20(図1参照)を取り付けるための取付部を構成している。更に、部材3Aの前端側(車幅方向内側)の左右には直角上方に折り曲げられたその面が左右方向を向く矩形のブラケット3dが形成されている。そして、ブラケット3dの後端から左右方向内側に向かって直角に折り曲げられた左右の後壁3iが延設され、この後壁3iには、図11及び図12に示すように、上方が開口する切欠き孔14がそれぞれ形成されており、これらの切欠き孔14は前記円孔11,12と共にABSアクチュエータ20の取付部を構成している。尚、部材3Aには剛性を高めるためのビード3e,3fが形成されている。
【0040】
前記部材3Bは、車両の中央側を向く面であってヒルホールドバルブ30(図1参照)の取付部となる前壁3hを有し、前壁3hの左右端縁から後ろ側に屈曲した側壁3gを有している。その左右のステー状の側壁3gが部材3Aの左右に形成された前記ブラケット3dに外側から重ねられて溶接されることによって部材3Aの上に部材3Bは固定されており、その垂直に立設する前壁3hの中央部には矩形の開口部13が形成されている。
【0041】
更に、図9及び図11に示すように、部材3Bの前壁3hの上端部(開口部13の上側部分)はヒルホールドバルブ30(図1参照)の取付部となっており、上端部の左右方向片側(図11の左側)には、前記ヒルホールドバルブ30(図1参照)を締め付けるための円孔15が形成されているとともに、上端部の左右方向反対側には、ヒルホールドバルブ30の孔に挿入されて支持及び位置決めをするピンが後ろ側に向かって突設されている。
【0042】
又、図10及び図13に示すように、部材3Bの一方(図10の右側)の側壁3gには円孔16(図13参照)が形成されており、側壁3gの内面の円孔16の周りには角ナット17が溶接されている。尚、側壁3gに設けられた円孔16と角ナット17は前記液圧センサ40(図1参照)の取付部(詳細には、液圧センサ40を取り付けるジョイント41の取付部)を構成している。
【0043】
前記部材3Cは、その面が左右方向を向く垂直壁3jと、該垂直壁3jの下端から左右方向の内側に直角に折曲げられることによって形成された舌片3kとを有し、その垂直壁3jが部材3Bの一方の側壁3gに左右方向の外側から重ねられてスポット溶接されるととともに、垂直壁3jの下端が直角に折り曲げられることによって形成された舌片3kが部材3Aの前記舌片3cに下側から重ねられてスポット溶接されている。部材3Cが部材3Aと部材3Bの各側部に固定されることによって、各部材の剛性が高められている。そして、この部材3Cの垂直壁3jには円孔18が形成されており、垂直壁3jの内面の円孔18の周りには角ナット19が溶接されている。尚、垂直壁3jに設けられた円孔18と角ナット19は、後述するジョイント60の取付部を構成している。
【0044】
而して、以上のように構成された取付ブラケット1を介してABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40によって構成されるブレーキ液圧調整装置80が車体フレーム100に取り付けられるが、これらの取付構造を図15〜図17に基づいて以下に説明する。
【0045】
図15は取付ブラケットへのブレーキ液圧調整装置の取付構造を示す分解斜視図、図16は図15の矢視G方向の図、図17は取付ブラケットによるブレーキ液圧調整装置の車体フレームへの取付構造を示す斜視図である。
【0046】
ブレーキ液圧調整装置80を構成するABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40の車体フレーム100への取り付けに際しては、これらが取付ブラケット1にそれぞれ取り付けられる。
【0047】
即ち、図15に示すように、ABSアクチュエータ20の下部がゴムマウント21とスペーサ22及びこれらの下方から挿通するボルト23によって取付ブラケット1の第2ブラケット3に取り付けられる。具体的には、ゴムマウント21が取付ブラケット1の第2ブラケット3(部材3A)に形成された大径側の円孔11に通された後に小径側の円孔12に嵌め込まれ、該ゴムマウント21に内挿されたスペーサ22にボルト23を下方から通し、第2ブラケット3上に載置されたにABSアクチュエータ20の下面に形成された不図示のネジ孔にボルト23をねじ込むことによってABSアクチュエータ20の下部がゴムマウント21を介して第2ブラケット3に取り付けられる。
【0048】
又、第2ブラケット3上に載置されたABSアクチュエータ20は、その前面が部材3Bの後壁3iの後ろ側に配置され、左右の後壁3iにそれぞれ形成された切欠き孔14に嵌め込まれたゴムマウント24とこれに内挿されたスペーサ25にボルト26をそれぞれ通し、各ボルト26をABSアクチュエータ20の前面下部の左右に形成されたネジ孔27(図15には一方のみ図示)にねじ込むことによって第2ブラケット3にゴムマウント24を介して取り付けられる。
【0049】
ヒルホールドバルブ30は、ABSアクチュエータ20の前側(車幅方向内側)と第2ブラケット3(部材3B)の前壁3hとの間に配置され、その前面上部の片側(左側)にはネジ孔31が形成され、反対側には貫通孔が形成されている。その下方には左右2つの配管接続部32が同一方向(前方)を向いて形成され、その下方の前面下端部にはカプラー33が配管接続部32と同一方向に向かって突設されている。そして、このヒルホールドバルブ30は、その前面が第2ブラケット3(部材3B)の前壁3hに後ろ側(内側)から当てられ、前壁3hに突設されたピンを貫通孔に受け入れるとともに、これに形成されたネジ孔31を第2ブラケット3の前壁3hに形成された円孔15に合わせ、円孔15に挿通するボルト34をネジ孔31にねじ込むことによって第2ブラケット3に取り付けられる。このように、ヒルホールドバルブ30が取付ブラケット1の第2ブラケット3に取り付けられると、該ヒルホールドバルブ30の前面に設けられた配管接続部32とカプラー33は、図17に示すように、第2ブラケット3の開口部13から前方(車幅方向内側)に向かって露出する。つまり、配管接続部32とカプラー33は、前壁3hの面から前方(車幅方向内側)に突出する。
【0050】
又、図16に示すように、第2ブラケット3の部材3Bの側壁3gにはジョイント41がボルト42によって取り付けられる。即ち、ジョイント42には取付孔43と円孔44が形成されており、ジョイント41は、円孔44に挿通するボルト42を第2ブラケット3(部材3B)の側壁3gに形成された円孔16に通し、その裏側に溶接された角ナット17にボルト42をねじ込むことにとって第2ブラケット3(部材3B)に取り付けられる。そして、このジョイント41の取付孔43に液圧センサ40を車幅方向内側からねじ込むことによって、液圧センサ40がジョイント41を介して第2ブラケット3に取り付けられる。
【0051】
更に、図16に示すように、第2ブラケット3の下部には左右の後輪のホイールシリンダへのブレーキ配管57が接続されるジョイント60がボルト61によって取り付けられる。即ち、ジョイント60には円孔62が形成されており、ジョイント60は、円孔62に挿通するボルト61を第2ブラケット3の部材3Cに形成された円孔18に通し、その裏側に溶接された角ナット19にボルト61をねじ込むことによって第2ブラケット3(部材3C)に取り付けられる(図15参照)。
【0052】
以上のようにしてABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40が第2ブラケット3に取り付けられると、ヒルホールドバルブ30とABSアクチュエータ20がブレーキ配管53によって接続され、ヒルホールドバルブ30と液圧センサ40がブレーキ配管54によって接続されるとともに、ABSアクチュエータ20から延びるブレーキ配管56がジョイント60に接続される。
【0053】
以上のように第2ブラケット3にABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40が取り付けられるとともに、ヒルホールドバルブ30とABSアクチュエータ20、ヒルホールドバルブ30と液圧センサ40、ABSアクチュエータ20とジョイント60がブレーキ配管53,54,56によってそれぞれ接続されてこれらが第2ブラケット3に部組みされると、第2ブラケット3は、車体フレーム100に予め取り付けられている第1ブラケット2の上部に取り付けられる。
【0054】
即ち、第1ブラケット2は、図17に示すように、前側(2つの取付座2aが形成された側)が車幅方向中央(内側)となり、2つの取付座2aが車幅方向中央(内側)に向くよう車体フレーム100上に設置され、図15に示すように、これに形成された3つの円孔8(図6参照)に上方から挿通する各ボルト35を車体フレーム100にねじ込むことにとって車体フレーム100上に取り付けられる。つまり、第1ブラケット2は、運転席90の下方の車体フロア101の前壁と後ろ壁と側壁及び車体フレーム100とで囲まれた空間S内に、車体フレーム100の上方に取付座2bを奥側にして取付固定される。
【0055】
次に、予めABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40が取り付けられた第2ブラケット3が第1ブラケット1の上に重ねられる。このとき、第2ブラケット3は、ヒルホールドバルブ20の前面に設けられた配管接続部32とカプラー33が車幅方向中央(内側)を向く向きに設置され、前側の取付座3aと後側中央の取付座3bが第1ブラケット2の前側の左右の取付座2aと後側中央の取付座2bに車両の中央側から重ねられる。
【0056】
そして、互いに重ねられた第1ブラケット2と第2ブラケット3の各前側の取付座2a,3aにそれぞれ形成された円孔4と長孔9及び各後側の取付座2b,3bに形成された円孔6と切欠き孔10にボルト36を車幅方向中央側(内側)から外側に向けて通し、各ボルト36を第1ブラケット2の取付座2a,2bの裏面に溶接された角ナット5,7にそれぞれねじ込むことによって第2ブラケット3が第1ブラケット2の上部に締付固定される。このとき、第1ブラケット2の取付座2bに予めボルト36を取り付けておき、切欠き孔10を利用して取付座3bを取付座2bとボルト36の頭部との間に挿入して、組付性を向上させることができる。又、第1ブラケット2と第2ブラケット3との間(上下方向の空間)を利用して、各後側の取付座2b,3bを固定する締付作業を行うことができる。
【0057】
上述のようにして第2ブラケット3が第1ブラケット2の上部に取り付けられることによって、第2ブラケット3に予め取り付けられていたABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40が図17に示すようにABSアクチュエータ取付ブラケット1を介して車体フレーム100に取り付けられる。このとき、ヒルホールドバルブ30の前面に設けられた配管接続部32とカプラー33は第2ブラケット3の開口部13から車幅方向内側の向かって露出しているため、図1に示すマスタシリンダ51から延びる2本のブレーキ配管52をヒルホールドバルブ30の2つの配管接続部32にそれぞれ車幅方向内側から接続することができるとともに、ハーネス70の端部に取り付けられたコネクタ71をカプラー33に車幅方向内側から嵌め込んで接続することができる。更に、後輪に設けられた不図示のホイールシリンダに連なるブレーキ配管57がジョイント60に車幅方向内側から接続される。
【0058】
又、運転席90のシートクッション91を車両前後方向等に移動させれば、図3に示すように車体フロア101に形成された開口部が開口するため、前輪に設けられた不図示のホイールシリンダに連なる2本のブレーキ配管55をABSアクチュエータ20の上部に上方から作業性良く接続することができる。
【0059】
以上において、本実施の形態においては、ブレーキ液圧調整装置80を飛水や飛石等を受けない比較的高い位置に形成された空間Sに配置することができ、該ブレーキ液圧調整装置80を車体フレーム100に取り付けるための取付ブラケット1の底面部を大きくして該取付ブラケット1に飛水や飛石に対する保護機能を持たせる必要がなく、取付ブラケット1を小型化することができる。そして、ブレーキ液圧調整装置80を車体フレーム100上に設置する配置構造となるため、小さくて簡単な取付ブラケット1によって支持剛性の高い取付構造を実現することができる。
【0060】
又、本実施の形態では、運転席90のシートクッション91を移動させれば該シートクッション91下方の車体フロア101に開口部101aが開口するため、車体フロア101の下側からだけでなく、開口部101aを介して上側(車室内側)からもブレーキ液圧調整装置80のABSアクチュエータ20へのブレーキ配管55の接続やメンテナンスを作業性良く簡単に行うことができる。そして、車体フロア101の開口部101aは通常(ブレーキ液圧調整装置80に対して配管やメンテナンスを行わないとき)はシートクッション91によって塞がれているため、この開口部101aを覆う蓋部材が不要となる。
【0061】
更に、本実施の形態では、ブレーキ液圧調整装置80をそのヒルホールドバルブ30の配管接続部32が車幅方向中央側に向くよう配置したため、車両への搭載状態で前後と外側方がフロアパネルによって覆われるブレーキ液圧調整装置80のヒルホールドバルブ30に対するブレーキ配管52の接続を車幅方向中央側(内側方)から作業性良く行うことができる。
【0062】
又、本実施の形態では、ブレーキ液圧調整装置80を車体フレーム100に取り付けるための取付ブラケット1を、車体フレーム100に予め取り付けられる第1ブラケット2と、ブレーキ液圧調整装置80が予め取り付けられた第2ブラケット3とで構成し、第2ブラケット3を第1ブラケット2の上部に車幅方向中央側から外側方に向けて締付固定するようにしたため、平面視においてABSアクチュエータ20を避けた位置に第1ブラケット2と第2ブラケット3の締付固定部を配置する必要がなく、締付固定部を平面視でABSアクチュエータ20にオーバーラップする位置に配置することができ、取付ブラケット1の小型化と軽量化を図ることができる。そして、第2ブラケット3を第1ブラケット1に車幅方向中央側から外側方に向けて作業性良く簡単に取り付けることができる。
【0063】
その他、本実施の形態では、ブレーキ液圧調整装置80を構成するABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40を1つの取付ブラケット1に集約して取り付けるようにしたため、ABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40を各々別個のブラケットによってそれぞれ取り付ける従来の構成に対して取付ブラケット1の取付工数が削減されるとともに、ABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40にそれぞれ接続されるブレーキ配管52〜56の長さが短縮される。このため、軽量化とコストダウンを図ることができるとともに、ABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40の設置スペースを縮小することができる。
【0064】
又、本実施の形態では、ヒルホールドバルブ30をABSアクチュエータ20の車幅方向中央側に配置するとともに、該ヒルホールドバルブ30をその配管接続部32が車幅方向中央側に向くよう取り付けたため、ヒルホールドバルブ30とABSアクチュエータ20を車幅方向にコンパクトに配置することができるとともに、ヒルホールドバルブ30へのブレーキ配管52の接続を車幅方向中央側から作業性良く行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 取付ブラケット
2 第1ブラケット
3 第2ブラケット
20 ABSアクチュエータ
30 ヒルホールドバルブ
32 ヒルホールドバルブの配管接続部
40 液圧センサ
41 ジョイント
50 ブレーキブースタ
52〜57 ブレーキ配管
60 ジョイント
80 ブレーキ液圧調整装置
90 運転席
91 運転席のシートクッション
100 車体フレーム
101 車体フロア
101a 車体フロアの開口部
S 空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキ液圧を調整するブレーキ液圧調整装置の配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、ブレーキ液圧を調整するブレーキ液圧調整装置が設けられているが、このブレーキ液圧調整装置には、ABSアクチュエータやヒルホールドバルブ、液圧センサ等が含まれている。
【0003】
上記ABSアクチュエータは、例えば車両が凍結した路面上を走行している場合に急ブレーキを掛けても車輪がロックしないようにするためのABS(アンチロック・ブレーキ・システム)に設けられるものであって、車両の減速度を検出する加速度センサ(Gセンサ)、各車輪の回転速度を検出する車輪速センサ、ブレーキ液圧を検出する液圧センサ等の検出値に基づいて各車輪の最適回転速度を算出するコントローラから出力される制御信号によって各車輪のブレーキにそれぞれ供給される液圧を制御するものである。
【0004】
又、前記ヒルホールドバルブは、ブレーキのマスタシリンダとホイールシリンダとを接続するブレーキ配管に設けられるものであって、車両が坂道で停止したときに運転者によってブレーキペダルが開放された後も所定の制動力を保持するためのヒルホールド装置に設けられるものであって、車両が停止したときに閉じてホイールシリンダ側のブレーキ配管に所定のブレーキ液圧を保持することによって車両の移動を阻止し、車両の発進時には開き、今まで保持していたブレーキ液圧を抜いて制動力を開放する機能を果たすものである。
【0005】
而して、ブレーキ液圧調整装置に含まれるABSアクチュエータは、作動時の音や振動が車室に伝播するのを防ぐため、車両側部において前後方向に延びる一対のサイドメンバの一方の内側にABSアクチュエータ取付ブラケットを介して取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ところが、ABSアクチュエータは前輪の後方に配置されているため、前輪が跳ね上げた泥水や小石を該ABSアクチュエータが受け易く、ABSアクチュエータに水が侵入したり、損傷を受ける等の問題が発生する可能性があった。
【0007】
そこで、特許文献2には、ABSアクチュエータをABSアクチュエータ取付ブラケットを介して車体フレームのクロスメンバの後方、且つ、一方のサイドメンバの車幅方向内側面に設置する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−297457号公報
【特許文献2】特開2007−055422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2において提案されているようにABSアクチュエータ取付ブラケットを介してABSアクチュエータを車体フレームのクロスメンバの後方、且つ、一方のサイドメンバの車幅方向内側面に設置しても、その設置箇所は前輪が跳ね上げた泥水や小石を受け易い場所であるため、ABSアクチュエータ取付ブラケットの底面部を大きくしてカバー機能を持たせる必要があり、ABSアクチュエータ取付ブラケットが大型化するという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ブレーキ液圧調整装置を飛水や飛石等から保護するとともに、該ブレーキ液圧調整装置を車体フレームに取り付けるための取付ブラケットの小型化を図ることができるブレーキ液圧調整装置の配置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、車両のブレーキ液圧を調整するブレーキ液圧調整装置の配置構造として、運転席下方の車体フロアを上方に膨出させて運転席とその下方の車体フレームとの間に空間を形成し、該空間に前記ブレーキ液圧調整装置を配置する構成を採用したことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記運転席のシートクッションを車体に移動可能に取り付けるとともに、該シートクッション下方の車体フロアに、前記ブレーキ液圧調整装置への配管作業を可能とする開口部を形成したことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記ブレーキ液圧調整装置をその配管接続部が車幅方向中央側に向くよう配置したことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記ブレーキ液圧調整装置を取付ブラケットを介して車体フレームに取り付けるとともに、前記取付ブラケットを、前記車体フレームに予め取り付けられる第1ブラケットと、前記ブレーキ液圧調整装置が予め取り付けられた第2ブラケットとで構成し、前記第2ブラケットを前記第1ブラケットの上部に車幅方向中央側から外側方に向けて締付固定するようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記ブレーキ液圧調整装置を、ABSアクチュエータとヒルホールドバルブ及び液圧センサを含んで構成し、前記ヒルホールドバルブを前記ABSアクチュエータの車幅方向中央側に配置するとともに、該ヒルホールドバルブをその配管接続部が車幅方向中央側に向くよう取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、ブレーキ液圧調整装置を飛水や飛石等を受けない比較的高い位置に配置することができ、該ブレーキ液圧調整装置を車体フレームに取り付けるための取付ブラケットの底面部を大きくして該取付ブラケットに飛水や飛石に対する保護機能を持たせる必要がなく、取付ブラケットを小型化することができる。又、ブレーキ液圧調整装置を車体フレーム上に設置する配置構造となるため、小さくて簡単な取付ブラケットによって支持剛性の高い取付構造を実現することができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、運転席のシートクッションを移動させれば該シートクッション下方の車体フロアに開口部が開口するため、車体フロアの下側からだけでなく、開口部を介して上側(車室内側)からもブレーキ液圧調整装置への配管やメンテナンスを作業性良く簡単に行うことができる。又、車体フロアの開口部は通常(ブレーキ液圧調整装置に対して配管やメンテナンスを行わないとき)はシートクッションによって塞がれているため、この開口部を覆う蓋部材が不要となる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、ブレーキ液圧調整装置をその配管接続部が車幅方向中央側に向くよう配置したため、前後と外側方がフロアパネルによって覆われるブレーキ液圧調整装置に対するブレーキ配管の接続を車幅方向中央側(内側方)から作業性良く行うことができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、ブレーキ液圧調整装置を車体フレームに取り付けるための取付ブラケットを、車体フレームに予め取り付けられる第1ブラケットと、ブレーキ液圧調整装置が予め取り付けられた第2ブラケットとで構成し、第2ブラケットを第1ブラケットの上部に車幅方向中央側から外側方に向けて締付固定するようにしたため、平面視においてABSアクチュエータを避けた位置に第1及び第2ブラケットの締付固定部を配置する必要がなく、締付固定部を平面視でABSアクチュエータにオーバーラップする位置に配置することができ、取付ブラケットの小型化と軽量化を図ることができる。又、第2ブラケットを第1ブラケットに車幅方向中央側から外側方に向けて作業性良く簡単に取り付けることができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、ブレーキ液圧調整装置を構成するABSアクチュエータとヒルホールドバルブ及び液圧センサを1つの取付ブラケットに集約して取り付けるようにしたため、ABSアクチュエータとヒルホールドバルブ及び液圧センサを各々別個のブラケットによってそれぞれ取り付ける従来の構成に対して取付ブラケットの取付工数が削減されるとともに、ABSアクチュエータとヒルホールドバルブ及び液圧センサにそれぞれ接続されるブレーキ配管の長さが短縮される。このため、軽量化とコストダウンを図ることができるとともに、ABSアクチュエータとヒルホールドバルブ及び液圧センサの設置スペースを縮小することができる。
【0021】
又、ヒルホールドバルブをABSアクチュエータの車幅方向中央側に配置するとともに、該ヒルホールドバルブをその配管接続部が車幅方向中央側に向くよう取り付けたため、ヒルホールドバルブとABSアクチュエータを車幅方向にコンパクトに配置することができるとともに、ヒルホールドバルブへのブレーキ配管の接続を車幅方向中央側から作業性良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】車両のブレーキ配管系の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るブレーキ液圧調整装置の配置構造を示す車両の運転席下方の破断側面図である。
【図3】車両の車体フロアに開口する開口部からブレーキ液圧調整装置を見た平面図である。
【図4】取付ブラケットの斜視図である。
【図5】取付ブラケットの第1ブラケットの斜視図である。
【図6】取付ブラケットの第1ブラケットの平面図である。
【図7】図6の矢視A方向の図である。
【図8】図6の矢視B方向の図である。
【図9】取付ブラケットの第2ブラケットの斜視図である。
【図10】取付ブラケットの第2ブラケットの平面図である。
【図11】図10の矢視C方向の図である。
【図12】図10の矢視D方向の図である。
【図13】図10の矢視E方向の図である。
【図14】図10の矢視F方向の図である。
【図15】ブレーキ液圧調整装置の取付ブラケットへの取付構造を示す分解斜視図である。
【図16】図15の矢視G方向に図である。
【図17】取付ブラケットによるブレーキ液圧調整装置の車体フレームへの取付構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は車両のブレーキ配管系の構成を示す斜視図であり、同図において、50は不図示のブレーキペダルに加えられる運転者の踏力を負圧を利用して倍力するブレーキブースタであって、該ブレーキブースタ50の中央部に突出するロッド50aには不図示のブレーキ装置のブレーキアームが連結されている。そして、ブレーキアームの下端に設けられたブレーキペダルを運転者が踏み込むと、ロッド50aが押されてマスタシリンダ51にブレーキ液圧が発生するが、運転者の踏力は大気圧と負圧との差圧を利用して発生する力を駆動源として作動する前記ブレーキブースタ50によって倍力されるために運転者の肉体的負担が軽減される。
【0025】
又、図1において、80はブレーキ液圧調整装置であって、このブレーキ液圧調整装置80は、ABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40によって構成されており、これらのABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40は取付ブラケット1に取り付けられている。
【0026】
而して、前記マスタシリンダ51から延びる2本のブレーキ配管52は、ブレーキ液圧調整装置80の前記ヒルホールドバルブ30に接続されており、ヒルホールドバルブ30から延びる2本のブレーキ配管53,54のうちの一方のブレーキ配管53はABSアクチュエータ20に接続され、他方のブレーキ配管54は液圧センサ40に接続されている。又、ABSアクチュエータ20の上部から延びる2本のブレーキ配管55は左右の前輪にそれぞれ設けられた不図示のホイールシリンダに接続され、ABSアクチュエータ20の上部から延びる1本のブレーキ配管56は、取付ブラケット1に取り付けられたジョイント60に接続されており、ジョイント60から延びるブレーキ配管57は左右の後輪にそれぞれ設けられた不図示のホイールシリンダに接続されている。
【0027】
ここで、前記ブレーキ液圧調整装置80の車体への配置構造を図2及び図3に基づいて以下に説明する。
【0028】
図2はブレーキ液圧調整装置の配置構造を示す車両の運転席下方の破断側面図、図3は車両の車体フロアに開口する開口部からブレーキ液圧調整装置を見た平面図である。
【0029】
図2に示すように、本実施の形態に係る車両においては、運転席90の下方の車体フロア101が上方に膨出しており、運転席90とその下方の車体フレーム100との間には空間Sが形成されている。そして、空間Sにはブレーキ液圧調整装置80が配置されているが、このブレーキ液圧調整装置80は、そのヒルホールドバルブ30のブレーキ配管52の接続部が車幅方向中央側(図2の手前側)に向くよう配置されている。つまり、運転席90の下方の車体フロア101は、運転者の足の後方にて上方に立ち上がる前壁と、運転席の後方の後ろ壁と、前壁と後ろ壁を連結して車体フレーム100よりも車両の側方側に配置される側壁とで、上方に膨出する膨出部が形成され、車体フレーム100の上方に空間Sが形成されている。そして、前壁と後ろ壁と側壁及び車体フレーム100とで囲まれた空間S内に、車体フレーム100の上方にブレーキ液圧調整装置80が配置されている。
【0030】
又、前記運転席90のシートクッション91は車体に前後方向(図2及び図3の左右方向)に移動可能に取り付けられており、該シートクッション91の下方の車体フロア101には、ブレーキ液圧調整装置80へのブレーキ配管55の接続作業を可能とする開口部101aが形成されている。尚、シートクッション91は開口部101aを現出させるように移動可能であれば良く、シートクッション91の前端や後端を軸に上方に回動させるものでも良い。
【0031】
次に、ブレーキ液圧調整装置80を取り付けるための前記取付ブラケット1の構成を図4〜図14に基づいて以下に説明する。
【0032】
図4は取付ブラケットの斜視図、図5は同取付ブラケットの第1ブラケットの斜視図、図6は同第1ブラケットの平面図、図7は図6の矢視A方向の図、図8は図6の矢視B方向の図、図9は取付ブラケットの第2ブラケットの斜視図、図10は同第2ブラケットの平面図、図11は図10の矢視C方向の図、図12は図10の矢視D方向の図、図13は図10の矢視E方向の図、図14は図10の矢視F方向の図である。
【0033】
取付ブラケット1は、図4に示すように、下側の第1ブラケット2と上側の第2ブラケット3とに2分割されており、下側の第1ブラケット2は、前記車体フレーム100(図2参照)に取り付けられるものであり、この第1ブラケット2の上部に上側の第2ブラケット3が締付固定されている。尚、第2ブラケット3にはブレーキ液圧調整装置80を構成する前記ABSアクチュエータ20と前記ヒルホールドバルブ30及び前記液圧センサ40(図1参照)を取り付けるための後述の取付部がそれぞれ形成されている。
【0034】
ここで、第1ブラケット2の構成の詳細を図5〜図8に基づいて説明する。尚、取付ブラケット1の説明では、ヒルホールドバルブ30が配置される側を前、ABSアクチュエータ20が配置される側を後ろとして説明する。
【0035】
車体フレーム100への取り付け面となる第1ブラケット2の水平で平坦な取付面2Aの前後(車幅方向内側と外側)には、2つの取付座2aと1つの取付座2bがそれぞれ直角に上方に折り曲げられて垂直に立設されている。そして、前側(図6の下側)の左右に配置された2つの取付座2aには円孔4がそれぞれ形成されており、各取付座2aの裏面の円孔4の周りには角ナット5がそれぞれ溶接されている。同様に、後側(図6の上側)の1つの取付座2bには円孔6が形成されており、取付座2bの裏面の円孔6の周りには角ナット7が溶接され、取付座2bは左右方向(車両前後方向)で2つの取付座2aの間のほぼ中央位置に設けられている。
【0036】
又、図6に示すように、第1ブラケット2の取付面2Aには左右方向(車両前後方向)には3つの円孔8が適当な間隔で形成されている。尚、取付面2Aには剛性を高めるためのビード2c,2dが形成されている。
【0037】
次に、第2ブラケット3の構成の詳細を図9〜図14に基づいて説明する。
【0038】
第2ブラケット3は、板金のプレス成形品である3つの部材3A,3B,3Cを溶接して構成されており、ベース部材としての水平な部材3Aの前後(車幅方向内側と外側)には垂直下方に折り曲げられた取付座3a,3bがそれぞれ形成されている。そして、第1ブラケット2の2つの取付座2aに対応するように前側(図11の手前側)に設けられた左右2箇所の取付座3aには横方向に長い長孔9が形成されており、後側(図11の奥側)の左右方向(車両前後方向)中央に設けられた1つの取付座3bには下方が開口する切欠き孔10が形成されている。尚、部材3Aの前側に設けられた一方(図9及び図10の右側)の取付座3aの下端は直角に前側に折り曲げられて水平な舌片3cを形成している。
【0039】
又、図10に示すように、部材3Aの後端側(車幅方向外側)には互いに連通する大小異径の円孔11,12が形成されており、小径側の円孔12は前記ABSアクチュエータ20(図1参照)を取り付けるための取付部を構成している。更に、部材3Aの前端側(車幅方向内側)の左右には直角上方に折り曲げられたその面が左右方向を向く矩形のブラケット3dが形成されている。そして、ブラケット3dの後端から左右方向内側に向かって直角に折り曲げられた左右の後壁3iが延設され、この後壁3iには、図11及び図12に示すように、上方が開口する切欠き孔14がそれぞれ形成されており、これらの切欠き孔14は前記円孔11,12と共にABSアクチュエータ20の取付部を構成している。尚、部材3Aには剛性を高めるためのビード3e,3fが形成されている。
【0040】
前記部材3Bは、車両の中央側を向く面であってヒルホールドバルブ30(図1参照)の取付部となる前壁3hを有し、前壁3hの左右端縁から後ろ側に屈曲した側壁3gを有している。その左右のステー状の側壁3gが部材3Aの左右に形成された前記ブラケット3dに外側から重ねられて溶接されることによって部材3Aの上に部材3Bは固定されており、その垂直に立設する前壁3hの中央部には矩形の開口部13が形成されている。
【0041】
更に、図9及び図11に示すように、部材3Bの前壁3hの上端部(開口部13の上側部分)はヒルホールドバルブ30(図1参照)の取付部となっており、上端部の左右方向片側(図11の左側)には、前記ヒルホールドバルブ30(図1参照)を締め付けるための円孔15が形成されているとともに、上端部の左右方向反対側には、ヒルホールドバルブ30の孔に挿入されて支持及び位置決めをするピンが後ろ側に向かって突設されている。
【0042】
又、図10及び図13に示すように、部材3Bの一方(図10の右側)の側壁3gには円孔16(図13参照)が形成されており、側壁3gの内面の円孔16の周りには角ナット17が溶接されている。尚、側壁3gに設けられた円孔16と角ナット17は前記液圧センサ40(図1参照)の取付部(詳細には、液圧センサ40を取り付けるジョイント41の取付部)を構成している。
【0043】
前記部材3Cは、その面が左右方向を向く垂直壁3jと、該垂直壁3jの下端から左右方向の内側に直角に折曲げられることによって形成された舌片3kとを有し、その垂直壁3jが部材3Bの一方の側壁3gに左右方向の外側から重ねられてスポット溶接されるととともに、垂直壁3jの下端が直角に折り曲げられることによって形成された舌片3kが部材3Aの前記舌片3cに下側から重ねられてスポット溶接されている。部材3Cが部材3Aと部材3Bの各側部に固定されることによって、各部材の剛性が高められている。そして、この部材3Cの垂直壁3jには円孔18が形成されており、垂直壁3jの内面の円孔18の周りには角ナット19が溶接されている。尚、垂直壁3jに設けられた円孔18と角ナット19は、後述するジョイント60の取付部を構成している。
【0044】
而して、以上のように構成された取付ブラケット1を介してABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40によって構成されるブレーキ液圧調整装置80が車体フレーム100に取り付けられるが、これらの取付構造を図15〜図17に基づいて以下に説明する。
【0045】
図15は取付ブラケットへのブレーキ液圧調整装置の取付構造を示す分解斜視図、図16は図15の矢視G方向の図、図17は取付ブラケットによるブレーキ液圧調整装置の車体フレームへの取付構造を示す斜視図である。
【0046】
ブレーキ液圧調整装置80を構成するABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40の車体フレーム100への取り付けに際しては、これらが取付ブラケット1にそれぞれ取り付けられる。
【0047】
即ち、図15に示すように、ABSアクチュエータ20の下部がゴムマウント21とスペーサ22及びこれらの下方から挿通するボルト23によって取付ブラケット1の第2ブラケット3に取り付けられる。具体的には、ゴムマウント21が取付ブラケット1の第2ブラケット3(部材3A)に形成された大径側の円孔11に通された後に小径側の円孔12に嵌め込まれ、該ゴムマウント21に内挿されたスペーサ22にボルト23を下方から通し、第2ブラケット3上に載置されたにABSアクチュエータ20の下面に形成された不図示のネジ孔にボルト23をねじ込むことによってABSアクチュエータ20の下部がゴムマウント21を介して第2ブラケット3に取り付けられる。
【0048】
又、第2ブラケット3上に載置されたABSアクチュエータ20は、その前面が部材3Bの後壁3iの後ろ側に配置され、左右の後壁3iにそれぞれ形成された切欠き孔14に嵌め込まれたゴムマウント24とこれに内挿されたスペーサ25にボルト26をそれぞれ通し、各ボルト26をABSアクチュエータ20の前面下部の左右に形成されたネジ孔27(図15には一方のみ図示)にねじ込むことによって第2ブラケット3にゴムマウント24を介して取り付けられる。
【0049】
ヒルホールドバルブ30は、ABSアクチュエータ20の前側(車幅方向内側)と第2ブラケット3(部材3B)の前壁3hとの間に配置され、その前面上部の片側(左側)にはネジ孔31が形成され、反対側には貫通孔が形成されている。その下方には左右2つの配管接続部32が同一方向(前方)を向いて形成され、その下方の前面下端部にはカプラー33が配管接続部32と同一方向に向かって突設されている。そして、このヒルホールドバルブ30は、その前面が第2ブラケット3(部材3B)の前壁3hに後ろ側(内側)から当てられ、前壁3hに突設されたピンを貫通孔に受け入れるとともに、これに形成されたネジ孔31を第2ブラケット3の前壁3hに形成された円孔15に合わせ、円孔15に挿通するボルト34をネジ孔31にねじ込むことによって第2ブラケット3に取り付けられる。このように、ヒルホールドバルブ30が取付ブラケット1の第2ブラケット3に取り付けられると、該ヒルホールドバルブ30の前面に設けられた配管接続部32とカプラー33は、図17に示すように、第2ブラケット3の開口部13から前方(車幅方向内側)に向かって露出する。つまり、配管接続部32とカプラー33は、前壁3hの面から前方(車幅方向内側)に突出する。
【0050】
又、図16に示すように、第2ブラケット3の部材3Bの側壁3gにはジョイント41がボルト42によって取り付けられる。即ち、ジョイント42には取付孔43と円孔44が形成されており、ジョイント41は、円孔44に挿通するボルト42を第2ブラケット3(部材3B)の側壁3gに形成された円孔16に通し、その裏側に溶接された角ナット17にボルト42をねじ込むことにとって第2ブラケット3(部材3B)に取り付けられる。そして、このジョイント41の取付孔43に液圧センサ40を車幅方向内側からねじ込むことによって、液圧センサ40がジョイント41を介して第2ブラケット3に取り付けられる。
【0051】
更に、図16に示すように、第2ブラケット3の下部には左右の後輪のホイールシリンダへのブレーキ配管57が接続されるジョイント60がボルト61によって取り付けられる。即ち、ジョイント60には円孔62が形成されており、ジョイント60は、円孔62に挿通するボルト61を第2ブラケット3の部材3Cに形成された円孔18に通し、その裏側に溶接された角ナット19にボルト61をねじ込むことによって第2ブラケット3(部材3C)に取り付けられる(図15参照)。
【0052】
以上のようにしてABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40が第2ブラケット3に取り付けられると、ヒルホールドバルブ30とABSアクチュエータ20がブレーキ配管53によって接続され、ヒルホールドバルブ30と液圧センサ40がブレーキ配管54によって接続されるとともに、ABSアクチュエータ20から延びるブレーキ配管56がジョイント60に接続される。
【0053】
以上のように第2ブラケット3にABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40が取り付けられるとともに、ヒルホールドバルブ30とABSアクチュエータ20、ヒルホールドバルブ30と液圧センサ40、ABSアクチュエータ20とジョイント60がブレーキ配管53,54,56によってそれぞれ接続されてこれらが第2ブラケット3に部組みされると、第2ブラケット3は、車体フレーム100に予め取り付けられている第1ブラケット2の上部に取り付けられる。
【0054】
即ち、第1ブラケット2は、図17に示すように、前側(2つの取付座2aが形成された側)が車幅方向中央(内側)となり、2つの取付座2aが車幅方向中央(内側)に向くよう車体フレーム100上に設置され、図15に示すように、これに形成された3つの円孔8(図6参照)に上方から挿通する各ボルト35を車体フレーム100にねじ込むことにとって車体フレーム100上に取り付けられる。つまり、第1ブラケット2は、運転席90の下方の車体フロア101の前壁と後ろ壁と側壁及び車体フレーム100とで囲まれた空間S内に、車体フレーム100の上方に取付座2bを奥側にして取付固定される。
【0055】
次に、予めABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40が取り付けられた第2ブラケット3が第1ブラケット1の上に重ねられる。このとき、第2ブラケット3は、ヒルホールドバルブ20の前面に設けられた配管接続部32とカプラー33が車幅方向中央(内側)を向く向きに設置され、前側の取付座3aと後側中央の取付座3bが第1ブラケット2の前側の左右の取付座2aと後側中央の取付座2bに車両の中央側から重ねられる。
【0056】
そして、互いに重ねられた第1ブラケット2と第2ブラケット3の各前側の取付座2a,3aにそれぞれ形成された円孔4と長孔9及び各後側の取付座2b,3bに形成された円孔6と切欠き孔10にボルト36を車幅方向中央側(内側)から外側に向けて通し、各ボルト36を第1ブラケット2の取付座2a,2bの裏面に溶接された角ナット5,7にそれぞれねじ込むことによって第2ブラケット3が第1ブラケット2の上部に締付固定される。このとき、第1ブラケット2の取付座2bに予めボルト36を取り付けておき、切欠き孔10を利用して取付座3bを取付座2bとボルト36の頭部との間に挿入して、組付性を向上させることができる。又、第1ブラケット2と第2ブラケット3との間(上下方向の空間)を利用して、各後側の取付座2b,3bを固定する締付作業を行うことができる。
【0057】
上述のようにして第2ブラケット3が第1ブラケット2の上部に取り付けられることによって、第2ブラケット3に予め取り付けられていたABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40が図17に示すようにABSアクチュエータ取付ブラケット1を介して車体フレーム100に取り付けられる。このとき、ヒルホールドバルブ30の前面に設けられた配管接続部32とカプラー33は第2ブラケット3の開口部13から車幅方向内側の向かって露出しているため、図1に示すマスタシリンダ51から延びる2本のブレーキ配管52をヒルホールドバルブ30の2つの配管接続部32にそれぞれ車幅方向内側から接続することができるとともに、ハーネス70の端部に取り付けられたコネクタ71をカプラー33に車幅方向内側から嵌め込んで接続することができる。更に、後輪に設けられた不図示のホイールシリンダに連なるブレーキ配管57がジョイント60に車幅方向内側から接続される。
【0058】
又、運転席90のシートクッション91を車両前後方向等に移動させれば、図3に示すように車体フロア101に形成された開口部が開口するため、前輪に設けられた不図示のホイールシリンダに連なる2本のブレーキ配管55をABSアクチュエータ20の上部に上方から作業性良く接続することができる。
【0059】
以上において、本実施の形態においては、ブレーキ液圧調整装置80を飛水や飛石等を受けない比較的高い位置に形成された空間Sに配置することができ、該ブレーキ液圧調整装置80を車体フレーム100に取り付けるための取付ブラケット1の底面部を大きくして該取付ブラケット1に飛水や飛石に対する保護機能を持たせる必要がなく、取付ブラケット1を小型化することができる。そして、ブレーキ液圧調整装置80を車体フレーム100上に設置する配置構造となるため、小さくて簡単な取付ブラケット1によって支持剛性の高い取付構造を実現することができる。
【0060】
又、本実施の形態では、運転席90のシートクッション91を移動させれば該シートクッション91下方の車体フロア101に開口部101aが開口するため、車体フロア101の下側からだけでなく、開口部101aを介して上側(車室内側)からもブレーキ液圧調整装置80のABSアクチュエータ20へのブレーキ配管55の接続やメンテナンスを作業性良く簡単に行うことができる。そして、車体フロア101の開口部101aは通常(ブレーキ液圧調整装置80に対して配管やメンテナンスを行わないとき)はシートクッション91によって塞がれているため、この開口部101aを覆う蓋部材が不要となる。
【0061】
更に、本実施の形態では、ブレーキ液圧調整装置80をそのヒルホールドバルブ30の配管接続部32が車幅方向中央側に向くよう配置したため、車両への搭載状態で前後と外側方がフロアパネルによって覆われるブレーキ液圧調整装置80のヒルホールドバルブ30に対するブレーキ配管52の接続を車幅方向中央側(内側方)から作業性良く行うことができる。
【0062】
又、本実施の形態では、ブレーキ液圧調整装置80を車体フレーム100に取り付けるための取付ブラケット1を、車体フレーム100に予め取り付けられる第1ブラケット2と、ブレーキ液圧調整装置80が予め取り付けられた第2ブラケット3とで構成し、第2ブラケット3を第1ブラケット2の上部に車幅方向中央側から外側方に向けて締付固定するようにしたため、平面視においてABSアクチュエータ20を避けた位置に第1ブラケット2と第2ブラケット3の締付固定部を配置する必要がなく、締付固定部を平面視でABSアクチュエータ20にオーバーラップする位置に配置することができ、取付ブラケット1の小型化と軽量化を図ることができる。そして、第2ブラケット3を第1ブラケット1に車幅方向中央側から外側方に向けて作業性良く簡単に取り付けることができる。
【0063】
その他、本実施の形態では、ブレーキ液圧調整装置80を構成するABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40を1つの取付ブラケット1に集約して取り付けるようにしたため、ABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40を各々別個のブラケットによってそれぞれ取り付ける従来の構成に対して取付ブラケット1の取付工数が削減されるとともに、ABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40にそれぞれ接続されるブレーキ配管52〜56の長さが短縮される。このため、軽量化とコストダウンを図ることができるとともに、ABSアクチュエータ20とヒルホールドバルブ30及び液圧センサ40の設置スペースを縮小することができる。
【0064】
又、本実施の形態では、ヒルホールドバルブ30をABSアクチュエータ20の車幅方向中央側に配置するとともに、該ヒルホールドバルブ30をその配管接続部32が車幅方向中央側に向くよう取り付けたため、ヒルホールドバルブ30とABSアクチュエータ20を車幅方向にコンパクトに配置することができるとともに、ヒルホールドバルブ30へのブレーキ配管52の接続を車幅方向中央側から作業性良く行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 取付ブラケット
2 第1ブラケット
3 第2ブラケット
20 ABSアクチュエータ
30 ヒルホールドバルブ
32 ヒルホールドバルブの配管接続部
40 液圧センサ
41 ジョイント
50 ブレーキブースタ
52〜57 ブレーキ配管
60 ジョイント
80 ブレーキ液圧調整装置
90 運転席
91 運転席のシートクッション
100 車体フレーム
101 車体フロア
101a 車体フロアの開口部
S 空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキ液圧を調整するブレーキ液圧調整装置の配置構造であって、
運転席下方の車体フロアを上方に膨出させて運転席とその下方の車体フレームとの間に空間を形成し、該空間に前記ブレーキ液圧調整装置を配置したことを特徴とするブレーキ液圧調整装置の配置構造。
【請求項2】
前記運転席のシートクッションを車体に移動可能に取り付けるとともに、該シートクッション下方の車体フロアに、前記ブレーキ液圧調整装置への配管作業を可能とする開口部を形成したことを特徴とする請求項1記載のブレーキ液圧調整装置の配置構造。
【請求項3】
前記ブレーキ液圧調整装置をその配管接続部が車幅方向中央側に向くよう配置したことを特徴とする請求項1又は2記載のブレーキ液圧調整装置の配置構造。
【請求項4】
前記ブレーキ液圧調整装置を取付ブラケットを介して車体フレームに取り付けるとともに、前記取付ブラケットを、前記車体フレームに予め取り付けられる第1ブラケットと、前記ブレーキ液圧調整装置が予め取り付けられた第2ブラケットとで構成し、前記第2ブラケットを前記第1ブラケットの上部に車幅方向中央側から外側方に向けて締付固定するようにしたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のブレーキ液圧調整装置の配置構造。
【請求項5】
前記ブレーキ液圧調整装置を、ABSアクチュエータとヒルホールドバルブ及び液圧センサを含んで構成し、前記ヒルホールドバルブを前記ABSアクチュエータの車幅方向中央側に配置するとともに、該ヒルホールドバルブをその配管接続部が車幅方向中央側に向くよう取り付けることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のブレーキ液圧調整装置の配置構造。
【請求項1】
車両のブレーキ液圧を調整するブレーキ液圧調整装置の配置構造であって、
運転席下方の車体フロアを上方に膨出させて運転席とその下方の車体フレームとの間に空間を形成し、該空間に前記ブレーキ液圧調整装置を配置したことを特徴とするブレーキ液圧調整装置の配置構造。
【請求項2】
前記運転席のシートクッションを車体に移動可能に取り付けるとともに、該シートクッション下方の車体フロアに、前記ブレーキ液圧調整装置への配管作業を可能とする開口部を形成したことを特徴とする請求項1記載のブレーキ液圧調整装置の配置構造。
【請求項3】
前記ブレーキ液圧調整装置をその配管接続部が車幅方向中央側に向くよう配置したことを特徴とする請求項1又は2記載のブレーキ液圧調整装置の配置構造。
【請求項4】
前記ブレーキ液圧調整装置を取付ブラケットを介して車体フレームに取り付けるとともに、前記取付ブラケットを、前記車体フレームに予め取り付けられる第1ブラケットと、前記ブレーキ液圧調整装置が予め取り付けられた第2ブラケットとで構成し、前記第2ブラケットを前記第1ブラケットの上部に車幅方向中央側から外側方に向けて締付固定するようにしたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のブレーキ液圧調整装置の配置構造。
【請求項5】
前記ブレーキ液圧調整装置を、ABSアクチュエータとヒルホールドバルブ及び液圧センサを含んで構成し、前記ヒルホールドバルブを前記ABSアクチュエータの車幅方向中央側に配置するとともに、該ヒルホールドバルブをその配管接続部が車幅方向中央側に向くよう取り付けることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のブレーキ液圧調整装置の配置構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−192762(P2012−192762A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56304(P2011−56304)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
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