説明

ブレーキ装置およびウインチ装置

【課題】ブレーキ解除時の油の粘性による回転抵抗を低減することのできるブレーキ装置を提供する。
【解決手段】ブレーキ装置は、湿式多板式のブレーキと、ブレーキに供給する油を吐出するポンプとを備え、ブレーキは、給油ポート11aと、バイパス用給油ポート11cと、排油ポート11bと、給油ポート11aと排油ポート11bとの間において摩擦板間の油路を含むように形成される主流路と、バイパス用給油ポート11cと排油ポート11bとの間において摩擦板間の油路を含まないように形成されるバイパス流路とを有し、ブレーキ装置は、ブレーキに供給される油をバイパスさせてバイパス流路に供給する圧力制御弁と、油を加熱する加熱手段とを備え、圧力制御弁が作動していないときには、油は主流路を通過してから排出され、圧力制御弁が作動しているときには、油はバイパス流路を通過してから排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式多板式のブレーキを備えたブレーキ装置、および、このブレーキ装置を備えたウインチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吊り荷のフリーフォール時に十分な制動力を得るものとして、湿式多板式のブレーキを有するウインチ装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1のウインチ装置では、冷却油ポンプからブレーキに冷却油を供給する油路に、リリーフ弁を有する油路が接続され、湿式多板式のブレーキの複数の摩擦板間を冷却油が流れる。複数の摩擦板間を冷却油が流れるとき圧力損失が発生し、この圧力損失に起因してブレーキディスク(プレッシャープレート)の両面に差圧が発生する。差圧はブレーキ操作性に影響を与えるので、特許文献1のウインチ装置では、作用する差圧の変化を少なくして、ブレーキの操作性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4085670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ブレーキにおける複数の摩擦板間を通過する冷却油は、温度が低いほど粘性抵抗が大きくなる特性がある。上記した特許文献1に記載のウインチ装置では、冷却油の温度が低い場合に摩擦板間に介在する冷却油の粘性によって摩擦板間に回転抵抗(いわゆるドラグトルク)が作用する。そのため、ブレーキを解除した際にフリーフォール速度が低下して作業効率が低下してしまうといった問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、複数の摩擦板、摩擦板間の油路を含む油の主流路、および摩擦板間の油路を含まない油のバイパス流路を有する湿式多板式のブレーキと、油を加熱する加熱手段と、加熱手段により加熱された油をブレーキに供給する油供給手段と、摩擦板間を通過する油の流路抵抗によりブレーキ内圧力が所定値まで上昇したときに、ブレーキに供給される油をバイパスさせてバイパス流路に供給する圧力制御手段とを備えることを特徴とするブレーキ装置である。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のブレーキ装置において、ブレーキは、圧力制御手段を介することなく油供給手段によって供給される油をブレーキ内に導入する入口と、圧力制御手段を介して油供給手段によって供給される油をブレーキ内に導入するバイパス口と、ブレーキ外に油を排出する出口とを有し、主流路は、入口と出口との間において形成され、バイパス流路は、バイパス口と出口との間において形成されることを特徴とするブレーキ装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のブレーキ装置において、圧力制御手段は、ブレーキに組み込まれていることを特徴とするブレーキ装置である。
請求項4に係る発明は、複数の摩擦板を有する湿式多板式のブレーキと、ブレーキに供給する油を吐出する油圧ポンプとを備え、ブレーキは、油をブレーキ内に導入する第1の給油ポートおよび第2の給油ポートと、油をブレーキ外に排出する排油ポートと、第1の給油ポートと排油ポートとの間において摩擦板間の油路を含むように形成される第1のブレーキ内流路と、第2の給油ポートと排油ポートとの間において摩擦板間の油路を含まないように形成される第2のブレーキ内流路とを有し、ブレーキ装置は、さらに、油圧ポンプの吐出口とブレーキの第1の給油ポートとを連通する第1の油路と、第1の油路とブレーキの第2の給油ポートとに接続された第2の油路と、第2の油路に設けられる圧力制御弁と、油を加熱する加熱手段とを備え、圧力制御弁が作動していないときには、油圧ポンプにより吐出された油は第1の油路を介して第1の給油ポートに供給され、第1の給油ポートから供給された油は摩擦板間の油路を通過して排油ポートから排出され、圧力制御弁が作動しているときには、油圧ポンプにより吐出された油は第2の油路を介して第2の給油ポートに供給され、第2の給油ポートから供給された油は摩擦板間の油路を通過することなく排油ポートから排出されることを特徴とするブレーキ装置である。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のブレーキ装置を備えたウインチ装置であって、ウインチドラムと、ウインチドラムを巻上げおよび巻下げ駆動する油圧モータと、油圧モータに圧油を供給するウインチドラム駆動用油圧ポンプとを備え、ブレーキ装置は、ウインチドラムの回転を制動し、ブレーキ装置の加熱手段は、油圧モータとウインチドラム駆動用油圧ポンプとを接続する油路の途中に設けられて、外部からの信号により圧油の供給を遮断する方向切換弁と、ウインチドラム駆動用油圧ポンプの吐出口および方向切換弁のプレッシャーポートを連通する油路と方向切換弁の戻りポートおよびタンクを連通する油路との間に介挿される圧力制御弁とを含んで構成されることを特徴とするウインチ装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ブレーキ解除時の油の粘性による回転抵抗を低減することのできるブレーキ装置およびフリーフォール速度の不足を解消して作業効率の向上を図ることのできるウインチ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るブレーキ装置を備えるウインチ装置を適用したクレーンの外観側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るブレーキ装置を備えるウインチ装置の構成を示す油圧回路図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るブレーキの構成とブレーキ内を通過する冷却油の流れを示す模式図である。
【図4】(a)は本発明の第1の実施の形態に係るブレーキの摩擦板間を通過する冷却油の流れを示す模式図であり、(b)は本発明の第1の実施の形態に係るブレーキの摩擦板間をバイパスする冷却油の流れを示す模式図である。
【図5】(a)は本発明の第1の実施の形態に係るブレーキとリリーフ弁を示す模式図であり、(b)は従来のブレーキとリリーフ弁を示す模式図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るブレーキの構成とブレーキ内を通過する冷却油の流れを示す模式図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るブレーキの構成とブレーキ内を通過する冷却油の流れを示す模式図である。
【図8】本発明の変形例に係るブレーキの構成を示す模式図である。
【図9】本発明の変形例に係るブレーキの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
―第1の実施の形態―
以下、本発明によるブレーキ装置およびこのブレーキ装置を備えたウインチ装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。本実施の形態に係るブレーキ装置およびこのブレーキ装置を備えたウインチ装置は種々の産業機械に適用できるが、代表して建設機械におけるクレーンに用いられるブレーキ装置およびウインチ装置に基づいて説明する。
【0009】
(クレーンの全体構成)
クレーンの全体構成について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るブレーキ装置を備えるウインチ装置を適用したクレーンの外観側面図である。図1に示すように、クレーンは、走行体101と、走行体101上に旋回可能に設けられた旋回体102と、旋回体102に起伏可能に軸支されたブーム103とを有する。旋回体102にはウインチドラム100が搭載され、ウインチドラム100の駆動によりワイヤロープ104が巻上げまたは巻下げられ、吊り荷106が昇降する。旋回体102には起伏ドラム107が搭載され、起伏ドラム107の駆動により起伏ロープ108が巻上げまたは巻下げられ、ブーム103が起伏される。
【0010】
(ウインチ装置の構成)
ウインチ装置の構成について、図2を参照して説明する。図2は、第1の実施の形態のクレーンに搭載されたウインチ装置の構成を示す油圧回路図である。図2に示すように、油圧回路には、エンジン20で駆動される第1ポンプ3および第2ポンプ32ならびにパイロットポンプ23が設けられている。第1ポンプ3および第2ポンプ32ならびにパイロットポンプ23は、タンク9内の作動油を圧油として吐出する。
【0011】
第1ポンプ3から吐出される圧油は、ウインチ駆動用の油圧回路に供給され、第2ポンプ32から吐出される圧油は、ブレーキ冷却用の油圧回路に供給され、パイロットポンプ23から吐出される圧油は、ブレーキ作動用の油圧回路に供給される。
【0012】
ウインチ装置は、ウインチドラム100と、ウインチドラム100を巻上げおよび巻下げ駆動する油圧モータ2と、油圧モータ2に圧油を供給するウインチドラム駆動用の油圧ポンプである第1ポンプ3と、第1ポンプ3から油圧モータ2への圧油の流れを制御する制御弁ユニット4と、油圧モータ2の駆動力をウインチドラム100に伝達する遊星減速機構5と、遊星減速機構5のキャリア軸54を制動することによりウインチドラム100の自由回転を阻止するブレーキ装置10とを備える。
【0013】
ブレーキ装置10には、複数の摩擦板を備える湿式多板式のブレーキ1を採用している。このようなブレーキ1は摩擦板の面積が大きいため、吊り荷106のフリーフォール作業において十分なブレーキ力を発揮することができる。しかし、その反面、摩擦板間の油の粘性による回転抵抗(いわゆるドラグトルク)が大きく、フリーフォール時の速度が不足しやすい。そこで、本実施の形態のブレーキ装置10を備えるウインチ装置では、冷却油の温度を適宜上昇させることで粘度を低下させて、ドラグトルクの低減を図る。ブレーキ装置10の詳細については後述する。
【0014】
制御弁ユニット4は、油圧モータ2と第1ポンプ3とを接続する油路の途中に設けられている。制御弁ユニット4は、操作レバーの操作量に応じたパイロット圧により操作されるウインチ操作用制御弁4Aと、冷却油加熱用スイッチSWからの信号により切り換えられる冷却油加熱用制御弁4Bと、リリーフ弁4Cとを含んで構成される。
【0015】
(ウインチ操作用制御弁)
ウインチ操作用制御弁4Aは、操作レバーが操作されていないときには、中立位置aにおいて保持され、操作レバーの操作に応じて切換位置bの方向または切換位置cの方向に切り換えられる。後述する冷却油加熱用制御弁4Bが位置aに切り換わっているときであって、ウインチ操作用制御弁4Aが中立位置aに保持されているとき、第1ポンプ3から供給された圧油は油圧モータ2側に流れることなくタンク9に回収される。ウインチ操作用制御弁4Aが切換位置bまたは切換位置cに切り換わると、第1ポンプ3からの圧油が油圧モータ2に供給されるため、油圧モータ2が回転する。
【0016】
(油圧モータ)
油圧モータ2は、ウインチ操作用制御弁4Aを介して給排される圧油によって、正逆方向に回転する。後述する遊星減速機構5のキャリア軸54がブレーキ装置1で制動されているときに、油圧モータ2が一方向に回転するとワイヤロープ104を巻き上げる方向にウインチドラム100が駆動し、他方向に回転するとワイヤロープ104を巻き下げる方向にウインチドラム100が駆動する。
【0017】
(遊星減速機構)
油圧モータ2の出力軸2aは遊星減速機構5のサンギア51に連結されている。サンギア51にはプラネタリギア52が噛合され、プラネタリギア52にはウインチドラム100の内周側に設けられたリングギア53が噛合されている。プラネタリギア52はキャリア軸54により支持され、キャリア軸54はブレーキケース11の側壁を貫通してブレーキケース11内に達している(図3参照)。
【0018】
(冷却油加熱用の制御弁およびリリーフ弁)
冷却油加熱用制御弁4Bは、電磁弁であって、冷却油加熱用スイッチSWからの操作信号により切り換えられる。冷却油加熱用制御弁4Bは、冷却油加熱用スイッチSWがオフのときには初期位置aにおいて保持され、オンされると切換位置bに切り換えられる。冷却油加熱用制御弁4Bが初期位置aに保持されている状態では、第1ポンプ3からウインチ操作用制御弁4Aに圧油が供給可能となり、切換位置bに切り換わった状態では、ウインチ操作用制御弁4Aへの圧油の供給が遮断される。
【0019】
リリーフ弁4Cのプレッシャーポート(Pポート)は、第1ポンプ3の吐出口と冷却油加熱用制御弁4Bのプレッシャーポート(Pポート)とを連通する油路43に接続されている。リリーフ弁4Cの戻りポート(Rポート)は、冷却油加熱用制御弁4Bの戻りポート(Rポート)とタンク9とを連通する油路44に接続されている。つまり、リリーフ弁4Cは、油路43と油路44との間に介挿されており、油路43と油路44の差圧(ばねで設定される)が所定値に達したときに開放される。
【0020】
冷却油加熱用制御弁4Bが初期位置aから切換位置bに切り換えられると、第1ポンプ3の吐出油が遮断されるため、油圧回路内の圧力が上昇する。回路圧力がリリーフ弁4Cの設定圧力に達するとリリーフ弁4Cが開いて、リリーフした圧油が油路44に流れ込みタンク9に回収される。この過程で冷却油の温度が上昇する。すなわち、冷却油加熱用制御弁4Bおよびリリーフ弁4Cは、冷却油を加熱する加熱手段として機能する。
【0021】
本実施の形態における冷却油の温度上昇に関して試算すると以下のようになる。
リリーフ弁4Cの通過前後における冷却油の温度変化を△T(K)とすると、△Tは、次の(1)式で表される。
△T(K)=△P/γ/C ・・・(1)
ここで、△Pはリリーフ弁4Cの通過前後における冷却油の圧力の差であり、γは冷却油の比重であり、Cは冷却油の比熱である。
【0022】
たとえば、△Pを1(MPa)とし、γを0.8(kg/m)とし、Cを1.89(J/kg・K)とすると、△Tは0.66(K)となる。すなわち、リリーフ弁4Cを通過した冷却油は、その温度が0.66度上昇することとなる。
【0023】
(ブレーキ装置の構成)
ブレーキ装置10は、複数の摩擦板を有する湿式多板式のブレーキ1と、ブレーキ1に供給する冷却油を吐出する第2ポンプ32と、ブレーキ弁22およびフリーフォールモード切換弁21が設けられるブレーキ作動用の油圧回路と、オイルクーラ8およびリリーフ弁33が設けられるブレーキ冷却用の油圧回路とを含んで構成される。
【0024】
(ブレーキの構成)
ブレーキ1の構成について、図3を参照して説明する。図3は、第1の実施形態に係るブレーキ1の構成を示す図であり、白抜きの矢印によりブレーキ1の摩擦板間を通過する冷却油の流れを模式的に示している。なお、破線で示す矢印は、リリーフ弁33を介してバイパス用給油ポート11cに供給される冷却油の流れを模式的に示している。
【0025】
図3に示すように、ブレーキ1は、ブレーキケース11内に複数の摩擦板、すなわち、インナディスク12およびアウタディスク13を備えた湿式多板式のブレーキである。ブレーキケース11には、キャリア軸54の端部が収容されるキャリア軸室115と、円環状の摩擦板が収容されるディスク室111と、ブレーキディスク14を付勢するばね16が収容されるばね室119とが連通して形成されている。
【0026】
(インナディスクおよびアウタディスク)
インナディスク12とアウタディスク13は、ディスク室111において軸方向に交互に配置されている。キャリア軸54には複数枚のインナディスク12がスプライン結合により軸方向に移動可能に係合され、インナディスク12はキャリア軸54と一体に回転可能となっている。ブレーキケース11の内周面には複数枚のアウタディスク13がスプライン結合により軸方向に移動可能に係合されている。なお、インナディスク12とアウタディスク13の表面には格子状の溝が形成されているため、インナディスク12とアウタディスク13とが圧接された状態であっても、油は溝を介して摩擦板間を流れることになる。
【0027】
(ブレーキディスク)
キャリア軸54端部の側方にはブレーキディスク14が配置されている。ブレーキディスク14には、ばね室119とキャリア軸室115とを区分するように配置されるプレッシャープレート14dと、プレッシャープレート14dからインナディスク12側に延在する押し当て部14cとが設けられている。プレッシャープレート14dには、ばね室119とキャリア軸室115とを連通する貫通孔14aが形成されている。
【0028】
プレッシャープレート14dには、ばね室119に収容されているばね16により付勢力が作用して、押し当て部14cがインナディスク12とアウタディスク13とを圧接する。これによりインナディスク12の表面に摩擦力が作用し、キャリア軸54の回転が阻止される。
【0029】
ブレーキディスク14はブレーキシリンダ15のピストンを形成し、ブレーキシリンダ15の油室15aにパイロットポート11dから圧油が供給されると、ブレーキディスク14にはばね16の付勢力に対抗した油圧力(ブレーキ解除圧)が作用する。これによりインナディスク12とアウタディスク13との圧接力が除去され、キャリア軸54が回転可能となる。
【0030】
ブレーキシリンダ15の油室15aは、フリーフォールモード切換弁21およびブレーキ弁22を介してパイロットポンプ23に接続されている(図2参照)。フリーフォールモードスイッチがオフの状態では、フリーフォールモード切換弁21が切換位置bに切り換えられており、油室15aはタンクに連通される。このため、ばね16の付勢力によりブレーキディスク14がインナディスク12とアウタディスク13とを圧接し、キャリア軸54の回転が阻止される。これにより、油圧モータ2の正逆転により吊り荷106を動力巻上、動力降下することができる。
【0031】
フリ―フォールモードスイッチがオンされて、フリーフォールモードになった状態では、ブレーキペダル24を操作していないときには、パイロットポンプ23からの圧油がブレーキ弁22を介して油室15aに供給される。このため、ばね16の付勢力に対抗した油圧力がブレーキディスク14に作用し、インナディスク12とアウタディスク13との圧接力が除去され、キャリア軸54が回転可能となる。このとき、吊り荷106は自重で自由降下する。
【0032】
フリーフォールモードの状態では、ブレーキペダル24を踏み込み操作することで、パイロットポンプ23から供給される圧油がブレーキ弁22により調圧され、油室15aの圧力がブレーキペダル24の踏み込み量に応じて低減する。その結果、ばね16の付勢力とブレーキ圧力により、ブレーキディスク14がインナディスク12とアウタディスク13とを圧接する力が変化する。キャリア軸54の制動力はこの圧接力に依存して変化するので、ブレーキペダル24を踏み込むほど制動力が大きくなる。フリーフォールモードの状態でも、ブレーキペダル24の踏み込みにより吊り荷106を空中で保持することができる。
【0033】
(ブレーキの給油ポート、バイパス用給油ポートおよび排油ポート)
ブレーキケース11には、ディスク室111に連通する給油ポート11aと、ばね室119に連通するバイパス用給油ポート11cおよび排油ポート11bが設けられている。排油ポート11bは、キャリア軸54の軸方向に直交する平面であって、且つ、バイパス用給油ポート11cが配置される平面上に複数設けられている。複数の排油ポート11bは、キャリア軸54の軸心を中心としてバイパス用給油ポート11cに対してほぼ180度対称となる位置の近傍にまとめて設けられている。このように、バイパス用給油ポート11cと排油ポート11bとの距離を確保することで、バイパス用給油ポート11cから導入される温められた冷却油が低温の冷却油と充分に混ざり合うため、効率よくブレーキ1を温めることができる。
【0034】
ディスク室111において給油ポート11aが接続される部分のブレーキケース内面には、円環状に流路111aが形成され、この円環状流路111aはディスク12,13の径方向外方に設けられる外周側流路111b(図3の拡大図参照)と連通している。
【0035】
(ブレーキ作動用の油圧回路)
図2に示すように、ブレーキ作動用の油圧回路は、パイロットポンプ23の吐出口とブレーキケース11のパイロットポート11dとを連通する油路45を有している。油路45には、ブレーキ弁22と、フリーフォールモード切換弁21とが設けられている。
【0036】
(フリーフォールモード切換弁)
フリーフォールモード切換弁21は、電磁弁であって、図示しないフリーフォールスイッチからの操作信号により切り換えられる。フリーフォールスイッチがオンされると切換位置aに切り換えられ、オフされると切換位置bに切り換えられる。フリーフォールモード切換弁21が切換位置aに切り換わると、パイロットポンプ23からブレーキ1の油室15a(図3参照)に圧油が供給され、ブレーキペダル24の踏み込み量に応じて吊り荷106をフリーフォールすることができる。切換位置bに切り換わると、パイロットポンプ23から供給される圧油の流れが遮断され、油室15a(図3参照)はタンク圧となる。切換位置bでは、ばね16のばね力でキャリア軸54が制動されるから(図3参照)、油圧モータ2の正逆転により吊り荷106が動力巻上、動力降下される。
【0037】
(ブレーキ弁)
ブレーキ弁22は、ブレーキペダル24により操作される。ブレーキペダル24の非操作時には、パイロットポンプ23からの圧油がブレーキ弁22を介してフリーフォールモード切換弁21にそのまま導かれる。したがって、フリーフォールモード切換弁21がフリーフォールモード位置aに切り換わっているとき、キャリア軸54の制動力が最小となり、吊り荷106が自由降下する。ブレーキペダル24の踏み込みにより、油室15aの圧力が低下し、この圧力がばね16のばね力よりも小さくなると、キャリア軸54の制動力が増加して吊り荷106を空中で制動することができる。フリーフォールモード切換弁21が位置bに切り換わっているときは、油室15aはタンク圧となり、ばね16のばね力によりキャリア軸54が制動され、油圧モータ2の正逆転により吊り荷106を動力巻上、動力降下することができる。
【0038】
(ブレーキ冷却用の油圧回路)
ブレーキ冷却用の油圧回路は、第2ポンプ32の吐出口とブレーキ1の給油ポート11aとを連通する油路41と、油路41とブレーキ1のバイパス用給油ポート11cとに接続されたリリーフ用の油路42とを有している。油路41にはオイルクーラ8が設けられ、油路42にはリリーフ弁33が設けられている。
(オイルクーラ)
オイルクーラ8は、冷却ファンと、第2ポンプ32により供給される冷却油によって回転するファンモータとを有している。オイルクーラ8の冷却ファンは、ファンモータによって駆動されて、オイルクーラ8を通過する冷却油を冷却する。
【0039】
(ブレーキ保護用のリリーフ弁)
リリーフ弁33は、ブレーキ冷却用の油圧回路内圧力の上限を規定してブレーキ1を保護する。なお、ブレーキ1内を流れる冷却油の温度が低いほど粘性抵抗が大きくなるため、冬季や寒冷地などの低温環境下で使用する場合にブレーキ1の圧力が増加しやすい。
【0040】
ブレーキ1の摩擦板間を通過する油の流路抵抗によりブレーキ1内の圧力が上昇して所定圧(リリーフ弁33の設定圧力)に達すると、リリーフ弁33が開いて、第2ポンプ32で加圧された圧油がリリーフ弁33を通過して油路42に流れ込み、後述するブレーキ1のバイパス流路を構成するばね室119(図3参照)を通って、タンク9に回収される。つまり、ブレーキ内圧力が所定値まで上昇すると、ブレーキ1に供給される冷却油は油路42からブレーキ1内のばね室119に供給される。なお、リリーフ弁33が開放した際にも、リリーフ弁33を通過した冷却油の温度の上昇効果が期待できる。
【0041】
(ブレーキケース内における冷却油の流れ)
ブレーキ解除時のブレーキケース内における冷却油の流れについて図3および図4を参照して説明する。図4(a)は軸方向から見たときのブレーキ1の摩擦板間を通過する冷却油の流れを示す模式図であり、図4(b)はブレーキ1の摩擦板間をバイパスする冷却油の流れを示す模式図である。
【0042】
図3および図4(a)に示すように、リリーフ弁33が開放されていない通常の状態(リリーフ弁非作動時)にあるとき、冷却油は、ブレーキケース11の給油ポート11aからディスク室111に供給される。ディスク室111に供給された冷却油は、円環状のディスク室111の外周側流路111bに沿って流れるとともに外周側流路111bから軸中心に向かって流れてインナディスク12とアウタディスク13の間を通過した後、キャリア軸室115に流入し、ブレーキディスク14の貫通孔14aを介してばね室119に流入する。ばね室119に流入した冷却油は、複数の排油ポート11bからブレーキ1外に排出されてタンク9に戻る。
【0043】
図3および図4(b)に示すように、リリーフ弁33が開放されている状態(リリーフ弁作動時)にあるとき、冷却油は、ブレーキケース11のバイパス用給油ポート11cからばね室119に供給されて、キャリア軸室115にほとんど流入することなくそのまま排油ポート11bから排出されてタンク9に戻る。
【0044】
つまり、リリーフ弁33が開放されていない通常の状態において、給油ポート11aから冷却油が供給されると、給油ポート11aと排油ポート11bとの間において摩擦板間に形成される油路を含むように主流路が形成される。リリーフ弁33が開放された状態において、バイパス用給油ポート11cから冷却油が供給されると、バイパス用給油ポート11cと排油ポート11bとの間において摩擦板間の油路を含まないようにバイパス流路が形成される。バイパス流路は、摩擦板間を含んでいないため、圧力損失が小さく抑えられており、リリーフ弁33からの冷却油はスムーズに排油ポート11bから排出されてタンク9に回収される。
【0045】
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
リリーフ弁4cにより温められた冷却油がブレーキ1内に導入される構成とした。これにより、ブレーキ1を短時間で温めることができるため、低温環境下で使用された場合であっても、ブレーキ1の引きずり抵抗によるフリーフォール速度の不足を解消することができる。
【0046】
リリーフした圧油をブレーキ1内に導入したことの利点について図5を参照して具体的に説明する。図5(a)は本発明の第1の実施の形態に係るブレーキ1とリリーフ弁33を示す模式図であり、図5(b)は従来のブレーキ61とリリーフ弁63を示す模式図である。
【0047】
図5(b)に示すように、従来例では、温められた冷却油はブレーキ61へ流入せず、油路62を介してタンク69に回収される。この結果、ブレーキ61は低温の状態が続くため、フリーフォール時の回転抵抗が大きく、フリーフォール速度が低下する。
【0048】
これに対して、図5(a)に示すように、第1の実施の形態に係るブレーキ装置10では、リリーフ弁4cからリリーフして温められた冷却油はブレーキ1内のバイパス流路(ばね室119)に流入するため、ブレーキ1が短時間で温められる。この結果、低温環境下で使用する場合に、油の粘性による回転抵抗を迅速に低減することができる。
【0049】
―第2の実施の形態―
図6を参照して、第2の実施の形態に係るブレーキ装置10を説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態に係るブレーキ1の構成とブレーキ1内を通過する冷却油の流れを示す模式図である。第2の実施の形態では、ブレーキ1の構造およびブレーキ1の作動原理が第1の実施の形態と異なっている。第1の実施の形態のように、ばねによりブレーキディスク14を付勢して摩擦板を圧接するのではなく、第2の実施の形態では、ブレーキペダル24を操作することによりパイロットポート11dを介して油室15aに圧力を加えることで摩擦板を圧接する。すなわち、第2の実施形態のブレーキ装置10は、第1の実施形態のネガブレーキとは異なりポジブレーキである。したがって、フリーフォールモード切換弁21は省略されている。
【0050】
なお、第2の実施形態では、ブレーキ装置10をポジブレーキとして、以下のように吊り荷を動力巻上げし、動力降下し、自由降下する。ブレーキペダル24の踏み込みにより遊星減速機構5のキャリア軸54を制動した状態で、油圧モータ2を正転、逆転して吊り荷の動力巻上と動力降下を行う。また、油圧モータ2を停止した状態でブレーキペダル24の踏み込みを緩めて吊り荷を自重で自由落下させる。
以下、第1の実施の形態との相違点について詳しく説明する。
【0051】
図6に示すように、油室15aは、キャリア軸54が挿通される側と反対側の端部において、ブレーキケース11とブレーキディスク14のプレッシャープレート14dによって区画形成されている。ブレーキ弁22は、ブレーキペダル24により操作されて、ブレーキペダル24の非操作時には、パイロットポンプ23からの圧油は、ブレーキ1に流れることなくタンク9に回収される。ブレーキペダル24を踏み込むと、パイロットポンプ23からの圧油がブレーキ弁22の踏み込み量に応じた圧力に調圧されてパイロットポート11dから油室15aに供給される。
【0052】
すなわち、ブレーキペダル24を操作すると、油室15a側のプレッシャープレート14dの全面にブレーキ弁22で調圧された圧力が加わり、押し当て部14cによりインナディスク12とアウタディスク13とを圧接してキャリア軸54を制動することができる。
【0053】
第2の実施の形態では、バイパス用給油ポート11cおよび排油ポート11bはキャリア軸室115に直接開口している。すなわち、キャリア軸室115がブレーキ1内のバイパス流路となる。なお、キャリア軸室115とバイパス用給油ポート11cおよび排油ポート11bとは、押し当て部14cに設けられる貫通孔14bを介して連通されている。なお、給油ポート11aは、摩擦板が収容されたディスク室111を経由してキャリア軸室115に連通している。
【0054】
したがって、リリーフ弁33が開放されていない通常の状態(リリーフ弁非作動時)にあるとき、冷却油は、ブレーキケース11の給油ポート11aからディスク室111に供給されて、インナディスク12とアウタディスク13の間を通過した後、キャリア軸室115に流入し、貫通孔14bを介して排油ポート11bから排出されてタンク9に戻る。
【0055】
リリーフ弁33が開放されている状態(リリーフ弁作動時)にあるとき、冷却油は、ブレーキケース11のバイパス用給油ポート11cから貫通孔14bを介してキャリア軸室115に供給されて、ディスク室111にほとんど流入することなくそのまま排油ポート11bから排出されてタンク9に戻る。
【0056】
つまり、リリーフ弁33が開放されていない通常の状態において、給油ポート11aから冷却油が供給されると、給油ポート11aと排油ポート11bとの間において摩擦板間の油路を含むように主流路が形成される。リリーフ弁33が開放された状態において、バイパス用給油ポート11cから冷却油が供給されると、バイパス用給油ポート11cと排油ポート11bとの間において摩擦板間の油路を含まないようにバイパス流路が形成される。
【0057】
したがって、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、ブレーキ解除時の油の粘性による回転抵抗を低減することのできるブレーキ装置10およびフリーフォール速度の不足を解消して作業効率の向上を図ることのできるウインチ装置を提供することができる。
【0058】
―第3の実施の形態―
図7を参照して第3の実施の形態に係るブレーキ装置10を説明する。図7は、本発明の第3の実施の形態に係るブレーキ1の構成とブレーキ1内を通過する冷却油の流れを示す模式図である。第3の実施の形態では、ブレーキ1の作動原理は第2の実施の形態と同様であるが、給油ポート11a、バイパス用給油ポート11cおよび排油ポート11bの位置が異なっている。具体的には、給油ポート11aがキャリア軸室115に開口し、バイパス用給油ポート11cおよび排油ポート11bがディスク室111の円環状流路111aに連通されている。すなわち、円環状流路111aがブレーキ1内のバイパス流路となる。
【0059】
したがって、リリーフ弁33が開放されていない通常の状態(リリーフ弁非作動時)にあるとき、冷却油は、ブレーキケース11の給油ポート11aからキャリア軸室115に供給されて、キャリア軸室115からディスク室111に流入し、インナディスク12とアウタディスク13の間を通過した後、排油ポート11bから排出されてタンク9に戻る。
【0060】
リリーフ弁33が開放されている状態(リリーフ弁作動時)にあるとき、冷却油は、ブレーキケース11のバイパス用給油ポート11cからディスク室111の円環状の流路111aに供給されて、摩擦板側にほとんど流入することなく円環状の流路111aに沿って流れて、そのまま排油ポート11bから排出されてタンク9に戻る。
【0061】
つまり、リリーフ弁33が開放されていない通常の状態において、給油ポート11aから冷却油が供給されると、給油ポート11aと排油ポート11bとの間において摩擦板間の油路を含むように主流路が形成される。リリーフ弁33が開放された状態において、バイパス用給油ポート11cから冷却油が供給されると、バイパス用給油ポート11cと排油ポート11bとの間において摩擦板間の油路を含まないようにバイパス流路が形成される。
【0062】
したがって、第3の実施の形態によれば、第1および第2の実施の形態と同様に、ブレーキ解除時の油の粘性による回転抵抗を低減することのできるブレーキ装置10およびフリーフォール速度の不足を解消して作業効率の向上を図ることのできるウインチ装置を提供することができる。
【0063】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
[変形例]
(1)ブレーキ装置10は、ワイヤロープ104により吊り荷106を巻上げまたは巻下げるウインチ装置に適用する場合に限定されない。起伏ドラム107の回転を制動するブレーキ装置に第1〜第3の実施の形態に係るブレーキ装置を採用することができる。さらに、ブレーキ装置10は、ウインチ装置に適用する場合に限定されることなく、種々の産業機械における回転機械を制動するブレーキ装置に適用することができる。たとえば、クレーンの走行体101に対する旋回体102の旋回動作を制動するブレーキ装置に適用できる。湿式多板ブレーキ付きの走行装置などにも適用できる。
【0064】
(2)冷却油加熱用制御弁4Bとリリーフ弁4Cとで冷却油を加熱する場合に限定されない。電熱器を有するオイルヒーターにより冷却油を加熱する構成としてもよい。
(3)加熱手段をウインチ駆動用の油圧回路内に設ける場合に限定されることもない。ブレーキ冷却用の油圧回路や、タンク9を介して接続される他の油圧回路に加熱手段を設けてもよい。
(4)第1〜第3の実施の形態では、冷却油加熱用スイッチSWを操作することにより、冷却油加熱用制御弁4Bを作動させてリリーフ弁4cを開放させることで油を加熱したが、このように加熱手段を手動で作動させることなく温度センサを設けて、検出された油温度が所定値以下であった場合に自動で加熱手段を作動する構成としてもよい。
【0065】
(5)オイルクーラ8の冷却ファンは、油圧ポンプで供給される圧油により回転する油圧モータで駆動する構成に限定されない。電動モータにより、冷却ファンを駆動させる構成としてもよい。
(6)オイルクーラ8は、ブレーキ冷却用の油圧回路に設ける場合に限定されない。タンク9を介して接続される他の油圧回路に設けてもよい。
(7)オイルクーラ8の油圧モータが設置される油路に温度センサと方向制御弁を設けて、検出された温度が所定値以上であった場合に、オイルクーラ8を通過しないように自動で油をバイパスさせる構成としてもよい。電動式のオイルクーラの場合は、方向制御弁は省略されて検出された温度が所定値以上となったときに、自動で冷却ファンを停止する構成とすることができる。自動でオイルクーラをバイパスする、または冷却ファンを停止する構成を採用することにより、油を効率的に加熱することができる。
(8)冬季や寒冷地などの低温環境下において使用される場合、オイルクーラ8を省略することができる。
【0066】
(9)リリーフ弁4C,33に代えて、チェック弁を採用してもよい。
(10)ブレーキ保護用のリリーフ弁あるいはチェック弁は、油路42に設けずにブレーキ1に組み込んでもよい。たとえば、第2の実施の形態に係るブレーキ装置10において、図8に示すように、給油ポート11aとキャリア軸室115との間におけるブレーキディスク14の押し当て部14cにチェック弁73を介在させてもよい。
第3の実施の形態に係るブレーキ装置10において、図9に示すように、給油ポート11aと円環状の流路111aとの間におけるブレーキケース11の側壁内にチェック弁73を介在させてもよい。
なお、第1の実施の形態に係るブレーキ装置10も第2の実施の形態と同様にリリーフ弁やチェック弁をブレーキ1に組み込むことができる。これにより、第1〜第3の実施の形態におけるリリーフ弁33および油路42、バイパス用給油ポート11cを省略することができるため、油路を形成する油圧ホースの配置の自由度が向上する。
【0067】
(11)第1〜第3の実施の形態では、吊り荷を自由降下させる時、ブレーキペダル24を踏み込むことでブレーキ力を作用させて、ウインチドラム100の回転を停止させる構成とした。反対に、ブレーキペダル24の非操作時にブレーキ力を作用させ、ブレーキペダル24を踏み込んだ時にブレーキを解除してフリーフォールを実行可能とする構成としてもよい。
【0068】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で自由に変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 ブレーキ、2 油圧モータ、3 第1ポンプ、4 制御弁ユニット、4A ウインチ操作用制御弁、4B 冷却油加熱用制御弁、4C リリーフ弁、10 ブレーキ装置、11 ブレーキケース、11a 給油ポート、11b 排油ポート、11c バイパス用給油ポート、11d パイロットポート、12 インナディスク、13 アウタディスク、14 ブレーキディスク、23 パイロットポンプ、24 ブレーキペダル、32 第2ポンプ、33 リリーフ弁、41〜45 油路、100 ウインチドラム、111 ディスク室、111a 円環状流路、111b 外周側流路、115 キャリア軸室、119 ばね室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の摩擦板、前記摩擦板間の油路を含む油の主流路、および前記摩擦板間の油路を含まない油のバイパス流路を有する湿式多板式のブレーキと、
前記油を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段により加熱された油を前記ブレーキに供給する油供給手段と、
前記摩擦板間を通過する油の流路抵抗によりブレーキ内圧力が所定値まで上昇したときに、前記ブレーキに供給される油をバイパスさせて前記バイパス流路に供給する圧力制御手段とを備えることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ装置において、
前記ブレーキは、前記圧力制御手段を介することなく前記油供給手段によって供給される油をブレーキ内に導入する入口と、前記圧力制御手段を介して前記油供給手段によって供給される油をブレーキ内に導入するバイパス口と、前記ブレーキ外に油を排出する出口とを有し、
前記主流路は、前記入口と出口との間において形成され、
前記バイパス流路は、前記バイパス口と出口との間において形成されることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のブレーキ装置において、
前記圧力制御手段は、前記ブレーキに組み込まれていることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項4】
複数の摩擦板を有する湿式多板式のブレーキと、
前記ブレーキに供給する油を吐出する油圧ポンプとを備え、
前記ブレーキは、前記油をブレーキ内に導入する第1の給油ポートおよび第2の給油ポートと、前記油をブレーキ外に排出する排油ポートと、前記第1の給油ポートと排油ポートとの間において前記摩擦板間の油路を含むように形成される第1のブレーキ内流路と、前記第2の給油ポートと排油ポートとの間において前記摩擦板間の油路を含まないように形成される第2のブレーキ内流路とを有し、
前記ブレーキ装置は、
さらに、前記油圧ポンプの吐出口と前記ブレーキの第1の給油ポートとを連通する第1の油路と、
前記第1の油路と前記ブレーキの第2の給油ポートとに接続された第2の油路と、
前記第2の油路に設けられる圧力制御弁と、
前記油を加熱する加熱手段とを備え、
前記圧力制御弁が作動していないときには、前記油圧ポンプにより吐出された油は前記第1の油路を介して前記第1の給油ポートに供給され、前記第1の給油ポートから供給された油は前記摩擦板間の油路を通過して前記排油ポートから排出され、
前記圧力制御弁が作動しているときには、前記油圧ポンプにより吐出された油は前記第2の油路を介して前記第2の給油ポートに供給され、前記第2の給油ポートから供給された油は前記摩擦板間の油路を通過することなく前記排油ポートから排出されることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のブレーキ装置を備えたウインチ装置であって、
ウインチドラムと、
前記ウインチドラムを巻上げおよび巻下げ駆動する油圧モータと、
前記油圧モータに圧油を供給するウインチドラム駆動用油圧ポンプとを備え、
前記ブレーキ装置は、前記ウインチドラムの回転を制動し、
前記ブレーキ装置の加熱手段は、前記油圧モータと前記ウインチドラム駆動用油圧ポンプとを接続する油路の途中に設けられて、外部からの信号により圧油の供給を遮断する方向切換弁と、前記ウインチドラム駆動用油圧ポンプの吐出口および前記方向切換弁のプレッシャーポートを連通する油路と前記方向切換弁の戻りポートおよびタンクを連通する油路との間に介挿される圧力制御弁とを含んで構成されることを特徴とするウインチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−237322(P2012−237322A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104641(P2011−104641)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(503032946)日立住友重機械建機クレーン株式会社 (104)
【Fターム(参考)】