説明

ブレーキ装置

【課題】車両の駐車場所がスプリットμ路面であるか否かを判定できるブレーキ装置を提供する。
【解決手段】ディスクブレーキ21を構成する取付部材に歪センサ37を設ける。歪センサ37は、取付部材の歪に基づいて、ディスクブレーキ21のブレーキ力を検出する。駐車ブレーキ用コントローラ38は、駐車ブレーキの作動時に、左側の後輪3のディスクブレーキ21のブレーキ力と左側の後輪3のディスクブレーキ21のブレーキ力とを比較し、これら左,右のブレーキ力Bに差がある場合に、左側の後輪3と右側の後輪3とがスプリットμ路面の勾配路に駐車されていると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に制動力を付与するブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に設けられるブレーキ装置として、電動モータの駆動に基づいて作動する電動駐車ブレーキ機能が付属するホイールシリンダを用いたブレーキ装置が知られている。具体的には、電動駐車ブレーキ付液圧ブレーキ(例えば、特許文献1参照)、電動駐車ブレーキ付電動ブレーキ(例えば、特許文献2参照)、液圧付加式電動駐車ブレーキ付ブレーキ(例えば、特許文献3参照)、ケーブルプラー等を用いたケーブル式電動駐車ブレーキ付ブレーキ(例えば、特許文献4参照)等を用いた種々のブレーキ装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−169248号公報
【特許文献2】特開2010−58788号公報
【特許文献3】特開2010−236656号公報
【特許文献4】特開2008−239006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術による電動駐車ブレーキ機能付のブレーキ装置は、車両の左側の車輪と右側の車輪とに同じクランプ力(ブレーキパッドをディスクロータに押付ける力)を発生させて車両停止状態を維持するように構成している。この場合、例えば左側の車輪と右側の車輪とで異なる摩擦係数(μ)の路面、所謂スプリットμ路面の勾配路に駐車した場合に、低μ側で車輪がスリップして車両のずり下がりが起こる可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、車両の駐車場所がスプリットμ路面であるか否かを判定できるブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明によるブレーキ装置は、車両の車輪毎に設けられ、該車輪と共に回転する制動部材に当接可能な摩擦部材を前記制動部材に押し当てる押圧部材を有するホイールシリンダと、電動モータの回転力により前記ホイールシリンダの前記押圧部材と同方向に推進可能な推進部材と、前記制動部材に前記摩擦部材が当接している状態における前記推進部材の位置を保持する保持機構と、前記電動モータの駆動を制御して車両を停車状態とする制御手段と、を有し、前記各ホイールシリンダには、前記制動部材に前記摩擦部材が当接している状態におけるブレーキ力を検出する検出手段を設け、前記制御手段は、勾配路での停車状態時に、前記各検出手段に基づいて検出するブレーキ力によって前記各車輪が接地する路面が摩擦係数の相違する路面であることを判定する構成としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の駐車場所がスプリットμ路面であるか否かを判定できるので、車両のずり下がりが起こる前に対処を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態によるブレーキ装置が搭載された車両の概念図である。
【図2】図1中の電動駐車ブレーキ付ディスクブレーキをアウタ側からみた正面図である。
【図3】図2に示す電動駐車ブレーキ付ディスクブレーキをインナ側からみた背面図である。
【図4】図1中の駐車ブレーキ用コントローラによる制御内容を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態によるブレーキ装置を、4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0010】
図1において、車両のボディを構成する車体1の下側には、4個の車輪、例えば左,右の前輪2と左,右の後輪3とが設けられている。これらの各前輪2および各後輪3には、それぞれ一体に回転するディスクロータ4が設けられている。即ち、各前輪2は、液圧式で駐車ブレーキが付いていないディスクブレーキ5を用いて各ディスクロータ4を挟持し、各後輪3は、後述する液圧式で電動駐車ブレーキ付のディスクブレーキ21を用いて各ディスクロータ4を挟持することにより、車輪(各前輪2および各後輪3)毎に制動力が付与されるものである。
【0011】
6は車体1のフロントボード側に設けられたブレーキペダルで、該ブレーキペダル6は、運転者がブレーキ操作時に踏込み操作するものである。ブレーキペダル6の踏込み操作は、その踏力を補助する倍力装置7を介してマスタシリンダ8に伝達され、マスタシリンダ8に液圧を発生させる。
【0012】
マスタリンダ8に発生した液圧は、シリンダ側液圧配管9、液圧供給装置10、ブレーキ側液圧配管11を介して各ディスクブレーキ5,21に分配、供給され、これにより制動力が付与される。液圧供給装置10は、液圧ポンプ、制御弁等(いずれも図示せず)を含んで構成されている。
【0013】
液圧供給装置10は、液圧供給装置用コントローラ12によって液圧ポンプ等から各ディスクブレーキ5,21に供給する液圧を制御することにより、例えば倍力制御、制動分配制御、ブレーキアシスト制御、アンチロック制御、トラクション制御、車両安定化制御、坂道発進補助制御等のブレーキ制御を実行する。なお、マスタシリンダ8と液圧供給装置10の液圧ポンプは、ブレーキ液が収容されるリザーバ13に接続されている。
【0014】
液圧供給装置用コントローラ12は、マイクロコンピュータ等によって構成され、バッテリ14からの電力が電源ライン15を通じて給電される。液圧供給装置用コントローラ12は、図1に示すように、入力側が車両データバス16等に接続され、出力側は液圧供給装置10に電源ライン15と車両データバス16とを介して接続されている。
【0015】
車両データバス16は、車体1に搭載されたシリアル通信部としてのCANを含んで構成され、車両に搭載された多数の電子機器、液圧供給装置用コントローラ12、後述の駐車ブレーキ用コントローラ38等との間で車載向けの多重通信を行うものである。この場合、車両データバス16に送られる車両運転情報としては、例えば操舵角センサ、アクセルセンサ、ブレーキセンサ、液圧センサ、車輪速センサ、傾斜センサ(いずれも図示せず)からの検出信号等の情報、さらには、後述する歪センサ37等からの検出信号(情報)が挙げられる。
【0016】
運転席(図示せず)の近傍にはパーキングスイッチ17が設けられており、運転者がパーキングスイッチ17を操作したときは、後述の駐車ブレーキ用コントローラ38から出力される制御信号(後述の電動モータ32への給電)により後輪3側のディスクブレーキ21が駐車ブレーキとして作動する。
【0017】
次に、後輪3側に設けられる電動駐車ブレーキ付のディスクブレーキ21の構造について、図2および図3を参照しつつ説明する。
【0018】
即ち、本実施の形態のブレーキ装置に用いられるディスクブレーキ21は、電動式の駐車ブレーキ機構31が付属した液圧式のディスクブレーキとして構成されたもので、後述のブレーキ本体22と、駐車ブレーキ機構31とを有している。
【0019】
22は車両の車輪毎、具体的には、左側の後輪3と右側の後輪3とにそれぞれ設けられたホイールシリンダとしてのブレーキ本体で、該ブレーキ本体22は、取付部材23と、キャリパ26とにより大略構成されている。
【0020】
車両の非回転部分に取付けられる取付部材(キャリア)23は、後述するキャリパ26と共にブレーキ本体22を構成するものである。取付部材23は、ディスクロータ4の回転方向(以下、ディスク周方向という)に離間してディスクロータ4の外周を跨ぐようにディスクロータ4の軸方向(以下、ディスク軸方向という)に延びた一対の腕部23Aと、該各腕部23Aの基端側を一体化するように連結して設けられ、ディスクロータ4のインナ側となる位置で車両の非回転部分に固定される厚肉の支承部23B等とを含んで構成されている。
【0021】
また、取付部材23には、ディスクロータ4のアウタ側となる位置で各腕部23Aの先端側を互いに連結する補強ビーム23Cが一体に形成されている。これにより、取付部材23の各腕部23Aの間は、ディスクロータ4のインナ側で支承部23Bにより一体的に連結されると共に、アウタ側で補強ビーム23Cにより一体的に連結されている。
【0022】
取付部材23の支承部23Bには、取付部材23を車両の非回転部分に固定するボルト(図示せず)を挿通するための取付孔23Dが設けられている。また、支承部23Bの上面で取付孔23Dの近傍には、後述する歪センサ37が設置されている。
【0023】
取付部材23の各腕部23Aは、ディスクロータ4の軸方向両側に配置されたインナ側のブレーキパッド24とアウタ側のブレーキパッド25とをディスク軸方向にそれぞれ移動可能に支持している。摩擦部材としてのブレーキパッド24,25は、後輪3と共に回転する制動部材としてのディスクロータ4に当接可能なもので、後述のキャリパ26によりディスクロータ4の両面に向けて押圧されることにより、ディスクロータ4の回転を制動する。
【0024】
ここで、ブレーキパッド24,25は、裏板24A,25Aと、該裏板24A,25Aの表面側に固着して設けられた摩擦材からなるライニング(図示せず)と含んで構成されている。裏板24A,25Aは、例えば金属板、合成樹脂板等の剛性を有した板材を用いて、ディスクロータ4の周方向に扇形状をなして延びる形状に形成されている。
【0025】
ディスクロータ4の外周側を跨ぐように配置されたキャリパ26は、取付部材23と共にブレーキ本体22を構成するものである。キャリパ26は、内部に後述するピストン29を有し、取付部材23の腕部23Aに対してディスクロータ4の軸方向に沿って移動可能に支持されている。
【0026】
キャリパ26は、ディスクロータ4のインナ側に設けられたインナ脚部26Aと、取付部材23の各腕部23A間でディスクロータ4の外周側を跨ぐようにインナ脚部26Aからディスクロータ4のアウタ側へと延設されたブリッジ部26Bと、該ブリッジ部26Bの先端側であるアウタ側からディスクロータ4の径方向内向きに延び、先端側が二又状の爪部となったアウタ脚部26Cとにより構成されている。
【0027】
キャリパ26のインナ脚部26Aには、ブレーキ操作時に液圧供給装置10を通じてブレーキ液圧が供給されるシリンダ26Dが設けられ、該シリンダ26D内には後述のピストン29が摺動可能に挿嵌されている。また、インナ脚部26Aには、ディスクロータ4の周方向に突出して一対のピン取付部26Eが一体に設けられている。これら各ピン取付部26Eは、摺動ピン27を介してキャリパ26全体を取付部材23の各腕部23Aに対してディスク軸方向に摺動可能に支持させるものである。
【0028】
キャリパ26のアウタ脚部26Cは、シム板28を挟んでアウタ側のブレーキパッド25に対向配置されるようになっている。キャリパ26のインナ脚部26Aには、押圧部材としてのピストン29が設けられている。このピストン29は、有底筒状体として形成され、インナ脚部26Aのシリンダ26D内に摺動可能に挿嵌されている。ピストン29は、インナ脚部26Aのシリンダ26D内に液圧供給装置10を通じてブレーキ液圧が供給されると、このときの液圧力でディスクロータ4側に向けてディスク軸方向に摺動変位され、シム板30を介してインナ側のブレーキパッド24をディスクロータ4の側面に押し当てる(押圧する)ものである。
【0029】
キャリパ26のインナ側には、電動モータ32の駆動に基づいて作動する(ピストン29を押圧する)駐車ブレーキ機構31が設けられている。この駐車ブレーキ機構31は、電動モータ32、推進部材35、保持機構36、歪センサ37、駐車ブレーキ用コントローラ38等を有している。
【0030】
電動モータ32は、駐車ブレーキ用コントローラ38の指令(制御信号、給電)に基づいて回転するもので、キャリパ26のインナ側に固定されたケース33内に設けられている。電動モータ32は、ステータ、ロータ等(いずれも図示せず)を内蔵し、ロータの回転が、該ロータと一体回転する回転軸32A、減速機構34、回転直動変換機構(図示せず)等を介して推進部材35に直線運動として伝達される。これにより、ピストン29をディスクロータ4に向けて駆動(押圧)する構成となっている。
【0031】
ここで、減速機構34は、電動モータ32と回転直動変換機構との間に設けられ、電動モータ32の回転を所定の減速比で減速してモータトルクを増大させて回転直動変換機構に伝達するものである。回転直動変換機構は、減速機構34を介して伝達された電動モータ32の回転を直線運動、即ち、ピストン29の摺動方向(軸方向)の変位に変換するものである。回転直動変換機構は、例えばボールランプ機構、ボールネジ機構、ローラランプ機構、精密ローラネジ機構、台形ネジ機構等により構成することができる。
【0032】
推進部材35は、電動モータ32の回転力によりピストン29と同方向に推進可能な回転直動変換機構からなり、例えばピストン29を押圧するプッシュロッド等を推進する、ねじ機構やボールねじ機構により構成することができる。推進部材35は、駐車ブレーキの作動時に、保持機構36により制動状態が保持されるようになっている。
【0033】
保持機構36は、ディスクロータ4にブレーキパッド24,25が当接している状態における推進部材35の位置を保持するものである。保持機構36は、例えばラチェット機構等の係合に基づいて推進部材35の位置を保持する構成や、台形ねじ等の摩擦により推進部材35の位置を保持する不可逆ねじ構成等を採用することができる。保持機構36は、例えば電動モータ32に対する給電を停止したときにおける推進部材35の位置を保持できるようにするものである。
【0034】
37はブレーキ本体22を構成する取付部材23に設けられた検出手段としての歪センサで、該歪センサ37は、図3に示すように、取付部材23の支承部23Bの上面で取付孔23Dの近傍に取付けられている。歪センサ37は、ディスクロータ4にブレーキパッド24,25が当接している状態におけるブレーキ力を検出するためのものである。
【0035】
即ち、駐車ブレーキの作動時に、ブレーキ本体22には、路面と後輪3との間に作用するブレーキ力(の反力)が加わり、ブレーキ本体22は、このブレーキ力に応じて歪む(変形する)。このブレーキ本体22の歪の大きさは、ブレーキ力の大きさと相関関係を有する。そこで、歪センサ37は、ブレーキ本体22を構成する取付部材23の歪を測定することにより、ディスクブレーキ21のブレーキ力を検出するように構成している。
【0036】
ここで、本実施の形態のよる検出手段としての歪センサ37について詳述する。本実施の形態に示す歪センサ37としては、昨今開発された半導体歪ゲージを用いているが、これに限らず、従来から知られている歪ゲージを用いてもよい。
【0037】
まず、従来から知られている歪ゲージは、Cu−Ni系合金やNi−Cr系合金の金属薄膜の配線パターンを、可撓性のあるポリイミドやエポキシ樹脂フィルムで覆った構造であり、歪ゲージを被測定物に接着剤で接着して使用するもので、金属薄膜が歪を受けて変形したときの抵抗変化から、歪量を算出するものである。また、金属薄膜の歪ゲージでは、抵抗変化が小さいため、得られる電気信号を増幅する必要があり、そのため外部にアンプが必要となる。
【0038】
これに対し、本実施の形態に示す歪センサ37としての半導体歪ゲージは、検知部を金属薄膜ではなく、シリコン等の半導体に不純物をドープして形成した半導体ピエゾ抵抗を利用したものである。半導体歪ゲージは、歪に対する抵抗変化率が金属薄膜を用いた従前の歪ゲージの数十倍と大きく、微小な歪、例えば、1με程度の歪を測定することが可能である。また、半導体歪ゲージは、抵抗変化が大きいため、得られた電気信号を外部のアンプを用いずに使用することもでき、さらには、半導体歪ゲージの数ミリ角のチップにアンプ回路や温度センサおよび温度補償回路、オフセット除去回路等を作りこむことも可能である。さらには、無線回路等を設けて、非接触でデータを取出すことも可能である。
【0039】
この半導体歪ゲージは、被測定物に接着剤や金属接合により固定することも可能であり、また、半導体歪ゲージを金属板に対し、スポット溶接により固定することも可能である。
【0040】
本実施の形態では、半導体歪ゲージを用いているので、歪量の測定精度が高く、取付スペースも少なくて済むので好ましい。しかしながら、測定精度や取付スペースが許されれば、従来から知られている歪ゲージを用いてもよい。
【0041】
何れにしても、本実施の形態では、上述のような歪センサ37は、ブレーキ本体22を構成する取付部材23の支承部23Bに取付けられている。そして、歪センサ37は、ディスクブレーキ21のブレーキ力に応じて変形する支承部23Bの歪を検出し、その検出信号をセンサ線37Aを介して後述の駐車ブレーキ用コントローラ38に出力する構成となっている。
【0042】
この場合、歪センサ37は、取付部材23の支承部23Bのうち、ブレーキ力によって撓み量が最も大きくなる部位、即ち、支承部23Bに生じる曲げモーメントが最大になる部位である支承部23Bの上面で取付孔23Dの近傍に配置する構成となっている。これにより、取付部材23の支承部23Bの歪と相関関係を有するブレーキ力を精度よく求めることができ、検出精度、制御性能の向上を図ることができる。
【0043】
電動モータ32の制御を行う駐車ブレーキ用コントローラ38は、マイクロコンピュータ等によって構成され、バッテリ14からの電力が電源ライン15を通じて給電される。駐車ブレーキ用コントローラ38は、電動モータ32の駆動を制御(例えば電動モータ32への給電を制御)して車両を停車状態とするものである。この駐車ブレーキ用コントローラ38は、図1に示すように、入力側がパーキングスイッチ17、歪センサ37等に接続され、出力側は電動モータ32等に接続されている。また、駐車ブレーキ用コントローラ38には、電源ライン15と車両データバス16とが接続されている。
【0044】
駐車ブレーキ用コントローラ38は、車両の運転者がパーキングスイッチ17を操作したときに、該パーキングスイッチ17から出力される信号(ON・OFF信号)に基づいて電動モータ32を駆動し、ディスクブレーキ21を駐車ブレーキとして作動させるものである。また、駐車ブレーキ用コントローラ38は、勾配路での停車状態時に、歪センサ37に基づいて検出する左,右のディスクブレーキ21のブレーキ力によって、左側の後輪3と右側の後輪3とが接地する路面が摩擦係数の相違する路面であるか否かを判定する機能を有している。
【0045】
このために、駐車ブレーキ用コントローラ38は、ROM、RAM等からなる記憶部38Aを有し、この記憶部38Aには、後述の図4に示す処理プログラム、即ち、駐車ブレーキの作動に用いる処理プログラム等が格納されている。そして、駐車ブレーキ用コントローラ38は、図4の処理プログラムに従って、駐車ブレーキの作動時に、左側の後輪3と右側の後輪3とが接地する路面が摩擦係数μの相違する路面、所謂スプリットμ路面であるか否かを判定する。
【0046】
具体的には、駐車ブレーキ用コントローラ38は、左後輪3のディスクブレーキ21のブレーキ力Blと右後輪3のディスクブレーキ21のブレーキ力Brとを比較し、例えばこれら左,右のブレーキ力Bl,Brの差が予め設定した閾値を超える場合に、左側の後輪3と右側の後輪3とがスプリットμ路面の勾配路に駐車されていると判定する。そして、駐車ブレーキ用コントローラ38は、スプリットμ路面の勾配路に駐車されていると判定された場合に、運転者に警告音や警告表示を発する等の後述するスプリットμ路面対応処理を行う。
【0047】
本実施の形態による電動駐車ブレーキ付のディスクブレーキ21および4輪自動車のブレーキ装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0048】
車両の運転者がブレーキペダルを踏込み操作すると、その踏力が倍力装置7を介してマスタシリンダ8に伝達され、マスタシリンダ8に液圧を発生させる。マスタリンダ8に発生した液圧は、シリンダ側液圧配管9、液圧供給装置10、ブレーキ側液圧配管11を介して各ディスクブレーキ5,21に分配、供給され、これにより制動力が付与される。
【0049】
この場合、後輪3側のディスクブレーキ21について説明すると、キャリパ26の各シリンダ26D内にブレーキ液圧が供給され、ピストン29がインナ側のブレーキパッド24に向けて摺動変位する。これにより、ピストン29は、シム板30を介してブレーキパッド24をディスクロータ4に押圧し、このときの反力によってキャリパ26全体が取付部材23の腕部23Aに対してインナ側に摺動変位する。この結果、キャリパ26のアウタ脚部26Cは、シム板28を介してブレーキパッド25をディスクロータ4に押圧するようになるので、ブレーキパッド24,25によってディスクロータ4に両側から押圧力を加えて、車両へ制動力を付与することができる。一方、ブレーキ操作を解除したときには、ピストン29への液圧供給が停止されることにより、インナ側とアウタ側のブレーキパッド24,25がディスクロータ4から離間し、再び非制動状態に復帰する。
【0050】
また、運転者が駐車ブレーキを作動させるべくパーキングスイッチ17を操作すると、駐車ブレーキ用コントローラ38から電動モータ32に給電が行われ、電動モータ32の回転軸32Aが回転する。この回転が、減速機構34、回転直動変換機構を介して推進部材35に直線運動として伝達され、該推進部材35によりピストン29がディスクロータ4に向けて摺動変位する。このとき、推進部材35は保持機構36により制動状態が保持され、後輪3側のディスクブレーキ21は駐車ブレーキとして作動される。
【0051】
一方、運転者が駐車ブレーキを解除すべくパーキングスイッチ17を操作すると、駐車ブレーキ用コントローラ38から電動モータ32に給電が行われ、電動モータ32の回転軸32Aが、例えば駐車ブレーキの作動時とは逆方向に回転する。このとき、推進部材35は、保持機構36による保持が解除されると共に、電動モータ32の回転に基づいてピストン29から離れる方向に変位し、駐車ブレーキ(ディスクブレーキ21)の制動が解除される。
【0052】
ところで、従来技術による電動駐車ブレーキ機能付のブレーキ装置は、車両の左側の車輪と右側の車輪とに同じクランプ力を発生させて車両停止状態を維持するように構成している。即ち、従来技術による電動駐車ブレーキ機能付のブレーキ装置は、ブレーキパッドをディスクロータに押付ける力であるクランプ力を、車両の左側の車輪と右側の車輪とで同じにしている。この場合、例えば左側の車輪と右側の車輪とで異なる摩擦係数(μ)の路面、所謂スプリットμ路面の勾配路に駐車した場合に、低μ側で車輪がスリップして車両のずり下がりが起こる可能性がある。
【0053】
そこで、本実施の形態では、車両の駐車場所がスプリットμ路面であるか否かを判定すると共に、その判定結果がスプリットμ路面である場合に、スプリットμ路面に対応した処理(スプリットμ路面対応処理)を行う構成としている。具体的には、駐車ブレーキ用コントローラ38により、図4に示す処理を実行することにより、スプリットμ路面であるか否かの判定処理とスプリットμ路面対応処理とを行う構成としている。
【0054】
即ち、車両のエンジン始動に伴う電力供給を受けて図4の処理動作がスタートすると、ステップ1では、パーキングスイッチ17がONであるか否かを判定する。このステップ1で、「NO」、即ち、パーキングスイッチ17がOFFであると判定された場合は、リターンを介してスタートに戻り、ステップ1の処理を繰り返す。
【0055】
一方、ステップ1で、「YES」、即ち、パーキングスイッチ17がONであると判定された場合は、ステップ2に進み、電動モータ32を駆動する。そして、続くステップ3に進み、ディスクブレーキ21で所定のクランプ力Fが発生したか否かを判定する。この判定は、所定のクランプ力Fを発生させるために要する電流値Aが電動モータ32に出力されたか否かにより判定することができる。
【0056】
このステップ3で、「NO」、即ち、所定のクランプ力Fが発生していないと判定された場合は、ステップ3に戻り、このステップ3の処理を繰り返す。このステップ3の処理は、「YES」と判定されるまで行われる。
【0057】
ステップ3で、「YES」、即ち、所定のクランプ力Fが発生していると判定された場合は、ステップ4に進み、電動モータ32の駆動を停止する。これにより、左後輪3のディスクブレーキ21と右後輪3のディスクブレーキ21は、同じクランプ力Fが発生する。
【0058】
このステップ4で、電動モータ32の駆動を停止したならば、ステップ5に進む。このステップ5では、左後輪3側のディスクブレーキ21のブレーキ力Blと右後輪3側のディスクブレーキ21のブレーキ力Brを測定する。即ち、左,右のディスクブレーキ21にそれぞれ取付けられた歪センサ37の検出信号に基づいて、取付部材23の歪と相関関係を有するブレーキ力Bl,Brを求める。
【0059】
ここで、ブレーキ力、即ち、路面と後輪3との間に作用する力(の反力)をBとし、クランプ力、即ち、ブレーキパッド24,25をディスクロータ4に押付ける力をFとし、ブレーキパッド24,25とディスクロータ4との間の摩擦係数をμpとし、キャリパの有効半径をrとし、車輪(タイヤ)の有効半径をRとした場合に、一車輪当たりのブレーキ力Bは、下記の数1式で表すことができる。
【0060】
【数1】

【0061】
本実施の形態の場合は、左後輪3側のディスクブレーキ21のブレーキ力Blと右後輪3側のディスクブレーキ21のブレーキ力Brを、歪センサ37により直接的に検出(測定)することができる。一方、クランプ力Fは、このクランプ力Fを発生させるために電動モータ32に出力される電流値Aから求めることができる。このため、後輪3が接地している路面の状態を、次のようにして推定することができる。
【0062】
即ち、電動モータ32に出力される電流値Aから求められるクランプ力Fから上記の数1式を用いて推定されるブレーキ力を推定ブレーキ力Baとし、歪センサ37の検出信号に基づいて求められるブレーキ力を実ブレーキ力Bbとした場合、推定ブレーキ力Baと実ブレーキ力Bbとが略同じ(Ba≒Bb)であれば、車輪(タイヤ)と路面との間は滑らない状態であることが推定できる。一方、推定ブレーキ力Baよりも実ブレーキ力Bbが小さい場合(Ba>Bb)であれば、車輪(タイヤ)と路面との間が滑る状態であることが推定できる。
【0063】
何れにしても、ステップ5で、左後輪3側のディスクブレーキ21のブレーキ力Blと右後輪3側のディスクブレーキ21のブレーキ力Brを測定したならば、続くステップ6で、車両の駐車場所がスプリットμ路面であるか否かを判定する。具体的には、左後輪3側のディスクブレーキ21のブレーキ力Blと右後輪3側のディスクブレーキ21のブレーキ力をBrとに予め設定した閾値を超える差があるか否かを判定する。
【0064】
即ち、本実施の形態の場合は、上述した数1式を用いて後輪3が接地している路面の状態を推定する処理は行わず、ステップ6で、左,右のブレーキ力Bl,Brを比較し、これら左,右のブレーキ力Bl,Brに(閾値を超える)差がある場合に、後輪3が接地している路面がスプリットμ路面であると判定するように構成している。なお、閾値は、例えば0に設定してもよい(少しでも差があればスプリットμ路面であると判定するようにしてもよい)が、スプリットμ路面であるか否かを適切に判定できるような不感帯としての閾値を設定することもできる。このような閾値は、例えば計算や実験等により予め求める。
【0065】
ステップ6で、「NO」、即ち、左,右のブレーキ力Bl,Brに(閾値を超える)差がないと判定された場合は、左,右の後輪3がほぼ同じ摩擦係数の路面にそれぞれ接地していると推定できるため、ステップ7を介することなく、リターンに進む。そして、スタートを介して、ステップ1以降の処理を繰返す。
【0066】
一方、ステップ6で、「YES」、即ち、左,右のブレーキ力Bl,Brに(閾値を超える)差があると判定された場合は、左,右の後輪3が接地している路面がスプリットμ路面であると推定できるため、ステップ7に進み、スプリットμ路面対応処理を行う。
【0067】
このスプリットμ路面対応処理は、例えば、下記の(1),(2),(3)のいずれか一の処理を行うか、あるいは、(1)と(2)の処理、あるいは、(1)と(3)の処理を行うものである。
【0068】
(1).駐車ブレーキ用コントローラ38からの指令により運転席近傍の警報器(図示せず)等から警告音や警告表示を発する。これにより、運転者に対して駐車場所を変更するように注意を促すことができ、車両のずり下がりを防止することができる。
【0069】
(2).ブレーキ力が小さい側、即ち、路面の摩擦係数が小さい側の後輪3のディスクブレーキ21のクランプ力を増大し、これにより不足するブレーキ力を補う。
【0070】
具体的には、前記数1式を用いて、ブレーキ力が小さい側の路面の摩擦係数μp_lowを求める。即ち、電動モータ32に出力される電流値Aから求められるクランプ力Fと、歪センサ37の検出信号に基づいて求められる実ブレーキ力Bbとから、前記数1式を用いて摩擦係数μp_lowを求める。そして、この摩擦係数μp_lowの路面で、ブレーキ力が大きい側のブレーキ力と同等のブレーキ力、あるいは、目標となる目標ブレーキ力(例えば、標準路面の摩擦係数μp_stdで標準クランプ力F_stdを付与した場合におけるブレーキ力)と同等のブレーキ力を発生させるために必要な必要クランプ力Fn1を、前記数1式を用いて求める。
【0071】
次いで、この必要クランプ力Fn1が、路面の摩擦係数が小さい側の後輪3のディスクブレーキ21で発生するように、電動モータ32に上記必要クランプ力Fn1に対応する電流値An1を出力する。これにより、路面の摩擦係数が小さい側の後輪3のディスクブレーキ21のクランプ力を増大して、不足するブレーキ力を補うことができ、車両のずり下がりを防止することができる。
【0072】
(3).ブレーキ力が大きい側、即ち、路面の摩擦係数が大きい側の後輪3のディスクブレーキ21のクランプ力を増大し、これにより車両全体としてのブレーキ力を増大させる。
【0073】
具体的には、不足するブレーキ力ΔBを、下記の数2式により算出する。なお、下記の数2式中、B_targetは、目標とするブレーキ力(例えば、標準路面の摩擦係数μp_stdで標準クランプ力F_stdを付与した場合におけるブレーキ力)であり、B_lowは、路面の摩擦係数が小さい側のディスクブレーキ21のブレーキ力であり、B_highは、路面の摩擦係数が小さい側のディスクブレーキ21のブレーキ力である。
【0074】
【数2】

【0075】
一方、前記数1式を用いて、ブレーキ力が大きい側の路面の摩擦係数μp_highを求める。即ち、電動モータ32に出力される電流値Aから求められるクランプ力Fと、歪センサ37の検出信号に基づいて求められる実ブレーキ力Bbとから、前記数1式を用いて摩擦係数μp_highを求める。次いで、この摩擦係数μp_highの路面で、B_highとΔBとを足したブレーキ力(B_high+ΔB)を発生させるために必要な必要クランプ力Fn2を、前記数1式を用いて求める。そして、この必要クランプ力Fn2が、路面の摩擦係数が大きい側の後輪3のディスクブレーキ21で発生するように、電動モータ32に上記必要クランプ力Fn2に対応する電流値An2を出力する。これにより、路面の摩擦係数が大きい側の後輪3のディスクブレーキ21のクランプ力を増大して、車両全体のブレーキ力を増大させることができ、車両のずり下がりを防止することができる。
【0076】
さらに、スプリットμ路面対応処理として、駐車ブレーキの解除時に、路面の摩擦係数が大きい側の後輪3のディスクブレーキ21の解除を、路面の摩擦係数が小さい側の後輪3のディスクブレーキ21の解除よりも遅らせることもできる。この場合には、車両の発進時等の駐車ブレーキの解除時に、車両のずり下がりを抑制することができ、車両を安定して(迅速に)発進させることができる。
【0077】
本実施の形態によれば、歪センサ37により左,右の後輪3のブレーキディスク21のブレーキ力Bl,Brを検出する。このため、車両の停車時に、左,右の後輪3のブレーキディスク21のブレーキ力Bl,Brを安定して検出することができる。
【0078】
即ち、例えば車輪の回転速度(車輪速センサの検出信号)に基づいてブレーキ力を検出する場合は、ブレーキ力の検出が車輪の回転時に限られる虞がある。これに対して、本実施の形態の場合は、歪センサ37によりブレーキディスク21の取付部材23の歪に基づいてブレーキ力Bl,Brを検出する(求める)ため、車両の停車時にもブレーキ力Bl,Brを精度よく安定して検出することができる。この場合、歪センサ37は、省電力で小型、高感度で構成することができる。これにより、例えばAC電源を不要にできると共に、省スペース化、制御精度の向上を図ることができる。
【0079】
また、本実施の形態によれば、左側の後輪3のディスクブレーキ21と右側の後輪3のディスクブレーキ21とで、互いに異なるクランプ力Fを付与できるように構成している。即ち、左,右のディスクブレーキ21毎に、電動モータ32に出力する電流値Aを変化させることにより、互いに異なるクランプ力Fを付与できるようにしている。換言すれば、左,右の車輪(後輪3)でクランプ力Fの負荷を2系統にしている。
【0080】
このため、路面状況(路面の摩擦係数)に応じた適切なクランプ力Fを付与することができる。具体的には、スプリットμ路面の勾配路に停車(駐車)した場合に、例えば路面の摩擦係数が大きい側の後輪3のディスクブレーキ21のクランプ力Fを増大したり、あるいは、路面の摩擦係数が小さい側の後輪3のディスクブレーキ21のクランプ力Fを増大することができる。
【0081】
また、検出されるブレーキ力Bl,Brに応じてディスクブレーキ21のクランプ力Fを調整することができる。即ち、必要に応じてクランプ力Fを増大させたり減少させたりすることができる。このため、例えば十分なブレーキ力Bl,Brが得られるときは、必要に応じてクランプ力Fを小さくすることにより、ブレーキ力Bl,Brが過大になることを抑制することができる。これにより、ディスクブレーキ21の耐久性の向上、電動モータ32の消費電力の低減を図れる。
【0082】
さらに、本実施の形態によれば、車両の駐車場所がスプリットμ路面であるか否かを判定できるので、車両のずり下がりが起こる前に対処を行うことが可能となる。
【0083】
即ち、駐車ブレーキ用コントローラ38による図4のステップ6の処理で、左,右のブレーキ力Bl,Brを比較することにより、後輪3が接地している路面がスプリットμ路面であるか否かを判定する。より具体的には、左,右のブレーキ力Bl,Brに(閾値を超える)差がある場合に、後輪3が接地している路面がスプリットμ路面であると判定するように構成している。このため、スプリットμ路面であるか否かの判定を精度よく安定して行うことができる。
【0084】
さらに、ステップ7で、スプリットμ路面対応処理を行うことにより、運転者にスプリットμ路面に停車(駐車)している旨の注意を促したり、電動モータ32に出力する電流値Aを制御することにより、必要とされるブレーキ力Bが得られるように調整することができる。このため、車両の駐車時に車両のずり下がりが起こることを抑制することができる。
【0085】
なお、上述した実施の形態では、ディスクブレーキ21に電動式の駐車ブレーキ機構31を有する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ドラムブレーキに電動式の駐車ブレーキ機構を有する構成としてもよい。
【0086】
上述した実施の形態では、液圧ブレーキに電動式の駐車ブレーキ機構が付属した電動駐車ブレーキ付液圧ブレーキのブレーキ装置を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば特許文献2に開示されているような、電動ブレーキに駐車ブレーキ機構が付属した電動駐車ブレーキ付電動ブレーキのブレーキ装置に適用してもよい。また、例えば特許文献3に開示されているような、液圧と電動との両方でクランプ力を付与する駐車ブレーキ機構が付属した液圧付加式電動駐車ブレーキ付ブレーキのブレーキ装置に適用してもよい。さらに、例えば特許文献4に開示されているような、電動モータによりケーブルを引っ張ることにより駐車ブレーキを作動させる(ケーブルプラー等用いた)ケーブル式電動駐車ブレーキ付ブレーキのブレーキ装置に適用してもよい。
【0087】
電動駐車ブレーキ付液圧ブレーキや電動駐車ブレーキ付電動ブレーキのブレーキ装置の場合は、例えば左,右の車輪のブレーキ毎に、電動モータに出力する電流値を変化させる(異ならせる)ことにより、左,右の車輪のブレーキに別々の(異なる)クランプ力を負荷することができる。
【0088】
液圧付加式電動駐車ブレーキ付ブレーキのブレーキ装置の場合は、左,右の車輪のブレーキ毎に、例えば液圧を変化させる(異ならせる)ことにより、左,右の車輪のブレーキに別々の(異なる)クランプ力を負荷することができる。
【0089】
ケーブル式電動駐車ブレーキ付ブレーキのブレーキ装置の場合は、左,右の車輪のブレーキ毎に、ケーブルを引っ張る電動モータを設ける構成とし、それぞれの電動モータによるケーブルの引っ張り量を変化させる(異ならせる)ことにより、左,右の車輪のブレーキに別々の(異なる)クランプ力を負荷することができる。
【0090】
上述した実施の形態では、左,右の後輪のブレーキを電動駐車ブレーキ付のブレーキ装置とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、4輪全ての車輪のブレーキを電動駐車ブレーキ付のブレーキ装置とすることもできる。この場合には、左,右の車輪のブレーキ装置だけでなく、前,後の車輪のブレーキ装置のブレーキ力を路面状況に応じて調節することもできる。
【0091】
上述した実施の形態では、歪センサ37を、取付部材23の支承部23Bに取付ける場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、ブレーキ力に応じて変形する部位であれば、取付部材23の補強ビーム23Cやキャリパ26のアウタ脚部26C、ブレーキパッド24,25の裏板24A,25A等にもうけるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0092】
3 後輪(車輪)
4 ディスクローラ(制動部材)
22 ブレーキ本体(ホイールシリンダ)
24,25 摩擦パッド(摩擦部材)
29 ピストン(押圧部材)
32 電動モータ
35 推進部材
36 保持機構
37 歪センサ(検出手段)
38 駐車ブレーキ用コントローラ(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪毎に設けられ、該車輪と共に回転する制動部材に当接可能な摩擦部材を前記制動部材に押し当てる押圧部材を有するホイールシリンダと、
電動モータの回転力により前記ホイールシリンダの前記押圧部材と同方向に推進可能な推進部材と、
前記制動部材に前記摩擦部材が当接している状態における前記推進部材の位置を保持する保持機構と、
前記電動モータの駆動を制御して車両を停車状態とする制御手段と、を有し、
前記各ホイールシリンダには、前記制動部材に前記摩擦部材が当接している状態におけるブレーキ力を検出する検出手段を設け、
前記制御手段は、勾配路での停車状態時に、前記各検出手段に基づいて検出するブレーキ力によって前記各車輪が接地する路面が摩擦係数の相違する路面であることを判定することを特徴とするブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−71643(P2013−71643A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212845(P2011−212845)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】