説明

ブレード雷撃監視装置および雷撃監視システム

【課題】風力発電設備に対し、受雷発生箇所(ブレード)を瞬時に検知して特定することで、保守点検作業効率化や耐雷対策の用に供する落雷情報を収集し易く、低価格で構築可能なブレード落雷検知装置を提供する。さらに、このようなブレード落雷検知装置からの各種情報を管理する雷撃電流監視システムを提供する。
【解決手段】複数のブレード接地線それぞれを貫通するように装着されるセンサ(A)10、センサ(B)11、センサ(C)12から出力される誘起電流を取り込み、演算処理により生成した検出データと、ブレードを特定する特定データと、を関連づけて生成した落雷データを生成して無線送信する検出装置16と、検出装置16から無線送信された無線信号から落雷データを生成して出力する監視装置と、を備えるブレード雷撃監視装置とした。さらに、このようなブレード落雷検知装置からの各種情報を管理する雷撃電流監視システムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電設備に適用されるものであり、風力発電設備の特にブレード雷撃を監視するブレード雷撃監視装置、および、このブレード雷撃監視装置を含む雷撃監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
風力発電設備は、クリーンエネルギーを得られることから近年では普及の途にあり、各地に設置され、又、設置計画も行われている。このような風力発電設備は、風況が良い箇所(強い風が長時間吹く状況にある箇所)に設置されるのが一般的である。
【0003】
ところが、我が国ではこのような風況の良い箇所は、周辺に高い造営物・木等がなく平坦で風通しが良い箇所、具体的には海岸淵に接した広大で開けた地上高い丘のような箇所である。このような箇所に敷設される多くの風力発電設備は、地勢の制約・気象条件に起因し、雷撃を受ける危険に曝されやすい。
【0004】
さらに風力発電設備は、その性質上、強風にも耐え得るように金属材料を用いた堅牢な構造が採用される。さらに、近年の風車の大型化に伴い、その高さも非常に高くなっている。このため、雷雲が発生すると風力発電設備は、巨大な避雷針として機能して直撃雷に見舞われる頻度が高い。そこで、雷撃に対する監視が重要である。
【0005】
このような雷撃監視について、風力発電設備の概略構造とともに図を参照しつつ説明する。図14は風力発電設備の構造図、図15は風力発電設備における従来技術の雷撃監視の説明図、図16は風力発電設備の設置例の説明図である。風力発電設備500は、図14で示すように、塔体510、頂部収容箱520、回転翼530、風向風速計540、避雷針550、基礎560を備える。
【0006】
塔体510は、高さが例えば数十mに達する。このような大型の塔体510を一体に形成することは、製造技術や輸送の観点から難しく、実際は複数(図14に示す従来技術では3本)の鋼管511,512,513を搬入し、これら鋼管511,512,513の開口周縁のフランジ部に設けられている挿通孔にボルトおよびナットを用いて連結部514,515を形成することで構成している。このような構造は、多くの塔体で採用されている。
【0007】
頂部収容箱520は、塔体510の回動支持部(YAW回動機構部)516に取り付けられて風向きに応じて回動するように支持され、その内部には図示しない増速器・発電機等が収容されている。
回転翼530は、ブレード(A)531、ブレード(B)532、ブレード(C)533(図1参照)、ロータヘッド534、ロータ軸535を備え、これら3枚のブレードを保持するロータヘッド534はロータ軸535により一軸として形成され、ロータ軸535は図示しない軸受けにより回動自在に支持されている。回転翼530は、風力に応じて回動し、その回動がロータ軸535に直結される増速器およびこの増速器により回転して発電を行う発電機に伝達されて、発電される。
【0008】
風向風速計540は、頂部収容箱520の上に設備されている。風向風速計540は風向・風速に関する信号を出力し、この信号は風に対する制御(例えば塔体510に対する頂部収容箱520の方位を決定する回動制御)に用いられる。この風に対する制御も、風力発電設備500における様々な制御のうちの一つである。
【0009】
避雷針550は、風向風速計540の保護のため、この風向風速計540の付近に設備されている。現状では、避雷針550は頂部収容箱520に電気的に直接接続され、頂部収容箱520および塔体510を介し、塔体510に電気的に接続された導線が、大地に埋設された接地極(図示せず)に接続されて接地を行っている。
基礎560は、通常鉄筋コンクリート構造の杭基礎・直接基礎などであり、堅牢な構造を有している。塔体510はこの基礎560上に設けられる。
【0010】
このような風力発電設備500の例えばブレード(A)531に落雷があった場合、雷電流はブレード(A)531→ロータヘッド534→ロータ軸535→頂部収容箱520→塔体510→アースという経路を通過することが多い。そこで、図15で示すように、塔体510と基礎560との境目付近となる塔体510の根元に円環状電流センサであるロゴウスキーコイル570を配置する。塔体510からアースへ雷電流が流れてロゴウスキーコイル570を通過したときはこのロゴウスキーコイル570に誘起電流が発生する。そしてこの誘起電流を計測装置580が入力して各種の計測処理を行うことで雷撃を監視している。このような風力発電設備500は、例えば図16で示すような風況の良い箇所(周辺に高い造営物・木等がなく平坦で風通しが良い箇所、具体的には海岸淵に接した広大で開けた地上高い丘のような箇所)に多数設置されて稼働される。
従来技術の風力発電設備500および雷撃監視はこのようなものである。
【0011】
本出願人は、このような風力発電設備の雷撃監視について長年にわたり開発を行っており、耐雷設計や耐量設計の指針とするべく雷撃電流の波高値及び波形その他雷性状を正確に計測できる雷撃電流観測装置に係る発明を特許出願した。そして、この特許出願は、特許文献1(特開2005−062080号公報)に示すように、すでに出願公開されている。
【0012】
この特許文献1に記載された発明に係る雷撃電流観測装置では、鉄塔等の塔体に供する大口径のロゴウスキーコイルを用いて、容易に設置可能とし、ロゴウスキーコイルから取り込んだ雷撃電流を演算処理し、観測端末盤から携帯電話回線を介して遠隔地にあるセンター装置へ正確な雷撃電流データを送信するというものである。
【0013】
また、他の特許文献2には、特に、ブレードの羽が最も高い箇所に位置し、雷撃を受けやすいこともあり、風力発電設備のブレードに対する耐雷保護効果を高めると共に、劣化する耐雷保護効果を回復させるためのメンテナンスを簡便容易に行えるようにする風力発電設備の耐雷保護に係る発明が記載されている。
【0014】
【特許文献1】特開2005−62080号公報([0023]〜[0035],図1、図4〜図7等)
【特許文献2】特開2005−302399号公報([0012],図1〜図3等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特に、雷雲の雲底が300m〜500mと非常に低い、いわゆる冬季雷や、40m秒〜50m秒の間隔で襲来する、いわゆる多重雷の多発地域においては、多くの風力発電設備は、3枚構成ブレードを備えているので、ブレード全体で風車1回転につき3回頂点に位置して直撃雷チャンスが訪れることになり、耐雷無防備なブレード先端部が雷撃を受け易い。それと、ブレードは避雷、耐雷保護手段を手当し難い事情もあり、十分に落雷被害を回避出来ない事態、例えば、受雷後にブレードの目視確認の際に、直付け避雷針ブレードの先端付近前面と後面との刃の板合わせ目箇所にアーク熱膨張で生じた微かな割れ目を見逃し、その後徐々に回転風圧によりブレード先端から亀裂に拡大し、突風や風向きの集中が引き金になって、保守点検前にブレード破壊に至るような不測の事態も懸念される。
【0016】
むしろ、直撃雷で瞬時に破壊されたブレード以外のブレードに対し、目視点検で見逃し易い落雷痕有無を判定出来る計測記録データをとりこみ、受雷発生箇所のブレードを瞬時に検知して特定することで、クラックや受雷様相の早期確認や保守点検の用に供して、落雷被害を最小限に留める方が得策であり、必要に応じて、雷撃電流の波高値及び波形その他雷性状の計測記録データ等多くの落雷データを集積すれば、耐雷対策も確立出来る。
【0017】
先に説明した特許文献1に記載された発明に係る雷撃電流観測装置では、個々のブレードについて落雷を計測するというものではなかった。
また、特許文献2に記載された耐雷保護装置は、チタン合金やカーボンファイバー等高価格材料を加工して特殊形状に成形された避雷突出針、放電球体、導電性放電環その他の部品を多用すると共に、それらを電気的接続処理や避雷導線を通じた接地処理を施してブレード、ハブ、ナセルへの対向配置や着脱自在な装着構成を備える必要があるため、風車自体の価格が嵩み、更に、同一場所(サイト全体)に風車が多数建設される場合、全ての風車に対して耐雷保護手当てを施すことは、莫大な建設コストと保守点検費用を要し、費用が嵩む割に雷撃に対するブレードの十分な保護効果を得られるとも限らず、その解決方法に苦慮しているのが現状である。
【0018】
この種の雷撃電流観測装置乃至は計測装置では、装置をより一層普及させるために更なる小形化、低価格化が求められており、風力発電設備に対する受雷様相の早期の確認や保守点検のため、落雷情報のうち、雷撃事実あるいは雷撃を受けたブレードを特定するだけの計測記録データ種類を絞り込むことで機能や構成を簡素化させ、これによってコストを低減させたいという要請も強くなっている。
また、通常の雷撃電流監視に加えブレード特定もできるようにして、より詳細な計測ができるようにしたいという要請も強くなっている。
【0019】
そこで本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、風力発電設備のような可動体や回転体を備えた工作物に対し、受雷発生箇所(ブレード)を瞬時に検知して特定することで、保守点検作業効率化や耐雷対策の用に供する落雷情報を収集し易く、低価格で構築可能なブレード落雷検知装置を提供することにある。
さらに、このようなブレード落雷検知装置からの各種情報を管理する雷撃電流監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の請求項1に係るブレード落雷検知装置は、
風車を構成する複数のブレードと、複数のブレードを保持するロータヘッドと、ロータヘッドを軸支するロータ軸と、ロータ軸を回動自在に支持し、ロータ軸に直結される増速器およびこの増速器により回転して発電を行う発電機を収容する頂部収容箱と、頂部収容箱を先端で支持する塔体と、発電を制御する制御システムと、を備える風力発電設備におけるブレード雷撃について監視するブレード雷撃監視装置であって、
ブレードを接地するためにブレード毎に形成される雷撃電流導電路別に貫通するように装着される円環状電流センサと、
円環状電流センサに接続され、ある円環状電流センサから出力される誘起電流を取り込み、演算処理により生成した検出データと、ブレードを特定する特定データと、を関連づけて生成した落雷データを生成して無線送信する検出装置と、
検出装置から無線送信された無線信号から落雷データを生成して出力する監視装置と、
を備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項2に係るブレード落雷検知装置は、
請求項1記載のブレード雷撃監視装置において、
前記円環状電流センサはブレード毎に複数備え、
前記検出装置は一個であって複数の前記円環状電流センサが接続され、
前記監視装置は一個であって前記検出装置と無線通信を行うことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項3に係るブレード雷撃監視装置は、
請求項1記載のブレード雷撃監視装置において、
前記円環状電流センサはブレード毎に複数備え、
前記検出装置は前記円環状電流センサ毎に複数個備えて一個の前記円環状電流センサに一個の前記検出装置が接続され、
前記監視装置は一個であって前記複数の前記検出装置と無線通信を行うことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項4に係るブレード雷撃監視装置は、
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のブレード雷撃監視装置において、
前記落雷データは落雷があったことを示す検出データおよび落雷が有ったブレードを特定するデータであることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項5に係るブレード雷撃監視装置は、
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のブレード雷撃監視装置において、
前記落雷データは落雷が有ったブレードを流れた落雷電流の値を示す検出データおよび落雷が有ったブレードを特定するデータであることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の請求項6に係るブレード雷撃監視装置は、
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のブレード雷撃監視装置において、
前記円環状電流センサは、雷撃電流導電路のうちブレードとロータヘッドとを電気的に接続するブレード接地線を貫通するように装着されることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項7に係るブレード雷撃監視装置は、
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のブレード雷撃監視装置において、
ロータヘッドと、主要機器を内蔵し主軸を介してロータヘッドを支える頂部収容箱と、の両者間を電気的に結合するスリップリング装置を備え、
主要機器を内蔵するナセルからスリップリング装置を介して検出装置に電源供給することを特徴とする。
【0027】
また、本発明の請求項8に係るブレード雷撃監視装置は、
請求項1〜請求項7の何れか一項に記載のブレード雷撃監視装置において、
前記円環状電流センサは、ロゴウスキーコイルであることを特徴とする。
【0028】
本発明の請求項9に係る雷撃監視システムは、
複数の風力発電設備に対して雷撃の監視を行う雷撃監視システムであって、
複数の風力発電設備にそれぞれ設置される、請求項1〜請求項8の何れか一項に記載された複数のブレード雷撃監視装置と、
複数のブレード雷撃監視装置にメディアコンバータを介して接続されて雷データを伝送する光ケーブルと、
光ケーブルに接続されて雷データを受信する遠隔監視用コンピュータと、
を備え、
ブレード雷撃監視装置から送信される落雷データを遠隔地にある遠隔監視用コンピュータで受信してブレード落雷があったことを認識することを特徴とする。
【0029】
また、本発明の請求項10に係る雷撃監視システムは、
請求項9に記載の雷撃監視システムにおいて、
前記複数の風力発電設備うち一部または全部の風力発電設備では、
塔体の根元部が貫通するように装着され、この塔体の根元部の外周面と絶縁体を介して内接する円環状電流センサと、
円環状電流センサから出力される誘起電流が入力されたときに演算処理を行って計測データを算出登録する計測装置と、
を備える雷撃電流監視装置が、ブレード雷撃監視装置とともに設置されることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の請求項11に係る雷撃監視システムは、
請求項10に記載の雷撃監視システムにおいて、
前記計測装置が算出した計測データを収集する収集装置を備え、収集装置が収集した計測データを含む通信データが、メディアコンバータ、光ケーブルを介して遠隔監視用コンピュータへ送信されることを特徴とする。
【0031】
また、本発明の請求項12に係る雷撃監視システムは、
請求項11に記載の雷撃監視システムにおいて、
前記収集装置は、
計測装置からの計測データを収集してデータ処理する処理手段と、
データ処理された計測データを表示するWebページデータを生成する生成手段と、
を備え、
光ケーブルに接続される遠隔地の遠隔監視用コンピュータのブラウザが前記収集装置へリクエストしたとき、前記収集装置は、Webページデータを含む通信データに変換した上で送信し、遠隔監視用コンピュータは、通信データからWebページデータを読み出してWebページを表示させることを特徴とする。
【0032】
また、本発明の請求項13に係る雷撃監視システムは、
請求項9〜請求項12の何れか一項に記載の雷撃監視システムにおいて、
前記雷撃電流監視装置は、計測データを着脱可能な記憶媒体に登録することを特徴とする。
【0033】
また、本発明の請求項14に係る雷撃監視システムは、
請求項1〜請求項13の何れか一項に記載の雷撃監視システムにおいて、
遠隔監視用コンピュータは制御コマンドを出力し、
光ケーブルは制御コマンドを伝達し、
前記光ケーブルに接続され、電気通信信号と光通信信号との変換を行うメディアコンバータと、
前記メディアコンバータに接続され、遠隔監視用コンピュータからの制御コマンドを受けてオンまたはオフの接点信号を出力するPLCと、
前記PLCから出力される接点信号を受けてオンまたはオフによる駆動制御信号を出力して風力発電設備の制御システムの制御を行うリレーと、
を備えることを特徴とする。
【0034】
また、本発明の請求項15に係る雷撃監視システムは、
請求項14に記載の雷撃監視システムにおいて、
光ケーブルから入力される遠隔監視用コンピュータからの制御コマンドを受けて駆動する前記制御システムは、
接点信号が入力された場合、風力発電設備の回転翼の回転停止制御を行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
このような本発明のブレード雷撃監視装置によれば、風力発電設備のような可動体や回転体を備えた工作物に対し、受雷発生箇所(ブレード)を瞬時に検知して特定することで、保守点検作業効率化や耐雷対策の用に供する落雷情報を収集し易く、低価格で構築可能なブレード落雷検知装置を提供することができる。
さらに、このようなブレード落雷検知装置からの各種情報を管理する雷撃電流監視システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明のブレード雷撃監視装置を実施するための最良の形態について図に基づき説明する。図1,図2は風力発電設備のロータヘッド内におけるブレード雷撃監視装置の配置の説明図、図3は本形態のブレード雷撃監視装置の説明図であり、図3(a)はブロック構成図、図3(b)は検出装置の説明図である。ブレード雷撃監視装置1は、先に図14,図15,図16に示した風力発電設備500に設置される。ここに、風力発電設備500については、先に説明した従来技術と同じであるとして、同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。
【0037】
ブレード雷撃監視装置1は、図1,図2,図3(a)で示すように、センサ(A)10、センサ(B)11、センサ(C)12、通信線(A)13、通信線(B)14、通信線(C)15、検出装置16、監視装置17を備えている。
検出装置16は、さらに図3(b)で示すように、検出部161、無線通信モジュール162、バッテリー163を備える。バッテリー163は検出部161および無線通信モジュール162に電源を供給している。
監視装置17は、さらに図3(a)で示すように、無線通信モジュール171、出力装置172を備えている。
【0038】
本形態のブレード雷撃監視装置1では、図1で示すように、ロータヘッド534の中にセンサ(A)10、センサ(B)11、センサ(C)12、通信線(A)13、通信線(B)14、通信線(C)15、検出装置16を収容する。また、監視装置17を頂部収容箱520内に配置している。検出装置16から監視装置17へは、無線通信によりデータの送受信を行うため、回転翼530と頂部収容箱520との間はコードレスとすることができる。
【0039】
続いて各部について説明する。
ここにセンサ(A)10および通信線(A)13の構成は、センサ(B)11および通信線(B)14の構成や、センサ(C)12および通信線(C)15の構成と同じであるため、センサ(A)10および通信線(A)13のみ説明し、センサ(B)11、センサ(C)12、通信線(B)14、通信線(C)15の説明を省略する。
【0040】
センサ(A)10は、図2で示すように、円環状電流センサであり、詳しくはロゴウスキーコイルである。センサ(A)10は、ブレード(A)531を接地するブレード接地線531aを貫通するように装着される。ここに、ブレード(A)531→ブレード接地線531a→ブレード軸軸受531c→フランジ534a→ロータ軸軸受535a→ロータ軸535→頂部収容箱520→塔体510→アース、という雷撃電流導電路を形成しており、雷撃電流が雷撃電流導電路を流れたときに、センサ(A)10に誘起電流が発生する。
通信線(A)13は、誘起電流を検出装置16へ流す。
【0041】
検出装置16は、通信線(A)13に加え、通信線(B)14や通信線(C)15とも接続されており、ブレード別に雷撃監視できるようにしている。
検出装置16の検出部161が通信線(A)13から誘起電流を取り込み、演算処理により検出データを生成する。この演算処理による検出データでは、落雷があったことを示すための検出データ、または、落雷が有ったブレードを流れた落雷電流の値を示す検出データである。落雷があったことを示すための検出データならば、誘起電流の値が予め設定された閾値よりも大きいならば落雷があったことを示すものと判断して落雷があったことを表す検出データを生成する。また、落雷が有ったブレードを流れた落雷電流の値を示す検出データであるならば、誘起電流の値から落雷電流の値を予め登録された算出式により演算で求める、というものである。
【0042】
この検出データに落雷が有ったブレードを特定するブレード特定データを追加して落雷データを生成する。ブレード特定は、検出装置16の通信線(A)13、通信線(B)14、通信線(C)15という三つの入力部のうちどの入力部に誘起電流が入力されたかを判断すれば容易に求めることができる。落雷データは検出部161から無線通信モジュール162に送信される。無線通信モジュール162は、落雷データを無線信号に変換し、図3(a)で示すように、無線通信により監視装置17へ送信する。
【0043】
監視装置17の無線通信モジュール171では受信した無線信号を落雷データに変換して、出力装置172へ送信する。
出力装置172は、落雷データを受信した後にこの落雷データを必要とする各部へ必要な信号に変換した上で送信する。例えば、制御システム(ナセル制御盤や発電制御盤)へ制御コマンドを送信したり、また、図示しない監視所や塔体付近にあるスピーカや表示盤などに警報のための報知データを出力させても良い。
【0044】
このようなブレード雷撃監視装置1では、ブレード(A)531に落雷検出用のセンサ(A)10を、ブレード(B)532に落雷検出用のセンサ(B)11を、ブレード(C)533に落雷検出用のセンサ(C)12を、それぞれ配置したため、どのブレードに落雷があったかを検出できる。
また、ロータヘッド534内にセンサ(A)10、センサ(B)11、センサ(C)12および検出装置16を収納し、さらに検出装置16は無線通信により外部へ送信するため、配線の問題を解消できる。
【0045】
続いて他の形態のブレード雷撃監視装置について、図に基づき説明する。図4,図5は風力発電設備のロータヘッド内におけるブレード雷撃監視装置の配置の説明図、図6は他の形態のブレード雷撃監視装置の説明図であり、図6(a)はブロック構成図、図6(b)は検出装置の説明図である。ブレード雷撃監視装置2は、先に図14,図15,図16に示した風力発電設備500に設置される。ここに、風力発電設備500については、先に説明した従来技術と同じであるとして、同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。
【0046】
ブレード雷撃監視装置2は、図4,図5,図6(a)で示すように、検出部(A)20、検出部(B)21、検出部(C)22、監視装置23を備えている。
検出部(A)20は、さらに図6(b)で示すように、センサ(A)201、検出装置202を備え、この検出装置202は、検出部203、無線通信モジュール204、バッテリー205を備える。バッテリー205は検出部203および無線通信モジュール204に電源を供給している。
監視装置23は、さらに図6(a)で示すように、無線通信モジュール231、出力装置232を備えている。
【0047】
ここに検出部(B)21および検出部(C)22の構成は、検出部(A)20の構成と同じであるため、検出部(A)20のみ説明し、検出部(B)21および検出部(C)22の重複する説明を省略する。
【0048】
本形態のブレード雷撃監視装置2では、図4で示すように、ロータヘッド534の中に検出部(A)20、検出部(B)21、検出部(C)22を収容する。また、監視装置23を頂部収容箱520内に配置している。検出部(A)20、検出部(B)21、または検出部(C)22から監視装置23へは、それぞれが無線通信によりデータの送受信を行うため、回転翼530と頂部収容箱520との間はコードレスとすることができる。
【0049】
続いて各部について説明する。先に述べたが検出部(A)20のみ説明し、検出部(B)21、検出部(C)は同じ構成であるとして、重複する説明を省略する。
センサ(A)201は、図5で示すように、円環状電流センサであり、詳しくはロゴウスキーコイルである。センサ(A)201は、ブレード(A)531を接地するブレード接地線531aを貫通するように装着される。ここに、ブレード(A)531→ブレード接地線531a→ブレード軸軸受531c→フランジ534a→ロータ軸軸受535a→ロータ軸535→頂部収容箱520→塔体510→アース、という雷撃電流導電路を形成しており、雷撃電流が雷撃電流導電路を流れたときに、センサ(A)201に誘起電流が発生する。
【0050】
図6(b)で示すように、検出装置202の検出部203がセンサ(A)201から誘起電流を取り込み、演算処理により検出データを生成する。この演算処理による検出データでは、落雷があったことを示すための検出データ、または、落雷が有ったブレードを流れた落雷電流の値を示す検出データである。落雷があったことを示すための検出データならば、誘起電流の値が予め設定された閾値よりも大きいならば落雷があったことを示すものと判断して落雷があったことを表す検出データを生成する。また、落雷が有ったブレードを流れた落雷電流の値を示す検出データであるならば、誘起電流の値から落雷電流の値を予め登録された算出式により演算で求めるというものである。
【0051】
この検出データに落雷が有ったブレードを特定するブレード特定データを追加して落雷データを生成する。ブレード特定データは、検出部203に予め登録されているものとする。落雷データは無線通信モジュール204に送信される。無線通信モジュール204は、落雷データを無線信号に変換し、無線通信により監視装置23へ送信する。
【0052】
監視装置23の無線通信モジュール231では受信した無線信号を落雷データに変換して、出力装置232へ送信する。
出力装置232は、落雷データを受信した後にこの落雷データを必要とする各部へ必要な信号に変換した上で送信する。例えば、制御システム(ナセル制御盤や発電制御盤)へ制御コマンドを送信したり、また、図示しない監視所や塔体付近にある表示盤などに警報のための報知データを出力させても良い。
【0053】
このようなブレード雷撃監視装置2は、ブレード(A)531の落雷検出用の検出部(A)20、ブレード(B)532の落雷検出用の検出部(B)21、ブレード(C)533の落雷検出用の検出部(C)22、をそれぞれ配置したため、どのブレードに落雷があったかを検出できる。
また、ロータヘッド534内にセンサおよび検出装置を収納し、さらに検出装置は無線通信により外部へ送信するため、配線の問題を解消できる。
【0054】
続いてブレード雷撃監視装置1またはブレード雷撃監視装置2(以下、ブレード雷撃監視装置1,2という)を含む雷撃監視システムについて、図を参照しつつ説明する。
図7は、雷撃監視システムのシステム構成図である。
【0055】
この雷撃監視システム1000は、図7で示すように、複数のブレード雷撃監視装置1,2、幹線用光ケーブル200、光ケーブル210、メディアコンバータ220、通信用サーバ装置230、インターネット回線240、遠隔監視用コンピュータ250を備えている。この雷撃監視システム1000は、図16に示す複数の風力発電設備500に対して、ブレード落雷を検出する、というものである。
【0056】
複数のブレード雷撃監視装置1,2の出力装置172,232はメディアコンバータ220を介して光ケーブル210と接続され、遠隔監視用コンピュータ250へ落雷データを送信するようになされている。このブレード雷撃監視装置1,2の機能については先に説明したようにブレード雷撃を検出するものであり、重複する説明を省略する。
【0057】
幹線用光ケーブル200は、通常多数設置される風力発電設備500のブレード雷撃監視装置1,2と遠隔監視用コンピュータ250とで通信するために設置されるものであり、電磁ノイズに影響されないという利点がある。幹線用光ケーブル200からは光ケーブル210が引き出されて通信可能に接続される。
メディアコンバータ220は、光通信信号と電気通信信号とを、変換する機能を有している。
【0058】
通信用サーバ装置230は、光通信信号と電気通信信号とを、変換する機能を有している。特にインターネット回線240を介して、ブレード雷撃監視装置1,2と、遠隔監視用コンピュータ250と、を通信可能に接続する機能を有している。
インターネット回線240は、公衆回線に加え移動体通信回線やLANなど、インターネット通信に必要な各種装置を含む回線である。
【0059】
遠隔監視用コンピュータ250は、インターネット回線240、通信用サーバ装置230や光ケーブル210を介して幹線用光ケーブル200に通信可能に接続される。このような遠隔監視用コンピュータ250は、例えば、風力発電設備500の設置箇所から離れた中央司令所などに設置される。なお、図示しないが、風力発電設備500が多数設置されているエリア内に設けられた監視所などでは、幹線用光ケーブル200、光ケーブル210、メディアコンバータ220を介して遠隔監視用コンピュータ250を接続するようにしても良い。
【0060】
なお、遠隔監視用コンピュータ250と幹線用光ケーブル200との接続は、例示的な接続形態であり、遠隔監視用コンピュータ250と幹線用光ケーブル200とが通信可能になる各種の接続形態を採用することができる。本形態では説明の具体化のため図7に示した接続形態を採用して以下の説明を行う。
このような雷撃監視システム1000では、ブレード雷撃監視装置1,2と、遠隔監視用コンピュータ250と、が幹線用光ケーブル200を介して通信を行うことができる。ブレード雷撃監視装置1,2が落雷データを取得した場合に、当該ブレード雷撃監視装置1,2の出力装置172,232または検出装置16,202等はさらにどの風力発電設備であるかを表す設備特定データを付加した落雷データとし、この出力装置から落雷データを送信すると、メディアコンバータ220、光ケーブル210、幹線用光ケーブル200、通信用サーバ装置230、インターネット回線240を通じて遠隔監視用コンピュータ250へ送信される。これにより、遠隔地にある遠隔監視用コンピュータ250にて、どの風力発電設備500のどのブレードに落雷があったかを検知することができる。
なお、出力装置172,232に報知機能を持たせてその場で音声・表示により報知する機能を持たせることももちろん可能である。
【0061】
続いて、さらなる変形形態について図を参照しつつ説明する。図8は風力発電設備における駆動制御装置とブレード雷撃監視装置とのブロック図である。
駆動制御装置3は、さらにPLC(programmable logic controller)30、リレー31を備えており、風力発電設備の制御システム(ナセル制御盤や発電制御盤)32の駆動制御を行う。
【0062】
続いて駆動制御装置3について説明する。
メディアコンバータ220は、光通信信号と電気通信信号とを、変換する機能を有している。
PLC30は、メディアコンバータ220に電気通信線を介して接続されている。制御コマンドを受信して、リレー31へオンまたはオフの接点信号を出力する。
リレー31は、PLC30に電気通信線を介して接続され、PLC30から接点信号が送られたとき、リレー30は動作することとなる。PLC30から接点信号が送られた場合、リレー31は、先に説明したように、制御システム32をオン・オフする駆動制御信号を出力する。制御システム32は、風力発電設備500の回転翼530の回転を開始または停止するように駆動する。ここで、接点信号や駆動制御信号のオンに回転を、オフに停止を対応させるものとするが、制御システム32での設計を変えてオフに回転を、オンに停止を対応させるような逆論理にしても良い。
このように構成することで、例えば、ブレード落雷を検出した後に遠隔監視用コンピュータ250からの操作により直ちに風力発電設備500を停止するようにしても良い。
【0063】
続いて雷撃電流監視制御システム1000の動作について説明する。遠隔監視用コンピュータ250が制御コマンドを所定の風力発電設備500の駆動制御装置3へ送信すると、制御システム32へ制御コマンドに応じたオン・オフ制御がなされる。この場合、回転翼530の回転開始動作や回転停止動作である。
このように遠隔監視用コンピュータ250により運転が制御されるが、これに加えて、風力発電設備500に雷撃があって出力装置172,232へ落雷データが送信されるが、この落雷データから制御コマンドを生成し、PLC30へ制御コマンドを送信して回転翼4の回転停止動作を行うようにしても良い。これは、落雷時では、例えば、ロータ軸535を支持する軸受けが高温となって潤滑油が昇華・減少し、軸受けに焼き付けを起こすような事態もあり得るからである。そこで、早めに停止するため、風力発電設備500に設置されたブレード雷撃監視装置1,2の出力装置172,232から制御コマンドをPLC30へ送信し、上記のように制御して駆動停止するようにしても良い。一旦停止後に、保守点検を行ったうえで回転を再開することとなる。ここで遠隔監視用コンピュータ250により回転動作を指示する制御コマンドが通知されている場合でも、駆動制御装置3による回転停止が優先的に行われるようにしている。
【0064】
続いて雷撃監視システムの改良形態について、図を参照しつつ説明する。
図9は、風力発電設備の設置例の説明図である。これは、多数の風力発電設備を設置した場合、場所によって落雷頻度に高低があることがある。例えば、図9で示すように、標高が高い箇所にある風力発電設備では、雷雲に近いため、落雷頻度が高い。また、風力発電設備が密集している中側では、落雷の確率が分散するため、落雷頻度が高くないが、逆に両端にある風力発電設備は、風力発電設備が密集していないため、落雷頻度が高くなる。このような落雷頻度が高い箇所では、より正確で詳しい落雷情報を必要としている。そこで、落雷頻度が高い箇所ではさらに雷撃電流監視装置を設置することで落雷電流に関するより詳しい情報を得るようにした。
【0065】
図10は雷撃電流監視装置を追加した雷撃監視システムのシステム構成図である。図11は雷撃電流監視装置とブレード雷撃監視装置とが設置された風力発電設備の説明図であり、図11(a)は設置状態の説明図、図11(b)はブロック説明図である。
この雷撃監視システム1000’は、図10で示すように、複数のブレード雷撃監視装置1,2、複数の雷撃電流監視装置4、幹線用光ケーブル200、光ケーブル210、メディアコンバータ220、通信用サーバ装置230、インターネット回線240、遠隔監視用コンピュータ250を備えている。この雷撃監視システム1000は、図9に示す複数の風力発電設備500に対して、中央および両側ではブレード雷撃監視および雷撃電流監視を行い、他はブレード雷撃監視のみを行うというものである。
【0066】
ここに先に図9を用いて説明した雷撃監視システム1000と比較すると、図10の雷撃監視システム1000’では、複数の雷撃電流監視装置4が追加されている点が相違するが、他の構成については同じであり、複数のブレード雷撃監視装置1,2、幹線用光ケーブル200、光ケーブル210、メディアコンバータ220、通信用サーバ装置230、インターネット回線240、遠隔監視用コンピュータ250については重複する説明を省略する。
【0067】
雷撃電流監視装置4は、図11(a),(b)で示すように、計測装置40、ロゴウスキーコイル41、GPS(Global Positioning System)アンテナ42、記憶媒体43、コンピュータ44を備えている。
計測装置40は、ロゴウスキーコイル41、GPSアンテナ42が接続されている。さらに、この計測装置40は、記憶媒体43が着脱可能な読み書き部(図示せず)を備えており、計測装置40が計測により算出した計測データを記憶媒体43に登録させる。そして、記憶媒体43を取り外してコンピュータ44の読み書き部に載置することで、コンピュータ50は計測データを読み込んで雷撃について各種解析することができる。
【0068】
ロゴウスキーコイル41は、円環状電流センサの具体例であり、例えば波高値計測用ロゴウスキーコイルであったり、または、波形計測用ロゴウスキーコイルである。さらには、波高値計測用ロゴウスキーコイルおよび波形計測用ロゴウスキーコイルを絶縁体を介して上下に重ねた二重のコイルであっても良い。ロゴウスキーコイル41は図示しないが外周部に絶縁被覆部が形成されており、短絡等が起きないように配慮されている。このようなロゴウスキーコイル41は、図11(a)で示すように、風力発電設備500の塔体510の根元部に配置される。このような構成により、塔体510の外周面と内接しながら、巻始めから巻終わりまで1コイルで閉ループを形成して、極めて容易に装着できる。ロゴウスキーコイル41が、巻始めから巻終わりまで1コイルで閉ループを形成して長尺化しても、塔体510の根元部の外周面との内接により、ロゴウスキーコイル41のインダクタンスと浮遊容量を低減して高周波特性を確保し、雷撃電流の正確な計測を可能にしている。ロゴウスキーコイル41は、風力発電設備500への雷撃の際に塔体510に流れる雷撃電流を精度良く取り込むことができる。
【0069】
GPSアンテナ42は、GPS衛星からの衛生信号を受信する。この衛星信号に含まれる情報のうち、1秒ごとのパルス信号を利用する。このパルス信号を用いて計測装置40の内蔵時計を1秒ごとに修正するため、計測装置40は精度の高い時刻データを得ることができる。
【0070】
計測装置40は、ロゴウスキーコイル32からの誘起電流を取り込んで波高値、波形、または、電荷量という雷撃データを生成する。計測装置40は、トリガ機能を有しており、所定値(例えば正負1kA)を超える電流が入力された場合に波形計測を開始するように制御する。
また、計測装置40は、GPSアンテナ42を介して入力されるGPS信号に基づいてGPS時計機能による時刻データを出力するGPS時計部を備え、トリガ発生時の時刻データを生成する。さらに、計測装置40が設置されている風力発電設備500を特定するアドレスデータを読み出す。そして、これら雷撃データ、時刻データおよびアドレスデータを関連づけて計測データを生成する。この計測データは、記憶媒体43に書き込まれる。保守員は、記憶媒体43を読み書き部から取り出して持ち帰り、例えば監視所にあるコンピュータ44の読み書き部に記憶媒体43を装填して読み出すことができる。また、遠隔監視用コンピュータ250が制御コマンドを計測装置40へ送信して計測データを読み出すことができる。これら計測データの取得は何れか一方(記憶媒体43経由か光ケーブル210経由か)を選択することができる。
【0071】
計測装置40が落雷データを取得した場合に、さらにどの風力発電設備であるかを表す設備特定データを付加した落雷データとし、この出力装置から落雷データを送信すると、メディアコンバータ220、光ケーブル210、幹線用光ケーブル200、通信用サーバ装置230、インターネット回線240を通じて遠隔監視用コンピュータ250へ送信される。これにより、遠隔地にある遠隔監視用コンピュータ250にて、どの風力発電設備500に落雷があったか、および精度の高い落雷電流の値を検知することができる。これにより、ブレード雷撃監視装置1,2は、ブレード落雷についての簡易なデータを取得し、中央や両側のように雷撃電流監視装置4がある場合には、計測装置40が精密なデータを取得することができる。
【0072】
なお、先に図8を用いて説明した駆動制御装置3を追加するような構成として、例えば、ブレード落雷を検出した後に直ちに風力発電設備500を停止するような風力発電設備としても良い。
【0073】
以上説明したこのような雷撃監視システム1000’は、ブレード雷撃監視装置1,2と、遠隔監視用コンピュータ250と、は先に説明したように幹線用光ケーブル200を介して通信を行うことができる。さらに、雷撃電流監視装置4と遠隔監視用コンピュータ250とも幹線用光ケーブル200を介して通信を行うことができる。また、記憶媒体43を用いても良い。
【0074】
続いて風力発電設備1に設置される改良型の雷撃電流監視装置4’について図を参照しつつ説明する。図12は他の雷撃電流監視装置とブレード雷撃監視装置とが設置された風力発電設備の説明図であり、図12(a)は設置状態の説明図、図12(b)はブロック説明図である。図13は、Webページの説明図である。
雷撃電流監視装置4’は、図12(a)で示すように、計測装置40、ロゴウスキーコイル41、GPSアンテナ42、記憶媒体43、コンピュータ44、収集装置45を備えている。
【0075】
この形態では先に説明した形態と比較すると、雷撃電流監視装置4’に収集装置45を追加設置した点が相違する。以下、相違点を重点的に説明するものとし、先の形態と同じ構成については同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。
【0076】
収集装置45は、計測装置40が計測した計測データを読み出して収集する。この収集は定期的(例えば1時間毎)に行うようにしても良い。また、計測データが生成したときに計測装置40が収集装置45へ送信するようにしても良い。収集装置45はこのような計測装置40からの計測データを収集してデータ処理する処理手段として機能する。データ処理は例えば帳票形式にまとめた計測データとする。さらに、収集装置45はデータ処理された計測データを表示するWebページデータを生成する生成手段として機能する。Webページデータとすることで、外部の遠隔監視用コンピュータ250から容易に読み出しができるようになる。
【0077】
メディアコンバータ220は、収集装置45に接続されており、電気通信信号と光通信信号との変換を行う機能を有している。 メディアコンバータ22は中継用の光ケーブル210に接続されており、光信号により通信される。
【0078】
続いて雷撃監視システム1000’の動作について説明する。先に説明した遠隔監視用コンピュータ250による風力発電設備500の駆動制御等は先の形態と同様に行うものであり、重複する説明を省略し、収集装置45による動作について説明する。
【0079】
光ケーブル210に接続される遠隔地の遠隔監視用コンピュータ250のブラウザが所望の風力発電設備500の収集装置45のアドレスを指定してリクエストする。すると、インターネット回線240、通信用サーバ装置230、光ケーブル210、幹線用光ケーブル200、光ケーブル210、雷撃電流監視装置4’側のメディアコンバータ220を介して収集装置45へリクエストされる。
【0080】
収集装置45は、リクエストを受けてWebページデータを通信データに変換した上で送信する。通信データは、収集装置45、雷撃電流監視装置4’側のメディアコンバータ220、光ケーブル210、幹線用光ケーブル200、光ケーブル210、通信用サーバ装置230、インターネット回線240、を介して遠隔監視用コンピュータ250へ送信される。遠隔監視用コンピュータ250ではWebページを表示させる。このWebページは、図13で示すように表形式で表示する。アドレスが同じデータであるのは、同じ風力発電設備500に多数の落雷があったことを示している。また、日付・時刻別に各種のデータが表示される。これにより、遠隔地から計測データを確認することができる。
なお、出力装置172,232が落雷データを収集装置45へ幹線用光ケーブル200を介して送信しておき、収集装置45を介してWebデータとして一括して遠隔監視用コンピュータ250から読み出すようにしても良い。
【0081】
本形態によれば、収集装置45によりWebコンテンツとして閲覧が可能になっており、システム構成も既存の技術を流用することが可能となり、落雷データの収集が容易になるという利点がある。
【0082】
以上、本発明のシステムについて説明した。しかしながら、各種の変形形態が可能である。例えば、ブレード雷撃監視装置1,2の無線通信モジュールは他の無線通信モジュールと通信可能にしつつ無線通信モジュール171,231、出力装置172,232、メディアコンバータ220を筐体により覆う。同様に、雷撃電流監視装置4,4’の計測装置40や収集装置45、メディアコンバータ220を筐体により覆う。この筐体により電磁ノイズにより影響されないようになされ、また、筐体の外にある光ケーブル210は流れる光信号自体がノイズにより影響されにくく、雷撃時でも電磁ノイズに影響されずに計測処理・駆動処理を行うことができる。
例えば、本発明ではロゴウスキーコイル41はそれぞれ波高値計測用と波形計測用と二種のコイルを考慮したが、一つのロゴウスキーコイルが、波高値計測用と波形計測用とを兼ねるような構成を採用してもよい。しかしながら、ロゴウスキーコイルを分離することで、波高値計測用観測装置を波高値計測に最適となるように各種構成・設定値を決定することができ、同様に波形計測用観測装置でも波形計測に最適となるように各種構成・設定値を決定することができるため分離することが好ましい。
【0083】
また、ロータヘッド534内の装置はバッテリーにより電池駆動することを念頭においているが、この電池駆動に代えて、ロータヘッド534と、主要機器を内蔵し主軸を介してロータヘッド534を支える頂部収容箱520と、の両者間を電気的に結合するスリップリング装置を備え、主要機器を内蔵する頂部収容箱520からスリップリング装置を介して検出装置16,202に電源供給するような構成としても良い。これにより、電源の点検・入れ替え等が不要となり長期間にわたり保守を不要とすることができる。
【0084】
このような雷撃監視システムでは、風力発電設備のような可動体や回転体を備えた工作物に対し、落雷有無や受雷発生箇所等雷撃による落雷情報を瞬時に検知し判定して、上位系に知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】風力発電設備のロータヘッド内におけるブレード雷撃監視装置の配置の説明図である。
【図2】風力発電設備のロータヘッド内におけるブレード雷撃監視装置の配置の説明図である。
【図3】本発明を実施するための最良の形態のブレード雷撃監視装置の説明図であり、図3(a)はブロック構成図、図3(b)は検出装置の説明図である。
【図4】風力発電設備のロータヘッド内におけるブレード雷撃監視装置の配置の説明図である。
【図5】風力発電設備のロータヘッド内におけるブレード雷撃監視装置の配置の説明図である。
【図6】他の形態のブレード雷撃監視装置の説明図であり、図6(a)はブロック構成図、図6(b)は検出装置の説明図である。
【図7】雷撃監視システムのシステム構成図である。
【図8】風力発電設備における駆動制御装置とブレード雷撃監視装置とのブロック図である。
【図9】風力発電設備の設置例の説明図である。
【図10】雷撃電流監視装置を追加した雷撃監視システムのシステム構成図である。
【図11】雷撃電流監視装置とブレード雷撃監視装置とが設置された風力発電設備の説明図であり、図11(a)は設置状態の説明図、図11(b)はブロック説明図である。
【図12】他の雷撃電流監視装置とブレード雷撃監視装置とが設置された風力発電設備の説明図であり、図12(a)は設置状態の説明図、図12(b)はブロック説明図である。
【図13】Webページの説明図である。
【図14】風力発電設備の構造図である。
【図15】風力発電設備における従来技術の雷撃監視の説明図である。
【図16】風力発電設備の設置例の説明図である。
【符号の説明】
【0086】
500:風力発電設備
510:塔体
520:頂部収容箱
530:回転翼
531:ブレード(A)
532:ブレード(B)
533:ブレード(C)
540:風向風速計
550:避雷針
560:基礎
1:ブレード雷撃監視装置
10:センサ(A)
11:センサ(B)
12:センサ(C)
13:通信線(A)
14:通信線(B)
15:通信線(C)
16:検出装置
161:検出部
162:無線通信モジュール
17:監視装置
171:無線通信モジュール
172:警報装置
2:ブレード雷撃監視装置
20:検出部(A)
21:検出部(B)
22:検出部(C)
23:監視装置
231:無線通信モジュール
232:警報装置
3:駆動制御装置
30:PLC
31:リレー
32:制御システム
4,4’:雷撃電流監視装置
40:計測装置
41:ロゴウスキーコイル
42:GPSアンテナ
43:記憶媒体
44:コンピュータ
45:収集装置
1000:雷撃監視システム
200:幹線用光ケーブル
210:光ケーブル
220:メディアコンバータ
230:通信用サーバ装置
240:インターネット回線
250:遠隔監視用コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車を構成する複数のブレードと、複数のブレードを保持するロータヘッドと、ロータヘッドを軸支するロータ軸と、ロータ軸を回動自在に支持し、ロータ軸に直結される増速器およびこの増速器により回転して発電を行う発電機を収容する頂部収容箱と、頂部収容箱を先端で支持する塔体と、発電を制御する制御システムと、を備える風力発電設備におけるブレード雷撃について監視するブレード雷撃監視装置であって、
ブレードを接地するためにブレード毎に形成される雷撃電流導電路別に貫通するように装着される円環状電流センサと、
円環状電流センサに接続され、ある円環状電流センサから出力される誘起電流を取り込み、演算処理により生成した検出データと、ブレードを特定する特定データと、を関連づけて生成した落雷データを生成して無線送信する検出装置と、
検出装置から無線送信された無線信号から落雷データを生成して出力する監視装置と、
を備えることを特徴とするブレード雷撃監視装置。
【請求項2】
請求項1記載のブレード雷撃監視装置において、
前記円環状電流センサはブレード毎に複数備え、
前記検出装置は一個であって複数の前記円環状電流センサが接続され、
前記監視装置は一個であって前記検出装置と無線通信を行うことを特徴とするブレード雷撃監視装置。
【請求項3】
請求項1記載のブレード雷撃監視装置において、
前記円環状電流センサはブレード毎に複数備え、
前記検出装置は前記円環状電流センサ毎に複数個備えて一個の前記円環状電流センサに一個の前記検出装置が接続され、
前記監視装置は一個であって前記複数の前記検出装置と無線通信を行うことを特徴とするブレード雷撃監視装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のブレード雷撃監視装置において、
前記落雷データは落雷があったことを示す検出データおよび落雷が有ったブレードを特定するデータであることを特徴とするブレード雷撃監視装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のブレード雷撃監視装置において、
前記落雷データは落雷が有ったブレードを流れた落雷電流の値を示す検出データおよび落雷が有ったブレードを特定するデータであることを特徴とするブレード雷撃監視装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のブレード雷撃監視装置において、
前記円環状電流センサは、雷撃電流導電路のうちブレードとロータヘッドとを電気的に接続するブレード接地線を貫通するように装着されることを特徴とするブレード雷撃監視装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のブレード雷撃監視装置において、
ロータヘッドと、主要機器を内蔵し主軸を介してロータヘッドを支える頂部収容箱と、の両者間を電気的に結合するスリップリング装置を備え、
主要機器を内蔵するナセルからスリップリング装置を介して検出装置に電源供給することを特徴とするブレード雷撃監視装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか一項に記載のブレード雷撃監視装置において、
前記円環状電流センサは、ロゴウスキーコイルであることを特徴とするブレード雷撃監視装置。
【請求項9】
複数の風力発電設備に対して雷撃の監視を行う雷撃監視システムであって、
複数の風力発電設備にそれぞれ設置される、請求項1〜請求項8の何れか一項に記載された複数のブレード雷撃監視装置と、
複数のブレード雷撃監視装置にメディアコンバータを介して接続されて落雷データを伝送する光ケーブルと、
光ケーブルに接続されて落雷データを受信する遠隔監視用コンピュータと、
を備え、
ブレード雷撃監視装置から送信される落雷データを遠隔地にある遠隔監視用コンピュータで受信してブレード落雷があったことを認識することを特徴とする雷撃監視システム。
【請求項10】
請求項9に記載の雷撃監視システムにおいて、
前記複数の風力発電設備うち一部または全部の風力発電設備では、
塔体の根元部が貫通するように装着され、この塔体の根元部の外周面と絶縁体を介して内接する円環状電流センサと、
円環状電流センサから出力される誘起電流が入力されたときに演算処理を行って計測データを算出登録する計測装置と、
を備える雷撃電流監視装置が、ブレード雷撃監視装置とともに設置されることを特徴とする雷撃監視システム。
【請求項11】
請求項10に記載の雷撃監視システムにおいて、
前記計測装置が算出した計測データを収集する収集装置を備え、収集装置が収集した計測データを含む通信データが、メディアコンバータ、光ケーブルを介して遠隔監視用コンピュータへ送信されることを特徴とする雷撃監視システム。
【請求項12】
請求項11に記載の雷撃監視システムにおいて、
前記収集装置は、
計測装置からの計測データを収集してデータ処理する処理手段と、
データ処理された計測データを表示するWebページデータを生成する生成手段と、
を備え、
光ケーブルに接続される遠隔地の遠隔監視用コンピュータのブラウザが前記収集装置へリクエストしたとき、前記収集装置は、Webページデータを含む通信データに変換した上で送信し、遠隔監視用コンピュータは、通信データからWebページデータを読み出してWebページを表示させることを特徴とする雷撃監視システム。
【請求項13】
請求項9〜請求項12の何れか一項に記載の雷撃監視システムにおいて、
前記雷撃電流監視装置は、計測データを着脱可能な記憶媒体に登録することを特徴とする雷撃監視システム。
【請求項14】
請求項1〜請求項13の何れか一項に記載の雷撃監視システムにおいて、
遠隔監視用コンピュータは制御コマンドを出力し、
光ケーブルは制御コマンドを伝達し、
前記光ケーブルに接続され、電気通信信号と光通信信号との変換を行うメディアコンバータと、
前記メディアコンバータに接続され、遠隔監視用コンピュータからの制御コマンドを受けてオンまたはオフの接点信号を出力するPLCと、
前記PLCから出力される接点信号を受けてオンまたはオフによる駆動制御信号を出力して風力発電設備の制御システムの制御を行うリレーと、
を備えることを特徴とする雷撃監視システム。
【請求項15】
請求項14に記載の雷撃監視システムにおいて、
光ケーブルから入力される遠隔監視用コンピュータからの制御コマンドを受けて駆動する前記制御システムは、
接点信号が入力された場合、風力発電設備の回転翼の回転停止制御を行わせることを特徴とする雷撃監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−153010(P2008−153010A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338393(P2006−338393)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000220907)東光電気株式会社 (73)
【Fターム(参考)】