説明

ブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信に対応可能な移動局

本発明の課題は、ブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信において、個別チャネルを設定することなく、無線制御装置に対して、ブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信に係る制御情報を送信することを可能とする移動局を提供することである。本発明に係る移動局は、ブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信に係る制御情報を生成する制御情報生成部14と、制御情報に当該制御情報の種類を特定するための制御情報識別子を付与する制御情報識別子付与部15,16,17と、無線制御装置RNCに対して共通チャネルを介して制御情報を送信する送信部12とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信に対応可能な移動局に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動通信システムにおいて、図1に示すように、1つ又は複数の基地局BSが、所定エリア内の不特定多数の移動局UE(User Equipment)に対して同一情報を一斉に送信するブロードキャスト(Broadcast)通信が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
さらに、従来の移動通信システムにおいて、図2に示すように、特定グループに属している複数の移動局UEに対して同一情報を送信するマルチキャスト(Multicast)通信が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
また、従来の移動通信システムで用いられる移動局UEの状態(モード)には、図3に示すように、「Idleモード」と「Connectedモード」の2種類が存在する。
【0005】
「Idleモード」は、当該移動局UEと無線制御装置RNCとの間でRRC(Radio Resource Control)コネクションが確立されていない状態、すなわち、無線制御装置RNCが当該移動局UEの位置情報を追跡する必要がない状態である。一方、「Connectedモード」は、当該移動局UEと無線制御装置RNCとの間でRRCコネクションが確立されている状態である。RRCコネクションの確立及び解放によって、移動局UEの状態は、図3に示すように遷移する。
【0006】
移動局UEと無線制御装置RNCとの間でRRCコネクションは、移動局UEからの自発的な発呼によって、又は、Idleモードの移動局UEによるページング(Paging)の受信によって設定される。
【0007】
図4を参照して、Idleモードの移動局UEがページングを受信した場合にRRCコネクションが設定される様子を説明する。
【0008】
図4に示すように、交換網CN(Core Network)が、移動局UEに対する着呼のためにページング信号を無線制御装置RNCに送信し、当該無線制御装置RNCは、ページング信号を移動局UEに送信する。移動局UEは、受信したページング信号が自局宛ての信号であると判断した場合、無線制御装置RNCとの間のRRCコネクション設定手順を行い、Connectedモードに移行する。
【0009】
【非特許文献1】 ▲3rd▼Generation Partnership Project Technical Specification Group Terminals著,23.041 Technical realization of Cell Broadcast Service(CBS),2000年10月

【非特許文献2】 ▲3rd▼Generation Partnership Project Technical Specification Group Radio Access Network著,25.324 Broadcast/Multicast Control BMC,2000年12月

しかしながら、従来の移動通信システムにおけるブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信では、Idleモードの移動局UEが、個別チャネル(DCCH(Dedicated Common Control Channel)やDTCH(Dedicated Transport Channel)等)を設定することができないため、無線制御装置RNCは、共通チャネルを介して移動局UEから送信された制御情報が、どのブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信に係る制御情報であるかを識別する手段がないという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、ブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信において、個別チャネルを設定することなく、無線制御装置に対して、ブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信に係る制御情報を送信することを可能とする移動局を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【0011】
本発明の第1の特徴は、ブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信に対応可能な移動局であって、前記ブロードキャスト通信又は前記マルチキャスト通信に係る制御情報を生成する制御情報生成部と、前記制御情報に該制御情報の種類を特定するための制御情報識別子を付与する制御情報識別子付与部と、無線制御装置に対して共通チャネルを介して前記制御情報を送信する送信部とを具備することを要旨とする。
【0012】
本発明の第1の特徴において、前記制御情報識別子付与部が、前記制御情報にMACヘッダを付与し、当該MACヘッダに前記制御情報識別子を挿入するように構成されていてもよい。
【0013】
また、本発明の第1の特徴において、前記制御情報識別子が、前記ブロードキャスト通信又は前記マルチキャスト通信を特定するための識別情報、或いは、前記マルチキャスト通信におけるマルチキャストグループIDであるように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、従来技術に係るブロードキャスト通信を説明するための図である。
【図2】図2は、従来技術に係るマルチキャスト通信を説明するための図である。
【図3】図3は、従来技術に係るブロードキャスト通信を説明するための図である。
【図4】図4は、従来技術に係るブロードキャスト通信を説明するための図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る移動局を有する移動通信システムの全体構成図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る移動局の機能ブロック図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態において移動局によって送信される制御情報のフォーマットの一例を示す図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係る移動局を有する移動通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(本発明の一実施形態に係る移動局の構成)
図5に、本発明の一実施形態に係る移動通信システムの全体構成図を示す。本実施形態に係る移動通信システムは、図5に示すように、無線制御装置RNCの配下に、2つの基地局BTS1及びBTSnを具備している。また、移動局UEは、Idleモードであり、基地局BTS1と通信中であるものとする。
【0016】
図6に、本実施形態に係る移動局UEの機能ブロックを示す。移動局UEは、ブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信に対応可能な移動局であって、図6に示すように、モード管理部11と、チャネル制御部12と、制御情報生成部14と、MACヘッダ付与部15と、チャネルタイプ挿入部16と、制御情報識別子挿入部17とを具備している。
【0017】
モード管理部11は、移動局UEの状態(Idleモード又はConnectedモード)を管理するものである。
【0018】
チャネル制御部12は、無線制御装置RNCとの間の共通チャネルや個別チャネルの設定を制御すると共に、当該共通チャネルや当該個別チャネルを介した情報の送受信を制御するものである。なお、チャネル制御部12は、移動局UEがIdleモードである場合、無線制御装置RNCとの間で個別チャネルを設定することができない。
【0019】
制御情報生成部14は、移動局UEがIdleモードである場合、ブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信に係る制御情報を生成するものである。例えば、かかる制御情報には、所定のマルチキャストグループへの参加要求(Join)や脱退要求(Leave)等が含まれる。
【0020】
MACヘッダ付与部15は、図7に示すように、制御情報生成部14により生成された制御情報にMACヘッダを付与するものである。
【0021】
チャネルタイプ挿入部16は、図7に示すように、MACヘッダ付与部15により制御情報に付与されたMACヘッダに、当該制御情報が個別チャネルで送信されるべきか共通チャネルで送信されるべきかを示すチャネルタイプを挿入するものである。
【0022】
ただし、移動局UEがIdleモードである場合、チャネル制御部12が個別チャネルを設定することができないため、チャネルタイプ挿入部16は、MACヘッダにチャネルタイプを挿入しないように構成されていてもよい。
【0023】
制御情報識別子挿入部17は、図7に示すように、MACヘッダ付与部15により制御情報に付与されたMACヘッダに、当該制御情報(例えば、JoinやLeave)を識別するための制御情報識別子を挿入するものである。
【0024】
例えば、制御情報識別子は、ブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信を特定するための識別情報(例えば、MBMSの識別情報)や、マルチキャスト通信におけるマルチキャストグループ識別情報であってもよい。
【0025】
なお、MACヘッダ付与部15とチャネルタイプ挿入部16と制御情報識別子挿入部17とが、制御情報に制御情報識別子を付与する制御情報識別子付与部を構成すると共に、移動局UEのMAC層アーキテクチャを構成する。
【0026】
(本発明の一実施形態に係る移動局の動作)
図8を参照して、本実施形態に係る移動局の動作を説明する。
【0027】
ステップ301において、Idleモードの移動局UEの制御情報生成部14が、ブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信に係る制御情報を生成する。
【0028】
ステップ302において、MACヘッダ付与部15が、制御情報生成部14により生成された制御情報にMACヘッダを付与する。
【0029】
ステップ303において、チャネルタイプ挿入部16が、MACヘッダ付与部15により制御情報に付与されたMACヘッダにチャネルタイプを挿入し、制御情報識別子挿入部17が、当該MACヘッダに制御情報識別子を挿入する。
【0030】
ステップ304において、チャネル制御部12が、上述のようなMACヘッダが付与された制御情報を、無線制御装置RNCに対して共通チャネルを介して送信する。
【0031】
ステップ305において、無線制御装置RNCが、共通チャネルを介して受信した制御情報に付与されたMACヘッダを解析し、当該MACヘッダに挿入されている制御情報識別子に基づいて、当該制御情報に係る制御を行う。
【0032】
具体的には、無線制御装置RNCは、複数のIdleモードの移動局UEから受信した制御情報に付与されたMACアドレス内の制御情報識別子に基づいて、所定のMBMSに参加を望んでいるIdleモードの移動局UEの数や、所定のMBMSからの脱退を望んでいるIdleモードの移動局UEの数等をカウントする。
【0033】
この点、従来技術に係る無線制御装置RNCは、共通チャネルを介してIdleモードの移動局から制御情報を受信した場合であっても、制御情報がどのMBMSに対する制御情報に対するものかについて判断することができなかったため、所定のMBMSに参加を望んでいるIdleモードの移動局UEの数や、所定のMBMSからの脱退を望んでいるIdleモードの移動局UEの数等をカウントすることができなかった。
【0034】
なお、複数のIdleモードの移動局UEから受信した制御情報に付与されたMACアドレス内に移動局IDが含まれている場合、無線制御装置RNCは、当該制御情報に基づいて、当該移動局IDによって識別される移動局に対するJoin処理やLeave処理を施すように構成されていてもよい。
【0035】
(本発明の一実施形態に係る移動局の作用・効果)
本実施形態に係る移動局によれば、無線制御装置RNCが、移動局UEから送信された制御情報に付与された制御情報識別子に基づいて、当該制御情報がどのブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信に係る制御情報であるかを識別することが可能となる。
【0036】
また、本実施形態に係る移動局によれば、無線制御装置RNCとの間で個別チャネルを設定することなく、ブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信に係る制御情報を送信することができるため、無線リソースの有効活用及びバッテリ消費効率の向上を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明したように、本発明によれば、ブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信において、個別チャネルを設定することなく、無線制御装置に対して、ブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信に係る制御情報を送信することを可能とする移動局を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信に対応可能な移動局であって、
前記ブロードキャスト通信又は前記マルチキャスト通信に係る制御情報を生成する制御情報生成部と、
前記制御情報に該制御情報の種類を特定するための制御情報識別子を付与する制御情報識別子付与部と、
無線制御装置に対して共通チャネルを介して前記制御情報を送信する送信部とを具備することを特徴とする移動局。
【請求項2】
前記制御情報識別子付与部は、前記制御情報にMACヘッダを付与し、該MACヘッダに前記制御情報識別子を挿入することを特徴とする請求項1に記載の移動局。
【請求項3】
前記制御情報識別子は、前記ブロードキャスト通信又は前記マルチキャスト通信を特定するための識別情報、或いは、前記マルチキャスト通信におけるマルチキャストグループ識別情報であることを特徴とする請求項1に記載の移動局。
【請求項4】
前記制御情報識別子は、前記ブロードキャスト通信又は前記マルチキャスト通信を特定するための識別情報、或いは、前記マルチキャスト通信におけるマルチキャストグループ識別情報であることを特徴とする請求項2に記載の移動局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【国際公開番号】WO2005/020470
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513316(P2005−513316)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012025
【国際出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】