説明

ブロー成形による中空容器の成形方法

【課題】 長期に亘り金型を清掃することなく連続ブロー成形を行うことが可能であり、生産性の向上、コスト低下、作業環境が向上したに優れたポリエチレンテレフタレートからなる中空容器の成形方法を提供する。
【解決手段】 フェノール基含有リン化合物およびアルミニウム化合物を触媒として重合されたポリエチレンテレフタレート、またはフェノール基含有リン化合物のアルミニウム塩を触媒として重合されたポリエチレンテレフタレートを用いて、一つの金型あたり10000回以上ブロー成形金型を清掃することなく連続して中空容器を成形する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる中空容器の成形方法に関する。更に詳しくは、PETからなる飲料用の耐熱性ブロー成形中空容器の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PETのブロー成形による中空容器は様々な用途の容器として利用されている。特にジュースやお茶、ミネラルウオーターなどの飲料類の容器(ボトル)として非常に多く用いられている。
【0003】
これらの飲料容器は炭酸飲料等用の耐圧ボトル、無菌充填用のアセプティックボトル、高温充填用の耐熱ボトルに大別される。
【0004】
耐熱ボトルは充填物を80℃近辺の高温で充填するため、ボトルにもこの充填温度で変形しない耐熱性が求められ、ボトルの口栓部、胴部を結晶化させることにより耐熱性を達成している。
【0005】
胴部の結晶化はプリフォームを加熱後、ブロー延伸を130〜180℃に加熱された金型内で行い、さらに0.5秒から10秒程度ボトルを金型内で保持することによりボトル胴部の結晶化を高めている。
【0006】
この時に、PET中の環状3量体(CT)などのオリゴマーが金型表面に移行して金型表面を汚染し、成形を繰り返すことにより汚染が蓄積されて、ある程度の成形回数後には得られたボトルが曇り、商品価値がなくなるため金型を清掃する必要があった。
【0007】
金型の清掃は溶媒を用いて人力で拭き取る必要があり、商業的な大規模のブロー成形機は複数個のブロー成形金型を備えていることから、全ての金型を清掃し終わるには数時間から1日の時間を要し、生産性の低下や作業環境の面で改善が要求されていた。
【0008】
一方、固相重合によりCTを低減させたPETを用いてボトルを成型するという技術が知られていた(例えば特許文献1参照)。しかし、かかる従来技術は成形時の高温で再度CTが生成して、十分な金型汚れ低減効果が得られなかったという問題点があった。
さらに、固相重合後、熱水で処理して触媒を失活させることにより、上記のCTの再生成を防ぐという技術が知られていた(例えば特許文献2参照)。しかし、触媒を失活させるための設備が必要となり、専用の設備でないと製造できなかったりコストアップとなったりするものであった。
【0009】
さらには、PETに微量なポリエチレンなどの結晶性樹脂を配合したり、PETの微粉量を調整したりすることで、結晶化速度が促進され金型汚れが低下することが知られていた(例えば特許文献3参照)。
【0010】
しかし、これらの従来技術でも20000〜30000回の連続成形で金型を清掃する必要があり、また不十分という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭53−5259号公報
【特許文献2】特開平3−17441号公報
【特許文献3】特開2000−163293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、長期に亘り金型を清掃することなく連続ブロー成形を行うことが可能であり、生産性の向上、コスト低下、作業環境が向上したに優れたポリエチレンテレフタレートからなる中空容器の成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の通りである。
(1) フェノール基含有リン化合物およびアルミニウム化合物を触媒として重合されたポリエチレンテレフタレート、またはフェノール基含有リン化合物のアルミニウム塩を触媒として重合されたポリエチレンテレフタレートを用いて、一つの金型あたり10000回以上ブロー成形金型を清掃することなく連続して中空容器を成形する方法。
【0014】
(2) フェノール基含有リン化合物が下記構造式の化合物であることを特徴とする(1)記載の中空容器を成形する方法。
【0015】
【化1】

【0016】
(X1、X2はそれぞれ、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または1価以上の金属を表す。X1は、金属が2価以上であって、X2が存在しなくても良い。または、リン化合物に対して金属の余剰の価数に相当するアニオンが配置されていても良い。)
【0017】
(3) ポリエチレンテレフタレート中のリン元素の濃度が5〜300ppm、アルミニウム元素の濃度が3〜100ppmであることを特徴とする(1)または(2)に記載の中空容器を成形する方法。
【0018】
(4) ポリエチレンテレフタレート中の環状3量体の含有量が0.2〜0.6質量%、ポリエチレンテレフタレートの極限粘度が0.6〜0.95dl/gであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の中空容器を成形する方法。
【0019】
(5) プリフォームを成形する工程、口栓部を結晶化する工程、プリフォームを再加熱する工程、再加熱されたプリフォームを金型内でブロー延伸する工程、ブロー延伸された中空成形体を加熱された金型内でヒートセットする工程、を含む(1)〜(4)のいずれかに記載の中空容器を成形する方法。
【0020】
(6) ブロー延伸でのボトル長さ方向の倍率が1.5〜6倍、ボトル周方向の倍率が2〜6倍であることを特徴とする、(5)に記載の中空容器を成形する方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、ポリエチレンテレフタレートからなる中空容器の成形において、ポリエチレンテレフタレートの触媒を失活させなくとも、長期に亘り金型を清掃することなく連続ブロー成形を行うことが可能であり、生産性の向上、コスト低下、作業環境の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例、比較例での成形回数とボトルヘイズとの関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
まず、ボトルの成形に用いられるポリエステルを説明する。
(ポリエステルの組成、物性)
ポリエステルは、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルであって、好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは97%モル以上含む線状ポリエステルである。なお、エチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上含むとは、全カルボン酸成分、全グリコール成分のモル数をそれぞれ1とした際、テレフタル酸成分のモル数とエチレングリコールのモル数の積が0.9以上であることを表す。
【0024】
テレフタル酸以外の共重合成分としてのジカルボン酸としてはイソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸や蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などに例示される脂肪族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸を用いることができる。これらのなかではイソフタル酸が最も好ましい。
これらのジカルボン酸は、カルボン酸成分のうち、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5.0モル%以下、最も好ましくは3モル%以下の範囲で用いることができる。
【0025】
また、エチレングリコール以外の共重合成分としてのグリコールとしては、例えば、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などの芳香族グリコール等が挙げられる。これらのなかではジエチレングリコールが最も好ましい。
これらのグリコールは、グリコール成分のうち、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5.0モル%以下、最も好ましくは3モル%以下の範囲で用いることができる。なお、副生生物のジエチレングリコールもこの共重合グリコールに含まれるものとする。
【0026】
ポリエステルの極限粘度・IV(dl/g)の下限は好ましくは0.6であり、より好ましくは0.63であり、さらに好ましくは0.65であり、特に好ましくは0.67である。IV(dl/g)の上限は好ましくは0.95であり、より好ましくは0.8であり、さらに好ましくは0.77であり、特に好ましくは0.75である。IVがこの範囲よりも低いと、容器の機械的強度や耐衝撃性が不十分であり、一方上記範囲よりも高いと、有底プリフォームへの射出成形が困難となったりブロー成形が困難となったりする傾向にある。
【0027】
PETの環状3量体(CT)含有量は溶融重合後で通常1質量%程度である。溶融重合のみの高いCT含有量のPETであっても、前記触媒を用いて得られたPETはブロー成形時で金型を汚染することが少なく、金型清掃をすることなく多数回(1万回以上)の成形が可能である。
しかし、固相重合によりCTの含有量を下げることでさらに金型の汚染を抑制することができ、金型清掃の間隔を長くすることができる。
【0028】
ポリエステルのCT含有量(質量%)の下限は好ましくは0.2であり、より好ましくは0.25であり、さらに好ましくは0.27である。上記未満であると固相重合に長時間かかり、生産性低下となることがある。
CT含有量(質量%)の上限は好ましくは0.6であり、より好ましくは0.5であり、さらに好ましくは0.4である。上記を超えると金型汚れが強くなることがある。
【0029】
耐熱ボトルは高温で内容物を充填するため、口栓部を結晶化させて耐熱性を持たせている。結晶化工程でのコントロールのため、昇温結晶化温度(Tc1)は特定の範囲であることが好ましい。
ポリエステルの昇温結晶化温度(Tc1)の下限は好ましくは130℃であり、より好ましくは140℃であり、さらに好ましくは150℃である。上記未満であると口栓部結晶化が速すぎて口栓部寸法安定性が悪くなる、ボトル透明性が低下となることがある。
Tc1の上限は好ましくは172℃であり、より好ましくは170℃であり、さらに好ましくは168℃である。上記を越えると口栓部結晶化が遅く生産性が低下となることがある。Tc1は、触媒の調整により調節することができる。また、ポリエチレンなどの結晶性樹脂を添加したり接触処理を行ったりすることで調整することができる。
【0030】
ポリエステルを170℃で20時間加熱したときの中分子量PET(重量平均分子量1000〜6000)増加量が、好ましくは6質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは4質量%以下、最も好ましくは3質量%である。ポリエステルを170℃で20時間加熱したときの中分子量PET(重量平均分子量1000〜6000)増加量が6質量%を越えると金型汚れが強くなる傾向にある。フェノール基含有リン化合物、アルミニウム化合物を触媒として用いることで、ブロー成形時の金型温度で長時間加熱しても、熱分解によって生成する中分子量PETが少ないため、効果的に金型汚れを防げるものと考えられる。
【0031】
ポリエステルのアセトアルデヒド量は、好ましくは20ppm以下であり、より好ましくは10ppm以下であり、さらに好ましくは8ppm以下であり、特に好ましくは5ppm以下である。上記を越えると内容物の保香性が低下することがある。
【0032】
(ポリエステルの触媒)
ポリエステル重合触媒を構成するアルミニウム化合物としては、公知のアルミニウム化合物が限定なく使用できる。
【0033】
アルミニウム化合物としては、具体的には、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム及びアルミニウムアセチルアセトネート、シュウ酸アルミなどの有機アルミニウム化合物及びこれらの部分加水分解物などが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩及びキレート化合物が好ましく、これらの中でも酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム及びアルミニウムアセチルアセトネートがより好ましく、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム及び水酸化塩化アルミニウムがさらに好ましく、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウムが最も好ましい。
【0034】
ポリエステル重合触媒に用いられるアルミニウム化合物のアルミニウム原子としての使用量は、得られるポリエステルの全重量に対して3〜100ppm残留するようにすることが好ましく、より好ましく5〜70ppmであり、更に好ましくは7〜50ppm、特に好ましくは8〜40ppmである。
上記を下回ると触媒活性不良となる可能性があり、上記を超えると異物生成を引き起し、ボトルの透明性が低下したり、口栓部の結晶化コントロールが困難となったりする可能性がある。
なお、下記のフェノール基を含有するリン化合物がAl塩である場合、別途アルミニウム化合物は用いなくても良い。
【0035】
ポリエステル重合触媒を構成するリン化合物は、フェノール基を含有することを特徴とする。フェノール基はヒンダードフェノール構造であることが好ましく、特に好ましい形態は下記化学式(式A)で表されるようなヒンダードフェノール構造を有するリン化合物である。
【0036】
【化2】

【0037】
式Aで、X1、X2はそれぞれ、水素、炭素数1〜4のアルキル、または1価以上の金属を表す。X1は、金属が2価以上であって、X2が存在しなくても良い。または、リン化合物に対して金属の余剰の価数に相当するアニオンが配置されていても良い。
金属としては、Li,Na,K、Ca,Mg,Alが好ましい。なお、金属としてAlでる場合は、上記アルミニウム化合物がなくても良い。
【0038】
上記の化学式(式A)にて示される化合物としては、化学式(化1)、(化2)で表されるリン化合物がある。
【0039】
【化3】

【0040】
【化4】

【0041】
上記の化学式(化1)にて示される化合物としては、Irgamod295(ビーエーエスエフ社製)が市販されており、また(化2)にて示される化合物としては、Irgamod195(ビーエーエスエフ社製)が市販されており、使用可能である。
【0042】
リン化合物使用量は、得られるポリエステルの全重量に対してリン原子として5〜300ppm残留するようにすることが好ましく、より好ましくは10〜200ppmであり、更に好ましくは15〜150ppmであり、特に好ましくは20〜100ppmである。
リン化合物の添加量が少ない場合には、触媒活性不良となったり、異物生成を引き起こす場合があり、多すぎてもポリエステル重縮合触媒としての触媒活性が低下する場合があり、その低下の傾向は、アルミニウムの添加量等により変化する。触媒活性が不良となった場合は重縮合での温度時間積が多く必要となり経済的に不利である。
【0043】
ポリエステル中に含まれるリン化合物のリン原子と、アルミニウム化合物のアルミニウム原子の比率P/Al(モル比)は、1≦P/Al≦100であることが好ましく、より好ましくは1.2≦P/Al≦50であり、更に好ましくは1.3≦P/Al≦20であり、特に好ましくは1.4≦P/Al≦10であり、最も好ましくは1.5≦P/Al≦5である。
P/Alが低すぎると、ポリエステル重縮合触媒としての触媒活性が低下したり、異物生成を引き起こす場合があり、高すぎても、やはりポリエステル重縮合触媒としての触媒活性が低下する場合がある。
【0044】
本発明の重縮合触媒は、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物などの他の重縮合触媒をポリエステルの特性、加工性、色調等製品に問題を生じない添加量の範囲内において共存させても良いが、これらは実質的に含まないことが好ましい。
【0045】
アンチモン化合物は、重縮合して得られるポリエステルに対してアンチモン原子として30ppm以下の量であることが好ましい。より好ましくは、20ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、特に好ましくは5ppm以下である。アンチモンの添加量を30ppm超にすると、金属アンチモンの析出が起こり、Tc1が外れることがあるため好ましくない。
【0046】
ゲルマニウム化合物は、重縮合して得られるポリエステルに対してゲルマニウム原子として10ppm 以下の量であることが好ましい。より好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは3ppm以下、特に好ましくは2ppm以下である。ゲルマニウムの添加量を10ppm超にすると、コスト的に不利になるため好ましくない。
【0047】
チタン化合物は、重縮合して得られるポリエステルに対してチタン原子として3ppm以下であることが好ましい。より好ましくは2ppm以下であり、さらに好ましくは1ppm以下である。チタンの添加量を3ppm超にすると、得られるポリエステルの着色が顕著になり、さらに熱安定性が顕著に低下するため好ましくない。
【0048】
ナトリウム化合物は、重縮合して得られるポリエステルに対してナトリウム原子として20ppm以下の量であることが好ましい。より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下、特に好ましくは2ppm以下である。ナトリウムの添加量を20ppm超にすると、得られるポリエステルを成形した際のヘイズが悪化し、さらに耐加水分解性や熱安定性が低下するため好ましくない。
【0049】
マグネシウム化合物は、重縮合して得られるポリエステルに対してマグネシウム原子として100ppm以下の量であることが好ましい。より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。マグネシウムの添加量を100ppm超にすると、得られるポリエステルの熱酸化安定性が悪化するため好ましくない。
【0050】
リチウム化合物は、重縮合して得られるポリエステルに対してリチウム原子として50ppm以下の量であることが好ましい。より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、特に好ましくは5ppm以下である。リチウムの添加量を50ppm超にすると、ナトリウム化合物ほどではないが、得られるポリエステルを成形した際のヘイズが悪化し、さらに熱安定性が低下するため好ましくない。
【0051】
(ポリエステルの重合方法)
本発明によるポリエステルの製造は、触媒としてアルミニウム化合物およびリン化合物からなるポリエステル重合触媒を用いて従来公知の工程を備えた方法で行うことができる。例えば、PETを製造する場合は、テレフタル酸とエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコールを留去しエステル交換させた後、減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。
更に必要に応じて、極限粘度を増大させ、CT量を低減させる為に固相重合を行うことが好ましい。固相重合前の結晶化促進のため、溶融重合ポリエステルを吸湿させた後加熱結晶化させ、また水蒸気を直接ポリエステルチップに吹きつけて加熱結晶化させたりしても良い。
前記溶融重縮合反応は、回分式反応装置、連続式反応装置いずれであっても良い。
【0052】
(触媒の調整)
アルミニウム化合物およびリン化合物を触媒として用いる場合には、粉体、水やグリコールなどの溶媒にスラリー状にしたもの、あるいは水やグリコールなど溶液状で添加するのが好ましい。
【0053】
アルミニウム化合物溶液およびリン化合物溶液をエステル化反応またはエステル交換反応終了後、重縮合前に同時に添加することが好ましい。添加後速やかに系中に均一混合されることが好ましい
【0054】
これらの方法により、異物を少なくし、Tc1を170℃近辺かそれ以上にすることができる。また、重縮合温度をなるだけ低くすることにより、Tc1を高くすることができる。
【0055】
(ボトルの成形)
耐熱性ボトルのブロー成形では一般にはプリフォームと呼ばれる有底の前駆体を作成し、このプリフォームを金型内でブロー延伸し、さらにヒートセットされる。
プリフォームの製造は、圧縮成形、射出成形などの方法が用いられる。射出成形を例にすると、260〜300℃に加熱溶融し、プリフォームの金型内に射出することでプリフォームを得ることができる。
通常、プリフォームは肉厚の試験管状の形状で底部にゲート部を持ち、口栓部にはキャップ用のスクリューが刻まれている。
【0056】
耐熱性ボトルでは得られたプリフォームの口栓部を結晶化させる。結晶化させることで高温の内容物を充填する場合であっても、口栓部が変形することを防ぐことができる。口栓部の結晶化は130〜200℃に加熱することで行うことが好ましく、さらには140〜190℃である。加熱方法としては、赤外線ヒーター、熱風、誘導加熱、オイルバスへの浸漬など用いることができ、赤外線ヒーターを用いることが生産性の面などから好ましい。なお、口栓部の加熱結晶化はブロー成形後であっても良い。
【0057】
プリフォームを加熱し、このプリフォームをボトル長さ方向に延伸すると共に周方向にブロー成形してボトルを得る。長さ方向には通常棒状の延伸ロッドで延伸され、周方向には空気、窒素などの加圧ガスを用いる。加圧ガスは1〜10MPaが好ましい。延伸ロッドを挿入しながら加圧ガスを吹き込み、長さ方向と周方向の同時に延伸する方法が好ましいが、長さ方向に延伸した後周方向に延伸しても良い。
加熱は赤外線ヒーター、熱風、誘導加熱などが用いられる。加熱温度は通常80〜130℃であり、好ましくは90〜120℃である。
【0058】
ボトル長さ方向の延伸倍率の下限は好ましくは1.5倍であり、より好ましくは2倍である。上記未満であると延伸むらとなることがある。
長さ方向の延伸倍率の上限は好ましくは6倍であり、より好ましくは5倍であり、さらに好ましくは4倍である。上記を越えると破れ等が起こりやすくなる。
【0059】
ボトルの周方向の延伸倍率の下限は好ましくは2倍であり、より好ましくは2.5倍である。上記未満であると延伸むらとなることがある。
周方向の延伸倍率の上限は好ましくは6倍であり、より好ましくは5倍であり、さらに好ましくは4倍である。上記を越えると破れ等が起こりやすくなる。
【0060】
ブロー成形の後引き続き同一金型内でヒートセットする場合、ブロー成形の金型温度の下限は好ましくは80℃であり、より好ましくは120℃であり、更に好ましくは130℃であり、最も好ましくは140℃である。上記未満であると後に行われるヒートセットで充分な結晶促進が行われず耐熱性が不足したり、ヒートセット時間を長く取る必要があり生産性低下となったりすることがある。
【0061】
金型温度の上限は好ましくは200℃であり、より好ましくは190℃であり、さらに好ましくは180℃、特に好ましくは170℃である。金型温度が高くなると金型汚れが多くなり、連続成形可能な回数が少なくなる場合がある。
【0062】
ブロー成形されたボトルは引き続き金型内でヒートセットされる。ヒートセット時間の下限は好ましくは0.5秒であり、より好ましくは1秒であり、さらに好ましくは1.5秒である。上記未満であると充分な結晶促進が行われず耐熱性が不足することがある。
ヒートセット時間の上限は90秒であり、好ましくは15秒であり、より好ましくは10秒であり、さらに好ましくは5秒である。長時間のヒートセット時間は生産性が劣るだけでなく、ロータリー式のブロー成形機の場合は金型を多く揃える必要があり装置が大型になるなと経済性に劣ることがある。
金型内でのヒートセットの後、さらに赤外線、熱風、誘導加熱等で加熱して追加ヒートセットを行っても良い。
【0063】
また、ブロー成形を5〜50℃の金型内で行い、引き続き加熱金型内でヒートセットする方法も可能である。この場合のヒートセット金型の温度は上記の場合の金型温度と同様である。
【0064】
ブロー成形の装置は一つの金型を備えたものであっても良いが、量産用の場合は、複数の金型を備え、これら金型が、加熱したプリフォームを金型にセットする場所、延伸する場所、ヒートセットする場所、ボトルを排出する場所、を順次移動していく方式のものが好ましい。
【0065】
なお、上記では冷却されたプリフォームを再加熱するコールドパリソン法を説明したが、プリフォームを完全に冷却しないでブロー成形を行うホットパリソン法も可能である。
【0066】
成形するボトルの内容量としては200mL〜6Lのものが好ましい。特には300mL〜2Lのものが好ましい。
ボトル胴部の形状は円形、四角形(角部をカットした形状を含む)、6角形など任意の形状が可能である。
【0067】
通常、触媒を失活させていないPETを用いた場合、一つのブロー金型で数千回〜1万回弱の成形を行うと金型表面が汚れ清掃を余儀なくさせられていた。しかし、フェノール基含有リン化合物、アルミニウム化合物を触媒として重合されたポリエチレンテレフタレートを用いてブロー成形を行うと、予期せぬことに、金型の汚染を非常に低くすることができ、金型を清掃することなく一つの金型あたり10000回以上連続してブロー成形を行うことができることが分かった。さらに15000回以上、20000回以上の連続成形でも金型を清掃することなく引き続き成形が可能であることが分かった。
【0068】
また、熱水により触媒を失活させたPETであっても、20000〜30000回の連続成形で成形を止め金型清掃の必要があったが、25000回以上、さらには30000回以上の連続成形でも金型を清掃することなく引き続き成形が可能であることが分かった。
【0069】
なお、触媒を失活させていないPETは乾燥したCT含有量0.5質量%以下のポリエステルチップ3gをガラス製試験管に入れ、窒素雰囲気下で290℃のオイルバスに60分浸漬させ溶融させた場合、CT増加量(△CT)が0.1質量%以上となる。フェノール基含有リン化合物、アルミニウム化合物を触媒として重合されたポリエチレンテレフタレート、またはフェノール基含有リン化合物のアルミニウム塩を触媒として重合されたポリエチレンテレフタレートを用いてブロー成形を行うと、このような失活されていないPETであっても金型の汚染を非常に低くすることができる。△CTが0.15質量%以上のもの、さらには0.2質量%以上のものであっても金型の汚染を低く保つことができる。
【0070】
本発明者らの検討によるとボトルの金型汚れは、今まで言われてきたようなCTが主となるものではなく、分子量3000〜5000程度の中分子量のPETが中心となって金型に付着し、これにCTが混じるものであることが分かった。
フェノール基含有リン化合物、アルミニウム化合物を触媒として重合されたPETは、ブロー成形の金型温度で長時間加熱しても、熱分解によって生成する中分子量PETが少ないため、効果的に金型汚れを防げるものであると考えられる。
【実施例】
【0071】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
なお、主な特性値の測定法を、以下に説明する。
【0072】
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/p−クロロフェノール(1:3重量比)混合溶媒中の30℃での溶液粘度から算出した。
【0073】
(2)ポリエステルの昇温結晶化温度(Tc1)
セイコ−電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定。昇温速度20度C/分で昇温し、290℃で3分間保持したのち、290℃から240℃までを10℃/分で降温し、更に240℃から130℃までを7℃/分で降温した。昇温時に観察される結晶化ピ−クの頂点温度を昇温時結晶化温度(Tc1)とする。
なお、実施例や比較例で用いる種々のポリエステルの成形体のTc1は、下記のプリフォーム口元からの試料4mg±1.0mgを使用する。合計5回測定を行いその平均値をとった。
【0074】
(3)アルミニウムの定量方法(蛍光X線分析)
厚みが5mm、内径50mmのステンレス製リングを用いて300℃の溶融オーブン溶融オーブンで15分間溶融し平滑化した。冷却後リングを外して試料をカミソリ刃で削りとり表面汚染を除去した後に測定試料とした。触媒定量は予めアルミニウム元素量既知のサンプルから求めた検量線を用いて行った。
測定装置:RIGAKU ZSX100e(4.0kW Rh管球)
測定球:30mmφ
【0075】
(4)リン化合物の定量方法(蛍光X線分析)
ステンレス製リングを用いて300℃の溶融オーブン溶融オーブンで15分間溶融し平滑化した。冷却後リングを外して試料をカミソリ刃で削りとり表面汚染を除去した後に測定試料とした。触媒定量は予めリン元素量既知のサンプルから求めた検量線を用いて行った。
測定装置:RIGAKU ZSX100e(4.0kW Rh管球)
測定球:30mmφ
【0076】
(5)ジエチレングリコール含量(DEG)
ポリエステル0.1gをメタノール2ml中で250℃で加熱分解した後、ガスクロマトグラフィーにより定量して求めた。
【0077】
(6)環状3量体の含有量(以下「CT含有量」という)
試料をヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロフォルム混合液に溶解し、さらにクロロフォルムを加えて希釈する。これにメタノ−ルを加えてポリマーを沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミドで定容とし、液体クロマトグラフ法よりエチレンテレフタレ−ト単位から構成される環状3量体を定量した。
【0078】
(7)アセトアルデヒド含有量(以下「AA含有量」という)
試料/蒸留水=1グラム/2ccを窒素置換したガラスアンプルに入れた上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィーで測定し、濃度をppmで表示した。
(8)中分子量PET(重量平均分子量1000〜6000)増加量
上記方法で成形した延伸中空成形体の口元からサンプルを採取、冷凍粉砕して20メッシュ以下の粉末にした。この粉末を130℃で12時間真空乾燥し、粉末300mgを内径約8mm、長さ約140mmのガラス試験管に入れ70℃で12時間真空乾燥した。次いで、シリカゲルを入れた乾燥管を試験管上部につけて乾燥した空気下で、170℃の塩バスに浸漬して20時間加熱した後にGPC法により中分子量PET(重量平均分子量1000〜6000)増加量を算出した。
測定条件
(試料の調製) 試料1mgを0.2mLのクロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール=3/2(vol%)に溶解後、3.8mLのクロロホルムで希釈して試料溶液を調製した。
(溶離液) クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール=98/2(vol%)
(装置) 東ソー社製 TOSOH HLC−8220GPC
(カラム) 東ソー社製 TSKgel SuperHM−H×2+TSKgel SuperH2000
(標準ポリスチレン) 東ソー社製のTSK標準ポリスチレン
(測定条件) 測定温度40℃、流量0.6mL/分
(検出器) UV検出器 254nm
(分子量の換算) 標準スチレン換算で計算した。
(積算範囲) ピークスタートを標準ポリスチレンで山の立ち上がり点、ピークエンドを標準ポリスチレンで700とした。
【0079】
(9)中空容器連続成形評価法
試料ポリエステルを真空乾燥機にて乾燥して水分率を100ppm以下とし、名機製作所製150C−DM型射出成形機及びプリフォーム用金型(金型温度5℃)を用いて有底プリフォーム(PF)を成形した。
M−150C−DM射出成形機による可塑化条件としては、フィードスクリュー回転数=70%、スクリュー回転数=120rpm、背圧0.5MPa、シリンダー温度はホッパー直下から順に45℃、250℃及びノズルを含めた以降のシリンダー温度(以下、Sxとする)を280℃に設定した。また成形品重量が28.4±0.2gになるように射出圧力及び保圧を調整した。
次いで、プリフォームの口栓部を、フロンティア(株)製NC−01口栓部結晶化装置を用いて加熱結晶化させた。
更に、シデル社製のSBO LabN゜1045タイプ1Labブロー成形機を用いて、プリフォームを二軸延伸ブローした。プリフォームの再加熱は約105℃となるよう調整した。150℃に温度調整した金型内で圧力36barの空気を吹込みながら30秒の成形サイクルにて750bphで縦方法に2.5倍、周方向に3.8倍の倍率で二軸延伸ブローし、引き続き、前記金型内で2.3秒間熱金型に接触、側面に6面の略平面部を持つ形状の500mlボトルを得た。
成形前にブロー金型を綺麗に拭き取り、以後金型を清掃することなく連続して成形を繰り返した。
【0080】
(10)延伸中空成形体のヘイズ(霞度%)
(9)で得たボトル胴部の略平面部のうち、金型の接合部に相当する部分の中央を横22mm×縦55mmになるように切り取り測定用試料とした。試料の厚みは約0.4mmであった。この試料を日本電色(株)製ヘイズメーター、modelNDH2000で測定した。場所をずらして合計5回測定を行いその平均値をとった。
【0081】
(11)ポリエステルの溶融時の環状3量体増加量(△CT量)
乾燥したポリエステルチップ3gをガラス製試験管に入れ、窒素雰囲気下で290℃のオイルバスに60分浸漬させ溶融させた。溶融時の環状3量体増加量は、次式により求めた。
溶融時の環状3量体増加量(重量%)=
溶融後の環状3量体含有量(重量%)−溶融前の環状3量体含有量(重量%)
【0082】
次に、PETの製造に関して説明する。
【0083】
(PET−Aの製造)
3基の連続エステル化反応器及び3基の重縮合反応器よりなる重縮合装置を用いて行った。触媒は塩基性酢酸アルミニウム(ヒドロキシアルミニウムジアセテート)のエチレングリコール溶液、およびリン化合物としてIrgamod295(ビーエーエスエフ社製)のエチレングリコール溶液を用い、重縮合工程前に添加した。
エステル化工程では、250〜268℃の間で各反応容器の温度を上げ、重縮合では、270〜275℃の間で核反応容器の温度を上げながら減圧度を高め、IVが0.554dl/gのPETを得た。ポリエステルは、ストランド状に押し出し、水中で冷却した後カットして平均粒重36mgのチップとした。
なお、触媒は重縮合終了後の移行量がポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子として15ppmとなるように、リン原子として45ppmとなるように添加した。
【0084】
次いで得られたチップを連続式固相重合装置へ輸送した。窒素雰囲気下、約155℃で結晶化し、さらに窒素雰囲気下で約200℃に予熱後、連続固相重合反応器に送り窒素雰囲気下で約207℃で固相重合した。
引き続き振動式篩分工程および気流分級工程で処理してファイン及びフイルム状物を除去し、気流分級工程の下に設置した輸送用容器充填工程に接続するSUS304製の重力輸送配管の一部に、直鎖状低密度ポリエチレン(MI=約0.9g/10分、密度=約0.923g/cm)製の直径約1cmの棒状体を1段に10本、計5段取り付けた接触装置を取り付けた配管内部を、ファイン等除去したPETチップを落下させてポリエチレンとの接触処理を行った。
【0085】
得られたPET−Aの極限粘度は0.74dl/g、DEG含有量は2.5モル%、環状3量体の含有量は0.31重量%、環状3量体増加量は0.35重量%、AA含有量は2.4ppm、ポリエチレン含有量は約20ppbである。なお、ポリエチレン含有量は、他の触媒や重合条件でのPETを用いてこの装置での長期間PETを処理した際のPET処理量とポリエチレンの棒状体の重量減少から計算した値である。
【0086】
(PET−B)
アルミニウム化合物とリン化合物の溶液を、重縮合終了後の移行量がポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子として10ppm、リン原子として23ppmとなるように添加した以外は、PET−Aと同様に行った。なお、重合時間と圧力はPET−Aに合わせるため、若干の調整を行った。
【0087】
(PET−C)
アルミニウム化合物とリン化合物の溶液を、重縮合終了後の移行量がポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子として30ppm、リン原子として90ppmとなるように添加した以外は、PET−Aと同様に行った。なお、重合時間と圧力はPET−Aに合わせるため、若干の調整を行った。
【0088】
(PET−D)
ポリエチレンへの接触処理をしない以外は、PET−Aと同様にした。
【0089】
(PET−E)
溶融重合条件を変更して溶融重合後のPETのIVを0.65dl/gとし、固相重合条件を変更して0.72dl/gのPETを得た。
(PET−F)
リン化合物としてIrgamod195(ビーエーエスエフ社製)とした以外は、PET−Aと同様にした。
【0090】
(PET−Gの製造)
2缶式エステル化反応器に高純度テレフタル酸とエチルグリコ−ルとのスラリ−を連続的に供給し、撹拌下、250〜260℃で反応を行った。触媒の結晶性二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解し、これにエチレングリコ−ルを添加加熱処理した触媒溶液および燐酸のエチレングリコ−ル溶液を別々にこの第2エステル化反応器に連続的に供給した。このエステル化反応生成物を3缶式の重縮合反応器に供給し、撹拌下、約265〜275℃、最終の圧力0.5〜1torrで重縮合させた。溶融重縮合反応物を冷却イオン交換水で冷却しながら半固化状態でカットしてチップ化後、次いで連続式固相重合装置へ輸送した。窒素雰囲気下、約155℃で結晶化し、さらに窒素雰囲気下で約200℃に予熱後、連続固相重合反応器に送り窒素雰囲気下で約207℃で固相重合した。
【0091】
さらに得られた固相重合チップを95℃のイオン交換水が循環された熱水処理装置に連続的に供給し、樹脂の触媒失活を行った。
失活処理後、加熱した乾燥空気で連続的に乾燥し、引き続き振動式篩分工程および気流分級工程で処理してファイン及びフイルム状物を除去し、気流分級工程の下に設置した輸送用容器充填工程に接続するSUS304製の重力輸送配管の一部に、直鎖状低密度ポリエチレン(MI=約0.9g/10分、密度=約0.923g/cm)製の直径約1cmの棒状体を1段に10本、計5段取り付けた接触装置を取り付けた配管内部を、ファイン等除去したPETチップを落下させてポリエチレンとの接触処理を行った。
【0092】
得られたPET−Gの極限粘度は0.74dl/g、DEG含有量は2.5モル%、環状3量体の含有量は0.30重量%、環状3量体増加量は0.04重量%、AA含有量は2.3ppm、ポリエチレン含有量は約20ppbである。また蛍光X線分析により測定したGe残存量は47pm、またP残存量は30ppmであった。
【0093】
(PET−Hの製造)
PET−Gとは熱水による触媒失活処理を行わない以外、同様の方法でPET−Hを得た。
【0094】
(実施例1〜7、比較例1〜3)
PET−A〜Hを用いて連続ボトル成形を行った。一定成形回数毎にボトルでの胴部のヘイズ測定を行った。結果は表1に示す。
実施例1では35000回後であってもボトルヘイズの上昇は少なく、また、35000回で成形を終了して金型を観察したところ、大きな金型の汚れはなかった。
さらには40000、50000回、60000回以上の連続成形も可能であると考えられる。各実施例・比較例での成形回数とボトルヘイズとの関係を図1に示す。ヘイズが5%を超えた時点で連続成形の限界と考えると、10万回以上の連続成形も可能であることが予測される。
【0095】
実施例2〜6でも、20000回成形後のボトルヘイズの上昇は実施例1と同様であり、実施例1と同等の連続成形が可能である。金型取り出して観察したところ、いずれもほとんど金型の汚れはなかった。
実施例7、比較例3では金型温度を170℃で行った。実施例7は、実施例1と比較すると金型汚れは多くなったものの、成形後金型取り出して観察したところ大きな金型の汚れはなく、35000回以上の連続成形が可能であると予測できる。
【0096】
比較例1では35000回の連続成形でヘイズが6%を越え、連続成形が困難となった。
比較例2では10000回の連続成形でヘイズが6%を越え、連続成形が困難となった。
【0097】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の中空容器を成形する方法は、長期に亘り金型を清掃することなく連続ブロー成形を行うことが可能であり、生産性の向上、コスト低下、作業環境が向上し、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール基含有リン化合物およびアルミニウム化合物を触媒として重合されたポリエチレンテレフタレート、またはフェノール基含有リン化合物のアルミニウム塩を触媒として重合されたポリエチレンテレフタレートを用いて、一つの金型あたり10000回以上ブロー成形金型を清掃することなく連続して中空容器を成形する方法。
【請求項2】
フェノール基含有リン化合物が下記構造式の化合物であることを特徴とする請求項1記載の中空容器を成形する方法。
【化1】


(X1、X2はそれぞれ、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または1価以上の金属を表す。X1は、金属が2価以上であって、X2が存在しなくても良い。または、リン化合物に対して金属の余剰の価数に相当するアニオンが配置されていても良い。)
【請求項3】
ポリエチレンテレフタレート中のリン元素の濃度が5〜300ppm、アルミニウム元素の濃度が3〜100ppmであることを特徴とする請求項1または2に記載の中空容器を成形する方法。
【請求項4】
ポリエチレンテレフタレート中の環状3量体の含有量が0.2〜0.6質量%、ポリエチレンテレフタレートの極限粘度が0.6〜0.95dl/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中空容器を成形する方法。
【請求項5】
プリフォームを成形する工程、口栓部を結晶化する工程、プリフォームを再加熱する工程、再加熱されたプリフォームを金型内でブロー延伸する工程、ブロー延伸された中空成形体を加熱された金型内でヒートセットする工程、を含む請求項1〜4のいずれかに記載の中空容器を成形する方法。
【請求項6】
ブロー延伸でのボトル長さ方向の倍率が1.5〜6倍、ボトル周方向の倍率が2〜6倍であることを特徴とする、請求項5に記載の中空容器を成形する方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−76457(P2012−76457A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195770(P2011−195770)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】