説明

ブロー成形品の補強部材固定構造

【課題】 ブロー成形による中空二重構造体として一体成形された自動車用フロアリッドにおいて、補強部材挿入側に傾斜壁面を有する三角板状の凹陥部(突起部)を設け、かつ先端部を切削加工することにより容易に挿通用空洞部の間隙を調整することのできる構造をもったブロー成形品の補強部材固定構造体を提供する。
【解決手段】 プラスチック製中空二重壁構造体1の裏壁3に、補強部材挿通用空洞部の長手方向に所定の間隔を隔てて複数個の剛性を有する凹陥部6を挿通用空洞部の内側に張り出させて設ける。凹陥部6の断面は補強部材7の挿入側に傾斜部を有する三角板状とし、補強部材7の挿入方向に細長形状の幅をもつ突起部9を設ける。各凹陥部6の三角板状部の頂点を、挿通される補強部材7に当接させて補強部材7を挿通用空洞部内部に押し込み固定できるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用フロアリッド等のプラスチック製中空二重壁構造のブロー成形されたリンフォース補強ボードに関し、ブロー成形品本体を補強するために挿入された補強部材の固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車用フロアリッドは、固定構造として凹陥部を成形品本体の裏面より空洞部の内側に張り出させて設け、更に各凹陥部を基部として空洞部の内側に突出する小突起を設け、この小突起を挿通するパイプ部材に当接させて固定する方式、また半円弧状の突起をリッド本体の裏面から空洞部の内側に膨出させて、挿通するパイプ部材に当接させて固定する方式などの方法が提案されている。
【0003】
例えば特許第3472460号(テイ・エス テック株式会社)では、図6に示すように、凹陥部5aに小突起5bを設けて構成されているが、この凹陥部5aと小突起5bとの境界部に鋭角の段部ができ、補強材の角鋼パイプPを挿入する際に先端角部と小突起5bが衝突し、衝撃により小突起5bが根本から切断されるという問題があった。
【0004】
一方、小突起5bは凹陥部5aを基部として更に点状に突出させる関係から、空洞部における間隙の調整幅が狭く、また成形品本体の壁面は成形金型に接触しないため均一な肉厚とならず、予め設定した寸法に収まらないという問題があった。
【0005】
更に、小突起5bをブロー成形にて形成するためには、凹陥部5a成形用の突出した金型キャビティ先端面に点状に突出した小突起を設ける必要があり、挿通用空洞部の間隙調整が大変であり、非常に高価なものとなるといった問題があった。
【特許文献1】特許第3472460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するものであり、補強部材挿入側に傾斜壁面を有する三角板状の凹陥部(突起部)を上下方向の位置規制部として設け、かつ先端部を切削加工することにより容易に挿通用空洞部の間隙を調整することのできる構造をもったブロー成形品の補強部材固定構造体を、簡単な金型を用いてブロー成形により成形することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のブロー成形品の補強部材固定構造は、プラスチック製中空二重壁構造の裏面壁上に、前記補強部材挿通用空洞部の長手方向に所定の間隔を隔てて複数個の剛性を有する凹陥部を挿通用空洞部の内側に張り出させて設け、かつ凹陥部断面は補強部材の挿入側に傾斜部を有する三角板状であり、該補強部材挿入方向に細長形状の幅をもつ突起形状に設け、前記各凹陥部の三角板状部の頂点を、挿通される補強部材に当接させて、該補強部材を挿通用空洞部内部に押し込み固定できるように構成したことを特徴とする。
【0008】
また三角板状部の傾斜角度は45度以下とし、挿入方向に対する幅は挿入される補強部材の寸法よりも小さく設定したことを特徴とする。
【0009】
このような簡単な構造を採用したことにより、この凹陥部の三角板状部先端を容易に切削加工することができ、挿通用空洞部の間隙調整も簡単に行うことが可能となり、各凹陥部の三角板状部の頂点を補強部材に密接に当接させることができ、該補強部材を挿通用空洞部内部に押し込み強固に固定できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、前述の通り構成されているので、以下の効果を実現できる。
【0011】
ブロー成形による中空二重構造体として一体成形された自動車用フロアリッドであり、補強部材挿入側に傾斜壁面を有する三角板状の凹陥部(突起部)を上下方向の位置規制部として設け、かつ先端部を切削加工することにより容易に挿通用空洞部の間隙を調整することのできる構造をもったブロー成形品の補強部材固定構造体を、従来よりも簡単な金型を用いて、歩留まり良く安価に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明のプラスチック製中空二重壁構造体のブロー成形品の全体斜視図を示し、ブロー成形により一体成形される。間隔をおいて対向する表壁及び裏壁とこの周縁部を閉塞する周囲壁からなり、空洞部の長手方向中央部に補強材挿通用空洞部が設けられ、この挿通用空洞部の長手方向に所定の間隔を隔てて複数個の剛性を有する凹陥部を成形品本体の裏面より前記挿通用空洞部の内側に張り出させて形成されている。これにより内部空間よりも相対的に小さな断面形状をもった挿入された補強部材を固定するものである。補強部材としては、円筒形パイプ部材、角形部材等が使用できる。
【0014】
図2、図3は前記凹陥部の横断面形状を示すもので、この凹陥部は補強部材の挿入側に傾斜部を有する三角板状であり、かつ該補強部材挿入方向に細長形状の幅をもつ突起形状に設け、前記各凹陥部の三角板状の頂点を、挿通される補強部材に当接させて、該補強部材を挿通用空洞部内部に押し込み固定できるように形成されたものである。
【0015】
図3は中空二重壁構造体の開口部から挿通用空洞部内部に補強部材を挿入し、前記突起部と当接した状態を示す。この突起部の傾斜角は45度以下になるように形成してあり、これにより適度の剛性をもって補強部材を押さえ込み、ガタのない強固な固定が可能である。
【0016】
図4は角形部材を補強部材に用いて固定された例を示す縦断面図(長手方向)である。凹陥部の挿入方向に対して細長形状の幅寸法は、角形部材の幅寸法より小さく形成されている。
【0017】
図5は円筒形パイプ部材を補強部材に用いて固定された例を示す縦断面図(長手方向)である。凹陥部の挿入方向に対して細長形状の幅寸法は、パイプ部材の直径寸法より小さく形成されている。パイプ部材の例では更に横方向へのズレを規制するための側面規制リブ(インナーリブ)を設けてある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プラスチック製中空二重壁構造体のブロー成形品の全体斜視図を示す。
【図2】図1における凹陥部の横断面図を示す。
【図3】図2において、挿入された補強材が突起部に当接した状態を示す凹陥部の横断面図である。
【図4】角形部材を補強部材に用いて固定された例を示す縦断面図(長手方向)である。
【図5】円筒形パイプ部材を補強部材に用いて固定された例を示す縦断面図(長手方向)である。
【図6】従来例を示す。
【符号の説明】
【0019】
1 プラスチック製中空二重壁構造体
2 中空二重壁構造体の表壁
3 中空二重壁構造体の裏壁
4 中空二重壁構造体の周囲壁
5 表皮材
6 凹陥部
7 補強部材
8 開口部(補強部材挿入口)
9 突起部
10 側面規制リブ(インナーリブ)
11 突起部の傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて対向する表壁及び裏壁と、前記表壁及び前記裏壁の周辺部を閉塞するための周囲壁を有するプラスチック製中空二重壁構造のブロー成形品からなり、該成形品の本体を補強するために、中空二重壁構造体の中央部に形成された補強部材挿通用空洞部の内部空間よりも相対的に小さな断面形状をもった補強部材等を、該挿通用空洞部の内部に挿通固定するようなブロー成形品の補強部材固定構造において、前記挿通用空洞部の長手方向に所定の間隔を隔てて複数個の剛性を有する凹陥部を成形品本体の裏面より前記挿通用空洞部の内側に張り出させて設けるとともに、前記凹陥部断面は補強部材の挿入側に傾斜部を有する三角板状とし、かつ該補強部材挿入方向に細長形状の幅をもつ突起形状に設け、前記各凹陥部の三角板状の頂点を、挿通される補強部材に当接させて、該補強部材を挿通用空洞部内部に押し込み固定したことを特徴とするブロー成形品の補強部材固定構造。
【請求項2】
前記三角板状部の傾斜角度は、補強部材挿入方向に対して45度以下の角度であることを特徴とする請求項1記載のブロー成形品の補強部材固定構造。
【請求項3】
前記三角板状部の挿入方向に対する幅は挿入される補強部材の寸法よりも小さいことを特徴とする請求項1記載のブロー成形品の補強部材固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−281874(P2006−281874A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101573(P2005−101573)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】