説明

ブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理方法及び装置

【課題】 残留コンクリートの現場処理に要する費用及び場所と労力を軽減させる。
【解決手段】 コンクリートポンプによりホッパ2より吸入してポンプ出口13へ吐出させるコンクリートを、多段式ブーム4に支持させたコンクリート配管8と、その先端側の根元ホース9及び先端ホース11を介して打設するようにしてあるブーム付きコンクリートポンプ車にて、コンクリート打設作業終了後に、コンクリートの流路の下流側開口よりスポンジのような詰物12を挿入してからコンクリートポンプを逆転させて、残留コンクリート14をホッパ2へ吸い戻す。次いで、ポンプ出口13に繋ぎ替えたフレキシブルホース15の先端側を、多段式ブーム4の先端部に吊下げた状態でアジテータ車のホッパへ向けて配置し、しかる後、コンクリートポンプを運転してホッパ2内の残留コンクリート14をアジテータ車へ排出して、残留コンクリート14の量を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブーム付きコンクリートポンプ車によるコンクリート打設作業の終了時点で該ブーム付きコンクリートポンプ車におけるホッパやコンクリート配管等のコンクリートの流路に残留するコンクリートを処理するために用いるブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートポンプ車のうち、たとえば、高層建築物の建造に伴う高所でのコンクリート打設作業、広範囲のコンクリート打設作業、コンクリートポンプ車の停車位置から所要距離離れた個所でのコンクリート打設作業等においては、図4(イ)(ロ)にその一例の概略を示す如きブーム付きコンクリートポンプ車が広く利用されている。
【0003】
すなわち、図4(イ)(ロ)に示したブーム付きコンクリートポンプ車は、車体後部のデッキ1上に、ホッパ2と、該ホッパ2内にあるコンクリート(生コンクリート)を吸入してポンプ出口より吐出するようにしてある図示しないコンクリートポンプが設けてある。
【0004】
又、上記デッキ1上には、旋回フレーム3を図示しない油圧作動機器により旋回動作可能に搭載してあると共に、該旋回フレーム3の上側に、該旋回フレーム3上に下端側を起伏自在に取り付けて起伏動作可能としてある下段ブーム5と、該下段ブーム5の上端部に基端側を起伏自在に連結して該下段ブーム5に対し起伏動作可能としてある中段ブーム6と、該中段ブーム6の先端部に基端側を起伏自在に連結して該中段ブーム6に対し起伏動作可能としてある上段ブーム7とから構築してなる多段式(図では3段式)のブーム4が設置してある。
【0005】
更に、上記図示しないコンクリートポンプのポンプ出口に基端部を接続したコンクリート配管8を、上記デッキ1に沿わせた後、上記多段式ブーム4の各段のブーム5,6,7に沿わせて支持させるようにしてある。
【0006】
上記コンクリート配管8の先端側には、図4(ロ)に示す如く、コンクリート吐出用のホースとして、可撓性を有する根元ホース9の基端部を接続すると共に、該根元ホース9の先端側を、上記多段式ブーム4の先端部となる上段ブーム7の先端部に取り付けた円弧状のホースガイド10にガイドさせて垂下させ、更に、図4(イ)に示す如く、上記根元ホース9の先端部に、コンクリート吐出用ホースとしての先端ホース11を接続した構成としてある。
【0007】
以上の構成としてあるブーム付きコンクリートポンプ車を用いてコンクリートの打設作業を行う場合は、上記旋回フレーム3による多段式ブーム4の旋回と、該多段式ブーム4における各段のブーム5,6,7の起伏動作を適宜組み合わせることで、上記多段式ブーム4の先端部をコンクリート打設個所付近へ移動させると共に、該多段式ブーム4の先端部より根元ホース9を介して垂下させてある先端ホース11の先端吐出口11aを、コンクリート打設個所に臨ませて配置し、この状態で、上記図示しないコンクリートポンプを運転して上記ホッパ2内のコンクリートを吸入してポンプ出口より吐出させることで、該吐出されるコンクリートを、コンクリート配管8と根元ホース9を経て先端ホース11へ導いて、該先端ホース11の先端吐出口11aよりコンクリート打設個所へ打設するようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
ところで、上記ブーム付きコンクリートポンプ車によるコンクリート打設作業の終了時点では、上記ホッパ2内や、図示しないコンクリートポンプよりコンクリート配管8と根元ホース9と先端ホース11を経て該先端ホース11の先端吐出口11aに至るコンクリートの流路の内部に、コンクリートが残留している。そのため、コンクリート打設作業の終了後には、コンクリート流路の閉塞防止や、次回のコンクリート打設作業時における残コンクリート塊の混入を防止するために、上記ホッパ2内、及び、コンクリート流路である上記コンクリート配管8、根元ホース9、先端ホース11の内部に残留しているコンクリートを除去(洗浄)する必要がある。
【0009】
この種のブーム付きコンクリートポンプ車における残留コンクリートを処理する手法として、当初は、コンクリート配管8の基端部に上記図示しないコンクリートポンプのポンプ出口に接続するために設けてある曲管(図示せず)を取り外して該コンクリート配管8の基端側を開口させ、このコンクリート配管8の基端側の開口よりスポンジ等の詰物を挿入した後、高圧水ポンプより圧送される高圧水を、上記コンクリート配管8の基端側より該コンクリート配管8内へ圧入させるようにして、この高圧水の圧力により上記詰物をコンクリート配管8、根元ホース9、先端ホース11の全長に亘り圧送させて、コンクリート流路内の残留コンクリートを押し出すようにする水洗浄方式や、上記と同様にコンクリート配管8の基端側の開口より挿入した詰物を、高圧水に代えて空気圧縮機より供給される圧縮空気の圧力により、コンクリート配管8、根元ホース9、先端ホース11の全長に亘り圧送させて、コンクリート流路内の残留コンクリートを押し出すようにする空気洗浄方式が多く採られていた。
【0010】
なお、ピストン式のコンクリートポンプの残留コンクリート処理方法としては、コンクリートポンプを空運転して、発生する空気圧によりホッパ内及びコンクリート配管(コンクリート輸送管)内に残留する残留コンクリートの一部をコンクリート配管の先端部より排出させ、次に、スポンジをホッパからコンクリートポンプのコンクリートシリンダを経てコンクリート配管内へ送り込み、次いで、水をホッパ内へ供給してからコンクリートポンプを運転して、その際発生する水圧若しくは水圧と空気圧により上記コンクリート配管内へ送り込んだスポンジを圧送して残留コンクリートをコンクリート配管の先端側より排出させるようにする手法が従来提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特願2007−23650号公報
【特許文献2】特許2895322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上記従来の水洗浄方式では、コンクリート配管8の基端側の開口から挿入した詰物を、高圧水ポンプより供給される高圧水の圧力により、コンクリート配管8と根元ホース9と先端ホース11の全長に亘り圧送するようにしてあるため、上記詰物が先端ホース11の先端吐出口11aより排出された時点で、該詰物を圧送するために用いられていた高圧水が噴き出すように流出することがある。更に、上記残留コンクリートの排出を行わせた後には、コンクリート配管8と根元ホース9と先端ホース11からなるコンクリート流路の内部に多量の水が残るが、この水にはセメント分が含まれているため、このセメント分を含んだ多量の残水の処理が必要になってしまう。
【0013】
又、上記従来の空気洗浄方式では、水を使用しないため、残水処理の問題は生じないが、コンクリート配管8の基端側の開口から挿入した詰物を、空気圧縮機より供給される圧縮空気の圧力により、コンクリート配管8と根元ホース9と先端ホース11の全長に亘り圧送するようにしてあるため、上記詰物が先端ホース11の先端吐出口11aより排出されるときに、圧縮空気の暴発によって該詰物が先端吐出口11aより勢いよく飛ばされる虞があるため、そのための対策を講じなければならない。
【0014】
特許文献2に示されたコンクリートポンプの残留コンクリート処理方法では、ホッパ内の機械可動部で洗浄前準備を行う必要があるため、取り扱いを間違えると重大な事故につながる虞が懸念される。しかも、この手法においても、スポンジを圧送するために用いた水の残水処理の必要が生じてしまう。
【0015】
以上の点に鑑みて、本発明者等は、図4(イ)(ロ)に示したと同様のブーム付きコンクリートポンプ車における残留コンクリートの処理を行う際に、ホッパ2内の機械可動部での洗浄前準備が不要で、且つ水を使用しないことで残水処理の必要がなく、更に、スポンジ等の詰物が先端ホース11の先端吐出口11a等のコンクリート流路の先端側の開口より勢いよく飛び出す虞のない残留コンクリートの処理方法として、コンクリート流路の先端側の開口となる先端ホース11の先端吐出口11a、あるいは、先端ホース11を取り外した状態の根元ホース9の先端側の開口にスポンジ等の詰物を挿入した後、図示しないコンクリートポンプを逆転させて、コンクリート打設作業時とは逆にコンクリート配管8側よりコンクリートを吸入してホッパ2へ排出させるようにすることで、先端ホース11、根元ホース9、コンクリート配管8の内部に残留している残留コンクリートを、ホッパ2内へ吸い戻すようにする所謂吸い戻し洗浄を検討している。
【0016】
しかし、上記残留コンクリートの吸い戻し洗浄を行う場合は、ホッパ2内へ吸い戻される残留コンクリートの量が500Lにもなることがあり、膨大な量の残留コンクリートが発生してしまう。
【0017】
そのため、このホッパ2内の膨大な量の残留コンクリートを、現場でそのまま取り出して処理する場合は、産業廃棄物として処理する必要があるため、施工主による上記残留コンクリートを処理するための費用と場所の負担が増加するという問題が生じてしまう。又、コンクリートポンプのオペレータに、上記膨大な量の残留コンクリートを清掃するための手間及び労力が要求されるため、負荷がかかってしまう。
【0018】
なお、上記ホッパ2内に吸い戻された残留コンクリートを、手動でアジテータ車(コンクリートミキサー車)のホッパへ投入するようにすれば、現場で処理する残留コンクリートの量を減少させることができると考えられるが、この場合、上記アジテータ車(コンクリートミキサー車)のホッパが高所位置にあるため、作業者の労力が多大なものとなるという問題が生じてしまう。
【0019】
そこで、本発明は、ブーム付きコンクリートポンプ車におけるコンクリート打設終了時にコンクリート配管や根元ホースや先端ホース等のコンクリート流路の内部に残留している残留コンクリートをホッパ内へ吸い戻すと共に、ホッパ内に吸い戻された残留コンクリートを容易に且つ安全にアジテータ車(コンクリートミキサー車)のホッパ等の所要の残留コンクリート処理個所へ排出することができて、現場処理する残留コンクリートの量を低減させることができ、残留コンクリートの処理に要する施工主の費用と場所の負担の軽減化を図ることができると共に、コンクリートポンプのオペレータの労力の大幅な軽減化を図ることができるブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、コンクリートポンプによりホッパより吸入してポンプ出口へ吐出するコンクリートを、多段式ブームに沿わせて配設したコンクリート配管と、上記多段式ブームの先端部より垂下させる根元ホース及び先端ホースを介して所要の打設個所へ導いてコンクリート打設作業を行うようにしてあるブーム付きコンクリートポンプ車におけるコンクリート打設作業終了後に、上記コンクリートポンプより吐出するコンクリート流路の下流側の開口部に詰物を挿入した後、上記コンクリートポンプを逆転させて、上記コンクリート流路内に残留している残留コンクリートを上記ホッパへ吸い戻し、次に、上記コンクリートポンプのポンプ出口にフレキシブルホースの基端部を繋ぎ替え、次いで、上記フレキシブルホースの先端部を、残留コンクリートの排出を望む所要個所へ向けて配置し、しかる後、上記コンクリートポンプを運転して、上記ホッパへ吸い戻された残留コンクリートを、上記ポンプ出口よりフレキシブルホースを経て上記所要個所へ排出させるブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理方法とする。
【0021】
又、上記構成において、コンクリートポンプのポンプ出口に繋ぎ替えるフレキシブルホースの先端寄りを、多段式ブームの先端部に吊下げ支持させるようにする。
【0022】
同様に、上記構成において、コンクリートポンプのポンプ出口に繋ぎ替えるフレキシブルホースの先端部を、多段式ブームの先端部に保持してあるコンクリート配管における途中位置を取り外した後に先端側に残る部分に繋ぐようにする。
【0023】
更に、上述の各構成において、ホッパへ吸い戻された残留コンクリートを、コンクリートポンプの運転によりポンプ出口に接続したフレキシブルホースを経てアジテータ車のホッパへ排出させるようにする。
【0024】
更に又、上述の各構成におけるフレキシブルホースとして、コンクリート打設作業時にコンクリート流路として用いた先端ホースを使用するようにする。
【0025】
又、請求項6に対応して、コンクリートポンプによりホッパより吸入してポンプ出口へ吐出するコンクリートを、多段式ブームに沿わせて配設したコンクリート配管と、上記多段式ブームの先端部より垂下させる根元ホース及び先端ホースを介して所要の打設個所へ導いてコンクリート打設作業を行うようにしてあるブーム付きコンクリートポンプ車における上記コンクリートポンプのポンプ出口に上記コンクリート配管に代えて基端部を着脱可能に繋ぎ替えることができるようにしたフレキシブルホースを備え、上記コンクリート打設作業時におけるコンクリート流路より上記ホッパへ吸い戻した残留コンクリートを、上記ポンプ出口に繋ぎ替えた上記フレキシブルホースを通して所要の残留コンクリート処理個所へ排出できるようにした構成を有するブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理装置とする。
【0026】
更に、上記構成におけるフレキシブルホースの先端側を、多段式ブームの先端部に取り付けた吊下げ具に吊下げ支持させるようにした構成とする。
【0027】
同様に、上記構成におけるフレキシブルホースの先端部を、多段式ブームの先端部に位置するコンクリート配管の途中位置に取り外し可能に繋ぐことができるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)コンクリートポンプによりホッパより吸入してポンプ出口へ吐出するコンクリートを、多段式ブームに沿わせて配設したコンクリート配管と、上記多段式ブームの先端部より垂下させる根元ホース及び先端ホースを介して所要の打設個所へ導いてコンクリート打設作業を行うようにしてあるブーム付きコンクリートポンプ車におけるコンクリート打設作業終了後に、上記コンクリートポンプより吐出するコンクリート流路の下流側の開口部に詰物を挿入した後、上記コンクリートポンプを逆転させて、上記コンクリート流路内に残留している残留コンクリートを上記ホッパへ吸い戻し、次に、上記コンクリートポンプのポンプ出口にフレキシブルホースの基端部を繋ぎ替え、次いで、上記フレキシブルホースの先端部を、残留コンクリートの排出を望む所要の残留コンクリート処理個所へ向けて配置し、しかる後、上記コンクリートポンプを運転して、上記ホッパへ吸い戻された残留コンクリートを、上記ポンプ出口よりフレキシブルホースを経て上記残留コンクリート処理個所へ排出させるようにするブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理方法及び装置としてあるので、現場処理すべき残留コンクリートの量を、水や圧縮空気を用いることなく大幅に低減させることができる。よって、施工主の残留コンクリートの処理に要する費用と場所の負担を軽減させることができると共に、コンクリートポンプのオペレータの労力も大幅に軽減させることができる。
(2)コンクリートポンプのポンプ出口に繋ぎ替えるフレキシブルホースの先端寄りを、多段式ブームの先端部に取り付けた吊下げ具に吊下げ支持させるようにするか、又は、コンクリートポンプのポンプ出口に繋ぎ替えるフレキシブルホースの先端部を、多段式ブームの先端部に保持してあるコンクリート配管における途中位置を取り外した後に先端側に残る部分に繋ぐようにすることにより、残留コンクリートの排出を望む所要個所が高所位置であっても、多段式ブームを利用することでフレキシブルホースを人力で高所位置まで持ち上げる必要をなくすことができると共に、高所作業も不要にできるため、コンクリートポンプのオペレータの労力を更に軽減させることができる。
(3)ホッパへ吸い戻された残留コンクリートを、コンクリートポンプの運転によりポンプ出口に接続したフレキシブルホースを経てアジテータ車のホッパへ排出させるようにすることにより、ブーム付きコンクリートポンプ車のホッパ内に吸い戻した残留コンクリートを、硬化を未然に防止した状態でアジテータ車を利用して現場より容易に搬出することが可能になる。
(4)フレキシブルホースとして、コンクリート打設作業時にコンクリート流路として用いた先端ホースを使用するようにすることにより、最終的に行うフレキシブルホース内に付着している残留コンクリートの洗浄処理で、コンクリート打設作業時に使用した先端ホースの内部に付着している残留コンクリートの洗浄処理を兼ねることができるため、作業に要する手間及び労力をより軽減するのに有利なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理方法及び装置の実施の一形態におけるコンクリート流路の内部に残留する残留コンクリートをホッパへ吸い戻す状態を示す概略側面図である。
【図2】本発明のブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理装置により、ホッパ内に吸い戻した残留コンクリートをポンプ出口よりフレキシブルホースを経て排出させる状態を示す概略側面図である。
【図3】本発明の実施の他の形態を示すもので、図2に対応する図である。
【図4】従来のブーム付きコンクリートポンプ車の一例を示すもので、(イ)は概略斜視図、(ロ)は多段式ブームの先端部分を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0031】
図1及び図2は本発明のブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理方法及び装置の実施の一形態を示すもので、以下のような構成としてある。
【0032】
すなわち、図4(イ)(ロ)に示したと同様の構成としてある多段式ブーム4(なお、図では、中段ブーム6を2段備えた4段式のものが示してある)を具備したブーム付きコンクリートポンプ車におけるコンクリート打設作業終了後に、先ず、図示しないコンクリートポンプより吐出されるコンクリートの流路となるコンクリート配管8、根元ホース9、先端ホース11の先端側の開口、たとえば、図1に示すように、根元ホース9の先端部より先端ホース11が取り外してある場合は、上記根元ホース9の先端側の開口に、上記コンクリート配管8や根元ホース9の内径よりもやや大きなサイズとして圧縮状態からの復元力により上記コンクリート配管8や根元ホース9の内面に密着できるようにしてあるスポンジ等の詰物12を挿入する。
【0033】
次いで、上記図示しないコンクリートポンプを逆転させ、コンクリート配管8が接続してあるポンプ出口13側よりコンクリートを吸入してホッパ2へ排出させることで、上記根元ホース9とコンクリート配管8の内部に残留している残留コンクリート14を、ホッパ2内へ吸い戻す。
【0034】
その後、上記図示しないコンクリートポンプのポンプ出口13とコンクリート配管8の基端部との接続部分の配管、たとえば、上記コンクリート配管8の基端部の曲管(図示せず)を取り外し、このコンクリート配管8の曲管が取り外された上記コンクリートポンプのポンプ出口13に、図2に示すように、所要の長さ寸法、たとえば、5〜7m程度のゴムホース等のフレキシブルホース15の基端部を接続する。
【0035】
更に、上記フレキシブルホース15は、上記コンクリートポンプのポンプ出口13への接続を行う以前、又は、ポンプ出口13への接続を行った後に、多段式ブーム4の先端部を地面付近まで下降させた状態で、該フレキシブルホース15の先端寄りの所要個所を、上記多段式ブーム4の先端部に設けてあるホースガイド10に吊下げ具16を介し吊下げて保持させるようにし、その後、上記多段式ブーム4の先端部の移動に伴って上記ホースガイド10に吊下げ具16を介し先端寄りを吊下げて保持させてある上記フレキシブルホース15の先端側の開口を、残留コンクリート14の排出を望む所要の残留コンクリート処理個所、たとえば、図示しないアジテータ車(コンクリートミキサー車)のホッパに臨むように配置させる。
【0036】
しかる後、上記図示しないコンクリートポンプを、ホッパ2内の残留コンクリート14を吸入してポンプ出口13より吐出するように運転し、これにより、上記ホッパ2内に吸い戻されている上記残留コンクリート14を、ポンプ出口13より上記フレキシブルホース15を経て、上記図示しないアジテータ車のホッパへ排出させるようにする。
【0037】
この際、上記図示しないコンクリートポンプの運転は、上記ホッパ2内の残留コンクリート14の吸入が行えなくなった後も所要時間空運転して、発生する空気圧により上記ポンプ出口13から上記フレキシブルホース15の内部に存在する残留コンクリート14を、できるだけ上記図示しないアジテータ車のホッパへ排出させるようにすればよい。
【0038】
上記図示しないアジテータ車のホッパへ排出された残留コンクリート14は、該アジテータ車により撹拌して硬化を未然に防止した状態で生コンクリートプラント等の所要の処理設備へ搬送するようにすればよい。
【0039】
なお、図1及び図2において、図4(イ)(ロ)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0040】
このように、本発明のブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理方法及び装置によれば、現場処理すべき残留コンクリート14の量を、上記ホッパ2とフレキシブルホース15の内部に付着している残留コンクリート14の量にまで減らすことができる。
【0041】
この際、上記フレキシブルホース15の長さ寸法は、上記ブーム付きコンクリートポンプ車に装備されているコンクリート配管8と根元ホース9の全長の和に比して大幅に短いため、上記フレキシブルホース15の内部に付着して残留する残留コンクリート14の量は、上記コンクリート配管8及び根元ホース9の内部に付着して残留していた残留コンクリート14の量に比して大幅に減少する。
【0042】
よって、上記根元ホース9及びコンクリート配管8の内部よりホッパ2内へ吸い戻された残留コンクリート14の量が、たとえば、500Lであるとしても、これを、60〜100L程度と、従来の水洗浄方式や空気洗浄方式等の他の残留コンクリート処理方法と同等量にまで減少させることができる。
【0043】
なお、上記フレキシブルホース15の内部に付着した残留コンクリート14は、該フレキシブルホース15の先端側の開口にスポンジ等の詰物を挿入した後、上記図示しないコンクリートポンプを逆転してホッパ2へ吸い戻すようにして、該フレキシブルホース15の吸い戻し洗浄を行うか、あるいは、水洗処理するようにすればよい。このように水洗する場合であっても、水の使用量は、従来のコンクリート配管8の基端部に挿入した詰め物を高圧水の圧力によって該コンクリート配管8や根元ホース9の全長に亘って圧送させる場合に必要とされる水の量に比して大幅に低減させることができるため、大掛かりな排水処理のための装備を不要にできる。
【0044】
以上により、施工主の残留コンクリートの処理に要する費用と場所の負担を軽減させることができると共に、上記図示しないコンクリートポンプのオペレータの労力も大幅に軽減させることが可能となる。
【0045】
しかも、高所位置にある上記図示しないアジテータ車のホッパへ残留コンクリート14を排出する場合であっても、上記フレキシブルホース15を人力で高所位置まで持ち上げる必要は全くなく、高所作業も不要なため、このことによっても、上記図示しないコンクリートポンプのオペレータの労力を軽減させることができる。
【0046】
次に、図3は本発明の実施の他の形態を示すもので、図1に示したと同様にコンクリート配管8及び根元ホース9内の残留コンクリート14のホッパ2への吸い戻し処理を行った後、図2における図示しないコンクリートポンプのポンプ出口13に繋ぎ替えるフレキシブルホース15の先端寄りの所要個所を多段式ブーム4の先端部のホースガイド10に吊下げ具16を介して吊下げて支持させるようにする構成に代えて、上記多段式ブーム4の先端部となる上段ブーム7を地面付近まで下降させた状態で、該上段ブーム7に沿って配設してあるコンクリート配管8の途中個所を部分的に取り外すと共に、該取り外した部分よりもブーム先端側に残るコンクリート配管8の基端部に、上記図示しないコンクリートポンプのポンプ出口13に基端部を接続したフレキシブルホース15の先端部を、直接、あるいは、図3に示すように接続用の曲管17を介して接続するようにしたものである。
【0047】
その他の構成は図1及び図2に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0048】
本実施の形態によれば、図1に示したと同様の手順で、上記コンクリート配管8や根元ホース9より残留コンクリート14をホッパ2へ吸い戻した後、図3に示したように、上記多段式ブーム4の上段ブーム7に沿わせて配設してあるコンクリート配管8の途中個所を部分的に取り外すと共に、該取り外した部分よりもブーム先端側に残るコンクリート配管8の基端部と、図示しないコンクリートポンプのポンプ出口13とを、上記曲管17とフレキシブルホース15を介して接続する。
【0049】
その後、上記多段式ブーム4の先端部の移動に伴って該多段式ブーム4の先端部のホースガイド10にガイドさせて垂下させた根元ホース9の先端部を、残留コンクリート14の排出を望む所要の残留コンクリート処理個所、たとえば、図示しないアジテータ車(コンクリートミキサー車)のホッパに向けて配置させ、しかる後、上記図示しないコンクリートポンプを、ホッパ2内の残留コンクリート14を吸入してポンプ出口13より吐出するように運転することで、上記ホッパ2内に吸い戻されている残留コンクリート14を、ポンプ出口13より上記フレキシブルホース15及び曲管17と、多段式ブームの先端部のコンクリート配管8と、根元ホース9を経て、上記図示しないアジテータ車のホッパへ排出させるようにする。
【0050】
この際、上記フレキシブルホース15及び曲管17と、多段式ブームの先端部のコンクリート配管8と、根元ホース9の長さ寸法の和は、上記ブーム付きコンクリートポンプ車にてコンクリート打設作業を行う際のコンクリート流路となるコンクリート配管8と根元ホース9の全長の和に比して大幅に短いため、残留コンクリート14の量を、上記ホッパ2内と、フレキシブルホース15と曲管17と多段式ブーム4の先端部のコンクリート配管8と根元ホース9の内部に付着して残留する残留コンクリート14の量にまで低減させることができる。
【0051】
したがって、本実施の形態によっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、残留コンクリート14のホッパ2への吸い戻し処理を行うときに、根元ホース9の先端側に先端ホース11を接続した状態で、該先端ホース11の先端吐出口11aに上記詰物12を挿入した状態で、上記図示しないコンクリートポンプの逆転を行わせるようにしてもよい。このようにすれば、先端ホース11の内部に残留する残留コンクリート14も吸い戻し洗浄を行うことができる。
【0053】
又、残留コンクリート14のホッパ2への吸い戻し処理を行った後、上記図示しないコンクリートポンプのポンプ出口13に繋ぎ替えるフレキシブルホース15として、根元ホース9の先端側より取り外した先端ホース11を使用するようにしてもよい。このようにすれば、最終的に行うフレキシブルホース15内に付着している残留コンクリート14の洗浄処理により、該フレキシブルホース15として用いる先端ホース11の内部に付着している残留コンクリート14の洗浄処理を兼ねることができるようになるため、作業に要する手間及び労力をより軽減するのに有利なものとすることができる。
【0054】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
2 ホッパ
4 多段式ブーム
8 コンクリート配管
9 根元ホース
11 先端ホース
13 ポンプ出口
14 残留コンクリート
15 フレキシブルホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートポンプによりホッパより吸入してポンプ出口へ吐出するコンクリートを、多段式ブームに沿わせて配設したコンクリート配管と、上記多段式ブームの先端部より垂下させる根元ホース及び先端ホースを介して所要の打設個所へ導いてコンクリート打設作業を行うようにしてあるブーム付きコンクリートポンプ車におけるコンクリート打設作業終了後に、上記コンクリートポンプより吐出するコンクリート流路の下流側の開口部に詰物を挿入した後、上記コンクリートポンプを逆転させて、上記コンクリート流路内に残留している残留コンクリートを上記ホッパへ吸い戻し、次に、上記コンクリートポンプのポンプ出口にフレキシブルホースの基端部を繋ぎ替え、次いで、上記フレキシブルホースの先端部を、残留コンクリートの排出を望む所要の残留コンクリート処理個所へ向けて配置し、しかる後、上記コンクリートポンプを運転して、上記ホッパへ吸い戻された残留コンクリートを、上記ポンプ出口よりフレキシブルホースを経て上記残留コンクリート処理個所へ排出させることを特徴とするブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理方法。
【請求項2】
コンクリートポンプのポンプ出口に繋ぎ替えるフレキシブルホースの先端寄りを、多段式ブームの先端部に吊下げ支持させるようにする請求項1記載のブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理方法。
【請求項3】
コンクリートポンプのポンプ出口に繋ぎ替えるフレキシブルホースの先端部を、多段式ブームの先端部に保持してあるコンクリート配管における途中位置を取り外した後に先端側に残る部分に繋ぐようにする請求項1記載のブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理方法。
【請求項4】
ホッパへ吸い戻された残留コンクリートを、コンクリートポンプの運転によりポンプ出口に接続したフレキシブルホースを経てアジテータ車のホッパへ排出させるようにする請求項1、2又は3記載のブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理方法。
【請求項5】
フレキシブルホースとして、コンクリート打設作業時にコンクリート流路として用いた先端ホースを使用するようにする請求項1、2、3又は4記載のブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理方法。
【請求項6】
コンクリートポンプによりホッパより吸入してポンプ出口へ吐出するコンクリートを、多段式ブームに沿わせて配設したコンクリート配管と、上記多段式ブームの先端部より垂下させる根元ホース及び先端ホースを介して所要の打設個所へ導いてコンクリート打設作業を行うようにしてあるブーム付きコンクリートポンプ車における上記コンクリートポンプのポンプ出口に上記コンクリート配管に代えて基端部を着脱可能に繋ぎ替えることができるようにしたフレキシブルホースを備え、上記コンクリート打設作業時におけるコンクリート流路より上記ホッパへ吸い戻した残留コンクリートを、上記ポンプ出口に繋ぎ替えた上記フレキシブルホースを通して所要の残留コンクリート処理個所へ排出できるようにした構成を有することを特徴とするブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理装置。
【請求項7】
フレキシブルホースの先端側を、多段式ブームの先端部に取り付けた吊下げ具に吊下げ支持させるようにした請求項6記載のブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理装置。
【請求項8】
フレキシブルホースの先端部を、多段式ブームの先端部に位置するコンクリート配管の途中位置に取り外し可能に繋ぐことができるようにした請求項6記載のブーム付きコンクリートポンプ車の残留コンクリート処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−74712(P2011−74712A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229620(P2009−229620)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000198293)IHI建機株式会社 (96)
【Fターム(参考)】