説明

プッシュスイッチ用接点構造

【課題】簡単な構造で、スイッチング抵抗の小さいプッシュスイッチ用接点構造を提供する。
【解決手段】押下可能に形成された押圧部14の裏側に一体に設けられ円柱状のセンターボス部20と、押圧部14の周囲に同心状にドーム状に形成された屈曲部16と、センターボス部20の端面に設けられた導体部22を備える。回路基板24表面には、導体部22と接続される接点26のパターンが櫛歯状に形成され、一対の電極が対向している。導体部22の直径が、接点26のパターン幅とギャップの和の長さのほぼ偶数倍の場合、接点26のパターンの中心に導体部22の中心を一致させる。導体部22の直径が、接点26のパターン幅とギャップの和の長さのほぼ奇数倍の場合、接点26のパターンのギャップ中心に導体部22の中心を一致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器の押しボタンやキーボード等の内部の接点に使用されるプッシュスイッチ用接点構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オーディオ機器や映像機器等の電子機器の操作用スイッチとして取り付けられた押しボタン式のスイッチとして、図6に示すように、例えば、弾性体の絶縁性屈曲部が一体に構成され、弾性変形可能でドーム状に形成されたラバースイッチ50が用いられる場合がある。
【0003】
このラバースイッチ50のスイッチ用接点構造54は、図6に示すように、図示しない押しボタンの下側に配置され、押しボタンを押下すると、押しボタン底面の凸部が押圧部52に当接し、押下可能に形成されている。ラバースイッチ50には、押圧部52の反対側のドーム内部に、センターボス部56が形成され、センターボス部56の端面にはカーボン等の導電体から成る導体部58が設けられている。そして、導体部58は、回路基板60上に形成された回路の一対の接点62を接続可能に、回路基板60表面と対面して設けられている。
【0004】
このプッシュスイッチ用接点構造54の動作は、押圧部52が押下されると、ドーム周辺の屈曲部64が弾性変形し、回路基板60に設けられた回路の一対の接点62に導体部58が接触しスイッチがオンするものである。
【0005】
また、特許文献1〜3には、一体形成したラバー製の押圧部を有し、その内部に導体部が設けられ、回路基板表面には導体部により接続される一対の接点が設けられたラバースイッチの接点構造が開示されている。
【特許文献1】特開平6−223675号公報
【特許文献2】特開平8−22739号公報
【特許文献3】特開2006−59725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術では、図7に示すように、導体部58は、接点62のパターンのギャップを中心CLとして配置されている。そのため、このプッシュスイッチ用接点構造54の抵抗回路は図8に示すようになり、回路図は図9に示すようになる。ここで、R1は、導体部58の抵抗値、r1,r2は、導体部58と接点62の接触抵抗である。従って、このプッシュスイッチ用接点構造54のスイッチング抵抗は、r1=r2=rとすると、R1+2rとなる。この抵抗値は、各部の抵抗が直列に接続されたことによるもので、比較的大きいものとなるという問題があった。特にラバースイッチの場合導体部58は樹脂中にカーボンを混合した導電ゴムや導電樹脂を用いており、比較的抵抗値の高いものであった。
【0007】
この発明は、上記従来技術の問題に鑑みて成されたもので、簡単な構造で、スイッチング抵抗の小さいプッシュスイッチ用接点構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、押圧部の押し下げにより導体が回路基板上の接点を閉じるプッシュスイッチ用接点構造であって、押下可能に形成された前記押圧部の裏側に一体に設けられ円柱状のセンターボス部と、前記押圧部の周囲に同心状にドーム状に形成された屈曲部と、前記センターボス部端面に設けられた導体部とを備え、前記回路基板表面には前記導体部と接続される接点のパターンが櫛歯状に形成されて一対の電極が対向し、前記導体部の直径が、前記接点パターン幅とギャップの和の長さのほぼ偶数倍の場合、前記接点パターンの中心に導体部の中心を一致させ、前記導体部の直径が、接点パターン幅とギャップの和の長さのほぼ奇数倍の場合、接点パターンのギャップ中心に導体部の中心を一致させたプッシュスイッチ用接点構造である。
【0009】
前記接点のパターンは、一方の接点が前記導体部の中心に位置し、他方の接点がギャップを挟んでその両側に位置している。
【発明の効果】
【0010】
この発明のプッシュスイッチ用接点構造によれば、このスイッチの接点構造をラバー材から一体形成されたラバースイッチに用いても、スイッチング抵抗が小さく、電圧損失の少ないプッシュスイッチを構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明のプッシュスイッチ用接点構造の一実施形態について、図1〜図5を基にして説明する。この実施形態のプッシュスイッチ用接点構造10は図4、図5に示すように、オーディオ機器や映像機器等の電子機器の操作用スイッチ11に用いられるもので、シリコンゴムなどにより弾性変形可能なドーム状に一体形成されたラバースイッチ12に用いられている。ラバースイッチ12は、中央に押下可能な円柱状の押圧部14が形成され、押圧部14の下端周囲には、所定幅で斜め下方へ廷出し、押圧部14と同心円状に環状の屈曲部16が形成されている。屈曲部16の下端縁には、同心円状に環状の取付部18が設けられ、ドーム状の空間が形成されている。
【0012】
押圧部14の内側には、押圧部14内で円柱状に突設されたセンターボス部20が形成されている。センターボス部20の端面には、カーボンなどにより適宜な厚みに形成された導体部22が設けられている。導体部22は、カーボンを含有した導電性ゴムや導電性樹脂により形成されている。
【0013】
この実施形態のプッシュスイッチ用接点構造10は、図1に示すように、回路基板24の表面には、導体部22と接続される接点26のパターンが櫛歯状に形成されて、一対の電極が対向している。導体部22は、接点26のパターンの中央部を中心CLとして配置されている。
【0014】
この実施形態のプッシュスイッチ用接点構造10によれば、このプッシュスイッチ用接点構造10の抵抗回路が図2に示すようになり、回路図は図3に示すようになる。ここで、R1,R2は導体部22の抵抗値、r1,r2,r3は導体部22と接点26の接触抵抗である。従って、このプッシュスイッチ用接点構造10のスイッチング抵抗は、r1=r2=r3=r、R1=R2=Rとすると、R/2+2rとなる。この抵抗値は、比較的抵抗の大きい導体部22の抵抗Rを半減させることができ、従来の接点構造と比較して、大幅にスイッチング抵抗を減らすことができる。
【0015】
なお、この発明のプッシュスイッチ用接点構造は上記実施形態に限定されるものではなく、櫛歯状の接点パターンの本数は適宜選択可能であり、基板上の回路の一対の接点を接続可能に取り付けられ、押圧部を押下することにより接点を閉じることができるものであればよい。従って、導体部22の直径が、接点26のパターン幅とギャップの和の長さの約偶数倍の場合、接点26のパターンの中心に導体部22の中心を一致させて、スイッチング抵抗値を小さくするように配置したものであればよい。また、導体部22の直径が、接点26のパターン幅とギャップの和の長さの約奇数倍の場合、接点26のパターンのギャップ中心に導体部22の中心を一致させる方が良い。また、大きさや形状等は適宜設定可能なものである。さらに、各部材の素材など適宜変更可能である。また用途も、電子機器の操作用スイッチの他、キーボードやその他の入力機器に用いても良いものである。
【実施例1】
【0016】
この発明の実施例について説明する。図1及び図7のような接点及び導体部の構造で、導体部の中心をギャップの中心にした場合と、接点のパターンの中心においた場合での、スイッチング抵抗の良否を測定した。その結果を表1に良を○、否を×で示す。ここで、接点のパターン幅は0.5mm、パターン間のギャップは0.5mm、導体部の直径は2.0mmである。
【0017】
【表1】

【0018】
この実施例より、導体部の直径が、接点パターン幅とギャップの和の長さの偶数倍の場合、接点パターンの中心に導体部の中心を一致させる方がスイッチング抵抗値が小さく、導体部の直径が、接点パターン幅とギャップの和の長さの奇数倍の場合、接点パターンのギャップ中心に導体部の中心を一致させる方がスイッチング抵抗値が小さいことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の第一実施形態のプッシュスイッチ用接点構造の導体部と接点のパターンを示す平面図である。
【図2】この実施形態の接点構造の断面と抵抗を示す概略縦断面図である。
【図3】この実施形態のプッシュスイッチ用接点構造の抵抗を示す抵抗回路図である。
【図4】この実施形態のプッシュスイッチ用接点構造の利用例を示す縦断面図である
【図5】この実施形態のプッシュスイッチ用接点構造を用いたラバースイッチの縦断面図である。
【図6】従来のプッシュスイッチ用接点構造を用いたラバースイッチの縦断面図である。
【図7】従来のプッシュスイッチ用接点構造の導体部と接点のパターンを示す平面図である。
【図8】従来の接点構造の断面と抵抗を示す概略縦断面図である。
【図9】従来のプッシュスイッチ用接点構造の抵抗を示す抵抗回路図である。
【符号の説明】
【0020】
10 プッシュスイッチ用接点構造
12 ラバースイッチ
14 押圧部
16 屈曲部
20 センターボス部
22 導体部
24 回路基板
26 接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧部の押し下げにより導体が回路基板上の接点を閉じるプッシュスイッチ用接点構造において、押下可能に形成された前記押圧部の裏側に一体に設けられ円柱状のセンターボス部と、前記押圧部の周囲に同心状にドーム状に形成された屈曲部と、前記センターボス部端面に設けられた導体部とを備え、前記回路基板表面には前記導体部と接続される接点のパターンが櫛歯状に形成されて一対の電極が対向し、前記導体部の直径が、前記接点パターン幅とギャップの和の長さのほぼ偶数倍の場合、前記接点パターンの中心に導体部の中心を一致させ、前記導体部の直径が、接点パターン幅とギャップの和の長さのほぼ奇数倍の場合、接点パターンのギャップ中心に導体部の中心を一致させたことを特徴とするプッシュスイッチ用接点構造。
【請求項2】
前記接点のパターンは、一方の接点が前記導体部の中心に位置し、他方の接点がギャップを挟んでその両側に位置したことを特徴とする請求項1記載のプッシュスイッチ用接点構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−97853(P2008−97853A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274871(P2006−274871)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(305044693)株式会社リンク大洋 (8)
【Fターム(参考)】