説明

プッシュスイッチ

【課題】 操作部材に貫通孔が形成されたプッシュスイッチを確実に吸着してマウントすることができるプッシュスイッチを提供すること。
【解決手段】 操作部材40の上面部41に被覆部材80を対向配置する。被覆部材80の被吸着部81が、上面部41に形成された開口部41aを覆うことにより、吸着ノズルの吸着力が高まりプッシュスイッチ1を確実に吸着してマウントすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュスイッチに係わり、特に組立て作業時のマウント工程を容易に行うことを可能としたプッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED等の照光用部品を併設して操作部を照光させる構成を有するプッシュスイッチが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このプッシュスイッチにおいては、ケース及び操作部材のそれぞれの中央に貫通孔を形成し、双方の貫通孔の位置を合わせることで中央貫通孔部を構成し、この中央貫通孔部内にLED等の照光用部品を配設することで、スイッチ自体の小型化及び薄型化を図っている。
【特許文献1】特開2005−32705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようなプッシュスイッチは、マウント工程において吸引式の自動マウント装置で吸着されて任意の基板上に搬送され、次のリフロー工程を経ることにより基板上に半田付けされる。
【0004】
しかしながら、従来のプッシュスイッチでは、操作部材の中心に貫通孔が形成され吸着力を高めにくい構造であるため、専用の吸着ノズルを使用しない場合には、搬送途中にプッシュスイッチが落下しやすいという問題がある。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、操作部材に貫通孔が形成されたプッシュスイッチを確実に吸着してマウントすることができるようにしたプッシュスイッチを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上面に貫通孔が形成された操作部材と、前記操作部材が移動自在に設けられたハウジングと、前記操作部材を移動方向に付勢する付勢部材と、前記操作部材に対する押圧操作に応じて切り換わるスイッチ機構と、を備えたプッシュスイッチであって、
前記操作部材に対向してその上面を覆うとともに、前記ハウジングに対して係脱可能に設けられた被覆部材を有することを特徴とするものである。
【0007】
本発明では、貫通孔が形成された操作部材を備えたプッシュスイッチを、専用の吸着ノズルを使用しなくとも確実に吸着して搬送することができる。
【0008】
上記において、前記被覆部材は、前記貫通孔を覆う被吸着部と前記操作部材の上面の一部を露出させる切欠部とを有するものが好ましい。
【0009】
上記手段では、被覆部材で操作部材の上面を覆った状態でも、切欠部を介して操作部材を押下することができる。このため、被覆部材が設けられた状態のプッシュスイッチの動作確認を容易且つ迅速に行うことができる。
【0010】
また前記ハウジングは、前記操作部材が移動自在に設けられたケースと、前記ケースからの前記操作部材の離脱を防止する取付部材とを備え、前記取付部材に開口部からなる第1係止部が設けられ、前記ケースに前記第1係止部が係合する係止片が設けられ、
前記被覆部材に前記係止片に係合した第1係止部に対して係脱自在に係合する第2係止部が設けられているものが好ましい。
【0011】
上記構成では、プッシュスイッチをマウントした後に不要となる被覆部材を容易に取り外すことができる。また取付部材の開口部(第1係止部)を、ケース側の係止片ための係止部として、及び被覆部材側の第2の係止部のための係止部として共用することができる。このため、それぞれ専用の係止部を形成する必要がなく、製造コストを低減できる。
【0012】
また前記被覆部材は折り曲げ可能な板状の部材で形成されており、前記第2係止部は前記被覆部材の一部を折り曲げ加工することにより一体に形成されているものが好ましい。
【0013】
上記手段では、部分点数を少なく且つ軽量化に適した被覆部材とすることができるとともに、被覆部材が不要に大型化することを防止することができる。
【0014】
上記において、前記被覆部材に、該被覆部材で前記操作部材が押下されるのを防止する規制部が形成されているものが好ましい。
【0015】
上記手段では、不用意に被覆部材で操作部材が押下されてしまうことを防止することができる。特にマウント工程中に、吸着ノズルが被覆部材を介して操作部材の押下することを効果的に防止することができる。
【0016】
さらには、前記被覆部材は、前記操作部材からの押圧力を受けた状態で前記ハウジング側に係合しており、前記被覆部材の下面と前記操作部材の上面とが密着した状態が維持されるものが好ましい。
【0017】
上記手段では、プッシュスイッチの搬送中における被覆部材のガタツキを防止することができ、異音の発生を抑えた良好な搬送作業を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、操作部材の貫通孔を被覆部材の被吸着部で覆うことにより、確実にプッシュスイッチを吸着して所定の基板上にマウントすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のプッシュスイッチの実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係るプッシュスイッチは、例えば、ノートパソコン等の電源スイッチに使用されるが、その用途については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。特に、プッシュスイッチの操作面を照光用部品で照光する必要がある任意の装置に使用することが可能である。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態に係るプッシュスイッチと操作部を示す分解斜視図、図2はプッシュスイッチの分解斜視図である。
【0021】
図1に示すように、プッシュスイッチ1は基板100上に固定される。後述するように、プッシュスイッチ1は、上下(Z)方向に移動する操作部材40を有している。操作部材40に上端にはキートップを形成する操作部2が取り付けられている。操作部2を押下すると、操作部2が操作部材40とともに下方向に移動することが可能である。操作部2は透光性の合成樹脂で形成されており、プッシュスイッチ1の内部に設けられた発光素子3が点灯すると、操作部2全体が明るく照光させられる。
【0022】
図2に示すように、本実施の形態に係るプッシュスイッチ1は、ケース20と、このケース20の底面部に配置される板ばね30と、操作者の押圧操作を受け付ける操作ボタン等が取り付けられる操作部材40と、この操作部材40の内側に収容され、後述する摺動部材55を備えた保持部材50と、ケース20内に収納され、操作部材40と、保持部材50を上方側に付勢する一対の付勢ばね(コイルスプリング)61,62と、操作部材40の抜け止めを防止する取付部材70とを備えている。また操作部材40の上面側には、操作部材40に形成された開口部41aを覆う被覆部材80を備えている。なお、本実施の形態では、ケース20と取付部材70とで操作部材40を移動自在に保持するハウジングを構成している。また、操作部材40と保持部材50とで操作体を構成している。
【0023】
ケース20は、例えば、絶縁性の樹脂材料で形成される。図2に示すように、ケース20は、全体の外形形状が平面視略矩形状の箱型を成し、上方側に開口が形成されている。ケース20の底部中央には、略八角形状からなる筒状部23が形成されている。そして、筒状部23の周囲、すなわちケース20の側面部21(個別に21a,21b,21e,21fで示す。)、ケース20の底面、及び筒状部23とで形成される略環状のスペースが収容部22Aである。
【0024】
側面部21のうち、Y方向において対向する一対の側面部21a,21bの外側には、取付部材70の一部を係止する一対の係止片21c,21dがそれぞれ形成されている。係止片21c,21dは、側面部21a,21bの外側の面において、幅方向に一定間隔を空けて突出形成されている。これらの係止片21c,21dの上方側部分には、取付部材70の装着を容易とするテーパ面が形成されている。
【0025】
底面部22の所定位置には、付勢ばね61,62の下端部を係止する一対の係止片22c,22dが立設されている。これらの係止片22c,22dは、概して円柱形状を有し、その上端部に付勢ばね61,62が装着し易いようにテーパ面が形成されている。
【0026】
図3はケースの底面側に埋設される端子を示す斜視図、図4は端子が埋設された状態の切断面を示すケースの斜視図、図5はプッシュスイッチの操作部材を示す斜視図である。
【0027】
図4に示すように、筒状部23のY1およびY2側の側面には、図3に示すような端子部22a,22bがインサート成形により埋設されている。
【0028】
図3に示すように、端子部22a,22b及び固定接点23a,23bは、導電性を有する金属製の板材料で一体的に形成され、ケース20の製造時にインサート成形される。端子部22a,22bは、長尺形状を有すると共に、その両端部が僅かに上方側に折り曲げられている。また、固定接点23a,23bは、端子部22a,22bの中央部分から上方側に立設状態で略垂直に(若干傾斜を持って)折り曲げられている。これにより、固定接点23a,23bは、操作部材40の移動方向に延びるように設けられている。なお、端子部22a,22bの中央部分には、側方側に延出する突出片が設けられているが、これは端子部22a,22bの製造時に発生するものであり、必ずしも必要な部分ではない。
【0029】
図4に示すように、端子部22a,22bは、底面部22の内部において係止片22c,22dの下部を通りX方向に沿って配置され、固定接点23a,23bは、筒状部23の下端部近傍で筒状部23のY1およびY2側の側面から外側に露出するように配置されている(図4において、固定接点23bは不図示)。なお、筒状部23における固定接点23a,23bの上方側には、後述する摺動部材55の摺動片57a,57bを適切に固定接点23a,23bに案内するためのテーパ面23c,23dが形成されている。また、固定接点23a,23bが配置される筒状部23の側面も、固定接点23a,23bに沿って傾斜しているので、ケース20の成形後、型枠が抜け易くなり、加工性が良好となる。
【0030】
筒状部23の内側には、プッシュスイッチ1の上下方向に貫通する貫通孔24が設けられている。なお、貫通孔24の内側(より詳しくは、後述する貫通孔44の内側)には、プッシュスイッチ1が基板100に実装された場合に発光素子3が配設される。この発光素子3からの光は、これらの貫通孔24等を介して操作部2に届くように構成されている。なお、貫通孔24の内側に、照光部品でなく、他のプッシュスイッチ等のスイッチ装置が配設されても良い。
【0031】
板ばね30は、例えば、弾性を有する金属板により一体に形成される。板ばね30は、図2に示すように、概してケース20の底面部22の形状に対応した外形が平面視略矩形状で略環形状を有する板状部31を有しており、その中央に筒状部23を通過させる開口部32が形成されている。板状部31の一方の対角線上の隅部には、ケース20の底面部22に設けられた係止片22c,22dを通過させる円形状の孔33a,33bが形成されている。また、孔33a,33bが形成されていない他方の対角線上には、クリック機構の一部を構成する弾性片34a,34bが形成されている。
【0032】
弾性片34a,34bは、上端部近傍において内側に突出した形状を有しており、操作部材40に対する押圧操作に応じて後述する保持部材50の突出部53c,53dと係脱可能に構成されている。これらの弾性片34a,34bは、突出部53c,53dとの係脱動作により、押圧操作時及び初期位置に復帰する際、クリック感触を発生させる。
【0033】
板ばね30は、板状部31が収容部22A内の底面部22上に設けられている。すなわち、板ばね30は開口部32に筒状部23を通過させると共に、一対の孔33a,33bに係止片22c,22dを通過させることにより、底面部22上に位置決めされている。
【0034】
操作部材40は、操作体の一部を構成し、例えば、絶縁性の樹脂材料で形成される。操作部材40は、図1または図5に示すように、概して下方側に開口した略矩形状の箱型を有しており、プッシュスイッチ1の上面を構成する上面部41と、上面部41の側端部から下方(Z2方向)に延出する側面部42と、上面部41の下面の中央部分から立設された筒状部43とを有している。
【0035】
上面部41の中央には、開口部41aが形成されている。この開口部41aは、上面視にて非円形状として扁平な八角形状を有しており、貫通孔44に続いている。側面部42のうち、Y方向において対向する一対の側面部42a,42bには、鍔部42c,42dが設けられている。鍔部42c,42dは、僅かにプッシュスイッチ1の側方(Y1及びY2方向)に突出しており、後述する取付部材70の被規制部71a,71bに当接する構成となっている。また、側面部42a,42bの一方の端部には、板ばね30の弾性片34a,34bの揺動を許容するための凹部42e,42fが形成されている。
【0036】
筒状部43は、側面部42の下端部より僅かに下方側の位置まで延出している。筒状部43の外壁面の寸法は、ケース20の筒状部23の内壁面よりも僅かに小さい寸法で形成されている。すなわち、筒状部43は、筒状部23の内側に極めて隙間を挟んで収容可能に構成されている。筒状部43は、操作部材40に対する押圧操作に応じて筒状部23内を上下移動可能に構成されている。筒状部43の内側には、プッシュスイッチ1の上下方向に貫通する貫通孔44が設けられている。
【0037】
保持部材50は、操作体の一部を構成し、例えば、絶縁性の樹脂材料で形成される本体部51と、例えば、弾性を有する導電性の金属板で形成される摺動部材55とで構成されている。本体部51は、図2に示すように、概して下方側に開口した形状を有しており、摺動部材55は、この本体部51の製造時にその内壁面にインサート成形される。
【0038】
図6は、保持部材の本体部とその内部に設けられる摺動部材を示す斜視図である。なお、図6は、本体部51から摺動部材55を抜き出した状態として示している。
【0039】
図6に示すように、本体部51は、上面部51aと、この上面部51aの側端部から下方側に延出する側面部52a〜52dとを有している。上面部51aには、ケース20の筒状部23が通過可能な開口部51bが形成されている。側面部52のうち、Y方向において対向する一対の側面部52a,52bには、摺動部材55の摺動片57a,57bの揺動を許容する切り欠き部52e,52fが形成されている。
【0040】
側面部52aと側面部52cとの間、並びに、側面部52bと側面部52dとの間には、斜面部53a,53b(53bは不図示)がそれぞれ形成されている。斜面部53a,53bのほぼ中央部分には、上方側部分及び下方側部分にテーパ面が設けられた突出部53c,53d(53dは不図示)が設けられている。これらの突出部53c,53d上を、操作部材40に対する押圧操作に応じて板ばね30の弾性片34a,34bが係脱するように構成されている。すなわち、これらの突出部53c,53dは、クリック機構の一部を構成している。このように保持部材50に突出部53c,53dを設けることで、ケース20内に配設される部品点数の軽減を図っている。
【0041】
なお、このように弾性片34a,34bと、保持部材50の突出部53c,53dとでクリック機構を構成する場合には、例えば、突出部53c,53dの高さ、或いは、弾性片34a,34bの弾性力を変更することで、様々なバリエーションのクリック感触を発生させることができるというメリットが得られる。
【0042】
また、図6に示すように、側面部52aと側面部52dとの間、並びに、側面部52bと側面部52cとの間の角部には、凹部54a,54bが設けられている。これらの凹部54a,54bは、プッシュスイッチ1の内側に一定領域だけ凹んだ形状を有し、その内部に付勢ばね61,62の上方側部分をそれぞれ収容する。凹部54a,54bの内壁面の一部は、付勢ばね61,62の形状に対応する円弧形状に設けられている。
【0043】
摺動部材55は、図6に示すように、概して本体部51の開口部51bの一部(扁平の八角形状に対応する一部)の形状に対した環形状を有する板状部56を有しており、その中央にケース20の筒状部23が通過可能な開口部56aが形成されている。なお、板状部56の一方の対角線上の隅部の摺動片57a,57b寄りには、外力に延出する突出片が設けられているが、これは摺動部材55の製造時に発生するものであり、必ずしも必要な部分ではない。但し、突出片があることで保持部材50の補強の一助には成っている。
【0044】
また、板状部56におけるケース20に設けられた固定接点23a,23bに対応する位置には、下方側に向けて延出する可動接点としての摺動片57a,57bが設けられている。これらの摺動片57a,57bは、板状部56に下方側への折り曲げ加工を施すことにより形成される。摺動片57a,57bは、下端部近傍において内側に突出した形状を有しており、操作部材40に対する押圧操作に応じて筒状部23に設けられた固定接点23a,23bに摺接可能に構成されている。このような摺動片57a,57bの固定接点23a,23bに対する摺接の有無によりプッシュスイッチ1は、そのオン/オフ状態が切り換えられるように構成されている。すなわち、摺動片57a,57bと固定接点23a,23bによりスイッチ機構が構成されている。
【0045】
付勢ばね61,62は、復帰用ばねを構成し、図2に示すように、板ばね30と保持部材50との間に配置される。付勢ばね61,62は、プッシュスイッチ1が組み立てられた状態において、その下端部がケース20の底面部22に設けられた係止片22c,22dにより係止され、その上端部分が保持部材50に設けられた凹部54a,54bと操作部材40の内壁面との間の空間に収容される。付勢ばね61,62においては、下端部が板ばね30の板状部31に接触した状態とされる。従って、例えば、リフロー半田付け時等の熱により付勢ばね61,62に接触する部分が変形する事態を防止することが可能となる。このように保持された状態において、付勢ばね61,62は、操作部材40及び保持部材50を上方側に付勢し、操作部材40に対する押圧操作が解除された場合に、操作部材40を押圧された位置から初期位置(上限位置)に復帰させる。
【0046】
この復帰の際において、上記したように付勢ばね61,62の下端部が板ばね30の板状部31に接触した状態となっていることから、付勢ばね61,62の付勢力が板状部31に作用するので、板状部31に形成された弾性片34a,34bが突出部53c,53dに係合したままにならず、確実に操作部材40及び保持部材50を復帰させることができる。加えて、板状部31に付勢ばね61,62の付勢力が作用することになることから、板ばね30をケース20の底面部22に固定しなくても操作部材40及び保持部材50を復帰させることができるので、組立性が良くなる。なお、操作部材40は、保持部材50を介して付勢ばね61,62により、上方に付勢されているが、保持部材50を介さず直接付勢される構成のものでも良い。
【0047】
取付部材70は、例えば、弾性を有する金属板で形成される。取付部材70は、図2に示すように、慨して方形状を有する枠体部71と、この枠体部71の所定位置から下方側に延出する一対の第1係止部72a,72bとから構成される。枠体部71は、操作部材40の鍔部42c,42dに対応する位置に一対の被規制部71a,71bと、これらの一対の被規制部71a,71bを連結する一対の連結部71c,71dとを有している。被規制部71a,71bは、鍔部42c,42dに対向する平面を有し、連結部71c,71dは、操作部材40の側面部42a,42b以外の側面部42に対向する平面を有している。
【0048】
第1係止部72a,72bは、被規制部71a,71bの中央部分に設けられており、その中央に矩形の開口部72c,72dが形成されている。これらの開口部72c,72d内に、ケース20の一対の係止片21c,21dが係合されることにより、取付部材70がケース20に取り付けられている。
【0049】
以上のような構成部品を有するプッシュスイッチ1を組み立てると、図1に示すように、保持部材50などの構成部品がケース20内に収納されると共に、操作部材40がケース20から一部を露出させた状態で取付部材70により取り付けられる。この場合において、ケース20に設けられた係止片21c,21dは、取付部材70の第1係止部72a,72bの開口部72c,72d内に収容され、これにより取付部材70がケース20から容易に離脱しないように抜け止め防止が図られている。また、取付部材70の被規制部71a,71bは、操作部材40の鍔部42c,42dに対応する位置に配置されている。
【0050】
被規制部71a,71bには、付勢ばね61,62により上方側に付勢された操作部材40の鍔部42c,42dが当接する。これにより、操作部材40が一定位置以上の上方へ移動することを規制している。すなわち、常に操作部材40の突出量が一定となるように規制している。プッシュスイッチ1においては、このように被規制部71a,71bにより操作部材40の移動が規制された状態を初期状態としている。
【0051】
被覆部材80は、例えば、弾性を有する金属板で形成される。被覆部材80は、図2に示すように、慨して十字形状を有する被吸着部81と、この被吸着部81のY方向の両端から下方側に延出する一対の第2係止部82a,82bとから構成される。
【0052】
被覆部材80は一枚の板状の部材から形成されている。被覆部材80の上面側で、被吸着部81が形成されていない四隅の位置には切欠部81a,81b,81cおよび81dが形成されている。
【0053】
第2係止部82a,82bは、下端部近傍において内側に突出した形状を有しており、取付部材70を形成する第1係止部72a,72bに形成された開口部72c,72dに対して係脱可能に構成されている。第2係止部82a,82bは、板状の部材のY方向の両端に対して下方側への折り曲げ加工を施すことにより一体に形成されている。これにより、部分点数を少なく且つ軽量化に適した被覆部材80とすることが可能であり、さらには被覆部材80が不要に大型化することを防止することも可能である。
【0054】
第2係止部82a,82bの途中には、四隅に延出するL字形状からなる規制部83a,83b,83cおよび83dが設けられている。規制部83a,83b,83cおよび83dの下端は、取付部材70側の被規制部71a,71bに対向している。
【0055】
図7は被覆部材が取り付けられた状態を示すプッシュスイッチの斜視図、図8は被覆部材が取り付けられたプッシュスイッチの操作部を押下した状態を示す図7同様の斜視図である。
【0056】
図7に示すように、第2係止部82a,82bを第1係止部72aとしての開口部72c,72dに係合させることにより、被覆部材80をプッシュスイッチ1に装着することができる。この状態では、被吸着部81が操作部材40の上面部41に形成された開口部41aに対向している。
【0057】
このように、本発明では、取付部材70側の第1係止部72a,72bに形成された開口部72c,72dを、ケース20側の係止片21c,21dのための係止部として、及び被覆部材80側の第2係止部82a,82bのための係止部として共用することができるため、それぞれ専用の係止部を形成する必要がない。よって、プッシュスイッチ1の全体的な製造コストを低減できる。
【0058】
なお、本実施の形態では、第2係止部82a,82bは係止片21cと係止片21dとの間に位置している。
【0059】
また第2係止部82a,82bを第1係止部72a,72bに形成された開口部72c,72dに係合させた状態では、被覆部材80の高さ寸法、すなわち被吸着部81の高さ(Z)方向の位置が、操作部材40が最も上方に突出した状態の上面部41の位置よりも僅かに低く設定されている。このため、付勢ばね61,62は僅かに圧縮させられており、この状態で操作部材40を上方(Z1方向)に付勢している。上方に付勢された操作部材40の上面部41は、被覆部材80の被吸着部81の下面に当接しており、開口部41aが被吸着部81によって被覆されるとともに被吸着部81を上方に押圧する。
【0060】
被覆部材80の一対の第2係止部82a,82bと取付部材70の一対の係止片21c,21dとは、被覆部材80が付勢ばね61,62の付勢力を受けた程度では外れることのない程度の力で係合しており、この状態では取付部材70と被覆部材80とは機構的に一体化した状態にある。
【0061】
つまり、被覆部材80は、付勢ばね61,62の付勢力を受けた操作部材40により上方に押圧された状態でケース20側に係合しており、常に操作部材40側の上面部41と被覆部材80側の被吸着部81の下面とが密着する状態が維持される。このため、プッシュスイッチ1の搬送時に振動が生じても、被覆部材80のガタツキを押さえることができるため、異音の発生を抑えた良好な搬送を行うことが可能である。
【0062】
しかも、被吸着部81の下面と操作部材40の上面部41との間に隙間が形成されるようなことがないため、常に開口部41aが閉塞される状態を維持することができる。
【0063】
よって、マウント工程において、図示しない吸着ノズルによって、被吸着部81を吸引しても、吸引された空気が開口部41a及びその奥の貫通孔24,44を通過することで吸着力が低下するということが起きにくくなるため、プッシュスイッチ1を確実に吸着することが可能である。よって、マウント工程中に吸着ノズルを用いてプッシュスイッチ1を搬送しても、その途中でプッシュスイッチ1が落下するという不具合の発生を少なくすることができる。
【0064】
また被覆部材80には、十字形状の被吸着部81を除く部分に四隅の位置に切欠部81a,81b,81cおよび81dが形成されており、この部分を介して操作部材40の上面部41の一部が露出されている。
【0065】
このため、図8に示すように、4つの切欠部81a,81b,81cおよび81dのうち、少なくとも1つ以上の切欠部を通じて操作部材40を押下することが可能である。
【0066】
操作部材40を押下すると、操作部材40が下方側に移動し、ケース20の内側に沈み込む。よって、被覆部材80を装着したのまま状態でも操作部材40を押圧操作(押下)することができ、プッシュスイッチの動作の確認を迅速且つ容易に行うことが可能である。なお、押圧操作に伴うプッシュスイッチ1の押圧操作に伴う一般的な動作については後述する。
【0067】
また被吸着部81自体を下方に押下した場合には、被覆部材80に形成された規制部83a,83b,83cおよび83dの下端が、取付部材70の被規制部71a,71bの上面に当接して被覆部材80の移動が制限される。よって、被吸着部81を押下しただけでは操作部材40が押下されることはなく、切欠部81a,81b,81cおよび81dを介して正しく操作部材40が押下された場合に限って動作するプッシュスイッチ1とすることができる。
【0068】
このため、特に上記マウント工程において、吸着ノズルが被吸着部81を吸引したときに、不用意に吸着ノズルの先端が被覆部材80に当接して操作部材40を押下するようなことが起きたとしても、被覆部材80で操作部材40が押下されてしまうことを防止することができる。
【0069】
被覆部材80は、プッシュスイッチ1を基板100上にマウントした後は、操作者による押圧操作の妨げとなるものであるから、取り外してしまうことが好ましい。
【0070】
この場合、被覆部材80を摘んで上方に軽く持ち上げることにより、取り外すことが可能となっている。すなわち、被覆部材80を摘んで上方に軽く持ち上げると、被覆部材80の一対の第2係止部82a,82bと取付部材70の一対の係止片21c,21dとの間の係合を解除することができ、これにより容易に被覆部材80を取り外すことが可能である。
【0071】
次に、被覆部材80を外した状態におけるプッシュスイッチ1の一般的な動作について説明する。
【0072】
図9は初期状態を示すプッシュスイッチの断面図、図10は操作部材を押下した状態を示すプッシュスイッチの断面図である。
【0073】
(初期状態)
図9に示すように、プッシュスイッチ1の内部において、付勢ばね61,62は、板ばね30の板状部31の上方に載置され、保持部材50を上方側に付勢している。操作部材40は、保持部材50を内側に収納した状態でケース20に取り付けられていることから、付勢ばね61,62の付勢力により保持部材50を介して上方側に付勢されている。
【0074】
このとき、摺動部材55における摺動片57a,57bは、その下方側の先端部が、それぞれ筒状部23に設けられたテーパ面23c,23dの近傍の位置に配置されている。このように、初期状態においては、可動接点を構成する揺動片57a,57bが筒状部23に設けられた固定接点23a,23bから離間していることから、プッシュスイッチ1は、オフ状態とされている。
【0075】
また、板ばね30の弾性片34a,34bはその上方側の先端部が、それぞれ保持部材50に設けられた突出部53c,53dの下方側の斜面部53a,53bに接触する位置に配置されている。この位置において、弾性片34a,34bは、斜面部53a,53bに軽く弾接している。
【0076】
(押圧操作)
次に、初期状態から押圧操作が行われた場合におけるプッシュスイッチ1の状態について説明する。
【0077】
図10に示すように、初期状態から操作者により押圧操作が行われると、操作部材40が下方側に移動し、ケース20の内側に沈み込む。プッシュスイッチ1の内部において、保持部材50は、操作部材40の移動に応じて、付勢ばね61,62の付勢力に抗して下方側に移動する。これに伴い、保持部材50に保持される摺動部材55も下方側に移動する。なお、操作部材40が移動する際には、筒状部43がケース20の筒状部23により案内される。このように筒状部23が筒状部43を案内することで簡単な構成で適切に操作部材40を移動可能としている。但し、操作部材40の移動の案内は、ケース20の側面部21の内壁面と操作部材40の外壁面とで行っても良い。
【0078】
このとき、摺動部材55における摺動片57a,57bは、その下方側の先端部が、それぞれ筒状部23に設けられたテーパ面23c,23dを越え、筒状部23の側面を揺動しながら下方側に進む。そして、操作部材40が最後まで押圧されると、摺動片57a,57bが筒状部23に設けられた固定接点23a,23bに接触する。このように、押圧状態においては、可動接点を構成する摺動片57a,57bが筒状部23に設けられた固定接点23a,23bに接触することから、プッシュスイッチ1は、オン状態とされる。
【0079】
上記実施の形態では、被吸着部81の形状を十字形状として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、被吸着部81の形状は開口部41aを覆うことができる形状であれば良く、例えば円形状や星型形状であっても良いし、その他の形状であっても良い。
【0080】
また、上記実施の形態では、被覆部材80は取付部材70に対して係脱可能に設けられるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、被覆部材80はハウジングに対して係脱可能に設けられれば良く、例えばケース20の側面部21に係合部として係合凹部を設けても良く、さらにはハウジングとしてケース20と取付部材70とで構成するものではなく、例えば上ケースと下ケースとでハウジングを構成し、上ケースの側面部に係合部として係合凹部を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係るプッシュスイッチと操作部を示す分解斜視図、
【図2】プッシュスイッチの分解斜視図、
【図3】ケースの底面側に埋設される端子を示す斜視図、
【図4】端子が埋設された状態の切断面を示すケースの斜視図、
【図5】プッシュスイッチの操作部材を示す斜視図、
【図6】保持部材の本体部とその内部に設けられる摺動部材を示す斜視図、
【図7】被覆部材が取り付けられた状態を示すプッシュスイッチの斜視図、
【図8】被覆部材が取り付けられたプッシュスイッチの操作部を押下した状態を示す図7同様の斜視図、
【図9】初期状態を示すプッシュスイッチの断面図、
【図10】操作部材を押下した状態を示すプッシュスイッチの断面図、
【符号の説明】
【0082】
1 プッシュスイッチ
2 操作部
3 発光素子
20 ケース(ハウジング)
21 側面部
21c,21d 係止片
22 底面部
22A 収容部
22a,22b 端子部
22c,22d 係止片
23 筒状部
23a,23b 固定接点(スイッチ機構)
23c,22d テーパ面
24 貫通孔
30 板ばね
31 板状部
32 開口部
33a,33b 孔
34a,34b 弾性片(クリック機構)
40 操作部材(操作体)
41 上面部
41a 開口部
42 側面部
42c,42d 鍔部
42e,42f 凹部
43 筒状部
44 貫通孔
50 保持部材
51 本体部
51a 上面部
51b 開口部
52a〜52d 側面部
52e,52f 切り欠き部
53a,53b 斜面部
53c,53d 突出部(クリック機構)
54a,54b 凹部
55 摺動部材
56 板状部
57a,57b 摺動片(スイッチ機構)
61,62 付勢ばね(復帰用ばね)
70 取付部材(ハウジング)
71 枠体部
71a,71b 被規制部
72a,72b 第1係止部
72c,72d 開口部
80 被覆部材
81 被吸着部
81a,81b,81c,81d 切欠部
82a,82b 第2係止部
83a,83b,83c,83d 規制部
100 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に貫通孔が形成された操作部材と、前記操作部材が移動自在に設けられたハウジングと、前記操作部材を移動方向に付勢する付勢部材と、前記操作部材に対する押圧操作に応じて切り換わるスイッチ機構と、を備えたプッシュスイッチであって、
前記操作部材に対向してその上面を覆うとともに、前記ハウジングに対して係脱可能に設けられた被覆部材を有することを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項2】
前記被覆部材は、前記貫通孔を覆う被吸着部と前記操作部材の上面の一部を露出させる切欠部とを有するものである請求項1記載のプッシュスイッチ。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記操作部材が移動自在に設けられたケースと、前記ケースからの前記操作部材の離脱を防止する取付部材とを備え、前記取付部材に開口部からなる第1係止部が設けられ、前記ケースに前記第1係止部が係合する係止片が設けられ、
前記被覆部材に前記係止片に係合した第1係止部に対して係脱自在に係合する第2係止部が設けられている請求項1または2記載のプッシュスイッチ。
【請求項4】
前記被覆部材は折り曲げ可能な板状の部材で形成されており、前記第2係止部は前記被覆部材の一部を折り曲げ加工することにより一体に形成されている請求項3記載のプッシュスイッチ。
【請求項5】
前記被覆部材に、該被覆部材で前記操作部材が押下されるのを防止する規制部が形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載のプッシュスイッチ。
【請求項6】
前記被覆部材は、前記操作部材からの押圧力を受けた状態で前記ハウジング側に係合しており、前記被覆部材の下面と前記操作部材の上面とが密着した状態が維持される請求項1ないし5のいずれかに記載のプッシュスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−73663(P2010−73663A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243274(P2008−243274)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】