説明

プラスチックの分別装置および分別方法

【課題】多数の異なる材質を含むプラスチック破砕片群から、濃い色のプラスチック破砕片であってもその材質を判別することができ、分別することが可能なプラスチックの分別装置を提供する。
【解決手段】破断面を有するプラスチック破砕片に可視光および近赤外光を照射し、前記可視光および近赤外光の各々の反射光から各々の画像データを取得する画像データ取得手段と、前記可視光の照射により得られた画像データからプラスチック破砕片の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、前記近赤外光の照射により得られた画像データからプラスチック破砕片の材質を判別する材質判別手段と、前記プラスチック破砕片の輪郭および材質の少なくとも一方からプラスチック破砕片の分別データを得て、前記分別データに基づいてプラスチック破砕片を分別する分別手段とを備えるプラスチックの分別装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックの分別装置および分別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックの材質を判別する手段として、近赤外分光法がよく知られている。プラスチックに近赤外光を照射し、プラスチックから反射された反射光を分析すると、プラスチックの材質毎に反射光が異なるため、反射光からプラスチックの材質の判別が可能である(例えば、特許文献1参照)。また、プラスチックの材質をCCDカメラおよび近赤外カメラを用いて画像情報の色・形状および近赤外スペクトルからプラスチックの材質を判別する方法もある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−210632号公報
【特許文献2】特開平2005−121587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、近赤外分光法では判別対象となるプラスチックが濃い色(例えば、黒色やグレー色)の場合、プラスチックに照射した近赤外光は、反射光の反射率が低く、反射光の測定が困難である。そのためにプラスチックの材質の判別が難しい課題があった。
【0004】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、多数の異なる材質を含むプラスチック破砕片群から、濃い色のプラスチック破砕片であっても分別することが可能なプラスチックの分別装置および分別方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するプラスチックの分別装置は、破断面を有するプラスチック破砕片に可視光および近赤外光を照射し、前記可視光および近赤外光の各々の反射光から各々の画像データを取得する画像データ取得手段と、前記可視光の照射により得られた画像データからプラスチック破砕片の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、前記近赤外光の照射により得られた画像データからプラスチック破砕片の材質を判別する材質判別手段と、前記プラスチック破砕片の輪郭および材質の少なくとも一方からプラスチック破砕片の分別データを得て、前記分別データに基づいてプラスチック破砕片を分別する分別手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
上記の課題を解決するプラスチックの分別方法は、破断面を有するプラスチック破砕片に可視光および近赤外光を照射し、前記可視光および近赤外光の各々の反射光から各々の画像データを取得する画像データ取得工程と、前記可視光の照射により得られた画像データからプラスチック破砕片の輪郭を抽出する輪郭抽出工程と、前記近赤外光の照射により得られた画像データからプラスチック破砕片の材質を判別する材質判別工程と、前記プラスチック破砕片の輪郭および材質の少なくとも一方からプラスチック破砕片の分別データを得て、前記分別データに基づいてプラスチック破砕片を分別する分別工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、多数の異なる材質を含むプラスチック破砕片群から、濃い色のプラスチック破砕片であっても分別することが可能なプラスチックの分別装置および分別方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
プラスチックを破砕機によって破砕するとプラスチック破砕片の破断面は白化する。プラスチック破砕片の破断面はプラスチック自身が持つ色より白くなる。プラスチック破砕片が白化している領域から、濃い色のプラスチックに対しても近赤外反射光が返ってくるためにプラスチック破砕片の材質を判別することが可能となる。本発明者らはこの点に着目し、本発明に至った。
【0009】
本発明に係るプラスチックの分別装置は、破断面を有するプラスチック破砕片に可視光および近赤外光を照射し、前記可視光および近赤外光の各々の反射光から各々の画像データを取得する画像データ取得手段と、前記可視光の照射により得られた画像データからプラスチック破砕片の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、前記近赤外光の照射により得られた画像データからプラスチック破砕片の材質を判別する材質判別手段と、前記プラスチック破砕片の輪郭および材質の少なくとも一方からプラスチック破砕片の分別データを得て、前記分別データに基づいてプラスチック破砕片を分別する分別手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
前記破断面を有するプラスチック破砕片に可視光を照射し、その反射光をCCDカメラにより撮影してプラスチック破砕片の輪郭および破断面を抽出することが好ましい。
【0011】
前記破断面を有するプラスチック破砕片に近赤外光を照射し、その反射光を近赤外カメラにより撮影してプラスチック破砕片の破断面の画像データからプラスチック破砕片の材質を判別することが好ましい。
【0012】
本発明に係るプラスチックの分別方法は、破断面を有するプラスチック破砕片に可視光および近赤外光を照射し、前記可視光および近赤外光の各々の反射光から各々の画像データを取得する画像データ取得工程と、前記可視光の照射により得られた画像データからプラスチック破砕片の輪郭を抽出する輪郭抽出工程と、前記近赤外光の照射により得られた画像データからプラスチック破砕片の材質を判別する材質判別工程と、前記プラスチック破砕片の輪郭および材質の少なくとも一方からプラスチック破砕片の分別データを得て、前記分別データに基づいてプラスチック破砕片を分別する分別工程とを備えることを特徴とする。
【実施例】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
実施例1
図1は本発明に係るプラスチックの分別装置の一実施態様を示すブロック図である。
【0014】
図1において、1はプラスチック片、2は破砕部、3はプラスチック破砕片、4はCCDカメラ、5は近赤外カメラ、6は搬送コンベア、7はCCDカメラが捕捉できる可視光の波長の光を照射するCCDカメラ用照明、8は近赤外カメラが捕捉できる近赤外の波長の光を照射する近赤外カメラ用照明、9は画像処理を行うデータ処理部、10はデータ処理部からの分別データに基づいてプラスチックを分別する分別部である。
【0015】
破砕部2はプラスチック片1を破断面が白化するようにプラスチックを破砕する。破砕部2によって破砕されたプラスチック破砕片3は搬送コンベア6により図1の矢印Y方向に搬送される。
【0016】
まず、画像データ取得手段において、搬送コンベア6を流れるプラスチック破砕片3に、CCDカメラ用照明7から可視光、および近赤外カメラ用照明8から近赤外光の照明光を照射し、プラスチック破砕片3に当たって反射した各々の反射光をCCDカメラ4および近赤外カメラ5が受光する。各々の反射光から各々の画像データを取得する。
【0017】
次に、輪郭抽出手段において、データ処理部9が、CCDカメラ4が撮影した反射光の画像データを分析してプラスチック破砕片3の輪郭を抽出する。
次に、材質判別手段において、データ処理部9が、近赤外カメラ5が撮影した反射光の画像データを分析してプラスチック破砕片3の材質を判別する。
【0018】
次に、分別手段において、前記プラスチック破砕片の輪郭および材質からプラスチック破砕片の分別データを得て、前記分別データに基づいてプラスチック破砕片を分別する。分別部10はデータ処理部9から送信される分別データを受信してプラスチック破砕片3を分別する。分別部10はエアーノズルが配置されており、エアーノズルによって空気を噴出してプラスチック破砕片3を分別する動作を行う。
【0019】
本発明において、CCDカメラとは、CCD(電荷結合素子)と呼ばれる固体撮像素子を備え、可視画像を撮像するカメラの事を表す。近赤外カメラとは、近赤外線画像を撮像するカメラの事を表す。
次に、実施例1におけるプラスチックの分別方法の各工程を図2に示すフローチャートに従って説明する。
【0020】
図2は、本発明に係るプラスチックの分別方法の一実施態様を示す工程図である。
図2においては、CCDカメラ4および近赤外カメラ5が撮影した反射光の画像データを分析して、プラスチック破砕片3の輪郭および材質を判別し、分別データを分別部10に送信し、分別動作する際の処理手順を示すフローチャートである。
【0021】
図2に示すプラスチックの分別方法において、ステップS1は画像データ取得工程、ステップS2からS4は輪郭抽出工程、ステップS5からS6は材質判別工程、ステップS7からS9は分別工程を示す。
【0022】
図2において、ステップS1において、データ処理部9はプラスチック破砕片3を撮影したCCDカメラ4および近赤外カメラ5の画像データを取得する。CCDカメラ4からは、カラー画像が得られる。近赤外カメラ5からは、搬送コンベア上の搬送コンベア幅方向(矢印X方向)のX位置の、近赤外スペクトルが得られる。
【0023】
次にステップS2において、ステップS1でCCDカメラ4から取得した画像データから、エッジ処理を行いプラスチック破砕片3の輪郭の抽出を行う。
ステップS3において、ステップS2で抽出されたプラスチック破砕片3の輪郭内領域に対して、明度分布を算出する。
【0024】
ステップS4において、ステップS3で算出したプラスチック破砕片3の輪郭内領域の明度分布から、明度が高いプラスチック破砕片3の座標を特定する。これはプラスチックを破砕機によって破砕するとプラスチック破砕片3の破断面は白化するので、プラスチック破砕片3の破断面はプラスチック自身が持つ色より白くなる。すなわち、ステップS3で算出されたプラスチック破砕片3の輪郭内領域の明度分布から、明度が高いプラスチック破砕片3の座標を特定すれば、その座標はプラスチック破砕片3の破断面である。
【0025】
次にステップS5において、ステップS4で特定した明度が高いプラスチック破砕片3の破断面に相当する座標に対応する近赤外カメラ5から取得した画像データの座標を特定する。
【0026】
ステップS6において、ステップS5で特定した座標に対する近赤外スペクトルデータからプラスチックの材質を判別する。
ステップS7において、ステップS2で抽出されたプラスチック破砕片3の輪郭情報とステップS6で判別されたプラスチック破砕片3の材質情報に基づいてプラスチック破砕片3に対する分別データを算出する。
【0027】
図3は、プラスチック破砕片の輪郭情報から分別データを算出する一例を示す図である。
図3に示すプラスチック破砕片3に対して、X長さおよびY長さがプラスチック破砕片の輪郭情報から求められる。そして、プラスチック破砕片3のX長さおよびY長さに応じたエアーを吐き出すエアーノズルの番号、エアー吐き出しタイミング、エアー吐き出し時間を算出する。
【0028】
次にステップS8において、ステップS7で算出された分別データを分別部10に送信する。
ステップS9において、ステップS8で送信された分別データに基づいて分別部10はプラスチック破砕片3に対してエアーノズルからのエアーにより分別動作を行う。
【0029】
なお、上記実施例では、分別部10がエアーエジェクト方式によって分別動作を行うが、ステップS2で算出したプラスチック破砕片3の輪郭情報とステップS7で判別したプラスチックの材質情報に基づいて静電分離やメカ方式等の分別方式によって分別を行ってもよい。
【0030】
以上説明した方法により、本発明によれば、多数の異なる材質を含むプラスチック群から、濃い色のプラスチックであってもプラスチックの材質毎に分別ができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、多数の異なる材質を含むプラスチック破砕片群から、濃い色のプラスチック破砕片であっても分別することができるので、広範囲の色に対応したプラスチック種類分別装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るプラスチックの分別装置の一実施態様を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るプラスチックの分別方法の一実施態様を示す工程図である。
【図3】プラスチック破砕片の輪郭情報から分別データを算出する一例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 プラスチック片
2 破砕部
3 プラスチック破砕片
4 CCDカメラ
5 近赤外カメラ
6 搬送コンベア
7 CCDカメラ用照明
8 近赤外カメラ用照明
9 データ処理部
10 分別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破断面を有するプラスチック破砕片に可視光および近赤外光を照射し、前記可視光および近赤外光の各々の反射光から各々の画像データを取得する画像データ取得手段と、前記可視光の照射により得られた画像データからプラスチック破砕片の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、前記近赤外光の照射により得られた画像データからプラスチック破砕片の材質を判別する材質判別手段と、前記プラスチック破砕片の輪郭および材質の少なくとも一方からプラスチック破砕片の分別データを得て、前記分別データに基づいてプラスチック破砕片を分別する分別手段とを備えることを特徴とするプラスチックの分別装置。
【請求項2】
前記破断面を有するプラスチック破砕片に可視光を照射し、その反射光をCCDカメラにより撮影してプラスチック破砕片の輪郭および破断面を抽出する請求項1に記載のプラスチックの分別装置。
【請求項3】
前記破断面を有するプラスチック破砕片に近赤外光を照射し、その反射光を近赤外カメラにより撮影してプラスチック破砕片の破断面の画像データからプラスチック破砕片の材質を判別する請求項1に記載のプラスチックの分別装置。
【請求項4】
破断面を有するプラスチック破砕片に可視光および近赤外光を照射し、前記可視光および近赤外光の各々の反射光から各々の画像データを取得する画像データ取得工程と、前記可視光の照射により得られた画像データからプラスチック破砕片の輪郭を抽出する輪郭抽出工程と、前記近赤外光の照射により得られた画像データからプラスチック破砕片の材質を判別する材質判別工程と、前記プラスチック破砕片の輪郭および材質の少なくとも一方からプラスチック破砕片の分別データを得て、前記分別データに基づいてプラスチック破砕片を分別する分別工程とを備えることを特徴とするプラスチックの分別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−94634(P2010−94634A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269111(P2008−269111)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】