説明

プラスチックフィルムの加熱方法、およびカラーフィルターの製造方法

【課題】プラスチックフィルムを均一にかつ迅速に加熱することができるプラスチックフィルムの加熱方法を提供する。
【解決手段】本発明によるプラスチックフィルムの加熱方法においては、まず、帯状のプラスチックフィルム1が、プラスチックフィルム1の間に支持部材2を介してコア5に巻き取られ、当該支持部材2によってプラスチックフィルム1の間に空隙層3が介在されるように、プラスチックフィルム1の巻取体4が形成される。次に、プラスチックフィルム1の巻取体4が加熱炉10に投入される。その後、加熱炉10内において、プラスチックフィルム1の巻取体4が所望の温度で加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状のプラスチックフィルムを加熱するプラスチックフィルムの加熱方法、および、この方法を含むカラーフィルターの製造方法に係り、とりわけ、プラスチックフィルムを均一にかつ迅速に加熱することができるプラスチックフィルムの加熱方法、およびカラーフィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラーフィルターやTFTアレイを構成するディスプレイ部材において、金属または樹脂により所定の機能性を有するパターンを形成するための基材として、フレキシブル性を有するロール状のプラスチックフィルムを用いることが研究されている。このように、基材をプラスチック製とすることにより、カラーフィルターやTFTアレイを薄型化、低コスト化するとともに、基材が割れることを防止することができる。
【0003】
このような基材には、所定の機能性を有するパターンが形成されるが、この際、一般的には、パターンの硬化促進、反応促進、密着性向上、熱的安定性の向上、不純物除去等の目的で、ベーク(焼成)処理が行われる。基材がガラスよりなる場合には、ガラスが耐熱性を有することから、パターンが形成された基材を、いわゆるオーブンに投入して、比較的高い温度でベーク処理していた。しかしながら、基材がフレキシブル性を有する樹脂材料よりなる場合には、樹脂の耐熱性が低いため、基材を変形させることなくベーク処理することが困難であった。
【0004】
このようなことに対処するために、特許文献1に示すようなシート状基材のベーク方法が知られている。ここでは、巻出しローラから繰り出されたシート状基材を、オーブン内でベルトにより搬送しながら、ベーク処理が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−148352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す方法によりシート状基材をベーク処理する場合、シート状基材を確実に加熱するためには、オーブン内の加熱ゾーンを長くする、またはシート状基材の搬送速度を小さくすることが必要となる。しかしながら、前者の場合、加熱ゾーンを長くすることにより、オーブンが大型化し、オーブン内の温度分布を均一に維持することが困難になり、後者の場合、ベーク処理の時間が長くなり、いずれにしても、エネルギ効率が低下するという問題がある。また、このように、オーブン内の加熱ゾーンにシート状基材を連続的に搬送する場合、オーブンにシート状基材の出入り口を設ける必要が生じ、オーブン内部の密閉性が低下する。このことからも、オーブン内の温度分布が偏り、シート状基材を均一に加熱することが困難になるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、プラスチックフィルムを均一にかつ迅速に加熱することができるプラスチックフィルムの加熱方法、および、この方法を含むカラーフィルターの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、帯状のプラスチックフィルムを、プラスチックフィルムの間に支持部材を介してコアに巻き取り、当該支持部材によってプラスチックフィルムの間に空隙層が介在されるように、プラスチックフィルムの巻取体を形成する工程と、プラスチックフィルムの巻取体を加熱炉に投入する工程と、加熱炉内において、プラスチックフィルムの巻取体を所望の温度で加熱する工程と、を備えたことを特徴とするプラスチックフィルムの加熱方法を提供する。
【0009】
なお、上述したプラスチックフィルムの加熱方法において、プラスチックフィルムの巻取体を形成する工程において、プラスチックフィルムは、1N/mm以下の単位断面積当たりの張力で巻き取られる、ようにしてもよい。
【0010】
また、上述したプラスチックフィルムの加熱方法において、コアが樹脂よりなり、プラスチックフィルムの巻取体を加熱する工程において、プラスチックフィルムは、コアのガラス転移点以下の温度で加熱される、ようにしてもよい。
【0011】
また、上述したプラスチックフィルムの加熱方法において、支持部材が樹脂よりなり、プラスチックフィルムの巻取体を加熱する工程において、プラスチックフィルムは、支持部材のガラス転移点以下の温度で加熱される、にしてもよい。
【0012】
また、上述したプラスチックフィルムの加熱方法において、支持部材が、プラスチックフィルムのガラス転移点以上のガラス転移点を有する樹脂よりなる、ようにしてもよい。
【0013】
また、上述したプラスチックフィルムの加熱方法において、支持部材が、プラスチックフィルムと同一材料よりなる、ようにしてもよい。
【0014】
また、上述したプラスチックフィルムの加熱方法において、プラスチックフィルムの巻取体を形成する工程において、コアに巻き取られるプラスチックフィルムに、樹脂によりパターンが形成されている、ようにしてもよい。
【0015】
また、上述したプラスチックフィルムの加熱方法において、プラスチックフィルムの巻取体を形成する工程において、支持部材は、プラスチックフィルムのうちパターン以外の領域に配置される、ようにしてもよい。
【0016】
本発明は、帯状のプラスチックフィルムを準備する工程と、プラスチックフィルムに、カラーフィルター形成用の樹脂を含む感光性材料を塗布して乾燥し、当該感光性材料を所定の形状で露光して現像し、プラスチックフィルム上に当該感光性材料よりなるパターンを形成する工程と、請求項7または8に記載のプラスチックフィルムの加熱方法を実行することにより、プラスチックフィルムおよびパターンを加熱する工程と、を備え、カラーフィルターを得ることを特徴とするカラーフィルターの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、帯状のプラスチックフィルムを巻き取って巻取体を形成して加熱するため、帯状のプラスチックフィルムの全体を一度に加熱することができる。また、プラスチックフィルムの間に支持部材によって空隙層が介在されるため、加熱炉において発せられた熱を、空隙層を介してプラスチックフィルムの全体に行き渡らせることができる。このため、プラスチックフィルムを均一にかつ迅速に加熱することができる。
【0018】
また、本発明によれば、カラーフィルター形成用の樹脂を含む感光性材料よりなるパターンが形成された帯状のプラスチックフィルムを巻き取って巻取体を形成して加熱するため、プラスチックフィルムおよびパターンの全体を一度に加熱することができる。また、プラスチックフィルムの間に支持部材によって空隙層が介在されるため、加熱炉において発せられた熱を、空隙層を介してプラスチックフィルムおよびパターンの全体に行き渡らせることができる。このため、プラスチックフィルムおよびパターンを均一にかつ迅速に加熱することができると共に、プラスチックフィルムとパターンとの密着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施の形態におけるプラスチックフィルムの巻取体を示す斜視図。
【図2】図2(a)は、本発明の実施の形態において、支持部材の配置の一例を示す平面図。図2(b)は、図2(a)の側面図。図2(c)は、支持部材の配置の他の例を示す平面図。図2(d)は、図2(c)の側面図。
【図3】図3は、本発明の実施の形態において、オーブンにプラスチックフィルムの巻取体を設置した状態の一例を示す図。
【図4】図4は、本発明の実施の形態において、オーブンにプラスチックフィルムの巻取体を設置した状態の他の例を示す図。
【図5】図5は、本発明の実施の形態におけるプラスチックフィルムの加熱方法およびカラーフィルターの製造方法のフローチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
まず、図1により、本実施の形態におけるプラスチックフィルム1の巻取体4について説明する。本実施の形態によるプラスチックフィルム1の巻取体4は、樹脂により、図示しないカラーフィルター用の所定形状のパターン6が形成されたプラスチックフィルム1をロール状に巻き取ったものである。
【0022】
すなわち、プラスチックフィルム1に形成されるパターン6は、カラーフィルター形成用の樹脂を含む感光性材料からなり、カラーフィルター用の所望の機能性を有するものである。本実施の形態においては、このようなパターン6として、カラーフィルター用のブラックマトリックス、赤色の画素、緑色の画素、または青色の画素が形成される。
【0023】
図1に示すように、プラスチックフィルム1の巻取体4は、円筒状のコア5に、パターン6が形成された帯状のプラスチックフィルム1が、プラスチックフィルム1の間に支持部材2を介して巻き取られ、当該支持部材2によってプラスチックフィルム1の間に空隙層3が介在されるように形成されている。このうち、支持部材2は、プラスチックフィルム1のうちパターン6以外の領域に配置されていることが好ましい。このことにより、パターン6が損傷することを防止することができる。本実施の形態においては、図1および図2(a)、(b)に示すように、支持部材2は、プラスチックフィルム1の長手方向に沿う両縁部に配置されており、プラスチックフィルム1の巻取体4は、ナーリング形態でプラスチックフィルム1を巻き取ったものとなっている。
【0024】
具体的には、支持部材2は、プラスチックフィルム1の幅方向において、長手方向の両縁部からプラスチックフィルム1の幅の1/3以内の領域に配置されていることが好ましい。なお、支持部材2は、プラスチックフィルム1同士が接触しない状態を維持可能であれば、プラスチックフィルム1の長手方向の両縁部から外方に部分的にはみ出していても良い。
【0025】
プラスチックフィルム1は、1N/mm以下の単位断面積当たりの張力で巻き取られることが好ましく、さらには、実質的に張力をかけることなく巻き取られることがより好ましい。このことにより、巻き取られたプラスチックフィルム1に引張応力が残留することを防止し、加熱処理によってプラスチックフィルム1が変形することを防止することができる。また、プラスチックフィルム1を巻き取る巻取機(図示せず)としては、一般的なものを用いることができる。さらに、プラスチックフィルム1の巻回数は、用途等に応じて、適宜選択されることが好ましい。
【0026】
次に、プラスチックフィルム1の材料について説明する。本実施の形態におけるプラスチックフィルム1は、ロール状に巻き取り可能な程度に可撓性を有していればよく、また、カラーフィルター用として、透明性、軽量性等を有していることが求められる。プラスチックフィルム1の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ナイロン66(66N)、アクリロニトルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の合成樹脂を挙げることができる。
【0027】
また、プラスチックフィルム1の厚さとしては、1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、10μm〜500μmの範囲内であることがより好ましく、50μm〜250μmの範囲内であることがさらに好ましい。プラスチックフィルム1の厚さが上記範囲よりも厚すぎると、フレキシブル性が損なわれ、折れやすくなり、ロール状のプラスチックフィルム1の巻取体4を形成することが困難になるからである。一方、上記範囲よりも薄すぎると、こしが無くなり、各工程における取り扱いが困難になるからである。
【0028】
プラスチックフィルム1の幅としては、特に限定されるものではないが、例えば、100mm〜1000mmの範囲内であることが好ましく、150mm〜600mmの範囲内であることがより好ましい。
【0029】
なお、プラスチックフィルム1は、単一層よりなる構成であっても良く、あるいは、複数の層が積層された構成を有するものであっても良い。
【0030】
次に、支持部材2について説明する。本実施の形態における支持部材2は、コア5に巻き取られたプラスチックフィルム1の間に空隙層3を形成するための帯状の部材である。このような支持部材2としては、可撓性を有し、かつ、離型性が高いものであれば、特に限定されるものではない。とりわけ、支持部材2は、プラスチックフィルム1を巻き取る際に使用されるものであってカラーフィルターの構成部品ではないため、不透明な材料を用いることができ、例えば、テープ状の金属などを用いても良い。
【0031】
支持部材2は、プラスチックフィルム1のガラス転移点より大きいガラス転移点を有する樹脂よりなるようにしても良い。このことにより、加熱処理時に、支持部材2がプラスチックフィルム1に癒着することを防止することができる。この場合、例えば、支持部材2に、上述したPTFE、PI、または金属等を用いて耐熱性を付与しても良い。あるいは、支持部材2は、プラスチックフィルム1と同一の材料からなっていても良い。この場合、プラスチックフィルム1と支持部材2の熱膨張率が同じとなるため、加熱処理時に、プラスチックフィルム1が変形することを防止することができる。
【0032】
支持部材2の厚さとしては、20〜200μmの範囲内であることが好ましく、50〜150μmの範囲内であることがより好ましい。支持部材2の厚さが上記範囲より薄いと、プラスチックフィルム1を巻き取ったときに空隙層3がつぶれてプラスチックフィルム1同士が接触しやすくなり、上記範囲より厚いと、プラスチックフィルム1を巻き取ることが困難になるからである。
【0033】
支持部材2の幅としては、プラスチックフィルム1の幅に対して3%以上30%以内であることが好ましく、具体的には、5〜80mmであることが好ましく、10〜50mmであることがより好ましい。支持部材2の幅が上記範囲より小さいと、プラスチックフィルム1の幅方向の中央部分においてプラスチックフィルム1同士が接触し易くなり、上記範囲より大きいと、プラスチックフィルム1に形成されるパターン6に支持部材2が触れるからである。
【0034】
また、支持部材2は多孔質材料からなっていても良い。この場合、例えば、ポリエチレン多孔質シート(日東電工製サンマップ)、ミクロボイド二軸延伸ポリプロピレン(ユポ・コーポレーション製ユポ)、不織布等を用いることが好ましい。この場合、多孔質シートの表面粗さ(Ra)は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。Raが上記範囲より小さいと、支持部材2が有する空隙が少なくなり、通気性および透湿性が低下するからである。なお、多孔質シートのRaは、通常、10μm以下である。また、ここでの「表面粗さ(Ra)」は、「算術平均表面粗さ」であり、JIS−B0601に準拠して測定される。
【0035】
また、図2(c)、(d)に示すように、支持部材2の表面に凹凸が形成されていても良い。このことにより、支持部材2の凹部2aを介して、空隙層3と外部雰囲気との間に通気性が付与されるため、加熱処理によりプラスチックフィルム1または感光性材料よりなるパターン6から昇華した昇華物質を、空隙層3から放出させることができると共に、この昇華物質が、プラスチックフィルム1またはパターン6に付着することを防止することができる。この場合、支持部材2として、凹凸が形成されたエンボスフィルムなどを用いることができる。このようなエンボスフィルムは、例えば、プラスチックフィルム1との接触面積が0.01mm〜100mm程度となるような比較的大きな凹凸を有し、凹凸の間隔が、例えば、0.1mm〜10mm程度と比較的大きな間隔となっているため、空隙層3に通気性を付与するためには好適である。また、エンボスフィルムは、例えば、汎用的に用いられるキャリアテープなどでも良いが、型押し加工などにより任意の凹凸形状が形成された部材を用いても良い。
【0036】
次に、コア5について説明する。コア5としては、加熱処理時の温度で融解および発火しない材料であれば特に限定されるものではなく、プラスチック、紙、金属などを用いることができ、とりわけ金属を用いることが好ましい。一般的に、金属はプラスチックより熱膨張率が小さいため、加熱処理時に、コア5がプラスチックフィルム1より膨張することを防止して、プラスチックフィルム1が変形することを防止することができる。あるいは、プラスチックフィルム1と同等の熱膨張率を有する樹脂、とりわけプラスチックフィルム1と同一の材料を用いても良い。この場合、プラスチックフィルム1とコア5の熱膨張の挙動が同じとなるため、加熱処理時にプラスチックフィルム1が変形することを防止することができる。
【0037】
コア5の長さとしては、プラスチックフィルム1の幅と同等以上であれば良い。この場合、プラスチックフィルム1の長手方向の両縁部が変形することを防止することができる。また、コア5の直径としては、一般的な直径である3インチまたは6インチとすることが好ましいが、プラスチックフィルム1の巻取体4を形成するためには、巻取作業性を考慮して、6インチとすることが好ましい。さらに、コア5の厚さとしては、プラスチックフィルム1を巻き取るための強度を有することができれば限定されるものではなく、1〜10mm、好ましくは3〜5mmとすることができる。なお、プラスチックフィルム1の巻取体4の加熱処理の効率を向上させるためには、コア5の体積を小さくして、その熱容量を小さくすることが好ましい。
【0038】
次に、本実施の形態における加熱炉について説明する。加熱炉として、図3および図4に示すような、いわゆるオーブン10を用いることが好ましい。オーブン10の内部においては、気体(通常は空気、場合によっては窒素などの不活性ガス)が対流して内部の温度が均一に制御されているため、プラスチックフィルム1の全体を均一に効率良く加熱(ベーク)することが可能となる。なお、オーブン10としては、クリーン仕様のオーブン(例えば、エスペック(ESPEC)株式会社製のクリーンオーブンPVHCシリーズ)を用いることが好適である。
【0039】
このようなオーブン10においてプラスチックフィルム1の巻取体4を加熱する際、図3に示すように、オーブン10内の網棚11に、軸線方向が垂直となるようにプラスチックフィルム1の巻取体4を設置(縦置きに)しても良い。あるいは、図4に示すように、円筒状のコア5の中空部に円柱状の保持部材12を通し、オーブン10内の網棚11に軸受部材13を取り付け、保持部材12の両端部を軸受部材13に取り付けて、プラスチックフィルム1の巻取体4を設置(横置きに)しても良い。このようにして、プラスチックフィルム1がオーブン10内の網棚11や内壁等に触れることなく、巻取体4を設置することが好ましく、このことにより、プラスチックフィルム1の全体を均一に加熱することができる。
【0040】
オーブン10では、コア5が樹脂よりなる場合には、このコア5のガラス転移点以下の温度で、かつ、支持部材2が樹脂よりなる場合には、この支持部材2のガラス転移点以下の温度で、プラスチックフィルム1が加熱されることが好ましい。このことにより、コア5および支持部材2が変形することを防止し、プラスチックフィルム1が加熱により変形することを防止することができる。なお、オーブン10の加熱温度は、プラスチックフィルム1の融点より低ければ、ガラス転移点以上の温度であっても良い。
【0041】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち本実施の形態によるプラスチックフィルム1の加熱方法、およびこの方法を含むカラーフィルターの製造方法について、図5を用いて説明する。
【0042】
まず、ロール状に巻き付けられた帯状のプラスチックフィルム1を準備する(ステップS1)。
【0043】
続いて、ロール状に巻き付けられたプラスチックフィルム1が繰り出され、繰り出されたプラスチックフィルム1に、カラーフィルター形成用の樹脂を含む感光性材料が塗布される(ステップS2)。すなわち、プラスチックフィルム1に、カラーフィルター用のブラックマトリックス、赤色の画素、緑色の画素、または青色の画素用の感光性材料が塗布される。
【0044】
次に、塗布された感光性材料を、乾燥する(ステップS3)。
【0045】
その後、プラスチックフィルム1上の感光性材料が、所定の形状を有するフォトマスク(図示せず)を用いて露光される(ステップS4)。
【0046】
続いて、露光された感光性材料が現像される(ステップS5)。このことにより、プラスチックフィルム1上に、感光性材料よりなるパターン6が形成される。
【0047】
次に、プラスチックフィルム1が加熱される。
【0048】
この場合、まず、帯状のプラスチックフィルム1が、プラスチックフィルム1の間に支持部材2を介してコア5に巻き取られ、当該支持部材2によってプラスチックフィルム1の間に空隙層3が介在されるように、プラスチックフィルム1の巻取体4が形成される(ステップS6)。ここで、支持部材2は、プラスチックフィルム1のうちパターン6以外の領域、とりわけ、プラスチックフィルム1の長手方向の両縁部に配置される。また、プラスチックフィルム1は、上述したように、1N/mmの単位断面積当たりの張力で巻き取られることが好ましい。
【0049】
続いて、プラスチックフィルム1の巻取体4が、予め所望の温度に加熱されたオーブン10に投入される(ステップS7)。投入された巻取体4は、図3または図4に示す形態で、オーブン10内に設置される。
【0050】
次に、オーブン10内において、プラスチックフィルム1の巻取体4が、所望の温度で加熱(ベーク)される(ステップS8)。
【0051】
加熱処理が終了した後、プラスチックフィルム1の巻取体4がオーブン10から取り出される(ステップS9)。
【0052】
上述したステップS2〜S9を繰り返すことにより、プラスチックフィルム1上に、ブラックマトリックス、赤色画素、緑色画素、および青色画素を順次形成することができる。このようにして、プラスチックフィルム1に、カラーフィルター用の機能性を有するパターン6が形成され、カラーフィルター1が得られる。
【0053】
このように本実施の形態によれば、感光性材料を露光して現像することによりパターン6が形成された帯状のプラスチックフィルム1を巻き取って巻取体4を形成して加熱するため、プラスチックフィルム1およびパターン6の全体を一度に加熱することができる。また、プラスチックフィルム1の間に支持部材2によって空隙層3が介在されるため、オーブン10において発せられた熱を、空隙層3を介してプラスチックフィルム1およびパターン6の全体に行き渡らせることができる。このため、プラスチックフィルム1およびパターン6を均一にかつ迅速に加熱することができると共に、プラスチックフィルム1とパターン6との密着性を向上させることができる。
【0054】
また、本実施の形態によれば、パターン6が形成された帯状のプラスチックフィルム1が、プラスチックフィルム1の間に支持部材2を介して巻き取られるため、プラスチックフィルム1同士が接触して、加熱により癒着することを防止し、プラスチックフィルム1およびパターン6が変形することを防止することができる。とりわけ、このように支持部材2を介してプラスチックフィルム1が巻き取られることにより、オーブン10による加熱温度が、プラスチックフィルム1の融点より低ければ、ガラス転移点以上の温度であっても、プラスチックフィルム1およびパターン6が変形することを防止することができる。
【0055】
なお、本実施の形態においては、ナーリング形態に巻き取られてオーブン10において加熱されるプラスチックフィルム1に、カラーフィルター用のブラックマトリックス、赤色の画素、緑色の画素、および青色の画素が形成されている例について説明した。しかしながらこのことに限られることはなく、プラスチックフィルム1に、光学部材としての配向膜、レンズアレイ、位相差層、偏光層、または導光板等を構成する樹脂によりパターンが形成されていても良い。この場合においても、プラスチックフィルム1および上記パターンを、変形させることを防止すると共に、均一にかつ迅速に加熱することができ、さらに、プラスチックフィルム1と上記パターンとの密着性を向上させることができる。
【0056】
あるいは、プラスチックフィルム1に、駆動回路としての導電性配線、TFTアレイ、または透明電極を構成する所定形状の金属の層(図示せず)を形成するために、エッチング用の樹脂によりレジストが形成されていても良い。すなわち、プラスチックフィルム1に、上述の金属の層が設けられ、この金属の層上に、エッチング用の樹脂を含むレジストが塗布され、乾燥、露光、現像されて、レジストよりなるパターンが形成され、その後に、このパターンを加熱(ベーク)処理するために、プラスチックフィルム1をナーリング形態に巻き取ってオーブン10において加熱するようにしても良い。この場合においても、プラスチックフィルム1および上記パターンを、変形させることを防止すると共に、均一にかつ迅速に加熱することができ、さらに、金属の層と上記パターンとの密着性を向上させることができる。
【0057】
本発明の変形例
次に、本発明によるプラスチックフィルムの加熱方法、および、この方法を含むカラーフィルターの製造方法の変形例について説明する。本変形例においては、パターンが形成されていないプラスチックフィルムがナーリング形態に巻き取られてオーブンにおいて加熱されるようになっているものであり、他の構成は図1乃至図5に示す実施の形態と略同一である。
【0058】
本変形例においては、パターン6が形成されていない帯状のプラスチックフィルム1がナーリング形態に巻き取られてオーブン10において加熱されるようになっている。
【0059】
すなわプラスチックフィルム1に、パターン6を形成するための感光性材料が塗布される前(図5に示すステップS2の前)に、帯状のプラスチックフィルム1がナーリング形態に巻き取られて加熱処理される。
【0060】
本変形例によれば、プラスチックフィルム1にパターン6を形成する前にプラスチックフィルム1を加熱して熱収縮させるため、その後にパターン6が形成されたプラスチックフィルム1を加熱(ベーク)処理する際に、プラスチックフィルム1が収縮することを防止することができ、プラスチックフィルム1に形成されるパターン6の寸法精度を向上させることができる。
【0061】
また、本変形例によれば、帯状のプラスチックフィルム1を巻き取って巻取体4を形成して加熱するため、帯状のプラスチックフィルム1の全体を一度に加熱することができる。また、プラスチックフィルム1の間に支持部材2によって空隙層4が介在されるため、オーブン10において発せられた熱を、空隙層3を介してプラスチックフィルム1の全体に行き渡らせることができる。このため、プラスチックフィルム1を均一にかつ迅速に加熱することができる。
【0062】
さらに、本変形例によれば、帯状のプラスチックフィルム1が、プラスチックフィルム1の間に支持部材2を介して巻き取られるため、プラスチックフィルム1同士が接触して、加熱により癒着することを防止し、プラスチックフィルム1が変形することを防止することができる。とりわけ、このように支持部材2を介してプラスチックフィルム1が巻き取られることにより、オーブン10による加熱温度が、プラスチックフィルム1の融点より低ければ、ガラス転移点以上の温度であっても、プラスチックフィルム1が変形することを防止することができる。
【実施例】
【0063】
実施例1
本発明のプラスチックフィルムの加熱方法により加熱されたプラスチックフィルム1の変形の有無を調べた。
【0064】
まず、プラスチックフィルム1として、300mm幅で10m長さのPETフィルム(東洋紡績株式会社製コスモシャインA4100、125μm厚さ、ガラス転移点:70〜110℃、融点:258℃)を準備し、支持部材2として、30mm幅、10m長さのポリイミドフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製カプトンフィルム、75μm厚さ、ガラス転移点:400℃以上)を準備した。このポリイミドフィルムを、PETフィルムの長手方向の両縁部(具体的には、両縁から30mmの位置)に配置し、1N/mmの単位断面積当たりの張力で円筒状のコア(内径3インチ)5に巻き取り、厚さ75μmの空隙層3が介在されたPETフィルムの巻取体4を形成した。このとき、PETフィルムの両縁部以外の領域は、空隙層3によってPETフィルム同士が接触していないことを確認した。
【0065】
次に、PETフィルムの巻取体4を、予め230℃に加熱されたクリーンオーブン(エスペック株式会社製PVHC330)に投入した。このとき、PETフィルムの巻取体4を、図3に示すように縦置きにして、網棚11上に設置した。設置したPETフィルムを30分間加熱処理し、その後、オーブン10から取り出し、空冷した。
【0066】
このようにして加熱処理されたPETフィルムを繰り出し、PETフィルムの変形の有無を確認したところ、PETフィルムをそのガラス転移点以上の温度で加熱しているにも関わらず、PETフィルムのうち支持部材2に接していない部分においては、PETフィルム同士が癒着することなく、また、歪みなどの変形も見られなかった。
【0067】
比較例1として、上記と同等のPETフィルムを、支持部材2を用いることなく(空隙層3を介在させることなく)、コア5に巻き取り、その他の点では上記と同様にして、オーブン10において230℃で30分間加熱した。
【0068】
このようにして加熱処理されたPETフィルムでは、しわ、歪みが激しく、原形をとどめていないことが確認できた。
【0069】
実施例2
プラスチックフィルム1として、PENフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製テオネックスQ65FA、100μm厚さ、ガラス転移点:155℃、融点:269℃)を用い、オーブン10による加熱温度を150℃とし、その他の点では、上記実施例1と同様な方法により、PENフィルムの変形の有無を調べた。
【0070】
このようにして加熱処理されたPENフィルムを繰り出し、PENフィルムの変形の有無を確認したところ、PENフィルムの全体に亘って、PENフィルム同士が癒着していないこと、および、歪みなどの変形が見られないことが確認できた。
【0071】
比較例2として、上記と同等のPENフィルムを、支持部材2を用いることなく(空隙層3を介在させることなく)、コア5に巻き取り、その他の点では上記と同様にして、オーブン10において150℃で30分間加熱した。
【0072】
このようにして加熱処理されたPENフィルムでは、しわ、歪みが激しく、PENフィルム同士が癒着して剥がれない状態であったことが確認できた。
【0073】
比較例3として、PENフィルムを巻き取る際の単位断面積当たりの張力を、1.7N/mmとし、その他の点では上記と同様にして、オーブン10において150℃で30分間加熱した。
【0074】
このようにして加熱処理されたPENフィルムでは、PENフィルムの幅方向の中央部分に、幅方向に延びる線状のしわが発生したことが確認できた。
【0075】
実施例3
PETフィルムに、予めパターン6を形成しておき、その他の点では上記実施例1と同様にして加熱し、PETフィルムおよびパターン6の変形の有無を確認した。
【0076】
なお、PETフィルム上のパターン6は、以下のようにして得た。すなわち、レジスト材(感光性材料)をグラビア印刷方式により1μmの厚さで塗布し、このレジスト材を50℃で2分間乾燥させた。次に、PETフィルム上に塗布されたレジスト材を、所望の形状を有するフォトマスクを介して紫外線露光した。その後、現像を行い、レジスト材よりなるパターン6を形成した。
【0077】
このようにしてパターン6が形成されたPETフィルムを実施例1と同様な方法により加熱処理し、その後、PETフィルムおよびパターン6の変形の有無を確認したところ、PETフィルムをそのガラス転移点以上の温度で加熱しているにも関わらず、PETフィルムのうちパターン6が形成されている領域においては、しわ、歪みなどの変形が見られなかった。また、パターン6とPETフィルムとの密着性は、加熱処理前に比べて、格段に改善されていることが確認できた。
【符号の説明】
【0078】
1 プラスチックフィルム
2 支持部材
2a 凹部
3 空隙層
4 巻取体
5 コア
6 パターン
10 オーブン
11 網棚
12 保持部材
13 軸受部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のプラスチックフィルムを、プラスチックフィルムの間に支持部材を介してコアに巻き取り、当該支持部材によってプラスチックフィルムの間に空隙層が介在されるように、プラスチックフィルムの巻取体を形成する工程と、
プラスチックフィルムの巻取体を加熱炉に投入する工程と、
加熱炉内において、プラスチックフィルムの巻取体を所望の温度で加熱する工程と、を備えたことを特徴とするプラスチックフィルムの加熱方法。
【請求項2】
プラスチックフィルムの巻取体を形成する工程において、プラスチックフィルムは、1N/mm以下の単位断面積当たりの張力で巻き取られることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックフィルムの加熱方法。
【請求項3】
コアが樹脂よりなり、
プラスチックフィルムの巻取体を加熱する工程において、プラスチックフィルムは、コアのガラス転移点以下の温度で加熱されることを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチックフィルムの加熱方法。
【請求項4】
支持部材が樹脂よりなり、
プラスチックフィルムの巻取体を加熱する工程において、プラスチックフィルムは、支持部材のガラス転移点以下の温度で加熱されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプラスチックフィルムの加熱方法。
【請求項5】
支持部材が、プラスチックフィルムのガラス転移点以上のガラス転移点を有する樹脂よりなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプラスチックフィルムの加熱方法。
【請求項6】
支持部材が、プラスチックフィルムと同一材料よりなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のプラスチックフィルムの加熱方法。
【請求項7】
プラスチックフィルムの巻取体を形成する工程において、コアに巻き取られるプラスチックフィルムに、樹脂によりパターンが形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のプラスチックフィルムの加熱方法。
【請求項8】
プラスチックフィルムの巻取体を形成する工程において、支持部材は、プラスチックフィルムのうちパターン以外の領域に配置されることを特徴とする請求項7に記載のプラスチックフィルムの加熱方法。
【請求項9】
帯状のプラスチックフィルムを準備する工程と、
プラスチックフィルムに、カラーフィルター形成用の樹脂を含む感光性材料を塗布して乾燥し、当該感光性材料を所定の形状で露光して現像し、プラスチックフィルム上に当該感光性材料よりなるパターンを形成する工程と、
請求項7または8に記載のプラスチックフィルムの加熱方法を実行することにより、プラスチックフィルムおよびパターンを加熱する工程と、を備え、
カラーフィルターを得ることを特徴とするカラーフィルターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−71540(P2012−71540A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219589(P2010−219589)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】