説明

プラスチック成形品

【課題】 入れ子の段差や微小なバリに用紙が引っ掛かることなく通紙することができるプラスチック成形品を提供する。
【解決手段】 金型が入れ子構造となっている通紙面を有するプラスチック成形品において、通紙面の入れ子2近傍にテーパ面6aを持った突起6を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙搬送面(通紙面)を有するプラスチック成形品に関し、特に、金型構造上、入れ子構造を有する成形品形状に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は第1の従来例に係るプラスチック成形品の構成図であり、(1)は斜視図、(2)は要部断面図である。また図6は第2の従来例に係るプラスチック成形品の要部断面図である。
画像形成装置、原稿搬送装置、給紙装置等用紙を搬送する機構を備えた機器においては、用紙の搬送をガイドするガイド板が配置される。これらのガイド板をプラスチック等により射出成形する場合の課題として以下に示した如きものがある。
即ち、図5は通紙面に入れ子構造を有するプラスチック成形品1としてのガイド板を示している。このガイド板1は、ガイド板1の通紙面に穴1aを備えている。このガイド板1を金型内で射出成形する場合には、図示しないキャビティ内に樹脂を注入するが、穴1aに相当する形状はキャビティ内に入れ子2を配置することによって形成する。図5(2)は金型のキャビティ内で入れ子2が成形品としてのガイド板1の穴1aを成形している状態を示している。入れ子2が通紙面に接する位置(穴1aの周縁部)には段差部(0.2mm以下)3が形成され易く、この段差部3における用紙の引っ掛かりを防止するために、入れ子2と、入れ子周囲の金型部分の各高さを調整し対応しているが、調整が容易でない。また、入れ子2と、入れ子周囲の金型部分との間に隙間が生じると微小なバリ(0.1mm以下)4が発生し、通紙面を搬送される用紙が引っ掛かる原因となる(図5参照)。
この課題を解決するために、入れ子により形成される穴1aの内壁、図6に示すように、C面(傾斜面)5を設けることにより、段差部3や微小なバリ4が発生しても用紙が引っ掛からないようにする技術がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、入れ子の使用を必要とする成形品の形状部にC面を設けることにより、段差部や微小なバリが発生しても用紙が引っ掛からないようにする技術があるが、入れ子に近い金型部分を加工する際、C面を掘り残す必要があり加工が容易ではない。
本発明は、入れ子の使用に起因して通紙面側に発生する段差や微小なバリに用紙が引っ掛かることなく通紙することができるプラスチック成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、入れ子を備えた金型によって射出成形される通紙面を備えたプラスチック成形品において、前記入れ子によって成形される通紙面の所定箇所の近傍に通紙をガイドするテーパ面を持った突起を配置したことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1において、前記突起は、少なくとも1個以上の三角リブであることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1、又は2において、前記入れ子によって成形される通紙面の所定箇所は、異形状の穴であり、該異形状の穴の通紙方向下流側内周縁に沿って前記突起を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、入れ子構造となっている金型を用いて通紙面が成形されるプラスチック成形品において、通紙面の入れ子使用部近傍にテーパ面を持った突起を設けていることで、また、通紙面の入れ子使用部近傍に三角リブを1ヶ所以上有していることで、また、入れ子を必要とする異形状内周縁に沿った入れ子の範囲内に突起を有していることで、さらには、入れ子を必要とする異形状内周縁近傍の入れ子範囲内に三角リブを有していることで、所期の目的を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。なお従来例と同一個所には同一符号を付す。
図1は本発明の第1の実施形態に係るプラスチック成形品の構成図であり、(1)は斜視図、(2)は断面図である。
第1の実施形態に係るプラスチック成形品1は、その通紙面に、金型を構成する入れ子2によって成形される穴1aを有している。通紙方向に対して、入れ子2によって形成される穴1aの手前側近傍に、テ−パ面6aを持った突起6を設ける。この突起6は、入れ子2の段差部3及び微小なバリ4(図5参照)の高さを考慮し、段差部3、及びバリ4よりも高い寸法、例えば0.3mm以上の高さを持ったものとする。
入れ子2による成形に起因して、穴1a周辺に段差部3や微小なバリ4が生じても、それに引っ掛かることなくテーパ面6aを持った突起6に沿って用紙を通紙することができる。
即ち、本発明は、入れ子2を備えた金型によって射出成形される通紙面を備えたプラスチック成形品1において、入れ子2によって成形される通紙面の所定箇所(穴1a)の近傍に通紙をガイドするテーパ面6aを持った突起6を配置した構成が特徴的である。
図2は本発明の第2の実施形態に係るプラスチック成形品の構成図であり、(1)は斜視図、(2)は断面図である。
第2の実施形態に係るプラスチック成形品1は、入れ子2によって成形される穴1aの通紙方向手前側近傍に、幅の狭い三角リブ(突起)7を1ヶ所以上設ける(この例では通紙方向と直交する方向に沿って併設)。この三角リブ7は、入れ子2の段差部3及び微小なバリ4(図5参照)の高さを考慮し、それを越える高さ、例えば0.3mm以上の高さを持ったものとする。
段差部3や微小なバリ4が生じても、それに引っ掛かることなく三角リブ7に沿って用紙を通紙することができる。また、テーパ面を持った突起より、加工範囲が小さく容易に加工可能となる。
【0007】
図3は本発明の第3の実施形態に係るプラスチック成形品の構成図であり、(1)は斜視図、(2)は断面図である。
第3の実施形態に係るプラスチック成形品1は、入れ子2により成形される穴1aの形状が、前記各実施形態のように矩形ではなく、異形(この例では下流側が三角形状となった全体として将棋の駒形状)となっている。そして、この異形状の穴1aの下流側の三角形状の内周縁8に沿ったテーパ面6aを持った突起6を、下流側の搬送面上に設ける。
即ち、この発明は、入れ子2によって成形される通紙面の所定箇所が、異形状の穴1aであり、異形状の穴1aの通紙方向下流側の内周縁8に沿って突起6、7を設けたことを特徴とする。
これによれば、異形状の内周縁8よりも先にテーパ面6aに沿って用紙は通紙することになり、異形状の内周縁8に引っ掛かることなく通紙することができる。
図4は本発明の第4の実施形態に係るプラスチック成形品の構成図であり、(1)は斜視図、(2)は断面図である。入れ子により成形される異形状内周縁8近傍に狭い幅の三角リブ(突起)7を、入れ子2の下流側の通紙面上に設ける。
これによれば、異形状内周縁8より先に三角リブ7に沿って用紙は通紙することになり、異形状内周縁8に引っ掛かることなく通紙できる。また、テーパ面を持った突起より、加工範囲が小さく容易に加工可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプラスチック成形品の構成図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るプラスチック成形品の構成図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るプラスチック成形品の構成図。
【図4】本発明の第4の実施形態に係るプラスチック成形品の構成図。
【図5】第1の従来例に係るプラスチック成形品の構成図。
【図6】第2の従来例に係るプラスチック成形品の構成図。
【符号の説明】
【0009】
1 プラスチック成形品、1a 穴、2 入れ子、3 段差部、4 微小なバリ、5 C面、6 突起、6a テ−パ面、7 三角リブ、8 内周縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入れ子を備えた金型によって射出成形される通紙面を備えたプラスチック成形品において、前記入れ子によって成形される通紙面の所定箇所の近傍に通紙をガイドするテーパ面を持った突起を配置したことを特徴とするプラスチック成形品。
【請求項2】
前記突起は、少なくとも1個以上の三角リブであることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック成形品。
【請求項3】
前記入れ子によって成形される通紙面の所定箇所は、異形状の穴であり、該異形状の穴の通紙方向下流側内周縁に沿って前記突起を設けたことを特徴とする請求項1、又は2に記載のプラスチック成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−142679(P2006−142679A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336728(P2004−336728)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】