説明

プラスチック材料を用いてインサート成形された構成部材を製造するための装置及びインサート成形された構成部材

本発明は、プラスチック材料(1)を用いてインサート成形された構成部材(5)を製造するための装置(10;10a)であって、型工具(11;11a)を備え、型工具(11;11a)が、パーティング面(15)内で互いに協働する少なくとも2つの型要素(13,14)を有しており、両型要素(13,14)に、プラスチック材料(1)を用いてインサート成形された構成部材(5)の外側の形状を形成するための凹部(17,18)が形成されており、型要素(13,14)の少なくとも1つに、型工具(11;11a)内へのプラスチック材料(1)の進入時に型工具(11;11a)内に存在する空気又はガスを逃がすことが可能な排気通路(27;27a)が形成されている、プラスチック材料(1)を用いてインサート成形された構成部材(5)を製造するための装置(10;10a)に関する。本発明により、排気通路(27;27a)は、排気通路(27;27a)からのプラスチック材料(1)の流出を阻止する閉鎖要素(25;25a)の構成要素であるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、請求項1の前段部に記載のプラスチック材料を用いてインサート成形された構成部材を製造するための装置及びインサート成形された構成部材に関する。
【0002】
この種の装置は、既に従来技術において公知であり、例えば、電子的な構成群又は構成部材、例えばプリント配線板上に配置された回路、チップ又はこれに類するものを、プラスチックを用いてインサート成形し、これにより、これらの構成部材あるいは構成群の、媒体あるいは外的な影響から保護されたアッセンブリを実現するために用いられる。この種の製造方法は、「モールディング法」とも称呼される。
【0003】
従来技術において公知の装置では、排気通路が設けられている。排気通路は、特に、型半部のパーティング面内に配置されており、型工具内への(当初液状の)プラスチックの射出時に、プラスチック材料によって押しのけられる空気の、型工具からの流出を可能にする。この場合の欠点は、一方では、排気通路のサイズが任意の大きさに選択できない点にある。これは、さもなければ、排気通路からプラスチック材料が流出する可能性を排除できなくなってしまうからである。他方、型工具のパーティング面内での排気通路の配置は、構成部材の形態及びその他のパラメータ次第では、型工具の最適な排気を保証しない。その結果、硬化したプラスチック材料中に空気が封入されてしまう可能性が排除されない。このことは、構成部材の品質あるいは頑強性に否定的な影響を及ぼす場合がある。
【0004】
発明の概要
上述の従来技術から出発して、本発明の根底にある課題は、請求項1の前段部に記載のプラスチック材料を用いてインサート成形された構成部材を製造するための装置を、型工具の信頼性の高い排気が可能となるように形成することである。この課題は、請求項1の特徴部に記載のプラスチック材料を用いてインサート成形された構成部材を製造するための装置において解決される。本発明の根底には、排気通路からのプラスチック材料の流出を阻止する、排気通路内への閉鎖要素の配置によって、排気通路が、型工具内にプラスチック材料の射出時に存在する空気をいずれにしても確実に型工具から抜くことができ、その結果、硬化したプラスチック材料中に空気の封入が発生しないような横断面を備えるように、排気通路を形成することができるという思想がある。
【0005】
プラスチック材料を用いてインサート成形された構成部材を製造するための本発明に係る装置の有利な形態は、従属請求項に記載されている。本発明の範囲内には、特許請求の範囲、明細書及び/又は図面に開示される特徴の少なくとも2つからなる組み合わせが含まれる。
【0006】
本発明の有利な形態において、閉鎖要素は、自動閉鎖する閉鎖要素として形成されている。これにより、特に高いプロセス信頼性及び比較的低い装置技術的な手間が実現される。
【0007】
この場合、閉鎖要素が、プラスチック材料の作用を受けて閉鎖するようになっていると、特に有利である。これにより、閉鎖要素の排気通路を通したプラスチック材料の流出は、確実に阻止される。
【0008】
本発明の構造的な変化態様において、閉鎖要素は、少なくとも1つの弾性変形可能な区分を有している。これにより、この種の弾性的な区分によって、閉鎖要素内の排気通路は閉鎖される。
【0009】
さらに、閉鎖要素を比較的簡単かつ安価に製造することができるように、閉鎖要素全体が、弾性的な材料、特にゴムから形成されていると、特に有利である。
【0010】
さらに、型工具からの空気あるいはガスの特に確実な流出を可能にする本発明の別の形態では、閉鎖要素が、少なくとも2つの型要素のパーティング面外に配置されている。例えば、閉鎖要素を型工具の角隅にか、又は型工具の、プラスチック材料のための流入通路に対向して位置する領域に配置することが考え得る。
【0011】
閉鎖要素の第1の択一的な形態においては、閉鎖要素を型要素のためのインサート部分として形成することが考え得る。特に、安価に製造可能な閉鎖要素において、この閉鎖要素は、1回限りの使用を予定されている。閉鎖要素は、インサート部分として形成されていることにより、比較的簡単に型工具から除去可能あるいは型工具内に装填可能である。これにより、取り扱いに要する手間は、比較的僅かである。
【0012】
しかし、これに対して択一的に、閉鎖要素を、インサート成形された構成部材の構成要素として、特にコネクタボディとして形成することも考え得る。この場合、構成部材のインサート成形時の取り扱いに要する手間は、付加的な別体のインサート部分あるいは閉鎖要素が使用されずに済むという点において最小化されている。
【0013】
本発明は、本発明に係る装置により製造された構成部材も包含する。この種の構成部材は、構成部材中の空気封入が回避可能であり、その結果、特に確実かつ高信頼性に作動するという利点を有している。さらに、閉鎖要素の構成あるいは配置次第で、排気通路により起因する構造を構成部材のあまり障害にならない場所に配置することも可能である。
【0014】
本発明の別の利点、詳細及び特徴は、有利な実施の形態の以下の説明及び図面から看取される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】インサート成形された構成部材を製造するための概略的に示した型工具の、型工具内へのプラスチック材料の射出前の縦断面図である。
【図2】インサート成形された構成部材を製造するための概略的に示した型工具の、型工具内へのプラスチック材料の射出後の縦断面図である。
【図3】図1及び図2に対して改変された型工具あるいは改変された閉鎖要素の、型工具内へのプラスチック材料の射出前の図である。
【図4】図1及び図2に対して改変された型工具あるいは改変された閉鎖要素の、型工具内へのプラスチック材料の射出後の図である。
【0016】
図中、同一あるいは機能同一の構成部材には、同一の符号を付した。
【0017】
図1及び図2には、プラスチック材料1を用いてインサート成形された構成部材5を製造するための第1の装置10が示されている。この種の装置10を使用して行う方法は、「モールディング法」とも称呼され、例えば自動車産業において、媒体、例えば酸、湿気又はこれに類するものの影響から保護しなければならない構成部材5のために使用される。構成部材5の例としては、電子的な構成部材あるいは構成群、例えばチップ、プリント配線板又はこれに類するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。もちろん、別の産業用途の別の構成部材も、この種の方法によって、外的な影響から保護した状態に製造可能である。
【0018】
プラスチック材料1は、加工状態においては液状あるいはペースト状であり、硬化後の最終状態では固体の状態にあり、その際、構成部材5を少なくとも部分的に、有利には完全に包囲若しくは包埋又は被覆するプラスチック材料1である。
【0019】
装置10は、とりわけ、型工具11を有している。型工具11は、図示の実施の形態では、双方向矢印12の方向で移動可能な2つの型半部13,14からなる。下側の型半部13及び上側の型半部14は、対向する面に1つの共通のパーティング面15を有している。パーティング面15において、型半部13,14両方のそれぞれの面は、密に互いに接続する。もちろん、本発明の範囲内で、2つより多くの型半部13,14あるいは型パーツを使用することも可能であるか、あるいは考え得る。
【0020】
両型半部13,14には、それぞれ1つの、本実施の形態ではポット状の凹部17,18が形成されている。両凹部17,18は、プラスチック材料1を用いてインサート成形された構成部材5の外側の形状を決定する。さらに本実施の形態では、上側の型半部14が1つの貫通開口19を有している。貫通開口19を通して、液状あるいはペースト状のプラスチック材料が、型半部13,14が閉鎖されているときに、型工具11内に注入可能である。また、本発明の範囲内で、1つより多くの貫通開口19を型工具11に設けることも、もちろん考え得る。さらに貫通開口19の配置及び直径は、その都度の使用事例に合わせて調整される。
【0021】
両型半部13,14の側壁21あるいは22には、それぞれ1つのウェブ状の壁区分23,24が形成されている。両壁区分23,24は、閉鎖要素25と協働する。閉鎖要素25は、有利には全体的に見て、弾性的な材料、特にゴム弾性的な材料から形成されており、中央部、すなわち型工具11のパーティング面15の平面内に排気通路27を有している。排気通路27は、型工具11の、型半部13,14の凹部17,18によって包囲される内室を周囲に接続している。排気通路27の横断面形状は、原則、種々異なる形状を有していてよく、最も簡単な形態では、円形に形成されている。
【0022】
閉鎖要素25は、図1及び図2に示した実施の形態ではインサート部分として形成されている。すなわち、プラスチック材料1により覆われた構成部材5の製造後、閉鎖要素25は、型工具11から取り出され、新たな構成部材5を製造するために、新たな閉鎖要素25が型工具11内に装填される。
【0023】
図1に示した実施の形態では、閉鎖要素25は、柱状あるいはスリーブ状の形状を有している。この場合、型半部13,14の凹部17,18内には、閉鎖要素25の一区分28が突入している。この区分28は、円錐形に形成されている。この区分28の先端30は、排気通路27の軸線と一致する。図1には、型半部13,14が対面移動した状態、すなわち、型閉じされた型工具11を形成している状態が示されている。構成部材5は、既に型工具11内に配置されているが、プラスチック材料1は、まだ型工具1内に射出されていない。この状態では、排気通路27が開放されていることが看取される。
【0024】
プラスチック材料1を上側の型半部14の貫通開口19を介して型工具11内に射出あるいは調量すると、(型閉じされた)型工具11内に存在する空気(あるいは存在するガス)は、まず、完全に閉鎖要素25の排気通路27を通って外部に到達可能あるいは周囲に押しのけ可能である。所定量のプラスチック材料1が閉鎖要素25の円錐形の区分28と協働すると直ちに、排気通路27は、凹部17,18に面した側の区分28の形状の結果、変形可能に形成された区分28に基づいて閉鎖される。この状態は、図2に示してある。これにより、型工具11あるいは凹部17,18が完全にプラスチック材料1で満たされている最終状態において、排気通路27は閉鎖されており、排気通路27を通したプラスチック材料1の流出は阻止される。
【0025】
プラスチック材料1の硬化後、両型半部13,14は、互いに離間あるいは分割される。その結果、インサート成形された構成部材5は離型可能である。同時に閉鎖要素25は、型工具11から除去可能であるか、あるいは構成部材5から取り外し可能である。
【0026】
図1及び図2に示した実施の形態では、閉鎖要素25が型工具11のパーティング面15内に配置されている。本発明の範囲内で、閉鎖要素25の配置を型工具11のパーティング面15内にするだけでなく、装置10あるいは型工具11のあらゆる別の場所、特に型工具11の角隅あるいは接近性の悪い箇所にすることも、もちろん可能である。型工具11の角隅あるいは接近性の悪い箇所においては、さもなければ、型工具11からの空気又はガスの流出が、進入してくるプラスチック材料1の結果として困難となってしまう。特に、複数の、場合によってはそれぞれ異なって成形あるいは寸法設定された閉鎖要素25を装置10あるいは型工具11に設けることも考え得る。
【0027】
図3及び図4には、本発明に係る第2の装置10aが示されている。装置10aは、ポット状の形状をした閉鎖要素25aを有している。この場合、閉鎖要素25aは、周囲を取り巻くように延びる壁32を有している。壁32には、底区分33が接続している。底区分33は、壁32に面した側で例えば円錐形に形成されており、中央部に排気通路27aを有している。排気通路27aは、例えば円形又は多角形に形成されている。閉鎖要素25aの横断面が例えば長方形に形成されている場合、型工具11aにおけるウェブ状の壁区分23,24は省略可能である。その結果、底区分33は、インサート成形された構成部材5の側壁を形成する。閉鎖要素25aを例えば柱体及びインサート部分として上記閉鎖要素25に応じて形成することも、もちろん可能である。
【0028】
プラスチック材料1を型工具11aに供給した図4に示した状態で、プラスチック材料1は、底区分33がプラスチック材料1により外方に押され、その際に排気通路27aを閉鎖することにより、底区分33の排気通路27aを閉鎖する。その際に重要であるのは、底区分33が弾性変形を許可すること、すなわち、少なくとも底区分33が排気通路27aの領域において弾性的な材料からなること、ただし好ましくは閉鎖要素25a全体が弾性的な材料からなることである。
【0029】
以上説明した装置10,10aは、本発明の思想から逸脱することなく、多種多様な形態に変更あるいは改変可能である。本発明の思想は、装置10,10a内へのプラスチック材料1の射出時の装置10,10aの適当な排気を可能にすると同時に、閉鎖を保証して、プラスチック材料1が装置10,10aから流出不能な閉鎖要素25,25aを設けることにある。
【0030】
改変の1つの可能性は、例えば、閉鎖要素25,25aが構成部材5の構成要素であること、例えば、構成部材5との(ケーブルを介した)電気的な接続を可能にするコネクタボディであることにある。この場合、コネクタボディの少なくとも一区分が弾性的に形成されており、空気用の貫通開口を備えている。考え得る別の態様は、閉鎖要素25,25aをインサート部分として(かつ、これにより場合によっては特定数の構成部材5の使用のためだけに)設けるのではなく、装置10,10aあるいは型工具11,11aの構成要素として設けることにある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック材料(1)を用いてインサート成形された構成部材(5)を製造するための装置(10;10a)であって、型工具(11;11a)を備え、該型工具(11;11a)が、パーティング面(15)内で互いに協働する少なくとも2つの型要素(13,14)を有しており、両型要素(13,14)に、前記プラスチック材料(1)を用いてインサート成形された構成部材(5)の外側の形状を形成するための凹部(17,18)が形成されており、前記型要素(13,14)の少なくとも1つに、前記型工具(11;11a)内への前記プラスチック材料(1)の進入時に前記型工具(11;11a)内に存在する空気又はガスを逃がすことが可能な排気通路(27;27a)が形成されている、プラスチック材料(1)を用いてインサート成形された構成部材(5)を製造するための装置(10;10a)において、
前記排気通路(27;27a)は、該排気通路(27;27a)からの前記プラスチック材料(1)の流出を阻止する閉鎖要素(25;25a)の構成要素であることを特徴とする、プラスチック材料を用いてインサート成形された構成部材を製造するための装置。
【請求項2】
前記閉鎖要素(25;25a)は、自動閉鎖する閉鎖要素(25;25a)として形成されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記閉鎖要素(25;25a)は、前記プラスチック材料(1)の作用を受けて閉鎖する、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記閉鎖要素(25;25a)は、少なくとも1つの弾性変形可能な区分(28;33)を有している、請求項2又は3記載の装置。
【請求項5】
前記閉鎖要素(25;25a)全体が、弾性的な材料、特にゴムから形成されている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記閉鎖要素(25;25a)は、前記少なくとも1つの弾性変形可能な区分(28;33)により閉鎖可能な、前記排気通路(27;27a)を形成する貫通路を有している、請求項4又は5記載の装置。
【請求項7】
前記閉鎖要素(25;25a)は、前記少なくとも2つの型要素(13,14)のパーティング面(15)外に配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記閉鎖要素(25;25a)は、前記少なくとも2つの型要素(13,14)のためのインサート部分として形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記閉鎖要素(25;25a)は、インサート成形された構成部材(5)の構成要素として、特にコネクタボディとして形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の装置(10,10a)を用いて製造された、インサート成形された構成部材(5)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−518741(P2013−518741A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551527(P2012−551527)
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070909
【国際公開番号】WO2011/095263
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】