説明

プラスチック製押出ブロー成形注入管

本発明は、各管端部にそれぞれ端口部(7)を有し、各端口部にはフランジ及び/又は接合対象部材との溶接用の端面(8)が設けられているタイプの特に自動車燃料タンク向けの多層共押出成形品からなるプラスチック製押出ブロー成形注入管(1)に関する。この注入管(1)は、互いに異なる管端部に位置する2つの端口部(7)が共に予め校正された肉厚と内径を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各管端部にそれぞれ端口部を有し、各端口部にはフランジ及び/又は接続対象部材との溶接用の端面が形成されているタイプの特に自動車燃料タンク向けの多層共押出成形品からなるプラスチック製押出ブロー成形注入管に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のタイプの注入管は、通常、片方の管端部のみが予め校正された寸法に成形されている。ここで、校正された寸法という言葉の意味は、成形されるべき製品の或る部分について成形工程で予め定められた最終確定寸法の肉厚及び内径を生成することである。よく知られているように、ブロー成形で製造された中空体は製造法に起因して肉厚が確定されていない。即ち、押出機から取り出されるチューブ状のパリソンは分割構造のブロー成形金型の内部で吹込空気によって膨張され、金型のキャビティ形状が完成品の輪郭を決定するだけである。従って、或る金型で次々にブロー成形される注入管は、当然のことながら或る1つの確定された輪郭をもつことになるが、金型内で膨張される材料の延伸度合が毎回の成形及び金型内の位置で異なることから、得られる中空体の肉厚は厳密な意味で不揃いであって全体的に同じ肉厚とはならない。このため、他部材との接合を予定されている管体を製造しなければならない場合、接合のために設けられる管端部には確定された肉厚と確定されたフランジ当接面又は溶接用端面を用意する必要がある。これは特に自動車燃料タンクの燃料注入管を製造する場合に特に重要である。即ち、プラスチック製押出ブロー成形品の燃料注入管は、やはり押出ブロー成形によって製造されるプラスチック製燃料タンクの注入口部分で燃料タンクと溶接される。溶接部は、特に燃料タンク構体の組立時に様々な力の作用に曝される部位であり、従って溶接部に或る一定値以上の荷重耐力をもたせることは必須であり、とりわけタンク構体全体の気密性を保持する理由からもそうである。
【0003】
公知の燃料注入管は、いわゆる三次元形状(複数の平面内で空間的に湾曲)の多層構造に構成されていることが多い。通常、この燃料注入管は一方でプラスチック製燃料タンクに溶接され、他方で別の接合対象部材、例えば導電性カラー等に溶接される。その場合、燃料注入管の構成としては、両管端部、又は幾つかに分岐した管の場合は複数の管端部がそれぞれ相応の接合形状に適合された構成とすることが望ましい。
【0004】
公知の燃料注入管は、これまで片方の管端部だけが予め校正された寸法に成形された管として製造されてきている。従来、校正された寸法に成形されている管端部の反対側の管端部は、いわゆる「切り捨て頭部」としてブロー成形されている。この頭部はブロー成形品の端部に設けられたドーム状頂部であり、ブロー成形品の仕上げ処理後に再加工され、例えば抜き取り又は切断されて除去される。従来、この再加工側の管端部は燃料タンクと溶接されるべき端部であり、そこに溶接に適した端面を形成するためには、そのための特別なポンチを用い、ブロー成形金型の型締め後にパリソンの再加工されるべき密閉端部に対して外部から据え込みを行っており、この据込みによって形成される分離面の領域でパリソンの切り捨て頭部を再加工ステップにおいて切断していた。
【0005】
このようにして環状接合面又は環状フランジを形成すると管端の端口部で材料の畳込みが生じ、多層管の場合には管端部における共押出成形品の各層位置が目標位置からかけ離れたものとなった。
【0006】
このことが特に問題となるのは、共押出成形品が例えばPE(ポリエチレン)と溶接不可能なEVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)からなる炭化水素遮断用バリヤ層を含む場合である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、端口部の溶接性並びにタンク構体を構成した場合の溶接部の荷重耐力を改善することのできる冒頭に指摘したタイプのプラスチック製押出ブロー成形注入管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上述の課題は、冒頭に指摘したタイプのプラスチック製押出ブロー成形注入管において、注入管の互いに異なる管端部に属する少なくとも2つの端口部を共に予め校正された肉厚と内径にブロー成形しておくことによって解決される。換言すれば、例えば単純な2つの管端部を有する注入管ではブロー成形された両管端部の端口部が既にそれぞれ最終確定寸法に校正された肉厚及び内径を有し、各端口部が余分な再加工無しに接続対象部材とのフランジ接合又は接続対象部材との溶接に適合されている。本発明の意味において、この場合の接続対象部材とは、例えば自動車の燃料タンクのプラスチック外板であると理解することができ、或いは自動車の燃料注入口の例えば導電性プラスチックカラーであると理解することもできる。
【0009】
また、本発明で言う注入管は3つ以上の端口部を有する複雑な分岐管であってもよく、これは自動車用の空気ダクト、冷却水管路、或いは燃料注入管等においてしばしば該当する。
【0010】
これまで、押出ブロー成形注入管の2つ以上の管端部に対して各端口部の肉厚及び内径をブロー成形の間に予め校正された最終確定寸法に成形することは、特にいわゆる三次元形状の成形品、すなわち少なくとも2つの平面内で共に湾曲した注入管では知られていない。本発明に係る注入管は、例えば2つ以上の平面内で共に湾曲した複雑な三次元形状の成形品として構成することができる。これは、望ましくは継目無し管として成形されたバリの無い注入管である。
【0011】
注入管の横断面で共押出パリソンの内壁層が少なくとも端口部の溶接用端面を形成していると特に有利である。このようにすることにより、パリソンの多層構造の構成に関連して注入管の内壁層を取付部材もしくは接続対象部材との溶接に適合するプラスチック材で構成しておけば、注入管は特に良好な溶接性をもつことになる。例えば、プラスチック製燃料タンクの外板がポリエチレンからなることはしばしばであり、その場合、注入管の内壁層を同様のポリエチレンで構成しておくことは溶接性に関して特に有意義である。
【0012】
本発明に係る押出ブロー成形注入管の特に有利な一実施形態においては、注入管が炭化水素に対するバリヤ層を含み、このバリヤ層が炭化水素に対して難透過性又は不透過性のプラスチックからなっている。
【0013】
バリヤ層はEVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)で構成することができる。
【0014】
このバリヤ層はポリエチレン層中に完全に埋封されていることが好ましい。
【0015】
注入管は5層又は6層の多層共押出ブロー成形品として構成することができ、そのうちの少なくとも1層は周知の如く再生プラスチックからなる層としてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好適な一実施形態を図面と共に説明すれば以下の通りである。
【0017】
本実施形態による注入管1は6層共押出管として構成されており、押出ブロー成形によって得られたものである。この場合、特に注意したことは注入管1を継目無しパイプ、すなわちバリの無い成形品としたことである。複数の方向へ空間的に湾曲し、すなわち複数の平面内で共に空間的に湾曲した中空成形管を製造するためのバリや屑の少ない共押出ブロー成形法は良く知られており、それ自体は本発明の対象ではない。注入管1の積層構造は順に内から外へ純ポリエチレン層からなる内壁層2、プライマー層3、EVOHからなるバリヤ層4、別のプライマー層3、再生品プラスチック層からなる中間層5、そして着色されたポリエチレン層からなる外壁層6からなる。
【0018】
図1に判るように、注入管1は2つの端口部7を有し、各端口部はそれぞれテーパー状の拡径されている。両端口部7はブロー成形の間に予め校正された最終確定寸法の肉厚と内径とを有している。
【0019】
図2に詳細に示すように、注入管1の一方の端口部7における環状の端面8はほぼ全面が充分な厚みの純ポリエチレン製の内壁層2によって形成されている。更に、両端口部7において肉厚と内径が予め校正された最終確定寸法に成形された注入管1は、両端口部においてそれぞれ全周に亘り一定の肉厚を有しており、特にもう一方の端面8は接続対象となる別のポリエチレン製部材との溶接に最適な相溶融着特性を有している。図2に示した注入管1の両端口部7における共押出ブロー成形品の積層構造は、注入管1のブロー成形時に注入管の各端部に確定外径寸法の校正用マンドレルを挿入して成形することによって得られたものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態による注入管の縦断面図である。
【図2】図1に示す注入管の端口部の積層構造を示す部分切欠拡大断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1:注入管
2:内壁層
3:プライマー層
4:EVOHバリヤ層
5:中間層
6:外壁層
7:端口部
8:端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車燃料タンク向けの多層共押出成形品からなるプラスチック製押出ブロー成形注入管(1)であって、各管端部にそれぞれ端口部(7)を有し、各端口部にはフランジ及び/又は接合対象部材との溶接用の端面(8)が設けられているものにおいて、互いに異なる管端部に位置する少なくとも2つの端口部(7)が共に予め校正された肉厚と内径を有することを特徴とする押出ブロー成形注入管。
【請求項2】
注入管が少なくとも2つの平面内において共に湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の押出ブロー成形注入管。
【請求項3】
注入管が継目無し(バリ無し)に成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の押出ブロー成形注入管。
【請求項4】
注入管(1)の横断面で共押出パリソンの内壁層(2)が少なくとも端口部(7)の溶接用端面(8)を形成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の押出ブロー成形注入管。
【請求項5】
注入管が炭化水素に対するバリヤ層(4)を含み、バリヤ層が炭化水素に対して難透過性又は不透過性のプラスチックからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の押出ブロー成形注入管。
【請求項6】
バリヤ層がEVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)からなることを特徴とする請求項5に記載の押出ブロー成形注入管。
【請求項7】
バリヤ層がポリエチレン層中に完全に埋封されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の押出ブロー成形注入管。
【請求項8】
注入管が5層又は6層の多層共押出ブロー成形品からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の押出ブロー成形注入管。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−527127(P2006−527127A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515664(P2006−515664)
【出願日】平成16年5月25日(2004.5.25)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001082
【国際公開番号】WO2004/110801
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(598001467)カウテックス テクストロン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (22)
【Fターム(参考)】