説明

プラスチック選別装置およびプラスチック選別方法

【課題】シュレッダーダストからゴムやホットメルトや微小な磁性体などの異物を除去し、高純度な混合プラスチックを得ることができるようにすることを目的とする。
【解決手段】弾性選別部120は、落下するシュレッダーダスト101を傾斜したベルトを用いて弾くことにより、ゴム103を遠くまで飛ばし、プラスチック片102とホットメルト104と磁性体105とを手前に落とす。圧接選別部130は、金網メッシュを巻いた一対のローラーを用いてプラスチック片102とホットメルト104と磁性体105とをローラー間に挟む。ローラーの金網メッシュはホットメルト104を付着する。高磁力選別部140は磁性体105を磁石で除去し、プラスチック片102を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、シュレッダーダストからプラスチックを選別するプラスチック選別装置およびプラスチック選別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多量に排出される廃棄物の中でもプラスチック系の廃棄物は増加の一途を辿っており、その対策に苦慮する現状にある。
【0003】
例えば、廃棄量が多いOA機器や家電製品や自動車等には、様々な種類のプラスチックが使用されている。これらのプラスチックは、一体破砕前の解体処理では十分に分離できず、一体破砕後に金属類を回収した残りとして一般的に「シュレッダーダスト」と呼ばれる。
このシュレッダーダストは、再利用する手立てが少ないために焼却又は埋め立てられており、循環型社会を形成するための大きな障害となっている。
【0004】
また、複数種類のプラスチックを含んだものを「混合プラスチック」と呼ぶ。シュレッダーダストは混合プラスチックの一種である。
【0005】
混合プラスチックは、金属選別機や風力選別機等によって磁性金属や非磁性金属やダスト(軽質分ともいう)を除去され、さらに、湿式選別機等によってプラスチックの種類毎に選別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−159048号公報
【特許文献2】特開2006−159051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
使用済の家電製品やOA機器や自動車等から出るシュレッダーダストには、一般的に「ゴム」と呼ばれる弾性体が含有されているものがある。
【0008】
ゴムとは、伸縮性に優れた高分子材料であり、ゴムノキの樹液によって作られる天然ゴムと、人工的に合成される合成ゴムとが存在する。
ゴムは、一般的に「弾性体(elastomer)」と呼ばれ、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂等の汎用プラスチックなどに比べて高反発弾性を持つことが知られている。
【0009】
ゴムの摩擦係数は、汎用プラスチックに比べて高い値を示す。
【0010】
天然ゴムやブタジエンゴムやシリコンゴムの比重は一般に「0.9〜0.98」であり、ポリプレン樹脂と値が近い。このため、比重選別では、ポリプロピレン樹脂とゴムとを選別することができず、ポリプロピレン樹脂にゴムが混入することを避けられない。
【0011】
さらに、使用済の家電製品やOA機器や自動車等から出るシュレッダーダストには、一般的に「ホットメルト」と呼ばれる粘着性を持った物質が含有されているものが多い。
ホットメルトは、冷蔵庫やエアコンなどの家電製品に幅広く使用されている。
【0012】
混合プラスチックの選別回収は、比重選別によって行われることが多い。
このため、見かけの比重が被選別物資と近似している場合、選別して回収した物質にゴム、ホットメルトが含有される場合がある。
回収したプラスチックをペレット製造装置によりペレット化する場合、ゴム、ホットメルトはスクリーンメッシュにより除去されるが、それらの含有量が多いとスクリーンメッシュが閉塞し、スクリーンメッシュの交換頻度が高くなり、ペレット製造装置の生産性を阻害してしまう。
【0013】
特許文献1及び2は、シュレッダーダストからゴムを除去する技術を開示している。
しかし、シュレッダーダストには、ゴム以外にも、ホットメルトや微小な磁性体が含まれる。
そのため、高純度なプラスチックを回収するには、シュレッダーダストからゴムの他にホットメルトや微小な磁性体を除去する必要がある。
【0014】
本発明は、例えば、シュレッダーダストからゴムやホットメルトや微小な磁性体などの異物を除去し、高純度な混合プラスチックを得ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のプラスチック選別装置は、
複数のプラスチック片と、粘着性を有する複数の粘着片と、磁性を有する複数の磁性片とを含んだ混合物をシュレッダーダストとして供給するシュレッダーダスト供給部と、
前記シュレッダーダスト供給部から供給されるシュレッダーダストを挟む一対の対向部として少なくとも一方に磁性を有するメッシュ状のメッシュ材を設けた一対の対向部を有し、前記シュレッダーダストを前記一対の対向部で挟むことによって前記シュレッダーダストに含まれる少なくとも一部の粘着片を前記メッシュ材に付着させ、前記メッシュ材に付着しなかった複数の粘着片に対して前記メッシュ材によって磁性を与える粘着片除去部と、
磁力を有する磁力部を有し、前記粘着片除去部に付着した粘着片を除いたシュレッダーダストを対象としてシュレッダーダストに含まれる複数の磁性片と磁性を有する複数の粘着片とを前記磁力部に付着させる磁性片除去部と、
前記磁性片除去部に付着しない複数のプラスチック片を回収するプラスチック片回収部とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば、シュレッダーダストからゴムやホットメルトや微小な磁性体などの異物を除去し、高純度な混合プラスチックを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1における混合プラスチック選別回収装置100の構成図。
【図2】実施の形態1における弾性選別部120の構成図。
【図3】実施の形態1における圧接選別部130の構成図。
【図4】実施の形態1における分散ローラー133の平面図(1)および側面図(2)。
【図5】実施の形態1におけるメッシュローラー(131A,131B)の平面図(1)および側面図(2)。
【図6】実施の形態1における高磁力選別部140の構成図。
【図7】実施の形態2における混合プラスチック選別回収装置100の構成図。
【図8】実施の形態2における硬度差選別部150の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
シュレッダーダストからゴムやホットメルトや磁性体などの異物を除去してプラスチックを回収する形態について説明する。
【0019】
図1は、実施の形態1における混合プラスチック選別回収装置100の構成図である。
実施の形態1における混合プラスチック選別回収装置100について、図1に基づいて説明する。
【0020】
混合プラスチック選別回収装置100(プラスチック選別装置の一例)は、シュレッダーダスト101からプラスチック片102を選別して回収する。
【0021】
シュレッダーダスト101は、種類が異なる複数のプラスチック片102(混合プラスチック)と、ゴムのように弾性(および軟性)を有する破片(以下、ゴム103)と、ホットメルトのように粘着性(および弾性、軟性)を有する破片(以下、ホットメルト104)と、鉄片や鉄粉のように磁性を有する破片(以下、磁性体105)とを含んでいる。
プラスチック片102は、ゴム103やホットメルト104に比べて弾性が弱く、ホットメルト104に比べて粘着性が弱く、磁性体105に比べて磁性が弱い。
プラスチック片102を「白丸」で図示し、ゴム103を「斜線で網掛けした丸」で図示し、ホットメルト104を「格子で網掛けした丸」で図示し、磁性体105を「黒丸」で図示する。
【0022】
混合プラスチック選別回収装置100(プラスチック選別装置の一例)は、シュレッダーダスト供給部110と、弾性選別部120と、圧接選別部130と、高磁力選別部140とを備える。
【0023】
シュレッダーダスト供給部110(シュレッダーダスト供給部の一例)は、シュレッダーダスト101を弾性選別部120へ供給する。
弾性選別部120(弾性片除去部の一例)は、供給されたシュレッダーダスト101からゴム103(弾性片、弾性体の一例)を除去する。
圧接選別部130(粘着片除去部の一例)は、ゴム103を除去したシュレッダーダスト101からホットメルト104(粘着片、粘着体の一例)を除去する。
高磁力選別部140(磁性片除去部、プラスチック片回収部の一例)は、ゴム103とホットメルト104とを除去したシュレッダーダスト101から磁性体105(磁性片の一例)除去し、残ったプラスチック片102を回収する。
【0024】
シュレッダーダスト供給部110は投入ホッパー111を備える。
投入ホッパー111は、シュレッダーダスト101を貯蔵し、貯蔵したシュレッダーダスト101を底部から弾性選別部120へ落とす。投入ホッパー111にはシュレッダーダスト101が随時に補給される。
また、シュレッダーダスト供給部110は投入ホッパー111の底蓋を開閉する「ホッパー制御装置」(図示省略)を備える。
【0025】
図2は、実施の形態1における弾性選別部120の構成図である。
実施の形態1における弾性選別部120について、図2に基づいて説明する。
【0026】
弾性選別部120は、ベルト回転装置121(傾斜部の一例)と、仕切り板122(仕切り部)と、ゴム回収箱123とを備える。
ベルト回転装置121は、ベルトコンベアのように、輪状で幅広のベルト121aと、ベルト121aの輪内の両端に配置された2つのローラー121bとを有する。また、ベルト回転装置121は、ベルト121aが傾斜面を構成するように設置する。
仕切り板122は、ベルト回転装置121から所定の距離だけ離れた位置に配置し、ベルト回転装置121から見て手前側と奥側とに空間を仕切るために使用する。
ゴム回収箱123は、仕切り板122の奥側に配置され、シュレッダーダスト101に含まれるゴム103を回収する。
【0027】
ベルト回転装置121は、両端のローラー121bを回転させることにより、輪状の上側に位置するベルト121aが斜め上方に移動するようにベルト121aを回転させる。
そして、ベルト回転装置121は、投入ホッパー111から落下したシュレッダーダスト101を傾斜したベルト121aで弾く。
ベルト121aで弾かれたシュレッダーダスト101の飛距離はシュレッダーダスト101の弾性の強さによって異なる。
このため、弾性が強いゴム103は、仕切り板122の奥側まで弾かれてゴム回収箱123に落下する。但し、十分に弾かれなかったゴム103は、仕切り板122の手前側に落下する。
また、弾性が弱いプラスチック片102やホットメルト104や磁性体105は、仕切り板122の手前側に落下する。
【0028】
以下、仕切り板122の手前に落下した混合物(シュレッダーダスト101の一部)を「弾性選別材料」という。
弾性選別材料は、プラスチック片102、ホットメルト104、磁性体105および一部のゴム103を含む。
【0029】
弾性選別材料は、さらに圧接選別部130で選別される。
【0030】
図3は、実施の形態1における圧接選別部130の構成図である。
実施の形態1における圧接選別部130について、図3に基づいて説明する。
【0031】
圧接選別部130は、弾性選別部120の仕切り板122の手前側の下方に設ける。
【0032】
圧接選別部130は、分散ローラー133と、一対のメッシュローラー(131A,131B)(一対の対向部の一例)とを備える。
圧接選別部130は、2つのスクレイパー(132A,132B)と、2つの仕切り板134と、2つのホットメルト回収箱135とを備える。
以下、一対のメッシュローラーのうち一方を「第一のメッシュローラー131A」と呼び、他方を「第二のメッシュローラー131B」と呼ぶ。
また、2つのスクレイパーのうち一方を「第一のスクレイパー132A」と呼び、他方を「第二のスクレイパー132B」と呼ぶ。
【0033】
圧接選別部130は、この他に、第一のメッシュローラー131Aと第二のメッシュローラー131Bとを回転させる「ローラー制御装置」(図示省略)を備える。
【0034】
分散ローラー133は、弾性選別部120の仕切り板122の手前側に落下した弾性選別材料を分散させてメッシュローラー(131A,131B)に落とす。
【0035】
図4は、実施の形態1における分散ローラー133の平面図(1)および側面図(2)である。
実施の形態1における分散ローラー133について、図4に基づいて説明する。
【0036】
分散ローラー133は、長い円柱状のローラー133aに案内凸部133bを設けたものである。
案内凸部133bは、長手方向の中心部(図中の一点鎖線の部分)を境にして左右対称にらせん状の凸部を有する。
例えば、右側部分のらせん状の凸部は左上から右下への向きで旋回し、左側部分のらせん状の凸部は右上から左下への向きで旋回する。
【0037】
分散ローラー133の長さはメッシュローラー(131A,131B)と同程度の長さであることが好ましい。また、分散ローラー133の直径はメッシュローラーの直径より小さい方が好ましい。
【0038】
分散ローラー133は、特定の方向(図中の手前方向)に回転し、投入コンベア138から落下した弾性選別材料を案内凸部133bによって長手方向に分散し、分散した弾性選別材料をメッシュローラー(121A,121B)に向けて落とす。
弾性選別材料は、分散ローラー133の案内凸部133bに沿って分散ローラー133の端部に向けて移動し、メッシュローラーに向けて落下する。
【0039】
図3に戻り、圧接選別部130の説明を続ける。
【0040】
第一のメッシュローラー131Aおよび第二のメッシュローラー131Bは、分散ローラー133の下方に設置する。
【0041】
図5は、実施の形態1におけるメッシュローラー(131A,131B)の平面図(1)および側面図(2)である。
実施の形態1におけるメッシュローラーについて、図5に基づいて説明する。
【0042】
メッシュローラーは、長い円柱状のローラー131aに網目状の凹凸を有する部材を巻いたもの、つまり、軸となるローラー131aの周囲にメッシュ状の部材(金網、メッシュベルト、チェーンを帯状に組み合わせたものなど)を設けたものである。ローラー131aの表面をメッシュ加工しても構わない。メッシュ状の部材は磁性を有するもので構成する。例えば、メッシュ状の部材は金属(鉄など)で構成される。
以下、ローラー131aに巻いたメッシュ状の部材を「金属メッシュ131b(メッシュ材の一例)」と呼ぶ。
【0043】
図3に戻り、圧接選別部130の説明を続ける。
【0044】
第一のメッシュローラー131Aと第二のメッシュローラー131Bとは、分散ローラー133から落下したシュレッダーダスト101を挟める程度の隙間を空けて近接し、挟んだシュレッダーダスト101を隙間から押し出すように内回りに回転する。
例えば、左側に位置する第一のメッシュローラー121Aは時計回りに回転し、右側に位置する第二のメッシュローラー121Bは反時計回りに回転する。
【0045】
シュレッダーダスト101に含まれるホットメルト104は、第一のメッシュローラー131Aと第二のメッシュローラー131Bとの隙間を通過する際に挟まれて金属メッシュ131bに付着する。ホットメルト104は粘着性を有するためである。
【0046】
弾性選別部120で除去しきれなかったゴム103がシュレッダーダスト101に残っている場合、ゴム103は、金属メッシュ131bの網目に嵌まって金属メッシュ131bに付着する。ゴム103は、弾性を有するためである。
【0047】
また、ホットメルト104やゴム103を金属メッシュ131bに付着させることができなかった場合、磁性を有する金属メッシュ131bはホットメルト104やゴム103に磁性を与える。つまり、ホットメルト104やゴム103は磁化する。
例えば、ホットメルト104やゴム103がメッシュローラー間に挟まれて金属メッシュ131bに押し当てられた際、金属メッシュ131bからホットメルト104やゴム103に金属の粉(砂鉄、鉄粉など)が付着し、または練り込まれる。
また、シュレッダーダスト101を生成する際に刃物を用いた廃棄物の破砕が行われるため、粘着性または弾性を有するホットメルト104やゴム103には刃物の砂鉄や鉄粉が付着または練り込まれ易い。
【0048】
シュレッダーダスト101に含まれるプラスチック片102および磁性体105は、第一のメッシュローラー121Aと第二のメッシュローラー121Bとの隙間を通過して落下する。プラスチック片102や磁性体105は表面が滑らかで弾性および粘着性が少なく、金属メッシュ131bに付着しないからである。
プラスチック片102は、表面が滑らかで弾性および粘着性が少ないため、メッシュローラー間を通過する際に金属メッシュ131bから金属の粉が付着しづらく、また練り込まれない。このため、プラスチック片102は磁化しない。
【0049】
金属メッシュ131bに付着しなかったホットメルト104やゴム103は、メッシュローラー間を通過する際に磁化し、プラスチック片102や磁性体105と共に落下する。
【0050】
第一のスクレイパー132Aは、第一のメッシュローラー131Aに先端が接触する位置に設置し、第一のメッシュローラー131Aの金属メッシュ131bに付着したホットメルト104(およびゴム103)を剥がし落とす。
例えば、第一のスクレイパー132Aは、デルリンやジュラコンなどの高分子材料をスキージー形状(ヘラ状)に加工したものであり、その強度や弾力性(バネ性)でホットメルト104(およびゴム103)を剥がし落とす。また、第一のスクレイパー132Aの先端にハケを取り付け、ハケでホットメルト104(およびゴム103)を剥がし落としてもよい。
【0051】
第二のスクレイパー132Bは、第二のメッシュローラー131Bに先端が接触する位置に設置し、第二のメッシュローラー131Bの金属メッシュ131bに付着したホットメルト104(およびゴム103)を剥がし落とす。
【0052】
仕切り板134は、メッシュローラー(131A,131B)の下方に設けられ、スクレイパー(132A,132B)によって金属メッシュ131bから剥がし落とされたホットメルト104(および磁性体105)をホットメルト回収箱135に回収する。
ホットメルト104(および磁性体105)は、仕切り板134に沿って転がり、ホットメルト回収箱135に落下する。
ホットメルト回収箱135は、仕切り板134の先端部の下方に設けられ、仕切り板134を転がり落ちたホットメルト104(および磁性体105)を集積する。
【0053】
以下、第一のメッシュローラー131Aと第二のメッシュローラー131Bとの隙間から落下した混合物(シュレッダーダスト101の一部)を「圧接選別材料」という。
圧接選別材料は、プラスチック片102と磁性体105とを含む。さらに、圧接選別材料は、磁化したホットメルト104およびゴム103を含む。
【0054】
圧接選別材料は、さらに高磁力選別部140で選別される。
【0055】
図6は、実施の形態1における高磁力選別部140の構成図である。
実施の形態1における高磁力選別部140について、図6に基づいて説明する。
【0056】
高磁力選別部140は、圧接選別部130のメッシュローラー間の隙間の下方に設ける。
【0057】
高磁力選別部140は、筐体141と、回転ドラム142と、デバイダー145とを備える。
高磁力選別部140は、この他に、回転ドラム142のドラムシェル143を回転させる「ドラム制御装置」(図示省略)を備える。
【0058】
回転ドラム142は、長い円柱状を成し、シート状のドラムシェル143を円周面に有する。また、回転ドラム142は一部に永久磁石144(または電磁石)を有する。
例えば、回転ドラム142の円状断面の右半分に永久磁石144を磁力部として設ける。回転ドラム142の円状断面の左半分は磁力を有さない非磁力部である。ドラムシェル143は回転ドラム142の円周面に沿って磁力部(永久磁石144)側から非磁力部側へ時計回りに回転する。
【0059】
回転ドラム142は、筐体141の内部中央に配置され、筐体141の内部をプラスチック回収室141a(プラスチック片回収部の一例)と磁性体回収室141bとに分割する。
プラスチック回収室141aは永久磁石144が配置される部分であり、磁性体回収室141bは永久磁石144が配置されない部分である。
つまり、ドラムシェル143の回転の上流側がプラスチック回収室141aであり、ドラムシェル143の回転の下流側が磁性体回収室141bである。
【0060】
デバイダー145は、プラスチック回収室141aと磁性体回収室141bとの境界部分に設ける。
但し、デバイダー145は、先端部がプラスチック回収室141a側に若干ずれて配置されるように筐体141に取り付ける。
【0061】
圧接選別部130から落下した圧接選別材料のうち、プラスチック片102は、磁化していないためドラムシェル143に付かず、重力および遠心力によってドラムシェル143から離脱し、プラスチック回収室141aに落下する。
したがって、シュレッダーダスト101に含まれるプラスチック片102はプラスチック回収室141aに回収される。
【0062】
一方、磁性体105、磁化したホットメルト104および磁化したゴム103は、プラスチック回収室141aでは永久磁石144の磁力によってドラムシェル143に付いてドラムシェル143と共に磁性体回収室141bに移動する。
そして、磁性体105、ホットメルト104およびゴム103は、重力および遠心力によってドラムシェル143から離脱し、磁性体回収室141bに落下する。
【0063】
以上のように、混合プラスチック選別回収装置100(図1参照)は、弾性選別部120によってシュレッダーダスト101からゴム103を除去することができる。
さらに、混合プラスチック選別回収装置100は、圧接選別部130によってホットメルト104と、弾性選別部120で除去できなかったゴム103とを除去することができる。
そして、混合プラスチック選別回収装置100は、高磁力選別部140によって磁性体105と、圧接選別部130で除去できなかったホットメルト104およびゴム103を除去することができる。
したがって、混合プラスチック選別回収装置100は、シュレッダーダスト101からプラスチック片102を高い純度で選別して回収することができる。
【0064】
実施の形態1において、弾性選別部120と圧接選別部130と高磁力選別部140とを上下に配置せず、別個に配置しても構わない。
例えば、弾性選別部120(図2参照)の仕切り板122の手前側に弾性選別材料を回収する回収箱を設け、圧接選別部130(図3参照)の分散ローラー133の上方にホッパーを設ける。そして、弾性選別部120の回収箱に回収した弾性選別材料を圧接選別部130のホッパーに供給し、ホッパーから分散ローラー133に弾性選別材料を供給する。
また、圧接選別部130のメッシュローラー間の下方に圧接選別材料を回収する回収箱を設け、高磁力選別部140(図6参照)の上方にホッパーを設ける。そして、圧接選別部130の回収箱に回収した圧接選別材料を高磁力選別部140のホッパーに供給し、ホッパーから高磁力選別部140に圧接選別材料を供給する。
【0065】
弾性選別部120と圧接選別部130と高磁力選別部140との並び順(または実行順)を入れ替えても構わない。
例えば、ゴム103とホットメルト104と磁性体105とのうち大きいものから、または量が多いものから順に除去するように弾性選別部120と圧接選別部130と高磁力選別部140との並び順(または実行順)を入れ替える。
【0066】
実施の形態1において、例えば、以下のような混合プラスチック選別回収装置100について説明した。
【0067】
混合プラスチック選別回収装置100は、弾性選別工程と、圧接選別工程と、高磁力選別工程とを組み合わせたことを特徴とする。
弾性選別工程は、混合破砕物(シュレッダーダスト101)から摩擦係数及び反発係数の違いを用いて異物(例えば、ゴム103)を除去する。
圧接選別工程は、表面が微細な金属メッシュである物体(メッシュローラー)に混合破砕物を圧接させることで異物(例えば、ホットメルト104)を除去する。
高磁力選別工程は、高磁力を用いて磁性体(磁化したホットメルト104やゴム103を含む)を除去する。
【0068】
これにより、選別後の混合プラスチックに異物が混入することを防ぎ、選別された混合プラスチックをペレット化する製造工程の安定性を確保することができる。
【0069】
実施の形態2.
圧接選別とは異なる方法でホットメルトを除去する形態について説明する。
以下、実施の形態1と異なる事項について主に説明する。説明を省略する事項は実施の形態1と同様である。
【0070】
図7は、実施の形態2における混合プラスチック選別回収装置100の構成図である。
実施の形態2における混合プラスチック選別回収装置100の構成について、図7に基づいて説明する。
【0071】
混合プラスチック選別回収装置100(プラスチック選別装置の一例)は、実施の形態1で説明した圧接選別部130(図1参照)に代えて、硬度差選別部150を備える。
【0072】
硬度差選別部150(粘着片除去部の一例)は、弾性選別部120(図2参照)の仕切り板122の手前側の下方に配置する。
硬度差選別部150は、弾性選別部120(図2参照)の仕切り板122の手前側に落下した弾性選別材料からホットメルト104(軟性片、軟性体の一例)を除去する。
【0073】
図8は、実施の形態2における硬度差選別部150の構成図である。
実施の形態2における硬度差選別部150の構成について、図8に基づいて説明する。
【0074】
硬度差選別部150は、ベルトコンベア151と針状棒ローラー152とを備える。また、硬度差選別部150は、ベルトコンベア151を駆動する「コンベア制御装置」や針状棒ローラー152を回転させる「ローラー制御装置」を備える(図示省略)。
【0075】
ベルトコンベア151は、弾性選別材料を一端側から他端側へ運ぶ。
針状棒ローラー152は、ベルトコンベア151の進行方向に合わせた向きで回転するローラー152aと、針状棒ローラー152aに取り付けられた多数の針状棒152bとを有する。
針状棒152bは、磁性を有する針または針状の棒である(針部材の一例)。例えば、針状棒152bは金属(鉄など)で構成される。
【0076】
例えば、ベルトコンベア151は弾性選別材料を左側から右側へ運び、針状棒ローラー152は反時計回りに回転する。
【0077】
針状棒ローラー152の針状棒152bは、弾性選別材料に含まれるホットメルト104とゴム103とを串刺しにする。
しかし、針状棒152bは、プラスチック片102と磁性体105とには刺さらない。プラスチック片102や磁性体105は、ホットメルト104やゴム103に比べて硬いためである。
これにより、弾性選別材料に含まれるホットメルト104とゴム103とを除去することができる。
【0078】
また、針状棒152bに刺さったホットメルト104やゴム103が針状棒152bから外れ落ちてしまった場合、磁性を有する針状棒152bはホットメルト104やゴム103に磁性を与える。つまり、ホットメルト104やゴム103は磁化する。
例えば、ホットメルト104やゴム103が針状棒152bに刺さった際、針状棒152bからホットメルト104やゴム103に金属の粉(砂鉄、鉄粉など)が付着し、または練り込まれる。
【0079】
ベルトコンベア151は、針状棒152bに刺さらなかったプラスチック片102と磁性体105とを高磁力選別部140へ運ぶ。
また、ベルトコンベア151は、針状棒152bから外れ落ちてしまったホットメルト104とゴム103とを高磁力選別部140へ運ぶ。
【0080】
以下、高磁力選別部140に運ばれた混合物(シュレッダーダスト101の一部)を「硬度差選別材料」という。
硬度差選別材料は、プラスチック片102と磁性体105とを含む。さらに、硬度差選別材料は、磁化したホットメルト104およびゴム103を含む。
【0081】
高磁力選別部140(図6参照)は、硬度差選別材料から磁性体105を磁力によって除去する。さらに、高磁力選別部140は、磁化したホットメルト104とゴム103とを磁力によって硬度差選別材料から除去する。
これにより、プラスチック片102を高い純度で回収することができる。
【0082】
実施の形態2において、弾性選別部120と硬度差選別部150と高磁力選別部140とを上下に配置せず、別個に配置しても構わない(実施の形態1と同様)。
また、弾性選別部120と硬度差選別部150と高磁力選別部140との並び順(または実行順)を入れ替えても構わない(実施の形態1と同様)。
【0083】
実施の形態2において、例えば、以下のような混合プラスチック選別回収装置100について説明した。
【0084】
混合プラスチック選別回収装置100は、弾性選別工程と、硬度差選別工程と、高磁力選別工程とを組み合わせたことを特徴とする。
弾性選別工程は、混合破砕物(シュレッダーダスト101)から摩擦係数及び反発係数の違いを用いて異物(例えば、ゴム103)を除去する。
硬度差選別工程は、被選別物(弾性選別材料)の硬度差(圧縮強度、あるいは弾性率)を用いて異物(例えば、ホットメルト104)を除去する。
高磁力選別工程は、高磁力を用いて磁性体(磁化したホットメルト104やゴム103を含む)を除去する。
【0085】
これにより、選別後の混合プラスチックに異物が混入することを防ぎ、選別された混合プラスチックをペレット化する製造工程の安定性を確保することができる。
【符号の説明】
【0086】
100 混合プラスチック選別回収装置、101 シュレッダーダスト、102 プラスチック片、103 ゴム、104 ホットメルト、105 磁性体、110 シュレッダーダスト供給部、111 投入ホッパー、120 弾性選別部、121 ベルト回転装置、121a ベルト、121b ローラー、122 仕切り板、123 ゴム回収箱、130 圧接選別部、131A 第一のメッシュローラー、131B 第二のメッシュローラー、131a ローラー、131b 金属メッシュ、132A 第一のスクレイパー、132B 第二のスクレイパー、133 分散ローラー、133a ローラー、133b 案内凸部、134 仕切り板、135 ホットメルト回収箱、136 プラスチック回収箱、140 高磁力選別部、141 筐体、141a プラスチック回収室、141b 磁性体回収室、142 回転ドラム、143 ドラムシェル、144 永久磁石、145 デバイダー、150 硬度差選別部、151 ベルトコンベア、152 針状棒ローラー、152a ローラー、152b 針状棒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプラスチック片と、粘着性を有する複数の粘着片と、磁性を有する複数の磁性片とを含んだ混合物をシュレッダーダストとして供給するシュレッダーダスト供給部と、
前記シュレッダーダスト供給部から供給されるシュレッダーダストを挟む一対の対向部として少なくとも一方に磁性を有するメッシュ状のメッシュ材を設けた一対の対向部を有し、前記シュレッダーダストを前記一対の対向部で挟むことによって前記シュレッダーダストに含まれる少なくとも一部の粘着片を前記メッシュ材に付着させ、前記メッシュ材に付着しなかった複数の粘着片に対して前記メッシュ材によって磁性を与える粘着片除去部と、
磁力を有する磁力部を有し、前記粘着片除去部に付着した粘着片を除いたシュレッダーダストを対象としてシュレッダーダストに含まれる複数の磁性片と磁性を有する複数の粘着片とを前記磁力部に付着させる磁性片除去部と、
前記磁性片除去部に付着しない複数のプラスチック片を回収するプラスチック片回収部と
を備えることを特徴とするプラスチック選別装置。
【請求項2】
前記シュレッダーダスト供給部は、複数のプラスチック片と、複数の粘着片と、複数の磁性片と、弾性を有する複数の弾性片とを含んだ混合物を前記シュレッダーダストとして落下させ、
前記プラスチック選別装置は、さらに、
前記シュレッダーダスト供給部から落下するシュレッダーダストを弾く傾斜面を有する傾斜部と、前記傾斜部から所定の距離に配置する仕切り部とを有し、前記シュレッダーダストに含まれる複数の弾性片を前記傾斜部で弾いて前記仕切り部より奥側に落下させ、前記シュレッダーダストに含まれる複数のプラスチック片と複数の粘着片と複数の磁性片とを前記傾斜部で弾いて前記仕切り部より手前側に落下させる弾性片除去部を備え、
前記粘着片除去部は、前記弾性片除去部に対して前記仕切り部の手前側の下方に配置され、前記仕切り部の手前側に落下した前記シュレッダーダストのうち少なくとも一部の粘着片を前記メッシュ材に付着させる
ことを特徴とする請求項1記載のプラスチック選別装置。
【請求項3】
複数のプラスチック片と、軟性を有する複数の軟性片と、磁性を有する複数の磁性片とを含んだ混合物をシュレッダーダストとして供給するシュレッダーダスト供給部と、
前記シュレッダーダスト供給部から供給されるシュレッダーダストのうち複数の軟性片に刺さる針部材として磁性を有する針部材を有し、前記シュレッダーダストのうち少なくとも一部の軟性片を前記針部材に刺して除去し、前記針部材で除去されなかった軟性片に対して前記針部材によって磁性を与える軟性片除去部と、
磁力を有する磁力部を有し、前記軟性片除去部で除去した軟性片を除いたシュレッダーダストを対象としてシュレッダーダストに含まれる複数の磁性片と磁性を有する軟性片とを前記磁力部に付着させる磁性片除去部と、
前記磁性片除去部に付着しない複数のプラスチック片を回収するプラスチック片回収部と
を備えることを特徴とするプラスチック選別装置。
【請求項4】
前記シュレッダーダスト供給部は、複数のプラスチック片と、複数の軟性片と、複数の磁性片と、弾性を有する複数の弾性片とを含んだ混合物を前記シュレッダーダストとして落下させ、
前記プラスチック選別装置は、さらに、
前記シュレッダーダスト供給部から落下するシュレッダーダストを弾く傾斜面を有する傾斜部と、前記傾斜部から所定の距離に配置する仕切り部とを有し、前記シュレッダーダストに含まれる複数の弾性片を前記傾斜部で弾いて前記仕切り部より奥側に落下させ、前記シュレッダーダストに含まれる複数のプラスチック片と複数の軟性片と複数の磁性片とを前記傾斜部で弾いて前記仕切り部より手前側に落下させる弾性片除去部と、
前記軟性片除去部は、前記弾性片除去部に対して前記仕切り部の手前側の下方に配置され、前記仕切り部の手前側に落下した前記シュレッダーダストのうち少なくとも一部の軟性片を除去する
ことを特徴とする請求項3記載のプラスチック選別装置。
【請求項5】
シュレッダーダスト供給部が、複数のプラスチック片と、粘着性を有する複数の粘着片と、磁性を有する複数の磁性片とを含んだ混合物をシュレッダーダストとして供給し、
粘着片除去部が、前記シュレッダーダスト供給部から供給されるシュレッダーダストを挟む一対の対向部として少なくとも一方に磁性を有するメッシュ状のメッシュ材を設けた一対の対向部を有し、前記シュレッダーダストを前記一対の対向部で挟むことによって前記シュレッダーダストに含まれる少なくとも一部の粘着片を前記メッシュ材に付着させ、前記メッシュ材に付着しなかった複数の粘着片に対して前記メッシュ材によって磁性を与え、
磁性片除去部が、磁力を有する磁力部を有し、前記粘着片除去部に付着した粘着片を除いたシュレッダーダストを対象としてシュレッダーダストに含まれる複数の磁性片と磁性を有する複数の粘着片とを前記磁力部に付着させ、
プラスチック片回収部が、前記磁性片除去部に付着しない複数のプラスチック片を回収する
ことを特徴とするプラスチック選別方法。
【請求項6】
シュレッダーダスト供給部が、複数のプラスチック片と、軟性を有する複数の軟性片と、磁性を有する複数の磁性片とを含んだ混合物をシュレッダーダストとして供給し、
軟性片除去部が、前記シュレッダーダスト供給部から供給されるシュレッダーダストのうち複数の軟性片に刺さる針部材として磁性を有する針部材を有し、前記シュレッダーダストのうち少なくとも一部の軟性片を前記針部材で刺して除去し、前記針部材で除去されなかった軟性片に対して前記針部材によって磁性を与え、
磁性片除去部が、磁力を有する磁力部を有し、前記軟性片除去部で除去した軟性片を除いたシュレッダーダストを対象としてシュレッダーダストに含まれる複数の磁性片と磁性を有する軟性片とを前記磁力部に付着させ、
プラスチック片回収部が、前記磁性片除去部に付着しない複数のプラスチック片を回収する
ことを特徴とするプラスチック選別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−217957(P2012−217957A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87969(P2011−87969)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】