説明

プラズマディスプレイパネルおよびプラズマディスプレイ装置

【課題】低消費電力で高い発光効率を有するプラズマディスプレイパネルを実現することを目的とする。
【解決手段】前面基板上に複数の表示電極を形成するとともに前記複数の表示電極を覆うように誘電体層6を形成した前面パネルと、この前面パネルに間に放電空間13を形成して対向配置した背面パネルとを有し、前面パネルの誘電体層6は、平均粒径が100nm以下で最大粒径が400nm以下である有機材料と無機材料とからなる微粒子を含む誘電体材料により構成するとともに、膜厚が20μm以下で比誘電率εが2以上4以下となるように構成し、かつ前記放電空間にキセノンを15%以上30%以下の体積%で含む放電ガスを封入した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示デバイスとしてのプラズマディスプレイパネルおよびプラズマディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)は、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、65インチクラスのテレビなどが製品化されている。近年、PDPは従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上のハイディフィニションテレビへの適用が進んでいるとともに、環境問題に配慮して鉛成分を含まないPDPが要求されている。
【0003】
PDPは、基本的には、前面パネルと背面パネルとで構成されている。前面パネルは、フロート法による硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板と、ガラス基板の一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極とバス電極とで構成される表示電極と、表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とで構成されている。一方、背面パネルは、ガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のデータ電極と、データ電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
【0004】
そして、前面パネルと背面パネルとは、表示電極とデータ電極とが互いに交差するように対向配置されるとともに、外周部を封止することにより密閉空間を形成し、その密閉空間に、キセノン(Xe)/ネオン(Ne)や、キセノン(Xe)/ネオン(Ne)/ヘリウム(He)などの放電ガスが充填されている。
【0005】
以上のような構成のPDPでは、前面パネルの表示電極と、背面パネルのデータ電極とが交差する各領域に発光の最小単位となる放電セルが構成されることとなる。
【0006】
近年、PDPにおいては、消費電力の低減などの観点から維持放電時の放電効率の改善が求められている。PDPの駆動時における電力ロスは、幾何学的な構成が同一であるとするならば、誘電体層の比誘電率による影響を受ける。従来のPDPでは、比誘電率ε=9〜13と高い酸化鉛や酸化ビスマスを成分中に含むガラス材料をもって前面パネルの誘電体層が構成されており、電力ロスの低減のためにも、前面パネルにおける誘電体層の比誘電率をより低くすることが求められている。特に、パネルサイズの大型化やパネルの高精細化を進めてゆく上では、この要求がより一層強くなってきている。
【0007】
前面パネルにおける誘電体層の比誘電率の低減を図るために種々の提案がなされている。例えば、酸化鉛や酸化ビスマスの代りにアルカリ金属の酸化物を含むホウ酸亜鉛系ガラスを用い、比誘電率ε=6〜7の誘電体層を形成する提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。また、比誘電率ε=2.8〜3.0のシロキサン結合を有するシリコン樹脂を用い、前面パネルの誘電体層を形成するという提案もなされている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−278482号公報
【特許文献2】国際公開WO01/071761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような現状に鑑みなされたもので、前面パネルの誘電体層の比誘電率εを低減することで、低消費電力で高い発光効率を有するPDPを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のPDPは、基板上に複数の表示電極を形成するとともに前記複数の表示電極を覆うように誘電体層を形成した前面パネルと、この前面パネルに間に放電空間を形成して対向配置されかつ基板上に表示電極に交差する方向に配列して複数のデータ電極を形成するとともに放電空間を区画する隔壁および蛍光体層を形成した背面パネルとを有するプラズマディスプレイパネルであって、前面パネルの誘電体層は、平均粒径が100nm以下で最大粒径が400nm以下である有機材料と無機材料とからなる微粒子を含む誘電体材料により構成するとともに、膜厚が20μm以下で比誘電率εが2以上4以下となるように構成し、かつ放電空間にキセノンを15%以上30%以下の体積%で含む放電ガスを封入したことを特徴とする。
【0011】
また、プラズマディスプレイ装置は、基板上に複数の表示電極を形成するとともに前記複数の表示電極を覆うように誘電体層を形成した前面パネルと、この前面パネルに間に放電空間を形成して対向配置され、かつ基板上に表示電極に交差する方向に配列して複数のデータ電極を形成するとともに、放電空間を区画する隔壁および蛍光体層を形成した背面パネルとからなり、かつ複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルを有し、プラズマディスプレイパネルに対して、1フィールドを複数のサブフィールドにより構成するとともに、それぞれのサブフィールドに、発光させる放電セルを選択する書込み放電を発生させる書込み期間と、この書込み期間により選択された放電セルにおいて維持放電を発生させる維持期間とを設けて発光表示を行うプラズマディスプレイ装置であって、プラズマディスプレイパネルの前面パネルの誘電体層は、有機材料と無機材料とのハイブリッド微粒子であり、その粒径が平均で100nm以下、最大で400nm以下である誘電体材料を含み構成されるとともに、膜厚が20μm以下で比誘電率εが2以上4以下となるように構成し、かつ放電空間にキセノンを15%以上30%以下の体積%で含む放電ガスを封入したことを特徴とし基板上に複数の表示電極を形成するとともに前記複数の表示電極を覆うように誘電体層を形成した前面パネルと、この前面パネルに間に放電空間を形成して対向配置されかつ基板上に表示電極に交差する方向に配列して複数のデータ電極を形成するとともに放電空間を区画する隔壁および蛍光体層を形成した背面パネルとからなり、かつ複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルを有し、プラズマディスプレイパネルに対して、1フィールドを複数のサブフィールドにより構成するとともに、それぞれのサブフィールドに、発光させる放電セルを選択する書込み放電を発生させる書込み期間と、この書込み期間により選択された放電セルにおいて維持放電を発生させる維持期間とを設けて発光表示を行うプラズマディスプレイ装置であって、プラズマディスプレイパネルの前面パネルの誘電体層は、平均粒径が100nm以下で最大粒径が400nm以下である有機材料と無機材料とからなる微粒子を含む誘電体材料により構成するとともに、膜厚が20μm以下で比誘電率εが2以上4以下となるように構成し、かつ放電空間にキセノンを15%以上30%以下の体積%で含む放電ガスを封入したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、PDPの前面パネルの誘電体層として、平均粒径が100nm以下で最大粒径が400nm以下である有機材料と無機材料とからなる微粒子を含む誘電体材料により構成するとともに、膜厚が20μm以下で比誘電率εが2以上4以下となるように構成し、かつ放電空間にキセノンを15%以上30%以下の体積%で含む放電ガスを封入したことにより、1フィールドを複数のサブフィールドにより構成するとともに、それぞれのサブフィールドに、発光させる放電セルを選択する書込み放電を発生させる書込み期間と、この書込み期間により選択された放電セルにおいて維持放電を発生させる維持期間とを設けてPDPの発光表示動作を行う際に、無効電力を削減することができるとともに、維持放電時のために必要な電力を低減することができ、これにより低消費電力で高い発光効率を有するPDPを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図
【図2】同じくPDPの放電セル構造を示す断面図
【図3】同じくPDPの前面パネルの誘電体層の微細構造を示す模式図
【図4】同PDPの電極配列図
【図5】本発明のプラズマディスプレイ装置のブロック回路図
【図6】同装置の駆動電圧波形図
【図7】本発明のプラズマディスプレイ装置における作用効果を説明するための特性図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態におけるPDPについて図面を用いて説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図、図2は放電セル構造を示す断面図である。PDPは、対向配置された前面パネルと背面パネルとの間に多数の放電セルが形成されている。
【0016】
前面パネルは、ガラス製の前面基板1上に1対の走査電極2と維持電極3とからなる表示電極が互いに平行に複数対形成されている。この走査電極2および維持電極3は、走査電極2−維持電極3−維持電極3−走査電極2の配列で繰り返すパターンで形成されている。また、前面パネルの前面基板1上には、走査電極2および維持電極3よりなる一対の帯状の表示電極4とブラックストライプ(遮光層)5が互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。前面基板1上には、表示電極4と遮光層5とを覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層6が形成され、さらにその表面に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層7が形成されている。
【0017】
ここで、走査電極2および維持電極3は、それぞれITO、SnO2、ZnO等の導電性金属酸化物からなる透明電極上にAgからなるバス電極を形成することにより構成されている。
【0018】
背面パネルは、ガラス製の背面基板8上に、複数の互いに平行なAgを主成分とする導電性材料からなるデータ電極9を形成し、そのデータ電極9を覆うように誘電体層10を形成するとともに、さらにその上に井桁状の隔壁11を形成し、そして誘電体層10の表面と隔壁11の側面とに、赤、緑、青各色の蛍光体層12を形成することにより構成されている。
【0019】
そして、走査電極2および維持電極3とデータ電極9とが立体交差するように、前面パネルと背面パネルとが対向配置され、その外周部をガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着するとともに、封着されたPDP内部の放電空間13に、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)などの放電ガスを50kPa〜80kPaの圧力で封入することによりパネルが構成されている。ここで、走査電極2および維持電極3とデータ電極9とが対向する部分に放電セルが形成されている。なお、本発明においては、放電空間13に封入する放電ガスは、放電ガス中にキセノンの濃度が15%以上30%以下の体積%で含まれるように混合した放電ガスを用いている。
【0020】
ここで、本発明においては、前面パネルの誘電体層6は、平均粒径が100nm以下で最大粒径が400nm以下である有機材料と無機材料とからなる微粒子を含む誘電体材料により構成するとともに、膜厚が20μm以下で比誘電率εが2以上4以下となるように構成している。有機材料と無機材料とからなる微粒子の粒径は、形成する誘電体層の光透過性を決める重要な因子であり、可視光で75%以上の透過率を確保するためには、可視光の最短波長400nm以下が必要であり、さらに最短波長の4分の1に相当する100nm以下であれば、微粒子間の光散乱が抑制され、光透過率を確保できるので、さらに望ましい。
【0021】
すなわち、有機溶剤または水系溶液に、平均粒径が100nm以下、例えば粒径が20nm以上120nm以下で比誘電率εが3程度の有機材料と無機材料とからなる微粒子を分散させた誘電体材料インクを用い、表示電極4と遮光層5とを形成した後、表示電極4と遮光層5を覆うように前面基板1上にダイコート法などにより塗布し、その後乾燥および焼成を行うことにより膜厚が20μm以下で比誘電率εが2以上4以下の誘電体層6を形成している。誘電体材料インクは、粘度調整のため、後工程(乾燥および焼成工程)で分解する高分子材料を溶解してもよい。
【0022】
図3(a)は本発明による誘電体層6の膜の微細構造を模式的に示す図であり、図3(a)は、後工程で分解する高分子材料を溶解させた有機溶剤もしくは水系溶剤に粒径が20nm以上120nm以下で比誘電率εが3程度の有機材料と無機材料とからなる微粒子を分散させた誘電体材料インクを用いて誘電体層6を形成した場合の模式図である。図3(a)に示すように、有機材料と無機材料とからなる微粒子6aどうしが連結するように直接結合した微細構造となる。
【0023】
また、図3(b)、(c)は、誘電体層6を構成する有機材料と無機材料とからなる微粒子の一例を示す模式図であり、図3(b)のものは角柱形状の例、図3(c)のものは円柱形状の例である。材料自体の比誘電率は無機材料より有機材料の方が小さいため、誘電体層の比誘電率は、有機材料と無機材料との配合比率や微粒子間の空隙率により調整することができる。
【0024】
有機材料と無機材料とからなる微粒子6aは、用いられる無機材料として、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、亜鉛酸化物、ガリウム酸化物などが好ましく、ケイ素酸化物が特に望ましい。また、これら無機材料は、目的に応じ、複数の種類の酸化物を用いてもよい。有機材料と無機材料とからなる微粒子6aは、有機材料と上記無機酸化物とがハイブリッド化されていればよく、例えば、シリコーン樹脂微粒子や、微粒子どうしが連結しやすいように無機酸化物と熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、もしくは感光性樹脂とをハイブリッド化させた微粒子などが好ましい。
【0025】
図4は本発明の実施の形態におけるPDPの電極配列図である。行方向に長いn本の走査電極Y1、Y2、Y3・・・Yn(図1の2)およびn本の維持電極X1、X2、X3・・・Xn(図1の3)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極A1・・・Am(図1の9)が配列されている。そして、1対の走査電極Y1および維持電極X1と1つのデータ電極A1とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。そしてこれらの電極のそれぞれは、前面板、背面板の画像表示領域外の周辺端部に設けられた接続端子それぞれに接続されている。
【0026】
図5はこのPDPを用いたプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図である。このプラズマディスプレイ装置は、上述した構成のPDPのパネル14、画像信号処理回路15、データ電極駆動回路16、走査電極駆動回路17、維持電極駆動回路18、タイミング発生回路19および電源回路(図示せず)を備えている。
【0027】
画像信号処理回路15は、画像信号sigをサブフィールド毎の画像データに変換する。データ電極駆動回路16はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する信号に変換し、各データ電極D1〜Dmを駆動する。タイミング発生回路19は水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vをもとにして各種のタイミング信号を発生し、各駆動回路ブロックに供給している。走査電極駆動回路17はタイミング信号にもとづいて走査電極SC1〜SCnに駆動電圧波形を供給し、維持電極駆動回路18はタイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜SUnに駆動電圧波形を供給する。
【0028】
次に、PDPを駆動するための駆動電圧波形とその動作について図6を用いて説明する。図6はPDPの各電極に印加する駆動電圧波形を示す図である。
【0029】
本実施の形態によるプラズマディスプレイ装置においては、1フィールドを複数のサブフィールドにより構成し、それぞれのサブフィールドは、放電セルにおいて初期化放電を発生させる初期化期間と、この初期化期間のあと、発光させる放電セルを選択する書込み放電を発生させる書込み期間と、この書込み期間により選択された放電セルにおいて維持放電を発生させる維持期間とを有している。
【0030】
第1サブフィールドの初期化期間では、データ電極D1〜Dmおよび維持電極SU1〜SUnを0(V)に保持し、走査電極SC1〜SCnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi1(V)から放電開始電圧を超える電圧Vi2(V)に向かって緩やかに上昇するランプ電圧を印加する。すると、全ての放電セルにおいて1回目の微弱な初期化放電を起こし、走査電極SC1〜SCn上に負の壁電圧が蓄えられるとともに維持電極SU1〜SUn上およびデータ電極D1〜Dm上に正の壁電圧が蓄えられる。ここで、電極上の壁電圧とは電極を覆う誘電体層や蛍光体層上等に蓄積した壁電荷により生じる電圧を指す。
【0031】
その後、維持電極SU1〜SUnを正の電圧Ve1、Ve2(V)に保ち、走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3(V)から電圧Vi4(V)に向かって緩やかに下降するランプ電圧を印加する。すると、すべての放電セルにおいて2回目の微弱な初期化放電を起こし、走査電極SC1〜SCn上と維持電極SU1〜SUn上との間の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜Dm上の壁電圧も書込み動作に適した値に調整される。
【0032】
続く書込み期間では、走査電極SC1〜SCnを一旦Vc(V)に保持する。次に、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Va(V)を印加するとともに、データ電極D1〜Dmのうち1行目に表示すべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vd(V)を印加する。このときデータ電極Dkと走査電極SC1との交差部の電圧は、外部印加電圧(Vd−Va)(V)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧とが加算されたものとなり、放電開始電圧を超える。そして、データ電極Dkと走査電極SC1との間および維持電極SU1と走査電極SC1との間に書込み放電が起こり、この放電セルの走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
【0033】
このようにして、1行目に表示すべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vd(V)を印加しなかったデータ電極D1〜Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで順次行い、書込み期間が終了する。
【0034】
続く維持期間では、走査電極SC1〜SCnには第1の電圧として正の維持パルス電圧Vs(V)を、維持電極SU1〜SUnには第2の電圧として接地電位、すなわち0(V)をそれぞれ印加する。このとき書込み放電を起こした放電セルにおいては、走査電極SCi(i=1〜n)上と維持電極SUi上との間の電圧は維持パルス電圧Vs(V)に走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧とが加算されたものとなり、放電開始電圧を超える。そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。このときデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。
【0035】
書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは、維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保持される。続いて、走査電極SC1〜SCnには第2の電圧である0(V)を、維持電極SU1〜SUnには第1の電圧である維持パルス電圧Vs(V)をそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との間の電圧が放電開始電圧を超えるので、再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。
【0036】
以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに応じた数の維持パルスを印加することにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。こうして維持期間における維持動作が終了する。
【0037】
続く第2サブフィールド以降における初期化期間、書込み期間、維持期間の動作も、第1サブフィールドにおける動作とほぼ同様のため、説明を省略する。なお、本実施の形態においては、第2サブフィールド以降のサブフィールドにおいては、維持電極SU1〜SUnを正の電圧Ve1、Ve2(V)に保ち、走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3(V)から電圧Vi4(V)に向かって緩やかに下降するランプ電圧を印加することにより、前のサブフィールドにおいて維持放電を起こした放電セルにおいてのみ微弱な初期化放電を起こさせるように駆動している。すなわち、第1サブフィールドにおいては、全ての放電セルで初期化放電を発生させる全セル初期化動作を行い、第2サブフィールド以降においては、前のサブフィールドにおいて維持放電を起こした放電セルのみで選択的に初期化放電を発生させる動作を行うように構成している。なお、この全セル初期化動作と選択的初期化動作について、本実施の形態のように、第1サブフィールドとその他のサブフィールドとの間で使い分ける以外に、全セル初期化動作を第1サブフィールド以外のサブフィールドにおける初期化期間で行ったり、数フィールドに1回の頻度で行ったりしてもよい。
【0038】
また、書込み期間、維持期間における動作は、上述した第1サブフィールドにおける動作と同様な駆動方法であるが、維持期間における維持放電による発光は、輝度の重み付けに応じた数の維持パルスを印加することにより、サブフィールド毎の輝度重みを制御するように駆動している。
【0039】
本発明の具体的な実施例について、さらに詳細に説明する。
【0040】
(実施例1)
粒径20nm〜120nmで平均粒径100nm以下の図3(c)に示すような形状のシリコーン樹脂微粒子を含む誘電体材料を用い、膜厚が約15μmで比誘電率εが2.8の誘電体層を形成するとともに、キセノン(Xe)を15%の体積%の比率で混合した放電ガスを用いて作製した。
【0041】
(実施例2)
キセノン(Xe)を30%の体積%の比率で混合した放電ガスを用いた以外は、実施例1と同様に作製した。
【0042】
(比較例)
二酸化ケイ素(SiO2)、酸化ホウ素(B23)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ビスマス(Bi23)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化セリウム(CeO2)、二酸化マンガン(MnO2)などを含む誘電体材料を用い、膜厚が約40μmで比誘電率εが11.3の誘電体層を形成するとともに、キセノン(Xe)を10%の体積%の比率で混合した放電ガスを用いて作製した。
【0043】
上記のようにして作製した実施例1,2および比較例のPDPおよびプラズマディスプレイ装置の効果を確認するため、上述した駆動方法により駆動発光させた場合において、その際の駆動電圧と、放電動作に寄与する放電電力および無効電力とを比較した結果を図7に示す。
【0044】
図7から明らかなように、実施例1のPDPにより、比較例に比べて駆動電圧を約20V程度低減させることができ、電力も無効電力を含めて約80W程度低減することができる。また、実施例2においては、比較例と同程度の駆動電圧であるが、電力は無効電力を含めて約120W程度低減することができ、いずれも比較例に対して電力削減を図ることができる。
【0045】
以上のように本発明によれば、PDPの前面パネルの誘電体層として、平均粒径が100nm以下で最大粒径が400nm以下である有機材料と無機材料とからなる微粒子を含む誘電体材料により構成するとともに、膜厚が20μm以下で比誘電率εが2以上4以下となるように構成し、かつ前記放電空間にキセノンを15%以上30%以下の体積%で含む放電ガスを封入したことにより、1フィールドを複数のサブフィールドにより構成するとともに、それぞれのサブフィールドに、発光させる放電セルを選択する書込み放電を発生させる書込み期間と、この書込み期間により選択された放電セルにおいて維持放電を発生させる維持期間とを設けてPDPの発光表示動作を行う際に、無効電力を削減することができるとともに、維持放電時のために必要な電力を低減することができ、これにより低消費電力で高い発光効率を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のプラズマディスプレイパネルおよびプラズマディスプレイ装置は、低消費電力で、高い発光効率を有する上で有用である。また、本発明に用いられる誘電体層は、光透過性と低誘電率、低屈折率が必要な用途にも応用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 前面基板
2 走査電極
3 維持電極
4 表示電極
6 誘電体層
6a 有機無機ハイブリッド微粒子
8 背面基板
9 データ電極
11 隔壁
12 蛍光体層
13 放電空間
14 パネル
16 データ電極駆動回路
17 走査電極駆動回路
18 維持電極駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数の表示電極を形成するとともに前記複数の表示電極を覆うように誘電体層を形成した前面パネルと、この前面パネルに間に放電空間を形成して対向配置されかつ基板上に表示電極に交差する方向に配列して複数のデータ電極を形成するとともに放電空間を区画する隔壁および蛍光体層を形成した背面パネルとを有するプラズマディスプレイパネルであって、前面パネルの誘電体層は、平均粒径が100nm以下で最大粒径が400nm以下である有機材料と無機材料とからなる微粒子を含む誘電体材料により構成するとともに、膜厚が20μm以下で比誘電率εが2以上4以下となるように構成し、かつ放電空間にキセノンを15%以上30%以下の体積%で含む放電ガスを封入したことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記有機材料と無機材料とからなる微粒子は、無機材料がケイ素酸化物であり、微粒子の形状が球状および多面体である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
基板上に複数の表示電極を形成するとともに前記複数の表示電極を覆うように誘電体層を形成した前面パネルと、この前面パネルに間に放電空間を形成して対向配置されかつ基板上に表示電極に交差する方向に配列して複数のデータ電極を形成するとともに放電空間を区画する隔壁および蛍光体層を形成した背面パネルとからなり、かつ複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルを有し、プラズマディスプレイパネルに対して、1フィールドを複数のサブフィールドにより構成するとともに、それぞれのサブフィールドに、発光させる放電セルを選択する書込み放電を発生させる書込み期間と、この書込み期間により選択された放電セルにおいて維持放電を発生させる維持期間とを設けて発光表示を行うプラズマディスプレイ装置であって、プラズマディスプレイパネルの前面パネルの誘電体層は、平均粒径が100nm以下で最大粒径が400nm以下である有機材料と無機材料とからなる微粒子を含む誘電体材料により構成するとともに、膜厚が20μm以下で比誘電率εが2以上4以下となるように構成し、かつ放電空間にキセノンを15%以上30%以下の体積%で含む放電ガスを封入したことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項4】
前記有機材料と無機材料とからなる微粒子は、無機材料がケイ素酸化物であり、微粒子の形状が球状および多面体である請求項2に記載のプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−181370(P2011−181370A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45139(P2010−45139)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】