説明

プラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】高精細表示においても、放電不良を低減して高歩留まりな製造を達成できるプラズマディスプレイパネルであって、高輝度、高信頼性を確保し、さらに放電不良を低減した高歩留まり生産を実現することができ、画像表示品位が高く、信頼性の高いプラズマディスプレイパネルを提供することができる。
【解決手段】本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法は、基板上に表示電極を形成する工程と、遮光層を形成する工程とを有したPDPの製造方法であって、表示電極が黒色材料を含む層と銀材料を含む層を有し、遮光層が上遮光層および下遮光層を有し、黒色材料を含む層と下遮光層とが同じ材料であって、銀材料を含む層と上遮光層とが同じ材料であって、下遮光層のパターニングのために露光した後に、黒色材料を含む層、銀材料を含む層および上遮光層のパターニングのための露光を一括で行う工程を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示デバイスとして知られるプラズマディスプレイパネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、双方向情報端末として大画面、壁掛けテレビへの期待が高まっており、そのための表示デバイスとして、液晶表示パネル、フィールドエミッションディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどの数多くのものがある。これらの表示デバイスの中でもプラズマディスプレイパネル(以下、PDPとする)は、自発光型で美しい画像表示ができ、大画面化が容易であるなどの理由から、視認性に優れた薄型表示デバイスとして注目されており、高精細化および大画面化に向けた開発が進められている。
【0003】
PDPは表示電極、誘電体層、MgOによる保護層などの構成物を形成した前面板と、電極、隔壁、蛍光体層などの構成物を形成した背面板とを、内部に微小な放電セルを形成するように対向配置されるとともに、周囲を封着部材により封止されている。そして、その放電セルにネオン(Ne)およびキセノン(Xe)などを混合してなる放電ガスを例えば66500Pa(約500Torr)程度の圧力で封入している。
【0004】
ここで前面板は、表示電極を覆って誘電体層を形成し、誘電体層を覆って保護層を形成しているが、表示電極としてその一部に膜厚の厚い金属電極を用いるために、表示電極位置の保護層が膨らみ前面板と背面板とを対向させたとき、この膨らんだ保護層の部分と隔壁とが局所的に接触する。このような状態でPDPに振動や衝撃が加わると、保護層が接触している箇所の隔壁が一部欠損する場合があった。前面板の表示電極に対応する箇所の隔壁は個々の放電セルの放電領域近傍であるため、その放電セルの放電状態に影響したり、隣接する放電セルの誤放電、さらには蛍光体層上に隔壁の欠片が残ることによる発光時の点欠陥が発生していた。
【0005】
この問題に対し、隔壁を2層構成とし、隔壁の上に酸化アルミニウム(Al23)を主成分とする黒色ポーラス層を緩衝材として形成し、隔壁の欠損を抑制する方法などが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−158345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、PDPの更なる高品質化、歩留まり向上を達成するためには、落下や振動に対する更なる隔壁の欠損抑制が必要となる。特に、近年の表示画像の高精細度化の要求に対して放電セルの微細化が要求されている。微細セルでの隔壁の欠損は放電セルでの発光挙動により大きく影響するとともに、隔壁自体の幅が狭くなることにより欠損しやすくなるといった課題を有している。そのため、表示画像の高精細度化に向けて、落下や衝撃に対して隔壁の欠損のないPDPの実現が要望されている。
【0007】
本発明はこれらの課題を解決して、隔壁欠損が少なく、高品質な表示画像のPDPを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために本発明のPDPの製造方法は、基板上に表示電極を形成する工程と、遮光層を形成する工程とを有したPDPの製造方法であって、表示電極が黒色材料を含む層と銀材料を含む層を有し、遮光層が上遮光層および下遮光層を有し、黒色材料を含む層と下遮光層とが同じ材料であって、銀材料を含む層と上遮光層とが同じ材料であって、下遮光層のパターニングのために露光した後に、黒色材料を含む層、銀材料を含む層および上遮光層のパターニングのための露光を一括で行う工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高精細表示においても、放電不良を低減して高歩留まりな製造を達成できるPDPであって、高輝度、高信頼性を確保し、さらに放電不良を低減した高歩留まりのPDP製造を実現することができ、画像表示品位が高く、信頼性の高いPDPを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態におけるPDPについて図面を用いて説明する。
【0011】
(本発明の実施の形態におけるPDPの構造について)
図1は本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す部分斜視図である。また図2は本発明の実施の形態におけるPDPの前面板の構成を示す部分断面図であり、図3は本発明の実施の形態におけるPDPの前面板の部分平面図である。
【0012】
本実施の形態のPDPの基本構造は、図1に示すように、PDP1は前面基板3などよりなる前面板2と、背面基板11などよりなる背面板10とが対向して配置され、その外周部をガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。前面基板3および背面基板11はガラス基板などからなる。そして封着されたPDP1内部の放電空間16には、NeおよびXeなどの放電ガスが53000Pa〜80000Paの圧力で封入されている。
【0013】
前面板2の前面基板3上には、走査電極4および維持電極5よりなる一対の帯状の表示電極6と遮光部である遮光層7が互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。前面基板3上には表示電極6と遮光層7とを覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成され、さらにその表面に酸化マグネシウムなどからなる保護層9が形成されている。
【0014】
また図2に示すように、フロート法などにより製造された前面基板3に、走査電極4と維持電極5よりなる表示電極6と遮光層7がパターン形成されている。走査電極4と維持電極5はそれぞれ酸化インジウム(ITO)や酸化スズ(SnO2)などからなる透明電極4a、5aと、透明電極4a、5a上に形成された金属バス電極4b、5bとにより構成されている。金属バス電極4b、5bは透明電極4a、5aの長手方向に導電性を付与する目的として用いられている。そして、銀(Ag)材料を主成分とする導電性材料によって形成されている。さらに、金属バス電極4b、5bは黒色材料を含む黒色電極41b、51bと白色であって銀(Ag)材料を主成分とする白色電極42b、52bとで構成されている。
【0015】
そして背面板10の背面基板11上には、前面板2の走査電極4および維持電極5と直交する方向に、複数の帯状のアドレス電極12が互いに平行に配置され、これを下地誘電体層13が被覆している。さらに、アドレス電極12間の下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成されている。
【0016】
隔壁14は、アドレス電極12と平行方向に設けられた主隔壁となる縦隔壁14aと、その縦隔壁14aと直交するように設けられた補助隔壁となる横隔壁14bとで構成されている。隔壁14間の溝にアドレス電極12毎に、紫外線によって赤色、青色および緑色にそれぞれ発光する蛍光体層15が順次塗布して形成されている。走査電極4および維持電極5とアドレス電極12とが交差する位置に放電セルが形成され、表示電極6方向に並んだ赤色、青色、緑色の蛍光体層15を有する放電セルがカラー表示のための画素になる。
【0017】
また本発明の実施の形態では、前面板2と背面板10とを対向配置した際に、主隔壁である縦隔壁14aと補助隔壁である横隔壁14bとの交差部における前面板2の位置が遮光層7上に相当するようになり、さらにこの位置の遮光層7の幅が、隔壁14の交差部に相当しない位置での遮光層7の幅よりも狭くなっており、かつ黒色電極41b、51bおよび白色電極42b、52bの幅よりも狭くなっている。そして背面板10はその交差部において前面板2と当接している。
【0018】
すなわち図3に示すように、遮光層7は縦隔壁14aと当接する部分(以下、当接部とする)20において層の幅が異なる。具体的には他の部分では幅W2であるのに対し、当接部20では幅W1であり、W1<W2の関係である。そして黒色電極41b、51bおよび白色電極42b、52bの幅W3に対しても、W1<W3の関係である。
【0019】
また本発明の実施の形態において、遮光層7は複数層で形成され、前面基板3上に下遮光層71を設け、その上層として上遮光層72を設けている。さらに下遮光層71は黒色材料を含む層であって黒色電極41b、51bと同じ材料からなり、上遮光層72は銀材料を含む層であって白色電極42b、52bと同じ材料からなる。
【0020】
また、上遮光層72については幅が当接部20において幅W1となることが望ましいが、一方で下遮光層71は当接部20の幅と当接部20以外の幅が、幅W2で一定であることが望ましい。これは、当接部20での幅W1とすることを上遮光層72のみとしても、後述する本発明の効果を奏することは可能であり、さらに黒色の下遮光層71によって画像表示時の高コントラストも維持することが可能であるからである。
【0021】
ここで幅が一定である場合とは、フォトリソグラフィ法での露光マスクでの幅が一定である等、設計上幅を一定にして形成することを意図していたことを意味し、現像工程、焼成工程等において形状が部分的に幅が変化することも含まれるものとする。
【0022】
そして当接部20において遮光層7の層厚T1は、当接部20以外の遮光層7の層厚T2よりも大きく、かつ図2に示すように、表示電極6の層厚T3よりも大きくなっている。なお層厚T2については図2中には図示しておらず、図6を用いて後述する。
【0023】
このような構成を有することで、前面板2の遮光層7と、背面板10の遮光層7と縦隔壁14aと横隔壁14bとが交差する部分とで当接することになり、隔壁14が欠損する確率を低減することができる。また、たとえ隔壁14に欠損が生じたとしても、放電空間16に影響を及ぼす可能性を抑えることができる。
【0024】
(本発明の実施の形態におけるPDPの製造方法について)
次に、本発明の実施の形態におけるPDP1の製造方法について説明する。まず、前面基板3上に、走査電極4および維持電極5と遮光層7とを形成する。これらの透明電極4a、5aと金属バス電極4b、5bは、フォトリソグラフィ法などを用いてパターニングして形成される。透明電極4a、5aは薄膜プロセスなどを用いて形成され、金属バス電極4b、5bは導電性黒色粒子あるいは銀(Ag)材料を含むペーストを所望の温度で焼成して固化している。
【0025】
また先に述べたように本発明の実施の形態では、遮光層7が下遮光層71と上遮光層72とで構成されており、下遮光層71は黒色電極41b、51bと同じ材料、かつ上遮光層72は白色電極42b、52bと同じ材料で構成されている。つまり、遮光層7も同様に、黒色材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や黒色材料あるいは銀(Ag)材料をガラス基板の全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、焼成することにより形成される。
【0026】
具体的には、金属バス電極4b、5bおよび遮光層7は次のように形成する。前面基板3上に黒色材料を含んだペーストを印刷し乾燥させた後、フォトリソグラフィ法でパターンニングして、下遮光層71を形成する。さらにその上に顔料を含んだペーストと導電性粒子を含んだペーストをそれぞれ印刷、乾燥を繰り返す。その後フォトリソグラフィ法でパターニングして黒色の黒色電極41b、51bと白色の白色電極42b、52bからなる金属バス電極4b、5b、および上遮光層72を形成する。ここで黒色電極41b、51bは、画像表示時のコントラストを向上させるために下層(前面基板3側)に形成し、白色電極42b、52bは上層として形成される。
【0027】
次に、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆うように前面基板3上に誘電体ペーストをダイコート法などにより塗布して誘電体ペースト層(誘電体ガラス層)を形成する。誘電体ペーストを塗布した後、所定の時間放置することによって塗布された誘電体ペースト表面がレベリングされて平坦な表面になる。
【0028】
その後、誘電体ペースト層を焼成固化することにより、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆う誘電体層8が形成される。なお、誘電体ペーストは粉末の誘電体ガラス、バインダおよび溶剤を含む塗料である。次に、誘電体層8上に酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層9を真空蒸着法により形成する。以上の工程により、前面基板3上に所定の構成部材が形成されて前面板2が完成する。
【0029】
一方、背面板10は次のようにして形成される。まず、背面基板11上に、銀(Ag)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、金属膜を全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法などによりアドレス電極12用の構成物となる材料層を形成し、それを所望の温度で焼成することによりアドレス電極12を形成する。次に、アドレス電極12が形成された背面基板11上にダイコート法などによりアドレス電極12を覆うように誘電体ペーストを塗布して誘電体ペースト層を形成する。その後、誘電体ペースト層を焼成することにより下地誘電体層13を形成する。なお、誘電体ペーストは粉末の誘電体ガラスとバインダおよび溶剤を含んだ塗料である。
【0030】
次に、下地誘電体層13上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストを塗布して所定の形状にパターニングして隔壁材料層を形成し、その後、焼成することにより隔壁14を形成する。ここで、下地誘電体層13上に塗布した隔壁用ペーストをパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法やサンドブラスト法を用いることができる。次に、隣接する隔壁14間の下地誘電体層13上および隔壁14の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストを塗布して焼成することにより蛍光体層15が形成される。以上の工程により、背面基板11上に所定の構成部材が形成されて背面板10が完成する。
【0031】
このようにして所定の構成部材を備えた前面板2と背面板10とを走査電極4とアドレス電極12とが直交するように対向配置して、その周囲をガラスフリットで封着し、放電空間16にNe、Xeなどを含む放電ガスを封入することによりPDP1が完成する。
【0032】
(本発明の実施の形態における表示電極および遮光層の製造方法について)
本発明の実施の形態におけるPDP1の製造方法は、表示電極6が黒色材料を含む層である黒色電極41b、51bと銀材料を含む層である白色電極42b、52bを有し、遮光層7が上遮光層72および下遮光層71を有し、黒色電極41b、51bと下遮光層71とが同じ材料であって、白色電極42b、52bと上遮光層72とが同じ材料であって、下遮光層71のパターニングのために露光した後に、黒色電極41b、51b、白色電極42b、52bおよび上遮光層72のパターニングのための露光を一括で行う工程を有することを特徴としている。
【0033】
ここから、この黒色電極41b、51b、白色電極42b、52bおよび遮光層7の製造方法について、図4の工程フロー図を用いて詳細に説明する。
【0034】
まずステップ1(S1)として、黒色材料としてコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)等の黒色金属微粒子、金属酸化物、金属複合酸化物が5重量%〜40重量%と、ガラス材料が10重量%〜40重量%と、感光性ポリマー、感光性モノマー、光重合開始剤、溶剤などを含む感光性有機バインダ成分が30重量%〜60重量%とよりなる感光性ペーストを、印刷法などによって前面基板3上全面に塗布・乾燥し、黒色ペースト層(以下、単に黒層とする)21を形成する。
【0035】
なお、黒色ペーストのガラス材料は、少なくとも酸化ビスマス(Bi23)を5重量%〜25重量%含み、ガラス材料の軟化点が500℃を超えるようにしている。なお、上述した黒色材料としてのコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)等の黒色金属微粒子、金属酸化物、金属複合酸化物は、一部導電材としても機能する。
【0036】
次にステップ2(S2)として、フォトマスク710を介して黒層21に活性光線を照射する。これによって下遮光層71に相当するパターンが露光され、黒層21に黒層露光部711と黒層非露光部712が形成されることになる。
【0037】
次にステップ3(S3)として、少なくとも銀(Ag)粒子が70重量%〜90重量%と、ガラス材料が1重量%〜15重量%と、感光性ポリマー、感光性モノマー、光重合開始剤、溶剤などを含む感光性有機バインダ成分8重量%〜30重量%よりなる感光性ペーストを、印刷法などによって黒層21上に塗布・乾燥し、白色ペースト層(以下、単に白層とする)22を形成する。
【0038】
ここで、白層22の乾燥後、黒層露光部711上の白層22の膜厚(以下、露光部上膜厚とする)B1と、黒層非露光部712上の白層22の膜厚(以下、非露光部膜厚とする)B2とに違いが生じる。具体的には、膜厚B1と膜厚B2の関係はB1>B2となる。これについて図5を用いて説明する。この図において透明電極4a、5aは省略してある。
【0039】
まず、黒層21上に白層22を印刷すると、白層22から黒層21へ溶剤の移動(しみ込み)が生じる。ところが黒層21が露光されているか否かにより、この溶剤の移動度合いが変化する。
【0040】
具体的には黒層21が露光されている箇所よりも、露光されていない箇所の方が溶剤の移動量が大きい。このため黒層21の非露光部により溶剤が移動し、黒層21が膨潤して、非露光部での総膜厚が露光部と比較して大きくなる。
【0041】
そして、この溶剤の移動によって発生した膜厚差を埋めるように白層22の表面がレベリングされる。このレベリングにより白層22に含有する銀(Ag)粒子、ガラス材料および感光性ポリマー、感光性モノマー、光重合開始剤、溶剤などを含む感光性有機バインダ成分も、膜厚差が無くなるように移動する。
【0042】
このため、白層22だけに注目すると、黒層露光部711上の白層22の体積が、黒層非露光部712上と比較して相対的に多くなり、白層22の乾燥後には、黒層21に移動した溶剤は除去されるため、露光部上膜厚B1が非露光部上膜厚B2よりも厚いB1>B2の関係になる。
【0043】
ここで露光部上膜厚B1と非露光部上膜厚B2の膜厚差は、白色ペースト印刷時の白電極ペースト層から黒層非露光部712への溶剤の移動量、すなわち、黒層非露光部712の溶剤吸収量によって左右されると考えられる。このことより黒層21の乾燥温度を、熱重合が起こらない程度に高くすることで、膜厚差をより大きくすることができ、本発明の効果を奏するためにはより好ましい条件といえる。
【0044】
また、黒色ペーストの露光部上膜厚B1と非露光部上膜厚B2の膜厚差は、膨潤量および膨潤による膜厚差をうめるレベリング量にも左右されると考えられる。このことより、白色ペースト印刷後に一定時間十分に放置したのちに乾燥工程へ進むことが好ましい条件である。
【0045】
なお、白層22のガラス材料は、少なくとも酸化ビスマス(Bi23)を5重量%〜25重量%含み、ガラス材料の軟化点が550℃を超えるようにしている。
【0046】
次に図4の工程フロー図に戻り、ステップ4(S4)として、フォトマスク610を介して黒層21および白層22に活性光線を照射する。これによって、黒色電極41b、51b、白色電極42b、52bおよび上遮光層72に相当するパターンが露光される。
【0047】
ここで上遮光層72については下遮光層71の幅よりも狭いことが望ましい。これはS2、S4での複数回の露光によって露光マスクとのずれが生じ、画像表示面が和から視認した場合白色部分が露出することを防止するためである。この場合、画像表示側に白色部分が露出することによるコントラストの低下や異常放電による画像表示不良を生ずる懸念がある。
【0048】
また、先に述べたように背面板10との当接部20に相当する位置の上遮光層72の形成後の幅はW1となるように露光し、一方それ以外の部分の幅はW1より広いW2となるように露光する。つまり下遮光層71の形成後の幅W3との関係は、W1<W2<W3となっている。これについては後に詳述する。
【0049】
さらにこの工程では、黒色電極41b、51bおよび白色電極42b、52bに相当する露光は、黒層21および白層22を一括して行う。これにより線幅方向のずれを生じさせずに白色電極42b、52bを最大限の線幅で形成することができ、表示電極6の抵抗値を低く抑えることができる。
【0050】
次にステップ5(S5)として、それぞれのペースト層の非露光部を現像液で除去する。そして焼成工程でアルカリ可溶性高分子バインダ、光重合性モノマー、光重合開始剤が熱分解され除去される。焼成温度は使用する塩基性無機粉末の種類によっても異なるが、最高温度で500〜650℃の範囲が採用される。
【0051】
以上のような黒色電極41b、51b、白色電極42b、52bおよび上遮光層72の製造方法を実施することによって、部分的に塗布回数を増加させる等をすることなく、同一の塗布回数によって容易に遮光層7の膜厚を表示電極6の膜厚よりも大きくすることができる。
【0052】
ここで、遮光層7の幅を部分的に変化させる理由について図6を用いて説明する。同図では当接部20での遮光層7の部分平面図および部分断面図を示している。
【0053】
一般にフォトリソグラフィ法では、印刷法等で塗布された膜を現像後に焼成処理することによって膜を固化している。ところがこの焼成処理によって膜は収縮し、現像後の形状と焼成後の形状に差異が生じる。例えば本発明の実施の形態では上遮光層72の当接部20での幅は現像後では幅D1であり、焼成後にW1となるように形成した。また当接部20以外の幅は現像後では幅D2であり、焼成後はW2となるように形成した。そしてD1<D2としている。
【0054】
ところで発明者等の検討の結果、現像後の膜厚が同一で線幅が異なる場合、現像後の線幅が大きい方と比較して現像後の線幅が小さい方が、線幅方向の収縮率が大きくかつ膜厚方向の収縮率が小さくなる現象が生じることが判明した。本発明の実施の形態ではこの現象を利用している。
【0055】
つまり図6に示すように、現像後の黒層21および白層22の膜厚は当接部20もそれ以外の部分でも同一である。しかしながら線幅は当接部20の線幅D1はそれ以外の線幅D2よりも狭い。このため同図で示したように焼成後の当接部20の膜厚T1とそれ以外の膜厚T2とが異なり、T1>T2となる。
【0056】
また、さらに現像後において当接部20での上遮光層72の幅D1が白色電極42b、52bの線幅D3(図示無し)に対して、D1<D3となるようにしている。このため表示電極6および遮光層7を形成した後の最頂部は上遮光層72の線幅がW1である部分となる。
【0057】
これは誘電体層8、保護層9を形成した後も同様であり、前面板2と背面板10とを対向配置して封着した際、当該部分において前面板2と背面板10が当接することになる。
【0058】
以上のように本発明におけるPDPの製造方法においては、基板上に表示電極を形成する工程と、遮光層を形成する工程とを有したPDPの製造方法であって、表示電極が黒色材料を含む層と銀材料を含む層を有し、遮光層が上遮光層および下遮光層を有し、黒色材料を含む層と下遮光層とが同じ材料であって、銀材料を含む層と上遮光層とが同じ材料であって、下遮光層のパターニングのために露光した後に、黒色材料を含む層、銀材料を含む層および上遮光層のパターニングのための露光を一括で行う工程を有することを特徴とする。
【0059】
この結果、隔壁の欠損する確率を低減することができ、またたとえ欠損が発生しても、放電状態に影響を及ぼさないようにすることができ、製造歩留まりを向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上述べてきたように本発明のPDPは、放電不良の発生を低減し、大画面ハイディフィニションテレビの製造歩留まり向上に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイパネルの構造を示す部分斜視図
【図2】同プラズマディスプレイパネルの前面板の構成を示す部分断面図
【図3】同プラズマディスプレイパネルの前面板の構成を示す部分平面図
【図4】同プラズマディスプレイパネルの前面板の製造工程を示すフロー図
【図5】同プラズマディスプレイパネルの前面板の白印刷工程におけるフロー図
【図6】同プラズマディスプレイパネルの前面板の遮光層に関する詳細図
【符号の説明】
【0062】
1 プラズマディスプレイパネル
2 前面板
3 前面基板
6 表示電極
7 遮光層
8 誘電体層
10 背面板
11 背面基板
14 隔壁
14a 主隔壁(縦隔壁)
14b 補助隔壁(横隔壁)
16 放電空間
20 当接部
71 下遮光層
72 上遮光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に表示電極を形成する工程と、遮光層を形成する工程とを有したプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記表示電極が黒色材料を含む層と銀材料を含む層を有し、
前記遮光層が上遮光層および下遮光層を有し、
前記黒色材料を含む層と前記下遮光層とが同じ材料であって、前記銀材料を含む層と前記上遮光層とが同じ材料であって、
前記下遮光層のパターニングのために露光した後に、前記黒色材料を含む層、前記銀材料を含む層および前記上遮光層のパターニングのための露光を一括で行う工程を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−289634(P2009−289634A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141943(P2008−141943)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】