説明

プラズマディスプレイパネルの駆動回路および駆動方法

【課題】駆動素子の電力損失を低減し、発光効率を高めることを可能とするプラズマディスプレイパネルの駆動回路を提供する。
【解決手段】Y電極31YとX電極31Xからなる表示電極に対する維持放電パルスの印加によって、点灯すべきセルの輝度に応じた回数の維持放電を生じさせることにより画像を表示するプラズマディスプレイパネル30のY電極駆動回路10Yであって、表示電極に対して前記維持放電パルスを印加するY奇数電極駆動回路11Yと、Y電極駆動回路10Yからの出力に対して補正電圧パルスを印加するクランプ回路13Yを有し、サステイン期間中における前記維持放電パルスの印加の際に、クランプ回路13YによりY電極駆動回路10Yの出力に対して前記補正電圧パルスを印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PDP(Plasma Display Panel:プラズマディスプレイパネル)の駆動回路および駆動方法に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CRT(Cathode Ray Tube)に替わる表示パネルとして実用化されているプラズマディスプレイ装置は、自己発光型のため、視認性が良く、薄型で、大画面表示および高速表示が可能である。このプラズマディスプレイ装置の表示方式には、1つのフィールドで全ての表示ラインを表示するノンインターレース(プログレッシブ)方式と、奇数番目の表示ラインを表示する奇数フィールドと偶数番目の表示ラインを表示する偶数フィールドとを交互に表示するインターレース方式とがある。
【0003】
また、インターレース方式の一例としては、例えば特開2004−309983号公報(特許文献1)、特許第2801893号公報(特許文献2)および特開平9−160525号公報(特許文献3)で開示されているALIS(Alternate Lighting of Surface)方式がある。従来のプラズマディスプレイ装置では、対を成す表示電極(X電極およびY電極)で1表示ラインが形成されるのに対して、このALIS方式では、X電極とY電極の隣接する全ての電極間で表示ラインが形成される。
【0004】
すなわち、X電極とY電極には、それぞれ別々に駆動用の電極駆動回路が接続され、奇数番目の電極には、例えば第1の電極駆動回路により維持放電パルスが印加され、偶数番目の電極には、例えば第2の電極駆動回路により維持放電パルスが印加される。奇数番目の電極に印加される維持放電パルスと、偶数番目の電極に印加される維持放電パルスは互いに逆相とされる。
【0005】
かかるALIS方式によれば、同数の表示電極で2倍の表示ライン化を実現でき、また、従来と同数の表示ライン数を形成しようとする場合には、1/2の表示電極数で実現することができるとされる。ALIS方式のプラズマディスプレイ装置については、特許文献2に詳細が記載されている。また、特公平7−109542号公報(特許文献4)には、容量とインダクタンスに基づく共振を利用した電力回収技術について記載されている。
【0006】
図15は、従来のプラズマディスプレイ装置における駆動波形および放電電流(発光電流)の概要を示す図である。図15に示すように、各サブフィールド期間は、画面の帯電分布を一様に初期化するリセット期間と、表示内容に応じたセルを選択するアドレス期間と、明るさに応じた回数で維持放電パルスを印加することによりセルを発光させて画像を表示するサステイン期間とで構成される。
【0007】
図16は、従来のプラズマディスプレイ装置における維持放電パルスの例を示す図である。図16に示すように、プラズマディスプレイパネルの駆動には、X電極とY電極に交互に振幅VsxまたはVsyの単純矩形波の維持放電パルスPを印加する。すなわち、X電極とY電極とを交互に一時的に電位Vにバイアスする。これにより、X電極とY電極との間(これをXY電極間という)に交番極性のパルス列が加わる。パネルベース電位(通常はグランドレベル:GND)とパネルバイアス電位との差、すなわち維持放電電圧Vは、放電駆動マージンの範囲内の値に設定される。
【0008】
図17は、プラズマディスプレイ装置における放電駆動マージンの概要を示す図である。放電駆動マージンは、図17に示すように、セルの点灯を維持するのに必要な最小の印加電圧Vsminと、最大の印加電圧Vsmaxとの間として定義される。ここで、維持放電電圧VがVsmaxより大きくなると、アドレス期間に非選択であったセルでも放電が起き点灯してしまう。また、維持放電電圧VがVsminより小さくなると、アドレス期間で選択されたセルで放電が起きず消灯状態になってしまう。このため、維持放電電圧Vが放電駆動マージンの範囲内に入るよう制御する必要がある。
【特許文献1】特開2004−309983号公報
【特許文献2】特許第2801893号公報
【特許文献3】特開平9−160525号公報
【特許文献4】特公平7−109542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
プラズマディスプレイ装置のパネル容量は、電源からみて容量性負荷であるので、維持放電パルスの印加に際して、セルの持つ静電容量を充電する電流が流れる。通常、静電容量の端子間電圧が維持放電電圧Vに達した時点より遅れて維持放電が起こり、それにともなって放電電流(これを発光電流という)が流れる。従来では、放電電流は、プラズマディスプレイパネルに接続されていた電源回路からセルへ供給されていた。このため、電力供給経路が長く、さらに電流がスイッチングトランジスタを含む多くの回路デバイスを経由することから、電圧降下や電力損失が大きく、これらにより発光効率が低下するという問題があった。
【0010】
また、近年、プラズマディスプレイ装置の大型化や高精細化が加速し、パネルセル内には、高発光効率を得るために高Xeガスが使われるようになっている。これに伴い駆動電圧の高電圧化が進み、維持放電パルスには大きな維持放電電圧が必要になり、駆動素子の負担増や発熱は言うまでも無く、消費電力の増大やコスト上昇が大きな課題となっている。これら駆動素子の負担軽減および発熱対策の上で、電力消費を低減させる必要がある。
【0011】
そこで本発明の目的は、駆動素子の電力損失を低減し、発光効率を高めることを可能とするプラズマディスプレイパネルの駆動回路および駆動方法を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0014】
本発明の代表的な実施の形態によるプラズマディスプレイパネルの駆動回路は、X電極の駆動回路とY電極の駆動回路の少なくともいずれか一方に、該駆動回路からの出力に対して補正電圧パルスを印加するクランプ回路を有し、サステイン期間中における維持放電パルスの印加の際に、前記クランプ回路により該駆動回路の出力に対して補正電圧パルスを印加することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0016】
本発明の代表的な実施の形態によれば、維持放電用の電源経路とセルとの通電を省電力化することができ、従来技術のように常に電源から維持放電電流を供給する場合と比べて電力損失を少なくすることができる。また、本発明の代表的な実施の形態によれば、X電極とY電極との間に、通常の維持放電電圧に加えてさらに補正電圧パルスを印加することで安定した駆動が得られ、また維持放電電圧を下げることができ、発光効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0018】
<概要>
図2は、本発明の一実施の形態であるプラズマディスプレイ装置における駆動波形および放電電流(発光電流)の概要を示す図である。駆動電圧波形は、前述の図15で説明したのと同様に、各サブフィールドにおいて、セルの初期化を行うリセット期間と、点灯セルを選択するアドレス期間と、明るさに応じた回数で維持放電パルスを印加するサステイン期間とによって構成されている。
【0019】
アドレス電極は、アドレス期間にはセルを選択するためのアドレス電圧Vを供給する。X電極には、サステイン期間には維持放電電圧Vsxが供給される。Y電極には、リセット期間には正鈍波電圧Vと負鈍波電圧Vで構成されるリセットパルスが、アドレス期間にはスキャン用のスキャン電圧Vscが、サステイン期間には維持放電電圧Vsyがそれぞれ供給される。
【0020】
サステイン期間中の維持放電パルスに対しては、Y電極の維持放電電圧Vsyに対してさらに補正電圧Vu1、Vu2、Vu3をそれぞれ付加する事を特徴としている。図2の例では、サステイン期間の先頭の維持放電パルスを維持放電電圧Vsyで立ち上げた直後に付加していることから、サステイン期間への移行時において大きな放電が得られる。
【0021】
<実施の形態1>
図3は、本発明の実施の形態1であるプラズマディスプレイ装置の全体構成の概略を示す図である。本実施の形態のプラズマディスプレイ装置は、電極駆動回路(Y電極駆動回路10Y、X電極駆動回路10X)、スキャン駆動回路20、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと記載する)30、アドレス回路40、駆動制御回路50、画像信号処理回路60を有する構成となっている。
【0022】
PDP30は、画像を表示する表示パネルであり、本実施の形態では前述のALIS方式の構成をとる。従って、n本のY電極31Yとn+1本のX電極31Xとが互いに平行にかつ交互に配置され、これら両電極31Y、31Xと直交してアドレス電極32が配されているマトリックス状の電極配列構造を有し、Y電極31YおよびX電極31Xと、アドレス電極32との交点位置に表示セル(図示せず)が形成される。
【0023】
そして、表示発光は、全ての表示電極(Y電極31YとX電極31X)の間で行われる。従って、Y電極31YとX電極31Xを合わせた合計2n+1本の表示電極で、2n本の表示ラインが形成される。なお、表示電極であるY電極31YとX電極31Xとの間では、表示発光の為の維持放電を行うため、Y電極31Y、X電極31Xは、維持電極またはサステイン電極とも呼ばれる。
【0024】
ALIS方式では、全ての表示電極間で維持放電が行われるが、これら全ての表示電極間での維持放電を同時に発生させることはできない。従って、インターレース走査によって、奇数フィールドでは奇数番目の表示ラインでの表示を行い、偶数フィールドでは偶数番目の表示ラインで表示を行うことによって、両表示を合わせて1つの画像表示を行う。
【0025】
スキャン駆動回路20は、Y電極31Yに接続されており、スイッチ21を有している。これにより、アドレス期間にはY電極31Yに接続するように切り替えられ、駆動制御回路50からの制御信号によって、Y電極31Yに順にスキャンパルスを印加してスキャン駆動する。また、サステイン(維持放電)期間には、Y電極31YがY電極駆動回路10Yと接続するように切り替えられる。このとき、X電極31XはX電極駆動回路10Xに接続される。
【0026】
Y電極駆動回路10Yは、Y電極31Yをサステイン駆動(維持放電させるように駆動)するサステイン駆動回路を含んで構成される。サステイン駆動回路は、表示電極に対して維持放電パルスを印加する回路であり、奇数番目のY電極31Yを駆動するY奇数電極駆動回路(Y)11Yと、偶数番目のY電極31Yを駆動するY偶数電極駆動回路(Y)12Yとからなる。そして、サステイン期間には、奇数番目のY電極31Y(以下、Y奇数電極と記載する)はY奇数電極駆動回路11Yに接続され、偶数番目のY電極31Y(以下、Y偶数電極と記載する)はY偶数電極駆動回路12Yに接続される。
【0027】
同様に、X電極駆動回路10Xは、X電極31Xをサステイン駆動(維持放電させるように駆動)するサステイン駆動回路を含んで構成される。サステイン駆動回路は、奇数番目のX電極31Xを駆動するX奇数電極駆動回路(X)11Xと、偶数番目のX電極31Xを駆動するX偶数電極駆動回路(X)12Xとからなる。そして、サステイン期間には、奇数番目のX電極31X(以下、X奇数電極と記載する)はX奇数電極駆動回路11Xに接続され、偶数番目のX電極31X(以下、X偶数電極と記載する)はX偶数電極駆動回路12Xに接続される。
【0028】
画像信号処理回路60は、入力された画像信号をプラズマディスプレイ装置内部での動作に適した形式の画像データに変換した後、アドレス回路40に供給する。アドレス回路40は、アドレス電極32に接続し、画像信号処理回路60にて画像信号から変換された画像データに基づいて、アドレス期間に、スキャン駆動回路20からのスキャンパルスに応じてアドレスパルスを形成して出力する。このアドレスパルスによってアドレス電極32を駆動し、これによりアドレス放電が生じる。
【0029】
電極駆動回路(Y電極駆動回路10Y、X電極駆動回路10X)は、サステイン期間に、Y電極31YおよびX電極31Xに維持放電用の駆動電圧の維持放電パルスを印加して駆動し、前述のアドレス放電によりアドレスされた点灯すべき表示セルの輝度に応じた回数の維持放電を生じさせることにより画像を表示するプラズマディスプレイパネルの駆動回路である。
【0030】
駆動制御回路50は、アドレス回路40、スキャン駆動回路20および電極駆動回路(Y電極駆動回路10Y、X電極駆動回路10X)を含むプラズマディスプレイ装置の各部を制御するための制御信号を形成して出力する。
【0031】
上記の構成により、本実施の形態のALIS方式のプラズマディスプレイ装置は、アドレス期間には、スキャン駆動回路20からのスキャンパルスに応じてアドレス回路40から画素データに対応したアドレスパルスを出力し、アドレス電極32に供給する。これにより、PDP30の該当する表示セルにおいてアドレス放電を行う。
【0032】
また、サステイン期間には、Y奇数電極駆動回路11Y、Y偶数電極駆動回路12Y、X奇数電極駆動回路11XおよびX偶数電極駆動回路12Xによって、PDP30上の奇数表示ラインおよび偶数表示ラインをそれぞれ駆動し、PDP30上の、前述したアドレス放電によってアドレスされた表示セルのY電極31YとX電極31Xとの間で維持放電を行うことによって画像表示を行う。
【0033】
図1は、本実施の形態におけるY電極駆動回路10YとX電極駆動回路10Xの構成例を示した図である。ここでは、PDP30がY電極駆動回路10YとX電極駆動回路10Xとに接続されている状態が図示されている。Y電極駆動回路10Yは、PDP30をY電極31Y側から駆動し、X電極駆動回路10Xは、PDP30をX電極31X側から駆動する。
【0034】
Y電極駆動回路10Yは、Y奇数電極をサステイン駆動するY奇数電極駆動回路11Yと、補正電圧を供給するクランプ回路13Yと、電力回収回路14Yとを含んで構成される。ここで、Y電極駆動回路10Yは、Y偶数電極をサステイン駆動するY偶数電極駆動回路12Yも有するが、Y奇数電極駆動回路11Yと同様な回路構成と動作であるため説明の便宜上図示せず、以下、Y奇数電極を駆動する構成例について代表して説明する。
【0035】
また、X電極駆動回路10Xは、X奇数電極をサステイン駆動するX奇数電極駆動回路11Xと、電力回収回路14Xとを含んで構成される。ここで、X電極駆動回路10XについてもY電極駆動回路10Yと同様に、以下、X奇数電極を駆動する構成例について代表して説明する。なお、Y電極駆動回路10YとX電極駆動回路10Xとにおいて、同じ機能を有する構成要素には同じ符号を付し、Y電極側とX電極側とで区別が必要なものについては、その符号にそれぞれ添字y、xを付す。
【0036】
Y奇数電極駆動回路11Yは、例えばMOSFETやIGBTで構成されたスイッチ1y、2yを含んで構成される。またX奇数電極駆動回路11Xも同様に、MOSFETやIGBTで構成されたスイッチ1x、2xを含んで構成される。
【0037】
クランプ回路13Yは、Y電極駆動回路10Yからの出力に対して補正電圧パルスを印加する回路であり、例えばMOSFETやIGBTで構成されたスイッチ5yと電源回路7yとを含んで構成される。電源回路7yは、例えばスイッチング電源で構成され、駆動制御回路50内の駆動信号発生回路51からスイッチングパルスによる電圧制御信号Pにて補正電圧が可変できる。クランプ回路13Yの構成については後述する。
【0038】
電力回収回路14Yは、一方向性のダイオード9yと電路をオン・オフするスイッチ4yとインダクタンスを形成するコイル11yとを直列接続した構成と、一方向性のダイオード8yと電路をオン・オフするスイッチ3yとインダクタンスを形成するコイル10yとを直列接続した構成を有する。スイッチ3y、4yはそれぞれ、コイル10y、11yによる充放電経路の切り替えを行い、ダイオード8y、9yはそれぞれ、逆方向電流が流れるのを阻止する。
【0039】
電力回収回路14Y内において、コイル10y、11yに接続されたスイッチ3y、4yは、サステイン駆動の前後の期間において、PDP30の表示パネル容量CPに対し、それぞれ交互にオン・オフすることにより充放電経路を切り替える。これにより、表示パネル容量CPに対し充放電が行われる。電力回収回路14Yにおける電力回収原理は、例えば特許文献1や特許文献4に記載されているものと同じである。
【0040】
アドレス電極駆動回路40Aは、アドレス回路40内にあり、スイッチ41およびアドレスパルス生成回路42を有する。図2に示されるアドレス期間においてのみ、アドレス選択の動作を行う際にスイッチ41がオンし、アドレスパルス生成回路42は、アドレス電極32にアドレスパルスを供給する。アドレスパルスの供給毎に、アドレス電極32とY電極間31Yとの間の容量Cyaに対してアドレス放電が起こり、それを種火として、図2で示されるサステイン期間においてY電極31YとX電極31Xとの間で維持放電が起きる。アドレス期間以外のリセット期間およびサステイン期間では、スイッチ41はオフしている。
【0041】
なお、これらのスイッチ(スイッチ1y〜5y、スイッチ1x〜4x、スイッチ41)は、駆動制御回路50によって切り替えが行われる。スイッチ切り替えのための制御信号は、駆動信号発生回路51より発生する。
【0042】
図4は、図1における表示電極(Y電極31Y、X電極31X)の駆動波形と各スイッチの動作タイミングの例を示す図である。図4において、(a)は、Y電極31Yの駆動電圧出力波形を、(b)は、X電極31Xの駆動電圧出力波形を、(c)は、Y電極駆動回路10Y内の各スイッチの動作タイミングを、(d)は、X電極駆動回路10X内の各スイッチの動作タイミングを示している。なお、説明の便宜上、Y電極31Yについては奇数ラインを形成するY奇数電極の駆動波形を、X電極31Xについては奇数ラインを形成するX奇数電極の駆動波形を代表して示す。
【0043】
以下、図1、図4を用いて、Y電極31Y、X電極31Xが、図4(a)および(b)の波形で駆動される場合の動作を、Y電極駆動回路10Y内のスイッチ1y〜5yの動作タイミングおよびX電極駆動回路10X内のスイッチ1x〜4xの動作タイミングを基に各期間毎に説明する。
【0044】
t1〜t2期間:
サステイン期間のうちの先頭パルスを用いて説明する。この期間は、Y電極側はサステイン期間の中で立ち上げ期間であり、Y電極31Yに電力回収回路14Yのスイッチ3yからコイル10yを介して電力を供給する。この時、Y電極駆動回路10Yではスイッチ3y以外は全てオフである。一方、X電極側は立ち下げ期間であり、電力回収回路14Xのスイッチ4xをオンさせ、表示パネルの電荷をダイオード9xからコイル11x方向へ回収あるいは充電を行う。
【0045】
t2〜t3期間:
この期間では、Y電極31Yに電圧Vsy1を与える。そのため、Y電極側では、Y奇数電極駆動回路11Yのスイッチ2yがオンし、電圧Vsy1を供給する。電力回収回路14Yのスイッチ3y、4yはオフである。一方、X電極側では、X奇数電極駆動回路11Xのスイッチ1xを介して電圧Vsx2に接続してX電極31Xに電力を供給する。この時、X電極駆動回路10Xではスイッチ1x以外は全てオフである。
【0046】
t3〜t4期間:
この期間は、Y電極側の補正電圧の立ち上げ期間である。そのため、Y電極側では、Y奇数電極駆動回路11Yのスイッチ2yはオンの状態のままとし、クランプ回路13Yのスイッチ5yをTaの時間幅でオンさせ、t4のタイミングまで、駆動信号発生回路51からの電圧制御信号Pに応じて電圧Vuy1を電源回路から供給する。一方、X電極側では、t2〜t3期間と同様にVsx2がX電極31Xに印加されている。
【0047】
t4〜t5期間:
この期間は、Y電極側ではクランプ回路13Yのスイッチ5yをオフし、同時にスイッチ2yをオフし、出力をハイインピーダンスの状態にする。また、この期間において電力回収回路14Yのスイッチ4yをオンさせ、表示パネルの電荷をダイオード9yからコイル11y方向へ回収あるいは充電を行う。
【0048】
t5〜t6期間:
この期間は、Y電極側は立ち下げ期間であり、電力回収回路14Yのスイッチ4yをオフにする。一方、X電極側は立ち上げ期間であり、X奇数電極駆動回路11Xのスイッチ1xがオフし、電力回収回路14Xのスイッチ3xがオンし、電力回収回路14XがX電極31Xに接続される。これにより、X電極31Xに電力回収回路14Xから電力が供給される。
【0049】
t6〜t7期間:
この期間は、Y電極側はY奇数電極駆動回路11Yのスイッチ1yがオンし、電圧Vsy2がY電極31Yに印加される。また、X電極側はX奇数電極駆動回路11Xのスイッチ2xがオンし、電圧Vsx1が印加される。その後、上記と同様な動作を繰り返し、維持放電パルスを各電極に供給する。
【0050】
このように、本実施の形態のプラズマディスプレイ装置では、図4(a)に示すように、第1の維持放電パルスについて、時間幅Taの間、補正電圧Vuy1を維持放電電圧Vsyに対して付加し、第2の維持放電パルスについて、時間幅Tbの間、補正電圧Vuy2を維持放電電圧Vsyに対して付加し、第3の維持放電パルスについて、時間幅Tcの間、補正電圧Vuy3を維持放電電圧Vsyに対して付加することを特徴としている。
【0051】
図5は、図4(a)における維持放電パルス1パルスあたりのY電極駆動回路10Yの出力に対する放電電流の波形の例を示す図である。電圧Vsyの波形の立ち上がりから補正電圧Vuy1を印加するまでの時間をt1−t3、補正電圧Vuy1を印加している時間をTaとする。補正電圧Vuy1を印加した後、セル内で放電が発生すると、放電電流(発光電流)が流れ、電力が消費される。この放電電流が流れる前の段階で補正電圧Vuy1を遮断することで、立ち上りに充電した容量で放電が行われ、放電が終息する前に印加電圧をハイインピーダンス状態とする事で省電力化が可能となる。
【0052】
これにより、放電の終了状態を常に安定にさせ、次の放電を確保するための壁電荷を維持でき、あるいは壁電荷が最適になるようにコントロールされる。このように、本実施の形態のプラズマディスプレイ装置における駆動波形によれば、駆動マージンや電力を損なうことなく安定した発光が維持できる。また放電にて残った余分な壁電荷は、次の維持放電パルスの印加に対して、そのまま維持あるいは電力回収動作を行うことが可能である。従って、図4(a)に示すように、補正電圧は維持放電パルスの周期毎に段階的に小さくすることができる。
【0053】
図6は、補正電圧と放電を維持する最低限の電圧(放電維持電圧)との関係の例を示す図である。図6(a)では、補正電圧を大きくすれば、放電維持電圧Vsminが小さくなるが、ある程度補正電圧を大きくすると、放電維持電圧は飽和することを表している。また、図6(b)では、補正電圧を印加する時間幅によっても放電維持電圧は変動することを表している。また、図6(c)では、放電維持電圧を小さくすることができると、発光効率が向上することを表している。このように、補正電圧と補正電圧を印加する時間幅は発光効率に影響するため、これらを最適な値にコントロールすることで、維持放電電圧を下げ、消費電力を抑えた効率的な発光を行うことが可能となる。
【0054】
次に、補正電圧と補正電圧を印加する時間幅の制御手段について説明する。可変の補正電圧は、例えばY電極駆動回路10Yのクランプ回路13Yの内部で生成することができる。図7は、クランプ回路13Yの内部で補正電圧を生成する場合のクランプ回路13Yの構成例を示す図である。図7では、トランスを用いて構成した例を示しており、電圧制御パルスP(Pyn、P、Pxn)は全てマイコンによる制御によりパルス変調を行い、出力電圧を可変にする。図7の構成例ではフィードバック経路を有していないが、出力電圧を同じマイコンのA/D変換入力端子にフィードバックすることで微調整が可能である。
【0055】
図7の構成例は、トランスを用いた低コストで簡易的な構成であるが、図8に示すように、DC/DCコンバータのICを用いた構成とすることも可能である。図8の構成例では、マイコンのD/A変換出力端子より所定の電圧を出力させ、DC/DCコンバータのスイッチング周波数を切り替える等により、設定に応じた電圧を発生させることができる。なお、図7、図8の構成例では、マイコンによる制御を行う構成としているが、図1の駆動信号発生回路51の中で、あらかじめ所定のパルス数やスイッチの動作等を記憶させておくことによりこれらの制御を行うことも可能である。
【0056】
また、補正電圧を印加する時間幅については、その他のパルスと同様に、例えば駆動信号発生回路51の中で、基準クロックよりカウンタ回路にて所定のパルス数をカウントし、出力することによって制御することが可能である。また、マイコンによる制御によっても任意の幅に制御することが可能である。
【0057】
以上に述べたように、本実施の形態のプラズマディスプレイ装置によれば、サステイン期間中における任意の位置の維持放電パルスに対して、Y電極とX電極間の電位差が維持放電が十分に起こるように、また継続した壁電荷が保持できるように補正電圧パルスを印加することで、アドレス放電の電荷不足を補い、安定した駆動が得られる。また、電源回路からの電力損失を低減する効果が得られることにより、維持放電電圧を下げることができ、発光効率を高めることができる。
【0058】
また、補正電圧パルスと表示に関わる維持放電電流とが最適化されるように、補正電圧パルスの印加電圧および印加時間を制御することで、従来技術のように常に電源から維持放電電流を供給する場合と比べて電力損失が少なく、確実な壁電荷形成と放電駆動マージンを得ることができる。また、最近の高Xe化の大型パネルなどにおける省電力化も実現することができる。
【0059】
<実施の形態2>
前述の実施の形態1のプラズマディスプレイ装置では、Y電極駆動回路10Yにおいてのみ補正電圧パルスによる駆動を行う構成であったが、本発明の実施の形態2のプラズマディスプレイ装置では、X電極駆動回路10Xにおいても補正電圧パルスによる駆動を行うことを特徴とする。本実施の形態のプラズマディスプレイ装置の全体構成は、実施の形態1の図3と同様であるため、説明は省略する。
【0060】
図9は、本実施の形態におけるY電極駆動回路10YとX電極駆動回路10Xの構成例を示した図である。以下では、本実施の形態のプラズマディスプレイ装置と、実施の形態1のプラズマディスプレイ装置との相違点について説明する。図9において、実施の形態1の図1の構成との相違点は、X電極駆動回路10XにもY電極駆動回路10Yと同様にクランプ回路13Xを有している点である。
【0061】
クランプ回路13Xは、X電極駆動回路10Xからの出力に対して補正電圧パルスを印加する回路であり、クランプ回路13Yと同様に、例えばMOSFETやIGBTで構成されたスイッチ5xと電源回路7xとを含んで構成される。電源回路7xは、例えばスイッチング電源で構成され、駆動制御回路50内の駆動信号発生回路51からスイッチングパルスによる電圧制御信号Pにて補正電圧が可変できる。具体的な構成の例は、実施の形態1の図7、図8で説明したものと同様である。
【0062】
図10は、図9における表示電極(Y電極31Y、X電極31X)の駆動波形と各スイッチの動作タイミングの例を示す図である。実施の形態1の図4と同様に、図10において、(a)は、Y電極31Yの駆動電圧出力波形を、(b)は、X電極31Xの駆動電圧出力波形を、(c)は、Y電極駆動回路10Y内の各スイッチの動作タイミングを、(d)は、X電極駆動回路10X内の各スイッチの動作タイミングを示している。
【0063】
図10(a)のY電極31Yの駆動電圧出力波形および図10(c)のY電極駆動回路10Y内の各スイッチの動作タイミングについては、実施の形態1の図4(a)および(c)と同様であるため説明を省略する。
【0064】
図10(d)のt7〜t8の期間において、図10(c)のt3〜t4期間におけるY電極駆動回路10Yでの動作と同様に、クランプ回路13Xのスイッチ5xをTdの時間幅でオンさせることにより、図10(b)のように、電圧Vsxに対してさらに電圧Vux1を付加する。また、同様に、t15〜t16の期間において、スイッチ5xをTeの時間幅でオンさせることにより、電圧Vsxに対してさらに電圧Vux2を付加する。
【0065】
以上に述べたように、本実施の形態のプラズマディスプレイ装置によれば、実施の形態1と同様に、X電極駆動回路10Xにおいても維持放電パルスに補正電圧を付加することで、放電のさらなる安定化と高効率化を図ることができる。
【0066】
<実施の形態3>
前述の実施の形態1および実施の形態2のプラズマディスプレイ装置では、Y電極駆動回路10YおよびX電極駆動回路10Xにおいて、維持放電パルスのVsyおよびVsxに対して正電圧方向に補正電圧を付加して駆動を行う構成であったが、本発明の実施の形態3のプラズマディスプレイ装置では、維持放電パルスのVsyおよびVsxに対して負電圧方向に補正電圧を付加して駆動を行うことを特徴とする。本実施の形態のプラズマディスプレイ装置の全体構成は、実施の形態1の図3と同様であるため、説明は省略する。
【0067】
図11は、本実施の形態におけるY電極駆動回路10YとX電極駆動回路10Xの構成例を示した図である。以下では、本実施の形態のプラズマディスプレイ装置と、実施の形態2のプラズマディスプレイ装置との相違点について説明する。図11において、実施の形態2の図9の構成との相違点は、Y電極駆動回路10Yにおいて、Y奇数電極駆動回路11YのVsy2側にも、クランプ回路13Yと同様のクランプ回路15Yを有し、また、X電極駆動回路10Xにおいて、X奇数電極駆動回路11XのVsx2側にも、クランプ回路13Xと同様のクランプ回路15Xを有している点である。
【0068】
クランプ回路15Yは、Y電極駆動回路10Yからの出力に対して補正電圧パルスを印加する回路であり、クランプ回路13Yと同様に、例えばMOSFETやIGBTで構成されたスイッチ6yと電源回路12yとを含んで構成される。電源回路12yは、例えばスイッチング電源で構成され、駆動制御回路50内の駆動信号発生回路51からスイッチングパルスによる電圧制御信号Pynにて補正電圧が可変できる。具体的な構成の例は、実施の形態1の図7、図8で説明したものと同様である。
【0069】
また、クランプ回路15Xは、X電極駆動回路10Xからの出力に対して補正電圧パルスを印加する回路であり、クランプ回路13Xと同様に、例えばMOSFETやIGBTで構成されたスイッチ6xと電源回路12xとを含んで構成される。電源回路12xは、例えばスイッチング電源で構成され、駆動制御回路50内の駆動信号発生回路51からスイッチングパルスによる電圧制御信号Pxnにて補正電圧が可変できる。具体的な構成の例は、実施の形態1の図7、図8で説明したものと同様である。
【0070】
図12は、図11における表示電極(Y電極31Y、X電極31X)の駆動波形と各スイッチの動作タイミングの例を示す図である。実施の形態1の図4と同様に、図12において、(a)は、Y電極31Yの駆動電圧出力波形を、(b)は、X電極31Xの駆動電圧出力波形を、(c)は、Y電極駆動回路10Y内の各スイッチの動作タイミングを、(d)は、X電極駆動回路10X内の各スイッチの動作タイミングを示している。
【0071】
実施の形態1と同様に、図12(c)のt3〜t4の期間において、Y電極駆動回路10Yでは、クランプ回路13Yのスイッチ5yをTa1の時間幅でオンさせることにより、図12(a)のように、電圧Vsyに対して正電圧方向に電圧Vuy1を付加する。また、このとき、X電極駆動回路10Xでは、図12(d)のようにクランプ回路15Xのスイッチ6xをTa1の時間幅でオンさせることにより、図12(b)のように、電圧Vsxに対して負電圧方向に電圧Vux1を付加する。
【0072】
同様に、t7〜t8の期間において、クランプ回路15Yのスイッチ6yをTa2の時間幅でオンさせることにより、電圧Vsyに対して負電圧方向に電圧Vuy2を付加する。また、このとき、クランプ回路13Xのスイッチ5xをTa2の時間幅でオンさせることにより、電圧Vsxに対して正電圧方向に電圧Vux2を付加する。
【0073】
また、同様に、t11〜t12の期間において、クランプ回路13Yのスイッチ5yをTb1の時間幅でオンさせることにより、電圧Vsyに対して正電圧方向に電圧Vuy3を付加する。また、このとき、クランプ回路15Xのスイッチ6xをTb1の時間幅でオンさせることにより、電圧Vsxに対して負電圧方向に電圧Vux3を付加する。
【0074】
また、同様に、t15〜t16の期間において、クランプ回路15Yのスイッチ6yをTb2の時間幅でオンさせることにより、電圧Vsyに対して負電圧方向に電圧Vuy4を付加する。また、このとき、クランプ回路13Xのスイッチ5xをTb2の時間幅でオンさせることにより、電圧Vsxに対して正電圧方向に電圧Vux4を付加する。
【0075】
また、同様に、t19〜t20の期間において、クランプ回路13Yのスイッチ5yをTc1の時間幅でオンさせることにより、電圧Vsyに対して正電圧方向に電圧Vuy5を付加する。また、このとき、クランプ回路15Xのスイッチ6xをTc1の時間幅でオンさせることにより、電圧Vsxに対して負電圧方向に電圧Vux5を付加する。
【0076】
以上に述べたように、本実施の形態のプラズマディスプレイ装置によれば、Y電極31YとX電極31Xとの間の電位差を効率的に大きくすることができ、維持放電電圧を下げ、放電のさらなる安定化と高効率化を図ることができる。
【0077】
なお、本実施の形態では、パネルベース電位をGNDレベルとして、維持放電パルスのVsyおよびVsxを正方向電圧とした構成としているが、VsyおよびVsxが負方向電圧の構成であっても同様である。すなわち、維持放電パルスの印加方向に重畳的に補正電圧パルスを付加する替わりに、維持放電パルスが印加される表示電極とは反対の表示電極において、維持放電パルスの印加方向とは逆方向に補正電圧パルスを付加することにより、Y電極31YとX電極31Xとの間の電位差を大きくすることができる。
【0078】
<実施の形態4>
前述の実施の形態1〜3のプラズマディスプレイ装置では、Y電極駆動回路10YおよびX電極駆動回路10Xの双方において、それぞれY電極31YおよびX電極31Xに維持放電パルスを印加してサステイン駆動を行う構成であったが、本発明の実施の形態4のプラズマディスプレイ装置では、片側駆動の構成としてY電極駆動回路10Yにおいてのみサステイン駆動を行い、X電極駆動回路10Xでは補正電圧パルスの印加のみ行う構成であることを特徴とする。
【0079】
図13は、本実施の形態におけるY電極駆動回路10YとX電極駆動回路10Xの構成例を示した図である。以下では、本実施の形態のプラズマディスプレイ装置と、実施の形態3のプラズマディスプレイ装置との相違点について説明する。図13において、実施の形態3の図11の構成との相違点は、X電極駆動回路10Xは、X電極31Xをサステイン駆動するX奇数電極駆動回路11X(およびX偶数電極駆動回路12X)と、電力回収回路14Xを有さず、クランプ回路13X、15Xのみを有する構成となっている点である。
【0080】
図14は、図13における表示電極(Y電極31Y、X電極31X)の駆動波形と各スイッチの動作タイミングの例を示す図である。実施の形態1の図4と同様に、図14において、(a)は、Y電極31Yの駆動電圧出力波形を、(b)は、X電極31Xの駆動電圧出力波形を、(c)は、Y電極駆動回路10Y内の各スイッチの動作タイミングを、(d)は、X電極駆動回路10X内の各スイッチの動作タイミングを示している。
【0081】
図14(a)のY電極31Yの駆動電圧出力波形および図14(c)のY電極駆動回路10Y内の各スイッチの動作タイミングについては、実施の形態3の図12(a)および図12(c)と同様であるため説明を省略する。
【0082】
X電極駆動回路10Xの動作については、サステイン駆動を行わないことから、補正電圧パルスの印加のみとなる。t3〜t4の期間において負電圧方向に電圧Vux1を付加し、t7〜t8の期間において正電圧方向にVux2を付加し、t11〜t12の期間において負電圧方向にVux3を付加し、t15〜t16の期間において正電圧方向にVux4を付加し、t19〜t20の期間において負電圧方向にVux5を付加している。
【0083】
以上に述べたように、本実施の形態のプラズマディスプレイ装置によれば、Y電極駆動回路10Yのみの片側駆動の構成においても、サステイン駆動を行わないX電極31Xに対して補正電圧パルスを印加することによって、Y電極31YとX電極31Xとの間の電位差を効率的に大きくすることができ、維持放電電圧を下げ、放電のさらなる安定化と高効率化を図ることができる。
【0084】
なお、本実施の形態においては、Y電極駆動回路10Y側にクランプ回路13Y、15Yを有し、Y電極駆動回路10Y側でも補正電圧パルスを印加する構成をとっているが、補正電圧パルスの印加をX電極駆動回路10X側のみで行い、Y電極駆動回路10Yにはクランプ回路13Y、15Yを有しない構成とすることも可能である。また、X電極駆動回路10Xにおいては、クランプ回路13Xと15Xの2つを有する構成としているが、どちらか一方のみの構成とし、正電圧方向もしくは負電圧方向のみの補正とすることも当然可能である。
【0085】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0086】
例えば、前述の実施の形態1〜4のプラズマディスプレイ装置は、クランプ回路13Y、15Yおよび13X、15Xを、Y電極駆動回路10YおよびX電極駆動回路10Xで用いる技術であり、維持放電パルスに対して、Y電極31YとX電極31Xとの間の電位差が維持放電電圧よりも大きくなるように補正電圧を印加することができればよく、これが実現される限り、その配置構成は特に限定されず、片側駆動の構成の場合も含めて、種々のパターンで構成することが可能である。
【0087】
また、実際の適用にあたっては、実施の形態1〜4のようにパネルベース電位をGNDレベルとしてサステイン駆動の電圧をVsy1およびVsy2(Vsx1およびVsx2)とする構成に限らず、例えば、+V、−Vの2種類の電源で駆動する電極駆動回路にも同様に適用できる。また、実施の形態1〜4のようにALIS方式をとるプラズマディスプレイ装置に限らず、ALIS方式をとらないプラズマディスプレイ装置についても当然適用可能である。
【0088】
また、上述したような補正電圧パルスによる補正は、サステイン期間以外のその他の期間に適用することも可能であり、例えば、アドレス期間などの放電に係る電荷確保にも適用可能なことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、PDP(Plasma Display Panel:プラズマディスプレイパネル)の駆動回路および駆動方法に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態1であるプラズマディスプレイ装置における、Y電極駆動回路とX電極駆動回路の構成例を示した図である。
【図2】本発明の実施の形態1における、駆動波形および放電電流(発光電流)の概要を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1であるプラズマディスプレイ装置の全体構成の概略を示す図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の実施の形態1における、表示電極の駆動波形と各スイッチの動作タイミングの例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における、Y電極駆動回路の出力に対する放電電流の波形の例を示す図である。
【図6】(a)〜(c)は、本発明の実施の形態1における、補正電圧と放電を維持する最低限の電圧(放電維持電圧)との関係の例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1における、クランプ回路の内部で補正電圧を生成する場合のクランプ回路の構成例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1における、クランプ回路の内部で補正電圧を生成する場合のクランプ回路の構成例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2における、Y電極駆動回路とX電極駆動回路の構成例を示した図である。
【図10】(a)〜(d)は、本発明の実施の形態2における、表示電極の駆動波形と各スイッチの動作タイミングの例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態3における、Y電極駆動回路とX電極駆動回路の構成例を示した図である。
【図12】(a)〜(d)は、本発明の実施の形態3における、表示電極の駆動波形と各スイッチの動作タイミングの例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態4における、Y電極駆動回路とX電極駆動回路の構成例を示した図である。
【図14】(a)〜(d)は、本発明の実施の形態4における、表示電極の駆動波形と各スイッチの動作タイミングの例を示す図である。
【図15】従来のプラズマディスプレイ装置における、駆動波形および放電電流(発光電流)の概要を示す図である。
【図16】従来のプラズマディスプレイ装置における、維持放電パルスの例を示す図である。
【図17】プラズマディスプレイ装置における放電駆動マージンの概要を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
10Y…Y電極駆動回路、10X…X電極駆動回路、11Y…Y奇数電極駆動回路(Y)、11X…X奇数電極駆動回路(X)、12Y…Y偶数電極駆動回路(Y)、12X…X偶数電極駆動回路(X)、20…スキャン駆動回路、21…スイッチ、30…プラズマディスプレイパネル(PDP)、31Y…Y電極、31X…X電極、32…アドレス電極、40…アドレス回路、50…駆動制御回路、60…画像信号処理回路、
13Y…クランプ回路、13X…クランプ回路、14Y…電力回収回路、14X…電力回収回路、15Y…クランプ回路、15X…クランプ回路、40A…アドレス電極駆動回路、41…スイッチ、42…アドレスパルス生成回路、
1y…スイッチ、2y…スイッチ、3y…スイッチ、4y…スイッチ、5y…スイッチ、6y…スイッチ、7y…電源回路、8y…ダイオード、9y…ダイオード、10y…コイル、11y…コイル、12y…電源回路、
1x…スイッチ、2x…スイッチ、3x…スイッチ、4x…スイッチ、5x…スイッチ、6x…スイッチ、7x…電源回路、8x…ダイオード、9x…ダイオード、10x…コイル、11x…コイル、12x…電源回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y電極とX電極からなる表示電極に対する維持放電パルスの印加によって、点灯すべきセルの輝度に応じた回数の維持放電を生じさせることにより画像を表示するプラズマディスプレイパネルの駆動回路であって、
前記Y電極を駆動する駆動回路と前記X電極を駆動する駆動回路の少なくともいずれか一方に、前記表示電極に対して前記維持放電パルスを印加するサステイン駆動回路を有し、
前記Y電極を駆動する駆動回路と前記X電極を駆動する駆動回路の少なくともいずれか一方に、該駆動回路からの出力に対して補正電圧パルスを印加するクランプ回路を有し、
サステイン期間中における前記サステイン駆動回路による前記表示電極に対する前記維持放電パルスの印加の際に、前記クランプ回路により該駆動回路の出力に対して前記補正電圧パルスを印加することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動回路において、
サステイン期間中における前記サステイン駆動回路による前記表示電極に対する前記維持放電パルスの印加の際に、前記Y電極と前記X電極との間の電位差が維持放電電圧より大きくなるように、前記クランプ回路により該駆動回路の出力に対して前記補正電圧パルスを印加することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動回路。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動回路において、
前記クランプ回路は、前記補正電圧パルスを、前記維持放電パルスに対して重畳的に付加するものであることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動回路。
【請求項4】
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動回路において、
前記クランプ回路は、前記補正電圧パルスを、前記維持放電パルスが印加される前記表示電極とは反対の前記表示電極に対して該維持放電パルスの印加方向とは逆方向に付加するものであることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動回路。
【請求項5】
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動回路において、
前記サステイン駆動回路によって前記表示電極に対して前記維持放電パルスが印加された後に、前記クランプ回路によって前記Y電極と前記X電極との間の電位差が維持放電電圧より大きくなるように前記補正電圧パルスを印加し、その後、維持放電電流が流れる前に前記補正電圧パルスの印加を遮断することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動回路。
【請求項6】
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動回路において、
前記クランプ回路は、サステイン期間中における前記維持放電パルスの印加の周期に合わせて、前記補正電圧パルスを印加するタイミング、印加する時間幅、および印加する電圧が段階的に可変であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動回路。
【請求項7】
Y電極とX電極からなる表示電極に対する維持放電パルスの印加によって、点灯すべきセルの輝度に応じた回数の維持放電を生じさせることにより画像を表示するプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、
サステイン期間中における前記表示電極に対する前記維持放電パルスの印加の際に、前記表示電極に補正電圧パルスを印加することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項8】
請求項7に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法において、
サステイン期間中における前記表示電極に対する前記維持放電パルスの印加の際に、前記Y電極と前記X電極との間の電位差が維持放電電圧より大きくなるように、前記表示電極に前記補正電圧パルスを印加することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項9】
請求項7に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法において、
前記補正電圧パルスを、前記維持放電パルスに対して重畳的に付加することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項10】
請求項7に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法において、
前記補正電圧パルスを、前記維持放電パルスが印加される前記表示電極とは反対の前記表示電極に対して該維持放電パルスの印加方向とは逆方向に付加することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項11】
請求項7に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法において、
前記表示電極に対して前記維持放電パルスが印加された後に、前記Y電極と前記X電極との間の電位差が維持放電電圧より大きくなるように前記補正電圧パルスを印加し、その後、維持放電電流が流れる前に前記補正電圧パルスの印加を遮断することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項12】
請求項7に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法において、
サステイン期間中における前記維持放電パルスの印加の周期に合わせて、前記補正電圧パルスを印加するタイミング、印加する時間幅、および印加する電圧を段階的に変更することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−186700(P2009−186700A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25880(P2008−25880)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】