説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】映り込みの改善と、映像光の鮮鋭度およびコントラストの向上とを両立することができるプラズマディスプレイパネルを提供すること。
【解決手段】プラズマディスプレイパネル10は、互いに離隔して配置される前面板200および背面板100と、前面板200と背面板100との間に形成される放電空間を区画する隔壁110と、隔壁110により区画された放電セル120内に形成される蛍光体層130と、前面板200および背面板100にそれぞれ配列され、放電セル120内で放電を発生させる電極と、前面板200の観察者側に配置される前面フィルタ300とを備えるプラズマディスプレイパネル10において、前面フィルタ300は、観察者側の表面および前面板200側の表面に微細な凹凸をそれぞれ有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルに係り、特に、前面フィルタを配置したプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ(plasma display)やCRTディスプレイ(cathode-ray tube display)などの自発光型ディスプレイは、視野角の依存性が無く自然な映像が得られることから広く使用されている。特にプラズマディスプレイは、薄型であり、かつ大画面を構成するのに最適であることから、急速に普及が進んでいる。
【0003】
ところが、プラズマディスプレイを含む各種ディスプレイ装置では、表示映像の視認性を低下させる映り込みが問題とされることが多い。ディスプレイ装置の映り込みは、室内の蛍光灯の光や観察者などの像が、表示部よりも映像を観察する者が位置する側(以下「観察者側」という)にある複数のフラットな平面に外光として入射し、その平面で正反射することに起因する。
【0004】
そこで、映り込みの防止作用(防眩作用)を有するフィルタが、従来提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載のフィルタは、微粒子の凝集部を点在させて最表面に凹凸形状を形成している。このフィルタをディスプレイ装置の観察者側に配置することにより、外光をフィルタの最表面において拡散反射させることができ、映り込みを改善することができる。以下、防眩作用を有し、ディスプレイ装置の観察者側に配置されるフィルタを、「前面フィルタ」という。
【特許文献1】特開2005−316450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の前面フィルタをプラズマディスプレイパネルに用いた場合、液晶ディスプレイに比べて、本来の映像光が不鮮明になる度合いが強いという問題がある。なぜなら、プラズマディスプレイパネルは、液晶ディスプレイと比較して、映像光を出力する背面板から前面フィルタ最表面までの距離が長く、映像光が前面フィルタの最表面を透過するときの拡散による鮮鋭度の低下の度合いがより大きくなるためである。
【0006】
また、プラズマディスプレイパネルの内部に進入した外光が前面板表面などで正反射することにより発生する映り込みについては、抑制が難しいという問題がある。なぜなら、前面フィルタの最表面の粗さの度合いに対する屈折光の感度は反射光のそれに比べて弱く、内部反射による映り込みを改善するために最表面を粗くしようとすると、表面拡散が増大して映像光のコントラストが低下するためである。
【0007】
したがって、特許文献1記載の前面フィルタを用いたプラズマディスプレイパネルでは、映り込みの改善と、映像光の鮮鋭度およびコントラストの向上とを両立することが難しい。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、映り込みの改善と、映像光の鮮鋭度およびコントラストの向上とを両立することができるプラズマディスプレイパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプラズマディスプレイパネルは、互いに離隔して配置される前面板および背面板と、前記前面板と前記背面板との間に形成される放電空間を区画する隔壁と、前記隔壁により区画された放電セル内に形成される蛍光体層と、前記前面板および前記背面板にそれぞれ配列され、前記放電セル内で放電を発生させる電極と、前記前面板の観察者側に配置される前面フィルタと、を備えるプラズマディスプレイパネルにおいて、前記前面フィルタは、観察者側の表面および前記前面板側の表面に微細な凹凸をそれぞれ有する構成を採る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パネル内部に進入した外光に対し前面フィルタの表面のみならず裏面でも拡散作用を与えることができるため、前面フィルタの表面の粗さを抑えて、映り込みの改善を図ることができる。しかも、前面フィルタにおける拡散の作用を、映像光よりもパネル内部に進入した外光に対してより強く与えることができる。これにより、映り込みの改善と、映像光の鮮鋭度およびコントラストの向上とを両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係るプラズマディスプレイパネルの概略部分断面図である。図1では、本実施の形態に係るプラズマディスプレイパネルの特徴的な構成を示しており、その他の部分については図示および説明を一部省略する。
【0013】
図1に示すように、プラズマディスプレイパネル10は、互いに離隔して配置された背面板100、前面板200、および前面フィルタ300を、この順に平行に重ねて構成される。背面板100と前面板200との間の空間には、プラズマ放電を発生させる放電空間が形成されている。放電空間には、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、キセノン(Xe)、アルゴン(Ar)などを混合した所定の放電ガスが封入されている。前面板200と前面フィルタ300との間の空間は、空気層となっている。
【0014】
背面板100には、絶縁体層で覆われたデータ電極(図示せず)と、データ電極と平行に配置されたストライプ状の複数の隔壁110とが形成されている。上記した放電空間は、隔壁110により複数の区画に仕切られており、単位発光領域となる複数の放電セル120を形成している。3つの隣り合う放電セル120の内壁には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各蛍光体が放電セル毎に色分け塗布され、蛍光体層130が形成されている。
【0015】
前面板200には、電極、誘電体層、および保護膜などの、プラズマディスプレイパネルとしての機能を実現するための各種構成要素(図示せず)がそれぞれ適切な位置に形成されている。例えば、前面板200には、図示しないが、走査電極と維持電極とで対をなすストライプ状の表示電極が複数形成され、表示電極を覆うように誘電体層が形成され、更に誘電体層上に保護層が形成されている。誘電体層は、例えば、低融点ガラスから成り、保護層は、例えば、酸化マグネシウム(MgO)から成る。
【0016】
前面フィルタ300は、例えば、ガラスから成る透明板310を基材とし、透明板310に、電磁波遮断フィルタ、赤外線カットフィルタ、および色調整フィルタ(いずれも図示せず)を積層して構成される。前面フィルタ300は、更に、透明板310の観察者側に、防眩層として、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂で構成された樹脂層320を備えて構成される。樹脂層320は、接着層330を介して透明板310に接着されている。
【0017】
前面フィルタ300は、観察者側の表面、つまり樹脂層320の空気界面として、微細な凹凸を構成している表面凹凸面340を有する。また、前面フィルタ300は、前面側200の表面(以下「裏面」という)、つまり透明板310の空気界面として、微細な凹凸を構成している裏面凹凸面350を有する。
【0018】
裏面凹凸面350の凹凸構造は、例えば、透明板310に凹凸加工を施すことにより実現される。加工法としては、例えば、フロスト加工、エンボス加工、またはサンドブラスト加工が好ましい。なお、裏面凹凸面350の凹凸構造は、例えば、透明板310の前面板200側をフラットとし、屈折率がほぼ同一の物質から成り凹凸構造を有する防眩樹脂フィルムを透明板310のフラット面に接着することにより実現してもよい。ただし、透明板310に凹凸加工を施した場合には、このような防眩樹脂フィルムの配置が不要となり、最小の構成で前面フィルタ300を構成することができるというメリットがある。
【0019】
このように構成されたプラズマディスプレイパネル10において、電極間に電圧が印加されると、放電セル120に放電が発生し、例えば、混合ガス中のヘリウム原子が励起されて紫外線を発生する。そして、この紫外線によって蛍光体層130が励起され、可視光が発生する。
【0020】
映り込みの原因となる外光(以下単に「外光」という)の一部は、表面凹凸面340で反射する。
【0021】
図2は、表面凹凸面340における反射光の様子を模式的に示す図である。
【0022】
図2に示すように、表面凹凸面340は微細な凹凸構造を有しているため、外光400の反射光410は拡散される。これにより、表面凹凸面340での反射は乱反射となり、その結果、映り込みの第一の原因である前面フィルタ300の観察者側表面における正反射が低減し、映り込みは低減する。すなわち、表面凹凸面340での反射による映り込みの程度は、表面凹凸面340が反射光に対して作用する反射による拡散(以下「反射拡散」という)の程度によって決まる。
【0023】
一方、表面凹凸面340で反射せずにパネル内部に進入した外光(以下「進入光」という)の大部分は、透明板310の前面板200側の裏面凹凸面350で反射する。進入光の大部分が裏面凹凸面350で反射するのは、透明板310が空気層に接していることにより、裏面凹凸面350における屈折率差が大きくなっているためである。
【0024】
映り込み像は、表面凹凸面340における反射光と裏面凹凸面350における反射光との合成で構成される。映り込みを低減するには、それぞれの反射光が十分に拡散していなければならない。
【0025】
従来は透明板310の前面板200側の空気界面はフラットであり、このフラットな面の正反射の影響を少なくするために、映り込みの元となる進入光が上記したフラットな面に到達するまえに、大きく散乱させておく必要があった。ところが、表面凹凸面340で大きな拡散作用を得ようとすると、面の粗さの度合いに対する屈折光の感度は反射光のそれに比べて弱いことから、表面凹凸面340の粗さを大きくしなければならない。表面凹凸面340の表面拡散が増大すると、映像光のコントラスト低下も大きくなるため、好ましくない。
【0026】
そこで、本実施の形態に係るプラズマディスプレイパネル10では、上記したように、前面フィルタ300に裏面凹凸面350を設けている。これにより、表面凹凸面340が進入光に対して作用する拡散(以下「屈折拡散」という)の程度を制限し、その代わりに、裏面凹凸面350における反射拡散を利用する。これにより、前面フィルタ300の表面の粗さを抑えて、映り込みの改善を図ることができる。
【0027】
図3は、裏面凹凸面350で反射する進入光の様子を模式的に示す図である。なお、ここでは、樹脂層320、接着層330、および透明板310の屈折率はほぼ同一であり、これらの各界面における進入光の反射および屈折は無視できるものとする。
【0028】
図3に示すように、外光400のうちパネル内部に進入した進入光420は、表面凹凸面340で拡散しながら屈折作用を受けた後、裏面凹凸面350で拡散しながら反射作用を受け、その反射光430は観察者側に戻り、表面凹凸面340で再び拡散しながら屈折作用を受ける。これにより、裏面凹凸面350での反射も乱反射となり、その結果、映り込みの第二の原因である前面フィルタ300の裏面における正反射が低減し、映り込みが低減する。すなわち、裏面凹凸面350での反射による映り込みの程度は、裏面凹凸面350が入射光に対して作用する拡散の程度によって決まる。
【0029】
なお、表示部からの映像光も表面凹凸面340および裏面凹凸面350を透過し、両方の面において屈折作用を受ける。しかし、同じ凹凸面でも、屈折による拡散作用は反射による拡散作用に比べて弱いため、映像光の鮮鋭度の低下を抑えて、映り込みを改善することができる。
【0030】
但し、映像光の鮮鋭度は、表示部と拡散面との距離、つまり背面板100と表面凹凸面340との距離に影響される。したがって、この距離に応じて、前面フィルタ300を透過する映像光に作用する拡散の程度(以下「拡散条件」という)をコントロールする必要がある。
【0031】
以下、プラズマディスプレイパネル10における拡散条件のコントロールについて説明する。
【0032】
まず、拡散条件のコントロールの基準となる距離について説明する。
【0033】
図4は、拡散条件のコントロールの基準となる距離を説明するための図であり、図1に対応するものである。
【0034】
ここでは、図4に示すように、拡散条件のコントロールの基準となる距離Lを、プラズマディスプレイパネル10の表示部である蛍光体層130から、前面フィルタ300の表面凹凸面340までの距離と定義する。ただし、距離Lは、蛍光体層130から表面凹凸面340までの区間を構成する物質について、各物質が占める長さをそれぞれの物質の屈折率で割った値の積算値である(以下「空気換算距離」という)。例えば、屈折率1.5のガラスの1mmと、屈折率1.0の空気の1mmとを合わせたときの空気換算距離は、1/1.5+1/1=1.67と算出することができる。
【0035】
蛍光体からの映像光は、拡散しながら観察者側へ進み、観察者に観察される。映像光は、裏面凹凸面350および表面凹凸面340を透過するときに拡散作用を受けるため、観察者に観察される映像の鮮鋭度は、本来の映像に比べて劣化する。鮮鋭度の劣化は、空気換算距離Lが長いほど大きくなる。これは、光源と観察者の間に存在する拡散面のうち、光源からの光の透過領域を二次光源として取り扱うことができるが、通常、光源の光は四方八方に出射され二次光源の大きさは拡散面と光源との距離が長いほど大きくなり、また、二次光源の大きさが大きいほど光源の像の鮮鋭度は低下するためである。
【0036】
次に、観測者側で観測される映像光の鮮鋭度を維持するための拡散条件について説明する。
【0037】
ここで、観測者側で観測される映像光の鮮鋭度を表わす指標として、元の映像の鮮鋭度をどの程度再現できるかを示す評価関数であるMTF(modulation transfer function)を採用する。特に、映像光が前面フィルタ300を透過する際のMTFを、「透過MTF」と表記する。
【0038】
ディスプレイ装置の映像で再現すべき最も高い空間周波数は、表示素子のピッチに依存し、40インチ前後のプラズマディスプレイパネルでは約0.6lp/mm(ラインペア パー ミリメートル)である。また、映像光の鮮鋭度として許容される透過MTFの下限値は、0.7である。したがって、許容される映像光の鮮鋭度の最小値として、空間周波数0.6lp/mmにおいて、透過MTF=0.7を採用する。透過MTFが0.7以上の場合に、映像光の鮮鋭度が維持されているとみなすことができる。
【0039】
なお、例えば、42インチのプラズマディスプレイパネルの前面に、通常と同じ距離を離して0.6lp/mmにおいて透過MTF=0.7の前面フィルタを配置した場合、正面方向から観察すると問題は無いが、斜め方向から観察すると映像の鮮鋭度の低下が認識される。これは、観察する光路に沿って測ったときの前面フィルタから蛍光体層までの距離が、正面方向から観察する場合よりも、斜め方向から観察する場合のほうが大きくなり、その結果、斜め方向における見かけ上の透過MTFが0.7よりも小さくなるためである。したがって、本実施の形態では、前面フィルタ300の透過MTFを0.7としているが、観察者が映像を観察し得る斜め方向からの角度においても、透過MTF0.7以上を確保できることが望ましい。
【0040】
また、反射拡散の程度および屈折拡散の程度は凹凸の微細部分の傾斜角に比例することから、前面フィルタ300の拡散条件を示す特性値として、可視光を照射したときの全透過光に対する拡散透過光の割合を示すヘイズ値(haze factor)を採用する。前面フィルタ300全体のヘイズ値は、表面凹凸面340および裏面凹凸面350のそれぞれの屈折拡散の程度で決まる。
【0041】
図5は、観測者側で観測される映像光の鮮鋭度の許容最小値を定めたときの、空気換算距離Lと前面フィルタ300の拡散条件との関係を示す図である。
【0042】
図5において、横軸は図4で説明した空気換算距離Lをミリメートル(mm)単位で示し、縦軸は前面フィルタ300のヘイズ値をパーセント(%)単位で示している。また、四角で表されるポイント群510は、実験により得られた、空間周波数0.6lp/mmで透過MTF=0.7となる空気換算距離Lと前面フィルタのヘイズ値HZとの組み合わせをプロットしたものである。そして、三角で表されるポイント群520は、実験により得られた、空間周波数0.6lp/mmで透過MTF=0.95となる空気換算距離Lと前面フィルタのヘイズ値HZとの組み合わせをプロットしたものである。透過MTFは、値「1」に近ければ近いほど拡散の度合いが低く、映像光の先鋭度を高く維持できることを示す。
【0043】
前面フィルタ300のヘイズ値HZは、空気換算距離Lがゼロのときは無限大になる。また、前面フィルタ300の透過MTFは、ヘイズ値HZがゼロのときには空気換算距離Lが無限大でも低下しない。また、回帰曲線は、相関係数の二乗が0.7を超える場合に、十分に高い精度とみなすことができる。これらのことから、ヘイズ値HZを1/Lの多項式で表わすことができると仮定し、ポイント群510の回帰曲線を、相関係数の二乗が0.7を超える最も次数の低い多項式近似で求めると、次の式(1)となる。
【数1】

【0044】
式(1)を表したものが、曲線530である。すなわち、曲線530は、空間周波数0.6lp/mmで透過MTF=0.7となる拡散条件の等高線を表している。曲線530は、空気換算距離Lが短いほど高いヘイズ値を採り、空気換算距離Lの増加に伴って二次曲線的に減少する。したがって、空気換算距離Lが大きくなるような構造をとった場合に、透過MTFを0.7に維持して映像光の鮮鋭度を維持するためには、前面フィルタ300のヘイズ値を小さくする必要がある。
【0045】
また、同様に、ポイント群520の回帰曲線を求めると、次の式(2)で示される。
【数2】

【0046】
式(2)を表したものが、曲線540である。すなわち、曲線540は、空間周波数0.6lp/mmで透過MTF=0.95となる拡散条件の等高線を表している。
【0047】
曲線540は、曲線530と交差することなく、曲線530の左下側に位置している。また、例えば、ヘイズ値HZまたは空気換算距離Lの一方の値を固定して他方の値を減少させたときには、当然に、透過MTFは増加する。すなわち、図中において、曲線530よりも左側または下側は、透過MTFが0.7よりも高く、映像光の鮮鋭度が維持されているとみなすことができる領域である。また、曲線530より右側または上側は、透過MTFが0.7よりも低く、映像光の鮮鋭度が維持されていないとみなすことができる領域である。
【0048】
したがって、映像光の鮮鋭度が維持されるのは、前面フィルタ300のヘイズ値HZが次の式(3)を満足する場合である。
【数3】

【0049】
式(3)を満たすように前面フィルタ300を構成することで、映像光の鮮鋭度の低下を防ぐことができる。すなわち、式(3)は、映像光の鮮鋭度向上の観点から、表示部から表面凹凸面340までの空気換算距離Lに応じて前面フィルタ300のヘイズ値HZの最大値を規定するものである。前面フィルタ300のヘイズ値HZが式(3)により規定される最大値を超えると、映像光の鮮鋭度が低下し、ディスプレイとして好ましくない。
【0050】
なお、本実施の形態では、上記したように、映り込みの原因となる反射光の一部を裏面凹凸面350で拡散させることにより、その分だけ表面凹凸面340の粗さを抑えることを可能にしている。
【0051】
一方で、映り込みの原因となる反射光の一部を拡散させる他の手法として、裏面凹凸面350ではなく、前面フィルタ300の内部に透過光を拡散させる内部拡散層を設けることも考えられる。ところが、内部拡散層を用いるよりも、本実施の形態のように裏面凹凸面350を用いる方が、映像光の鮮鋭度の劣化を抑えることが可能である。以下、参考として、内部拡散層を用いた場合との違いについて説明する。
【0052】
図6は、内部拡散層を用いたプラズマディスプレイパネルの概略部分断面図であり、図1に対応するものである。図1と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0053】
図6に示すように、プラズマディスプレイパネル60の前面フィルタ700は、例えば、前面板200側の空気界面750を平面とする透明板710に、樹脂層320と内部拡散層730から成る樹脂フィルムを、接着層330で接着して構成されている。内部拡散層730は、透過光に対し拡散作用を与える。
【0054】
図7は、プラズマディスプレイパネル60の表面凹凸面340における反射光の様子を模式的に示す図である。
【0055】
図7に示すように、表面凹凸面340において、外光400の反射光410が拡散され、その結果映り込みが低減することは、既に説明した通りである。一方、パネル内部に進入した進入光の大部分は、透明板710の前面板200側の空気界面750で反射する。
【0056】
図8は、空気界面750で反射する進入光の様子を模式的に示す図である。
【0057】
図8に示すように、外光400のうちパネル内部に進入した進入光420は、空気界面750で反射する前に、表面凹凸面340で屈折し、内部拡散層730で屈折作用を受けながら拡散作用を受ける。進入光420は、更に、空気界面750で反射し、その反射光430も、内部拡散層730で拡散作用を受け、表面凹凸面340で屈折する。この結果、観察者側から見たとき、反射光430は拡散して反射しているように見え、映り込みは低減する。
【0058】
但し、プラズマディスプレイパネル60においても、表示部からの映像光は、内部拡散層730における屈折作用および拡散作用によってその鮮鋭度が低下する。しかも、屈折光の感度が反射光の感度に比べて弱いことから、プラズマディスプレイパネル60で本実施の形態のプラズマディスプレイパネル10と同等の映り込み低減効果を得るためには、内部拡散層730の屈折拡散の程度を、裏面凹凸面350の屈折拡散の程度よりも高くしなければならない。すなわち、裏面凹凸面350で必要な偏角を与えても、映像光にはその約1/4の偏角しか作用しないのに対し、内部拡散層730で必要な偏角を与えた場合には、映像光にも同じ偏角が作用してしまう。また、内部拡散層730を用いた場合、裏面凹凸面350を用いた場合よりも、拡散面の表示部からの距離がより長くなる。したがって、プラズマディスプレイパネル60では、本実施の形態のプラズマディスプレイパネル10の場合よりも、鮮鋭度の低下の度合いが高くなる。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態に係るプラズマディスプレイパネル10によれば、前面フィルタ300は、観察者側の表面および裏面に微細な凹凸をそれぞれ有する。これにより、パネル内部に進入した外光を、表面での反射においてのみならず、裏面での反射においても拡散させることができるため、前面フィルタ300の表面の粗さを抑えて、映り込みを抑制することができる。しかも、前面フィルタ300の表面および裏面における拡散の作用を、映像光よりも外光に対してより強く与えることができる。すなわち、映像光の鮮鋭度およびコントラストの低下を抑えた状態で映り込みを抑制することができ、明るい場所にプラズマディスプレイパネル10を設置する場合でも、映り込みを気にすることなく鮮鋭度の高い映像を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るプラズマディスプレイパネルは、映り込みの改善と、映像光の鮮鋭度およびコントラストの向上とを両立することができるプラズマディスプレイパネルとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施の形態に係るプラズマディスプレイパネルの概略部分断面図
【図2】本実施の形態における表面凹凸面における反射光の様子を模式的に示す図
【図3】本実施の形態における裏面凹凸面で反射する進入光の様子を模式的に示す図
【図4】本実施の形態における拡散条件のコントロールの基準となる距離を説明するための図
【図5】本実施の形態における観測者側で観測される映像光の鮮鋭度の許容最小値を定めたときの空気換算距離と前面フィルタの拡散条件との関係を示す図
【図6】内部拡散層を用いたプラズマディスプレイパネルの概略部分断面図
【図7】内部拡散層を用いたプラズマディスプレイパネルの表面凹凸面における反射光の様子を模式的に示す図
【図8】内部拡散層を用いたプラズマディスプレイパネルの空気界面で反射する進入光の様子を模式的に示す図
【符号の説明】
【0062】
10 プラズマディスプレイパネル
100 背面板
110 隔壁
120 放電セル
130 蛍光体層
200 前面板
300 前面フィルタ
310 透明板
320 樹脂層
330 接着層
340 表面凹凸面
350 裏面凹凸面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離隔して配置される前面板および背面板と、
前記前面板と前記背面板との間に形成される放電空間を区画する隔壁と、
前記隔壁により区画された放電セル内に形成される蛍光体層と、
前記前面板および前記背面板にそれぞれ配列され、前記放電セル内で放電を発生させる電極と、
前記前面板の観察者側に配置される前面フィルタと、
を備えるプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記前面フィルタは、
観察者側の表面および前記前面板側の表面に微細な凹凸をそれぞれ有する、
プラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記前面フィルタは、
最も観察者側および最も前面板側のいずれか一方が樹脂層で形成され、他方が表面に微細な凹凸加工が施されたガラスの透明板で形成されている、
請求項1記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記前面フィルタは、
最も観察者側および最も前面板側の両方が樹脂層で形成されている、
請求項1記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記前面フィルタの前記前面板側は空気層に接している、
請求項1記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記前面フィルタは、
進入光に対し、前記観察者側の表面および前記前面板側の表面の2箇所で拡散作用を与える、
請求項1記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
前記前面フィルタは、
ヘイズ値をHZとし、前記蛍光体層から前記前面フィルタの観察者側の表面までの区間を構成する物質について各物質が占める長さをそれぞれの物質の屈折率で割った値の積算値である空気換算距離をLとするとき、次の式を満足する、
請求項1記載のプラズマディスプレイパネル。
【数1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−128808(P2009−128808A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306146(P2007−306146)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】