説明

プラズマディスプレイ用プリント配線基板およびその製造方法

【解決手段】
本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板は、折り曲げ位置に形成された折り曲げスリットを有する絶縁フィルムと、該絶縁フィルムの少なくとも一方の表面に形成された配線パターンと、該配線パターンの表面に端子部分が露出するように形成された難燃性ソルダーレジスト層とを有し、該折り曲げスリットは、該スリットの長手方向に分割されて形成され、該折り曲げスリットの裏面には難燃性ソルダーレジスト層が形成されており、そして、該分割されたスリット領域に形成されている裏面側難燃性ソルダーレジスト層の気泡あるいはピンホールが放出されてなることを特徴としている。
【効果】
本発明によれば、高い電圧を印加するプリント配線基板においても難燃性ソルダーレジスト層の剥離を防止できると共にピンホールの発生を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイを駆動させる電子部品を実装するためのプリント配線基板およびその製造方法に関する。さらに詳しくは本発明は、印加電圧の高いプラズマディスプレイを駆動させる電子部品を実装し、さらにこれを折り曲げて使用するためのプリント配線基板およびこのプリント配線基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ノート型パソコンなどの液晶パネルの額縁面積を小さくするために、液晶パネルを形成するガラス基板に接続される液晶駆動用ICチップなどを搭載した3層構成のフ
ィルムキャリア型の配線基板には折り曲げ用のスリットが形成されている。このようなフィルムキャリア型配線基板は、出力側端子が液晶パネルを構成するガラス基板の端子部分に接続され、スリット部で折り曲げられて、入力側端子は、液晶パネルの裏面側に位置するようにされている。このような折り曲げスリットを形成した三層構成のフィルムキャリア型配線基板は、通常は多数のフィルムキャリアが形成されたテープ状で製造され、供給されるが、絶縁層厚が薄いために折り曲げスリットを設けると、テープの剛性が低くなり、テープ搬送中などに発生する歪みによって配線パターンが破損しやすいという問題を有している。こうした破損を防止するために、例えば特許文献1(特開2001-351953号公報
)に記載されているように、一本のスリットを複数に分割して形成することにより、剛性の低下を防止するという方法が採用されている。
【0003】
ところで、上記のような液晶パネル(LCD)とは全く異なる表示装置として、近時、プ
ラズマディスプレイ(PDP)が着目されている。プラズマディスプレイは、液晶パネルと
は異なり、個々の素子が発光するために、液晶パネルよりも高い輝度を得ることができるので高品位の表示が可能であり、さらに大型化が可能であるので、大画面TVの表示装置などとしても使用することができる。
【0004】
しかしながら、プラズマディスプレイを駆動させるためには、液晶パネルよりも高い電圧を印加することが必要である。このようなプラズマディスプレイを駆動させるためのフィルムキャリア型配線基板は、LCD駆動用のフィルムキャリア型配線基板よりも大型であ
り、プラズマディスプレイを駆動させるためのフィルムキャリア型配線基板を折り曲げて使用する際のスリットとしては、例えば1mm幅で、50〜100mmの細長いスリットを形成しなくてはならない。このような長いスリットを絶縁フィルムに形成すると、このスリット形成部分でフィルムキャリアの剛性が低くなる、さらには、このような大型のスリットを打ち抜きプレスを用いて高速で精度よく量産することは極めて困難であるために、プラズマディスプレイを駆動させるためのフィルムキャリア型配線基板においても、LCD用
の配線基板と同様に、一本のスリットを複数に分割して打ち抜き形成している。
【0005】
このようなPDPを駆動させるためには、通常は60V以上の電圧をかける必要があり、LCD駆動用の半導体装置とは異なる態様が必要になる。特にPDP用のフィルムキャリアは、印加電圧が高いので、電圧印加に伴う発熱が問題になり、PDP用のフィルムキャリアを難燃
性にすることが望ましい。
【0006】
一般にフィルムキャリアは、ポリイミド等の絶縁フィルム上に銅等の導電性金属から形成された配線パターンを有しており、そして、この配線パターンは、端子部分を除いてソルダーレジスト層で被覆されている。このようなフィルムキャリアにおいてソルダーレジスト層が最も耐熱性が低く、フィルムキャリアを難燃性にするためには、このソルダーレジスト層を難燃性にする必要がある。
【0007】
使用するソルダーレジスト層を選択する際には、ポリイミド等の絶縁フィルムおよび配線パターンとの親和性がよく、例えば折り曲げスリットが形成されている場合には、可撓性のソルダーレジストインクが使用される。可撓性および配線パターンあるいは絶縁フィルムとの親和性などを有するソルダーレジストインクに関しては種々のものがあるが、液晶パネル(LCD)では、印加電圧がそれほど高くはないので、ソルダーレジスト層を難燃性にすることに関しては未だ充分な検討がなされていない。一般に樹脂を難燃性にするためには、リン化合物などを樹脂中に配合するが、このような樹脂に難燃性を賦与するためのリン化合物などの難燃化剤は、樹脂に微細分散するけれども樹脂とは一体化されないので、こうした難燃化剤がブリードした場合には難燃性ソルダーレジスト層が剥離しやすくなることがある。
【0008】
また、分割して形成された折り曲げスリット間では、絶縁フィルムの幅が狭く、この分割折り曲げスリット間において、スリットを打ち抜き時にスリット間の絶縁フィルム(例えばポリイミドフィルム)に歪が生じて、若干変形するために(スリット間では絶縁フィルムが平坦ではないために)、難燃性ソルダーレジストインクを円滑に塗布することができないことが多く、このようなスリット間に塗布した難燃性ソルダーレジストインクに塗布不良が生ずると、この部分に難燃性ソルダーレジスト層の浮き上がりが発生し、外観異常となる。
【0009】
ソルダーレジスト層は、配線パターンを保護するためのものであり、気泡が混入しないように細心の注意を払ってソルダーレジストインクを塗布するが、ソルダーレジストインク中の気泡をほぼ完全に除去したとしても、スキージーの接触角度、スクリーンの状態などによって非常に微細な気泡が混入することがあり、この混入した気泡が粒径の大きなピンホール(粒径1mm以上の気泡により生ずる)となり、分割折り曲げスリット内に形成さ
れてしまうと、微視的に見て、絶縁フィルムに対する密着強度の低下は著しい。このような分割スリット内では、気泡は偶発的に形成されるので、ソルダーレジストインク中の気泡を全部除去したとしても、塗布工程で微細な気泡が巻き込まれることがあり、ソルダーレジストインクの管理だけでは、こうした塗布の際の巻き込みによる気泡の混入および粒子径の大きなピンホールの発生を完全に防止することはできない。
【0010】
特に絶縁フィルムの裏面側に形成される裏面側難燃性ソルダーレジスト層の分割スリットに気泡が含有されると、この分割スリット内の難燃性ソルダーレジスト層、特にスリット内壁近傍の部分の裏面側難燃性ソルダーレジスト層にピンホールが発生し易いことがわかった。また、配線パターン形成面の分割スリット間の難燃性ソルダーレジスト層が特に浮き上がりが発生しやすい。このような分割スリット間の絶縁フィルム上から浮き上がりが発生する明確な理由は不明であるが、おそらく裏面側難燃性ソルダーレジスト層中に含有される難燃剤のブリードがこの部分に集中しやすく、しかも分割スリットの間の絶縁フィルムの幅は5mm以下と非常に狭いこと、および、スリットを分割してプレス打ち抜きにより形成する際に、ポリイミドなどの絶縁フィルムに歪が生じて分割スリット間の絶縁フィルムの表面が平滑でなくなることが多く、こうした部分への難燃性ソルダーレジストインクの親和性が低くなり易いこと、さらにはLCDの場合と対比すると、個々の分割スリットの面積が大きくなることから、密着不良あるいは塗布不良による難燃性ソルダーレジスト層の浮き上がりが、分割折り曲げスリット近傍、特にスリット間から始めるのであろうと考えられる。
【0011】
急速に需要が拡大しつつあるプラズマディスプレイにおいては、プラズマディスプレイを駆動させるための電子部品を実装するフィルムキャリア型配線基板に印加する印加電圧が高く、高印加電圧によって発生した熱の影響を受け易い難燃性ソルダーレジスト層における剥離を防止する方法の案出が急務である。
【特許文献1】特開2001-351953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、分割して打ち抜き形成された折り曲げスリットを有するプラズマディスプレイ用プリント配線基板であって、この分割された折り曲げスリットに塗設された裏面側難燃性ソルダーレジスト層にピンホールが発生しにくく、また剥離が生じにくいプラズマディスプレイ用プリント配線基板およびこのプラズマディスプレイ用プリント配線基板を製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板は、折り曲げ位置に形成された折り曲げスリットを有する絶縁フィルムと、該絶縁フィルムの少なくとも一方の表面に形成された配線パターンと、該配線パターンの表面に端子部分が露出するように形成された難燃性ソルダーレジスト層とを有し、該折り曲げスリットは、該スリットの長手方向に分割されて形成され、該折り曲げスリットの裏面には難燃性ソルダーレジスト層が形成されており、そして、該分割されたスリット領域に形成されている裏面側難燃性ソルダーレジスト層の気泡が放出されてなることを特徴としている。なお、本発明において、「気泡」とは、気泡および大型の気泡により形成されたピンホールを含む意味である。
【0014】
また、本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板の製造方法は、絶縁フィルムの折り曲げ位置に対応した位置に複数に分割された折り曲げスリットを形成し、該絶縁フィルムの表面に導電性金属層を配置し、該導電性金属層が配置されていない側である絶縁フィルム裏面の折り曲げスリット形成位置に裏面側難燃性ソルダーレジスト層を形成し、該導電性金属層の表面に感光性樹脂層を形成し、該感光性樹脂層を露光・現像して所望のパターンを形成し、該パターンをマスキング材として導電性金属層を選択的にエッチングして配線パターンを形成した後、該配線パターンの端子部分が露出するように難燃性ソルダーレジストインクを塗布して難燃性ソルダーレジスト層を形成してプラズマディスプレイ用のプリント配線基板を製造するに際して、該絶縁フィルム裏面の折り曲げスリット形成位置に裏面側難燃性ソルダーレジストインクを塗布する工程と該裏面側難燃性ソルダーレジストインクを硬化させて裏面側難燃性ソルダーレジスト層を形成する工程との間に、塗布された裏面側難燃性ソルダーレジストインク中に含有される気泡を放出させる工程を設けることを特徴としている。
【0015】
本発明者は、裏面側難燃性ソルダーレジスト層の分割折り曲げスリット間の裏面側難燃性ソルダーレジスト層の剥離現象に関して、その発生要因について検討を重ねた結果、分割折り曲げスリット内に充填される裏面用難燃性ソルダーレジスト層に極めて微細な気泡が含有される場合に、この部分で裏面側難燃性ソルダーレジスト層の剥離が高い確率で生ずるとの知見を得た。また、折り曲げスリットを分割して形成した場合には、この分割スリットの間で難燃性ソルダーレジスト層の浮き上がりが始まることが多いとの知見を得た。一般に、プリント配線基板に設けられるソルダーレジスト層は気泡が生じないように措置されているが、一般のソルダーレジスト層における気泡混入防止は、気泡の混入によって生ずる配線パターンの腐蝕の防止、マイグレーションの防止などのためであり、仮に気泡が混入したとしてもプリント配線基板の信頼性を根底から覆すほどの問題になることは極めて少ない。しかしながら、プラズマディスプレイ駆動用の電子部品を実装するためのプリント配線基板においては、印加電圧が高いことから電子部品が実装されている回路基板自体が発熱し易く、しかも折り曲げて使用する場合に、この熱が蓄積され易いプリント配線基板裏面側に配置されるソルダーレジスト層が難燃性であることが必要になり、さらにこの裏面側難燃性ソルダーレジスト層の剥離の開始点となり易い分割スリット内に生じた気泡やピンホールは完全に除去しなければならない。
【0016】
本発明では、この裏面に塗設されるソルダーレジスト層を難燃性にし、さらに気泡が混入しないように措置していることは勿論、仮に気泡が混入した場合であっても、絶縁フィルムの分割スリット形成位置に難燃性ソルダーレジストインクを塗布した後、直ちにソルダーレジストインクを硬化させるのではなく、ソルダーレジストインクが粘性を有している状態で一旦放置して、混入した気泡を放出させた後、ソルダーレジストインクを硬化させて裏面側難燃性ソルダーレジスト層を形成しているので、裏面側の分割スリット間の絶縁フィルム上からこの裏面側難燃性ソルダーレジスト層が剥離するのを有効に防止している。
【発明の効果】
【0017】
本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板には、このプリント配線基板を折り曲げるためのスリットが分割して形成されており、しかもこの折り曲げスリットには、絶縁フィルムの裏面側から裏面側難燃性ソルダーレジスト層が設けられており、そして、分割されたスリット内の裏面側難燃性ソルダーレジスト層からは気泡を放出する措置が施されており、この部分にはピンホールの発生量が少ない。この分割されたスリット内の難燃性ソルダーレジスト層の剥離は、塗設された難燃性ソルダーレジストインクを、硬化させる前に一旦放置して絶縁フィルムとの親和性を向上させた後に硬化させることにより有効に防止することができるし、さらに、プラズマディスプレイ用プリント配線基板を多条に形成する場合には、仮想境界線に対してパターンを左右対称にすることにより配線パターン面側のスリット間の難燃性ソルダーレジスト層の浮き上がりを有効に防止することができる。
【0018】
例えば上記のようにして形成された本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板は、UL94V規格でV=0の高い難燃性を示すが、長期間使用してもこの難燃性が低下することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板およびその製造方法について具体的に説明する。
図1は、本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板の例を示す底面図およびA-A断面図であり、図2は、本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板を製造す
る工程の例を示す工程図である。
【0020】
以下、本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板を、図2に示す工程図に沿って説明する。
本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板10は、図1に示すように、折り曲げスリット15a,15b,15c,15dが形成された絶縁フィルム11と、この絶縁フィルム11表
面に形成された配線パターン14と、この配線パターン12の表面に形成された難燃性ソルダーレジスト層18と、折り曲げスリット15a,15b,15c,15dの形成されている絶縁フィ
ルム11の裏面側に形成された部分の裏面側に形成された裏面側難燃性ソルダーレジスト層17とを有する。
【0021】
本発明で使用する絶縁フィルム11としては、ポリイミドフィルム、ポリイミドアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、フッ素樹脂フィルムおよび液晶ポリマーフィルム等を挙げることできる。すなわち、これらの絶縁フィルム11は、エッチングの際に使用されるエッチング液、あるいは、洗浄の際に使用されるアルカリ溶液などに侵食されることがない程度に耐酸・耐アルカリ性を有し、さらに電子部品を実装する際などの加熱によって大きく熱変形しない程度の耐熱性を有している。こうした特性を有する絶縁フィルム11としては、ポリイ
ミドフィルムが好ましい。
【0022】
このような絶縁フィルム11は、通常は5〜150μm、好ましくは5〜125μm、特に好ましくは25〜75μmの平均厚さを有している。
上記のような絶縁フィルム11に、パンチングにより、スプロケットホール13、デバイスホール14、折り曲げスリット15a,15b,15c,15d、位置合わせ用孔(図示なし)など
の必要な透孔を穿設する。
【0023】
プラズマディスプレイ用プリント配線基板は、例えばLCD用のプリント配線基板と比較
すると大型になり、従って、折り曲げ位置に形成するスリットの全長も50〜100mmにも及びため、このような長さのスリットを一回の打ち抜きプレスで形成すると、スリットの位置がずれ易い。このためプラズマディスプレイ用プリント配線基板に形成される折り曲げスリットは、図1に示すように、一本のスリットを複数に分割されている。図1において、付番15a,15bは、一本の折り曲げスリットを2分割したものであり、また、付番15c,15dは、他の折り曲げスリットを2分割したものである。従って、折り曲げスリット5a,15bあるいは折り曲げスリット15c,15dの間には、打ち抜かれていない絶縁フィルム11から
なるスリット間16a,16bが形成されている。なお、15aと15bとに分割された折り曲げスリ
ットあるいは15c,15dとに分割された折り曲げスリットのそれぞれの長さは、通常は50mm以下、好ましくは40mm以下であり、それぞれの折り曲げスリットの幅は、通常は0
.3〜5mm、好ましくは0.6〜3mm程度である。即ち、長さが50mmを超えるようなスリットは、打ちぬきプレスの精度の問題から分割される。なお、このように折り曲げスリット15a,15b,15c,15dを、分割して打ちぬきプレスにより形成することにより、折り曲げ
スリット15aと15bとの間に形成されるスリット間16a、および、折り曲げスリット15cと15dとの間に形成されるスリット間16bの幅は、通常は0.4〜5mm、好ましくは0.5〜3mm程度である。
【0024】
このように絶縁フィルム11に分割して折り曲げスリット15a,15b,15c,15d を形成した後、絶縁フィルム11の表面に導電性金属層25を形成する。本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板10には通常は60V以上の電圧が印加され、例えばLCD用のプリント配線基板に通常印加される電圧(例えば12V程度)と比較すると非常に高い電圧が
印加される。従って、本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板10において、配線パターン12を形成する導電性金属層25は、高電圧を印加した場合にできるだけ発熱量を抑えるように、電気伝導性のよい金属から形成されていることが望ましい。このような電気伝導性のよい金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などを挙げることができる。特に本発明では導電性金属として銅が好ましい。本発明においては、上記のような導電性金属は、絶縁フィルム11上に直接析出させた二層テープとすることもできる。この場合に、導電性金属箔に絶縁フィルムをキャスティング法により積層した二層テープや、絶縁フィルム上にニッケル、クロムなどの他の金属を蒸着させて基材金属層を形成した後、この基材金属層の表面に導電性金属を析出させることができる。また導電性金属は、導電性金属箔として絶縁フィルム11の表面に熱圧着することもできる。
【0025】
本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板の配線パターン12を銅で形成する場合には、導電性金属層は、絶縁フィルム11の表面に銅箔を配置することにより形成することができる。ここで使用することができる銅箔としては、電解銅箔、圧延銅箔があるが、本発明においては、いずれの銅箔を使用することも可能である。
【0026】
本発明において、上記のような導電性金属の厚さは、形成しようとする配線パターン12の線幅に対応して設置されるが、通常は2〜70μm、好ましくは6〜35μmの範囲内にある。なお、上記のような導電性金属層を形成する際に導電性金属箔を使用する場合
には、絶縁フィルム11とこの導電性金属層25とは接着剤層(図示なし)を介して積層することができるし、接着剤を用いずに絶縁フィルム11の表面を例えば溶解あるいは溶融させて貼着することもできる。
【0027】
上記のようにして絶縁フィルム11の表面に導電性金属層25を形成すると、絶縁フィルム11の裏面側から見ると、折り曲げスリット15a,15b,15c,15dの部分以外の部分では
、絶縁フィルム11により導電性金属層(あるいは配線パターン)25の裏面は被覆されているが、折り曲げスリット15a,15b,15c,15dの部分では導電性金属層が露出している。
【0028】
本発明では、折り曲げスリット15a,15b,15c,15dの部分に、絶縁フィルム11の裏面側
から難燃性のソルダーレジストインクを塗布し、この折り曲げスリット15a,15b,15c,15d
に露出している導電性金属層25を覆うように裏面側難燃性ソルダーレジスト層17を形成する。
【0029】
本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板10の製造に絶縁フィルム11の裏面側から塗布するソルダーレジストインクは、UL94V規格のV=0の難燃性を有する裏面側難燃性ソルダーレジスト層17を形成可能なものである。
【0030】
さらに、このプラズマディスプレイ用プリント配線基板10は、スリット部分で折り曲げて使用されることから、このスリット内に充填される裏面側難燃性ソルダーレジストインクを形成する樹脂は、折り曲げ使用に耐え得るような可撓性を有する樹脂であることが望ましく、図7に示されるような装置を用いて測定される耐折性が、30回往復以上、好ましくは50往復以上折り曲げても異常が認められない樹脂を使用することが望ましい。図7には、折り曲げスリットを有する絶縁フィルムの表面に配線パターンが形成され、折り曲げスリット部に裏面側難燃性ソルダーレジスト層を形成したプリント配線基板のスリット部にセンターにつかみ具の先端が来るようにプリント配線基板の上部を挟持し、このプリント配線板の下端部に200gの重りを加えて、折り曲げスリット部を90度左右に折り曲げることにより、裏面側難燃性ソルダーレジスト層の折り曲げ応力を加えて裏面側難燃性ソルダーレジスト層の耐折性を測定する装置が示されている。そして、本発明では、通常は左右に30往復以上折り曲げても、好ましくは50往復以上折り曲げても異常の発生しないに難燃性ソルダーレジスト層を形成可能な難燃性ソルダーレジストインクを使用することが望ましい。
【0031】
このような裏面から塗布される難燃性のソルダーレジストインクを構成する樹脂としては、上記のような特性を有する樹脂であれば特に限定されるものではないが、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂などを挙げることができる。なお、本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板の折り曲げスリット内に充填されるソルダーレジストインクは、UL94V規格の難燃性がV=0であるが、このようなソルダーレジストインクは、使用する樹脂がUL94V規格でV=0の難燃性を有する樹脂を用いて形成することができるが、ソルダーレジストインクを形成する樹脂自体がこのような優れた難燃性を有していることを必要とするものではなく、例えば後述するような難燃性成分あるいは難燃化剤などを配合して、ソルダーレジストインクの硬化体の難燃性がUL94V規格でV=0であればよい。このような裏面側難燃性ソルダーレジスト層17を形成する樹脂としては、本発明では特にポリイミドが好ましい。
【0032】
さらに、上記のような樹脂成分を含有する裏面側ソルダーレジストインクには、このソルダーレジストインクをUL94V規格のV=0の難燃性を付与するために、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムおよびモリブデン酸亜鉛よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の難燃性成分を含有させることが好ましい。このような難燃性成分を配合することにより、ソルダーレジストインクを構成する樹脂成分の種類に拘らず、絶縁フィルム11の裏
面側の折り曲げスリット15a,15b,15c,15d部分に形成されるソルダーレジスト層を難燃性
にすることができる。このような難燃性成分の配合量は、形成される裏面側難燃性ソルダーレジスト層17がUL94V規格のV=0の難燃性を示すようになる範囲内の量で適宜設定することができるが、このソルダーレジストインク中に含有される樹脂成分100重量部に対して、通常は5〜20重量部の範囲内にある。
【0033】
さらに、このソルダーレジストインク中には、リン酸エステルなどの難燃化剤が配合されていることが好ましい。
本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板において使用される上記のような裏面用のソルダーレジストインクは、上記のような樹脂成分、難燃性成分および難燃化剤が、溶媒に溶解もしくは分散されてなる。即ち、上記のような裏面用のソルダーレジストインクは、絶縁フィルム11に形成された折り曲げ用スリット15a,15b,15c,15d部分に、例
えばスクリーン印刷技術を利用して塗布されることから、スクリーンを透過可能な粘度であって、塗布されたソルダーレジストインクが硬化前に流れ出さない程度の粘度を有していることが必要であり、通常は上記のような樹脂成分と難燃性成分と難燃化剤を有機溶媒などに溶解もしくは分散させて、有機溶媒の量を調整することによりその粘度を制御可能に形成されている。さらに、このようなソルダーレストインクは、塗布される前にインク内に含有される空気、即ち気泡が除去されるように、例えば真空脱泡などにより脱泡処理を施して使用されるが、このような脱泡処理を円滑に行うことが難しくなることからも粘度調整がなされている。本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板10において、絶縁フィルム11の裏面側に塗布されるソルダーレジストインクの25℃における粘度は、通常は、500〜10000cpsの範囲内、好ましくは1000〜8000cpsの範囲内に調整されている。このように裏面側難燃性ソルダーレジストインクの粘度は、絶縁フィルム11の表面に形成された配線パターン14の表面に形成される難燃性ソルダーレジスト層18を形成するソルダーレジストインクよりも粘度が低く、このような粘度に調整されたソルダーレジストインクを使用することにより、折り曲げスリット15a,15b,15c,15dに充填される際に例えば図4に示すようにソルダーレジストインクの塗布方向の先端の
スリット壁面(絶縁フィルムの縁部)にソルダーレジストインクが塗布されない部分が形成されにくくなり、未塗布部分が気泡となって裏面側難燃性ソルダーレジスト層に残留することが少なくなる。さらに気泡が形成されてしまった場合でもこうした気泡が加熱硬化前に設けられる放置工程によって、ソルダーレジストインク塗布層から放出されやすくなる。また、スリット間16a、16bが、スリットの打ち抜き形成によって表面の平滑性が損なわれている場合においても、上記のような粘度を有するソルダーレジストインクを使用することにより、その表面形態に追随してソルダーレジストインクを塗布することができ、さらに、スリット間16a、16bに応力が残存していてもこうしたスリット間16a、16bに対して高い親和性を示し、内在する応力を吸収することができる。従って、このような粘度のソルダーレジストインクを使用することにより、気泡を含まない裏面側難燃性ソルダーレジスト層17を形成しやすくなると共に、スリット間16a、16bなどにおける絶縁フィルムとの親和性が高くなり、剥離しにくい裏面側難燃性ソルダーレジスト層17を形成することができる。
【0034】
本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板を製造するに際しては、導電性金属層を形成した後、絶縁フィルム11の裏面側から折り曲げスリット15a,15b,15c,15dの形
成部分に上記のようなソルダーレジストインクを塗布して、折り曲げスリット15a,15b,15c,15dに露出している導電性金属を被覆する。このソルダーレジストインクは、通常はス
クリーン印刷技術を利用して塗布されるが、折り曲げスリット15a,15b,15c,15dには絶縁
フィルム11が存在しないため、ソルダーレジストインクの塗布方向の先端部のスリット壁面には気泡となる空隙が形成されやすい。
【0035】
LCD駆動用の電子部品を搭載するプリント配線基板などにおいて、絶縁フィルム11に
スリットなどを形成した場合、このスリットには絶縁フィルム11の裏面側から樹脂を塗布して配線パターンを形成するエッチング工程で、導電性金属層が裏面側からエッチングされるのを防止するのが一般的で、絶縁フィルム11の裏面側から形成された樹脂層中に含有される気泡が問題視されることはほとんどない(即ち、樹脂層中に気泡を全くなくすることは生産技術上ほとんど不可能であり、粒径が1mm未満の気泡は問題にはならないが、粒径が1mm以上の気泡はピンホールとなり外観異常となる。)。しかしながらプラズ
マディスプレイ用プリント配線基板においては、印加電圧が高いためにプリント配線基板全体をUL94V規格のV=0の難燃性にする必要があり、このために裏面側難燃性ソルダーレジスト層には、通常は難燃化剤が配合される。この難燃化剤としては、上述のようにリン酸エステル系の化合物が使用されることが多いが、この難燃化剤は、裏面側難燃性ソルダーレジスト層を形成する樹脂成分には溶解せずに、樹脂成分に分散された状態で裏面側難燃性ソルダーレジスト層中に存在する。このような難燃化剤は、経時的に見てブリードしやすい成分であり、ピンホールが形成されて接着強度が低下した部分に難燃化剤がブリードすると、この部分の接着強度がさらに低下して剥離の原因となりやすい。
【0036】
本発明では、上記のようにして裏面側難燃性ソルダーレジストインクを塗布した後、この裏面側難燃性ソルダーレジストインクを硬化させる前に、この塗布されたソルダーレジストインク中に含有される気泡やピンホールを放出させる工程を設けている。
【0037】
この気泡やピンホールを放出させる工程は、裏面側難燃性ソルダーレジストインクを塗布した後、このソルダーレジストインク中に含有される樹脂成分が硬化しない状態でこの裏面側難燃性ソルダーレジストインク塗布層を放置して塗布層中の気泡等をソルダーレジストインクの流動性を利用して放出させる工程であり、具体的には、ソルダーレジストインクを塗布した後、このソルダーレジストインクに含有されている樹脂成分を硬化させる工程の前に、ソルダーレジストインクの塗布層を、通常は0.5〜6分間、好ましくは1〜3分間放置する工程を設ける。この工程は、ソルダーレジストインクの流動性を利用して塗布層に含有される気泡等を放出させる工程であり、ソルダーレジストインクの粘度が低下しにくい条件で行われる。この工程は、常圧あるいは減圧のいずれの圧力条件で行うこともできる。特に減圧条件でこの工程を実施することにより、この裏面側難燃性ソルダーレジストインク塗布層中に含有される気泡等を効率よく放出させることができる。ただし、減圧度が低すぎると、気泡等が放出される際にソルダーレジストインクが飛散することがあり、通常は0.1〜1気圧、好ましくは0.5〜1気圧の範囲内の圧力に設定する。また、このときの温度は、ソルダーレジストインク塗布層に含有される樹脂成分の硬化反応が過度に進行せず、しかもソルダーレジストインク塗布層に含有される溶媒が急速に除去されない程度の温度であることが好ましく、通常は室温付近から樹脂成分の硬化反応が進行する温度、具体的には15〜80℃、好ましくは20〜50℃の範囲内にある。
【0038】
このようにして裏面側難燃性ソルダーレジストインク塗布層中に含有される気泡やピンホールを放出させる工程を設けることにより、折り曲げスリット15a,15b,15c,15d内ある
いはその近傍の裏面側難燃性ソルダーレジストインク塗布層に含有される気泡等の量が低減する。
【0039】
こうして気泡等の放出のための放置工程を経た後、この裏面側難燃性ソルダーレジストインク塗布層に含有される樹脂成分を硬化させるための硬化工程に移行する。
このようにして形成される裏面側難燃性ソルダーレジスト層の厚さ(硬化後の厚さ)は、折り曲げのために絶縁フィルム厚よりも薄く、通常は5〜60μmの範囲内にある。裏面側難燃性ソルダーレジスト層17の厚さが上記範囲を逸脱して薄いと、折り曲げスリット15a,15b,15c,15dにおける裏面側からの配線パターン12を充分に保護できないことが
あり、また、上記範囲を逸脱して厚いと、この裏面側難燃性ソルダーレジスト層17からの気泡等の除去効率が低下すると共に、本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基
板10を折り曲げて使用する際に、折り曲げスリット15a,15b,15c,15dで折り曲げること
が困難になることがある。
【0040】
上記のようにして裏面側難燃性ソルダーレジスト層17を形成した後、絶縁フィルム11に対して裏面側難燃性ソルダーレジスト層17とは反対の面にある導電性金属層12の表面に感光性樹脂を塗布して、この感光性樹脂層を所望のパターンに露光・現像することにより、感光性樹脂からなるパターンを形成する。
【0041】
次いで、こうして形成された感光性樹脂からなるパターンをマスキング材として、導電性金属層を選択的にエッチングすることにより配線パターン12を形成する。
上記のようにして配線パターン12を形成した後、マスキング材として使用された感光性樹脂からなるパターンは、例えばアルカリ洗浄などにより容易に除去することができる。
【0042】
こうして形成された配線パターン12の上に、難燃性ソルダーレジスト層18を形成する。即ち、デバイスホール14に面した端子部分20、入力側および出力側の端子部分20が露出するように、難燃性ソルダーレジストインクを、スクリーン印刷技術を利用して塗布した後、この難燃性ソルダーレジストインク中に含有される樹脂成分を硬化させることにより配線パターン12の表面に難燃性ソルダーレジスト層18を形成する。
【0043】
ここで難燃性ソルダーレジスト層18を形成するソルダーレジストインクは、上記裏面側難燃性ソルダーレジスト層17を形成するソルダーレジストインクと同一であっても異なっていてもよいが、この難燃性ソルダーレジスト層18がUL94V規格のV=0の難燃性を有するものである。このような難燃性ソルダーレジスト層18を形成する樹脂の例として、難燃性ウレタン樹脂、難燃性ポリイミド、および、難燃性エポキシ樹脂を挙げることができ、これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂と共に、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムおよびモリブデン酸亜鉛よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の難燃性成分を含有させることが好ましい。また、この難燃性ソルダーレジスト層には、リン酸エステルなどの難燃化剤が配合されていてもよい。特に本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板は、上述のように折り曲げて使用することから、この難燃性ソルダーレジスト層18が軟質であることが好ましく、上記のような樹脂成分の中でも難燃性ポリウレタンあるいは難燃性ポリイミドが配合された樹脂を使用することが特に好ましい。このようにして形成される難燃性ソルダーレジスト層18の厚さは、通常は5〜60μm、好ましくは10〜25μmの範囲内にある。
【0044】
上記のような難燃性ソルダーレジスト層18を形成するに際しては、この難燃性ソルダーレジスト層18を形成する樹脂成分が加熱硬化する際に熱収縮することがあり、難燃性ソルダーレジスト層18の形成の際に樹脂が熱収縮すると、得られるプラズマディスプレイ用プリント配線基板10に反り変形が形成されることがある。即ち、難燃性ソルダーレジスト層18を内側にしてプラズマディスプレイ用プリント配線基板10に反り変形が生じやすい。このようなプラズマディスプレイ用プリント配線基板10に上記のような反り変形が生ずると、電子部品を実装する際の端子部分20と電子部品に形成されているバンプ電極との位置あわせ制度が低下すると共に、この電子部品が実装されたプラズマディスプレイ用プリント配線基板(半導体装置)をプラズマディスプレイのガラス基板の端部に形成された端子との位置あわせも大変難しくなる。従って、本発明では、難燃性ソルダーレジスト層18の硬化による収縮を見越して、難燃性ソルダーレジストインクを塗布する際に、発生する反り変形とは逆方向に絶縁フィルム11に反り変形を与えた状態で、難燃性ソルダーレジストインクを塗布して硬化させることが好ましい。このように難燃性ソルダーレジストインクを塗布する際に逆反りを与えることにより、難燃性ソルダーレジストインク中に含有される樹脂成分が加熱硬化して熱収縮しても、予め与えた逆反りと、熱収
縮により生ずる反り変形とが相殺されて、得られるプラズマディスプレイ用プリント配線基板にはほとんど反り変形が発現しないようにすることができる。
【0045】
上記のようにして難燃性ソルダーレジスト層18を形成するために難燃性ソルダーレジストインクを塗布した後、難燃性ソルダーレジストインク中に含有される樹脂成分の硬化温度に加熱することにより、樹脂成分を硬化させて難燃性ソルダーレジスト層18を形成する。このときの加熱温度は、使用する難燃性ソルダーレジストインクに含有される樹脂成分によって異なるが、通常は30〜250℃、好ましくは30〜180℃の範囲内にある。なお、この加熱硬化工程の前の難燃性ソルダーレジスト層18に、塗布工程で生ずることもある気泡等を放出させる工程を設けることもできる。
【0046】
上記のようにして難燃性ソルダーレジスト層18を形成した後、この難燃性ソルダーレジスト層18から露出した端子部分20の表面にメッキ層19を形成する。
この端子部分20に形成されるメッキ層19としては、スズメッキ層、金メッキ層、ニッケル-金メッキ層、ニッケル-パラジウム-金メッキ層、パラジウムメッキ層、半田メッ
キ層、鉛フリー-半田メッキ層などを挙げることができる。このようなメッキ層の厚さは
、通常は0.2〜15μm、好ましくは0.3〜10μmの範囲内にある。なお、上記のようなメッキ層は単層である必要はなく、異なる金属からなるメッキ層の積層体であってもよいし、あるいは同一の金属からなるメッキ層の積層体であってもよい。例えば、配線パターン12を形成した後、形成された配線パターン全体に薄いスズメッキ層(プレスズメッキ層:通常0,01〜0.1μm厚)を形成した後、難燃性ソルダーレジスト層18を形成し、次いで、この難燃性ソルダーレジスト層から露出している端子部分20に改めてメッキ層(本メッキ層:通常0.2〜0.5μm)を形成することもできる。
【0047】
上記の説明は、ポリイミドなどからなる長尺の絶縁フィルムの幅方向に一個のフィルムキャリアを形成した例であるが、本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板は、図3に示すように、絶縁フィルム11の幅方向に複数のフィルムキャリアを並べて形成することが好ましい。図3には、絶縁フィルム11の幅方向にフィルムキャリアAとフィル
ムキャリアBとが2条に併設された例が示されている。フィルムキャリアA、および、フィルムキャリアBには、それぞれ独立に、スプロケットホール13が形成されており、さら
にこのように多条にフィルムキャリアを形成する場合には、それぞれのフィルムキャリアのスプロケットホール13とは別に、この多条にフィルムキャリアが形成された長尺の絶縁フィルムを搬送するために、幅方向の外側に、外部スプロケットホール24を形成することもできる。このように外部スプロケットホール24を、個々のフィルムキャリアのスプロケットホール13とは別に形成することにより、本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板10を製造する際には、個々のフィルムキャリアに設けられたスプロケットホール13を使用せずに外部スプロケットホール24を使用することができるので、例えばフィルムキャリアAあるいはBに電子部品を実装する際に始めてスプロケットホール13が使用され、このスプロケットホール13には、フィルムキャリアを送り出す際に生じやすいスプロケットホールの歪などが生じていないので、電子部品を実装する際の位置あわせを非常に正確に行うことができる。
【0048】
そして、本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板を多条に製造するに際しては、絶縁フィルムの幅方向に隣接するフィルムキャリアが、両者の境界線で線対称に形成することが好ましい。図3には、絶縁フィルム11の幅方向に、フィルムキャリアAとフィルムキャリアBとが二条に形成された例が示されているが、このフィルムキャリアAとフィルムキャリアBとは、両者の境界に想定される仮想境界線23に対して線対称に形成されている。このように隣接するフィルムキャリアの境界に仮想される仮想境界線23に対して線対称にフィルムキャリアを形成することにより、難燃性ソルダーレジスト層17が浮き上がるという不良率が著しく低くなる。これに対して、例えば図6に示すように、
仮想境界線23に対して、付番121で示すフィルムキャリアAと付番122で示すフィ
ルムキャリアBとを線対称に形成しないと、裏面側難燃性ソルダーレジスト層17が浮き
上がりやすくなる。このように隣接するフィルムキャリアの間に仮想される仮想境界線23に対して線対称にフィルムキャリアを形成することによる不良率の低下に関する理由は明らかではないが、統計的にみて、仮想境界線23に対して線対称にフィルムキャリアを形成することによって、裏面側難燃性ソルダーレジスト層17の剥離、特にスリット間16a,16bあるいはその近傍からの浮き上がりによる不良率が著しく低下するという傾向が認
められる。
【0049】
このように本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板10は、プラズマディスプレイのガラス基板の縁部に配置され、プラズマディスプレイの裏面側に折り曲げて使用されるものであり、このプラズマディスプレイ用プリント配線基板に電子部品を実装して、60〜70V以上の電圧を印加して使用しても、熱のこもりやすい裏面側難燃性ソルダ
ーレジスト層17が剥離することがなく、長期間の使用によってもこのプリント配線基板全体のUL94V規格の難燃性はV=0である。
【0050】
従って、本発明によれば、高電圧を印加する必要があるプラズマディスプレイ用のプリント配線基板に優れた難燃性を付与することができ、しかも長期間使用してもこのプラズマディスプレイ用プリント配線基板の難燃性が変動することがない。
【0051】
〔実施例〕
次に本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板およびその製造方法について、実施例を示して説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【実施例1】
【0052】
平均厚さ75μmのポリイミドフィルム(宇部興産(株)製、ユーピレックスS)にパンチ
プレスにより、デバイスホール、折り曲げスリットおよびスプロケットホールを形成した。なお、この実施例では、図3に示すように、長尺のポリイミドフィルムの幅方向に2条
のフィルムキャリA,Bを形成した。このフィルムキャリアAとフィルムキャリアBとは、両
者の間に仮想される仮想境界線23に対して線対称になるように形成した。また、折り曲げスリットは、それぞれのフィルムキャリアに2箇所ずつ形成されており、それぞれの折
り曲げスリットは、それぞれ2分割されている。
【0053】
次いで、この絶縁フィルムの一方の面に平均厚さ25μmの銅層を配置して基材フィルムを調製した。
この基材フィルムのスリット部分に裏面側(銅層が形成されていない側)から、裏面側難燃性ソルダーレジストインクを、スクリーン印刷によって塗布した。ここで使用した裏面側難燃性ソルダーレジストインクは、熱硬化型のUL94V規格の難燃性がV=0であるポリイミド系樹脂であり、ポリイミド樹脂自体が難燃化されている。また、この樹脂は、図7に示される耐折試験装置を用いた耐折性試験において200gの重りを垂下して左右各90度の折り曲げを50往復行っても問題は生じなかった。
【0054】
上記のような裏面側難燃性ソルダーレジストインクをスクリーン印刷でスリット部分に塗布した後、常圧下で25℃で2分間放置して、裏面側難燃性ソルダーレジストインク塗布層に混在する気泡および粒径が1mm以上の気泡であるピンホールの大部分を放出させた

【0055】
こうして裏面側難燃性ソルダーレジストインク塗布層を形成した基材フィルムを160℃で4分間加熱して裏面側難燃性ソルダーレジスト中の難燃性ポリイミド樹脂を硬化させた。
【0056】
硬化することにより形成された裏面側難燃性ソルダーレジスト層を目視観察したが、スリット近傍に気泡やピンホールの残存量は少量であった。
次いで、銅層の表面に感光性樹脂を塗布して、この感光性樹脂を所望のパターンに露光・現像した。こうして形成されたパターンをマスキング材として、銅層を選択的にエッチングして銅層からなる配線パターンを形成した。配線パターンを形成後、露光・現像して形成した感光性樹脂からなるマスキング材をアルカリ洗浄することにより除去した。
【0057】
こうして形成された配線パターンの表面に、逆反りをかけながら、前述の耐折性試験において耐折性50往復で問題のなかったUL94V規格の難燃性V=0のウレタン系難燃性ソルダーレジストインクを、硬化後の厚さが20μmの厚さになるように、スクリーン印刷により塗布した。次いで、160℃で、4分間加熱して、難燃性ソルダーレジストインク中に含有される樹脂成分を加熱硬化させたが、樹脂の熱硬化による樹脂の収縮と、予め付与した逆反りとが相殺され、プリント配線基板に反り変形は実質的に発現しなかった。
【0058】
上記のようにして難燃性ソルダーレジスト層18を形成した後、難燃性ソルダーレジスト層から露出している端子部分に平均厚さ0.5μmのスズメッキ層を形成しプラズマディスプレイ用プリント配線基板テープを30ロット調製した。
【0059】
プラズマディスプレイ用プリント配線基板のスリット部を裏面側から目視で外観検査を行ったところ裏面側難燃性ソルダーレジスト層0.9%にピンホールが認められた。なお、表面のスリット間にソルダーレジスト浮き上がりによる外観以上は各ロットとも観察されなかった。
〔比較例1〕
実施例1において、裏面側難燃性ソルダーレジストインクを塗布して放置することなく、直ちに硬化させた以外は同様にしてプラズマディスプレイ用のプリント配線基板を製造した。
【0060】
こうして得られたプラズマディスプレイ用プリント配線基板について実施例同様に目視の外観検査を実施したところ、およそ3%のプリント配線基板で、裏面側難燃性ソルダーレジスト層にピンホールが認められた。
〔参考例1〕
実施例1において、配線パターンを図6に示すように、仮想境界線23に対して、非線対称に形成した以外は同様にしてプラズマディスプレイ用プリント配線基板を製造した。
【0061】
製造した30ロットのプラズマディスプレイ用プリント配線基板テープのうち、3ロットに、表面のスリット間にソルダーレジストの浮き上がりがあるプリント配線基板が観察された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
上記詳述のように、本発明のUL94V規格の難燃性V=0のプラズマディスプレイ用プリント配線基板は、スリット部に裏面側ソルダーレジストインクを塗布した後、ソルダーレジストインク内にあるピンホールが放出されており、分割された配線パターン側スリット間に浮き上がりが発生していないので、60V以上の電圧を印加するプレズマディスプレイ用
のプリント配線基板として有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板の例を示す底面図およびA-A断面図である。
【図2】図2は、本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板を製造する工程の例を示す工程図である。
【図3】図3は、本発明のプラズマディスプレイ用プリント配線基板の他の例を示す平面図である。
【図4】図4は、図1におけるB−B断面図である。
【図5】図5は、図1におけるC−C断面図である。
【図6】図6は、フィルムキャリアA(121)とフィルムキャリアB(122)とが仮想境界線23に対して線対称に形成されていないプラズマディスプレイ用プリント配線基板の例を示す図である。
【図7】図7は、本発明で使用される裏面側難燃性ソルダーレジスト層の耐折性を測定するための測定装置である。
【符号の説明】
【0064】
10・・・プラズマディスプレイ用プリント配線基板
11・・・絶縁フィルム
12・・・配線パターン
13・・・スプロケットホール
14・・・デバイスホール
15a、15b、15c、15d・・・折り曲げスリット
16a、16b・・・スリット間
17・・・裏面側難燃性ソルダーレジスト層
18・・・難燃性ソルダーレジスト層
19・・・メッキ層
20・・・端子部分
21・・・フィルムキャリアA
22・・・フィルムキャリアB
23・・・仮想境界線
24・・・外側スプロケットホール
25・・・導電性金属層(あるいは配線パターン)
121・・・フィルムキャリアA
122・・・フィルムキャリアB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げ位置に形成された折り曲げスリットを有する絶縁フィルムと、該絶縁フィルムの少なくとも一方の表面に形成された配線パターンと、該配線パターンの表面に端子部分が露出するように形成された難燃性ソルダーレジスト層とを有し、該折り曲げスリットは、該スリットの長手方向に分割されて形成され、該折り曲げスリットの裏面には難燃性ソルダーレジスト層が形成されており、そして、該分割されたスリット領域に形成されている裏面側難燃性ソルダーレジスト層の気泡が放出されてなることを特徴とするプラズマディスプレイ用プリント配線基板。
【請求項2】
上記折り曲げ位置に形成された折り曲げスリットを有する絶縁フィルムと、該絶縁フィルムの少なくとも一方の表面に形成された配線パターンと、該配線パターンの表面に端子部分が露出するように形成された難燃性ソルダーレジスト層とからなるフィルムキャリアが、絶縁フィルムの幅方向に多条に形成されていることを特徴とする請求項第1項記載の
プラズマディスプレイ用プリント配線基板。
【請求項3】
上記プラズマディスプレイ用プリント配線基板が、絶縁フィルムの幅方向に多条に形成されてなり、絶縁フィルムの幅方向に隣接するフィルムキャリアが、両者の境界線で線対称に形成されていることを特徴とする請求項第2項記載のプラズマディスプレイ用プリン
ト配線基板。
【請求項4】
上記難燃性ソルダーレジスト層が、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムおよびモリブデン酸亜鉛よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の難燃性成分を含有する難燃性ソルダーレジスト層であることを特徴とする請求項第1項記載のプラズマディスプレイ用
プリント配線基板。
【請求項5】
上記難燃性ソルダーレジスト層が、難燃性ウレタン樹脂または難燃性ポリイミド樹脂から形成されていることを特徴とする請求項第1項または第4項記載のプラズマディスプレ
イ用プリント配線基板。
【請求項6】
上記難燃性ソルダーレジスト層が、難燃性ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、および、エポキシ樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも2種類の難燃性樹脂から形成されているこ
とを特徴とする請求項第1項または第4項記載のプラズマディスプレイ用プリント配線基板。
【請求項7】
上記裏面側難燃性ソルダーレジスト層が、UL94V規格のV=0の難燃性を有することを特徴とする請求項第1項記載のプラズマディスプレイ用プリント配線基板。
【請求項8】
上記難燃性ソルダーレジスト層を形成する際に、該絶縁フィルムに逆反りを加えて難燃性ソルダーレジスト層を形成して該難燃性ソルダーレジスト層が形成される際に生ずる反り変形が相殺されていることを特徴とする請求項第1項記載のプラズマディスプレイ用プ
リント配線基板。
【請求項9】
絶縁フィルムの折り曲げ位置に対応した位置に複数に分割された折り曲げスリットを形成し、該絶縁フィルムの表面に導電性金属層を配置し、該導電性金属層が配置されていない側である絶縁フィルム裏面の折り曲げスリット形成位置に裏面側難燃性ソルダーレジスト層を形成し、該導電性金属層の表面に感光性樹脂層を形成し、該感光性樹脂層を露光・現像して所望のパターンを形成し、該パターンをマスキング材として導電性金属層を選択的にエッチングして配線パターンを形成した後、該配線パターンの端子部分が露出するように難燃性ソルダーレジストインクを塗布して難燃性ソルダーレジスト層を形成してプラ
ズマディスプレイ用のプリント配線基板を製造するに際して、該絶縁フィルム裏面の折り曲げスリット形成位置に裏面側難燃性ソルダーレジストインクを塗布する工程と該裏面側難燃性ソルダーレジストインクを硬化させて裏面側難燃性ソルダーレジスト層を形成する工程との間に、塗布された裏面側難燃性ソルダーレジストインク中に含有される気泡を放出させる工程を設けることを特徴とするプラズマディスプレイ用プリント配線基板の製造方法。
【請求項10】
上記分割されたスリット間に塗布された裏面側難燃性ソルダーレジストインク中に含有される気泡を放出させる工程が、難燃性ソルダーレジストインクを塗布する工程の後、該裏面側難燃性ソルダーレジストインク中の樹脂を硬化させる前に、該塗布された裏面側難燃性ソルダーレジストインク中に含有される気泡を放出させるために、塗設された裏面側難燃性ソルダーレジストインク塗布層を0.5〜6分間放置する工程であることを特徴とする請求項第9項記載のプラズマディスプレイ用プリント配線基板の製造方法。
【請求項11】
上記裏面側難燃性ソルダーレジストインク塗布層を、15〜80℃の範囲内の温度で0.5〜6分間放置することを特徴とする請求項第9項または第10項記載のプラズマディスプレイ用プリント配線基板の製造方法。
【請求項12】
上記裏面側難燃性ソルダーレジストインク塗布層を、常圧または減圧下に、15〜80℃の範囲内の温度で0.5〜6分間放置することを特徴とする請求項第9項または第10項記載のプラズマディスプレイ用プリント配線基板の製造方法。
【請求項13】
上記裏面側難燃性ソルダーレジスト層を形成する裏面側難燃性ソルダーレジストインクの25℃における粘度が500〜10000cpsの範囲内にあることを特徴とする請求項
第9項記載のプラズマディスプレイ用プリント配線基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−133422(P2006−133422A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321235(P2004−321235)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】