説明

プラズマ処理方法、反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置

【課題】高分子樹脂フィルム材料へプラズマ処理を行う際、プラズマ処理による高分子樹脂フィルム材料のダメージを抑え、安定した表面改質、表面への薄膜形成が出来るプラズマ処理方法、このプラズマ処理方法による反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置の提供。
【解決手段】保持手段に保持され、連続に走行する樹脂フィルムの表面をプラズマ処理により改質するプラズマ処理方法において、前記プラズマ処理する時の前記樹脂フィルムの表面温度と、前記樹脂フィルムの裏面温度との温度差を制御し樹脂フィルムの表面をプラズマ処理することを特徴とするプラズマ処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムの表面をプラズマ処理により改質するプラズマ処理方法、プラズマ処理方法により改質した樹脂フィルムを使用した反射防止フィルム、この反射防止フィルムを使用した偏光板、この偏光板を使用した画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高分子樹脂フィルム材料は包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、エレクトロルミネッセンス(EL)基板等の多くの分野で使用されている。これらに使用される高分子樹脂フィルムは単独では必要とする機能が得られないことが多いため、必要に応じて表面を改質し、新たな機能を引き出すことで使用されている。高分子樹脂フィルム材料の改質にはプラズマ処理による方法が知られており、多分野で使用する高分子樹脂フィルムに対し改質が行われ使用されている。例えば、特開2003−337091号公報には、高分子表面にプラズマやコロナ放電を行うことで、特性の全く異なる金属材料と密着させることで、フレキシブルプリント基板(FPC)、テープ自動ボンディング用テープ(TABテープ)等の配線材としての用途として使用する技術が開示されている。特開2001−138457号公報、同2000−129020号公報、同特開2000−80188号公報には、熱可塑性樹脂フィルムの表面をフレームプラズマ処理、及び/又は(b)窒素及び/又は二酸化炭素の雰囲気下でのコロナ放電処理で改質した後、水溶性高分子を含む組成物よりなる樹脂層を接着剤を使用することなく積層することでガスバリア性フィルムを作製する技術が開示されている。特開2006−78538号公報、同2006−165010号公報には、有機ポリマーの透明基材フィルム上に直接又は間接に、アルコキシシラン化合物又はその加水分解物を含有する塗布液により形成される低屈折率層を設け、この低屈折率層の表面にフレームプラズマ処理を行うことを特徴とする反射防止フィルムの製造方法が開示されている。特開2003−261105号公報には、有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いる基板としてポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、セルロースエステル、ノルボネン系樹脂の上に大気圧プラズマ処理により炭素含有率の異なる金属酸化物、金属酸窒化物、金属窒化物を設けたガスバリア性材料を製造する技術が開示されている。特開2002−307807号公報には、支持体と色材受容層との接着性を改良するために大気圧プラズマ処理を行った後色材受容層を設けたインクジェット記録用シートを製造する技術が開示されている。特開2004−352777号公報には、極性樹脂系組成物に対して難接着性である樹脂フィルムの表面にNH3を含む処理ガスを用いたプラズマ処理により極性基を導入することを特徴とする難接着性樹脂フィルムの表面改質方法が開示されている。
【0003】
この様に多分野において使用されている高分子樹脂フィルム材料に対してフレームプラズマ処理、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、プラズマ処理の所謂プラズマ処理により高分子材料の改質を行い、新たな機能を付与することで使用されているのが現状である。プラズマ処理により高分子樹脂フィルム材料を改質(表面処理及びプラズマを用いた薄膜を形成する方法を含む)する際、表面処理効果の向上及び薄膜の品質を向上させる最も効果的な方法は、より高エネルギーのプラズマを基材表面に照射することである。しかしながら、プラズマエネルギーの大半は熱エネルギーとなるため、プラズマエネルギーを高めることは高分子樹脂フィルム材料に対し、皺(しわ)、カール、変質等の熱ダメージを増幅させることになるため、これらの対応が検討されてきた。例えば、プラズマ放電処理の際の基材のフィルムの温度を室温〜200℃以下とすることで、プラズマ放電処理時にフィルム表面温度の上昇する等により著しいカールが発生することを抑える技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、特定の基材に効果があることは推定出来るが、温度条件によっては、皺、熱変形等のダメージが基材に発生することがあり、特に、経時で温度環境が変化した場合や、処理条件を変更した場合に文献1の技術では十分な対策となっていない。
【0004】
又、ロール電極を使用した大気圧プラズマ処理法により基材の表面にTiO2の薄膜を形成する際、基材に含まれている水分を除去することで成膜速度の向上、膜の白化防止のため放電プラズマ処理前段部に基材をロール電極の温度に対して±5℃以内の予備加熱を行う方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、特許文献2に記載の技術では、特定のプラズマ条件に対しては効果があることは推定出来るが、高エネルギーのプラズマによりロール電極温度よりも基材表面温度が非常に上昇してしまうようなプラズマ条件の場合にはフィルムにダメージ(皺(シワ)、熱変形等)が発生してしまい、十分な対策となっていない。従って、これら特許文献の技術では、特定の条件には効果はあるが、いかなる基材がきても処理効果を低下させることなく、基材ダメージを抑制することが不十分となっている。
【0005】
これらの状況から、高分子樹脂フィルム材料へプラズマ処理により新たな機能を付与するための表面改質、表面への薄膜形成をプラズマ処理により行う際、プラズマ処理による高分子樹脂フィルム材料のダメージを抑え、安定した表面改質、表面への薄膜形成が出来るプラズマ処理方法、このプラズマ処理方法による反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2005−156682号公報
【特許文献2】特開2000−309871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は高分子樹脂フィルム材料へプラズマ処理を行う際、プラズマ処理による高分子樹脂フィルム材料のダメージを抑え、安定した表面改質、表面への薄膜形成が出来るプラズマ処理方法、このプラズマ処理方法による反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0008】
1.保持手段に保持され、連続に走行する樹脂フィルムの表面をプラズマ処理により改質するプラズマ処理方法において、前記プラズマ処理する時の前記樹脂フィルムの表面温度と、前記樹脂フィルムの裏面温度との温度差を制御し樹脂フィルムの表面をプラズマ処理することを特徴とするプラズマ処理方法。
【0009】
2.前記制御はプラズマ処理する時の樹脂フィルムの表面温度と樹脂フィルムの裏面温度とを温度計測手段により計測し、該温度計測手段の計測結果に基づき制御手段を介してプラズマ処理が行われることを特徴とする前記1に記載のプラズマ処理方法。
【0010】
3.前記プラズマ処理が、コロナ処理、プラズマ処理、大気圧下のプラズマ処理、フレームプラズマ処理(火炎処理)から選ばれる1つ又は少なくとも2つの組合せであることを特徴とする前記1又は2に記載のプラズマ処理方法。
【0011】
4.前記保持手段は保持補助手段を有することを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載のプラズマ処理方法。
【0012】
5.前記樹脂フィルムがセルロースエステル樹脂フィルムであることを特徴とする前記1〜4の何れか1項に記載のプラズマ処理方法。
【0013】
6.前記1〜5の何れか1項に記載のプラズマ処理方法により表面処理或いは薄膜形成された樹脂フィルムを用いて製造されたことを特徴とする反射防止フィルム。
【0014】
7.前記6に記載の反射防止フィルムを使用することを特徴とする偏光板。
【0015】
8.前記7に記載の偏光板を使用することを特徴とする画像表示装置。
【0016】
発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を加えた結果、基材の表面にプラズマ処理を行う際、基材に皺、熱変形等のダメージは、プラズマ処理によりエネルギーが基材の表面に急激に付与された時に多く発生することが判明した。
【0017】
発明者らは、更にこれらの現象に付き検討を加えた結果、エネルギーが基材の表面に急激に付与されることで、基材の表面の温度と裏面との温度とに差が生じる。この温度差は表面に付与されるエネルギーが高く、時間が短いほど大きくなる。この結果、基材の表面と裏面とで熱膨張率に差が生じ、皺、熱変形等が発生すると推定した。
【0018】
これらに対して、プラズマ処理を行う際、高エネルギーを基材の表面に付与しても、基材の表面と裏面との温度差を出来るだけ小さく抑える様にすることで、基材の表面と裏面との熱膨張の差を出来る限り小さくすることが出来、皺、熱変形等のダメージが基材に発生することを防止出来ることが判明し、本発明に至った次第である。
【発明の効果】
【0019】
高分子樹脂フィルム材料へプラズマ処理を行う際、プラズマ処理による高分子樹脂フィルム材料のダメージを抑え、安定した表面改質、表面への薄膜形成が出来るプラズマ処理方法、このプラズマ処理方法による反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置を提供することが出来、生産効率の向上が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態を図1〜図7を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、本発明では、プラズマ処理としてはフレームプラズマ処理、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、プラズマ処理を対象とするが、以下、大気圧プラズマ処理をプラズマ処理の代表として取り上げ説明する。
【0021】
図1は樹脂フィルムにプラズマ処理を行う大気圧プラズマ処理装置の模式図である。
【0022】
図中、1aは大気圧プラズマ処理装置を示す。大気圧プラズマ処理装置1aは、高周波電源101と、互いに対向するロール電極102と曲面電極103と、プラズマガス供給装置104とを有している。ロール電極102と曲面電極103との間(放電空間A)には、高周波高電圧電源101からの高電圧が印加される。又、ロール電極102の内部には温度制御手段(不図示)が内蔵されており、このロール電極102に接触しながら搬送する樹脂フィルム2の温度を処理に適した温度に保持することが可能となっている。温度制御手段としては、例えば熱媒体(水やシリコンオイル等が好ましい)を供給・排出し熱交換する循環用流路(不図示)、ヒーター等が挙げられる。熱媒体の温度、循環量及びヒーターの供給電力量を変化させることでロール電極102の温度を制御することが可能となっている。
【0023】
プラズマ処理の前に樹脂フィルム2とロール電極102との密着性を高めるために保持補助手段を配設することが好ましい。保持補助手段としては特に限定はなく、例えば吸引ロール、ニップロール、サクションノズル等が挙げられる。本図ではニップロール3を使用した場合を示している。ニップロール3により樹脂フィルム2とロール電極102との密着性が高められることにより熱交換効率を高めることが可能になり、樹脂フィルムの裏面温度を速やかにロール電極温度と同等温度に到達させることが出来る。
【0024】
プラズマガス供給装置104は、プラズマガス用ボンベ104aとプラズマガス供給口104bとを有し、プラズマガス用ボンベ104aとプラズマガス供給口104bとはプラズマガス供給管104cで繋げられている。
【0025】
201は樹脂フィルム2の供給部に供給されたロール状樹脂フィルムを示し、202は回収部でプラズマ処理した後にロール状に巻き取られたプラズマ処理済みロール状樹脂フィルムを示す。
【0026】
105aは樹脂フィルム2のプラズマ処理する時の表面温度を計測する第1温度計測装置を示し、105bはロール電極102の表面温度を計測する第2温度計測装置を示す。
【0027】
本発明では、プラズマ処理する時とは、厳密にはプラズマ処理を受けている時を指すが、実質的に処理を受けている基材の表面の温度をその瞬間に計測することは極めて困難であるため、プラズマ処理直後も含める。
本発明では熱容量が大きく樹脂フィルム2の裏面が接触しているロール電極102の表面温度(第2温度計測装置105bで計測された温度)を樹脂フィルム2の裏面の温度とする。106はメモリとCPUとを有する制御手段を示す。制御手段106を使用したプラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理の方法に付き説明する。
【0028】
第1温度計測装置105aからのプラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面温度の計測結果及び第2温度計測装置105bからのロール電極102の表面温度(樹脂フィルム2ののプラズマ処理時の裏面温度)の計測結果は制御手段106のCPUに入力される。入力された樹脂フィルム2の表面温度及びロール電極102の表面温度(樹脂フィルム2のプラズマ処理時の裏面温度)から温度差が計算され、予め求められている必要とする温度差が入力されているメモリで演算処理され、結果に基づきロール電極102の温度制御手段(不図示)を制御することで、樹脂フィルム2のプラズマ処理時の表面温度とロール電極102の表面温度(樹脂フィルム2のプラズマ処理時の裏面温度)との温度差を管理範囲内に制御することが可能となっている。
【0029】
第1温度計測装置105a及び第2温度計測装置105bとしては、非接触方式、接触方式であってもよいが、オンラインで計測出来ることから非接触方式が好ましい。具体的には、非接触方式としては、例えば(赤外)放射温度計、サーモグラフィー等を使用した温度計測装置が挙げられる。又、接触方式としては、例えば熱電対、バイメタル温度計、サーモラベル等を使用した温度計測装置が挙げられる。
【0030】
本図に示す如く、樹脂フィルム2をプラズマ処理時の直前に表面温度と裏面温度との差を少なくするように制御することで、プラズマ処理する時に樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との差を少なくした状態で行うことが可能となり、基材に皺、熱変形等のダメージを与えることなく安定にプラズマ処理を行うことが可能となる。
【0031】
大気圧プラズマ処理装置としては、図1のような1種類の高周波電源を接続した処理装置に限らず、例えば、ロール電極と曲面電極それぞれに異なる周波数の高周波電源を接続して放電を形成する装置でも構わず、2種以上の高周波電源を接続した放電処理装置においても本発明は適用出来る。
【0032】
図2は予備加熱装置により加熱された樹脂フィルムにプラズマ処理を行う大気圧プラズマ処理装置の模式図である。
【0033】
図中、1bは大気圧プラズマ処理装置を示す。107は樹脂フィルム2の予備加熱装置を示す。108aは予備加熱装置107で加熱された後の樹脂フィルム2の表面の温度を測定する第3温度計測装置を示す。108bは予備加熱装置107で加熱された後の樹脂フィルム2の裏面の温度を測定する第4温度計測装置を示す。その他の符号は図1と同義である。予備加熱装置107としては、特に限定はなく、例えば熱風(対流伝熱)、加熱ローラー(伝導伝熱)、赤外線(輻射伝熱)、マイクロ波(電磁波)等が挙げられ必要に応じて適宜選択し使用することが可能である。予備加熱装置107の配設する位置はプラズマ処理する直前の領域が好ましい。第3温度計測装置108a、第4温度計測装置108bとしては、図1に示す第1温度計測装置、第2温度計測装置と同じ温度計測装置を使用することが好ましい。
【0034】
制御手段106を使用したプラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理の方法に付き説明する。
【0035】
第3温度計測装置108aから予備加熱装置107で加熱された樹脂フィルム2の表面の温度計測結果が制御手段106のCPUに入力される。又、第4温度計測装置108bから予備加熱装置107で加熱された樹脂フィルム2の裏面の温度計測結果が制御手段106のCPUに入力される。入力された樹脂フィルム2の表面温度及び裏面の温度と、予め設定された樹脂フィルム2の表面温度、裏面温度が入力されているメモリで演算処理され、予備加熱装置107の加熱温度を制御することが可能となっている。
この様にして、予備加熱された樹脂フィルム2がプラズマ処理される時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理の方法は図1の場合と同じである。
【0036】
本図に示す如く、樹脂フィルム2をプラズマ処理時の直前に予備加熱すること、及び予備加熱を制御することで樹脂フィルム2の温度を安定した状態でプラズマ処理時に供給することが可能となり、プラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理が、1)樹脂フィルム2の予備加熱の温度管理と、2)ロール電極102の温度管理との2つで行うことが出来るため図1に示す方法より更に基材に皺、熱変形等のダメージを与えることなく安定にプラズマ処理を行うことが可能となる。
【0037】
図3は樹脂フィルムにプラズマ処理を行うプラズマガス温度調整装置を有する大気圧プラズマ処理装置の模式図である。
【0038】
図中、1cは大気圧プラズマ処理装置を示す。104dはプラズマガス温度調整装置を示す。内部には温度制御手段(不図示)が内蔵されておりプラズマガスの温度を処理に適した温度に保持することが可能となっている。温度制御手段としては、例えば熱媒体(水やシリコンオイル等が好ましい)を供給・排出し熱交換する循環用流路(不図示)、ヒーター等が挙げられる。熱媒体の温度、循環量及びヒーターの供給電力量を変化させることでプラズマガスの温度を制御することが可能となっている。
109はプラズマガス温度調整装置104dで温度調整されたプラズマガスの温度を測定する第5温度計測装置を示す。第5温度計測装置109を配設する位置は、プラズマガス温度調整装置104dとプラズマガス供給口104bとの間のプラズマガス供給管104c中のプラズマガスの温度を測定する位置であってもよいし、ガス供給口104bの出口のプラズマガスの温度を測定する位置であってもよく、必要に応じて適宜選択することが可能である。本図はプラズマガス供給口104bの出口のプラズマガスの温度を測定する位置に配設した場合を示している。他の符号は図1と同義である。第5温度計測装置109としては、図1に示す第1温度計測装置、第2温度計測装置と同じ温度計測装置を使用することが好ましい。制御手段106を使用したプラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理の方法に付き説明する。
【0039】
第5温度計測装置109からプラズマガス温度調整装置104dで加熱されたプラズマガスの温度計測結果が制御手段106のCPUに入力される。入力されたプラズマガスの温度と、予め設定されたプラズマガスの温度が入力されているメモリで演算処理され、プラズマガス温度調整装置104dの加熱温度を制御することが可能となっている。
この様にして、温度調整されたプラズマガスを使用し、樹脂フィルム2がプラズマ処理される時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理の方法は図1の場合と同じである。
【0040】
本図に示す如く、プラズマガスの温度を調整すること、及びプラズマガスの温度を制御することで、プラズマ処理時の温度を安定にすることが可能となり、プラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理が、1)プラズマガスの温度管理と、2)ロール電極102の温度管理との両方で行うことが出来るため図1に示す方法より、更に基材に皺、熱変形等のダメージを与えることなく安定にプラズマ処理を行うことが可能となる。
【0041】
図4は樹脂フィルムにプラズマ処理を行う領域に冷却ガスを供給するす冷却ガス供給装置を有する大気圧プラズマ処理装置の模式図である。
【0042】
図中、1dは大気圧プラズマ処理装置を示す。110は冷却ガス供給装置を示す。冷却ガス供給装置110は、冷却ガス用ボンベ110aと、ガス冷却装置110bと、冷却ガス供給口110cとを有し、冷却ガス用ボンベ110aから冷却ガス供給口110c迄は供給管110dにより繋げられている。ガス冷却装置110bの内部には温度制御手段(不図示)が内蔵されており冷却用ガスの温度を処理に適した温度に保持することが可能となっている。温度制御手段としては、例えば冷却媒体(冷水、エチレングリコール等)を供給・排出し熱交換する循環用流路(不図示)、例えばクールニクスサーキュレーターが挙げられる。冷却媒体の温度、循環量及びクールニクス設定温度を変化させることで冷却ガスの温度を調整することが可能となっている。冷却ガスとしては、プラズマ処理に悪影響を与えないガスであれば特に限定はなく、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス、空気等が挙げられ、特にコストの観点から空気、窒素が好ましい。特に110eはガス冷却装置110bで温度調整された冷却用ガスの温度を測定する第6温度計測装置を示す。第6温度計測装置を配設する位置は、ガス冷却装置110bと冷却ガス供給口110cとの間の冷却ガス供給管110d中の冷却用ガスの温度を測定する位置であってもよいし、冷却ガス供給口110cの出口の冷却用ガスの温度を測定する位置であってもよく、必要に応じて適宜選択することが可能である。本図は冷却ガス供給管110d中の冷却用ガスの温度を測定する位置に配設した場合を示している。他の符号は図1と同義である。第6温度計測装置110eとしては、図1に示す第1温度計測装置、第2温度計測装置と同じ温度計測装置の使用することが好ましい。
【0043】
制御手段106を使用したプラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理の方法に付き説明する。第6温度計測装置110からガス冷却装置110bで冷却された冷却用ガスの温度計測結果が制御手段106のCPUに入力される。入力された冷却用ガスの温度と、予め設定された冷却用ガスの温度が入力されているメモリで演算処理され、ガス冷却装置110bの冷却温度を制御することが可能となっている。
【0044】
この様にして、温度調整された冷却用ガスを使用し、樹脂フィルム2がプラズマ処理される時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理の方法は図1の場合と同じである。
【0045】
本図に示す如く、冷却用ガスの温度を調整すること、及び冷却用ガスの温度を制御することで、プラズマ処理時の温度を安定にすることが可能となり、プラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理が、1)冷却用ガスの温度管理と、2)ロール電極102の温度管理との2つで行うことが出来るため図1に示す方法より、更に基材に皺、熱変形等のダメージを与えることなく安定にプラズマ処理を行うことが可能となる。
【0046】
図5は樹脂フィルムにプラズマ処理を行った後の樹脂フィルム表面状態を測定する樹脂フィルム表面状態測定装置を有する大気圧プラズマ処理装置の模式図である。
【0047】
図中、1eは大気圧プラズマ処理装置を示す。111はプラズマガス処理を終了した直後の樹脂フィルムの表面状態を測定する樹脂フィルム表面状態測定装置を示す。他の符号は図1と同義である。樹脂フィルム表面状態測定装置111としては特に限定はなく、例えば反射光、屈折光、透過光、干渉光などの光学特性の変化を計測する光学センサを用いた装置、樹脂フィルム表面の凹凸形状や平面性などの基材変形状態を計測する変位センサを用いた装置、画像解析して基材変形状態を計測する画像素子(CCD、CMOS、等)を用いた装置等が挙げられる。勿論、目視で行っても構わない。
【0048】
制御手段106を使用したプラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理の方法に付き説明する。
【0049】
樹脂フィルム表面状態測定装置111からブラズマ処理された直後の樹脂フィルム2の表面状態の計測結果が制御手段106のCPUに入力される。入力された樹脂フィルム2の表面状態と、予め設定された樹脂フィルム2の表面状態が入力されているメモリで演算処理され、演算処理の結果に基づき、ロール電極102の温度を調整することが可能となっている。
【0050】
樹脂フィルム2がプラズマ処理される時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理の方法は図1の場合と同じである。本図に示す如く、ブラズマ処理された直後の樹脂フィルム2の表面状態の管理と、プラズマ処理される時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理とを合わせて管理することで、プラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理がより安定に出来るため図1に示す方法より、更に基材に皺、熱変形等のダメージを与えることなく安定にプラズマ処理を行うことが可能となる。
【0051】
尚、減圧条件下で行うプラズマ処理の場合は、図1〜図5に示すプラズマ処理装置を減圧条件にするためにユニット(例えば真空チャンバ)に入れるだけが異なる他は全て同じであり、プラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理方法も、図1〜図5に示す管理方法と全く同じで行い、同じ効果を得ることが可能である。
【0052】
図1〜図5に示される大気圧プラズマ処理装置において、プラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差を少なくするためにプラズマ処理効果が低下しない範囲で、プラズマ印加条件(電圧或いは電力)や、放電間隙などのプラズマエネルギーを変化させたり、基材フィルムの搬送速度を変化させる、或いは放電処理時間を変化させても構わない。
【0053】
図6は樹脂フィルムにプラズマ処理を行うコロナ放電処理装置の模式図である。
【0054】
図中、1fはコロナ放電処理装置を示す。コロナ放電処理装置1fは、コロナ処理装置用高周波電源イと、互いに対向するロール電極ロと曲面電極ハとを有している。ロール電極ロと曲面電極ハとの間(放電空間ニ)には、コロナ処理装置用高周波電源イからの高電圧が印加される。又、ロール電極ロの内部には温度制御手段(不図示)が内蔵されており、このロール電極ロに接触しながら搬送する樹脂フィルム2の温度を処理に適した温度に保持することが可能となっている。温度制御手段としては、例えば熱媒体(水やシリコンオイル等が好ましい)を供給・排出し熱交換する循環用流路(不図示)、ヒーター等が挙げられる。熱媒体の温度、循環量及びヒーターの供給電力量を変化させることでロール電極ロの温度を制御することが可能となっている。
【0055】
コロナ放電処理の前に樹脂フィルム2とロール電極ロ2との密着性を高めるために保持補助手段を配設することが好ましい。保持補助手段としては、図1に示す保持補助手段と同じものを使用することが可能である。他の符号は図1と同義である。
【0056】
制御手段106を使用したコロナ放電処理時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理の方法は図1に示す管理方法と同じ方法で実施することが可能である。
【0057】
本図に示すコロナ放電処理装置を使用し、コロナ放電処理時の樹脂フィルム2の表面と裏面との温度差の管理は、図2に示す予備加熱装置による予備加熱方法、図4に示すコロナ放電処理を行う領域に冷却ガスを供給する冷却方式、図5に示す様なプラズマ処理後の樹脂フィルム表面状態を測定する樹脂フィルム表面状態測定装置を配設し行うことが可能である。図2に示す予備加熱装置による予備加熱方法によるコロナ放電処理時の樹脂フィルム2の表面と裏面との温度差の管理方法は、図2に示す管理方法と同じ方法で行うことで、同様な効果が得られる。図4に示すコロナ放電処理を行う領域に冷却ガスを供給する冷却方式の場合は、図4に示す管理方法と同じ方法で行うことで、同様な効果が得られる。図5に示す様なプラズマ処理後の樹脂フィルム表面状態を測定する樹脂フィルム表面状態測定装置を配設した場合は、図5に示す管理方法と同じ方法で行うことで、同様な効果が得られる。
【0058】
本図に示されるコロナ放電処理装置において、プラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差を少なくするためにプラズマ処理効果が低下しない範囲で、プラズマ印加条件(電圧或いは電力)やプラズマ照射時間などのプラズマエネルギーを変化させても構わない。
【0059】
図7は樹脂フィルムにプラズマ処理を行うフレームプラズマ処理装置の模式図である。
【0060】
図中、1gはフレームプラズマ処理装置を示す。フレームプラズマ処理装置1gは、ガス供給装置112と樹脂フィルム2を支持するバックアップロール102とを有している。ガス供給装置112はガスタンク112aとガスバーナー112cとを有し、ガスタンク112aとガスバーナー112cとはガス供給管で繋がっている。他の符号は図1と同義である。
【0061】
ガスバーナー112cに対向しガスバーナー112cとバックアップロール102との間で、ガスバーナー112cからのフレーム(火炎)により樹脂フィルム2の表面が処理される。使用するガスとしては、例えばプロパンガス、天然ガス、ブタンガス等と酸素との混合ガスを一般に用いることが出来る。
【0062】
バックアップロールの内部には温度制御手段(不図示)が内蔵されており、このバックアップロールに接触しながら搬送する樹脂フィルム2の温度を処理に適した温度に保持することが可能となっている。温度制御手段としては、図1に示した温度制御手段と同じ方法が使用することが可能である。
【0063】
フレームプラズマ処理の前に樹脂フィルム2とバックアップロールとの密着性を高めるために保持補助手段を配設することが好ましい。保持補助手段としては、図1に示す保持補助手段と同じものを使用することが可能である。
【0064】
制御手段106を使用したフレームプラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差の管理の方法は図1に示す管理方法と同じ方法で実施することが可能である。
【0065】
本図に示すフレームプラズマ処理装置を使用し、フレームプラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面と裏面との温度差の管理は、図2に示す予備加熱装置による予備加熱方法、図4に示すフレームプラズマ処理を行う領域に冷却ガスを供給する冷却方式、図5に示す様なプラズマ処理後の樹脂フィルム表面状態を測定する樹脂フィルム表面状態測定装置を配設し行うことが可能である。図2に示す予備加熱装置による予備加熱方法によるフレームプラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面と裏面との温度差の管理方法は、図2に示す管理方法と同じ方法で行うことで、同様な効果が得られる。図4に示すプラズマ放電処理を行う領域に冷却ガスを供給する冷却方式の場合は、図4に示す管理方法と同じ方法で行うことで、同様な効果が得られる。図5に示す様なプラズマ処理後の樹脂フィルム表面状態を測定する樹脂フィルム表面状態測定装置を配設した場合は、図5に示す管理方法と同じ方法で行うことで、同様な効果が得られる。
【0066】
本図に示されるフレームプラズマ処理装置において、プラズマ処理時の樹脂フィルム2の表面温度と裏面温度との温度差を少なくするためにプラズマ処理効果が低下しない範囲で、フレームプラズマ処理条件(燃焼エネルギー)や、フレームプラズマ照射時間などのプラズマエネルギーを変化させても構わない。
【0067】
尚、図1〜図5に示される大気圧プラズマ処理装置、図6に示すコロナ放電処理装置、図7に示すフレームプラズマ処理装置において、プラズマ処理後にロール状に巻き取る時の温度を一定にし、ロール状にした後の温度の変化に伴う皺(シワ)、熱変形、平面性劣化等の故障を避けるため、プラズマ処理後の樹脂フィルム2の表面温度を測定する第1温度計測装置105aと同じ温度計測装置(不図示)を配設することが好ましい。又、必要に応じて冷却工程を設けることも好ましい。
【0068】
図1〜図7でプラズマ処理装置を使用して本発明のプラズマ処理する時の樹脂フィルムの表面温度と裏面温度との温度差を制御し樹脂フィルムの表面をプラズマ処理するプラズマ処理方法により次の効果が挙げられる。
1)プラズマ処理時に樹脂フィルムの表面と裏面との温度差に急激な温度変化を与えることが無くなるため、急激な温度変化に伴う熱変形、皺(しわ)、折れ等の発生を抑えることが可能となり安定した高品質のプラズマ処理樹脂フィルムの生産が可能となった。
2)多層が積層された樹脂フィルムの場合であっても、基材の樹脂フィルムの裏面温度と、樹脂フィルム上の積層体の温度との差を小さくすることが可能であるため、積層体の熱膨張による変形の影響を受けにくくなり、安定した高品質の多層が積層されたプラズマ処理樹脂フィルムの生産が可能となった。
3)従来、基材の熱ダメージの観点からプラズマエネルギーを制限せざるを得ず、処理効果を低減させていた処理基材に対しても、熱ダメージを抑制しつつ高い処理効果が得られるプラズマエネルギーを投入することが可能となった。
4)装置の温度状態や環境が経時などで変化してしまった場合でも、常に基材の温度状態を計測しているため、安定した高品質のプラズマ処理樹脂フィルムの生産が可能となった。
【0069】
本発明に係る被塗布物に使用する材料としては特に限定はなく、例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(アートン(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオネア(以上、日本ゼオン社製))、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム等を挙げられる。これらのフィルムは、溶融押し出し法で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。製造する製品に合わせ適宜選択することが可能である。
【0070】
これらの材料の中で光学材料としての反射防止フィルムとしては、セルロースエステルが透明性、耐熱性及び液晶とのマッチング性に優れ、固有複屈折率が低く、光弾性係数が小さいので特に好適に用いられる。
【0071】
本発明に係るセルロースエステルは、脂肪酸アシル基、置換若しくは無置換の芳香族アシル基の中から少なくとも何れかの構造を含む、単独又は混合酸エステルである。芳香族アシル基において、芳香族環がベンゼン環である時、ベンゼン環の置換基の例としてハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基及びアリールオキシスルホニル基、−S−R、−NH−CO−OR、−PH−R、−P(−R)2、−PH−O−R、−P(−R)(−O−R)、−P(−O−R)2、−PH(=O)−R−P(=O)(−R)2、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)(−O−R)、−P(=O)(−O−R)2、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)2−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)(−O−R)、−O−P(=O)(−O−R)2、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)(−O−R)、−NH−P(=O)(−O−R)2、−SiH2−R、−SiH(−R)2、−Si(−R)3、−O−SiH2−R、−O−SiH(−R)2及び−O−Si(−R)3が含まれる。上記Rは脂肪族基、芳香族基又はヘテロ環基である。置換基の数は、1個〜5個であることが好ましく、1個〜4個であることがより好ましく、1個〜3個であることが更に好ましく、1個又は2個であることが最も好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基及びウレイド基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基及びカルボンアミド基がより好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基及びアリールオキシ基が更に好ましく、ハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基が最も好ましい。
【0072】
上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が含まれる。上記アルキル基は、環状構造或いは分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル及び2−エチルヘキシルが含まれる。上記アルコキシ基は、環状構造或いは分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基は、更に別のアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ、ブチルオキシ、ヘキシルオキシ及びオクチルオキシが含まれる。
【0073】
上記アリール基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリール基の例には、フェニル及びナフチルが含まれる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールオキシ基の例には、フェノキシ及びナフトキシが含まれる。上記アシル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アシル基の例には、ホルミル、アセチル及びベンゾイルが含まれる。上記カルボンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。カルボンアミド基の例には、アセトアミド及びベンズアミドが含まれる。上記スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド及びp−トルエンスルホンアミドが含まれる。上記ウレイド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。ウレイド基の例には、(無置換)ウレイドが含まれる。
【0074】
上記アラルキル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることが更に好ましい。アラルキル基の例には、ベンジル、フェネチル及びナフチルメチルが含まれる。上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルが含まれる。上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることが更に好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニルが含まれる。上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は、8〜20であることが好ましく、8〜12であることが更に好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例には、ベンジルオキシカルボニルが含まれる。上記カルバモイル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。カルバモイル基の例には、(無置換)カルバモイル及びN−メチルカルバモイルが含まれる。上記スルファモイル基の炭素原子数は、20以下であることが好ましく、12以下であることが更に好ましい。スルファモイル基の例には、(無置換)スルファモイル及びN−メチルスルファモイルが含まれる。上記アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アシルオキシ基の例には、アセトキシ及びベンゾイルオキシが含まれる。
【0075】
上記アルケニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルケニル基の例には、ビニル、アリル及びイソプロペニルが含まれる。上記アルキニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルキニル基の例には、チエニルが含まれる。上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。上記アリールスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。
【0076】
本発明に係るセルロースエステルにおいて、セルロースの水酸基部分の水素原子が脂肪族アシル基との脂肪酸エステルである時、脂肪族アシル基は炭素原子数が2〜20で、具体的にはアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ステアロイル等が挙げられる。
【0077】
本発明において前記脂肪族アシル基とは、更に置換基を有するものも包含する意味であり、置換基としては上述の芳香族アシル基において、芳香族環がベンゼン環である時、ベンゼン環の置換基として例示したものが挙げられる。
【0078】
又、上記セルロースエステルのエステル化された置換基が芳香環である時、芳香族環に置換する置換基Xの数は0又は1〜5個であり、好ましくは1〜3個で、特に好ましいのは1又は2個である。更に芳香族環に置換する置換基の数が2個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよいが、又、互いに連結して縮合多環化合物(例えば、ナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。
【0079】
上記セルロースエステルにおいて置換若しくは無置換の脂肪族アシル基、置換若しくは無置換の芳香族アシル基の少なくとも何れか1種選択された構造を有する構造を有することが本発明に係るセルロースエステルに用いる構造として用いられ、これらは、セルロースの単独又は混合酸エステルでもよく、2種以上のセルロースエステルを混合して用いてもよい。
【0080】
本発明に係るセルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート及びセルロースフタレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0081】
混合脂肪酸エステルの置換度として、更に好ましいセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートの低級脂肪酸エステルは炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロース樹脂である。
【0082】
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
この内特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.9≦X≦2.5であり、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。上記アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することが出来る。
【0083】
更に、本発明で用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは2.0〜5.0であり、更に好ましくは2.5〜5.0であり、更に好ましくは3.0〜5.0のセルロースエステルが好ましく用いられる。
【0084】
本発明で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、或いは単独で使用することが出来る。
【0085】
例えば、綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることが出来る。
【0086】
本発明に係る塗布液はとしては、高分子成分を0.5〜20質量%含んでいることが好ましい。高分子成分としては、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、天然ゴム等が挙げられる。
【0087】
これらの高分子成分を含んだ塗布液としては特に制限はなく、例えば、一般用及び産業用ハロゲン化銀感光材料、感熱材料、熱現像感光材料、フォトレジスト、LCDや有機EL等に代表される電機光学パネルのデバイス用の塗布液が挙げられる。電気光学パネル用のデバイスとしてはCRTや液晶表示装置の視認性を改善するために、表示装置前面に張り付ける反射防止層が形成された光学材料が挙げられる。ところで、テレビのような大画面の表示装置では、直接、物が接触することがあり傷が付き易い。そこで、通常は傷つき防止のためにクリアハードコート層を支持体上に形成した光学材料、又は反射防止層が形成された光学材料が用いられる。以下、クリアハードコート層を支持体上に形成した光学材料、又は反射防止層が形成された光学材料(反射防止フィルム)に付き説明する。
【0088】
(反射防止フィルム)
クリアハードコート層を有した光学材料に付き説明する。クリアハードコート層としては活性線硬化樹脂層が好ましく用いられる。活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層を言う。活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させてハードコート層が形成される。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
【0089】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
【0090】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、又はプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る。例えば、特開昭59−151110号に記載のものを用いることが出来る。例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)一部との混合物等が好ましく用いられる。
【0091】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることが出来、特開昭59−151112号に記載のものを用いることが出来る。
【0092】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることが出来、特開平1−105738号に記載のものを用いることが出来る。
【0093】
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
【0094】
これら紫外線硬化性樹脂の光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。光増感剤と共に使用してもよい。上記光反応開始剤も光増感剤として使用出来る。又、エポキシアクリレート系の光反応開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光反応開始剤又光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
【0095】
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が1つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。又不飽和二重結合を2つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることが出来る。
【0096】
本発明において使用し得る紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用出来る。
【0097】
又、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
【0098】
これらの活性線硬化樹脂層はグラビアコータ、ディップコータ、リバースコータ、ワイヤーバーコータ、ダイコータ、インクジェット法等公知の方法で塗設することが出来る。
【0099】
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は好ましくは、5〜150mJ/cm2であり、特に好ましくは20〜100mJ/cm2である。又、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。
【0100】
紫外線硬化樹脂層組成物塗布液の有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、或いはこれらを混合し利用出来る。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)又はプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0101】
又、紫外線硬化樹脂層組成物塗布液には、特にシリコン化合物を添加することが好ましい。例えば、ポリエーテル変性シリコンオイルなどが好ましく添加される。ポリエーテル変性シリコンオイルの数平均分子量は、例えば、1,000〜100,000、好ましくは、2,000〜50,000が適当であり、数平均分子量が1,000未満では、塗膜の乾燥性が低下し、逆に、数平均分子量が100,000を越えると、塗膜表面にブリードアウトしにくくなる傾向にある。
【0102】
シリコン化合物の市販品としては、DKQ8−779(ダウコーニング社製商品名)、SF3771、SF8410、SF8411、SF8419、SF8421、SF8428、SH200、SH510、SH1107、SH3749、SH3771、BX16−034、SH3746、SH3749、SH8400、SH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、BY−16−837、BY−16−839、BY−16−869、BY−16−870、BY−16−004、BY−16−891、BY−16−872、BY−16−874、BY22−008M、BY22−012M、FS−1265(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社製商品名)、KF−101、KF−100T、KF351、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、シリコーンX−22−945、X22−160AS(以上、信越化学工業社製商品名)、XF3940、XF3949(以上、東芝シリコーン社製商品名)、ディスパロンLS−009(楠本化成社製)、グラノール410(共栄社油脂化学工業(株)製)、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(GE東芝シリコーン製)、BYK−306、BYK−330、BYK−307、BYK−341、BYK−344、BYK−361(ビックケミ−ジャパン社製)日本ユニカー(株)製のLシリーズ(例えばL7001、L−7006、L−7604、L−9000)、Yシリーズ、FZシリーズ(FZ−2203、FZ−2206、FZ−2207)等が挙げられ、好ましく用いられる。
【0103】
これらの成分は基材や下層への塗布性を高める。積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0104】
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、前述のものを用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚として0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。又、ドライ膜厚としては0.1〜20μm、好ましくは1〜20μmである。特に好ましくは8〜20μmである。
【0105】
又、鉛筆硬度は、2H〜8Hのハードコート層であることが好ましい。特に好ましくは3H〜6Hであることが好ましい。鉛筆硬度は、作製したハードコートフィルム試料を温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K−5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い、1kgの加重にて各硬度の鉛筆で引っ掻きを10回繰り返し、傷が全く認められない引っ掻きの本数を表したものである。
【0106】
紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥中又は後に、紫外線を照射するのがよく、前記の5〜150mJ/cm2という活性線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒〜5分程度がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率又は作業効率の観点から0.1〜10秒がより好ましい。又、これら活性線照射部の照度は50〜150mW/m2であることが好ましい。
【0107】
反射防止層を有した光学材料に付き説明する。本発明の光学材料に用いられる反射防止層は低屈折率層のみの単層構成でも、又多層の屈折率層でもどちらでも構成することが出来る。通常、反射防止層は被塗布物上のハードコート層(クリアハードコート層或いは防眩層)の表面上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層出来る。反射防止層は、被塗布物よりも屈折率の高い高屈折率層と、被塗布物よりも屈折率の低い低屈折率層を組合せて構成したり、特に好ましくは、3層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、被塗布物側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(被塗布物又はハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましい。ハードコート層が高屈折率層を兼ねてもよい。
【0108】
本発明に係わる反射防止層の好ましい層構成の例を下記に示す。ここで/は積層配置されていることを示している。
【0109】
被塗布物/ハードコート層/低屈折率層
被塗布物/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
被塗布物/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
被塗布物/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
被塗布物/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
被塗布物/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
〈低屈折率層〉
本発明に用いられる低屈折率層では以下の中空シリカ系微粒子が好適に用いられる。
【0110】
(中空シリカ系微粒子)
中空微粒子は、(I)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、又は(II)内部に空洞を有し、且つ内容物が溶媒、気体又は多孔質物質で充填された空洞粒子である。尚、低屈折率層には(I)複合粒子又は(II)空洞粒子の何れかが含まれていればよく、又双方が含まれていてもよい。
【0111】
尚、空洞粒子は内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体又は多孔質物質等の内容物で充填されている。この様な中空球状微粒子の平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあることが望ましい。使用される中空球状微粒子は、形成される透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、形成される低屈折率層等の透明被膜の膜厚の2/3〜1/10の範囲にあることが望ましい。これらの中空球状微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)が好ましい。
【0112】
複合粒子の被覆層の厚さ又は空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあることが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することが出来ないことがあり、後述する塗布液成分である重合度の低いケイ酸モノマー、オリゴマー等が容易に複合粒子の内部に進入して内部の多孔性が減少し、低屈折率の効果が十分得られないことがある。又、被覆層の厚さが20nmを越えると、前記ケイ酸モノマー、オリゴマーが内部に進入することはないが、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率の効果が十分得られなくなることがある。又空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持出来ないことがあり、又厚さが20nmを越えても、低屈折率の効果が十分に現れないことがある。
【0113】
複合粒子の被覆層又は空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。又、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P23、Sb23、MoO3、ZnO2、WO3等が挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgF等からなるものが挙げられる。この内、特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P23、Sb23、MoO3、ZnO2、WO3等との1種又は2種以上を挙げることが出来る。この様な多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOX)で表した時のモル比MOX/SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても細孔容積が小さく、屈折率の低い粒子が得られない。又、多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が大きくなり、更に屈折率が低いものを得ることが難しいことがある。
【0114】
この様な多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。尚、この様な多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることが出来る。又、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質等が挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒等が含まれていてもよい。又多孔質物質としては、前記多孔質粒子で例表した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
【0115】
この様な中空球状微粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。
【0116】
この様にして得られた中空微粒子の屈折率は、内部が空洞であるので屈折率が低く、それを用いた低屈折率層の屈折率は、1.30〜1.50であることが好ましく、1.35〜1.44であることが更に好ましい。
【0117】
外殻層を有し、内部が多孔質又は空洞である中空シリカ系微粒子の低屈折率層塗布液中の含量(質量)は、10〜80質量%が好ましく、更に好ましくは20〜60質量%である。
【0118】
(テトラアルコキシシラン化合物又はその加水分解物)
低屈折率層には、ゾルゲル素材としてテトラアルコキシシラン化合物又はその加水分解物が含有されることが好ましい。低屈折率層用の素材として、前記無機珪素酸化物以外に有機基を有する珪素酸化物を用いることも好ましい。これらは一般にゾルゲル素材と呼ばれるが、金属アルコレート、オルガノアルコキシ金属化合物及びその加水分解物を用いることが出来る。特に、アルコキシシラン、オルガノアルコキシシラン及びその加水分解物が好ましい。これらの例としては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等)、アリールトリアルコキシシラン(フェニルトリメトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0119】
低屈折率層は前記珪素酸化物と下記シランカップリング剤を含むことが好ましい。具体的なシランカップリング剤の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。又、珪素に対して2置換のアルキル基を持つシランカップリング剤の例として、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0120】
シランカップリング剤の具体例としては、信越化学工業株式会社製KBM−303、KBM−403、KBM−402、KBM−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−603、KBE−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−802、KBM−803等が挙げられる。
【0121】
これらシランカップリング剤は予め必要量の水で加水分解されていることが好ましい。シランカップリング剤が加水分解されていると、前述の珪素酸化物粒子及び有機基を有する珪素酸化物の表面が反応し易く、より強固な膜が形成される。又、加水分解されたシランカップリング剤を予め塗布液中に加えてもよい。
【0122】
又、低屈折率層は、5〜50質量%の量のポリマーを含むことも出来る。ポリマーは、微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。ポリマーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持出来るように調整する。ポリマーの量は、低屈折率層の全量の10〜30質量%であることが好ましい。ポリマーで微粒子を接着するためには、(1)微粒子の表面処理剤にポリマーを結合させるか、(2)微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェルを形成するか、或いは(3)微粒子間のバインダーとして、ポリマーを使用することが好ましい。
【0123】
バインダーポリマーは、飽和炭化水素又はポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが更に好ましい。バインダーポリマーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダーポリマーを得るためには、2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。
【0124】
又、低屈折率層が、熱又は電離放射線により架橋する含フッ素樹脂(以下、「架橋前の含フッ素樹脂」とも言う)の架橋からなる低屈折率層であってもよい。架橋前の含フッ素樹脂としては、含フッ素ビニルモノマーと架橋性基付与のためのモノマーから形成される含フッ素共重合体を好ましく挙げることが出来る。上記含フッ素ビニルモノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えば、ビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。架橋性基付与のためのモノマーとしては、グリシジルメタクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルグリシジルエーテル等のように分子内に予め架橋性官能基を有するビニルモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有するビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル等)が挙げられる。後者は共重合の後、ポリマー中の官能基と反応する基ともう1つ以上の反応性基を持つ化合物を加えることにより、架橋構造を導入出来ることが特開平10−25388号、同10−147739号に記載されている。架橋性基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロール及び活性メチレン基等が挙げられる。含フッ素共重合体が、加熱により反応する架橋基、若しくは、エチレン性不飽和基と熱ラジカル発生剤若しくはエポキシ基と熱酸発生剤等の相み合わせにより、加熱により架橋する場合、熱硬化型であり、エチレン性不飽和基と光ラジカル発生剤若しくは、エポキシ基と光酸発生剤等の組合せにより、光(好ましくは紫外線、電子ビーム等)の照射により架橋する場合、電離放射線硬化型である。
【0125】
架橋前の含フッ素共重合体を形成するために用いられる上記各モノマーの使用割合は、含フッ素ビニルモノマーが好ましくは20〜70モル%、より好ましくは40〜70モル%、架橋性基付与のためのモノマーが好ましくは1〜20モル%、より好ましくは5〜20モル%、併用されるその他のモノマーが好ましくは10〜70モル%、より好ましくは10〜50モル%の割合である。
【0126】
低屈折率層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号)により、塗布により形成することが出来る。又、2以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2,761,791号、同2,941,898号、同3,508,947号、同3,526,528号及び原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。低屈折率層の膜厚は50〜200nmであることが好ましく、60〜150nmであることがより好ましい。
【0127】
〈高屈折率層及び中屈折率層〉
反射率の低減のために透明支持体と低屈折率層との間に、高屈折率層を設けることが好ましい。又、該透明支持体と高屈折率層との間に中屈折率層を設けることは、反射率の低減のために更に好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.55〜2.30であることが好ましく、1.57〜2.20であることが更に好ましい。中屈折率層の屈折率は、透明支持体の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.80であることが好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の厚さは、5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0128】
中、高屈折率層は下記一般式(1)で表される有機チタン化合物のモノマー、オリゴマー又はそれらの加水分解物を含有する塗布液を塗布し乾燥させて形成させた屈折率1.55〜2.5の層であることが好ましい。
【0129】
一般式(1) Ti(OR14
式中、R1としては炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基がよいが、好ましくは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。又、有機チタン化合物のモノマー、オリゴマー又はそれらの加水分解物は、アルコキシド基が加水分解を受けて−Ti−O−Ti−のように反応して架橋構造を作り、硬化した層を形成する。
【0130】
有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーとしては、Ti(OCH34、Ti(OC254、Ti(O−n−C374、Ti(O−i−C374、Ti(O−n−C494、Ti(O−n−C374の2〜10量体、Ti(O−i−C374の2〜10量体、Ti(O−n−C494の2〜10量体等が好ましい例として挙げられる。これらは単独で、又は2種以上組合せて用いることが出来る。中でもTi(O−n−C374、Ti(O−i−C374、Ti(O−n−C494、Ti(O−n−C374の2〜10量体、Ti(O−n−C494の2〜10量体が特に好ましい。
【0131】
有機チタン化合物のモノマー、オリゴマー又はそれらの加水分解物は、塗布液に含まれる固形分中の50.0質量%〜98.0質量%を占めていることが望ましい。固形分比率は50質量%〜90質量%がより好ましく、55質量%〜90質量%が更に好ましい。この他、塗布組成物には有機チタン化合物のポリマー(予め有機チタン化合物の加水分解を行って架橋したもの)或いは酸化チタン微粒子を添加することも好ましい。高屈折率層及び中屈折率層は、微粒子として金属酸化物粒子を含み、更にバインダーポリマーを含むことが好ましい。
【0132】
上記塗布液調製法で加水分解/重合した有機チタン化合物と金属酸化物粒子を組合せると、金属酸化物粒子と加水分解/重合した有機チタン化合物とが強固に接着し、粒子の持つ硬さと均一膜の柔軟性を兼ね備えた強い塗膜を得ることが出来る。
【0133】
高屈折率層及び中屈折率層に用いる金属酸化物粒子は、屈折率が1.80〜2.80であることが好ましく、1.90〜2.80であることが更に好ましい。金属酸化物粒子の1次粒子の質量平均径は、1〜150nmであることが好ましく、1〜100nmであることが更に好ましく、1〜80nmであることが最も好ましい。層中での金属酸化物粒子の質量平均径は、1〜200nmであることが好ましく、5〜150nmであることがより好ましく、10〜100nmであることが更に好ましく、10〜80nmであることが最も好ましい。金属酸化物粒子の平均粒径は、20〜30nm以上であれば光散乱法により、20〜30nm以下であれば電子顕微鏡写真により測定される。金属酸化物粒子の比表面積は、BET法で測定された値として、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることが更に好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
【0134】
金属酸化物粒子の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも1種の元素を有する金属酸化物であり、具体的には二酸化チタン(例、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化ジルコニウムが挙げられる。中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。金属酸化物粒子は、これらの金属の酸化物を主成分とし、更に他の元素を含むことが出来る。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びS等が挙げられる。
【0135】
金属酸化物粒子は表面処理されていることが好ましい。表面処理は、無機化合物又は有機化合物を用いて実施することが出来る。表面処理に用いる無機化合物の例としては、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム及び酸化鉄が挙げられる。中でもアルミナ及びシリカが好ましい。表面処理に用いる有機化合物の例としては、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が挙げられる。中でも、シランカップリング剤が最も好ましい。
【0136】
高屈折率層及び中屈折率層中の金属酸化物粒子の割合は、5〜65体積%であることが好ましく、より好ましくは10〜60体積%であり、更に好ましくは20〜55体積%である。
【0137】
上記金属酸化物粒子は、媒体に分散した分散体の状態で、高屈折率層及び中屈折率層を形成するための塗布液に供される。金属酸化物粒子の分散媒体としては、沸点が60〜170℃の溶剤を用いることが好ましい。分散溶媒の具体例としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
【0138】
又金属酸化物粒子は、分散機を用いて媒体中に分散することが出来る。分散機の例としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが挙げられる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。又、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例としては、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが挙げられる。
【0139】
高屈折率層及び中屈折率層は、架橋構造を有するポリマー(以下、架橋ポリマーとも言う)をバインダーポリマーとして用いることが好ましい。架橋ポリマーの例として、ポリオレフィン等の飽和炭化水素鎖を有するポリマー、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド及びメラミン樹脂等の架橋物が挙げられる。中でも、ポリオレフィン、ポリエーテル及びポリウレタンの架橋物が好ましく、ポリオレフィン及びポリエーテルの架橋物が更に好ましく、ポリオレフィンの架橋物が最も好ましい。
【0140】
モノマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーが最も好ましいが、その例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミド等が挙げられる。アニオン性基を有するモノマー、及びアミノ基又は4級アンモニウム基を有するモノマーは市販のモノマーを用いてもよい。好ましく用いられる市販のアニオン性基を有するモノマーとしては、KAYAMARPM−21、PM−2(日本化薬(株)製)、AntoxMS−60、MS−2N、MS−NH4(日本乳化剤(株)製)、アロニックスM−5000、M−6000、M−8000シリーズ(東亞合成化学工業(株)製)、ビスコート#2000シリーズ(大阪有機化学工業(株)製)、ニューフロンティアGX−8289(第一工業製薬(株)製)、NKエステルCB−1、A−SA(新中村化学工業(株)製)、AR−100、MR−100、MR−200(第八化学工業(株)製)等が挙げられる。又、好ましく用いられる市販のアミノ基又は4級アンモニウム基を有するモノマーとしてはDMAA(大阪有機化学工業(株)製)、DMAEA,DMAPAA(興人(株)製)、ブレンマーQA(日本油脂(株)製)、ニューフロンティアC−1615(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
【0141】
ポリマーの重合反応は、光重合反応又は熱重合反応を用いることが出来る。特に光重合反応が好ましい。重合反応のため、重合開始剤を使用することが好ましい。例えば、ハードコート層のバインダーポリマーを形成するために用いられる熱重合開始剤、及び光重合開始剤が挙げられる。
【0142】
重合開始剤として市販の重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤に加えて、重合促進剤を使用してもよい。重合開始剤と重合促進剤の添加量は、モノマーの全量の0.2〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0143】
反射防止層の各層又はその塗布液には、前述した成分(金属酸化物粒子、ポリマー、分散媒体、重合開始剤、重合促進剤)以外に、重合禁止剤、レベリング剤、増粘剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、帯電防止剤や接着付与剤を添加してもよい。高屈折率層及び中屈折率層は、高屈折率層と同様な塗布方法により、高屈折率層形成用塗布液及び中屈折率層形成用塗布液を塗布し形成することが可能である。
【0144】
中〜高屈折率層及び低屈折率層の塗設後、金属アルコキシドを含む組成物の加水分解又は硬化を促進するため、活性エネルギー線を照射することが好ましい。より好ましくは、各層を塗設するごとに活性エネルギー線を照射することである。使用する活性エネルギー線は、紫外線、電子線、γ線等で、化合物を活性させるエネルギー源であれば制限なく使用出来るが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。又、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光等も用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20mJ/cm2〜10,000mJ/cm2が好ましく、更に好ましくは、100mJ/cm2〜2,000mJ/cm2であり、特に好ましくは、400mJ/cm2〜2,000mJ/cm2である。以下に、本発明の反射防止フィルムを用いた偏光板について述べる。
【0145】
(偏光板)
偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明の反射防止フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理した反射防止フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面にも該反射防止フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。本発明の反射防止フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは面内リターデーションRoが590nmで、20〜70nm、Rtが70〜400nmの位相差を有していることが好ましい。これらは例えば、特開2002−71957号、特願2002−155395号記載の方法で作製することが出来る。或いは更にディスコチック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348号記載の方法で光学異方性層を形成することが出来る。本発明の反射防止フィルムと組合せて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることが出来る。
【0146】
裏面側に用いられる偏光板保護フィルムとしては、市販の透明基材フィルムとして、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UCR−3(コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
【0147】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光膜の面上に、本発明の反射防止フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
【0148】
従来の反射防止フィルムを使用した偏光板は干渉ムラが認められ、60℃、90%RHの条件での耐久性試験により、干渉ムラが増大したが、これに対して本発明の反射防止フィルムを用いた偏光板は、干渉ムラが少ない。又、60℃、90%RHの条件での耐久性試験によっても干渉ムラが増加することはなく、裏面側に光学補償フィルムを有する偏光板であっても、耐久性試験後も視認性を提供することが出来た。
【0149】
(画像表示装置)
本発明の偏光板を画像表示装置に組み込むことによって、干渉ムラの少ない、種々の視認性に優れた画像表示装置を作製することが出来る。本発明の反射防止フィルムは反射型、透過型、半透過型LCD或いはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。又、本発明の反射防止フィルムは干渉ムラが著しく少なく、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示装置にも好ましく用いられる。特に画面が30型以上の大画面の表示装置では、干渉ムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
【実施例】
【0150】
以下、実施例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されない。「%」は「質量%」を表す。
【0151】
実施例1
(基材の準備)
プラズマ処理する基材としてハードコート付きTACフィルム(コニカミノルタオプト社製KC8UX)を用いた。
【0152】
(プラズマ処理)
準備した基板に、図1に示す大気圧プラズマ処理装置、図2に示す予備加熱装置を設けた大気圧プラズマ処理装置、図3に示すプラズマガス温度調整装置を有する大気圧プラズマ処理装置、図4に示す冷却ガス供給装置を有する大気圧プラズマ処理装置、図6に示すコロナ放電処理装置、図7に示すフレームプラズマ処理装置を使用し、表1に示すプラズマ処理する時の表面処理条件でプラズマ処理する時の基材の表面温度と裏面温度との差を制御しながらプラズマ処理を行い試料を作製しNo.101〜109とした。尚、比較試料として、プラズマ処理する時の基材の表面温度と裏面温度との差を制御しないでプラズマ処理を行い試料を作製しNo.110〜114とした。尚、基材の表面温度と裏面温度との測定は、キーエンス(株)製の赤外放射温度計IT2−01を使用して行った。基材の表面温度を測定した位置は、プラズマ処理を受けた直後とした。又、基材の裏面温度を測定した位置は、基材をバックアップしているロール表面が露出している部分で、ロール表面温度を基材裏面温度とした。
【0153】
大気圧プラズマ処理装置を使用したプラズマ処理条件
処理条件1:パール工業社製高周波電源80kHz 印加出力1.0W/cm2
ガス条件 窒素ガス 4.5L/min/cm、酸素ガス 0.5L/min/cm
処理条件2:パール工業社製高周波電源80kHz 印加出力1.5W/cm2
ガス条件 窒素ガス 4.5L/min/cm、酸素ガス 0.5L/min/cm
処理条件3:パール工業社製高周波電源80kHz 印加出力2.0W/cm2
ガス条件 窒素ガス 4.5L/min/cm、酸素ガス 0.5L/min/cm
コロナ処理装置を使用したプラズマ処理条件
処理条件4:印加出力 0.5W/cm2
フレームプラズマ処理(火炎処理)装置を使用したプラズマ処理条件
処理条件5:燃焼ガス混合比(容量比) プロパンガス:空気=1:18
プラズマ値=45、燃焼エネルギー=5000BTU
尚、処理条件1〜5の基材搬送速度は何れも50m/分とした。
【0154】
評価
作製した試料No.101〜114に付き、基材ダメージ(皺(シワ)と熱変形)の有無を目視で観察し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表1に示す。
【0155】
基材ダメージ(皺(シワ)と熱変形の有無)の評価ランク
○:皺(シワ)や熱変形などの基材ダメーシ#が目視上全く観察されない
△:わずかに皺(シワ)或いは熱変形らしきものが目視上観察されるが製品上は問題ないレベル
×:皺(シワ)或いは熱変形が目視上観察出来、製品上問題と思われるレベル
××:皺(シワ)或いは熱変形が一見して観察出来、製品上明らかに問題と思われるレベル
【0156】
【表1】

【0157】
本発明の有効性が確認された。
【0158】
実施例2
(ハードコート付きTACフィルムの準備)
コニカミノルタオプト社製KC8UXを使用した。
【0159】
(プラズマ処理)
準備したハードコート付きTACフィルム(コニカミノルタオプト社製KC8UX)のハードコートを実施例1で作製した試料No.101〜114と同じ条件でプラズマ処理し、プラズマ処理済みハードコート付きTACフィルムを作製しNo.2−1〜2−14とした。
【0160】
(反射防止フィルムの作製)
準備したプラズマ処理済みハードコート付きTACフィルムを作製しNo.2−1〜2−14を使用し、クリアハードコート層の上に下記の高屈折率層、低屈折率層を塗布法により形成し、反射防止フィルムを作製し試料No.201〜214とした。
【0161】
(高屈折率層の塗布液処方)
下記材料を攪拌、混合し高屈折率層塗布液とした。
【0162】
導電性アンチモン酸亜鉛微粒子分散液(セルナックスCX−Z610M−F2、日産化学社製、溶媒MeOH、固形分60%) 52質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(マトリックス) 9質量部
イルガキュア184(光重合開始剤) 1.5質量部
イルガキュア907(チバスペシャルティケミカルズ製;光重合開始剤)
0.8質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 250質量部
イソプロピルアルコール(IPA) 500質量部
メチルエチルケトン(MEK) 180質量部
BYK−UV3510(ビックケミ−ジャパン社製) 0.3質量部
高屈折率層の厚さは120nm、屈折率は1.62であった。
【0163】
〈低屈折率層形成用塗布液〉
下記材料を攪拌、混合し低屈折率層塗布液した。
下記テトラエトキシシラン加水分解物A 123質量部
下記中空シリカ系微粒子分散液 18質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM503)
4質量部
FZ−2222(日本ユニカー製、10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液) 0.2質量部
イソプロピルアルコール(IPA) 425質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 425質量部
アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート 0.3質量部
低屈折率層の厚さは95nm、屈折率は1.37であった。
〈テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製〉
テトラエトキシシラン230gとエタノール440gを混合し、これに酢酸水溶液(10%)を100g添加した後に、25℃で28時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
【0164】
〈中空シリカ系微粒子分散液の調製〉
平均粒径5nm、SiO2濃度20%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として0.98%のケイ酸ナトリウム水溶液9000gとAl23として1.02%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20%のSiO2・Al23核粒子分散液を調製した。(工程(a))
この核粒子分散液500gに純水1700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2濃度3.5%)3000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。(工程(b))
次いで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1125gを加え、更に濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO2・Al23多孔質粒子の分散液を調製した(工程(c))。上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750g及び28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO228%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。次いで、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20%の中空シリカ系微粒子分散液を調製した。
【0165】
この中空シリカ系微粒子の第1シリカ被覆層の厚さは3nm、平均粒径は47nm、MOx/SiO2(モル比)は0.0017、屈折率は1.28であった。ここで、平均粒径は動的光散乱法により測定した。
【0166】
評価
作製した各試料No.201〜214に付き、反射率を下記の方法で評価し、下記の評価ランクに従って評価した結果を表2に示す。
【0167】
反射率の評価方法
各試料の測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて、分光光度計(日立製作所(株)製 U−4000型)を用いて、可視光領域(400nm〜700nm)の反射率の測定を行った。
【0168】
【表2】

【0169】
比較例では基材ダメージのために反射防止層の膜厚が均一でなくなり、その結果反射率が高くなってしまったり、バラツキが大きくなる傾向であったが、本発明によれば、反射率も低く出来、且つ、バラツキ量も少ないことが確認出来た。従って本発明の有効性が確認された。
【0170】
尚、試料No.201〜214を使用し、各試料No.201〜214の裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理した反射防止フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせ、偏光板を作製し試料No.201a〜214aとした。作製した各試料No.201a〜214aのカール・平面性を以下に示す方法で評価し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表3に示す。
【0171】
カール・平面性の評価方法
作製した偏向板を10cm×10cmにカットし、60℃、90%RHの雰囲気下で48時間放置した後、常法に従いカール度及び平面性の変化を評価し、以下の基準に則り判定を行った。
【0172】
カール・平面性の評価ランク
◎:カールが認められず、又平面性の劣化も認められない
○:弱いカールが認められるが、平面性の大きな劣化はなく、実用上問題なし
×:強いカールが認められ、平面性も悪化している
××:著しいカールと平面性の悪化が認められる
【0173】
【表3】

【0174】
本発明の有効性が確認された。
【0175】
実施例3
市販の液晶表示パネル(NEC製 カラー液晶ディスプレイ MultiSync LCD1525J:型名 LA−1529HM)の最表面フィルムを注意深く剥がし、実施例2の試料No.201〜214の反射防止フィルム(それぞれを幅方法100mm×進行方法200mmのサイズ)を貼り、ムラを目視で確認した結果、本発明の反射防止フィルム試料No.201〜209は比較試料No.210〜214に比べムラがなく、画像の視認性が良好であることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】樹脂フィルムにプラズマ処理を行う大気圧プラズマ処理装置の模式図である。
【図2】予備加熱装置により加熱された樹脂フィルムにプラズマ処理を行う大気圧プラズマ処理装置の模式図である。
【図3】樹脂フィルムにプラズマ処理を行うプラズマガス温度調整装置を有する大気圧プラズマ処理装置の模式図である。
【図4】樹脂フィルムにプラズマ処理を行う領域に冷却ガスを供給するす冷却ガス供給装置を有する大気圧プラズマ処理装置の模式図である。
【図5】樹脂フィルムにプラズマ処理を行った後の樹脂フィルム表面状態を測定する樹脂フィルム表面状態測定装置を有する大気圧プラズマ処理装置の模式図である。
【図6】樹脂フィルムにプラズマ処理を行うコロナ放電処理装置の模式図である。
【図7】樹脂フィルムにプラズマ処理を行うフレームプラズマ処理装置の模式図である。
【符号の説明】
【0177】
1a〜1e大気圧プラズマ処理装置
1f コロナ放電処理装置
1g フレームプラズマ処理装置
101 高周波高電圧電源
102 ロール電極
103 曲面電極
104 プラズマガス供給装置
104b プラズマガス供給口
104d プラズマガス温度調整装置
105a 第1温度計測装置
105b 第2温度計測装置
106 制御手段
107 予備加熱装置
108a 第3温度計測装置
108b 第4温度計測装置
109 第5温度計測装置
110 冷却ガス供給装置
110c 冷却ガス供給口
111 樹脂フィルム表面状態測定装置
112 ガス供給装置
112c ガスバーナー
2 樹脂フィルム
3 ニップロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持手段に保持され、連続に走行する樹脂フィルムの表面をプラズマ処理により改質するプラズマ処理方法において、
前記プラズマ処理する時の前記樹脂フィルムの表面温度と、前記樹脂フィルムの裏面温度との温度差を制御し樹脂フィルムの表面をプラズマ処理することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
前記制御はプラズマ処理する時の樹脂フィルムの表面温度と樹脂フィルムの裏面温度とを温度計測手段により計測し、該温度計測手段の計測結果に基づき制御手段を介してプラズマ処理が行われることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記プラズマ処理が、コロナ処理、プラズマ処理、大気圧下のプラズマ処理、フレームプラズマ処理(火炎処理)から選ばれる1つ又は少なくとも2つの組合せであることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記保持手段は保持補助手段を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記樹脂フィルムがセルロースエステル樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のプラズマ処理方法により表面処理或いは薄膜形成された樹脂フィルムを用いて製造されたことを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項7】
請求項6に記載の反射防止フィルムを使用することを特徴とする偏光板。
【請求項8】
請求項7に記載の偏光板を使用することを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−314707(P2007−314707A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147821(P2006−147821)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】