説明

プラズマ処理装置

【課題】真空容器内に強い誘導電磁界を形成し、且つ、プラズマの密度分布をより均一にすることができると共に、パーティクルの発生や高周波アンテナの導体のスパッタリングによる基体の汚染を防ぐことができるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置10は、高周波放電による誘導結合方式のプラズマ処理装置において、真空容器11と、前記真空容器11の壁の内面111Bと外面111Aの間に設けられたアンテナ配置部12と、前記アンテナ配置部12に配置された周回しないで終端する1個の高周波アンテナと、前記アンテナ配置部12と前記真空容器の内部112を仕切る誘電体製の仕切材15とを備え、前記高周波アンテナ13の長さが、当該高周波の1/4波長の長さよりも短いことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体表面処理等に用いることができる誘導結合型のプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基体表面に薄膜を形成したり、基体表面に対するエッチング処理を行うために、誘導結合型プラズマ処理装置が用いられている。誘導結合型プラズマ処理装置では、真空容器内に水素等のプラズマ生成ガスを導入したうえで誘導電磁界を生成することによりプラズマ生成ガスを分解し、プラズマを生成する。そして、プラズマ生成ガスとは別に、真空容器内に成膜原料ガスあるいはエッチングガスを導入し、プラズマにより成膜原料ガスの分子を分解して基体上に堆積させ、あるいはエッチングガスの分子を分解してエッチングに用いるイオンやラジカルを生成する。
【0003】
特許文献1には、誘導電磁界を生成するための高周波アンテナを真空容器の天井の上に載置し、前記天井のうち高周波アンテナの直下の部分を、誘導電磁界を通過させるための誘電体製の窓とした外部アンテナ方式のプラズマ処理装置が記載されている。外部アンテナ方式では、近年の被処理基体の大型化に対応してプラズマ処理装置を大型化を図ると、誘電体製の窓は機械的強度を保つために厚くする必要が生じるため、真空容器内に導入される誘導電磁界の強度が小さくなってしまう。そこで、高周波アンテナを真空容器の内部に設けた内部アンテナ方式のものが用いられている(特許文献2〜4)。
【0004】
また、特許文献3及び4に記載の発明では、U字形や半円形等のように、線状の導体が周回しないで終端する高周波アンテナ(巻き数が1未満のコイルに相当)を用いている。これにより、高周波アンテナのインダクタンスを低くすることができるため、高周波電力の投入時に高周波アンテナの電圧が抑えられ、その結果、被処理基体がプラズマによりダメージを受けることを防ぐことができる。
【0005】
更に、特許文献4に記載の発明では、アンテナ導体の長さを高周波の1/4波長の長さよりも短くなるようにしている。これにより、アンテナ導体において定在波が発生することを抑え、生成されるプラズマの均一性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08-227878号公報([0010], 図5)
【特許文献2】特開平11-317299号公報([0044]-[0046], 図1-2)
【特許文献3】特開2001-035697号公報([0050]-[0051], 図11)
【特許文献4】特開2004-039719号公報([0019]-[0021], 図3)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】節原裕一、江部明憲,「メートルサイズの大面積プロセスに向けたプラズマ技術」,表面技術,表面技術協会,2005年5月,第56巻,第5号,pp. 18-25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
内部アンテナ方式では、高周波アンテナの導体とプラズマとの間に生じる直流のセルフバイアス電圧により、プラズマ中のイオンが高周波アンテナに向かって加速される。そのため、アンテナ導体が露出していると、高周波アンテナ導体自身がスパッタされ、その寿命が短くなるうえ、スパッタされた導体の原子やイオンがプラズマ中に混入し、被処理基体の表面や真空容器の内壁に付着して、薄膜や被エッチング基体に不純物として混入する、という問題が生じる。そのため、特許文献2に記載の発明では、高周波アンテナの導体である銅やアルミニウム等よりもスパッタされ難いセラミックスや石英等から成る誘電体(絶縁体)のパイプで高周波アンテナを覆っている。ここでパイプを用いるのは、アンテナ導体の温度上昇を防ぐことを目的として冷却水を流すためである。しかし、このような構成では、アンテナ導体及び誘電体パイプの端部に、高周波電力を投入するための電気的な接続部と冷却水の給排水のための接続部の双方を設ける必要があるため、構造が複雑になり、アンテナの脱着や保守点検に支障をきたす。
【0009】
また、内部アンテナ方式では、真空容器の内部空間に高周波アンテナが突出しているため、高周波アンテナの直近にプラズマが生成される。これにより、プラズマの密度が高周波アンテナの直近において特に高くなり、密度分布の均一性が低下する。それと共に、高周波アンテナ(又はその周囲の誘電体パイプ)の表面に成膜時における薄膜材料やエッチング時の副生成物が付着してしまう、という問題も生じる。このような付着物は、基体の表面に落下してパーティクルが発生する原因となる。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、真空容器内に強い誘導電磁界を形成し、且つ、プラズマの密度分布をより均一にすることができると共に、パーティクルの発生や高周波アンテナの導体のスパッタリングによる基体の汚染を防ぐことができるプラズマ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係るプラズマ処理装置は、高周波放電による誘導結合方式のプラズマ装置において、
a) 真空容器と、
b) 前記真空容器の壁の内面と外面の間に設けられたアンテナ配置部と、
c) 前記アンテナ配置部に配置された周回しないで終端する1個の高周波アンテナと、
d) 前記アンテナ配置部と前記真空容器の内部を仕切る誘電体製の仕切材と、
を備え、前記高周波アンテナの長さが、当該高周波の1/4波長の長さよりも短いことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るプラズマ処理装置では、真空容器の壁の内面と外面の間にアンテナ配置部を設けている。このようなアンテナ配置部内に配置された高周波アンテナは、内部アンテナ方式とほとんど変わらない強い誘導電磁界を真空容器の内部に生成することができる。
【0013】
一方、従来の内部アンテナ方式とは異なり、高周波アンテナと真空容器内が誘電体製の仕切材により仕切られるため、パーティクルが発生したり、高周波アンテナがスパッタされたりすることを防ぐことができる。また、高周波アンテナの温度が上昇することを抑えることができる。
【0014】
また、このようにプラズマを生成する領域と高周波アンテナを分離することにより、高周波アンテナの直近でプラズマの密度が特に高くなるということがなくなるため、内部アンテナ方式のように密度分布の均一性が低下することを防ぐことができる。更に、アンテナの長さが高周波の1/4波長よりも短いため定在波が生じないという点からも、密度分布の均一性の低下を防ぐことができる。
【0015】
仕切材には真空容器の壁とは別の誘電体製の部材を用いることができる。また、真空容器の壁が誘電体製である場合にはその壁の一部を仕切材として用いることもできる。
【0016】
前記高周波アンテナは真空容器の壁の中に埋め込むこともできるが、前記内面と前記外面の間に設けられた空洞内に配置するのがより容易である。前者の場合は真空容器の壁のうち高周波アンテナを埋め込んだ部分がアンテナ配置部に該当し、後者の場合は空洞がアンテナ配置部に該当する。
【0017】
前記空洞には密閉されたものを用いることができる。これにより、空洞内への異物の侵入を防ぐことができる。また、密閉された空洞内が真空であるか又は不活性ガスで満たされていれば、空洞内において不要な放電が生じることを防ぐことができる。
【0018】
前記空洞内は固体の誘電体で満たされていてもよい。これにより、空洞内において不要な放電が生じることを防ぐことができる。この場合、空洞内を密閉する必要はない。また、空洞を用いる代わりに、前記壁の少なくとも一部が固体の誘電体から成り、前記高周波アンテナが該誘電体内に埋め込まれている、という構成を採ることもできる。
【0019】
前記空洞の前記外面側には蓋が設けられていてもよい。このような蓋を用いれば、保守点検等の際に蓋を開けることで、真空容器の壁の外面側と空洞内の間で高周波アンテナを容易に出し入れすることができる。また、前記蓋に前記高周波アンテナを取り付けることができる。これにより、蓋を着脱するだけで、更に容易に高周波アンテナを出し入れすることができる。
【0020】
本発明に係るプラズマ処理装置は、アンテナ配置部を複数備えることができる。これにより、真空容器内に形成されるプラズマの密度の均一性を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るプラズマ処理装置によれば、真空容器内に強い誘導電磁界を形成することができ、且つ、プラズマの密度分布をより均一にするができると共に、パーティクルの発生や高周波アンテナの導体のスパッタリングによる基体の汚染を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るプラズマ処理装置の第1の実施例を示す縦断面図(a)及びアンテナ配置部12付近の拡大図(b)。
【図2】高周波アンテナと高周波電源の接続の一例を示す上面図。
【図3】本発明に係るプラズマ処理装置の第2の実施例を示す拡大縦断面図。
【図4】第2実施例のプラズマ処理装置の第1変形例を示す拡大縦断面図。
【図5】第2実施例のプラズマ処理装置の第2変形例を示す拡大縦断面図。
【図6】本発明に係るプラズマ処理装置の第3の実施例を示す拡大縦断面図。
【図7】高周波アンテナを外面111Aと内面111Bの間に埋め込む例を示す縦断面図。
【図8】高周波アンテナの一部に板状部材を用いる例を示す側面図及び上面図。
【図9】高周波電力の出力の変化によるプラズマ密度の変化を求めた実験の結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図8を用いて、本発明に係るプラズマ処理装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0024】
まず、図1及び図2を用いて、第1の実施例のプラズマ処理装置10を説明する。プラズマ処理装置10は、真空容器11と、真空容器11の上壁111の外面111Aと内面111Bの間に設けられたアンテナ配置部12と、アンテナ配置部12内に配置された高周波アンテナ13と、アンテナ配置部12内において高周波アンテナ13以外の空間を埋める塊状の誘電体製充填材14と、アンテナ配置部12の上壁内面111B側に設けられた誘電体製の仕切材(仕切板)15と、アンテナ配置部12を上壁外面111A側から覆う蓋16と、真空容器11の側壁に設けられたガス排出口17及びガス導入口18と、真空容器の内部空間112に配置された基体保持部19と、を有する。
【0025】
アンテナ配置部12は、具体的には以下のように構成されている。真空容器11の上壁111の一部には貫通孔が設けられており、この貫通孔を埋めるように板状の支持部材121が上壁111に取り付けられている。そして、この支持部材121に上側から空間がくりぬかれている。この空間がアンテナ配置部12である。アンテナ配置部12内には、上述のように高周波アンテナ13と誘電体製充填材14が設けられている。蓋16はその縁が支持部材121の上面に固定されている。
【0026】
高周波アンテナ13は金属製のパイプをU字形に曲げたものである。金属製パイプの長さは35cmである。ここで、商用の高周波電源でよく用いられている周波数13.56MHzの高周波の伝搬波長は、自由空間では22mであるが、プラズマとの結合を考慮した伝搬モデルでは約13mであると見積もられている(非特許文献1)。従って、上記金属製パイプの長さは、周波数13.56MHzの高周波の伝搬波長の1/4よりも短い。高周波アンテナ13はその両端が、フィードスルー161を介して蓋16に取り付けられている。高周波アンテナ13のパイプは、プラズマ処理装置10の使用時に水などの冷媒を通過させることにより高周波アンテナ13を冷却する機能を有する。
【0027】
仕切材15は、アンテナ配置部12内がプラズマに晒されることを防ぐためのものであるが、それ自体はプラズマに晒される。そのため、仕切材15の材料には、石英等、耐プラズマ性の高いものを用いることが望ましい。一方、誘電体製充填材14は、仕切材15が存在することでプラズマに晒されないため、耐プラズマ性よりもむしろ加工性に優れたものを用いることが望ましい。そのような加工性に優れた材料には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)その他の樹脂がある。もちろん、アルミナ、シリカその他のセラミックスを用いてもよい。
【0028】
上壁111と支持部材121の間、支持部材121と蓋16の間、及び蓋16とフィードスルー161の間には真空シールが設けられている。一方、仕切材15は支持部材121に取り付けられているが、仕切材15と支持部材121の間には真空シールがない。
【0029】
ガス排出口17は真空ポンプに接続されており、真空ポンプにより真空容器の内部空間112の空気や水蒸気等がガス排出口17から排出される。ガス導入口18は、真空容器の内部空間112に水素ガス等のプラズマ生成ガスや成膜原料のガスを導入するためのものである。基体保持部19に保持される基体Sは、真空容器11の側壁に設けられた基体搬出入口113から真空容器の内部空間112に搬入され、又は真空容器の内部空間から搬出される。基体搬出入口113は、基体Sの搬出入時以外には気密に閉鎖される。
【0030】
次に、図2を用いて、高周波アンテナ13と高周波電源を接続する構成の一例を説明する。本実施形態では、8個のアンテナ配置部12内に1個ずつ収容された、合計8個の高周波アンテナ13が用いられる。これら8個の高周波アンテナ13は4個ずつの2組に分けられ、組毎に1個の高周波電源が接続されている。各高周波アンテナ13の一方の端部(給電側端部131)には、給電点133から4方向に延びる4本の給電棒134が接続され、この給電点133に高周波電源が接続されている。各高周波アンテナ13の他方の端部(接地側端部132)は接地されている。
【0031】
本実施形態のプラズマ処理装置10の動作を、基体S上に成膜物質を堆積させる場合を例に説明する。まず、基体Sを基体搬出入口113から真空容器の内部空間112に搬入し、基体保持部19の上に載置する。次に、基体搬出入口113を閉鎖し、真空ポンプを用いて、真空容器の内部空間112の空気や水蒸気等をガス排出口17から排出する。続いて、ガス導入口18からプラズマ生成用ガス及び成膜原料ガスを導入する。そして、高周波アンテナ13のパイプに冷媒を流しつつ、高周波アンテナ13に高周波電力を投入する。この高周波電力の投入により高周波アンテナ13の周囲に誘導電磁界が生成される。この誘導電磁界は誘電体製の仕切材15を通過して真空容器の内部空間112に導入され、プラズマ生成用ガスを電離する。これによりプラズマが生成される。プラズマ生成用ガスと共に真空容器の内部空間112に導入された成膜原料ガスはプラズマにより分解され、基体S上に堆積する。
【0032】
本実施形態のプラズマ処理装置10では、真空容器の上壁111の外面111Aと内面111Bの間に設けられたアンテナ配置部12に高周波アンテナ13を配置したため、外部アンテナ方式の場合よりも強い誘導電磁界を真空容器11の内部空間112に生成することができる。また、高周波アンテナ13が配置されたアンテナ配置部12とプラズマが生成される真空容器の内部空間112を仕切材15により分離したため、プラズマが高周波アンテナ13をエッチングして高周波アンテナ13の寿命が短くなることや、薄膜あるいは被処理基体に高周波アンテナ13の材料が不純物として混入することを防ぐことができる。更に、アンテナ配置部12内に誘電体製充填材14を充填したため、アンテナ配置部12内において不要な放電が生じることを防ぐことができる。
【0033】
上記第1実施例では誘電体製充填材14とは別に誘電体製の仕切材(仕切板)15を用いたが、誘電体製充填材14が耐プラズマ性の高い材料から成り、且つ、真空容器の内部空間112と高周波アンテナ13の間に十分な厚みの誘電体製充填材14が存在する場合には、誘電体製充填材14が仕切材の役割を兼ねるため、(誘電体製充填材14とは別の)仕切材15を省略することができる。
【0034】
また、上記第1実施例では塊状の誘電体製充填材14を用いたが、その代わりに誘電体の粉末を用いることもできる。この場合、粉末がアンテナ配置部12から漏出しないように、アンテナ配置部12を密閉する。
【実施例2】
【0035】
次に、図3を用いて、第2の実施例のプラズマ処理装置を説明する。ここでは、第1実施例のプラズマ処理装置10と同じ構成要素は、図3に図1のものと同じ符号を付したうえで説明を省略する。本実施例では、真空容器11の上壁111の外面111Aと内面111Bの間に、アンテナ配置部である空洞22が設けられている。
【0036】
空洞22の内面111B側には誘電体製の仕切材25が設けられており、外面111A側には蓋26が設けられている。仕切材25は、空洞22の内周面の下端において内側に突出した段111Cの上に載置されるように取り付けられている。蓋26の下面には、真空容器11の外側から空洞22に嵌合するように凸部が設けられている。また、蓋26にはフィードスルー261を介して高周波アンテナ13の両端が取り付けられており、この高周波アンテナ13は蓋26の着脱によってプラズマ処理装置から容易に着脱することができる。
【0037】
空洞22は、蓋26と上壁111の間及び仕切材25と上壁111の間に設けられた真空シールにより密閉されている。また、蓋26には空洞排気口27が設けられており、真空容器の内部空間112とは独立に空洞22を真空状態にすることができる。
【0038】
第2実施例のプラズマ処理装置の動作は、基本的には第1実施例のプラズマ処理装置10と同様である。第1実施例との相違は、高周波アンテナ13に高周波電力を投入する前に、空洞排気口27から空洞22内の気体を外部に排出することにより空洞22内を真空にする点である。これにより、空洞22内に不要な放電が生じることを防ぐことができる。
【0039】
次に、図4を用いて、上記第2実施例の第1の変形例を説明する。本変形例では段111Cがなく、仕切材25Aが真空容器の内部空間112側から空洞22を覆うように設けられている。これにより、空洞22を真空容器の内部空間112側に拡大し、高周波アンテナ13の位置を真空容器の内部空間112に近づけることができる。その他の構成は上記第2実施例と同様である。
【0040】
図5を用いて、上記第2実施例の第2の変形例について説明する。本変形例では、上壁111の下面から、上壁111を貫通させることなく孔を設けることにより、空洞22Aが形成されている。従って、空洞22Aの上には上壁111の一部がそのまま残っている。その上壁111が残された部分に、フィードスルーを介して高周波アンテナ13が取り付けられていると共に、空洞排気口27Aが取り付けられている。その他の構成は上記第2実施例の第1の変形例と同様である。
【実施例3】
【0041】
次に、図6を用いて、第3の実施例のプラズマ処理装置を説明する。本実施例では、第2実施例における空洞排気口27の代わりに、空洞不活性ガス導入口37A及び空洞ガス排気口37Bが蓋36に設けられている。空洞不活性ガス導入口37Aからアルゴンや窒素などの不活性ガスを導入し、空洞22内の空気や水蒸気を不活性ガスで置換して空洞ガス排気口37Bから排出することにより、空洞22内を不活性ガスで満たす。これにより、空洞22内を真空排気した場合と同様に、不要な放電が生じることを防ぐことができる。その他の構成は上記第2実施例と同様である。
【実施例4】
【0042】
ここまでは真空容器の外面111Aと内面111Bの間に誘電体製充填材14や空洞22を設けた例を示したが、図7に示すように、空洞を用いることなく、外面111Aと内面111Bの間の位置(アンテナ配置部42)に高周波アンテナ13を埋め込むこともできる。この場合、高周波アンテナ13と上壁111を電気的に絶縁すると共に、高周波アンテナ13の近傍で不要な放電が生じることを防ぐために、両者の間に誘電体を介挿するか、上壁111自体を誘電体製とする。後者の場合、上壁111の全体を誘電体製としてもよいが、上壁111のうち高周波アンテナ13の近傍のみを誘電体製とする方がコストを抑えることができる。ここでの誘電体の材料には上述の誘電体製充填材14と同様のものを用いることができる。また、上壁111のうち高周波アンテナ13と真空容器の内部空間112の間にある部分を誘電体製とすることにより仕切材45を構成することができる。
【0043】
[上記各実施例に共通の変形例]
上記各実施例において、棒状(管状)の高周波アンテナの代わりに、板状の高周波アンテナや、棒状の部材と板状の部材を組み合わせた高周波アンテナを用いることもできる。このように棒状のものと板状のものを使い分け、あるいは組み合わせることにより、アンテナのインピーダンスを調整することができる。図8に、底部が平坦なU字形の金属管の下部に板状部材51が取り付けられた高周波アンテナを示す。この板状部材51の幅や厚みによりアンテナのインピーダンスを調整することができる。
【0044】
また、上記各実施例では、高周波アンテナの形状をU字形としたが、半円形などの円弧状の高周波アンテナを用いることもできる。これらU字形あるいは円弧状の高周波アンテナは巻数が1回未満のコイルであり、巻数が1回以上である場合よりもインダクタンスが小さいため、所定の高周波電力を供給した際にアンテナに発生する電圧を小さくすることができ、効率よくプラズマを生成することができる。また、上記実施例ではアンテナ配置部の個数を8個としたが、その個数は真空容器の容量などに応じて定めることができる。真空容器の容量が比較的小さい場合にはアンテナ配置部を1個のみ設けてもよい。また、上記実施形態ではアンテナ配置部を真空容器の上壁に設けたが、側壁など、上壁以外の壁に設けてもよい。
【0045】
[実験1]
第2実施例においてアンテナ配置部を1個のみとしたプラズマ処理装置につき、真空容器内に生成されるプラズマの密度を測定した。高周波アンテナ13には外径6mmの銅パイプ製であって、U字の底部に長さ150mmに亘って上壁111と平行な部分を有するものを用いた。高周波アンテナ13の底部の位置は上壁111の内壁面の位置に合わせた(図4)。仕切材15Aには、石英製であって厚さ6mmのものを用いた。
【0046】
真空容器11内を真空にした後、真空容器11内に水素とアルゴンの混合ガスを圧力1Paで導入した。そして、高周波アンテナ13のパイプ内に冷却水を流しつつ、出力1kW、周波数13.56MHzの高周波電力を供給した。その結果、真空容器11内にプラズマが充満し、高周波アンテナ13のU字の底部から20cm離れた位置におけるプラズマ密度は1.2×1011/cm3であった。また、高周波電力の出力を1kW〜3kWの範囲内で変化させたところ、上記位置におけるプラズマ密度は高周波電力の出力に比例して変化した(図9)。
【0047】
[実験2]
実験1で用いた高周波アンテナ13の底部に、長さ150mm、幅30mmの銅板を上壁111に平行に向けて接合した。但し、実験1よりも高周波アンテナ13を上方に移動させ、上壁111の下面の位置に銅板の位置を合わせた。この高周波アンテナを用いて実験1と同様の実験を行ったところ、銅板から20cm離れた位置におけるプラズマ密度は1.4×1011/cm3と、銅板がない実験1よりも高くなった。これは、銅製パイプの管径よりも幅が広い銅板を取り付けることにより、アンテナのインピーダンスが低下し、高周波アンテナ(銅製パイプ及び銅板)に流れる電流が増加したことによると考えられる。
【0048】
次に、比較のために仕切材15Aを外して同様の実験を行ったところ、上記位置におけるプラズマ密度は1.6×1011/cm3であった。このように、仕切材15Aを用いてもプラズマの生成に与える影響は小さいことが確認された。
【0049】
[実験3]
実験1で用いた高周波アンテナを、図2に示すように8組用い、各高周波電源から出力2kW、周波数13.56kHzの高周波電力を給電点133に供給した。その他の条件は実験1及び2と同様とした。各高周波アンテナユニット毎に、高周波アンテナ13のU字の底部から20cm離れた位置でのプラズマ密度を測定した結果、いずれの高周波アンテナからもほぼ同強度のプラズマが生成されていることが確認された。このように同強度のプラズマが生成される高周波アンテナ(が配置されたアンテナ配置部)を複数用いることにより、真空容器11内のプラズマの均一性を高めることができる。
【符号の説明】
【0050】
10…プラズマ処理装置
11…真空容器
111…真空容器11の上壁
111A…上壁111の外面
111B…上壁111の内面
111C…内面111Bの段
112…内部空間
113…基体搬出入口
12、42…アンテナ配置部
121…支持部材
13…高周波アンテナ
131…給電側端部
132…接地側端部
133…給電点
134…給電棒
14…誘電体製充填材
15、15A、25、25A、45…仕切材
16、26、36…蓋
161、261…フィードスルー
17…ガス排出口
18…ガス導入口
19…基体保持部
22、22A…空洞
27、27A…空洞排気口
37A…空洞不活性ガス導入口
37B…空洞ガス排気口
51…板状部材
S…基体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波放電による誘導結合方式のプラズマ装置において、
a) 真空容器と、
b) 前記真空容器の壁の内面と外面の間に設けられたアンテナ配置部と、
c) 前記アンテナ配置部に配置された周回しないで終端する1個の高周波アンテナと、
d) 前記アンテナ配置部と前記真空容器の内部を仕切る誘電体製の仕切材と、
を備え、前記高周波アンテナの長さが、当該高周波の1/4波長の長さよりも短いことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記アンテナ配置部が前記内面と前記外面の間に設けられた空洞であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記空洞が密閉されていることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記空洞内が固体の誘電体で満たされていることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記空洞内が不活性ガスで満たされていることを特徴とする請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記空洞の前記外面側に蓋が設けられていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記高周波アンテナが前記蓋に取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記壁の少なくとも一部が固体の誘電体から成り、前記高周波アンテナが該誘電体内に埋め込まれていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記高周波アンテナがU字形であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記アンテナ配置部を複数備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−212104(P2010−212104A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57327(P2009−57327)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(505402581)株式会社イー・エム・ディー (16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】