説明

プラズマ放電槽を備えた下・廃水高度処理システム

本発明は、汚水または下・廃水などを処理する高度処理システムに係り、特に、膜結合型下・廃水高度処理システムで発生するスラッジの減量化及び膜汚染の制御のためのシステムに関するもので、より詳細には、プラズマを用いてスラッジを可溶化した後に、破壊されるスラッジの細胞副産物を再び外部炭素源の供給源として活用し、且つプラズマにより生成される各種のラジカル及びオゾンなどにより、膜に形成されたケーキ層を除去することができるシステムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水または下・廃水などを処理する高度処理システムに係り、特に、膜結合型下・廃水高度処理システムで発生するスラッジの減量化及び膜汚染の制御のためのシステムに関するもので、より詳細には、プラズマを用いてスラッジを可溶化した後に、破壊されるスラッジの細胞副産物を再び外部炭素源の供給源として活用することができ、プラズマにより生成される各種のラジカル及びオゾンなどを用いて、膜に形成されたケーキ層を除去することができるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の一般的な下・廃水処理場で発生するスラッジは、物理化学的な処理の後に海洋投棄、埋立、焼却、堆肥化過程により最終的に消滅される。国内では埋立地及び焼却場の新規建設がニンビー(NIMBY)現象により制限されており、発生スラッジの相当部分が海洋投棄により最終処分されている。しかし、海洋投棄は、ロンドン協約「96議定書」の発効により2012年から禁止されており、効率的なスラッジ処分または減量化の技術が望まれている。
【0003】
また、既存の高度処理工程に、膜の結合された膜結合型生物反応器(MBR、Membrane Bioreactor)が商用化するに伴い、膜生物反応器を含む高度処理工程が下・廃水処理分野の核心技術となってきた。しかし、かかる膜結合型生物反応器は、分離膜の表面に形成されるケーキ層による慢性的な膜汚染が発生しており、膜汚染は、膜の透過度を阻害し、安定した水質浄化に大きな障害物となっている。
【0004】
図1は、従来の膜結合型下・廃水高度処理システムを示す模式図である。同図に示すように、従来の膜結合型下・廃水高度処理システムは、基本的に、下・廃水が、嫌気槽10、無酸素槽20、及び分離膜90の浸漬されている好気槽30を連続して経て、高度処理された浄化水として最終流出され、これと共に発生するスラッジの一部は、嫌気槽10に搬送され、残りのスラッジは外部に排出して廃棄処分される。
【0005】
従来の膜結合型下・廃水高度処理システムから排出されたスラッジの大部分は、海洋投棄、焼却、埋立などにより処理されてきた。これらの処理方法は、事後処理技術に基づく方法で、2次汚染物質が発生するため、スラッジ低減のための根本的な解決方法にはならない。
【0006】
一方、膜生物反応器(MBR)を用いる高度処理では、膜の表面に積もるケーキ層を一定の周期で除去するために膜を洗浄しなければならないが、主に化学薬品を用いて洗浄してきた。然るに、化学薬品を用いると、2次汚染物質が発生する問題につながる。また、粗大な曝気を用いて膜の表面に形成されたケーキ層にせん断力を与えて制御する方法があるが、曝気のために使われるエネルギーが全体下水処理場の60%以上のエネルギーを占め、高エネルギーを必要とする不具合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記問題点を解決するために、本発明は、スラッジを可溶化した後に、破壊されるスラッジの細胞副産物を再び外部炭素源の供給源として活用できる高度処理システムを提供する。
【0008】
また、本発明は、膜生物反応器(MBR)の膜に形成されているケーキ層を除去できる高度処理システムを提供する。
【0009】
なお、本発明は、既存の膜結合型下・廃水高度処理システムを全部変更することなく、既存の高度処理システムに簡単で容易に適用することができ、高い活用度を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、嫌気槽、無酸素槽及び好気槽を含む下・廃水高度処理システムであって、前記好気槽に連続して配列されたプラズマ放電槽と、前記好気槽から排出されたスラッジを前記プラズマ放電槽に搬送する廃スラッジ搬送管と、前記プラズマ放電槽で放電処理されたスラッジ副産物を前記無酸素槽に搬送するスラッジ搬送管と、を含むことを特徴とする。
【0011】
ここで、前記好気槽は、膜生物反応器(MBR、Membrane Bioreactor)の浸漬型分離膜を含むことができる。
【0012】
そして、前記好気槽及びプラズマ放電槽は、それぞれその内部に浸漬型分離膜の着脱を可能にする手段を含むことができる。
【0013】
なお、本発明において、前記プラズマ放電槽は、前記好気槽の内部に装着されていた浸漬型分離膜を、内部に含むことができる。
【0014】
上記プラズマ放電槽を備えた下・廃水高度処理システムは、前記好気槽の内部に浸漬型分離膜が装着された状態で前記プラズマ放電槽を作動させるスラッジ放電モード、及び前記プラズマ放電槽の内部に前記浸漬型分離膜が装着された状態でプラズマ放電槽を作動させる浸漬型分離膜の洗浄モードを選択的に運営するための手段をさらに含むことができる。
【0015】
その他の実施例の具体的な事項は、詳細な説明及び図面に含まれている。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、基本的に、プラズマを用いてスラッジを可溶化した後に、破壊されるスラッジの細胞副産物を再び外部炭素源の供給源として活用できる高度処理システムを提供することができる。すなわち、プラズマを水中放電させて酸化力の高いラジカル及びオゾンを生成し、これらを既存の高度処理システムで発生したスラッジに強力な酸化剤として作用させることによってスラッジを可溶化させ、結果としてスラッジの減量化を図ることができる。
【0017】
一般に、国内の下・廃水は低いC/N比を有しているため、高度処理過程における嫌気槽などではメタノールのような外部炭素源を別途に供給しなければならないが、本発明は、上記可溶化したスラッジを無酸素槽に搬送して再利用できるため、スラッジ廃棄費用及びシステム運営費用の節減効果を期待することができる。
【0018】
なお、本発明は、プラズマにより生成される各種のラジカル及びオゾンなどを用いて、膜に形成されたケーキ層を除去できる高度処理システムを提供することができる。すなわち、好気槽中に備えられている生物膜反応器をプラズマ反応槽に移動させ、放電されたプラズマにより発生する酸化力の高い各種ラジカル及びオゾンなどを用いて、生物膜反応器の膜の表面に形成されているケーキ層を酸化させることによって、膜の汚染を制御することができる。
【0019】
さらに、本発明は、既存の膜結合型下・廃水高度処理システムを変更することなく、プラズマ反応槽のみをさらに結合させ、ここに生物膜反応器を着脱可能にすればよいので、既存の高度処理システムに簡単で容易に適用することができ、高い活用度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の膜結合型下・廃水高度処理システムを示す模式図である。
【図2】本発明によってプラズマ放電槽が導入された膜結合型下・廃水高度処理システムにおける運転モード(スラッジ放電モード)の一例を説明するための模式図である。
【図3】本発明によってプラズマ放電槽が導入された膜結合型下・廃水高度処理システムにおける洗浄モード(浸漬型分離膜の洗浄モード)の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の好適な一実施の形態を、添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるための例示的なもので、添付の特許請求の範囲によって定められる保護範囲を制限するためのものではない。
【0022】
図2は、本発明によってプラズマ放電槽が導入された膜結合型下・廃水高度処理システムにおける運転モード(スラッジ放電モード)の一例を説明するための模式図である。
【0023】
同図に示すように、本発明は、基本的に、嫌気槽10、無酸素槽20、及び分離膜90が浸漬されている好気槽30が連続して配置されている高度処理システムに関するものである。嫌気槽10、無酸素槽20及び好気槽30は並んで配置されており、流入する下水などを伝達する別途の管、孔または手段を有していることが好ましい。分離膜90は、従来の一般的な膜生物反応器(MBR、Membrane Bioreactor)に結合されている浸漬型分離膜でよい。
【0024】
そのため、汚水、生活下水または下・廃水などは、嫌気槽10、無酸素槽20及び好気槽30を連続して経て、高度処理された浄化水として最終的に流出され、これと共に発生するスラッジの一部は外部搬送により嫌気槽10へ搬送され、内部搬送により無酸素槽20へ搬送されることが可能である。このような下・廃水高度処理システムは、当該技術の分野に知られた高度処理システムのいずれをも含むことができる。
【0025】
本発明は、上記のような下・廃水高度処理システムにおいて、プラズマ放電槽100、廃スラッジ搬送管110及びスラッジ搬送管120を含むことを特徴とするプラズマ放電槽を備えた下・廃水高度処理システムである。すなわち、本発明は、スラッジの減量化及び膜汚染の制御のためにプラズマを用いるもので、そのために、本発明は、嫌気槽10、無酸素槽20及び好気槽30を含む従来の高度処理システムに、プラズマ反応槽100がさらに結合されたことを特徴とする。
【0026】
プラズマ放電槽100は、プラズマを放電できるタンクのことで、プラズマを放電する方法や種類、及びタンクの形状は、特に制限されない。本発明は、好気槽30における浸漬型分離膜90を通して排出したスラッジにプラズマ放電処理を行うことを特徴とし、そのため、好気槽30から排出されたスラッジをプラズマ放電槽100に移送する廃スラッジ搬送管110を有することが好ましく、プラズマ放電槽100は、好気槽30に連続して配列されることがより好ましい。配列される方向や結合する手段は、特に制限されない。
【0027】
このように、本発明は、(廃)スラッジ搬送管110を通ってプラズマ放電槽100に移送されてきたスラッジにプラズマ放電処理を行う。プラズマ放電時に発生するヒドロキシルラジカル(hydroxyl radical)は、酸化力が高いため、スラッジの分解を促進し、スラッジの可溶化を図ることができる。すなわち、既存の物理化学的な方法では破壊し難い剰余スラッジの細胞壁にプラズマを印加して細胞壁を容易に破壊することによって、スラッジを微生物が利用しやすい有機源の状態、例えば、低分子の脂肪酸に変換させることができる。
【0028】
このようなプラズマ放電処理により変換されたスラッジ副産物は、外部炭素源の供給源として用いることができる。そのために、本発明は、プラズマ放電槽100で放電処理されたスラッジ副産物を無酸素槽20へ移送する可溶化スラッジ内部搬送管120を含む。これにより、本発明は、従来は好気槽30から直接外部に排出して廃棄してきたスラッジをプラズマにより可溶化処理することで、廃棄するスラッジ無しで、再び無酸素槽20に搬送させて炭素源とすることができる。
【0029】
図3は、本発明によってプラズマ放電槽が導入された膜結合型下・廃水高度処理システムにおける洗浄モード(浸漬型分離膜の洗浄モード)の一例を説明するための模式図である。
【0030】
同図に示すように、本発明に係るプラズマ放電槽100は、好気槽30の内部に装着されていた浸漬型分離膜90を、内部に含んでいる。
【0031】
上記の高度処理システムにおける運転モード(スラッジ放電モード、図2参照)では、一定の時間が経過すると、好気槽30に浸漬されている分離膜90にケーキ層が形成されるが、本発明はこのケーキ層をプラズマ放電槽100で除去することができる。すなわち、好気槽30に備えられている分離膜90をプラズマ放電槽100に移し、プラズマ放電槽100内の分離膜90の汚染をプラズマで除去することができる。
【0032】
本発明は、プラズマにより発生する、酸化力の高い各種のラジカル及びオゾンなどによって、分離膜90の表面上に形成されたケーキ層を酸化させて膜洗浄処理をし、膜の汚染を制御することができる。これにより、本発明は、膜の表面に形成されたケーキ層によってフラックスが減少し、膜間差圧が上昇することから生じる膜の効率低下を改善でき、安定した水質確保を可能にする効果を有する。
【0033】
そのために、本発明に係る好気槽30及びプラズマ放電槽100はそれぞれ、その内部に浸漬型分離膜90の着脱を可能にする手段(図示せず)を含むことによって、浸漬型分離膜90を必要に応じて好気槽30及びプラズマ放電槽100のいずれか一方に選択的に装着することができる。
【0034】
一方、上記によれば、本発明のプラズマ反応槽100は、運転モード(スラッジ放電モード)または洗浄モード(浸漬型分離膜の洗浄モード)のいずれか一方を選択的に行うことができる。
【0035】
ここで、運転モードは、好気槽30の内部に浸漬型分離膜90が装着した状態でプラズマ放電槽100を作動させるスラッジ放電モードのことであり、洗浄モードは、好気槽30の内部に装着されていた浸漬型分離膜90がプラズマ放電槽100の内部に移されて装着された状態でプラズマ放電槽100を作動させる浸漬型分離膜の洗浄モードのことである。
したがって、本発明は、スラッジ放電モードと浸漬型分離膜の洗浄モードを選択的に行うことができる手段を含むことが好ましい。例えば、分離膜90を好気槽30からプラズマ放電槽100に移動させたり、プラズマ放電槽100から好気槽30に移動させる自動化装置、及び分離膜90の装着された位置または時間によってプラズマ放電槽100の放電を発生させる制御部などを含むことができる。
【0036】
したがって、本発明によれば、スラッジ放電モードでは、好気槽30から移送されてきたスラッジを、プラズマ放電槽100の放電処理によりスラッジの細胞膜を破壊して可溶化させることが可能である。一方、浸漬型分離膜の洗浄モードでは、汚染された浸漬型分離膜90を好気槽30からプラズマ反応槽100に移動させた後、放電されたプラズマにより、膜の表面に形成されているケーキ層を酸化させて膜の汚染を除去することが可能である。
【0037】
以上では本発明を特定の好適な実施例に挙げて図示及び説明してきたが、以下の特許請求の範囲により定められる本発明の技術的特徴や分野から逸脱しない限度内で、本発明の様々な改変が可能であるということは、当業界で通常の知識を有する者にとっては明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のプラズマを用いる水中放電によるスラッジの減量化及び膜汚染の制御は、2次汚染物質を発生させたり高エネルギーを要求する従来の工程と違い、低エネルギー・親環境的な処理方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
嫌気槽、無酸素槽及び好気槽を含む下・廃水高度処理システムであって、
前記好気槽に連続して配列されたプラズマ放電槽と、
前記好気槽から排出されたスラッジを前記プラズマ放電槽に搬送する廃スラッジ搬送管と、
前記プラズマ放電槽で放電処理されたスラッジ副産物を前記無酸素槽に搬送するスラッジ搬送管と、
を含むことを特徴とする、プラズマ放電槽を備えた下・廃水高度処理システム。
【請求項2】
前記好気槽は、膜生物反応器(MBR、Membrane Bioreactor)の浸漬型分離膜を含むことを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ放電槽を備えた下・廃水高度処理システム。
【請求項3】
前記好気槽及びプラズマ放電槽は、それぞれその内部に浸漬型分離膜の着脱を可能にする手段を含むことを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ放電槽を備えた下・廃水高度処理システム。
【請求項4】
前記プラズマ放電槽は、前記好気槽の内部に装着されていた浸漬型分離膜を、内部に含むことを特徴とする、請求項3に記載のプラズマ放電槽を備えた下・廃水高度処理システム。
【請求項5】
前記好気槽の内部に浸漬型分離膜が装着された状態で前記プラズマ放電槽を作動させるスラッジ放電モード、及び前記プラズマ放電槽の内部に前記浸漬型分離膜が装着された状態でプラズマ放電槽を作動させる浸漬型分離膜の洗浄モードを選択的に運営するための手段をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載のプラズマ放電槽を備えた下・廃水高度処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−501617(P2013−501617A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525503(P2012−525503)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【国際出願番号】PCT/KR2010/008243
【国際公開番号】WO2011/096636
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(512039156)ホソ ユニバーシティ アカデミック コーオペレーション ファンデーション (1)
【出願人】(512039167)クンガン エンバイロメンタル エンジニアリング カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】