説明

プラテン、記録装置、液体噴射装置

【課題】 、用紙への縁無し印刷時に、用紙端部(特に先端または後端)のプラテンからの浮き上がりを防止して良好な記録結果を得る。
【解決手段】 用紙に記録を行う記録ヘッド36と対向して設けられ、用紙を支持することにより用紙と記録ヘッド36とのギャップを規定する紙案内下50は、記録ヘッド36と対向する面に、副走査方向に延びる第1リブ51と、第1リブ51の下流側に設けられた、副走査方向に延びる第2リブ52と、第2リブ52の下流側に設けられた、副走査方向に延びる第3リブ53と、を備え、第2リブ52の記録ヘッド36側への突出高さが、第1リブ51の同突出高さよりも低く成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に記録を行う記録ヘッドと対向して設けられ、被記録媒体を支持することにより被記録媒体と前記記録ヘッドとのギャップを規定するプラテン及びこれを備えた記録装置に関する。また、本発明は液体噴射装置に関する。
【0002】
ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンタ、複写機およびファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記インクジェット式記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録媒体に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体を前記被噴射媒体に付着させる装置を含む意味で用いる。
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
記録装置或いは液体噴射装置の一例としてインクジェットプリンタがある。インクジェットプリンタは被記録媒体(被噴射媒体)としての印刷用紙にインク(液体)を吐出するインクジェット記録ヘッドと対向する位置に、印刷用紙を下から支持することによりインクジェット記録ヘッドと印刷用紙とのギャップ(ペーパーギャップ:以下「PG」と言う)を規定するプラテンを備えている。
【0004】
ここで、プラテンにおいてインクジェット記録ヘッドと対向する面には、副走査方向に延びるリブが、主走査方向に所定の間隔を置いて複数設けられている。これは、インクを吸収することによって膨潤する印刷用紙に一定振幅の波打ち状態(所謂”コックリング状態”)を形成することで、印刷面とインクジェット記録ヘッドとの距離を可能な限り均一にする為である。
【0005】
ここで、上記リブは、上流側と下流側とに分断される様にして設けられる場合がある。その一例として、例えば印刷用紙の端部に余白無く印刷を行う、所謂縁無し印刷可能に構成されたプリンタにおいては、上記リブを分断する様に、主走査方向に延びる溝穴が形成される。そして、用紙端が溝穴に望んだ状態で用紙端から外れた部分にもインクを吐出することで、縁無し印刷が実行される様になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−86821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、プラテンの上流側に設けられた搬送ローラは、印刷用紙をプラテンに向けて押し付ける様にしながら印刷用紙を搬送する。これは、印刷用紙のプラテンからの浮き上がりを抑止し、ヘッド擦れの発生や、記録ヘッドと印刷用紙とのギャップ(以下「PG」と言う)の変化を防止して、記録品質の低下を防止する為である。
【0008】
しかし、上述の様に副走査方向に延びるリブが途中で分断される様な構成においては、上流側に位置する第1リブからその下流側に位置する第2リブに用紙先端が到達する際に、用紙先端が第1リブと第2リブとの間に落ち込み、そして第2リブに乗り上げるような状態となる為に、その後用紙先端が下流側に進むと用紙先端が第2リブから上方に浮き上がり(跳ね上がり)、その結果記録ヘッドと擦れて用紙先端を汚損したり、PGが不適切となって印刷品質が低下したりする虞がある。
【0009】
また、用紙への記録が進み、やがて用紙後端が搬送ローラから外れると、用紙後端は搬送ローラによるプラテンへの押し付け状態から解放される為に、プラテンから浮き上がり易い状態となり、場合によってはプラテンから浮き上がって記録ヘッドと擦れて用紙後端を汚損したり、PGが不適切となって印刷品質が低下したりする虞がある。
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その課題は、用紙への縁無し印刷時に、用紙端部(特に先端または後端)のプラテンからの浮き上がりを防止して良好な記録結果を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、記録媒体に記録を行う記録ヘッドと対向して設けられ、被記録媒体を支持することにより被記録媒体と前記記録ヘッドとのギャップを規定するプラテンであって、前記記録ヘッドと対向する面に、副走査方向に延びる第1リブと、前記第1リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第2リブと、前記第2リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第3リブと、を備え、前記第2リブの前記記録ヘッド側への突出高さが、前記第1リブの同突出高さよりも低いことを特徴とする。
【0011】
上記態様によれば、副走査方向に延びる第1リブと、前記第1リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第2リブと、前記第2リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第3リブと、の関係において、前記第2リブの前記記録ヘッド側への突出高さが、前記第1リブの同突出高さよりも低いことから、被記録媒体先端が前記第2リブに乗り上がった際に、被記録媒体の先端が上方へ向かう傾向を軽減或いは防止することができるので、被記録媒体先端が記録ヘッドと擦れて被記録媒体先端を汚損したり、PGが不均一となって記録品質が低下することを防止することが可能となる。
【0012】
本発明の第2の態様は、被記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、前記記録ヘッドと対向して設けられ、被記録媒体を支持することにより被記録媒体と前記記録ヘッドとのギャップを規定する上記第1の態様に記載の前記プラテンと、を備えたことを特徴とする記録装置である。
上記態様によれば、記録装置において、上記第1の態様と同様な作用効果を得ることができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、上記第2の態様において、前記記録ヘッドの下流側に設けられ、記録の行われた被記録媒体を排出する被記録媒体排出手段が、回転駆動される排出駆動ローラと、被記録媒体の記録面側に設けられるとともに被記録媒体と接して従動回転する排出従動ローラと、を備えて構成され、前記記録ヘッドと前記プラテンとの対向領域から前記被記録媒体排出手段へ至る被記録媒体の搬送経路上に、被記録媒体の記録面と接して従動回転する補助ローラを備え、被記録媒体の搬送経路を側視して、前記第2リブ及び前記第3リブが、前記排出従動ローラと被記録媒体との接触点と、前記補助ローラと被記録媒体との接触点と、を結ぶ直線に対して下側に位置していることを特徴とする。
【0014】
上記態様によれば、前記記録ヘッドと前記プラテンとの対向領域から前記被記録媒体排出手段へ至る被記録媒体の搬送経路上に、被記録媒体の記録面と接して従動回転する補助ローラを備え、被記録媒体の搬送経路を側視して、前記第2リブ及び前記第3リブが、前記排出従動ローラと被記録媒体との接触点と、前記補助ローラと被記録媒体との接触点と、を結ぶ直線に対して下側に位置していることから、被記録媒体後端が記録ヘッド上流側の搬送手段から外れてフリー状態となった際に、被記録媒体後端が前記第2リブ或いは前記第3リブに押し付けられる状態が形成されることを回避することができる。従って被記録媒体後端が前記第2リブ或いは前記第3リブに押し付けられることによる、被記録媒体後端のプラテンから浮き上がりを防止でき、ひいては被記録媒体後端が記録ヘッドと擦れて被記録媒体後端を汚損したり、PGが不均一となって記録品質が低下することを防止することが可能となる。
【0015】
本発明の第4の態様は、被記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、前記記録ヘッドと対向して設けられ、被記録媒体を支持することにより被記録媒体と前記記録ヘッドとのギャップを規定するプラテンと、前記記録ヘッドの下流側に設けられ、記録の行われた被記録媒体を排出する被記録媒体排出手段と、を備えた記録装置であって、前記プラテンが、前記記録ヘッドと対向する面に、副走査方向に延びる第1リブと、前記第1リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第2リブと、前記第1リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第3リブと、を備えて構成され、前記被記録媒体排出手段が、回転駆動される排出駆動ローラと、被記録媒体の記録面側に設けられるとともに被記録媒体と接して従動回転する排出従動ローラと、を備えて構成され、前記記録ヘッドと前記プラテンとの対向領域から前記被記録媒体排出手段へ至る被記録媒体の搬送経路上に、被記録媒体の記録面と接して従動回転する補助ローラを備え、被記録媒体の搬送経路を側視して、前記第2リブ及び前記第3リブが、前記排出従動ローラと被記録媒体との接触点と、前記補助ローラと被記録媒体との接触点と、を結ぶ直線に対して下側に位置していることを特徴とする。
【0016】
上記態様によれば、前記記録ヘッドと前記プラテンとの対向領域から前記被記録媒体排出手段へ至る被記録媒体の搬送経路上に、被記録媒体の記録面と接して従動回転する補助ローラを備え、被記録媒体の搬送経路を側視して、前記第2リブ及び前記第3リブが、前記排出従動ローラと被記録媒体との接触点と、前記補助ローラと被記録媒体との接触点と、を結ぶ直線に対して下側に位置していることから、被記録媒体後端が記録ヘッド上流側の搬送手段から外れてフリー状態となった際に、被記録媒体後端が前記第2リブ或いは前記第3リブに押し付けられる状態が形成されることを回避することができる。従って被記録媒体後端が前記第2リブ或いは前記第3リブに押し付けられることによる、被記録媒体後端のプラテンから浮き上がりを防止でき、ひいては被記録媒体後端が記録ヘッドと擦れて被記録媒体後端を汚損したり、PGが不均一となって記録品質が低下することを防止することが可能となる。
【0017】
本発明の第5の態様は、被噴射媒体に液体噴射を行う液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドと対向して設けられ、被噴射媒体を支持することにより被噴射媒体と前記液体噴射ヘッドとのギャップを規定するプラテンと、を備えた液体噴射装置であって、前記プラテンが、前記液体噴射ヘッドと対向する面に、副走査方向に延びる第1リブと、前記第1リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第2リブと、前記第2リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第3リブと、を備え、前記第2リブの前記液体噴射ヘッド側への突出高さが、前記第1リブの同突出高さよりも低いことを特徴とする。
【0018】
本発明の第6の態様は、被噴射媒体に液体噴射を行う液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドと対向して設けられ、被噴射媒体を支持することにより被噴射媒体と前記液体噴射ヘッドとのギャップを規定するプラテンと、前記液体噴射ヘッドの下流側に設けられ、液体噴射の行われた被噴射媒体を排出する被噴射媒体排出手段と、を備えた液体噴射装置であって、前記プラテンが、前記液体噴射ヘッドと対向する面に、副走査方向に延びる第1リブと、前記第1リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第2リブと、前記第2リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第3リブと、を備えて構成され、前記被噴射媒体排出手段が、回転駆動される排出駆動ローラと、被噴射媒体の液体噴射面側に設けられるとともに被噴射媒体と接して従動回転する排出従動ローラと、を備えて構成され、前記液体噴射ヘッドと前記プラテンとの対向領域から前記被噴射媒体排出手段へ至る被噴射媒体の搬送経路上に、被噴射媒体の液体噴射面と接して従動回転する補助ローラを備え、被噴射媒体の搬送経路を側視して、前記第2リブ及び前記第3リブが、前記排出従動ローラと被噴射媒体との接触点と、前記補助ローラと被噴射媒体との接触点と、を結ぶ直線に対して下側に位置していることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下では先ず、図1及び図2を参照しながら、本発明に係る記録装置或いは液体噴射装置の一例としてのインクジェットプリンタ(以下「プリンタ」と言う)1の概要について説明する。ここで、図1はプリンタ1の装置本体(外装ケースを取り外した状態)の外観斜視図、図2は同側断面図である。尚、以下では、図2の右方向(プリンタ前方側)を用紙搬送(給送)経路の「下流側」と言い、左方向(プリンタ後方側)を「上流側」と言うこととする。
【0020】
プリンタ1は後部に「被記録媒体」、「被噴射媒体」の一例としての記録用紙(主として単票紙:以下「用紙P」と言う)を傾斜姿勢でセット可能な給送装置2を備え、当該給送装置2から、用紙Pを下流側の被記録媒体搬送手段4へ向けて給送する。給送された用紙Pは被記録媒体搬送手段4によって下流側の記録手段3へ搬送され、記録が実行される。そして記録手段3によって記録の行われた用紙Pは、下流側の被記録媒体排出手段5によって装置前方へ排出される。
【0021】
以下、プリンタ1の用紙搬送経路上の構成要素について更に詳説する。給送装置2は、ホッパ11と、給送ローラ12と、リタードローラ13と、戻しレバー14と、ペーパーサポート15と、補助サポート16と、可動エッジガイド17と、固定エッジガイド19と、を備えて構成されている。
ホッパ11は板状体から成り、上部の揺動支点(図示せず)を中心に揺動可能に設けられ、揺動することにより、ホッパ11上に傾斜姿勢に支持された用紙Pを給送ローラ12に圧接させる圧接姿勢と、給送ローラ12から離間させる離間姿勢と、を切り換わる。給送ローラ12は側面視略D形の形状を成し、その円弧部分によって圧接した最上位の用紙Pを下流側へ給送する一方で、用紙Pが給送された後の、被記録媒体搬送手段4による用紙Pの搬送中においては、搬送負荷を生じさせない様に図示する様にその平坦部が用紙Pと対向する様に制御される。
【0022】
リタードローラ13は、外周が弾性材によって形成され、給送ローラ12の円弧部分と圧接可能に設けられ、且つ、所定の回転抵抗(トルク)が与えられた状態に設けられている。リタードローラ13は用紙Pの重送が発生せずに、1枚だけ給送されている場合には、リタードローラ13に前記回転抵抗以上のトルクが加わるので、給送ローラ13に対して従動回転(図2の時計回り)する。一方、用紙Pが給送ローラ12とリタードローラ13との間に複数枚存在する場合には、用紙間の摩擦係数が用紙Pとリタードローラ13との間の摩擦係数よりも低いため、リタードローラ13には前記回転抵抗以上のトルクが掛からず、回転せずに停止した状態となる。従ってこれにより、給送されるべき最上位の用紙Pにつられて重送されようとする次位以降の用紙Pが、リタードローラ13から下流側へ進まずに、重送が防止される。
【0023】
戻しレバー14は、用紙Pの給送経路を側視して揺動可能に設けられていて、揺動することにより、重送されようとした次位以降の用紙Pをホッパ11上に戻す作用を奏する。
ペーパーサポート15及び補助サポート部材16(図1)は、ホッパ11における用紙支持面を用紙Pの後端方向に延長して用紙Pの後端を支持する。
可動エッジガイド17及び固定エッジガイド19は、ホッパ11において互いに対峙するように設けられ、用紙Pのエッジに当接して当該エッジの位置を規制する。可動エッジガイド17はホッパ11において用紙Pの幅方向に変位(スライド)可能に設けられていて、これにより、用紙Pの幅寸法に適合した適切な位置に変位することが可能となっている。
【0024】
尚、符号17a及び19aは、可動エッジガイド17、固定エッジガイド19にそれぞれ形成される規制部を示している。この規制部17a、19aは、用紙Pをセットする際に用紙Pをガイドする機能を果たし、更に、ホッパ11に支持される(給送装置2にセットされる)用紙Pの最大枚数(許容される最大の枚数)を規制する。
【0025】
次に、給送装置2と被記録媒体搬送手段4との間には、用紙Pの通過を検出する検出手段(図示せず)と、用紙Pの給送姿勢を形成するとともに用紙Pの給送ローラ12への接触を防止して搬送負荷を軽減するガイドローラ26が設けられている。
給送装置2の下流側に設けられた被記録媒体搬送手段4は、モータによって回転駆動される搬送駆動ローラ30と、該搬送駆動ローラ30に圧接して従動回転する搬送従動ローラ31とを備えて構成されている。搬送駆動ローラ30は用紙幅方向に延びる金属軸の外周面に耐摩耗性粒子がほぼ均一に分散されて成る付着層を備えて成され、搬送従動ローラ31は外周面がエラストマ等の低摩擦材料によって成され、搬送駆動ローラ30の軸線方向に複数配設されている。
【0026】
また、搬送従動ローラ31は本実施形態では紙案内上24を構成する本体部24bの下流側端部に2つ自由回転可能に軸支され、その本体部24bは、用紙幅方向に3つ、図1に示すように設けられることにより、全体として紙案内上24を構成している。また、紙案内上24は軸24aがメインフレーム23に軸支されることで、用紙搬送経路を側視して軸24aを中心に揺動可能に設けられるとともに、コイルばね25によって、搬送従動ローラ31が搬送駆動ローラ30に圧接する方向に付勢されている。
【0027】
被記録媒体搬送手段4に到達した用紙Pは、搬送駆動ローラ30と搬送従動ローラ31とによってニップされた状態で搬送駆動ローラ30が回転することにより、下流側の記録手段3へと搬送される。
記録手段3は、インクジェット記録ヘッド(以下「記録ヘッド」と言う)36と、当該記録ヘッド36と対向するように設けられる紙案内下50(プラテン56)とを備えて構成される。記録ヘッド36はキャリッジ33の底部に設けられ、当該キャリッジ33は主走査方向に延びるキャリッジガイド軸34にガイドされながら、図示しない駆動モータによって主走査方向に往復動する様に駆動される。また、キャリッジ33は、複数の色毎に独立したインクカートリッジ35を搭載し、記録ヘッド36へとインクを供給する。
【0028】
用紙Pと記録ヘッド36との距離を規定する紙案内下50(プラテン56)には、記録ヘッド36と対向する面に第1リブ51、第2リブ52、第3リブ53が形成されているとともに、インクを打ち捨てる溝54、55が形成されていて、用紙Pの端部から外れた領域に吐出するインクを溝54、55に打ち捨てることにより、用紙Pの端部に余白無く印刷を行う所謂フチ無し印刷が実行される。尚、紙案内下50の構成については後に詳述する。
【0029】
続いて、記録ヘッド36の下流側には、補助ローラ43と、被記録媒体排出手段5が設けられている。補助ローラ43は、記録ヘッド36とプラテン56との対向領域から被記録媒体排出手段5へ至る用紙搬送経路上に、用紙Pの記録面と接して従動回転するよう設けられることで、用紙Pのプラテン56からの浮き上がりを防止して用紙Pと記録ヘッド36との距離を一定に保つ機能を果たす(詳細は後述)。被記録媒体排出手段5は図示しないモータによって回転駆動される排出駆動ローラ41と、当該排出駆動ローラ41に接して従動回転する排出従動ローラ42とを備えて構成されている。
【0030】
本実施形態において排出駆動ローラ41はゴムローラによって成されるとともに回転駆動される回転軸40の軸方向に複数設けられる(図3参照)。また、本実施形態では、補助ローラ43の主走査方向における位置は、排出駆動ローラ41の位置とほぼ同じ位置となっているが(詳細は図示せず)、排出駆動ローラ41の中間に配置しても構わない。
【0031】
排出従動ローラ42は外周に複数の歯を有する歯付きローラによって成されるとともに、主走査方向に長い形状を成す排紙フレームAssy45に、複数の排出駆動ローラ41に対応するよう複数設けられる。記録手段3によって記録の行われた用紙Pは、排出駆動ローラ41と排出従動ローラ42とによってニップされた状態で排出駆動ローラ41が回転駆動されることにより、装置前方(図示しないスタッカ)へ向けて排出される。
【0032】
以上がプリンタ1の概要であり、以下、図3及び図4を参照しながら紙案内下50並びにその周辺の構成要素について詳説する。ここで、図3は紙案内下50の外観斜視図であり、図4は紙案内下50及びその周辺の用紙搬送経路の側断面図である。
図3及び図4に示すように、紙案内下50は、搬送駆動ローラ30から下流側のプラテン56と、搬送駆動ローラ30から上流側の後部紙案内57とが一体とを備えるとともに、搬送駆動ローラ30及び排出駆動ローラ41の回動軸40を軸支可能なように、樹脂材料によって一体的に形成されている。
【0033】
プラテン56は、図4に示すように記録ヘッド36と対向する位置に設けられて用紙Pと記録ヘッド36との距離(ペーパーギャップ:以下「PG」と言う)を規定するとともに、用紙Pを下流側へ案内する。後部紙案内57は、図2に示すように給送装置2から給送される用紙Pを搬送駆動ローラ30へと案内する。
【0034】
プラテン56において記録ヘッド36と対向する面には、副走査方向に延びる第1リブ51が搬送駆動ローラ30の下流側近傍に設けられ、そして第1リブ51の下流側には溝54を挟んで副走査方向に延びる第2リブ52が、更に第2リブ52の下流側には溝55を挟んで副走査方向に延びる第3リブ53が、それぞれ設けられている。第1リブ51、第2リブ52、第3リブ53は図3に示すようにそれぞれ主走査方向に適宜の間隔を置いて複数設けられ、用紙Pを下方から支持してPGを規定する。
尚、記録ヘッド36において符号Sで示す範囲はインク吐出ノズル(図示せず)が形成される範囲を示しており、図示するように第2リブ52はインク吐出ノズルの形成範囲内に位置し、第1リブ51及び第3リブ53は、インク吐出ノズルの形成範囲外に位置している。
【0035】
第1リブ51と第2リブ52との間には上述したように主走査方向に延びる溝54が形成されており、第2リブ52と第3リブ53との間には同様に主走査方向に延びる溝55が形成されている。溝54と溝55は、それぞれ用紙Pの後端及び先端から外れた部分に吐出されるインク滴を打ち捨てる為のものであり、即ち用紙Pの先端が溝55の上部に到達した際に、当該用紙Pの先端及び当該先端から外れた部分にインク滴を吐出することによって、用紙P先端に縁無し記録が実行されるとともに、溝55に用紙P先端から外れたインク滴が打ち捨てられる。また、用紙Pの後端が溝54の上部に到達した際に、当該用紙Pの後端及び当該後端から外れた部分にインク滴を吐出することによって、用紙P後端に縁無し記録が実行されるとともに、溝54に用紙P後端から外れたインク滴が打ち捨てられる。
【0036】
ここで、中間に位置する第2リブ52は、記録ヘッド36側への突出高さが、第1リブ51の同突出高さよりも低く成されている(例えば、0.1mm以上)。つまり、第2リブ52の頂部が、第1リブ51の頂部より下方に位置するように形成されている。これは、以下のような理由による。即ち、用紙Pがプラテン56から浮き上がると、PGが不適切となって記録品質が低下したり、或いは用紙Pが記録ヘッド36と擦れて用紙Pを汚損することになる。その為、搬送従動ローラ31の回動中心を搬送駆動ローラ30の回動中心に対してやや下流側に設定し、つまり搬送駆動ローラ30と搬送従動ローラ31との協働作用によって用紙Pをプラテン56に押し付けるように構成している。尚、本実施形態では、搬送駆動ローラ30の回転中心と搬送従動ローラ31の回転中心とを結ぶ直線が、垂直線に対して約12°傾斜した状態となっている。
【0037】
しかしながら、第1リブ51と第2リブ52との間には溝54が存在するため、用紙Pが第1リブ51から第2リブ52に到達する際には、上記押し付け力によって用紙P先端は溝54に落ち込み、そして第2リブ52に乗り上げるような状態となる為に、その後用紙P先端が下流側に進むと当該用紙P先端が第2リブ52から上方に浮き上がってその結果記録ヘッド36と擦れる等の虞もある。
【0038】
この様な不具合は、第2リブ52の記録ヘッド36側への突出高さが、第1リブ51の同突出高さよりも高いと顕著に発生するが、上述の通り本発明に係るプラテン56においては第2リブ52の記録ヘッド36側への突出高さが、第1リブ51の同突出高さよりも低いため、用紙P先端が第2リブ52に到達した際に、用紙Pの先端が斜め上方即ち記録ヘッド36へ向かう傾向を軽減或いは防止することができる。その結果、用紙P先端が記録ヘッド36と擦れて用紙P先端を汚損したり、PGが不適切となって記録品質が低下することを防止することが可能となっている。尚、本実施形態においては、第2リブ52は、第3リブ53との関係において、記録ヘッド36側への突出高さが、第3リブ53の同突出高さよりも低く成されている。
【0039】
続いて、図4において用紙P後端が搬送駆動ローラ30と搬送従動ローラ31とによる拘束状態(プラテン56への押し付け状態)から解放されると、当該用紙Pがプラテン50から浮き上がり易い状態となる為に、記録ヘッド36と搬送従動ローラ42との間には、上述したように補助ローラ43が設けられている。即ち、補助ローラ43によって、用紙P後端のプラテン56からの浮き上がりが規制されるようになっている。その為、補助ローラ43における用紙Pとの接触点が、排出駆動ローラ41と排出従動ローラ42とのニップ点より下方に位置するように、補助ローラ43が設けられている。
【0040】
ここで、本実施形態において補助ローラ43の回転中心と排出駆動ローラ41の回転中心とは用紙Pの搬送方向(水平方向:図4の左右方向)に約21〜22mm離れており、鉛直方向では約5〜6mm離れている。また、排出駆動ローラ41の外径は直径8〜9mmであり、補助ローラ43の外径は直径約6mmである。
【0041】
尚、排出従動ローラ42の回転中心が、排出駆動ローラ41の回転中心よりもやや上流側に設定されていて、即ち排出駆動ローラ41と排出従動ローラ42との協働作用によって用紙P後端に浮き上がりを規制する傾向が付与され、これによっても用紙P後端のプラテン56からの浮き上がりが防止されている。
【0042】
ここで、符号Tで示す直線は、補助ローラ43と用紙Pとの接点および排出従動ローラ42と用紙Pとの接点を結ぶ直線を示している。図示するように、補助ローラ43によって用紙P後端に浮き上がりを規制する傾向が付与される為、直線Tは上流側(図4の左方向)に向かって下方に向かう様な傾きを有しているが、第2リブ52及び第3リブ53は、当該直線Tに対して下側に位置するよう形成されている。
【0043】
従ってこれにより、用紙P後端が搬送駆動ローラ30及び搬送従動ローラ31から外れてフリーな状態となった際に、当該用紙P後端が、第2リブ52及び第3リブ53に押し付けられる状態が形成されない。従って、用紙P後端が第2リブ52或いは第3リブ53に押し付けられることによる、用紙P後端のプラテン56から浮き上がり(跳ね上がり)を防止でき、ひいては用紙P後端が記録ヘッド36に擦れて用紙P後端を汚損したり、PGが不適切となって用紙P後端の記録品質が低下することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るプリンタの装置本体の外観斜視図。
【図2】本発明に係るプリンタの側断面図。
【図3】本発明に係るプラテンの外観斜視図。
【図4】本発明に係るプラテン及びその周辺の用紙搬送経路の側断面図。
【符号の説明】
【0045】
1 インクジェットプリンタ、2 給送装置、3 記録手段、4 被記録媒体搬送手段、5 被記録媒体排出手段、10 摩擦部材、11 ホッパ、12 給送ローラ、13 リタードローラ、13a 回転軸、14 紙戻しレバー、15 ペーパーサポート、16 補助サポート部材、17 可動エッジガイド、19 固定エッジガイド、23 メインフレーム、24 紙案内上、25 コイルばね、26 ガイドローラ、30 搬送駆動ローラ、31 搬送従動ローラ、33 キャリッジ、34 キャリッジガイド軸、35 インクカートリッジ、36 記録ヘッド、40 (排出駆動ローラの)回動軸、41 排出駆動ローラ、42 排出従動ローラ、43 補助ローラ、45 排紙フレームAssy、50 紙案内下、51 第1リブ、52 第2リブ、53 第3リブ、54、55 溝、56 プラテン、57 後部紙案内、P 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に記録を行う記録ヘッドと対向して設けられ、被記録媒体を支持することにより被記録媒体と前記記録ヘッドとのギャップを規定するプラテンであって、
前記記録ヘッドと対向する面に、副走査方向に延びる第1リブと、
前記第1リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第2リブと、
前記第2リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第3リブと、を備え、
前記第2リブの前記記録ヘッド側への突出高さが、前記第1リブの同突出高さよりも低いことを特徴とするプラテン。
【請求項2】
被記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、
前記記録ヘッドと対向して設けられ、被記録媒体を支持することにより被記録媒体と前記記録ヘッドとのギャップを規定する請求項1記載の前記プラテンと、を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項2において、前記記録ヘッドの下流側に設けられ、記録の行われた被記録媒体を排出する被記録媒体排出手段が、回転駆動される排出駆動ローラと、被記録媒体の記録面側に設けられるとともに被記録媒体と接して従動回転する排出従動ローラと、を備えて構成され、
前記記録ヘッドと前記プラテンとの対向領域から前記被記録媒体排出手段へ至る被記録媒体の搬送経路上に、被記録媒体の記録面と接して従動回転する補助ローラを備え、
被記録媒体の搬送経路を側視して、前記第2リブ及び前記第3リブが、前記排出従動ローラと被記録媒体との接触点と、前記補助ローラと被記録媒体との接触点と、を結ぶ直線に対して下側に位置している、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
被記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、
前記記録ヘッドと対向して設けられ、被記録媒体を支持することにより被記録媒体と前記記録ヘッドとのギャップを規定するプラテンと、
前記記録ヘッドの下流側に設けられ、記録の行われた被記録媒体を排出する被記録媒体排出手段と、を備えた記録装置であって、
前記プラテンが、前記記録ヘッドと対向する面に、副走査方向に延びる第1リブと、
前記第1リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第2リブと、
前記第1リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第3リブと、を備えて構成され、
前記被記録媒体排出手段が、回転駆動される排出駆動ローラと、被記録媒体の記録面側に設けられるとともに被記録媒体と接して従動回転する排出従動ローラと、を備えて構成され、
前記記録ヘッドと前記プラテンとの対向領域から前記被記録媒体排出手段へ至る被記録媒体の搬送経路上に、被記録媒体の記録面と接して従動回転する補助ローラを備え、
被記録媒体の搬送経路を側視して、前記第2リブ及び前記第3リブが、前記排出従動ローラと被記録媒体との接触点と、前記補助ローラと被記録媒体との接触点と、を結ぶ直線に対して下側に位置している、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
被噴射媒体に液体噴射を行う液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドと対向して設けられ、被噴射媒体を支持することにより被噴射媒体と前記液体噴射ヘッドとのギャップを規定するプラテンと、を備えた液体噴射装置であって、
前記プラテンが、前記液体噴射ヘッドと対向する面に、副走査方向に延びる第1リブと、
前記第1リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第2リブと、
前記第2リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第3リブと、を備え、
前記第2リブの前記液体噴射ヘッド側への突出高さが、前記第1リブの同突出高さよりも低いことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
被噴射媒体に液体噴射を行う液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドと対向して設けられ、被噴射媒体を支持することにより被噴射媒体と前記液体噴射ヘッドとのギャップを規定するプラテンと、
前記液体噴射ヘッドの下流側に設けられ、液体噴射の行われた被噴射媒体を排出する被噴射媒体排出手段と、を備えた液体噴射装置であって、
前記プラテンが、前記液体噴射ヘッドと対向する面に、副走査方向に延びる第1リブと、
前記第1リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第2リブと、
前記第2リブの下流側に設けられた、副走査方向に延びる第3リブと、を備えて構成され、
前記被噴射媒体排出手段が、回転駆動される排出駆動ローラと、被噴射媒体の液体噴射面側に設けられるとともに被噴射媒体と接して従動回転する排出従動ローラと、を備えて構成され、
前記液体噴射ヘッドと前記プラテンとの対向領域から前記被噴射媒体排出手段へ至る被噴射媒体の搬送経路上に、被噴射媒体の液体噴射面と接して従動回転する補助ローラを備え、
被噴射媒体の搬送経路を側視して、前記第2リブ及び前記第3リブが、前記排出従動ローラと被噴射媒体との接触点と、前記補助ローラと被噴射媒体との接触点と、を結ぶ直線に対して下側に位置している、
ことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−247884(P2006−247884A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64030(P2005−64030)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】