説明

プラントの制御装置

【課題】プラントのプロセスの時間因子に起因する操作変数間の相互作用を考慮し、その影響が最小となるような操作変数間の操作手順を自動演算する。
【解決手段】複数のロジック演算に使用する操作変数を保存する制御ロジックデータベースと、ロジック演算を実行しプラントに与える複数の制御信号を生成する制御信号生成部と、操作変数の操作手順を演算する操作手順演算部を備え、操作手順演算部は、複数の操作変数のうち、互いに関連する操作変数について、第1の操作変数のロジック演算結果と第2の操作変数が加味されるまでの間のロジック演算における遅れ時間を操作変数毎に求めて、複数の操作変数の操作手順を決定する。制御信号生成部は、複数のロジック演算で使用する操作変数の大きさを変更するとき、この操作変数に関連する他の操作変数の変更順序を操作手順演算部で求めた複数の操作変数の操作手順に従って実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントの制御装置に係り、特に操作変数間の操作手順を自動演算するプラントの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントの制御装置は、制御対象であるプラントから得られる状態量の計測信号を処理し、プラントに与える制御信号(操作信号)を算出して制御対象に伝達する。また制御装置は、多くの場合に複数の計測信号を入力し、複数の制御信号(操作信号)をプラントに出力しており、プラントが大規模であるほど多数入力、多数出力の制御装置とされることが多い。
【0003】
プラントの制御装置には、プラントの状態量の計測信号がその目標値(以下操作変数という)を満足するように、操作信号を計算するアルゴリズムが実装される。従って、多数入力、多数出力の制御装置では、それぞれの操作変数ごとに操作信号を計算するアルゴリズムが準備されることになる。係る多数入力、多数出力の制御装置では、入力あるいは出力の中に相互に影響しあうものを含むことが多い。
【0004】
プラントの制御に用いられている制御アルゴリズムとして、PI(比例・積分)制御アルゴリズムがある。PI制御では、プラントの状態量の計測信号とその操作変数との偏差に比例ゲインを乗じた値に、偏差を時間積分した値を加算して、プラントに与える操作信号を導出する。PI制御を用いた制御アルゴリズムは、ブロック線図などで入出力関係を記述することができるため、入力と出力の因果関係が分かりやすく、多くの適用実績がある。
【0005】
しかし、プラントの運転状態の変更や環境の変化など、事前に想定していない条件でプラントを運転する場合には、制御ロジックを変更するなどの作業が必要になる場合がある。また、近年ではPI制御のようにプラントを安定・安全に運転するだけでなく、プラントの省エネルギー化、高効率化、環境に影響を与える有害物質の排出量低減等、プラントの運転状態を最適化する制御技術を導入する動きが積極的に行われている。
【0006】
このような、プラントの運転状態や環境変化への適応、及びプラントの運転状態の最適化に対応した制御方式には、制御アルゴリズムやパラメータ値を自動的に修正する適応制御、最適制御等の方式がある。
【0007】
上記に鑑みた技術として、特許文献1には、プラントの運転状態の将来値を予測し、現在から将来にわたる運転状態が制御目標に対して最適となるように複数の操作変数を最適化演算により決定する、多変量モデル予測制御に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−296204公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された技術をプラントの制御装置へ適用した場合、予測モデルの最適化計算により将来にわたるプラントの挙動を考慮した最適な操作変数を決定できるため、プラントの運転状態の最適化を実現できる。また特許文献1に開示された技術では、操作変数が数十に及ぶ場合でも、予測モデルの演算コストを抑制するよう工夫することで実用性を確保することができる。
【0010】
然しながら、操作変数が増加すると、その操作変数間の相互作用の影響を無視できなくなる。即ち、プラントを制御する上で基本となる制御ロジックを構築する際に、複数の操作変数を考慮する必要性が生じる。操作変数間の相互作用は遅れ時間やむだ時間といった時間因子によって支配されることが多い。それらの影響を無視した場合、演算結果として得られた操作変数に従いプラントを操作したにもかかわらず、所望の制御効果を得られない可能性がある。
【0011】
特許文献1に開示された技術では、プラントのプロセスに内在する時間因子の影響を考慮した構成とはなっておらず、仮に適用したプラントの時間因子の影響が強く、操作変数に強い相互依存関係が存在した場合、操作変数決定の時間的制約に対しては所望の性能を達成できるものの、前記の理由により制御目標に対しては目標性能を達成できない可能性がある。
【0012】
本発明の目的は、多数の操作変数を考慮するプラントの適応、最適制御において、プラントのプロセスの時間因子に起因する操作変数間の相互作用を考慮し、その影響が最小となるような操作変数間の操作手順を自動演算するプラントの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上のことから本発明においては、プラントから複数の計測信号を取り込み、計測信号をその操作変数に合致すべく複数のロジック演算を実行し、プラントに複数の制御信号を与えるプラントの制御装置において、制御装置は、複数のロジック演算に使用する操作変数を含む制御ロジックデータを保存する制御ロジックデータベースと、ロジック演算を実行しプラントに与える複数の制御信号を生成する制御信号生成部と、操作変数の操作手順を演算する操作手順演算部を備え、操作手順演算部は、制御ロジックデータベースに記憶された複数のロジック演算に使用する複数の操作変数のうち、互いに関連する操作変数について、第1の操作変数のロジック演算結果と第2の操作変数が加味されるまでの間のロジック演算における遅れ時間を操作変数毎に求めて、複数の操作変数の操作手順を決定し、制御信号生成部は、複数の計測信号をその操作変数に合致すべく複数のロジック演算を実行して複数の制御信号を前記プラントに与えるとともに、複数のロジック演算で使用する操作変数の大きさを変更するとき、この操作変数に関連する他の操作変数の変更順序を操作手順演算部で求めた複数の操作変数の操作手順に従って実行する。
【0014】
また、制御ロジックデータベースに記憶された複数のロジック演算にはPI制御を含み、パラメータとしてPI制御の積分時定数を備えており、操作手順演算部はロジック演算における遅れ時間として、積分時定数を使用する。
【0015】
また、操作手順演算部では、操作変数に関連する制御ロジックを抽出し、制御ロジックに対する操作変数間の遅れ時間・むだ時間といった時間因子から遅れ時間を決定する。
【0016】
以上のことから本発明においては、プラントから複数の計測信号を取り込み、計測信号をその操作変数に合致すべく複数のロジック演算を実行し、プラントに複数の制御信号を与えるプラントの制御装置において、制御装置は、複数のロジック演算に使用する操作変数を含む制御ロジックデータを保存する制御ロジックデータベースと、ロジック演算を実行しプラントに与える複数の制御信号を生成する制御信号生成部と、操作変数の操作手順を演算する操作手順演算部を備え、操作手順演算部は、互いに関連する操作変数について、第1の操作変数のロジック演算結果と第2の操作変数が加味されるまでの間のロジック演算における遅れ時間を、操作変数間の相互関係を表す行列の形で把握し、操作変数間の相互関係を有向グラフに変換し、有向グラフから各操作変数の評価値を求め、評価値の大きさにしたがって複数の操作変数の操作手順を決定し、制御信号生成部は、複数の計測信号をその操作変数に合致すべく複数のロジック演算を実行して複数の制御信号を前記プラントに与えるとともに、複数のロジック演算で使用する操作変数の大きさを変更するとき、この操作変数に関連する他の操作変数の変更順序を前記操作手順演算部で求めた複数の操作変数の操作手順に従って実行する。
【0017】
また、有向グラフから各操作変数の評価値を求めるために、操作変数毎に設けたノード間の有向枝の接続に従ってノード間の遷移処理を実行し、有向枝に記載された遅れ時間情報をノード遷移に従って加算していくことで、各操作変数の評価値を計算する。
【0018】
また、操作手順演算部では、手続きにより求めた各操作変数の評価値の小さいものから順番に操作手順を割り当てる。
【0019】
また、制御装置は画像表示装置を含み、画像表示装置には、制御ロジックデータベースに記憶された複数のロジック演算に使用する複数の操作変数のうち、互いに関連する操作変数を選択するための操作変数設定画面として、複数のロジック演算回路とこの回路に含まれる操作変数とが表示され、かつ表示された操作変数から抽出された操作変数がリスト表示される。
【0020】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のプラントの制御装置において、
また、制御装置は画像表示装置を含み、画像表示装置には、選択した操作変数に対して、操作手順演算部においてその操作手順を決定した結果、ならびにその操作手順に基づきプラントの操作を実行している途中経過が演算結果表示画面として表示される。
【0021】
また、制御装置は画像表示装置を含み、画像表示装置には、操作手順演算部において計算した結果として、各操作変数を評価値の昇順に演算結果リストに表示する手順演算結果表示画面が表示される。
【0022】
また、制御装置は画像表示装置を含み、画像表示装置には、制御信号生成部によるプラント制御が実行されたときの、各操作変数の変更前後の値並びに非制御量の変更前後の値が制御特性表示画面として表示される。
【0023】
また、計測信号として、火力発電プラントから排出されるガスに含まれる窒素酸化物、一酸化炭素、及び硫化水素の夫々の濃度、並びにプラントの蒸気流量、蒸気温度、蒸気圧力のうち少なくとも1つを表す信号を含み、制御信号として、空気ダンパの開度、空気流量、燃料流量、給水流量、タービンガバナ開度、排ガス再循環流量のうち少なくとも1つを決定する信号を含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、プラントの操作変数の相互依存関係を考慮してプラントを操作する手順を自動演算する機能を備え、かつ演算した手順に基づいてプラントを操作するように制御信号を生成し、相互依存関係による影響を最小限に抑える機能を備えたプラントの制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のプラント制御装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】制御装置が制御対象とする火力発電プラントの構成を示す概略図。
【図3】ボイラ下流側に設置したエアーヒーターと関連する配管部の拡大図。
【図4】典型的なロジック回路の一例を示す図。
【図5】制御装置200の処理内容を示すフローチャート。
【図6】操作手順演算部500の詳細な動作を示すフローチャート。
【図7】操作変数間の相互関係を行列の形で表現した図。
【図8】操作変数間の相互関係を有向グラフで表現した図。
【図9】有向グラフから各操作変数の評価値を計算するフローチャート。
【図10】図9各部の処理の流れとこのときに生成される情報について示す図。
【図11】操作変数設定画面の一例を示す図。
【図12】演算結果表示画面の一例を示す図。
【図13】手順演算結果表示画面の一例を示す図。
【図14】制御特性表示画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明によるプラントの制御装置の実施例について図面を参照して説明する。
【実施例】
【0027】
まず、本発明のプラント制御装置の概略構成について図1を参照して説明する。図1に示すように、制御対象のプラント100は、制御装置200によって制御される。ここではプラント100が火力発電プラントである例について、後で図2、図3を用いて説明する。
【0028】
図1の制御装置200の内部構成を機能別に大別すると、演算装置Mと、データベースDBと、インターフェイス部IFとで構成される。
【0029】
まず演算装置Mについてみると、これは補正信号演算部300、制御信号生成部400、操作手順演算部500を備える。これら各部のうち、制御信号生成部400は、PI制御を用いた制御アルゴリズム等で構成された既存の制御機能である。補正信号演算部300は、制御信号生成部400で使用する操作変数を最適な値にする補正信号を与える。また、操作手順演算部500は、補正信号を与える手順やタイミングを決定する。
【0030】
またデータベースDBとして、計測信号データベースDB1、演算情報データベースDB2、操作手順情報データベースDB3、制御ロジックデータベースDB4、及び制御信号データベースDB5が設けられている。制御信号生成部400による通常のプラント制御のためには計測信号データベースDB1、制御ロジックデータベースDB4、及び制御信号データベースDB5が使用される。演算情報データベースDB2と操作手順情報データベースDB3は、補正信号演算部300と操作手順演算部500で使用する。
【0031】
また、インターフェイス部IFとして、外部入力インターフェイスIF/I、及び外部出力インターフェイスIF/Oが設けられている。
【0032】
なお、制御装置200は保守ツール910と接続されており、プラント100の運転員は、保守ツール910に接続された外部入力装置900と画像表示装置(例えばCRTディスプレイ)920とを介して、制御装置200を制御することができる。
【0033】
以下、概略以上のように構成された本発明のプラント制御装置について説明するが、その前に本発明を適用可能なプラント100の一例として火力発電プラントの構成について説明する。
【0034】
図2は、本発明に係わる制御装置200が制御対象とする火力発電プラント100aの構成を示す概略図である。先ず、火力発電プラント100aによる発電の仕組みについて簡単に説明する。
【0035】
図2の火力発電プラント100aは、ボイラ101で蒸気を発生してタービン108を駆動し、タービンに直結する発電機109で所望の電力量を得るシステムである。この実現のためには、ボイラ101に供給する水と燃料と空気を負荷要求信号(電力量要求信号)に対応して適切に制御し、タービンに導く蒸気の温度、流量、圧力の関係を所望の関係に維持する必要があり、このために制御装置200が使用される。
【0036】
まずボイラ101には、燃料として例えば微粉炭が供給される。微粉炭は、ミル110で石炭を細かく粉砕して得られ、この微粉炭が配管134から複数のバーナ102を介して燃料として与えられる。
【0037】
またボイラ101には、微粉炭燃焼用の空気が供給される。空気には、微粉炭搬送用の1次空気と燃焼調整用の2次空気があり、微粉炭と1次空気は配管134から、2次空気は配管141から夫々バーナ102に導かれる。また、ボイラ101には、2段燃焼用の空気をボイラ101に投入するアフタエアポート103が設けられている。2段燃焼用の空気は、配管142からアフタエアポート103に導かれる。
【0038】
またボイラ101には、水(給水)が供給される。給水は、給水ポンプ105を介してボイラ内の熱交換器106に供給され、ボイラ101を流下する燃焼ガスによって過熱され、高温高圧の蒸気となる。
【0039】
ボイラ101の内部で微粉炭を燃焼することによって発生した高温の燃焼ガスは、ボイラ101の内部の経路に沿って下流側に流下して、ボイラ101の内部に配置された熱交換器106で給水と熱交換して蒸気を発生させた後に、排ガスとなってボイラ101の下流側に設置されたエアーヒーター104に流入し、このエアーヒーター104で熱交換してボイラ101に供給する空気を昇温する。そして、このエアーヒーター104を通過した排ガスは、図示していない排ガス処理を施した後に、煙突から大気に放出される。
【0040】
ボイラ101の熱交換器106を循環する給水は、給水ポンプ105を介して熱交換器106に供給され、熱交換器106においてボイラ101を流下する燃焼ガスによって過熱され、高温高圧の蒸気となる。尚、本実施例では熱交換器の数を1つとしているが、熱交換器を複数配置するようにしてもよい。
【0041】
熱交換器106で発生した高温高圧の蒸気は、タービンガバナ弁107を介して蒸気タービン108に導かれ、蒸気の持つエネルギーによって蒸気タービン108を駆動して発電機109で発電する。
【0042】
前記したように制御装置200は、ボイラ101に供給する水と燃料と空気を負荷要求信号に対応して適切に制御し、かつタービンに導く蒸気の温度、流量、圧力の関係を所望の関係に維持する機能を果たすために、発電プラント各部の状態量を取り込んでいる。このために、火力発電プラント100aには、その運転状態を示す状態量を検出する様々な計測器が配置されている。
【0043】
火力発電プラント100aは図1のプラント100に該当しているので、これらの計測器から取得された火力発電プラントの計測信号は、図1に示すようにプラント100から計測信号1として制御装置200の外部入力インターフェイスIF/Iに送信される。
【0044】
計測器としては、例えば図2の火力発電プラント100aに示すように、熱交換器106から蒸気タービン108に供給される高温高圧の蒸気の温度を計測する温度計測器151、蒸気の圧力を計測する圧力計測器152、発電機9で発電される電力量を計測する発電出力計測器153が図示されている。
【0045】
蒸気タービン108の復水器(図示せず)によって蒸気を冷却して生じた給水は、給水ポンプ105によってボイラ101の熱交換器106に供給されるが、この給水の流量は流量計測器150によって計測されている。
【0046】
また、ボイラ101から排出する燃焼ガスである排ガス中に含まれている成分(窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、及び硫化水素(HS)など)の濃度に関する状態量の計測信号は、ボイラ101の下流側に設けた濃度計測器154によって計測される。また図2に計測器としての図示は無いが、これら以外にも微粉炭燃料量、空気量などの状態量が計測器により計測され制御装置に取り込まれる。
【0047】
このように、火力発電プラント100aの計測データ項目には、上記各計測器によって計測した火力発電プラント100aの状態量であるボイラ101に供給される燃料流量、ボイラ101に供給される空気流量、ボイラ101の熱交換器106に供給される給水流量、ボイラ101の熱交換器106で発生して蒸気タービン108に供給される蒸気温度、ボイラ101の熱交換器106に供給される給水の給水圧力、ボイラ101から排出される排ガスのガス温度、前記排ガスのガス濃度、及びボイラ101から排出される排ガスの一部をボイラ101に再循環させる排ガス再循環流量等が含まれる。計測データ項目は、図1の制御装置200内の計測信号データベースDB1に保管される。
【0048】
これらの計測データ項目は、図1で示した制御装置200における制御信号生成部400で演算して出力された制御信号13による操作の結果として決定される計測データ項目である。つまり、制御信号13に基づいてプラント各所の操作端を操作した結果として、プラント状態量である計測データ項目の値が定まってくる。
【0049】
次に、プラントの操作端について説明する。ここでは、ボイラ101に供給する空気系統を例にとって、この場合の操作端の説明を行う。具体的には、ボイラ101の内部に投入される空気の経路、すなわちバーナ102からボイラ101の内部に投入される1次空気と2次空気の経路、及びアフタエアポート103からボイラ101の内部に投入される空気の経路で使用される操作端について図2を用いて説明する。
【0050】
図2において、1次空気は、ファン120から配管130に導かれ、途中でボイラ101の下流側に設置されたエアーヒーター104を通過する配管132と、エアーヒーター104を通過せずにバイパスする配管131とに分岐するが、エアーヒーター104の下流側に配設した配管133となって再び合流し、バーナ102の上流側に設置された微粉炭を製造するミル110に導かれる。
【0051】
エアーヒーター104を通過する1次空気は、ボイラ101を流下する燃焼ガスと熱交換することによって加熱される。この加熱された1次空気と共に、エアーヒーター104をバイパスした1次空気は、ミル110において粉砕した微分炭をバーナ102に搬送する。
【0052】
ファン121を用いて配管140から投入された空気は、エアーヒーター104で同様にして加熱された後に、2次空気用の配管141とアフタエアポート用の配管142とに分岐して、夫々、ボイラ101のバーナ102とアフタエアポート103とに導かれる。
【0053】
図3は、図2に示した火力発電プラント100aのボイラ101の下流側に設置したエアーヒーター104と関連する配管部の拡大図である。この図を用いてボイラの操作端の一例を説明する。
【0054】
火力発電プラントの制御装置200においては、ファン121から送られてバーナ102とアフタエアポート103からボイラ101の内部へ投入される空気流量を制御する例として、2次空気用の配管141とアフタエアポート用の配管142の上流側に操作端機器となるエアダンパ162及びエアダンパ163をそれぞれ設け、制御装置200によってこれらのエアダンパ162及びエアダンパ163の開度を調節して、ボイラ101の内部に供給される2次空気とアフタエアの流量をそれぞれ制御できるように構成している。
【0055】
また、ファン120から送られてバーナ102から微粉炭と共にボイラ101の内部へ投入される空気流量を制御する例として、配管133に合流する直前部分の配管131及び配管132に操作端機器となるエアダンパ160及びエアダンパ161をそれぞれ設け、制御装置200によってこれらのエアダンパ160及びエアダンパ161の開度を調節して、ボイラ101の内部に供給される空気の流量をそれぞれ制御できるように構成している。
【0056】
なお、前記制御装置200は、他の計測データ項目を制御することもできるので、操作端機器の設置場所を制御対象に応じて変えてもよい。
【0057】
図3に示したように、エアーヒーター104には空気を供給する配管130、及び配管140がそれぞれ設置されており、このうち、配管140はエアーヒーター104を貫通して配設され、配管130は途中から分岐した配管131と配管132によって構成されており、前記配管131はエアーヒーター104をバイパスして配設され、前記配管132はエアーヒーター104を貫通して配設されている。
【0058】
そして配管132はエアーヒーター104を貫通した後に配管131と合流して配管133となってミル110に導かれ、このミル110から配管133を通じて微粉炭と共に空気をボイラ101のバーナ102に導くように配設されている。
【0059】
また、配管140はエアーヒーター104を貫通した後に配管141と配管142とに分岐し、このうち、配管141はボイラ101のバーナ102に、配管142はボイラ101のアフタエアポート103に、それぞれ空気を導くように配設されている。
【0060】
また、前記配管133に合流する直前部分の配管131及び配管132には、流通する空気量を調節するエアダンパ160及びエアダンパ161がそれぞれ設置され、前記配管141及び配管142の上流部分には、流通する空気量を調節するエアダンパ162及びエアダンパ163がそれぞれ設置されている。
【0061】
そして、これらのエアダンパ160〜163を操作することにより、配管131、132、141、142を空気が通過する面積を変更することができるので、配管131、132、141、142を通過してボイラ101の内部に供給される空気流量を個別に調整できる。
【0062】
なお、以上の説明ではボイラ101の空気系統に関する操作端を例に挙げて説明したが、これ以外にも多くの操作端を有する。例えば、燃料系統であればミル110を回転させるミル用モータ、水系統では給水量制御用のポンプなどがある。また、これら以外にも水系統、蒸気系統、空気系統、あるいはドレン系統の配管上の各種の弁、各種の補機などが操作端として制御装置200の操作の対象となる。
【0063】
制御装置200の制御信号生成部400によって演算された制御信号13は、外部出力インターフェイスIF/Oを介して火力発電プラント100aに対する操作信号14として出力され、ボイラ101の配管131、132、141、142にそれぞれ設置したエアダンパ160、161、162、163などの操作端の機器を操作する。
【0064】
尚、本実施例では、エアダンパ160、161、162、163などの機器のことを操作端と呼び、これを操作するのに必要な制御装置200で演算した制御信号13が該制御装置200から前記操作端に指令する出力信号を操作信号14と呼ぶ。
【0065】
また、制御信号生成部400によって演算されて操作端に出力される操作信号14としては、ボイラ101に空気を供給する配管131、132、141、142にそれぞれ設置された空気の流量を調節する空気ダンパ160〜163の開度、ボイラ101のバーナ102に供給される微粉炭の燃料流量を調節するミル用モータの回転数、及びボイラ101から排出される排ガスの一部をボイラ101に再循環させる排ガス再循環用の排ガスダンパの開度、給水ポンプ105駆動用モータの回転数、タービン108に導かれる蒸気流量を決定するタービンガバナ弁107の開度等が含まれる。
【0066】
発電プラントの制御装置200は、操作端各部を制御してボイラ101に供給する水と燃料と空気を負荷要求信号に対応して適切に制御し、かつタービンに導く蒸気の温度、流量、圧力の関係を所望の関係に維持する機能を果たすための制御ロジックを備えている。この制御ロジックは、図1の制御ロジックデータベースDB4に保持されており、この一例を図4に示す。
【0067】
図4は、典型的なロジック回路の一例を示している。この事例では、4組のロジック回路L1、L2,L3,L4があり、互いに関連している状況を説明する。このロジック回路は、上記した発電プラントのものではないが、例えばL1が負荷、L2が燃料,L3が給水,L4が空気の制御のためのロジック回路と仮定すれば、プラントの制御のための各制御ロジックが互いに関連、影響しあっている様子が理解できる。
【0068】
まず、ロジック回路L1、L2,L3,L4は、演算素子として、例えば加算(減算)回路ad,乗算回路m、除算回路di、比例積分回路PI、信号発生回路SG、関数発生回路FG、積分回路I等で構成され、制御ロジック上での処理は有向枝の接続に従い遷移する(制御信号線の矢印の方向に信号が流れる)。なお、各演算素子には、その演算が実行完了となるまでの遅れ時間情報が含まれている。
【0069】
ロジック回路L1、L2,L3,L4の入出力について説明する。まずINは、計測情報入力信号である。これは図1のプラント200から入力した計測信号であり、多くの場合に制御系の帰還信号として使用される。操作変数(A,B,C,D,E)は、制御系の目標設定信号である。また、プラントの操作信号に該当する制御指令(a,b,c,d,e,f)がある。ここで操作変数(A,B,C,D,E)は、制御指令(a,b,c,d,e,f)を生成するための制御ロジック回路への入力変数であり、設定可能な値である。
【0070】
例えば、ロジックL1の制御思想をごく簡単に説明すると、目標信号Aに対して計測信号IN1を制御帰還信号とする偏差信号を加算回路ad1で求め、比例積分演算回路PIの結果で制御指令bを作成し、制御指令bにより操作端を操作する。なお、比例積分演算PIに先立ち、乗算回路Xにおいて、計測信号IN2によるゲイン補正を実行している。また、比例積分演算回路PIの結果と信号発生器SGからの信号を乗算回路Xで乗算して得た信号(制御指令)aにより、他の操作端を制御する。
【0071】
この例の場合に、ロジック回路L1は操作変数A、2種類の計測情報入力信号IN1、IN2,信号発生回路SGからの信号を入力として、制御指令a,bを得る。ロジック回路L2は操作変数B、E,制御指令bを入力として、制御指令cを得る。ロジック回路L3は操作変数D,E、計測情報入力信号IN3、制御指令cを入力として、制御指令eを得る。ロジック回路L4は操作変数C、計測情報入力信号IN4,制御指令a,eを入力として、制御指令fを得る。この図4の複数のロジック回路L1、L2,L3,L4の間には、上記の指令、信号の関係を通じて、上流に位置するロジック回路と、その下流に位置するロジック回路とが存在し、影響を与えていることが理解できる。
【0072】
この事例で明らかなように、それぞれのロジック回路Lの出力である制御指令(a,b,c,d,e,f)は、それぞれプラント内各所の操作端に与えられて制御が実行されると共に、他のロジック回路Lの入力の一部として使用される。また操作変数(A,B,C,D,E)も異なるロジック回路で使用されることがある。
【0073】
以上の説明から明らかなように、図1の制御装置200は通常運転状態においてはプラント100から計測信号1を入力して操作信号14を与えている。この機能は制御信号生成部400により実行されている。制御信号生成部400は計測信号データベースDB1に蓄積された計測データ3と、制御ロジックデータベースDB4に記憶されている例えば図4のような制御ロジックデータ11を用いて、計測信号1が望ましい値となるように制御信号13を生成する。なお、制御信号生成部400にて生成された制御信号13は、制御信号データベースDB5に保存される。
【0074】
図4のロジック回路は、発電プラントのものではないが、例えばL1が負荷、L2が燃料,L3が給水,L4が空気の制御のためのロジック回路と仮定することができることについて先に説明した。この仮定では、例えば操作変数Aを負荷要求信号、Bを燃料要求信号、Dを給水要求信号、Cを空気要求信号と考えることができる。これら操作変数はいわゆる目標設定信号であり、火力発電プラントの例では、負荷要求信号が変更されたときに、他の目標設定信号(燃料要求信号B、給水要求信号D、空気要求信号C)もバランスさせながら変更させる必要がある。この変更操作では、各目標設定信号の時系列的な大きさと、変更の順序、タイミングを決定させる必要がある。
【0075】
図1の制御装置200では、補正信号演算部300において操作変数の時系列的な大きさを決定し、操作手順演算部500において操作変数の変更の順序、タイミングを決定する。この決定結果は、制御信号生成部400における制御に反映される。
【0076】
以下、補正信号演算部300と制御信号生成部400と操作手順演算部500の機能に付いて簡便に説明する。
【0077】
まず制御信号生成部400では、制御ロジックデータベースDB4に保存された制御ロジックデータ11と、計測データ3を用いて、計測信号1が望ましい値となるように制御信号13を生成する。この制御ロジックデータベースDB4には、図4で説明したように、制御ロジックデータ11及び12を算出するための制御回路、制御パラメータが保存される。この制御ロジックデータ11及び12を算出する制御回路には、従来技術として公知のPI(比例・積分)制御などを用いている。
【0078】
制御信号生成部400は、基本的に以上のように作動するが、この場合に制御信号生成部400が与える制御信号が最適な値となるように、補正信号演算部300と操作手順演算部500により調整される。そのために、制御信号生成部400には、さらに演算情報データベースDB2に保存された補正信号演算データ6、操作手順情報データベースDB3に保存された操作手順情報8が入力されている。
【0079】
このうち、操作手順情報8とは、制御信号生成部400が制御信号13を生成する際に考慮する操作手順やタイミングのことであり、操作手順演算部500により決定される。操作手順演算部500では、計測信号データベースDB1に保存された計測データ3、制御ロジックデータベースDB4に保存された制御ロジックデータ12、ならびに操作手順情報データベースDB3に保存されているプラント制御時に考慮する操作変数条件を含む操作手順演算情報データ9を用いて、これを決定する。演算結果である操作手順情報データ10は、操作手順情報データベースDB3に保存される。この操作手順演算部500の機能は、本発明の中核をなすものであるので別途詳細に説明する。
【0080】
また、補正信号演算データ4とは、制御信号生成部400が生成する制御信号13の大きさを補正するものであり、補正信号演算部300により決定される。補正信号演算部300には、計測信号データベースDB1に保存された計測データ3と、演算情報データベースDB2に保存された補正信号演算情報5と、操作手順情報データベースDB3に保存された操作手順情報7が入力される。そして、ここでの演算結果として、補正信号演算データ4を生成する。この補正信号演算データ4は、演算情報データベースDB2に保存される。なお、計測信号データベースDB1に保存された計測データ3の一部は、制御信号生成部400及び操作手順演算部500に入力され、これらでの演算に使用される。
【0081】
補正信号演算部300は、要するに図4のロジック回路の操作変数の大きさを決定する機能であるが、本発明の場合にこの内部構成は従来公知の手法で実現可能である。例えば、特許第4627553号に記載の考えに従って操作変数の大きさを決定することができる。これは例えば、火力発電プラント制御の例で言えば、負荷要求信号が変更されたときに、他の操作変数(目標設定信号)である燃料、給水、空気量の目標信号をどの程度変更させるべきか、補正信号演算部300はその最適な大きさを求めるものである。これは過去の経験などを学習することで最適値にすることができる。本発明では、補正信号演算部300は、これらの公知技術を適用して実現可能であるので、これ以上の詳細説明を省略する。
【0082】
なお操作手順演算部500から操作手順情報データベースDB3に保存される操作手順情報データ10には、プラント100の運転員が保守ツール910を介して設定した制御ロジック上で操作可能な入力情報(操作変数)の操作手順に関する情報が含まれる。
【0083】
また制御信号生成部400では、操作手順情報データ10の中から過去の操作履歴を考慮し、今回の制御信号生成時に考慮すべき操作変数情報を抽出し、それを基に制御信号13を生成する。
【0084】
係る構成とすることにより制御装置200は、制御ロジックデータベースDB4に保存された制御ロジック情報を考慮して決定した操作手順情報データ8に従って制御信号13を生成することになる。このメカニズムを具備することにより、操作変数や制御指令間での相互干渉の影響を考慮した制御を実行することが可能となり、制御性能を向上できる。
【0085】
制御装置200は、概ね以上のように構成されており、プラント100の制御を実行する。この制御は、プラント100の運転員の監視の下で実行され、そのために制御装置200には保守ツール910が接続されている。
【0086】
プラント100の運転員は、キーボード901とマウス902で構成される外部入力装置900、制御装置200とデータを送受信できる保守ツール910、及び画像表示装置920を用いることにより、制御装置200に備えられている種々のデータベースに保存された情報にアクセスすることができる。このために、制御装置200は保守ツール910と入出力データ情報90をやり取りするための図示せぬ入力部又は出力部を有する。
【0087】
これらの装置を用いることにより、プラント100の運転員は、制御装置200の補正信号演算部300、制御信号生成部400、及び操作手順演算部500で用いる条件設定及び得られた演算結果の確認に必要な情報を入力することができる。
【0088】
保守ツール910は、外部入力インターフェイス911、データ送受信処理部912、及び外部出力インターフェイス913で構成され、データ送受信処理部912を介して制御装置200とデータを送受信できる。
【0089】
外部入力装置900で生成した保守ツール入力信号91は、外部入力インターフェイス911を介して保守ツール910に取り込まれる。保守ツール910のデータ送受信処理部912では、保守ツール入力信号92の情報に従って、制御装置200から入出力データ情報90を取得する。
【0090】
また、データ送受信処理部912では、保守ツール入力信号92の情報に従って、制御装置200の制御装置200の補正信号演算部300、制御信号生成部400、及び操作手順演算部500で用いる条件設定及び得られた演算結果の確認に必要な入出力データ情報90を出力する。
【0091】
データ送受信処理部912では、入出力データ情報90を処理した結果得られる保守ツール出力信号93を、外部出力インターフェイス913に送信する。外部出力インターフェイス913から送信された保守ツール出力信号94は、画像表示装置920に表示される。
【0092】
尚、上記の制御装置200では、計測信号データベースDB1、演算情報データベースDB2、操作手順情報データベースDB3、制御ロジックデータベースDB4、及び制御信号データベースDB5が制御装置200の内部に配置されるが、これらの全て、あるいは一部を制御装置200の外部に配置することもできる。
【0093】
以下、図1の制御装置200の処理内容を示す制御手順を図5のフローチャートに従って説明する。図5に示したフローチャートは、ステップS10、S11、S12、S13、S14、S15、S16、S17、S18、S19、及びS20を組み合わせて実行する。以下では、夫々のステップについて説明する。
【0094】
まず、制御装置200の動作開始後、制御装置の実行条件を設定するステップS10では、補正信号演算部300、制御信号生成部400、及び操作手順演算部500の実行時に使用する種々のパラメータ条件を設定する。
【0095】
次に、操作変数を設定するステップS11では、プラント100に対して制御装置200が操作条件を変更する対象となる操作変数を設定する。この操作変数は、制御ロジック中に定義されている操作項目(CRTオペレーション)の中から、制御目的に応じて任意に選択することができる。なお、操作変数とは図4のロジック回路で説明したように制御系の目標信号であり、図4の例では(A,B,C,D,E)がこれに相当する。これは例えば、火力発電プラントの例では、多くの操作変数の中から、制御目的として負荷要求信号に着目したときには、これにバランスさせて制御すべき燃料、給水、空気の目標設定信号を、操作条件を変更する対象となる操作変数として抽出すべきことを意味している。
【0096】
次に、操作手順を計算するステップS12では、操作手順演算部500を動作させ、プラント100を制御する際に、前記ステップS11で設定した操作変数を変更する順番を計算し、操作手順情報データベースDB3に保存する。つまり、これらの目標信号は、制御過程の適宜のタイミングで大きさが変更されて運用されるが、相互に関連して変更される必要があることから、変更のタイミングが重要になる。例えばボイラの事例で給水の目標信号を変更するときには、燃料、空気も変更して全体を安定させる必要があるが、過渡的には相互に遅れ時間が存在するために他の操作変数を変更する順番やタイミングを考慮する必要がある。尚、操作手順演算部500の詳細な機能及び動作については、後述する。
【0097】
次に、計測信号データを取得するステップS13では、制御装置200に設置された外部入力インターフェイスIF/Iを通じて計測信号データ1を取得し、計測信号データベースDB1に保存する。
【0098】
次に、補正信号を演算するステップS14では、補正信号演算部300を動作させ、ステップS12にて計算した操作手順情報を基に、現時点で該当する操作変数を操作対象とした操作補正信号を生成する。この操作補正信号は、該当する操作変数のみを対象とした制御信号である。つまり、ステップS12では、他の操作変数を変更する順番やタイミングを考慮したが、ここではさらに過渡的な制御状態における制御信号13の大きさを補正する。
【0099】
次に、ステップS15では、ステップS14にて求めた操作補正信号演算結果4を演算情報データベースDB2へ保存する。
【0100】
次に、制御信号を生成するステップS16では、制御装置200の制御信号生成部400を動作させ、演算情報データベースDB2、操作手順情報データベースDB3及び制御ロジックデータベースDB4に保存されている補正信号演算データ6、操作手順情報8、制御ロジックデータ11を用いて制御信号13を生成する。生成した制御信号13はプラントの制御に使用される他、制御信号データベースDB5に保存される。
【0101】
次の、制御の実行を判定するステップS17は分岐判断である。プラント100の運転状態から現時点でプラントの操作を実行できない場合はステップS18へ進み、そうでない場合はステップS19へ進む。
【0102】
プラントを制御するステップS18では、生成した制御信号13を制御装置200に設置された外部出力インターフェイスIF/Oを通じて制御信号14として出力し、プラントを制御する。
【0103】
次の、ステップS19も分岐判断である。ステップS12にて計算した操作手順に従い、一連の操作変数に関するプラント100の制御が終了している場合はステップS20に進み、そうでない場合はステップS13へ進む。
【0104】
最後に、一連の処理動作の終了を判定するステップS20は分岐判断である。外部入力装置900を通じて本発明の制御装置200の動作を終了させる信号が入力された場合は処理を終了させるステップに進み、そうでない場合はステップS11に戻る。
【0105】
以上の動作によって、本発明の制御装置200の動作では、プラント100の運転員が設定した実行条件に基づき、運転データ取得、操作手順計算、補正信号演算、制御信号生成及び制御実施に至る一連の処理を自律的に獲得・実行できる。
【0106】
次に、前記制御装置200における操作手順演算部500の詳細な動作について、図6のフローチャート、及び図4、図7、図8の概念図を用いて説明する。
【0107】
図6は、操作手順演算部500の動作を表すフローチャートであり、図5に示した全体フローチャートのステップS12の動作を詳細に示したものである。図6のフローチャートは、ステップS121、S122、S123、S124及びS125を組み合わせて実行する。以下では、夫々のステップについて説明する。
【0108】
操作手順演算部500の動作開始後、初めにステップS121では、図5のステップS11にて設定した操作変数を考慮して、制御ロジックデータベースDB4に保存されている制御ロジック情報を抽出し読み込む。
【0109】
制御ロジック情報とは、プラントからの計測情報等を入力として、制御装置200がプラントを制御するために必要な制御信号13を生成するためのロジック回路及びその設定パラメータ情報で構成され、図4に示したように、複数の演算素子を有向枝で接続した態様を取る。
【0110】
ここで制御信号13を生成するためのロジック回路とは、例えば図4回路であり、その設定パラメータとはロジック回路を形成する演算素子やその各種定数などである。例えば操作変数や、計測信号、さらには演算素子が比例積分回路であれば比例定数、積分ゲイン、積分時定数といったもの、あるいは関数発生器の場合であればゲイン、あるいは入力(出力)信号の使用範囲などもこれに含まれる。
【0111】
図4については説明済みであるので詳細説明を行わないが、この事例に示したように、プラントの制御では、操作端の操作信号に相当する制御指令(a,b,c,d,e,f)の演算に、それらの目標信号である複数の操作変数(A,B,C,D,E)が関係する。かつ、その組合せは操作変数(A,B,C,D,E)の数が増えるに従って大きくなる。また、ロジック遷移の下流側に存在する操作変数ほど、上流側の他の操作変数の変更によって受ける影響が大きくなる。このため、全ての操作変数(A,B,C,D,E)を一度に変更する場合はこの相互作用によって所望の操作条件へ制御できない可能性がある。
【0112】
本発明では、操作変数に着目してこれらの関係を整理する。具体的には、次に、制御信号相関行列を抽出するステップS122において、読み込んだ図4の制御ロジックに対して、操作変数(A,B,C,D,E)間の相互関係を図7に示した行列の形で表現する。図7では、図4の例で示した操作変数A、B、C、D、Eがロジック回路L1、L2,L3,L4においてどのような相互関係にあるかを規定している。
【0113】
例えば、操作変数Bに着目してみる。操作変数Bは、ロジック回路L2内の乗算回路mの一方の入力であるが、乗算回路mの他方の入力である制御指令bは、ロジック回路L1において操作変数Aにより決定されるものである。
【0114】
このことから、乗算回路mの出力に着目すると、操作変数Bの操作は、操作変数Aの操作の結果から影響を受ける。また同様に、乗算回路mの出力に着目すると、操作変数Aの操作は、操作変数Bの操作の結果から影響を受ける。このことから、操作変数Bの操作と操作変数Aの操作は、互いに相互作用関係にあるということが言える。以下このことを下流側の操作変数に着目して、「操作変数Bの操作は、操作変数Aの操作の結果から影響を受ける相互作用関係にある」と言うことにする。
【0115】
このように、操作変数間の相互作用関係が存在するときに、次にこの相互作用関係を定量的に把握することを検討する。ここでは、操作変数間の時間遅れに着目した定量的把握を行う。具体的には、例えば操作変数Aの操作からロジック回路L1において制御指令bが導かれ、その後ロジック回路L2において制御指令bと操作変数Bとの乗算演算に至るまでには、それまでの処理で経過した遅れ時間が存在する。
【0116】
以上の処理は、制御ロジックデータベースに記憶された複数のロジック演算に使用する複数の操作変数のうち、互いに関連する操作変数について、第1の操作変数のロジック演算結果と第2の操作変数が加味されるまでの間のロジック演算における遅れ時間を操作変数毎に求めたものである。
【0117】
このときの遅れ時間は、ロジック回路L1の比例積分回路PIにより生じた遅れが支配的である。以上から、操作変数Bの操作変数Aに対する相互作用関係を遅れ時間を考慮して定量化し、行列に表記すると、図7に示すように、B行A列に600が記載される。ここで、記載数値は、ロジック回路L1の比例積分回路PIの遅れ時間(積分時定数)に該当する。
【0118】
同様の相互作用関係を下流の操作変数Cと、上流の操作変数Aに対して確認してみる。操作変数Cは、ロジック回路L4内の加算回路ad5に一方の入力として入力される。加算回路ad5の他方の入力の1つである制御指令aは、ロジック回路L1において操作変数Aにより決定される。このことから、加算回路ad5の出力に着目すると、操作変数Cの操作は、操作変数Aの操作の結果から影響を受ける相互作用関係にあると言える。
【0119】
また、操作変数Aの操作からロジック回路L1において制御指令aが導かれ、その後ロジック回路L4において制御指令aと操作変数Cとの加算演算に至るまでには、それまでの処理で経過した遅れ時間が存在する。このときの遅れ時間は、ロジック回路L1の比例積分回路PIにより生じた遅れが支配的である。以上から、操作変数Cの操作変数Aに対する相互作用関係を遅れ時間を考慮して定量化し、行列に表記すると、図7に示すように、C行A列に600が記載される。
【0120】
同様の相互作用関係を上流の操作変数Bと直近の下流の操作変数Eに対して確認してみる。操作変数Eはロジック回路L2において加算回路ad2に一方の入力として入力されるが、加算回路ad2の他方の入力は、ロジック回路L2において操作変数Bにより決定されるものである。このことから、操作変数Eの操作は、操作変数Bの操作の結果から影響を受ける相互作用関係にある。この場合に、操作変数Bの操作からロジック回路L2において操作変数Eとの加算演算に至るまでには、関数発生器FGが存在するのみで、殆ど遅れ時間が存在しない。以上から、操作変数Eの操作変数Bに対する相互作用関係を遅れ時間を考慮して行列に表記すると、図7に示すように、E行B列に0が記載される。
【0121】
同様の相互作用関係を下流の操作変数Cと直近の上流の操作変数Dに対して確認してみる。操作変数Cはロジック回路L4において加算回路ad5に一方の入力として入力されるが、加算回路ad5の他方の入力の1つは、ロジック回路L3において操作変数Dにより決定されるものである。このことから、操作変数Cの操作は、操作変数Dの操作の結果から影響を受ける相互作用関係にある。この場合に、ロジック回路L3での操作変数Dの操作からロジック回路L4において操作変数Cとの加算演算に至るまでには、関数発生器FGと積分回路Iが存在し、積分回路Iによる遅れ時間300が存在する。以上から、操作変数Cの操作変数Dに対する相互作用関係を遅れ時間を考慮して行列に表記すると、図7に示すように、C行D列に300が記載される。
【0122】
以上と同様の手続きに従い、上流の操作変数と下流の操作変数について確認すると、残された組み合わせは、操作変数Dと操作変数Eの関係のみである。かつ操作変数Eはロジック回路L2と、ロジック回路L3において使用されているので操作変数Dと操作変数Eの関係では相互に上流下流の関係となる。操作変数Eが下流に位置するロジック回路L3の関係では遅れ時間は殆どなく、逆に操作変数Eが上流に位置するロジック回路L2からロジック回路L3に至る関係では多少の遅れ時間10が生じる。
【0123】
直近の上流下流の関係にある操作変数の全てに対して、ロジック回路L1、L2,L3,L4から操作変数間の相互関係を抽出した結果、最終的に図7に示した相関行列が抽出される。なお、図7のマトリクスは、直近の上流下流の関係にある操作変数の間を表記しているので、それ以外の部分には該当する情報が存在しない。
【0124】
次に、グラフ演算による評価を実行するステップS123では、ステップS122で作成した図7の制御信号相関行列を基に、操作変数間の相互関係を示す有向グラフを生成し、その演算評価を実行する。
【0125】
図8は、図7の相関行列を基に生成した有向グラフを図示しており、各操作変数を表すノードN間を有向枝30で接続した構造を取る。有向枝30の接続は相関行列において相関が規定されている操作変数間に存在する。
【0126】
例えば図7の例で操作変数Aと操作変数B間において、下流の操作変数Bは上流の操作変数Aに対して遅れ時間600とする相関がある。このことを図8で表現すると、操作変数Aを意味するノードNAから、操作変数Bを示すノードNBに対して有向枝30ABが接続される。また、有向枝30AB上には遅れ時間情報として600が記載される。
【0127】
また図7の例で操作変数Bと操作変数E間において、下流の操作変数Eは上流の操作変数Bに対して遅れ時間0とする相関がある。このことを図8で表現すると、操作変数Bを意味するノードNBから、操作変数Eを示すノードNEに対して有向枝30BEが接続される。また、有向枝30BE上には遅れ時間情報として0が記載される。
【0128】
また図7の例で操作変数Aと操作変数C間において、下流の操作変数Cは上流の操作変数Aに対して遅れ時間600とする相関がある。このことを図8で表現すると、操作変数Aを意味するノードNAから、操作変数Cを示すノードNCに対して有向枝30ACが接続される。また、有向枝30AC上には遅れ時間情報として600が記載される。
【0129】
さらに図7の例で操作変数Cと操作変数D間において、下流の操作変数Cは上流の操作変数Dに対して遅れ時間300とする相関がある。このことを図8で表現すると、操作変数Dを意味するノードNDから、操作変数Cを示すノードNCに対して有向枝30DCが接続される。また、有向枝30DC上には遅れ時間情報として300が記載される。
【0130】
なお、図7の例で操作変数Eと操作変数D間には、相互に上流、下流となる相関があった。このことを図8で表現すると、操作変数Dを意味するノードNDから、操作変数Eを示すノードNEに対して有向枝30DEが接続され、有向枝30DE上には遅れ時間情報として0が記載される。さらにこの場合には、ノードNEから、ノードNDに対して有向枝30EDが接続され、有向枝30ED上には遅れ時間情報として10が記載される。
【0131】
以上の手続きにより生成された図8の有向グラフに対して、各操作変数(A,B,C,D,E)の評価値を計算するが、この詳細な手順は図9のフローチャートを用いて後述する。
【0132】
次に、操作手順を決定するステップS124では、ステップS123にて計算した各操作変数の評価値を基に、各評価値が小さいものから順番に操作手順を決定する。
【0133】
最後に、ステップS125では、決定した操作手順情報を操作手順情報データベースDB3へ保存し、操作手順演算部500の動作を終了するステップへ進む。
【0134】
次に、操作手順演算部500の動作における、図8の有向グラフを評価することについての詳細な動作について、図9のフローチャートを用いて説明する。図9は、図6のフローチャートにおける有向グラフ演算による評価を実行するステップS123に相当する。
【0135】
図9に示したフローチャートは、ステップS1231、S1232、S1233、S1234、S1235、S1236及びS1237を組み合わせて実行する。
【0136】
有向グラフ演算のアルゴリズム開始後、実行開始ノード(図8のノードNA,NB,NC,ND,NR)を指定するステップS1231では、グラフ演算を開始する起点となるノードを任意に指定する。ここでは最初にノードNAを選択したものとする。
【0137】
次に、ノード遷移変数を初期化するステップS1232では、現在の演算処理対象にあるノード番号を表すノード遷移変数を、開始ノードNAに初期化する。また、各操作変数(A,B,C,D,E)の評価値を0に初期化する。
【0138】
次の、遷移先ノードの有無を判定するステップS1233は分岐である。現在の処理対象となるノードから、遷移したことがないノードへの接続が存在しない場合はステップS1234に進み、そうでない場合はステップS1236へ進む。
【0139】
次の、接続元ノードの有無を判定するステップS1234は分岐である。現在の処理対象ノードに対して、接続元となるノードが存在する場合はステップS1235へ進み、そうでない場合は、有向グラフ演算のアルゴリズムを終了させるステップへ進む。
【0140】
次の、ステップS1235では、現在のノードに接続しているノードのうち、任意のノードに遷移を戻し、前記ステップS1233へ処理を戻す。
【0141】
一方、ノード遷移を実行するステップS1236では、現在の処理対象ノードから接続しており、かつ過去に遷移していないノードのうち、任意のノードへ遷移する。
【0142】
次の、各操作変数の評価値を計算するステップS1237では、遷移した有向枝に記載されている遅れ時間情報を読み取り、遷移元のノードにおける評価値の暫定値に可算したものを遷移先のノードにおける評価値の暫定値として求める。
【0143】
図8の例を図9の処理フローに適用して評価したときの、図9各部の処理の流れとこのときに生成される情報について図10に示す。図10は、処理巡の回数を示す番号、そのときの処理ステップの判断ルート、処理ステップS1236で判断された遷移先ノード、処理ステップS1237で判断されたノードとこれに付与された評価値、この巡での基準のノードを記載している。なお、処理ステップの判断ルートには記載の都合上ステップの末尾数字のみ記載している。従って、「3」とあるのはステップS1233を意味している。また、処理ステップS1236で判断された遷移先ノードは別の意味では、次巡に判断すべき新ノードを意味している。
【0144】
最初の1巡目は、現在のノードがNAであるとする。この場合、ステップS1233では、現在の処理対象となるノードから、遷移したことがないノードへの接続が存在するか否かを判断するが、この場合には有る(存在する)ので、処理ステップS1236に移る。ここでは、ノードNBとNCが対象となるが、まずノードNBを選択し、ステップS1236に接続先ノードとしてNBを記憶する。次に処理ステップS1237に移り、このときの評価値としてNB=600を記憶する。このNB=600は、基準ノードをNAとするときの、ノードNBまでの評価値であることを意味している。
【0145】
2巡目では、現在のノードは、接続先のNBとされ、基準ノードはNAとされる。この場合、ステップS1233では、現在の処理対象ノードから、遷移したことがないノードへの接続が存在するので、処理ステップS1236に移る。ここでは、ノードNEを選択し、ステップS1236に接続先ノードとしてNEを記憶する。次に処理ステップS1237に移り、このときの評価値としてNE=600を記憶する。この場合に、ノードNEの評価値としては、ノードNAからの合計の評価値として1巡目の600に2巡目の0が加算されて600が記憶される。
【0146】
3巡目では、現在のノードは、接続先のNEとされる。この場合、ステップS1233では、現在の処理対象ノードから、遷移したことがないノードへの接続が存在するので、処理ステップS1236に移る。ここでは、ノードNDを選択し、ステップS1236に接続先ノードとしてNDを記憶する。次に処理ステップS1237に移り、このときの評価値としてND=610を記憶する。この場合に、ノードNDの評価値としては、ノードNAからの合計の評価値として2巡目の600に3巡目の10が加算されて610が記憶される。
【0147】
5巡目では、現在のノードは、接続先のNCとされる。この場合、ステップS1233では、現在の処理対象ノードNCから、遷移したことがないノードへの接続が存在しないので、処理ステップS1234に移る。ここでは、現在の処理対象ノードNCに対して、接続元となるノードが存在する場合はステップS1235へ進む。この場合、接続元ノードはNAなのでステップS1235へ進む。ここでは、現在のノードNCに接続しているノードのうち、任意のノードに遷移を戻し、前記ステップS1233へ処理を戻すので、現在のノードNCに対して接続元ノードNAに遷移を戻す。なお、図10において、5巡目のステップS1236に欄には、次巡に判断すべき新ノードの意味で接続元ノードNAを記述している(ステップS1236の判断でNAが決定された訳ではない)。なお、ステップS1237は通過しないので、評価値はカウントされない。
【0148】
6巡目では、現在のノードは、再度NAとされる。この場合、ステップS1233では、現在の処理対象ノードから、遷移したことがないノードとしてNCが存在するので、処理ステップS1236に移り、接続先ノードとしてNCを記憶する。次に処理ステップS1237に移り、このときの評価値としてNC=600を記憶する。
【0149】
7巡目では、現在のノードは、再度NCとされる。この場合、ステップS1233では、現在の処理対象ノードから、遷移したことがないノードへの接続が存在しないので、処理ステップS1234に移る。S1234では、NCに対して接続元も含めて未接続のノードが存在しないので、処理を終了する。
【0150】
なお、図9のフローではNAを基準ノードとして、これに関連する他の接続ノードを接続先と接続元の双方から追跡した結果として評価値を求めた。この判断ではノードND,NE間の関係を追跡できないが、例えば他のノードとしてNDを基準ノードにして再度探索を実行することで、同様に全ての選択肢での評価値を求めすることが可能である。
【0151】
以上のアルゴリズムを実行することにより、最終的に各ノードにおいて操作変数の評価値が計算される。図10の例を見ると各操作変数の評価値は最終的に、NA:0、NB:600、NC:910、ND:610、E:600となり、これを昇順に並び換えたA、B、E,D,Cが、操作変数間の相互作用の影響を最小限に抑制した操作手順となる。
【0152】
以上の一連の説明から明らかなように、制御装置200の操作手順演算部500では、操作変数の操作手順を、制御ロジックから抽出した時間的相互作用関係を基に自動的に計算する。その結果、多変量制御において問題となる操作変数間の相互干渉の影響を最小限に抑えた制御が実行され、より望ましい制御効果を得ることが可能となる。
【0153】
このようにして操作手順演算部500で求めた操作変数の操作手順を、制御信号生成部400に適用した場合の動作について簡単に説明する。例えば、図4のロジック回路において、最上流の操作変数Aの値を変更した場合には、評価値600で定まる時間遅れ後に操作変数Bと操作変数Eの変更を実行する。さらに、評価値610で定まる時間遅れ後に操作変数Dの変更を実行する。操作変数Cは、評価値600と、910で定まる時間遅れ後に変更を実行する。操作手順演算部500では、この順番とタイミングのみを決定している。補正値を具体的に如何なる大きさのものにするのかは、補正信号演算部300が決定する。
【0154】
次に、プラントの制御装置において、制御装置200とデータを送受信する保守ツール910について説明する。特に、外部出力インターフェイス913から送信された保守ツール出力信号94を表示する画像表示装置920にて表示される画面について、図11、図12、図13及び図14を用いて説明する。これらの図は、画像表示装置920に表示される画面の一具体例である。運転員は、これらの表示画面を用いて各種の設定と作業を実行する。
【0155】
図11は、操作変数設定画面である。これは、プラントの制御装置の動作手順を示す図5のフローチャートにおける、操作変数を設定するステップS11で使用する画面80の仕様の一例である。
【0156】
この操作変数設定画面80には大きく2つの表示がされる。その1つはプラントの制御装置において、操作手順演算部500で使用する制御ロジックの選択画面である。制御ロジック選択画面は、図4のロジック回路の形式で表示したロジック図表示画面600と、このロジック回路をロジック番号で指定して選択するリスト表示画面601で構成される。ここでは、ロジック番号を指定することでロジック回路を表示し、変更を希望する操作変数が含まれるロジック回路であることを確認する。
【0157】
操作変数設定画面の2つ目は、当該ロジック回路に含まれる操作変数の中から、変更を希望する操作変数を抽出する操作変数設定、抽出用画面である。操作変数リスト602には、当該ロジック回路に含まれる全ての操作変数が表示され、選択操作変数リスト603には、選択した一部の操作変数を表示している。ボタン604,605はこれら画面からの操作変数選択に使用する。選択結果は終了ボタン606で決定される。
【0158】
この図11に示した設定画面80により、操作手順演算部500で使用する制御ロジック図面、補正信号演算部300及び操作手順演算部500で使用する操作変数を設定することができる。
【0159】
画面を利用した具体的な処理について説明する。運転員は、図11に示す画面が画像表示装置920に表示された状態で、外部入力装置900のマウス902を操作して画面上の数値ボックスにフォーカスを移し、キーボード901を用いることで数値を入力できる。また、マウス902を操作して画面上のボタンをクリックすることで、ボタンを選択する(押す)ことができる。
【0160】
図11の画面では、まず、制御ロジックデータベースDB4に保存されている制御ロジックデータを、ロジック図表示画面600に表示させる。制御ロジックデータベースDB4に保存されるロジックデータ一覧は、リスト表示画面601に表示され、任意のロジック番号がマウス902を操作して選択されることで、ロジック図表示画面600の表示を切り替えることができる。また、選択した制御ロジック番号に該当する制御ロジックデータにおいて、プラントの操作変数の対象となる操作変数が操作変数リスト602に表示される。
【0161】
次に、操作変数リスト602に表示された操作変数の中から、補正信号生成に使用する操作変数をマウス902の操作により選択し、ボタン604を選択することで選択操作変数リスト603に追加することができる。また、選択された操作変数を、同様にマウス902を操作して任意に選択し、ボタン605を選択することで選択操作変数リスト603より削除することもできる。
【0162】
この画面により、複数の制御ロジック回路の中の複数の操作変数のうち、相互に関連する操作変数のみを抽出することができる。ここで、相互に関連する操作変数とは、火力発電プラントの例で言えば負荷要求信号に対する燃料、給水、空気の目標信号のように、バランスして制御することが要求されるような関係にあるものをいう。
【0163】
以上の実行条件選定の修了後、ボタン606を選択すると、操作変数設定画面を終了し、図5におけるステップS12の実行へ進む。
【0164】
図12は、図11の操作変数設定画面において選択した操作変数に対して、操作手順演算部500においてその操作手順を決定した結果、ならびにその操作手順に基づきプラントの操作を実行している途中経過の表示の際に画像表示装置920に表示される演算結果表示画面である。
【0165】
運転員は、図12の画面が画像表示装置920に表示された状態で、外部入力装置900のマウス902を操作して画面上のボタンをクリックすることで、ボタンを選択する(押す)ことができる。
【0166】
図12の画面では、操作手順演算部500において計算した操作変数の操作手順が操作手順リスト610に表示される。また、各操作変数値の単位611ならびに現在の操作進捗ステータスのリスト612も並べてリスト610中に夫々表示される。尚、操作進捗ステータスリスト612において、シンボル「▼」は操作完了を、シンボル「▽」は未操作を夫々意味する。
【0167】
また、現在操作中の操作変数については、その操作内容を表示ダイアログ613に表示する。例えば、「ただ今の操作は、(操作変数xx)を、(値yy)から(値zz)へ変更中です」といった形での表示を行う。また、図12の画面において、ボタン614、及び615を夫々選択することで、図13の操作手順演算結果表示画面、ならびに図14の操作特性表示画面を夫々起動、表示させることができる。
【0168】
図12の画面表示により、本発明の操作手順演算部500において計算した操作手順を確認可能になると共に、現在のプラント100に対する操作の進捗状況を確認することができる。
【0169】
図13は、操作手順演算部500の操作手順計算において、アルゴリズムの演算結果を表示する手順演算結果表示画面であり、図2のボタン614を選択した際に画像表示装置920に表示される画面80の一例である。
【0170】
図13の手順演算結果表示画面では、操作手順演算部500において計算した結果として、各操作変数621を評価値622の昇順に演算結果リスト620に表示する。また、操作手順演算時に使用した有向グラフが、グラフ表示画面623に表示される。ここで、マウス902を用いてカーソル622を、リスト620中に表示された任意の操作変数625に一致させることにより、選択した操作変数の評価値演算時に実行されたノード及び有向枝が太線で強調表示される。図の場合には、「3 D***** 610」の表示が強調表示されている。これにより、プラントの操作員は操作手順演算部500による操作手順の導出根拠を確認することができる。また、ボタン624を選択することにより、図13の手順演算結果表示画面を終了させることができる。
【0171】
図14は、計算した操作手順に従って補正信号演算部300が補正信号を生成し制御する際の、プラント100に対する制御特性を確認する際に、画像表示装置920に表示される制御特性表示画面である。
【0172】
図14に示す制御特性表示画面が画像表示装置920に表示された状態で、外部入力装置900のマウス902を操作して画面上の操作変数リスト630に表示された任意の操作変数を選択することで、カーソル636を移すことができる。尚、本リストには各操作変数631の他に、夫々に対する操作前後の操作条件値632及び633、ならびに本発明の制御装置100によるプラント200の被制御量の操作前後の値634及び635が表示される。
【0173】
図示の制御特性の例では、操作変数A*****を操作前に100であったものを90にした場合、被制御量aは1000から1200に変化する(変化した)こと、操作変数B*****を操作前に100であったものを85にした場合、被制御量aは60から35に変化する(変化した)こと、また現在選択操作中の操作変数D*****について、これを操作前に100であったものを70にした場合、被制御量aは360から500に変化する(変化した)ことを表示している。
【0174】
また、カーソルが任意の操作変数(図示の例ではD*****)に選択された状態で、それに対応する操作特性グラフがグラフ表示部637に表示される。グラフ表示部637には、被制御量a(縦軸)に対する選択した操作変数D*****(横軸)の操作特性が1次元のグラフで表示され、同じグラフ上に操作前の操作変数値(グラフ中に■で表記)、操作後の実績値(同○表記)、一斉操作時の操作予測値(同●表記)がプロットされる。
【0175】
ここで、一斉操作時の操作予測値とは、本発明の操作手順演算部500にて計算した操作手順を用いず、全ての操作変数を同時に操作した場合の、選択した操作変数の条件値とその時の被制御量の組を意味しており、これは補正信号演算部300において計算される。
【0176】
以上のグラフからは、本発明の操作手順演算結果に従ってプラント100を操作した場合の制御効果を確認できると共に、本発明の操作手順演算結果を用いない場合の制御効果との比較も可能であり、本発明の制御装置によるプラント100に対する制御効果を画面上で確認することができる。
【0177】
なお、ボタン638を選択することにより、図14に表示される画面を終了させることができる。
【0178】
以上で、プラントの制御装置における画像表示装置920に表示される画面についての説明を終了する。
【0179】
以上、本発明のプラントの制御装置200を火力発電プラントに適用した場合を例にとり説明したが、このように本発明によれば、操作変数間の相互干渉が非常に強い場合においても、その相互作用の影響を最小にする操作手順を自動的に算出しそれに従って制御するため、より望ましい制御効果を得ることができる。また、操作手順決定作業の各段階において運転員が介入し、経過並びに結果を確認することができるので、信頼性の高いものとすることができる。
【0180】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0181】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【0182】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル、測定情報、算出情報等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。よって、各処理、各構成は、処理部、処理ユニット、プログラムモジュールなどとして各機能を実現可能である。
【0183】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明は、各種プラントの制御装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0185】
1、2:計測信号 3:計測データ 13:制御信号 14:操作信号 100:制御対象プラント 101:ボイラ 102:バーナ 103:アフタエアポート 104:エアーヒーター 105:給水ポンプ 106:熱交換器 108:タービン 109:発電機 110:ミル 120,121:ファン 130〜134:配管 140〜142:配管 150:給水計測器 151:温度計測器 152:圧力計測器 153:発電出力計測器 154:濃度計測器 161〜163:エアダンパ 200:制御装置 300:補正信号演算部 400:制御信号生成部 500:操作手順演算部 900:外部入力装置 910:保守ツール 920:画像表示装置 M:演算装置M DB:データベース IF:インターフェイス部 DB1:計測信号データベース DB2:演算情報データベース DB3:操作手順情報データベース DB4:制御ロジックデータベース DB5:制御信号データベース IF/I:外部入力インターフェイス IF/O:外部出力インターフェイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントから複数の計測信号を取り込み、計測信号をその操作変数に合致すべく複数のロジック演算を実行し、前記プラントに複数の制御信号を与えるプラントの制御装置において、
該制御装置は、前記複数のロジック演算に使用する操作変数を含む制御ロジックデータを保存する制御ロジックデータベースと、前記ロジック演算を実行しプラントに与える複数の制御信号を生成する制御信号生成部と、操作変数の操作手順を演算する操作手順演算部を備え、
前記操作手順演算部は、前記制御ロジックデータベースに記憶された複数のロジック演算に使用する複数の操作変数のうち、互いに関連する操作変数について、第1の操作変数のロジック演算結果と第2の操作変数が加味されるまでの間の前記ロジック演算における遅れ時間を操作変数毎に求めて、複数の操作変数の操作手順を決定し、
前記制御信号生成部は、前記複数の計測信号をその操作変数に合致すべく複数のロジック演算を実行して複数の制御信号を前記プラントに与えるとともに、複数のロジック演算で使用する操作変数の大きさを変更するとき、この操作変数に関連する他の操作変数の変更順序を前記操作手順演算部で求めた複数の操作変数の操作手順に従って実行する
ことを特徴するプラントの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記制御ロジックデータベースに記憶された複数のロジック演算にはPI制御を含み、パラメータとしてPI制御の積分時定数を備えており、前記操作手順演算部はロジック演算における遅れ時間として、前記積分時定数を使用する
ことを特徴するプラントの制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記操作手順演算部では、操作変数に関連する制御ロジックを抽出し、該制御ロジックに対する操作変数間の遅れ時間・むだ時間といった時間因子から前記遅れ時間を決定する機能を備える
ことを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項4】
プラントから複数の計測信号を取り込み、計測信号をその操作変数に合致すべく複数のロジック演算を実行し、前記プラントに複数の制御信号を与えるプラントの制御装置において、
該制御装置は、前記複数のロジック演算に使用する操作変数を含む制御ロジックデータを保存する制御ロジックデータベースと、前記ロジック演算を実行しプラントに与える複数の制御信号を生成する制御信号生成部と、操作変数の操作手順を演算する操作手順演算部を備え、
前記操作手順演算部は、互いに関連する操作変数について、第1の操作変数のロジック演算結果と第2の操作変数が加味されるまでの間の前記ロジック演算における遅れ時間を、操作変数間の相互関係を表す行列の形で把握し、操作変数間の相互関係を有向グラフに変換し、有向グラフから各操作変数の評価値を求め、評価値の大きさにしたがって複数の操作変数の操作手順を決定し、
前記制御信号生成部は、前記複数の計測信号をその操作変数に合致すべく複数のロジック演算を実行して複数の制御信号を前記プラントに与えるとともに、複数のロジック演算で使用する操作変数の大きさを変更するとき、この操作変数に関連する他の操作変数の変更順序を前記操作手順演算部で求めた複数の操作変数の操作手順に従って実行する
ことを特徴するプラントの制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のプラントの制御装置において、
前記有向グラフから各操作変数の評価値を求めるために、操作変数毎に設けたノード間の有向枝の接続に従ってノード間の遷移処理を実行し、該有向枝に記載された遅れ時間情報をノード遷移に従って加算していくことで、各操作変数の評価値を計算する
ことを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のプラントの制御装置において、
前記操作手順演算部では、前記手続きにより求めた各操作変数の評価値の小さいものから順番に操作手順を割り当てる
ことを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のプラントの制御装置において、
前記制御装置は画像表示装置を含み、
画像表示装置には、前記制御ロジックデータベースに記憶された複数のロジック演算に使用する複数の操作変数のうち、互いに関連する操作変数を選択するための操作変数設定画面として、
複数のロジック演算回路とこの回路に含まれる操作変数とが表示され、かつ表示された操作変数から抽出された操作変数がリスト表示される
ことを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のプラントの制御装置において、
前記制御装置は画像表示装置を含み、
画像表示装置には、選択した操作変数に対して、操作手順演算部においてその操作手順を決定した結果、ならびにその操作手順に基づきプラントの操作を実行している途中経過が演算結果表示画面として表示される
ことを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項9】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のプラントの制御装置において、
前記制御装置は画像表示装置を含み、
画像表示装置には、操作手順演算部において計算した結果として、各操作変数を評価値の昇順に演算結果リストに表示する手順演算結果表示画面が表示される
ことを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項10】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のプラントの制御装置において、
前記制御装置は画像表示装置を含み、
画像表示装置には、前記制御信号生成部によるプラント制御が実行されたときの、各操作変数の変更前後の値並びに非制御量の変更前後の値が制御特性表示画面として表示される
ことを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載のプラントの制御装置において、
プラントは火力発電プラントであり、
計測信号として、火力発電プラントから排出されるガスに含まれる窒素酸化物、一酸化炭素、及び硫化水素の夫々の濃度、並びにプラントの蒸気流量、蒸気温度、蒸気圧力のうち少なくとも1つを表す信号を含み、
制御信号として、空気ダンパの開度、空気流量、燃料流量、給水流量、タービンガバナ開度、排ガス再循環流量のうち少なくとも1つを決定する信号を含む
ことを特徴とするプラントの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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