説明

プラント制御装置

【課題】多重系プラントコントローラ構成で、制御ソフトを一括コピーして、他のプラントコントローラが用いる制御ソフトを生成しても、温度センサの検出温度の精度が高いプラント制御装置を提供する。
【解決手段】温度センサ12a、12bと、各温度センサの検出温度の誤差を補正する補正データ22a、22bを格納する補正データ格納部15a、15bと、各温度センサの検出温度を取り込んで各補正データで補正して制御を行う制御ソフト25a、25bとを備えてなる多重化したプラントコントローラであって、プラントコントローラ11aが用いる制御ソフト25aをプラントコントローラ11bにコピーして用いるプラント制御装置において、プラントコントローラ11aに対応させて設けられた温度センサ12aの補正データ22aは、プラントコントローラ11bに対応させて設けられた温度センサ12bの補正データ22bに置き換えて用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント制御装置に関し、特に、プラント制御装置が備えるプラントコントローラの温度センサの誤差の補正に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントの制御対象として、例えば、ボイラがあるが、プラント制御装置は、コントローラ(プラントコントローラ)に対応して設けられた温度センサによって温度を検出し、検出温度に基づいてコントローラに備えられた制御ソフトにより制御を行っている。
【0003】
温度センサは、被測定対象物の温度を測定する測温抵抗体が抵抗ブリッジ回路に接続されてなり、抵抗ブリッジ回路の電圧測定結果から測温抵抗体の抵抗値を算出し、算出した抵抗値により被測定対象物の温度値を求めるように構成されている。
【0004】
上記温度センサの抵抗ブリッジ回路には、それぞれの抵抗の抵抗値の僅かな差により同一構成であっても誤差が生じるため、基準抵抗を接続した場合の入力データが0になるように補正を行っており、その補正データをコントローラに保存している。
【0005】
ところで、プラント制御装置が多重系コントローラ構成の場合、制御ソフトは一つのコントローラが用いる制御ソフトを、一括コピーしてその他のコントローラが用いる制御ソフトを生成している。制御ソフトは、温度センサの検出温度を補正するためにコントローラから補正データを取り込んだ後にコンパイル等により生成されるが、この補正データは、一括コピーの際に、そのまま制御ソフトごとその他のコントローラにコピーされることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多重系コントローラと多重系温度センサの構成、すなわち、各コントローラが1つの温度センサを備えている場合、コピーした制御ソフトの補正データは、コピー元のコントローラに対応して設けられた温度センサの補正データであるため、コピー先のコントローラに対応して設けられた温度センサに適する補正データではない。このため、場合によっては誤差が大きくなり、検出温度の精度が悪くなることもある。
【0007】
従来は、検出温度の精度が悪くなることよりも、一括コピーの利便性を優先していたが、検出温度の精度を高くできれば望ましいことは言うまでもない。また、温度センサごとに補正回路を設ける方法は有効な解決方法であるが、ソフトで補正を行うことに比べて高価となるため、ソフトで補正を行うようにするのが望ましい。
【0008】
本発明の目的は、多重系プラントコントローラ構成で、ある一つのプラントコントローラの制御ソフトを一括コピーして、その他のプラントコントローラが用いる制御ソフトを生成しても、温度センサの検出温度の精度が高いプラント制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のプラント制御装置は、プラントの制御対象の温度を検出する温度センサと、その温度センサに対応させて設けられ、温度センサの検出温度の誤差を補正する補正データを格納する格納部と、温度センサの検出温度を取り込んで補正データで補正して制御対象の制御を行う制御ソフトとを備えてなるプラントコントローラが多重化されて設けられ、一つのプラントコントローラが用いる制御ソフトをその他のプラントコントローラにコピーして用いるように構成されたプラント制御装置において、一つのプラントコントローラに対応させて設けられた温度センサの補正データは、その他のプラントコントローラに対応させて設けられた温度センサの補正データに置き換えて用いられることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、一つのコントローラに対応した温度センサの補正データを含んで生成された制御ソフトを、その他のコントローラにコピーして用いても、その他のコントローラに対応した温度センサの補正データに置き換えられるので、一括コピーの利便性を失うことなく、温度センサの検出温度の精度を高くすることができる。また、ハードウェアによる補正ではなく、ソフトウェアによる補正なので、補正にかかるコストを低く抑えることができる。
【0011】
この場合において、補正データを、前記温度センサに設けられた基準抵抗に基づいて生成するようにし、また、プラントコントローラを、補正データの取得指示を受けて当該補正データを当該プラントコントローラの格納部に格納するように構成することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多重系プラントコントローラ構成で、ある一つのプラントコントローラの制御ソフトを一括コピーして、その他のプラントコントローラが用いる制御ソフトを生成しても、温度センサの検出温度の精度が高いプラント制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】2重系コントローラと2重系温度センサの構成であるプラント制御装置を説明する図である。
【図2】温度センサの補正データについて説明する図である。
【図3】補正データの構造を説明する図である。
【図4】コピーの際の補正データ参照処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のプラント制御装置について、図面を参照して説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、2重系コントローラと2重系温度センサの構成であるプラント制御装置を説明する図である。2つのコントローラの構成と、2つの温度センサの構成はそれぞれ同じである。図面の符号について、符号の最後尾にaを持つものは、主系のコントローラ及びそれに対応して設けられたものであることを示し、符号の最後尾にbを持つものは、従系のコントローラ及びそれに対応して設けられたものであることを示す。また、図1では、プラント制御装置のハードウェア10とソフトウェア20とを分けて図示している。
【0016】
図1に示すように、プラント制御装置は、図示しないプラントの制御対象13の温度を検出する主系温度センサ12a、従系温度センサ12bと、主系温度センサ12a、従系温度センサ12bにそれぞれ対応させて設けられ、主系温度センサ12a、従系温度センサ12bの検出温度の誤差を補正する主系補正データ22a、従系補正データ22bを格納する補正データ格納部15a、15bと、主系温度センサ12a、従系温度センサ12bの検出温度を取り込んで主系補正データ22a、従系補正データ22bで補正して、制御対象13の制御を行う主系制御ソフト25a、従系制御ソフト25bとを備えてなる主系コントローラ11a、従系コントローラ11bが2重化されて構成されている。
【0017】
また、主系コントローラ11aと従系コントローラ11bとは、伝送路14で接続され、主系コントローラ11aと主系温度センサ12aとは、伝送路16aで接続され、従系コントローラ11bと従系温度センサ12bとは、伝送路16bで接続されている。制御対象13と各温度センサとは、導線17で接続されている。
【0018】
主系制御ソフト25aは、装置構成情報21と主系補正データ22aとをまとめたデータ23をコンパイル24して生成される。従系制御ソフト25bは、主系制御ソフト25aをコピー26にてコピーして生成され、各制御ソフトは、主系コントローラ11a、従系コントローラ11bにそれぞれダウンロード28される。なお、プラント制御装置は、各制御ソフトをコピー、ダウンロードするための図示していないソフトを備えている。
【0019】
ここで、装置構成情報21とは、プラント制御装置の装置構成、例えば、コントローラの数などの情報や、温度センサが複数のコントローラで共有されているか又は独立であるかの情報である。温度センサが独立、とは、温度センサとコントローラが1対1であることを意味する。装置構成情報21は、プラント制御装置を構成した際に登録される。
【0020】
図2は、温度センサの補正データについて説明する図である。温度センサの変換基準として、基準抵抗R0[Ω]を温度センサに接続すると、温度センサ出力D0[digit]が得られ、コントローラでは温度T0[℃]に変換されることとする。ここで、基準抵抗R0[Ω]を温度センサに接続した場合、抵抗ブリッジ回路の抵抗誤差により、出力がDx[digit]になるとすると、DxとD0の誤差をコントローラで補正する必要がある。
【0021】
基準抵抗R0を主系温度センサ12a、従系温度センサ12bに接続し、主系コントローラ11a、従系コントローラ11bに監視員等のユーザが前述したプラント制御装置のソフトを用いて補正データの取得指示を出すことで、自動的に主系補正データ22a、従系補正データ22bが補正データ格納部15a、15bに保存される。図3は、補正データの構造を説明する図である。補正データは、温度センサの実装位置31、装置構成32、補正値33で構成されており、実装位置31には温度センサのアドレスが入力され、装置構成32には温度センサが複数のコントローラで共有されているか独立かを入力し、補正値33としては図2で示される補正値Xを入力する。
【0022】
このように構成される本実施例のプラント制御装置の特徴となる動作について説明する。図4は、主系制御ソフト25aをコピーする時の補正データ参照処理を説明する図である。ステップ41において、プラント制御装置のソフトは、ユーザの入力指示により、主系コントローラ11aの補正データ格納部15aに格納されている主系補正データ22aを参照し、ステップ42において、実装位置31に記載の主系温度センサ12aのアドレスをキーとして、装置構成32より主系温度センサ12aが共有であるか独立であるかを確認する。
【0023】
独立でない場合、すなわち、本実施例の構成で説明すると、主系温度センサ12aが従系コントローラ11bにも共有されている場合はステップ43に進み、主系制御ソフト25aをコピーして従系制御ソフト25bを生成する。独立である場合はステップ44に進み、ステップ44において従系コントローラ11bの補正データ格納部15bに格納されている従系補正データ22bを参照し、ステップ45において主系制御ソフト25aをコピーした後、主系補正データ22aの補正値を従系補正データ22bの補正値に置き換えて、従系制御ソフト25bを生成する。
【0024】
以上説明したように、本実施例によれば、主系コントローラ11aに対応した主系温度センサ12aの主系補正データ22aを含んで生成された主系制御ソフト25aを、従系コントローラ11bにコピーして用いても、従系コントローラ11bに対応した従系温度センサ12bの従系補正データ22bに置き換えられるので、一括コピーの利便性を失うことなく、従系温度センサ12bの検出温度の精度を高くすることができる。また、ハードウェアによる補正ではなく、ソフトウェアによる補正なので、補正にかかるコストを低く抑えることができる。
【0025】
以上、実施例について説明したが、本発明は、これらに限らず適宜構成を変更して適用することができる。例えば、コントローラが3つ以上ある場合でも、本実施例と同様に一つのコントローラが用いる制御ソフトをコピーして、その他のコントローラが用いる制御ソフトを生成し、一つのコントローラに対応して設けられた温度センサの補正データを、それぞれのコントローラに対応して設けられた温度センサに適する補正データに置き換えることができる。
【0026】
また、コントローラを3つ、温度センサを2つ持つプラント制御装置で、2つのコントローラで1つの温度センサを共有し、残りのコントローラは1つの温度センサを有している場合であっても、適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
11a 主系コントローラ
11b 従系コントローラ
12a 主系温度センサ
12b 従系温度センサ
13 制御対象
15a、15b 補正データ格納部
22a 主系補正データ
22b 従系補正データ
25a 主系制御ソフト
25b 従系制御ソフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの制御対象の温度を検出する温度センサと、該温度センサに対応させて設けられ、前記温度センサの検出温度の誤差を補正する補正データを格納する格納部と、前記温度センサの検出温度を取り込んで前記補正データで補正して前記制御対象の制御を行う制御ソフトとを備えてなるプラントコントローラが多重化されて設けられ、一つのプラントコントローラが用いる前記制御ソフトをその他のプラントコントローラにコピーして用いるように構成されたプラント制御装置において、
前記一つのプラントコントローラに対応させて設けられた温度センサの補正データは、前記その他のプラントコントローラに対応させて設けられた温度センサの補正データに置き換えて用いられることを特徴とするプラント制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラント制御装置において、
前記補正データは、前記温度センサに設けられた基準抵抗に基づいて生成され、前記プラントコントローラは、前記補正データの取得指示を受けて当該補正データを当該プラントコントローラの格納部に格納することを特徴とするプラント制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−257319(P2010−257319A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108061(P2009−108061)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】