説明

プリスパッタリング処理用のダミー基板

【課題】プリスパッタリング処理に適したダミー基板の提供
【解決手段】このプリスパッタリング処理用のダミー基板10は、金属製の基板で形成されている。そして、基板10の表面に凹部14又は凸部12が形成されている。かかるダミー基板10によれば、金属製の基板で形成されているので、プリスパッタリング処理で形成される薄膜80の膜応力が作用した場合でも、ガラス製の基板に比べて割れにくい。また、基板10の表面に凹部14又は凸部12が形成されているので、表面に堆積した薄膜80が剥がれにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置のスパッタ室内に配置され、プリスパッタリング処理によって表面に薄膜を堆積させるプリスパッタリング処理用のダミー基板に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に金属等の薄膜を形成する方法として、良質の薄膜を効率よく製造することができるスパッタリングによる方法が広く用いられている。スパッタリング装置では、スパッタ室中に、薄膜が堆積される基板が配置される。また、かかる基板に対向して薄膜材料のソースとなるターゲット板が配置される。ターゲット板の背面側には、上方からマグネットが近接して配置される。スパッタ室は、減圧されて、アルゴンガス等のスパッタリングガスが導入される。ターゲット板と基板との間に数百ボルトの負の電圧が印加されると、マグネトロン放電によるプラズマが発生してスパッタリングガスが正イオン化される。イオン化されたスパッタリングガスは加速されてターゲット板に衝突する。これにより、ターゲット板から原子がはじき出され、はじき出された原子を基板上に堆積させる。
【0003】
このようなスパッタリングは、例えば、平面表示装置のアレイ基板における金属薄膜の成膜に用いられている。特に、表示画素毎にスイッチ素子が配置されたアクティブマトリクス型の液晶表示装置のアレイ基板の製造に用いられている。
【0004】
アクティブマトリクス型液晶表示装置は、アレイ基板と対向基板との間に配向膜を介して液晶層が保持されて成っている。アレイ基板は、ガラスや石英等の透明絶縁基板上に複数本の信号線と走査線とが格子状に配置され、各交点部分には活性層にアモルファスシリコンやポリシリコン等の半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)が接続されている。そしてTFTのゲート電極は走査線に、ドレイン電極は信号線にそれぞれ電気的に接続され、さらにソース電極は画素電極を構成する透明導電材料、例えば、ITO(Indium-Tin-Oxide)の層に電気的に接続される。アクティブマトリクス型液晶表示装置のアレイ基板の製造においては、例えば、走査線及びTFTのゲート電極を含む第1導電層パターンと、信号線及びTFTのソース・ドレイン電極を含む第2導電層パターンとが、スパッタリングによる成膜とこれに続くパターニングにより形成される。
【0005】
かかるスパッタリング装置に関し、例えば、特開平11−200036号公報(特許文献1)には、スプラッシュの発生を抑えるためには、ターゲット板の表面に付着した汚染物質やゴミの粒子を除去するためのプリスパッタリング処理を充分に行うことなどが開示されている。プリスパッタリング処理では、例えば、ダミー基板をターゲット板に対向させて配置し、スパッタリングによってダミー基板の表面に薄膜を堆積させるとよい。かかるダミー基板としては、例えば、特許文献1では、ガラス基板が採用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−200036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、液晶表示装置のアレイ基板の製造工程では、生産性を上げるべく大面積のマザーガラス基板に複数のアレイ基板を形成し、その後、マザーガラス基板から複数のアレイ基板を切り出す。液晶表示装置の大画面化に伴い、マザーガラス基板の面積は大型化しつつある。例えば1990年代に用いられていた、いわゆる第3世代のマザーガラス基板は、550mm×650mmの矩形のガラス基板であった。これが、2008年では、いわゆる第8世代のマザーガラス基板が用いられている。かかる第8世代のマザーガラス基板は、2160mm×2400mm〜2300mm×2600mmの矩形のガラス基板であり、第3世代のマザーガラス基板に比べてかなり大型化している。また、将来、マザーガラス基板は、さらに大型化することが予想されている。
【0008】
また、上述したスパッタリング装置は、マザーガラス基板の大型化に伴って大型化している。このため、本発明者は、スパッタリング装置のスパッタ室内についても、ターゲット板とマザーガラス基板とをそれぞれ立てた状態で配置する装置の採用を検討している。このようにスパッタリング装置を構成することにより、マザーガラス基板の取り回しを容易にし、また装置の省スペース化を図ることができると考えられる。
【0009】
しかしながら、実際のスパッタリング処理には、例えば、ターゲット板の交換や、定期的なメンテナンス後に、ターゲット板の表面の酸化膜や吸着水などの影響を取り除くため、予備的にプリスパッタリング処理を行うことが必要である。プリスパッタリング処理では、例えば、マザーガラス基板と同じサイズのガラス基板からなるダミー基板を、ターゲット板に対向させて配置し、スパッタリングによってダミー基板の表面に薄膜を堆積させるとよい。また、実際のスパッタリング処理で不具合が生じるのを防止するため、プリスパッタリング処理を十分に行うことが望ましい。このため、プリスパッタリング処理では薄膜が厚く堆積する。
【0010】
プリスパッタリング処理では、薄膜が厚く堆積するので膜応力によって、ダミー基板に大きな力が作用していた。上述した第8世代のマザーガラス基板と同じサイズのガラス基板からなるダミー基板では、堆積する薄膜の量も大きくなる。また、上述したように、ダミー基板を立てて配置する場合、堆積した薄膜から、ダミー基板に作用する力も局所的に大きなものになることが懸念される。このため、ガラス基板で作成されたダミー基板では、割れが生じるなどの問題が生じうる。また、プリスパッタリング処理で形成される薄膜は、状態が不安定であり、部分的には剥がれ易い箇所が生じうる。
【0011】
そのようなプリスパッタリング処理において、ダミー基板を立てて配置する場合には、ダミー基板に堆積した薄膜が剥がれることも懸念される。ダミー基板に堆積した薄膜が剥がれると、スパッタ室内に塵などが発生し、プリスパッタリング処理が意味をなさない。ガラス基板からなるダミー基板では、ダミー基板に堆積させることができる薄膜の厚さに限界がある。すなわち、プリスパッタリング処理中でも、ガラス基板からなるダミー基板が割れたり、薄膜が剥がれたりすることがない程度に、薄膜が堆積したところでダミー基板を取り替える必要があった。このため1回のプリスパッタリング処理に、多くのダミー基板を取り替える必要が生じる場合もあった。このような場合、プリスパッタリング処理に必要なダミー基板の枚数も多く必要であるし、ダミー基板を取り替える回数が多くなると、プリスパッタリング処理にも所要の時間を要していた。
【0012】
そこで、上記のような事情を鑑みて、プリスパッタリング処理に適したダミー基板を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るプリスパッタリング処理用のダミー基板は、金属製の基板で形成され、基板の表面に凹部又は凸部が形成されている。かかるダミー基板によれば、金属製の基板で形成されているので、プリスパッタリング処理で形成される薄膜の膜応力が作用した場合でも、ガラス製の基板に比べて割れにくい。また、基板の表面に凹部又は凸部が形成されているので、表面に堆積した薄膜が剥がれにくい。
【0014】
かかる金属製の基板では、表面に形成された凹部又は凸部は、例えば、プレス加工によって形成することができる。また、金属製の基板の表面に形成された凹部又は凸部は、全ての表面が基板の基準面の法線方向から見えるように形成されていてもよい。また、金属製の基板の表面に形成された凹部又は凸部は曲面で形成されていてもよい。また、凹部又は凸部は、前記金属製の基板の表面全体にわたって分布していてもよい。また、ダミー基板は、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されていてもよい。アルミニウムは、軽く、また比較的入手が容易な材料であるから、ダミー基板を軽くでき、取り回しを良くできる。また、ダミー基板はチタン、鉄、銅、又はこれらの合金で形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】スパッタリング装置の概要を示す概略図。
【図2】本発明の一実施形態に係るプリスパッタリング処理用のダミー基板の部分拡大平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るプリスパッタリング処理用のダミー基板の部分拡大断面図。
【図4】本発明の一実施形態に係るプリスパッタリング処理用のダミー基板の凸部の拡大断面図。
【図5】本発明の他の実施形態に係るプリスパッタリング処理用のダミー基板の凹部の拡大断面図。
【図6】本発明の他の実施形態に係るプリスパッタリング処理用のダミー基板の凹部の拡大断面図。
【図7】本発明の他の実施形態に係るプリスパッタリング処理用のダミー基板の凸部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るプリスパッタリング処理用のダミー基板を図面に基づいて説明する。なお、同じ作用を奏する部材又は部位には、適宜に同じ符号を付している。
【0017】
図1は、スパッタリング装置の概略図である。図2はプリスパッタリング処理用のダミー基板を部分的に拡大した平面図であり、図3は、その断面図である。
【0018】
このプリスパッタリング処理用のダミー基板10は、図1に示すように、金属製の基板で形成され、基板10の表面には凹部又は凸部(図2参照、図2に示す実施形態では、凸部12)が形成されている。このダミー基板10は、図1に示すように、スパッタリング装置40のスパッタ室42内に配置され、プリスパッタリング処理によって表面に薄膜を堆積させる基板である。
【0019】
この実施形態では、スパッタリング装置40は、マグネトロン・スパッタ法を具現化する装置である。このスパッタリング装置40は、図1に示すように、スパッタリングが行われるスパッタ室42と、プラズマ発生用電源44と、スパッタリングガス供給部46と、スパッタリングガス排気部48とを備えている。スパッタ室42には、ターゲット板62を配置するターゲット板配置部64と、基板を配置する基板配置部66と、マグネット68が配置されている。なお、図1は、図示の便宜上、スパッタ室42の各部材を支持する支持部材などを省略している。
【0020】
この実施形態では、スパッタ室42は、スパッタリング処理工程において減圧されるため、所要の耐圧性能を有する容器で構成されている。また、この実施形態では、上述した大型のマザーガラス基板のスパッタリング処理に対応するように、所要の大きさを備えている。ターゲット板62を配置するターゲット板配置部64は、スパッタ室42内で立てた状態で配設されている。基板配置部66は、ターゲット板配置部64に対向するように配置されている。マグネット68は、ターゲット板配置部64の裏側(基板配置部66とは反対側)に配置される。
【0021】
この実施形態では、ターゲット板62は、ターゲット板配置部64の、基板配置部66に対向する側面に取り付けられる。基板配置部66には、ターゲット板62に対向するように、スパッタリング処理が行われる基板が取り付けられる。また、プリスパッタリング処理では、ダミー基板10がかかる基板配置部66に取り付けられる。また、この実施形態では、ターゲット板配置部64はプラズマ発生装置の陰極として機能する。また、基板配置部66はプラズマ発生装置の陽極として機能する。
【0022】
プラズマ発生用電源44は、プラズマ発生装置の陰極として機能するターゲット板配置部64に電気的に接続されている。また、プラズマ発生装置の陽極をなす極部として機能する基板配置部66は、アース(接地)されている。スパッタリングガス供給部46は、スパッタ室42内、特に、プラズマが発生する部位に、スパッタリングガス(この実施形態では、アルゴンガス:Ar)を供給する。また、スパッタリングガス排気部48は、真空ポンプ等によってスパッタ室42から排気する装置である。
【0023】
このスパッタリング装置40は、スパッタリングガス排気部48によって、スパッタ室42内を減圧し、実質的に真空の状態にする。次に、スパッタ室42が真空状態になった後で、スパッタリングガス供給部46からスパッタリングガス72を供給し、スパッタ室42内の圧力を調整する。その後、プラズマ発生用電源44によって、プラズマ発生装置の陰極として機能するターゲット板配置部64と、プラズマ発生装置の陽極として機能する基板配置部66との間に所要の電圧(スパッタ用ターゲット電圧)を印加する。かかる電圧の印加により、スパッタ室42内に放電が起こる。かかるマグネトロン放電によりプラズマ82が発生してスパッタリングガス72が正イオン化される。イオン化されたスパッタリングガス72は加速されてターゲット板に衝突する。これにより、ターゲット板62から原子62aがはじき出され、はじき出された原子62aが基板上に堆積し、基板上に薄膜80(図3参照)を形成する。
【0024】
かかるスパッタリング装置40は、実際のスパッタリング処理では、例えば、ターゲット板の交換や、定期的なメンテナンス後に、ターゲット板の表面の酸化膜や吸着水などの影響を取り除くため、予備的にプリスパッタリング処理を行う。プリスパッタリング処理では、図1に示すように、例えば、マザーガラス基板と同じサイズのダミー基板10を、ターゲット板62に対向させて配置し、スパッタリングによってダミー基板10の表面に薄膜を堆積させる。
【0025】
この実施形態では、プリスパッタリング処理用のダミー基板10は金属製の基板である。詳しくは、この実施形態では、ダミー基板10は、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されている。アルミニウム又はアルミニウム合金は軽量であり、取り回しが容易である。また、比較的軟らかい金属であるから、加工も容易である。このダミー基板10の表面には、図2及び図3に示すように、凹部又は凸部(この実施形態では、凸部12)が形成されている。なお、この実施形態では、凸部12の大きさは、2mm〜3mm程度の四方の矩形で、高さが1mm〜1.5mm程度である。また、この実施形態では、凸部12は、プレス加工によって形成されている。例えば、ローラプレス機などで、金属製の基板に凸部12を形成するとよい。このダミー基板10は、金属製の基板であり、このようなプレス加工により、凸部12を比較的簡単に形成することができる。
【0026】
また、この実施形態では、凸部12は、凸部12を形成する全ての表面(この実施形態では、凸部12の上面12a、凸部12の側面12b)が、ダミー基板10の基準面10aの法線方向Nから見える。すなわち、この実施形態では、凸部12は矩形の突起であり、上面12a及び側面12bが表面に露出している。これら凸部12の上面12a及び側面12bがダミー基板10の基準面10aの法線方向Nから見える。ここで、ダミー基板10の基準面10aの法線方向Nは、ダミー基板10の凸部12の基準となる面10a(ダミー基板10の基準面10a)に直交する方向で規定される。また、この実施形態では、ダミー基板10は、基板配置部66に接地されて、ターゲット板62に対向する。凸部12を形成する全ての表面12a、12bは、スパッタリング装置40の基板配置部66に配置されたときに、ターゲット板62が配置された方向から見える。
【0027】
また、図4は、このダミー基板10の凸部12を拡大した図である。この実施形態では、より詳しくは、凸部12は、平面を組み合わせて形成しており、ダミー基板10の基準面10aと凸部12の側面12bとのなす角a、上面12aと側面12bとのなす角bは、それぞれ鈍角で形成されている。ここでは、角a、角bは、それぞれ110度以上160度以下の角度で形成するとよい。
【0028】
また、この実施形態では、凸部12は、ダミー基板10の表面全体にわたって概ね均一に分布している。
【0029】
このダミー基板10は、図2及び図3に示すように、金属製の基板で形成され、基板の表面に凸部12が形成されている。かかるダミー基板10によれば、金属製の基板で形成されているので、プリスパッタリング処理で形成される薄膜80の膜応力が作用した場合でも、ガラス製の基板に比べて割れにくい。また、基板10の表面に凸部12が形成されているので、表面に堆積した薄膜80が剥がれにくい。すなわち、このダミー基板10は、図1に示すように、スパッタ室42内で立てて配置された場合でも、表面に凸部12が形成されている。このため、表面に堆積した薄膜80が密着する面積が大きく、また、薄膜80の一部が凸部12に引っかかるので、薄膜80が剥がれにくい。この場合、1回のプリスパッタリング処理に、必要なダミー基板の数を少なくすることができる。また、プリスパッタリング処理でダミー基板を取り替える回数も少なくてすみ、プリスパッタリング処理に要していた時間を低減できる。これにより、スパッタリング装置40の稼働率を上げることができ、生産性を向上させることができる。
【0030】
また、この実施形態では、ダミー基板10の表面に形成された凸部12は、全ての表面12a、12bがダミー基板10の基準面10aの法線方向Nから見えるように形成されている。すなわち、ダミー基板10の表面に形成された凸部12は、全ての表面12a、12bが、スパッタリング処理において、ターゲット板62が配置された方向から見える。このため、凸部12の全ての表面12a、12bに薄膜80が連続して形成される。このように、凸部12は、薄膜80がダミー基板10の表面に連続して形成されるのを阻害しない。このため、このダミー基板10は、かかる凸部12があっても表面に連続した薄膜80が形成される。このように、ダミー基板10の表面に剥がれ難い薄膜80を形成することができる。
【0031】
また、この実施形態では、凸部12は、ダミー基板10の表面全体にわたって分布している。このため、ダミー基板10の表面全体にわたって、剥がれ難い薄膜80を形成することができる。また、凸部12は、ダミー基板10の表面全体にわたって概ね均一に分布している。このため、ダミー基板10の表面全体にわたって、概ね均一に剥がれ難い薄膜80を形成することができる。
【0032】
上述した実施形態では、図4に示すように、ダミー基板10の表面に凸部12が形成されている。ダミー基板10の表面に凸部12に代えて凹部を形成してもよい。図5は、表面に凹部14が形成されたダミー基板10の断面図である。
【0033】
すなわち、図5に示すように、ダミー基板10の表面に凹部14が形成されている場合でも、ダミー基板10の表面に堆積した薄膜80が密着する面積が大きくなる。また、薄膜80の一部が凹部14に引っかかるので、薄膜80が剥がれにくい。この場合、凹部14の全て面14a(底面)、14b(側面)が、全てダミー基板10の基準面10aの法線方向Nから見えるように形成されているとよい。これによって、スパッタリング処理において薄膜80の形成が阻害されず、凹部14の全ての表面14a、14bに薄膜80が連続して形成される。このように、ダミー基板10の表面に剥がれ難い薄膜80が形成される。
【0034】
なお、このように、ダミー基板10は、凸部12に代えて凹部14が表面に形成されていてもよい。また、図示は省略するが、ダミー基板10は、凸部12と凹部14の両方が表面に形成されていてもよい。
【0035】
また、図6は、表面に曲面からなる凹部141が形成されたダミー基板10の断面図である。また、図7は、表面に曲面からなる凸部121が形成されたダミー基板10の断面図である。図6又は図7に示すように、ダミー基板10の表面に形成された凹部141又は凸部121は曲面で形成されていてもよい。この場合も、凹部141の曲面141a、凸部121の曲面121aは、それぞれ全てダミー基板10の基準面10aの法線方向Nから見えるように形成されているとよい。これによって、スパッタリング処理において薄膜80の形成が阻害されず、凹部141又は凸部121の表面141a、121aに薄膜80が連続して形成される。このように、ダミー基板10の表面に剥がれ難い薄膜80が形成される。
【0036】
また、この実施形態では、ダミー基板10は、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されている。アルミニウムは、軽く、また比較的入手が容易な材料であり、また、加工も容易であるから、上記のダミー基板10の材料として、好適な材料の1つである。
また、ダミー基板10の材料としては、アルミニウムの他、チタン、鉄、銅、又はこれらの合金で形成されていてもよい。チタン、鉄、銅、又はこれらの合金なども、比較的入手が容易な材料であり、また、加工も容易であるから、上記のダミー基板10の材料として、好適である。
【0037】
なお、図1に示す例では、ターゲット板62がアルミニウムで構成されており、スパッタリングにおいて、アルミニウム薄膜を形成する。この場合、ダミー基板10をアルミニウム又はアルミニウム合金で形成することにより、薄膜の密着性がよい。このように、プリスパッタリング処理用のダミー基板の材料は、ターゲット板62と同じ金属材料又はその合金としてもよい。
【0038】
以上、本発明の一実施形態に係るプリスパッタリング処理用のダミー基板を説明したが、本発明の一実施形態に係るプリスパッタリング処理用のダミー基板は、上述した実施形態に限定されない。
【0039】
例えば、上記において、凹部又は凸部の形状、具体的な大きさは一例を示すのみであり、凹部又は凸部はかかる形態に限定されない。また、上述した実施形態では、凹部又は凸部の表面が、それぞれダミー基板の基準面の法線方向Nから見えるように形成されている。かかる形態は、好適な形態を例示したものである。したがって、凹部又は凸部の表面の一部が、それぞれダミー基板の基準面の法線方向Nから見えるように形成されていなくてもよい。また、一部の凹部又は凸部において、表面の一部が、それぞれダミー基板の基準面の法線方向Nから見えるように形成されていない凹部又は凸部を含んでいてもよい。また、金属製の基板の表面に形成された凹部又は凸部は、プレス加工によって形成されている形態を例示したが、凹部又は凸部の形成方法は、プレス加工に限定されない。例えば、金属製の基板の表面に形成された凹部を打刻して形成してもよい。
【0040】
また、プリスパッタリング処理用のダミー基板は、所要の剛性を持たせるべく、裏面(ターゲット板に対向しない側の面)にリブを形成してもよい。これにより、比較的薄いダミー基板でも所要の剛性を持たせることができ、また、全体として軽量化を図ることができる。また、ダミー基板を立てて配置する場合で、かつ、マザーガラス基板のように大型のダミー基板を用いる場合がある。かかるダミー基板は、立てて配置するのに適するように、上部を薄くし、下部を厚く形成してもよい。これにより、立てて配置させた場合でもダミー基板の下部が自重を受けることができる。
【0041】
また、本発明は、プリスパッタリング処理用のダミー基板に関するものである。スパッタリング装置の具体的構成については、上記に例示する構造に限定されない。また、スパッタリング装置が用いられる用途として、平面表示装置のアレイ基板における金属薄膜の成膜を例示した。スパッタリング装置の用途は、かかる用途に限定されない。かかるプリスパッタリング処理用のダミー基板が適用されるスパッタリング装置は、種々の薄膜の成膜工程に適用できる。
【符号の説明】
【0042】
10 ダミー基板
10a ダミー基板の基準面
12 凸部
12a 凸部の上面
12b 凸部の側面
14 凹部
14a 凹部の底面
14b 凹部の側面
40 スパッタリング装置
42 スパッタ室
44 プラズマ発生用電源
46 スパッタリングガス供給部
48 スパッタリングガス排気部
62 ターゲット板
62a 原子
64 ターゲット板配置部
66 基板配置部
68 マグネット
72 スパッタリングガス
80 薄膜
82 プラズマ
121 凸部
121a 凸部の曲面
141 凹部
141a 凹部の曲面
N 法線方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリング装置のスパッタ室内に配置され、プリスパッタリング処理によって表面に薄膜を堆積させるプリスパッタリング処理用のダミー基板であって、
金属製の基板で形成され、前記基板の表面に凹部又は凸部が複数形成されたプリスパッタリング処理用のダミー基板。
【請求項2】
前記金属製の基板の表面に形成された凹部又は凸部は、プレス加工によって形成されている、請求項1に記載のプリスパッタリング処理用のダミー基板。
【請求項3】
前記金属製の基板の表面に形成された凹部又は凸部を形成する全ての表面が、前記基板の基準面の法線方向から見える、請求項1又は2に記載のプリスパッタリング処理用のダミー基板。
【請求項4】
前記金属製の基板の表面に形成された凹部又は凸部は曲面で形成されている、請求項1から3までの何れか一項に記載されたプリスパッタリング処理用のダミー基板。
【請求項5】
前記凹部又は凸部は、前記金属製の基板の表面全体にわたって分布している、請求項1から4までの何れか一項に記載されたプリスパッタリング処理用のダミー基板。
【請求項6】
前記ダミー基板は、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されている、請求項1から5までの何れか一項に記載されたプリスパッタリング処理用のダミー基板。
【請求項7】
前記ダミー基板は、チタン、鉄、銅、又はこれらの合金のうち何れかで形成されている、請求項1から5までの何れか一項に記載されたプリスパッタリング処理用のダミー基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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