説明

プリプレグ、このプリプレグを用いた積層体

【課題】積層性に優れ且つ高周波領域での誘電ロスの小さい積層体を与えるプリプレグ、及びこのプリプレグを用いてなる積層体を提供する。
【解決手段】共役ジエンポリマー(好ましくは、ビニル結合量が40モル%以上である)と、環構造を有し該環構造内にパーオキシ構造を有する環状過酸化物と、を含む硬化性組成物を強化繊維に含浸してなるプリプレグを用いる。該プリプレグを、該プリプレグ同士で、または他材料と積層した後に硬化して積層体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路配線基板を含む多層配線基板等に好適なプリプレグおよびそのプリプレグを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化時代を迎え、情報伝送は高速化・高周波に動き出し、マイクロ波通信やミリ波通信が現実になってきている。これらの高周波化時代の回路基板は、高周波における伝送ロスを極限まで軽減するために、誘電正接の小さい材料が求められており、ポリブタジエンやポリイソプレン等の共役ジエンポリマーが注目されている。
【0003】
たとえば、特許文献1及び特許文献2には、室温で液状の分子量5,000未満である1,2−ポリブタジエン、固体ポリマーであるスチレン−ブタジエン−スチレントリブロックポリマー等の熱可塑性ブロックコポリマー、ジクミルペルオキシドやt−ブチルペルオキシヘキシン−3などの有機過酸化物(硬化剤)などを混合してスラリーとして繊維強化材に含浸させた後に溶媒除去してプリプレグを作製し、次いで2枚の銅箔間に複数枚のプリプレグを積層し、硬化してなる積層体が開示されている。しかしながら、ここで開示される積層体は誘電正接が大きく、高周波における伝送ロスが生じるという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平8−208856号公報
【特許文献2】特表2003−528450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、積層性に優れ且つ高周波領域での誘電ロスの小さい積層体を与えるプリプレグ、及びこのプリプレグを用いてなる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討の結果、1,2−ポリブタジエンなどの共役ジエンポリマーと、環構造を有し該環構造内にパーオキシ構造を有する環状過酸化物と、を含む硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸してプリプレグを製造すると、該プリプレグを同じプリプレグ同士で、または金属箔等の他材料と積層して熱プレスで硬化させたときの積層性に優れ且つ誘電正接の非常に小さい積層体が得られることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
かくして本発明によれば、共役ジエンポリマーと、環構造を有し該環構造内にパーオキシ構造を有する環状過酸化物と、を含む硬化性組成物を強化繊維に含浸してなるプリプレグが提供される。
【0008】
本発明によれば、また、上記プリプレグを、該プリプレグ同士で、または他材料と積層した後に硬化してなる積層体が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、積層性に優れ且つ高周波領域での誘電正接の小さい積層体を与えるプリプレグが提供できる。また、本発明の積層体は、高周波領域での誘電ロスが小さいため、通信機器用途等のマイクロ波またはミリ波等の高周波回路基板に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(共役ジエンポリマー)
本発明に使用される共役ジエンポリマーは、少なくとも共役ジエン単位を含むポリマーであれば格別に限定はされないが、共役ジエンホモポリマーと共役ジエン共重合ポリマーとからなる群から選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。
【0011】
共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ペンタジエンなどが挙げられ、好ましくはブタジエンやイソプレンで、より好ましくはブタジエンである。
【0012】
共役ジエンホモポリマーとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリシアノブタジエン、ポリペンタジエンなどが挙げられ、好ましくはポリブタジエン、ポリイソプレン、より好ましくはポリブタジエンである。
【0013】
共役ジエン共重合ポリマーとしては、少なくとも共役ジエン単位を含む共重合ポリマーであれば格別な限定はなく、例えば、ランダム共重合ポリマーやブロック共重合ポリマーを用いることができる。
【0014】
共役ジエン共重合ポリマーにおいて、共役ジエンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、シアノ基含有ビニル、アミノ基含有ビニル、ピリジル基含有ビニル、アルコキシル基含有ビニル、芳香族ビニルなどが挙げられ、これらの中でもシアノ基含有ビニルや芳香族ビニルが好ましく、特に芳香族ビニルが好ましい。
【0015】
芳香族ビニルとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、N,N−ジエチルアミノエチルスチレンなどを挙げることができ、これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレンが特に好ましい。
【0016】
共役ジエン共重合ポリマーの共役ジエン単位と共重合可能なモノマー単位との割合は、使用目的に応じて適宜選択され、共役ジエン単位/共重合可能なモノマー単位の重量比で、通常95/5〜5/95、好ましくは90/10〜10/90、より好ましくは80/20〜20/80の範囲であり、この範囲の時に、積層体の機械的強度と靭性の特性が高度にバランスされ好適である。
【0017】
共役ジエンブロック共重合ポリマーの結合様式は、2ブロック共重合体、3ブロック共重合体、4ブロック共重合体、5ブロック共重合体等、使用目的に応じて適宜選択されるが、3ブロック共重合体が積層性と機械的強度の関係が高度にバランスされ好適である。具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー、α−メチルスチレン−ブタジエン−α−メチルスチレンブロックポリマーなどが挙げられ、好ましくはスチレン−ブタジン−スチレンブロックポリマーである
【0018】
本発明に使用される共役ジエンポリマーの共役ジエン部のビニル結合量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、赤外分光光度計を用いてハンプトン法(R.Hampton,Anal.Chem.,21,923(1949))により測定される値で、通常5モル%、好ましくは40モル%以上、より好ましくは60モル%以上、最も好ましくは80モル%以上である。ビニル結合量がこの範囲である時に、積層体の機械強度を高度に向上させることができ好適である。
【0019】
本発明に使用される共役ジエン系ポリマーの分子量は、使用目的に応じて適宜選択できるが、トルエンを展開溶媒としてゲルパーミエーションクロモトグラフィーで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常500〜5,000,000、好ましくは1,000〜1,000,000の範囲である。
【0020】
本発明においては、上記共役ジエンポリマーは、それぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができるが、共役ジエンホモポリマーと共役ジエン共重合ポリマーを組み合わせることで積層体の機械的特性、強靭性の特性が高度にバランスされ好適である。
【0021】
共役ジエンホモポリマーと共役ジエン共重合ポリマーを組み合わせる場合の、共役ジエンホモポリマーの分子量は、トルエンを展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常500〜500,000、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは1,000〜5,000の範囲である。組み合わせる場合の、共役ジエン共重合ポリマーの分子量は、トルエンを展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜300,000の範囲である。共役ジエンホモポリマーと共役ジエン共重合ポリマーの分子量がこの範囲である時に、積層体の機械強度が高度に改善でき好適である。
【0022】
共役ジエンホモポリマーと共役ジエン共重合ポリマーを組み合わせる場合の割合は、使用目的に応じて適宜選択されるが、共役ジエンホモポリマー/共役ジエン共重合ポリマーの重量比で、通常90/10〜5/95、好ましくは50/50〜10/90、より好ましくは30/70〜15/85の範囲である。両者の割合がこの範囲にあるときに、積層体の機械的特性と強靭性の特性が高度にバランスされ好適である。
【0023】
(硬化剤)
本発明においては、硬化剤として環構造を有し該環構造内にパーオキシ構造を有する環状過酸化物を用いることにより、プリプレグの積層性に優れ、且つ積層体の高周波領域で誘電ロスを小さくすることができる。
【0024】
かかる環状過酸化物としては、例えば、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン(1分間半減期温度175℃)、3,6−ジエチル−3,6−ジメチル−1,2,4,5−テトロキサン(1分間半減期温度167℃)などが好適な例として挙げられる。
【0025】
本発明に使用される環状過酸化物の1分半減期温度は、ラジカル発生剤の種類及び使用条件により適宜選択されるが、通常、50〜350℃、好ましくは100〜300℃、より好ましくは150〜250℃の範囲である。ここで1分間半減期温度は、環状過酸化物の半量が1分間で分解する温度である。
【0026】
これらの環状過酸化物は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、共役ジエンポリマー100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
【0027】
(硬化性樹脂組成物)
本発明に使用される硬化性樹脂組成物は、上記共役ジエンポリマーと環状過酸化物とを必須成分として、必要に応じて、充填材、老化防止剤、硬化助剤及びその他の配合剤などを添加することができる。
【0028】
本発明においては、硬化性樹脂組成物に充填材を配合することで、得られる積層体の耐熱性がより高度化され好適である。充填材としては、工業的に一般に使用されるものであれば格別な限定はなく、無機充填材や有機充填材のいずれも用いることができが、好適には無機充填材である。
【0029】
無機充填材としては、例えば、鉄、銅、ニッケル、金、銀、アルミニウム、鉛、タングステン等の金属粒子;カーボンブラック、グラファイト、活性炭、炭素バルーン等の炭素粒子;シリカ、シリカバルーン、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化すず、酸化ベリリウム、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の無機酸化物粒子;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム等の無機炭酸塩粒子;硫酸カルシウム等の無機硫酸塩粒子;タルク、クレー、マイカ、カオリン、フライアッシュ、モンモリロナイト、ケイ酸カルシウム、ガラス、ガラスバルーン等の無機ケイ酸塩粒子;チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛等のチタン酸塩粒子、窒化アルミニウム、炭化ケイ素粒子やウィスカー等が挙げられる。
【0030】
有機充填剤としては、例えば、木粉、デンプン、有機顔料、ポリスチレン、ナイロン、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、塩化ビニル、各種エラストマー、廃プラスチック等の粒子化合物が挙げられる。
【0031】
これらの充填材は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、共役ジエンポリマー100重量部に対して、通常1〜1,000重量部、好ましくは10〜500重量部、より好ましくは50〜350重量部の範囲である。
【0032】
本発明においては、硬化性樹脂組成物に老化防止剤として、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、リン系老化防止剤及びイオウ系老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の老化防止剤を加えることにより、硬化反応を阻害しないで、得られる積層体の耐熱性を高度に向上させることができ好適である。これらの中でも、フェノール系老化防止剤とアミン系老化防止剤が好ましく、フェノール系老化防止剤が特に好ましい。これらの老化防止剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。老化防止剤の使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、共役ジエンポリマー100重量部に対して、通常0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0033】
本発明においては、硬化性樹脂組成物に硬化助剤を加えることで、得られる積層体の機械強度を高度に改善でき好適である。硬化助剤としては、一般的に用いられるものを格別な限定なく使用でき、例えば、炭素−炭素不飽和結合を2つ有する2官能性硬化助剤、炭素−炭素不飽和結合を3つ以上有する多官能硬化助剤などを挙げることができる。
【0034】
硬化助剤の具体例としては、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、o−ジイソプロペニルベンゼンなどの2官能硬化助剤、トリイソプロペニルベンゼン、トリメタアリルイソシアネートなどの3官能架硬化剤等が挙げられる。中でも、トリイソプロペニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、o−ジイソプロペニルベンゼンが好ましく、m−ジイソプロペニルベンゼンがより好ましい。
【0035】
これらの硬化助剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。硬化助剤の使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、共役ジエン系ポリマー100重量部に対し、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部、最も好ましくは5〜15重量部である。
【0036】
その他の配合剤としては、難燃剤、着色剤、光安定剤、顔料、発泡剤などを挙げることができる。難燃剤としては、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物系難燃剤、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物などが挙げられる。着色剤としては、染料、顔料などが用いられる。染料の種類は多様であり、公知のものを適宜選択して使用すればよい。これらのその他の添加剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
【0037】
(強化繊維)
本発明に使用される強化繊維としては、格別な制限はないが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、液晶ポリエステル繊維などの有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、ブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、シリカ繊維などの無機繊維;などを挙げることができる。これらの中でも、有機繊維やガラス繊維が好ましく、特にアラミド繊維、液晶ポリエステル繊維、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、Eガラス、NEガラス、Sガラス、Dガラス、Hガラス等の繊維が好適に用いることができる。
【0038】
ガラス繊維としては、ガラスクロスを用いることが好ましい。好ましいガラスクロスは、直径が1〜10μmのガラス製フィラメントを集束してストランドとしたものに撚りをかけたガラスの糸(ガラス製ヤーンという。)を織り上げたものである。またガラスクロスの厚みは通常5〜200μm、好ましくは10〜150μm、より好ましくは10〜100μm、特に好ましくは20〜80μmである。この範囲より小さいと得られる積層体の強度が弱くなり、またこの範囲より大きいと積層時の厚みの制御が困難になるという問題が生じるおそれがある。
【0039】
これらの強化繊維は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、プリプレグ中に含まれる量で、通常10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の範囲であり、この範囲にあるときに得られる積層体の誘電正接と機械的強度が高度にバランスされ好適である。
【0040】
(プリプレグ)
本発明のプリプレグは、前記硬化性組成物を上記強化繊維に含浸してなるものである。含浸方法としては、常法に従えばよく、例えば、共役ジエンポリマー、前記環状過酸化物及び必要に応じて用いられる充填材、老化防止剤、硬化助剤、その他の配合剤を溶媒に溶解して強化繊維に含浸させた後に脱溶媒させるウェット法、リリースペーパー上に硬化性組成物をコーティングし、その上に炭素繊維を引き揃え、加熱溶解した樹脂をロールあるいはドクターブレード等で加圧含浸させ、その後、放冷するホットメルト法(ドライ法)などが挙げられるが、通常はウェット法で行なわれる。
【0041】
ウェット法で含浸した後の乾燥温度は、通常50〜250℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜170℃の範囲である。また、環状過酸化物の1分半減期温度以下、好ましくは1分半減期温度の10℃以下の温度、より好ましくは1分半減期温度以下の20℃以下の温度である。
【0042】
本発明のプリプレグの厚さは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常0.001〜10mm、好ましくは0.01〜1mm、より好ましくは0.05〜0.5mmの範囲である。この範囲であるときに、積層時の賦形性、また硬化して得られる積層体の機械強度や靭性の特性が充分に発揮され好適である。
【0043】
本発明のプリプレグの揮発成分量は、200℃で1時間加熱したときに揮発する量で、通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、もっとも好ましくは1重量%以下である。プリプレグの揮発成分量が過度に多いと、プリプレグのベタ付きが発生し操作性及び保存安定性が悪くなり好ましくない。
【0044】
(積層体)
本発明の積層体は、上記プリプレグを、同じプリプレグ同士で、または他材料と積層して、必要に応じて賦形した後に、硬化することで製造することができる。
【0045】
積層してもよい他材料としては、使用目的に応じて適宜選択されるが、例えば、熱可塑性樹脂材料、金属材料などが挙げられ、特に金属材料が好適に用いられる。金属材料としては、回路基板で一般に用いられるものを格別な制限なく用いることができ、通常金属箔、好ましくは銅箔が用いられる。金属材料の厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常1〜50μm、好ましくは3〜30μm、より好ましくは5〜20μm、最も好ましくは5〜15μmの範囲である。
【0046】
積層及び硬化させる方法は、常法に従えはよく、例えば、平板成形用のプレス枠型を有する公知のプレス機、シートモールドコンパウンド(SMC)やバルクモールドコンパウンド(BMC)などのプレス成形機を用いて熱プレスを行なうことができる。加熱温度は、環状過酸化物の架橋の起こる温度であり、通常1分半減期温度以上、好ましくは1分半減期温度より5℃以上高い温度、より好ましくは1分半減期温度より10℃以上高い温度である。通常は、100〜300℃、好ましくは150〜250℃の範囲である。加熱時間は、0.1〜180分、好ましくは1〜120分、より好ましくは2〜20分の範囲である。プレス圧力としては、通常0.1〜20MPa、好ましくは0.1〜10MPa、より好ましくは1〜5MPaである。また、熱プレスは、真空または減圧雰囲気下で行ってもよい。
【0047】
かくして得られる本発明の積層体は、高周波領域での伝送ロスが少ないため、高周波基板材料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0049】
実施例および比較例における各特性は、下記の方法に従い測定、評価した。
(1)積層性:得られた積層体の外観を観察し下記基準で評価した。
A:積層間の剥離、形状崩れが認められない
B:一部分のみ積層間の剥離、形状崩れが認められる
C:積層間の剥離、形状崩れが認められる
【0050】
(2)誘電正接:インピダンスアナライザーを用いて1GHzにおける誘電損失(tanδ)を容量法で測定し、比較例1の誘電損失を100として、下記基準で判断した。
A:80未満
B:80以上、90未満
C:90以上、110未満
D:110以上
【0051】
実施例1
ポリブタジエン樹脂B3000(日本曹達社製;分子量3000、1,2−ビニル結合量95モル%)100部、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー(旭化成社製タフプレン)20部、シリカ(アドマファイン製 0.5μm)35部、臭素系難燃剤Saytex BT−93WFG(ALBEMARLE社製)31部、及び硬化剤として3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン1.66部をキシレン中で混合し、硬化性樹脂組成物を得た。ついで、得られた硬化性組成物をガラスクロス(Eガラス)に含浸させ、加熱により溶媒を除去してプリプレグを作製した。プリプレグのガラスクロス含有量は40%であった。
【0052】
次に、作製したプリプレグシート6枚を重ね、200℃で10分間、3MPaにて加熱プレスを行い積層体を得た。得られた積層体の積層性、誘電正接を評価し、その結果を表1に示した。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例2
硬化剤を3,6−ジエチル−3,6−ジメチル−1,2,4,5−テトラキサン2.0部に変える以外は実施例1と同様に行いプリプレグ及び積層体を得、各特性を評価して表1に示した。
【0055】
実施例3
硬化剤を3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン2.0部に変える以外は実施例1と同様に行いプリプレグ及び積層体を得、各特性を評価して表1に示した。
【0056】
比較例1
硬化剤をジ−t−ブチルペルオキシド1.2部に変える以外は実施例1と同様に行いプリプレグ及び積層体を得、各特性を評価しその結果を表1に示した。
【0057】
以上の実施例および比較例より、本発明のプリプレグは積層性に優れ、得られる積層体は誘電損失が小さく電気特性に優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエンポリマーと、環構造を有し該環構造内にパーオキシ構造を有する環状過酸化物と、を含む硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸してなるプリプレグ。
【請求項2】
共役ジエンポリマーのビニル結合量が40モル%以上である請求項1記載のプリプレグ。
【請求項3】
請求項1または2記載のプリプレグを、該プリプレグ同士で、または他材料と積層した後に硬化してなる積層体。

【公開番号】特開2009−209208(P2009−209208A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51162(P2008−51162)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】