説明

プリプレグ

【課題】予備含浸及び化粧含浸、又はそれらから得ることのできる化粧コーティング材料を提供する。
【解決手段】化粧紙を形成するための更なる処理用のプリプレグは、スチレン−アルキルアクリレート−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(アルキルは、メチル、エチル、プロピル、又はブチルを表す)少なくとも1つと水溶性ポリマー少なくとも1つとを含む含浸樹脂溶液で化粧ベース紙を含浸によって得ることができ、前記プリプレグは、分裂に対する向上した抵抗性、並びに良好な接着性及び平滑性が顕著である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備含浸及び化粧含浸、又はそれらから得ることのできる化粧コーティング材料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧紙又は化粧箔(decorative foil)として呼ばれることもある化粧コーティング材料は、家具製造及び屋内備品(特に、積層床)における表面コーティングとして主に使用される。化粧紙/化粧箔は、合成樹脂で含浸されるか又は合成樹脂で含浸され表面処理される、印刷された紙又は印刷されていない紙であると理解されている。化粧紙/化粧箔は、バッキングパネルに、糊で付けられるか又は接着剤で付けられる。
【0003】
完全に含浸させた紙芯を有する化粧紙/化粧箔と、「プリプレグ(prepreg)」(プリプレグにおいて、紙は、抄紙機においてオンライン又はオフラインで部分的にだけ含浸される)とは、含浸作業のタイプに応じて区別される。以前から公知のプリプレグ(このプリプレグは、ホルムアルデヒド含有デューロプラスチック(duroplastic)樹脂、又は低ホルムアルデヒドであるアクリレート含有バインダーを含む)では、それに対する要求[例えば、それを木材ベースシート材料ボードに対して塗りかつ貼合した後における、良好な層間剥離強度(plybond strength)及び良好な接着力]のすべてを満足しない。
【0004】
化粧箔を木材(例えば、チップボード又はMDFボード)に結合(bond)するために通常使用される接着剤は、尿素ベースの糊であるか、又はポリビニルアセテート(PVAC)糊である。これらは、化粧箔が適切に結合されていることを必ずしも保証していないことがある。
【0005】
高圧ラミネートは、重ねられた多くの含浸した紙を互いに圧縮することによって製造されるラミネートである。これらのラミネートの構造は、一般に、一番上に透明なカバーシート(オーバレイ)を含み、このシートは、高い表面抵抗、樹脂を含浸させた化粧紙、及びフェノール樹脂で含浸される1以上のクラフト紙シートを備える。ベース[基層(substratum)]は、例えば、ハードボード及びチップボードパネル又は合板によって形成することができる。
【0006】
短サイクル法(short-cycle method)により製造されるラミネートでは、樹脂中に浸される化粧紙を、低圧で、ベース(例えば、チップボール)に対して直接に押し付ける。
【0007】
加工産業において、非常に高い要求が、糊付けされた化粧箔の接着力及び結合力(bondability)に向けられている。例えば、ラミネートしたばかりのパネルを更なる取扱いによる損傷から防止するために、接着力は、糊付け工程の直後に良好でなければならない。パネルは、化粧箔を糊付後ほんの数分間〜数時間、更に、切断工程、ミリング工程、及びドリル工程において、しばしば機械加工され、そして、付与された化粧箔は、機械加工された端で、分離又は引裂かれてはならない。完成した表面は、更なる輸送のためにしばしば同様にパッケージされ、そして、粘着テープが、このために使用され、化粧表面に直接貼り付けられる。こうした粘着テープは、十分な接着力を有しなければならないが、それらは、輸送作業が終了した後、粘着テープが貼合している化粧箔を損傷せず残分無しに、着脱可能にしなければならない。従って、化粧箔は、それを同様に糊付けした後に、化粧表面に対して垂直に高い層間剥離強度を有しなければならない。
【0008】
前記コーティング材料において使用される化粧紙は、白色状態又は着色した状態で、追加の印刷の有無にかかわらず使用される。
【0009】
応用工学性に関して、出発材料として使用される化粧ベース紙は、一定の要件を満たす必要がある。これらの要件としては、ベースの被覆性を良好にするための高い不透明性、均一な樹脂吸収のためのシートの均一な構成及び坪量、高い耐光度、印刷すべきパターンの良好な再現性のための高い純度及び色均一性、含浸工程を容易にするための湿潤強度、要求された樹脂飽和の程度を達成するための相当する吸収性、及び、抄紙機での巻き取り作業及び印刷機での印刷における重要な乾燥強度が挙げられる。
【0010】
化粧表面を達成するために、化粧ベース紙を印刷することができる。印刷は、輪転グラビア印刷方法によって大部分は行なわれ、輪転グラビア印刷方法において、印刷画像は、様々なグラビアローラの手段によって紙に転写される。個々の印刷された点(dot)は、完全に、紙の表面にできるだけ集中的に移動することになっている。しかし、時々、グラビアローラに存在するラスタポイント(raster point)の一部分だけしか紙の表面に移動しないことが、化粧グラビア印刷において、はっきりしている。「網点ぬけ(Missing dots)」(すなわち、空隙)が起こる。印刷色は、しばしば紙構造の中へ非常に深く浸透して、これによって、次々に色強度が減る。従って、ほとんど空隙がなく高い色強度を有する良好な印刷画像の前提条件は、(紙表面が可能な限り滑らかであり、そしてバランスの取れた色受容特性である)紙表面トポグラフィー(topography)である。
【0011】
この理由のために、通常、いわゆるソフトカレンダー(場合により、いわゆるJanusカレンダー)を使用してベース紙を平滑化する。この処理によって、紙表面が、傷つき、その結果圧縮される原因となり、これは樹脂吸収能力を悪くする。
【0012】
前記の諸特性は、化粧ベース紙の含浸によって、すなわち、使用される含浸媒体の性質によって著しく影響される。
【0013】
化粧ベース紙を含浸するために通常使用される含浸樹脂溶液は、尿素、メラミン、又はフェノール樹脂をベースにしている樹脂、及びホルムアルデヒドを含んでいる樹脂であり、そして、弱い引裂き抵抗及び印刷適性を有するもろい製品をもたらす。
【0014】
最近、化粧ベース紙を含浸するために使用される含浸樹脂溶液が、人間の健康に有害であることがある物質を含まないこと(特に、それらがホルムアルデヒドを含まない物質)を確保することは、ますます重要になっている。さらに、使用される成分が、可能な範囲で再生可能な原料から生じる必要がある。
【0015】
アクリル酸エステルスチレン共重合体の主成分を有し、ホルムアルデヒドを含まない樹脂の使用によって、非黄変プリプレグを製造することが、独国特許出願公開第19728250(A1)号明細書に記載されている。この材料の欠点は、この材料が、結合後における不十分な粘着力及び分裂(splitting)に対する弱い抵抗を有する製品を製造するということである。
【0016】
化粧ベース紙を含浸するための、ホルムアルデヒドを含まない含浸樹脂溶液は、欧州特許出願公開第09648248(A1)号明細書及び欧州特許出願公開第0739435(A1)号明細書においても記載されている。これらは、好ましくは、スチレンアクリル酸共重合体及びポリビニルアルコールからなる。残念ながら、このような含浸樹脂溶液で含浸される紙は、結合後の接着力及び層間剥離強度の点で、更なる改良の必要性もある。
【0017】
国際公開第2001/11139(A1)号パンフレットにおいて、結合剤、水性ポリマー分散及びグリオキサールからなる、ホルムアルデヒドを含まない化合物が提案されており、分裂に対して高い抵抗を示し、この化合物を有する化粧紙を製造することができることを提案している。しかしながら、この合成物で含浸される紙は、あまり結合しない。
【0018】
国際公開第2009/000769(A1)号パンフレットにおいて、スチレン−アクリル酸エステル共重合体と特定の分子量分布を有する澱粉とからなるホルムアルデヒドを含まない化合物が、記載されている。しかしながら、接着後の結合に関するこのプリプレグの特性については、今なお改良を必要とする。
【発明の概要】
【0019】
従って、本発明の目的は、前記の欠点を示さず、ホルムアルデヒドを含まないプリプレグを提供することであり、特に、このプリプレグは、木材ベースシート材料に糊付けした後に良好な接着力があり、湿り状態で糊付けした直後においても分裂に対する高い抵抗を有しており、良好な印刷適性を有しており、かつ印刷及びラミネート中において良好な平坦性を有することが顕著である。
【0020】
この目的は、スチレン−アルキルアクリレート ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体[アルキルは、メチル、エチル、プロピル、及び/又はブチルを表すことがある]少なくとも1つと水溶性高分子少なくとも1つとを含む含浸樹脂溶液で、ベース紙を含浸することによって得ることができるプリプレグで解決される。
【0021】
本発明の更なる目的は、前記のプリプレグから製造される化粧コーティング材料又は化粧紙である。
【0022】
驚くべきことに、本発明において使用される含浸樹脂溶液は、特に好適であることを発見した。なぜならば、それが、それらで含浸される紙を木材ベースシート材料に接着した後における、結合及び分裂に対する高い抵抗力を改善するだけでなく、それが、他の特性[例えば、印刷適性、ワニス(varnish)の浸透性、又は黄変性]に関する関連技術についての結果よりも、同じように良好であるか、又はより良好な結果を可能にもするからである。
【0023】
さらに、含浸された紙をラミネートする(ベースで、糊で付けられるか接着剤で付けられる)ために親水性結合剤を使用する場合に通常起こる問題は、発生しない。これは、本発明による含浸樹脂溶液が、ラミネーションに十分に適しているプリプレグを製造するために使用することができることを意味する。
【0024】
更なる利点は、プリプレグが、安価で、高い機械速度で製造することができることにある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明において、プリプレグは、樹脂で含浸される紙を意味すると理解される。プリプレグにおける含浸樹脂の割合は、化粧ベース紙の坪量に対して、好ましくは10〜35重量%、特に12〜30重量%であることがある。
【0026】
含浸されるべき化粧ベース紙は、いかなる内部又は表面サイジング処理を行なっていない紙である。それらは、基本的に、木材パルプ、顔料、充填剤、及び他の添加剤からなる。通常の添加剤は、湿潤強度増強剤、歩留まり向上剤、及び定着剤とすることができる。化粧ベース紙は、非常に高い含有量の充填剤及び高い色素含有量である点、及びそれらが内部又は表面サイジングにさらされていないという事実の点で、通常の紙と異なる。
【0027】
本発明において使用されるスチレン−アルキルアクリレート−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体は、ラテックス又は分散の形で、含浸樹脂の液体に導入することができる。共重合体におけるヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)の存在が、他のスチレン−アルキルアクリレートと比較して、本発明と関連する有利な効果に関与しているように思われる。
【0028】
スチレン−アルキルアクリレート−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体におけるヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの比例量は、好ましくは、アクリレート割合(fraction)の質量に対して、0.5〜20重量%、特に1〜10重量%とすることができる。本発明に使用されるコモノマーの割合が3〜8重量%である場合、特に有利であることが判明した。
【0029】
スチレン−アルキルアクリレート中のアルキルは、好ましくは、エチル又はブチルである。アルキルアクリレート割合におけるこれらアルキル基の混合物として、共重合体を使用することができる。
【0030】
本発明に使用される共重合体は、35〜50℃のガラス転移温度(TG)を有することが特に好ましい。
【0031】
含浸樹脂中における本発明に使用される水溶性ポリマーは、好ましくは、デンプン又はデンプンデキストリンである。
【0032】
好適なデンプンデキストリン又は変性デンプンは、少なくとも6の(多分散性指数Mw/Mnによって表される)分子量分布を有することがある。6〜20の多分散性指数を有する澱粉が好ましい。1つの特定の実施形態において、好ましくは、変性デンプンは、以下のデンプン分子の分子量分布:
− 分子量0〜1,000g/molを有する分子を6重量%以下:
− 分子量1,000〜5,000g/molを有する分子を5〜20重量%:
− 分子量5,000〜25,000g/molを有する分子を20〜40重量%:
− 分子量25,000〜200,000g/molを有する分子を20〜45重量%:
− 分子量200,000〜1,000,000g/molを有する分子を5〜22重量%:
− 分子量1,000,000g/mol越を有する分子を0.5〜5重量%:
を有する。
【0033】
前記変性デンプンは市販されているものを利用することができる。多分散性指数は、重量平均モル質量と数平均モル質量との割合(Mw/Mn)として通常表される。これにより、分子量分布曲線の幅に関する情報が提供される。
【0034】
変性デンプンの分子量分布は、デンプン製造業者による通常の方法で、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して決定された。GPC分析は、Shodex KSカラムを用いるクロマトグラフィーを使用して実施した。溶出媒体は、流速1mL/分を有する0.05MのNaOHであった。較正は、公知の分子量でのPullulan standardsを使用して行なわれた。
【0035】
含浸樹脂溶液中の水溶性ポリマー/ポリマーラテックスの割合は、含浸樹脂(atro)の質量に対して、好ましくは、80/20〜20/80であり、45/55〜65/35の割合、特に、50/50〜60/40の割合が好ましい。水溶性ポリマーは、再生可能な原料から製造することが可能な、デンプン又はデンプン誘導体(特に、デンプンデキストリン)から好ましくは選択される。本発明の別の変形によれば、ポリビニルアルコールを更に使用することができる。
【0036】
含浸された樹脂溶液は、顔料及び/又は充填剤を含むことができる。顔料又は充填剤の量は、1〜30重量%(特に、2〜20重量%)とすることができる。
【0037】
量は、バインダー(絶対乾燥)の質量に対して与えられる。現在の目的のために、用語バインダーは、ポリマーラテックスと水溶性ポリマーとを含有する混合物を表すために使用される。
【0038】
本発明によるプリプレグを製造するために使用される含浸樹脂溶液は、乾燥重量に対する総固形分9〜40重量%、好ましくは20〜35重量%、及び特に好ましくは26〜30重量%を有する。
【0039】
含浸樹脂溶液を製造するために、最初に、デンプンを、低温(すなわち、それは、60℃を超えない温度で、室温において水に溶解される)か、又はそれが約120〜145℃で沸騰することによって、調製される。これによって、約5〜6のpH値を有する40〜45%懸濁液を生成する。次の工程では、所望の固形分とデンプン/ラテックスの割合とを考慮することによって、5〜10のpH値を有する約50%のラテックス分散を追加する。更なる工程において、顔料又は充填剤を、追加することができる。
【0040】
本発明によって含浸されるベース紙は、顔料又は充填剤のかなりの割合を含むことができる。ベース紙中の充填剤についての百分率は、坪量(ベース重量)に対して、最大で55重量%まで、特に8〜45重量%とすることができる。適切な顔料及び充填剤は、例えば、二酸化チタン、タルカム、硫化亜鉛、カオリン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、コランダム、アルミニウムとマグネシウムとのケイ酸塩、又はそれらの混合物である。
【0041】
ベース紙を製造するために使用される木材パルプ含有量は、針葉樹材パルプ(長繊維パルプ)及び/又は広葉樹材パルプ(短繊維パルプ)であることがある。わた繊維、及び、わた繊維と前記タイプのパルプとの混合物を使用することもある。10:90〜90:10、特に、20:80〜80:20の割合での針葉樹材/広葉樹材パルプ混合物が特に好ましい。しかしながら、100重量%の広葉樹材パルプを使用することも効果的であることが分かっている。百分率は、パルプの質量(絶対乾燥)に関する。
【0042】
パルプ混合物が、好ましくは、パルプ混合物の重量に対して、カチオン変性パルプ繊維の量少なくとも5重量%を含むこともできる。木材パルプ混合物中のカチオン変性木材パルプの割合10〜50重量%、特に、10〜20重量%が、特に好ましいことが分かっている。エピクロルヒドリン樹脂及び第3級アミンで繊維を反応させることによって、又は、第4級塩化アンモニウム(例えば、クロロヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、又は、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド)で反応させることによって、パルプ繊維のカチオン変性を実施することがある。カチオン変性パルプ及びそれらの製造は、例えば、DAS PAPIER, issue12 (1980), pp. 575-579により公知である。
【0043】
ベース紙は、長網抄紙機又はヤンキー抄紙機で製造することができる。このために、木材パルプ混合物を、紙料濃度2〜5重量%で叩解して、ろ水度10〜45°SRとすることができる。増量剤(例えば、二酸化チタン及びタルカム)、及び湿潤強度増強剤を木材パルプ混合物に追加して、混合容器においてよく混合することができる。得られた高粘性物質を、紙料濃度約1%まで希釈し、そして、必要な場合には、補助剤(例えば、歩留まり向上剤、消泡剤、硫酸アルミニウム、及びその他の前記補助剤)を追加することができる。この低濃度の原料を、抄紙機のヘッドボックスを介してワイヤーセクションへ導入する。繊維の不織布シートを形成し、そして、脱水後にベース紙を得て、次に、それを乾燥させる。製造される紙の坪量は、15〜300g/mであることができる。しかしながら、坪量40〜100g/mを有するベース紙が好ましい。
【0044】
本発明において使用される含浸樹脂溶液は、抄紙機中で又はオフラインで、スプレー、含浸、ロール付与、又はブレード付与(ドクターブレード)によって付与することができる。サイズプレス又はフィルムプレスを使用する付与が、特に好ましい。
【0045】
含浸された紙は、残留水分率2〜8%となるまで、IR又は円筒型ドライヤを使用する通常の方法で、温度範囲120〜180℃で乾燥される。
【0046】
乾燥後に、この方法(プリプレグ)で含浸される紙を印刷及びワニスをし、次に、種々の基板(例えば、チップボール又は繊維板)上へ通常の方法を使用してはり合わせる。
【0047】
以下の実施例は、本発明を更に説明するものである。重量%で表示される値は、特に説明が無い場合には、木材パルプの重量に関するものである。割合は、質量比又は重量比を意味する。
【実施例】
【0048】
≪実施例V−1(比較例)≫
ユーカリパルプ80重量%と針葉樹材硫酸塩パルプ20重量%との、紙料濃度5%を有する木材パルプ混合物を摩砕することによって、パルプ懸濁液を調製し、ろ水度33°SR(ショッパー・リーグラー度)にした。次に、湿潤強度増強剤としてエピクロルヒドリン樹脂1.8重量%を追加した。硫酸アルミニウムを使用して、この木材パルプ懸濁液のpHを6.5までに調節した。続いて、前記木材パルプ懸濁液に、二酸化チタン30重量%と、タルカム5重量%と、歩留まり向上剤0.11重量%と、消泡剤0.03重量%との混合物を加え、坪量約50g/m及び灰分約23重量%を有する化粧ベース紙を製造した。重量情報は、木材パルプの重量(atro)に対するものである。
【0049】
約25重量%(固形分)の水溶性樹脂溶液(デンプンデキストリン[Emsland-Staerke, Emlichheimによって製造されるEMDEX(商標)B1102]及びスチレン−ブチルアクリレート共重合体ラテックス[Polymer Latex, Marlによって製造されるPLEXTOl(商標)X4340]を55:45の割合で含有する)で、このベース紙の両側をサイズプレスによって含浸した。このために、最初に、45%デンプンデキストリンの供給原料を準備し、そして水で25重量%濃度に希釈した。次に、50%水溶性ポリマー分散の対応する量が追加され、得られるポリマー溶液を水で30重量%(固形分)に希釈し、そして苛性ソーダでpH8.0に調整した。
【0050】
次に、残留水分が2.5%のレベルに達するまで、含浸された紙を温度120℃で乾燥した。乾燥後に付与するための、含浸樹脂溶液の量は、10g/mであった。
【0051】
使用されるラテックス(共重合体)[PLEXTOL(商標)X4340]のガラス転移温度Tgは、28℃である。
【0052】
≪実施例A−1(本発明)≫
実施例V−1と同様に製造されるベース紙を、25%固形分を有する水溶性樹脂溶液(デンプンデキストリン[EMDEX(商標)B1102]とラテックストライアルプロダクト1[PLEXTOl(商標)X4340と同様の方法であるが、その方法において、ブチルアクリレートの3%を、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)に置き換えて製造を行なった]とを55:45の割合で含有する)で、サイズプレスにより含浸した。スチレン−ブチルアクリレート−(ヒドロキシエチルメタクレリート)−ラテックスは、36℃のガラス転移温度Tgを有する。
【0053】
≪実施例B−1(本発明)≫
実施例V−1と同じように製造されるベース紙を、25%固形分を有する水溶性樹脂溶液(デンプンデキストリン[EMDEX(商標)B1102]とラテックストライアルプロダクト2[PLEXTOl(商標)X4340と同様の方法であるが、その方法において、ブチルアクリレートの6%を、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)に置き換えて製造を行なった]とを55:45の割合で含有する)で、サイズプレスにより含浸した。スチレン−ブチルアクリレート−ヒドロキシエチルメタクレリート共重合体は、40℃のガラス転移温度Tgを有する。
【0054】
≪実施例B−2(本発明)≫
プリプレグをプリプレグB−1と同様に製造したが、含浸樹脂溶液中における、デンプンデキストリンのラテックストライアルプロダクト2に対する割合は、40:60であった。
【0055】
≪実施例B−3(本発明)≫
プリプレグをプリプレグB−1と同様に製造したが、含浸樹脂溶液中における、デンプンデキストリンのラテックストライアルプロダクト2に対する割合は、25:75であった。
【0056】
≪実施例C−1〜C−3≫
プリプレグを実施例B−1〜B−3と同様の方法で製造したが、使用されるラテックスは、Polymer Latex, Marlから得られるトライアルプロダクト3であった。ラテックストライアルプロダクト3は、スチレン−エチルアクリレート共重合体を主成分としており、エチルアクリレートモノマーの6%をヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)に置き換えている。スチレン−エチルアクリレート−(ヒドロキシエチルメタクレリート)−ラテックスは、39℃のガラス転移温度Tgを有する。使用される含浸樹脂溶液は、ラテックスのデンプンデキストリンに対する割合については、実施例C−1では45:55、実施例C−2では60:40、実施例C−3では75:25であった。
【0057】
≪実施例V−2(比較例)≫
実施例V−1と同様に製造されるベース紙を、25%固形分を有する水溶性樹脂溶液(デンプンデキストリン[EMDEX(商標)B1102]、ポリビニルアルコール[Kuraray Europe GmbH, Frankfurtにより製造されるMOWIOL(商標)4−98]、及びラテックス[PLEXTOl(商標)X4340]を40:15:45の割合で含有する)で、サイズプレスにより含浸した。
【0058】
最初に、対応して調製される45%デンプンデキストリン配合物及び10%MOWIOL(商標)配合物を、前記と共に混合した。次に、50%水溶性ポリマー分散の対応する量が追加され、固形分が30重量%になるまでポリマー溶液を希釈し、そして苛性ソーダでpH8.0に調整した。
【0059】
≪実施例A−2(本発明)≫
実施例V−1と同じように製造されるベース紙を、25%固形分を有する水溶性樹脂溶液(デンプンデキストリン[EMDEX(商標)B1102]、ポリビニルアルコール[MOWIOL(商標)4−98]、及びラテックストライアルプロダクト1を40:15:45の割合で含有する)で、サイズプレスにより含浸した。
【0060】
≪実施例B−4(本発明)≫
実施例V−1と同じように製造されるベース紙を、25%固形分を有する水溶性樹脂溶液(デンプンデキストリン[EMDEX(商標)B1102]、ポリビニルアルコール[MOWIOL(商標)4−98]、及びラテックストライアルプロダクト2を40:15:45の割合で含有する)で、サイズプレスにより含浸した。
【0061】
≪実施例B−4(本発明)≫
実施例V−1と同じように製造されるベース紙を、25%固形分を有する水溶性樹脂溶液(デンプンデキストリン[EMDEX(商標)B1102]、ポリビニルアルコール[MOWIOL(商標)4−98]、及びラテックストライアルプロダクト2を10:15:75の割合で含有する)で、サイズプレスにより含浸した。
【0062】
表1は、従来技術と比較して、本発明により処理される紙での試験結果を示すものである。以下の特性が試験された:
【0063】
層間剥離強度(分裂に対する抵抗のためのパラメータ)
標準化した試験方法(TAPPI 833−om 94)に従うemco IBT Internal Bond Tester(emco GmbH, Leipzig, Germanyによって製造)を用いて、プリプレグに関して測定された。試験すべき材料は、幅1インチの一片に切断され、両面粘着テープを使用して粘着によってアンビルと5つのアルミニウムブラケットとの間に取り付けられ、そして定められた圧縮時間及び定められた圧縮力の圧縮メカニズムで圧縮された。5つのサンプルは、衝撃メカニズムのサンプルホルダーに同時に置かれて、30kgの重量を有する衝撃力がかけられる。
【0064】
乾燥切断荷重(dry breaking load)及び湿潤切断荷重(wet breaking load)
DIN EN ISO1924−2 T2に従って、プリプレグの試験を実施した。
【0065】
結合強度試験およびTESA試験は、チップボードパネル上にラミネートされているワニスが塗られたプリプレグのサンプルに対して行われる。
【0066】
プリプレグのワニス
プリプレグのサンプルは、160℃で60秒間予熱される。次に、(Plantagchemie, Detmoldによって製造される)酸性−硬化ワニスシステムIV−49の10±1g/mによって、ドクターブレードでそれらの全体にわたって広げられる。サンプルは、160℃で45秒間乾燥窯の中でそれらを水平に置くことによって、乾燥される。
【0067】
プリプレグのラミネーション
ワニスが塗られたプリプレグは、研究用のラミネートカレンダーを使用して、チップボードパネルに取り付けられる。標準市販のチップボードパネル(20×20cm)を使用する。尿素−樹脂−糊溶液[BASF AG, Ludwigshafenにより製造されるKaurit Leim 122, 水に溶かしたパウダー(50%固形分)]を、ドクターナイフによって一方の面に付与し、固形分に対して35±5g/mを糊付与する。ワニスが塗られたプリプレグシートは、サイジングされたチップボードの上に配置され、シートにおけるワニスを塗られた面は、チップボードからみて外方に向いており、そして、そのシートが、全ての側方上で、チップボードの端から約2cm突出している。次に、ワニスが塗られたプリプレグを有するチップボードパネルが、ラミネートカレンダーによって押される(80N/mmの接触圧が印加され、圧縮ローラーの温度が180℃であり、そして、供給速度が2m/分である)。
【0068】
接着力
接着力の試験は、ラミネーション直後に開始する。この目的のために、(チップボードパネルの側面にわたって約2cm伸びている)ほぼプリプレグストリップを、そのパネルの端に対して垂直に切断する。ストリップの幅及びそれら互いの距離は、両方とも12mmである。
【0069】
各々の突出しているストリップは、チップボードパネルに対して60°の角度で、手によって三角形の棒に鋭く引き寄せられる。この引張り試験(tugging test)は、ラミネーションの直後に実施され、次に、更に2分、5分、10分、30分及び24時間後に繰り返した。引張り操作後にプリプレグによって、もはや又はもはや完全に覆われていない領域を評価する。評価は、スコア方式(スコア1=非常に良好〜スコア6=不満足)で記録される。
【0070】
TESA試験
TESA試験は、Institut fuer HolztechnologieDresdenの社内規格IHD−W−463に基づいて実施される。最初に、ラミネートされたパネルが、24時間保存される。TESAフィルムストリップ(TESAフィルムタイプ4104)[ほぼ15cm幅]を、ラミネートカレンダーの供給方向及びそれらに垂直に、ラミネートされたパネルに付与し、そして試験ローラー(10kg)で泡をなくす。TESAストリップは、種々の異なる時間(直後、1時間、2時間)で、30°の角度で手によって鋭く引き離される。引き離された試験片の下の領域が評価され、理想的には、紙は裂けない。TESA抵抗の評価は、スコアの形(スコア1=非常に良好〜スコア6=不満足)で記録される。
【0071】
表1に示される試験結果は、含浸樹脂溶液中のスチレン−アルキルアクリレートポリマーにおけるヒドロキシエチルメタクリレート含有量が、各々の場合においてアクリレート割合に対して、0重量%から3重量%(更に、6重量%)に増加することによって、プリプレグの乾燥及び湿潤切断強度、並びに構造強度も増加し、同時に、チップボードパネルに対する接着力、及びTESA抵抗も向上する。この向上は、デンプンデキストリンが水溶性ポリマーとして使用される場合、及びデンプンデキストリンとポリビニルアルコールとの混合物がこのように使用される場合の両方において得られる。スチレン−アルキルアクリレート−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体の割合を増やすことによって、更なる増加を認識することがある。
【0072】
【表1】

上記表1は、含浸樹脂溶液の組成、及び試験結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧ベース紙を含浸樹脂溶液で含浸することによって得ることのできるプリプレグであって、
前記含浸樹脂溶液が、スチレン−アルキルアクリレート−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体少なくとも1つと水溶性ポリマー少なくとも1つとを含み、アルキルが、メチル、エチル、プロピル、又はブチルの意味であることを特徴とする、前記プリプレグ。
【請求項2】
前記スチレン−アルキルアクリレート−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体が、そのアクリレート成分の重量に対して、ヒドロキシエチルメタクリレートを0.5〜20重量%の割合で含むことを特徴とする、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
ヒドロキシエチルメタクリレートの割合が、そのアクリレート成分の質量に対して、1〜10重量%であることを特徴とする、請求項2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記スチレン−アルキルアクリレート−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体が、スチレン−エチルアクリレート−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、又はスチレン−ブチルアクリレート−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項5】
前記共重合体が35〜50℃のガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項6】
前記水溶性ポリマーが、デンプン又はデンプン誘導体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項7】
前記水溶性ポリマーが、デンプンデキストリンであることを特徴とする、請求項6に記載のプリプレグ。
【請求項8】
水溶性ポリマー/共重合体の比率が、含浸樹脂の質量(絶対乾燥)に対して、30/70〜80/20であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項9】
前記含浸樹脂溶液が、結合剤の質量(絶対乾燥)に対して、1〜30重量%の顔料及び/又は充填剤を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項10】
前記顔料が、二酸化チタン、カオリン、ベントナイト、及び/又は炭酸カルシウムであることができることを特徴とする、請求項9に記載のプリプレグ。
【請求項11】
前記含浸樹脂溶液が、9〜40重量%の固形分を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項12】
プリプレグでの前記含浸樹脂溶液の質量(乾燥物質として計算)が、化粧ベース紙の坪量に対して、10〜35重量%であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項13】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のプリプレグから得ることができる化粧紙又は化粧コーティング材料。

【公開番号】特開2013−28802(P2013−28802A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−141303(P2012−141303)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【出願人】(591010561)シェラー テクノチェル ゲー エム ベー ハー ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】Schoeller Technocell GmbH & Co. KG
【Fターム(参考)】