説明

プリンタ

【課題】簡単な構造でサブタンク内へ、インク供給部材内のインクを最後まで供給できるようにする。
【解決手段】インク吐出型のプリンタの機体側のインク供給部材2から水頭値の違いによってサブタンク4にインク42を供給し、該サブタンク4からインク供給チューブ36を介してインク42を印字ヘッド8に供給し、印字ヘッド8から印字媒体へインクを吐出して該印字媒体に印字を行う。プリンタの機体側には、保持部材38が所定回転範囲で揺動可能に支持され、この保持部材38の保持枠38aにインク供給部材2が装着される。このインク供給部材2は保持部材38を手動又は自動で揺動させ、傾かせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体側の液体供給部材から水頭値の違いによってサブタンクに液体を供給し、該サブタンクから液体供給チューブを介して液体を吐出ヘッドに供給し、吐出ヘッドから液体を媒体に吐出する液体吐出型のプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出型のプリンタとして、インクジェット印字ヘッドへのインク供給機構にサブタンクを設け、該サブタンクに一度インクをリザーブしてから印字ヘッドにインクを供給するプリンタが従来知られている(例えば特許文献1,2,3参照)。また、インクタンクカートリッジのインク収納部の底面に、傾斜を持たせた段差部を設け、残留インクがインク通路に導かれて、インク収納部のインクを使い切ることができるようにしたインクタンクカートリッジ及び記録装置が従来知られている(例えば特許文献4,5参照)。
【特許文献1】特開平11−105299号公報
【特許文献2】特開平11−192720号公報
【特許文献3】特開2000−141687号公報
【特許文献4】特開2000−975号公報
【特許文献5】特開2004−122704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図10に示すように、プリンタの機体側の、インクカートリッジからなるインク供給部材2から、サブタンク4に、水頭値の違いによって、インクを供給するインク供給システムにおいて、インク供給部材2は、一般的には、その底部が機体に床面に対して水平に保持され、接続口6が、その側壁の真ん中に設けられるが、この場合、印字に伴い、インク供給部材2内のインク42が減って、接続口6の下方に液位が変化すると、インク供給部材2内のインク42が、サブタンク4内に最後まで供給されにくくなる。またヘッド8からサブタンク4そしてインクカートリッジ2のインクの供給経路において、インク輸送チューブ34およびインク供給チューブ36にインクが満たされている場合には水頭値が同じになっているためにインクカートリッジ2のインクはヘッド8に設けられたノズルからの吐出によりスムーズにインクが使用されまた供給もスムーズに行われるのだが、インク輸送チューブ34やサブタンク4などに何も無い状態(初期充填時など)やインクで満たされて無い場合などにはインクカートリッジ2の水頭値だけにより針15および接続口6からインク輸送チューブ34を通ってサブタンク4に供給される事になる。そのような状態においてはインク供給部材2を水平に置いた場合ではインクがスムーズに供給されない事がある。またサブタンクとして袋状のものを使用している場合などでは、そのサブタンク4の内容量によりサブタンクは膨張、収縮を繰り返す。コントローラはセンサによりその量の変化をモニターする事によって電磁バルブ7の開閉を制御してインクの供給を行う事になるのだが、インクカートリッジ2からの単位時間当たりの供給量が少ない場合にはインク供給がスムーズでなくなるという問題もある。
本発明は、インク吐出型の、サブタンクを備えたプリンタにおいて、サブタンクへ、インク供給部材内のインクがスムーズに供給されるための補助機構を提供することを目的とするものである。
尚、図10は、本発明の問題点を説明するための説明図であり、電磁バルブ7、印字ヘッド8、キャッピング部材10、吸引ポンプ12、廃液ボトル14、コネクタ即ち管状の針15等の構成は、後述の本発明の実施形態に示すインク供給システムに使用されているものと同一であり、対応する構成を同一の符号で図示している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明は、機体側の液体供給部材から水頭値の違いによってサブタンクに液体を供給し、該サブタンクから液体供給チューブを介して液体を吐出ヘッドに供給し、吐出ヘッドから液体を媒体に吐出する液体吐出型のプリンタにおいて、前記機体側に保持部材を所定回転範囲で揺動可能に支持し、該保持部材に前記液体供給部材を装着可能としたものである。
また本発明は、前記保持部材の回転範囲を前記液体供給部材の底部が床面に対して略水平な状態から略垂直な状態となることができる角度に設定したものである。
また本発明は、前記保持部材を回転駆動装置に連結し、該回転駆動装置によって前記保持部材を傾き揺動方向に駆動可能としたものである。
また本発明は、前記液体供給部材内の液体量を測定するための液体量測定手段を設け、該液体供給部材内の液体量に応じて前記回転駆動装置を制御し、該回転駆動装置によって前記保持部材の傾斜角度を自動的に制御するようにしたものである。
また本発明は、前記保持部材の床面に対する傾きは、前記液体供給部材の装着時と、前記液体供給部材の交換時は、水平状態に設定されるようにしたものである。
また本発明は、前記保持部材に、該保持部材の揺動角度を維持する揺動角維持機構を連係したものである。
また本発明は、前記揺動角維持機構は、前記保持部材を傾斜した状態で脱着可能に係止する係止機構により構成したものである。
また本発明は、前記保持部材をモータからなる回転駆動装置によって揺動可能とし、該モータの停止時の励磁力によって前記保持部材の揺動角度を維持する揺動角維持機構を構成したものである。
また本発明は、前記液体供給部材が前記保持部材に対して取り外し自在な液体カートリッジであることを特徴とする。
また本発明は、前記液体供給部材は、一対の互いに対面する両面部を有する袋体から成り、該袋体の一方側の辺部に液体輸送チューブと接続するための接続口が設けられ、前記袋体に液体が充填された液体袋によって構成されていることを特徴とする。
また本発明は、前記液体供給部材は、前記両面部の各々の略全域に袋体表面を平坦に維持する平坦維持面が設けられた液体袋によって構成されていることを特徴とする。
また本発明は、機体側のインク供給部材から水頭値の違いによってサブタンクにインクを供給し、該サブタンクからインク供給チューブを介してインクを印字ヘッドに供給し、印字ヘッドからインクを吐出して印字媒体に印字を行うインク吐出型のプリンタにおいて、前記機体側に保持部材を所定回転範囲で揺動可能に支持し、該保持部材に前記インク供給部材を装着したことを特徴とする。
また本発明は、前記保持部材の回転範囲を前記インク供給部材が床面に対して略水平な状態から略垂直な状態となることができる角度に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、簡単な構造で、サブタンクへのインクの供給をスムーズにでき、インク供給部材内のインクを最後まであるいは空に近いレベルまでサブタンクへ供給できる。
また本発明は簡単な構造でカートリッジの位置を変更する事により、インクカートリッジの位置の水頭値を大きくする事が出来るので、サブタンクへのインクの供給をスムーズにすることができ、また時間当たりの供給量も大きくする事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明の構成を添付した図面を参照して詳細に説明する。
図3は、本発明の実施に用いられるインクジェットプリンタを示し、脚体16に支持された機体18にY軸レール20が架設されている。前記Y軸レール20の下方には、プラテン22が配置され、該プラテン22によって、ロール紙などの印字媒体の搬送路が形成されている。
【0007】
前記プラテン22上の印字媒体(図示省略)は、駆動ローラと加圧ローラとでグリップされ、駆動ローラの回転によって、図3中、手前方向に、即ち、副走査方向に沿って間欠搬送されるように構成されている。前記Y軸レール20には、キャリッジを介して、4色のインクに対応する複数個の印字ヘッドを搭載したヘッド部26が該Y軸レール20に沿って、主走査方向に移動可能に取り付けられている。
【0008】
前記各印字ヘッドには、後述するインク供給システムによって、インクが供給されるように構成されている。前記ヘッド部26は、各印字ヘッドのノズルからインクを吐出しながら、プラテン22上の印字媒体を主走査方向に走査して、印字媒体に画像、記号、文字等を印字する。前記機体18の前面の操作し易い側の端部には、コントローラの制御パネル28が、また、他側にカバー30により開閉可能なインク容器収納部32が設けられている。
【0009】
前記インク容器収納部32には、図1に示す、カートリッジ型のインク供給部材2とサブタンク4が収納されている。インク供給システムは、大容量のインク供給部材2と、インク輸送チューブ34によりインク供給部材2に接続されるサブタンク4と、該サブタンク4と印字ヘッド8とを接続するインク供給チューブ36とから構成されている。前記インク輸送チューブ34は、保持部材38の回転軸40を中心とする回転に対して負荷とならないように可撓性部材により構成されている。
【0010】
図1では、1つの印字ヘッド8に対するインク供給システムが図示されているが、このインク供給システムは、ヘッド部26に搭載された、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ等の色のインクを吐出する複数個の印字ヘッドのインク供給システムに共通の構成である。説明の重複を避けるため、図1には1つの印字ヘッド8のインク供給システムのみ図示し、他の複数個の印字ヘッドへのインク供給システムは図示省略している。
【0011】
前記インク輸送チューブ34の一端は、前記保持部材38の保持枠38aに支承され、該一端側に管状の針(コネクタ)15が接続している。インク輸送チューブ34の他方には、電磁バルブ7が接続されている。前記機体18側の非印字領域には、非印字時に、ヘッド部26の印字ヘッド8のインク乾燥に起因する目詰まり防止と、印字ヘッド8へのインクの初期充填や目詰まり解消のために負圧を作用させるキャッピング部材10が昇降可能に設けられ、吸引ポンプ12によりキヤッピング部材10を介して印字ヘッド8に負圧を作用させることができるように構成されている。
【0012】
キャッピング部材10により、印字ヘッド8のノズルから吸い出されたインク廃液は、廃液ボトル14に排出されるように構成されている。前記インク供給部材2の側壁の中央部に、接続口6が設けられ、該接続口6に、インク輸送チューブ34の一方が、針15を介して、脱着可能に連結している。
【0013】
前記インク供給部材2は、保持部材38の保持枠38aに脱着自在に挿入配置されている。前記保持部材38のベース部38bは、前記機体18に、軸40を支点として回転可能に支持されている。前記保持部材38の軸40を中心とする回転範囲は、ベース部38bが床面に対して水平な状態から、90度の角度となる範囲に設定されているが、接続口6が一番上にある場合などは、115度位でも良く特に90度の範囲に限定されるものではない。
【0014】
前記保持部材38の回転部には適宜な摩擦力が付与されており、この摩擦力付与機構は、保持部材38の揺動角維持機構を構成している。手操作で、保持部材38を任意の角度に傾けたとき、保持部材38は、この傾けた状態で安定的に保持されるように構成されている。尚、前記保持部材38の回転部に所定角度ごとに解除可能な係止力が作用するインデックス機構を設けても良い。
【0015】
前記保持部材38は、単独で傾斜できる構成としても、あるいは、並列配置された他の保持部材と連動して傾斜する構成としても良い。前記インク供給部材2が透明であれば、内部のインクの減り具合が外部から確認できるが、インクの残量の確認を、インク残量検出センサによってコントローラが行うようにしても良い。
【0016】
上記した構成において、インク供給部材2の内部のインク42は、サブタンク4に、水頭値の違いにより供給される。インク供給部材2のインク42が減ってきた場合には、手操作により、図2(A)(B)に示すように、保持部材2を設定回転範囲内で任意の角度に傾ける。その後にバルブ7を開くことにより、インク供給部材2内のインクは最後まであるいは空に近いレベルまで、サブタンク4に供給される。なお、インク供給部材2は予め、任意の角度に傾けておいても構わない。
【0017】
次に本発明の他の実施形態を図4乃至図7を参照して説明する。
図4は本実施形態で使用されるインク供給部材であり、インク袋44により構成されている。インク袋44は、ガスバリヤー性を確保するためにアルミ箔を中間層として2枚のフイルム、例えば外側をナイロンフイルム、内側をポリエチレンフイルムより挟み込んだアルミラミネートフイルムや、また可撓性、通気性に加えて透光性を備えたポリエチレンテレフターレート(PET)やナイロン等の高分子フイルム表面に、酸化珪素を蒸着して酸化珪素層を形成し、これの表面を熱溶性に優れたポリエチレン等の高分子フイルムを積層してなる光透過性フイルムを用いた可撓性の袋体46に、その一方の短辺側46aにインク輸送チューブ34の先端の針15に接続可能な接続口48を設けて構成されている。
【0018】
袋体46の長辺側には可及的に容積を拡大するために、袋体46の両面部46d,46eの両側にマチ50を設け、また、他方の短辺側46bの中央部46cを溶着して無用に袋体46が膨張するのを阻止するように構成されている。前記マチ50には、その中央部に、長辺に沿って折り目52が形成され、袋体46内のインクが少なくなると、折り目52を中心としてマチ50が折り畳まれ、両面部46d,46eが互いに接近するようになっている。
【0019】
更に、本実施形態では、袋体46の両面部46d,46eのそれぞれのほぼ全域に、両端部側に所定の領域を残して、袋状の表面を平坦に維持するための、袋体46より硬質のプラスチックの板などからなる板状部材54が貼付されている。前記板状部材54は、袋体46の両面部46d,46eの内側に貼付しても良く、また積層構造の両面部46d,46eの積層シートの中に挟み込んで配置しても良い。また両面部46d,46eのシート自体を袋状の表面を平坦に維持する板状となるように加工し、両面部46d,46e自体を板状部材とするようにしてもよい。
【0020】
プリンタの機体18側には、保持部材56が固設され、これにブラケット(図示省略)を介して、インク袋収納体58が軸59を中心として回転自在に支承されている。前記インク袋収納体58は、インク袋収納部を有し、該収納部は上部と後方部が開放され、底部にインク袋44を載置するための載置部58aが形成されている。前記インク袋収納体58の前方壁58bの略中間部には、前記インク袋44の接続口48に挿入される管状の針15が配設されている。該針15の先端は、前記インク袋収納体58の内部に突出し、該針15の後端は、インク袋収納体58の外部で、インク輸送チューブ34(図1参照)に連結している。
【0021】
前記インク袋収納体58の底部には、つっかえ棒60の一方が軸62を中心として回転自在に連結している。前記保持部材56の上面には、前記つっかえ棒60を収納する凹入部が形成され、該凹入部の上面には、前記つっかえ棒60の他方側を係止し、前記インク袋収納体58を斜めに図7の如く傾斜した状態に維持するための係止溝64が穿設されている。
本実施形態の他の構成は、図1に示す第1の実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0022】
上記した構成において、インク袋収納体58にインク袋44が装着される前は、つっかえ棒60は、軸62を中心として折り畳まれ、インク袋収納体58は、図5に示すように、その底部が床面に対して水平な状態となっている。上記インク袋収納体58を水平にした状態で、インク袋44を図5に示すように、その接続口48を横に、板状部材54の平坦面を垂直に立てた状態で、インク袋収納体58の載置部58aに載置する。
【0023】
この状態において、インク袋44の接続口48の中心は、針15と同一高さで正確に対向する。この状態でインク袋44を針15の方向に押動して、接続口48に針15を差し込み、針15とインク袋44の接続口48とを図6に示すように、連結する。載置部58aに載置されたインク袋44の底部を斜めに傾斜させる場合には、インク袋収納体58を、軸59を中心として、反時計方向に揺動し、つっかえ棒60を揺動して、その他端側を係止溝64に係止させる。該状態において、インク袋収納体58は、斜めに傾斜した状態に保持される。インク袋収納体58に収納されたインク袋44は、その平坦面が、床面に対して垂直な平面と略平行な状態で、長辺が傾いた状態となる。
【0024】
前記インク袋収納体58の回転中心軸59及び第1の実施形態における保持部材38の回転中心軸40を、インク袋収納体58及び保持部材38に固定し、該軸59,40をモータなどの回転駆動装置の出力軸に連結すれば、コントローラの操作パネルの制御スイッチの手操作によって、回転駆動装置を回転及び停止させることができ、これによって保持部材38及びインク袋収納体58を任意の傾斜角度に設定することができる。この場合、回転駆動装置の停止時、その励磁力によって、保持部材38及びインク袋収納体58は傾斜位置に維持され、プリンタの主電源が切れると励磁力が解除されて、保持部材38及びインク袋収納体58は、自重により、水平状態に戻るように設定されている。
【0025】
次に、インク供給部材をモータ等の回転駆動装置によって、インク残量に対応した傾斜角度に制御する実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。
本実施形態では、カートリッジ型のインク供給部材が使用される。プリンタに使用されるインクカートリッジが多数ある場合には、インクカートリッジごとに自動傾斜装置が設けられる。本実施形において、インク供給部材として図4に示すインク袋44を使用することもできる。インクカートリッジ66は、内部にインク収納部を有し、短辺部の略中央に接続口68を備えている。プリンタの機体18に保持部材70が固設され、これにブラケットを介してカートリッジ収納体72が回転自在に支承されている。
【0026】
カートリッジ収納体72は、機体側に設けた回転駆動装置の出力軸に連結する回転軸74に連結し、該回転軸74の回転によって底部が床面に対して水平状態から垂直状態の間で、任意の角度に傾くことができるように構成されている。前記インクカートリッジ66には、ICタグなどの、情報を保存でき、しかも、リーダやライタで情報を読み書きすることができる情報書き込み記憶手段76が貼り付けられている。この記憶手段76には、インクカートリッジ識別情報、インク量情報(インク消費量やインク残量)その他所要の情報が書き込まれている。尚、インクカートリッジ66内のインク量データは、インクカートリッジ66の重量を検出するセンサによって検出し、プリンタのコントローラにデータとして送る構成としても良い。
【0027】
その他、インク袋44を用いる場合には、その袋の厚さをセンサで測り、インク残量を測定する方式を採用することができ、インク量測定手段は種々の方式を採用することができる。カートリッジ収納体72側には、リーダ/ライタからなる情報読み書き手段78が配設され、互いに無線で接続可能となっている。前記情報読み書き手段78は、無線方式に特に限定されるものではなく、接点方式を採用することが可能である。前記情報読み書き手段78は、プリンタのコントローラに接続している。前記カートリッジ収納体72には、インク輸送チューブ34に連結する針15が配設されている。
【0028】
インクカートリッジ66は、カートリッジ収納体72が水平な状態において、横方向から、カートリッジ収納体72の開口部72aを通じてカートリッジ収納部に挿入される。インクカートリッジ66がカートリッジ収納体72に挿入されると、接続口68の中に、針15が差し込まれ、インクカートリッジ66は、インク輸送チューブ34に連通し、且つ、インクカートリッジ66は、カートリッジ収納体72内に安定的に収納される。インクジェットプリンタのコントローラには、図9に示すカートリッジ傾斜制御動作を行う傾斜角制御プログラムが格納され、コントローラの制御によって回転駆動装置に連結する回転軸74が回転制御される。
【0029】
以下にカートリッジ傾斜制御動作を図9のフローチャートを参照して説明する。
インクカートリッジ66をカートリッジ収納体72に装着するときは、カートリッジ収納体72の底部は水平に設定されている。また、コントローラのメモリには、インクカートリッジの種類ごとにインク使用量とカートリッジ傾斜角度との関係を規定したデータテーブル80が格納されている。インクカートリッジ66がカートリッジ収納体72に装着され、プリンタが印字動作に移行し、コントローラによるインク供給部材の傾斜角制御動作がスタートすると、コントローラは、情報書込記憶手段76と情報読み書き手段78とを通じてインクカートリッジ66を検出し、その情報を取得する(ステップ1)。
【0030】
次にコントローラは、インクカートリッジ66の状態即ち使用中のものであるか初期状態のものであるかを判断し(ステップ2)、初期状態と判断するとカウンタのインク吐出数をリセットする(ステップ3)。使用中であると判断すると、使用量を付加してカウンタを更新する(ステップ4)。インクカートリッジ66のインクの消費量がゼロの状態では、カートリッジ収納体72の底部は水平な状態となる。なおコントローラは、インクカートリッジ66から取得する情報においてそのインクカートリッジ66の容量に関する情報も取得している。次にコントローラは、インク吐出数のカウントを開始し(ステップ5)、カウント値からインク使用量(カウント値と一回あたりの吐出量の積)を計算する(ステップ6)。次にインク使用量とインクカートリッジ66の容量に関する情報を用いてメインタンク即ちインクカートリッジ66の中のインク残量があるか否か判断し(ステップ8)、肯定を判断すると、データテーブル80を参照して、インクカートリッジ66の傾斜角度即ちカートリッジ収納体72の傾斜角度を設定するための回転駆動装置駆動信号を生成する(ステップ9)。なお実施例ではインクカートリッジ66の使用量(残量)を%で表している。
【0031】
次にコントローラは、回転駆動装置駆動信号によって回転駆動装置を駆動し、カートリッジ収納体72の傾斜角度を変更し(ステップ7)、ステップ6に戻る。この傾斜角度は、インクカートリッジ66内のインクの残量に対応し、インクカートリッジ66内のインクがほぼ空になるまでスムーズにインク輸送チューブ34に供給される傾斜角度となっている。判断ステップ8で否定を判断すると、コントローラは、回転駆動装置を駆動してカートリッジ収納体72を平行即ち載置部58aを床面に対して水平な状態に戻し、動作を終了する。この終了時、インク残量値は、コントローラから情報読み書き手段78を通じて、インクカートリッジ66側の情報書込記憶手段76に書き込まれる。
【0032】
上記のように、印字中、インクの消費量により、インクカートリッジなどのインク供給部材の角度が徐徐に上がってゆく。この角度は少しずつ上げていっても良く、また、ある量になったら一定角度を上げるステップ方式でも良い。この部分の設定はデータテーブル80の設定を変更すれば良いので、必要に応じて対応すればよい。このように、インクカートリッジの傾斜動作を自動式とすることで、インク消費量に応じて傾斜を適正な値に設定できるとともに、手動式のように、操作し忘れるというミスを防止できる。上記実施形態において、カートリッジ収納体72の角度はモータの励磁力で維持され、プリンタの主電源が切れるときは、カートリッジ収納体72は水平な状態に戻るように構成されている。また、インクカートリッジを途中で外した場合は、インク消費量はインクカートリッジ側のメモリに書き込まれるが、プリンタのコントローラ側でインクカートリッジの識別情報とともにインク消費量を記憶する方式でもよい。なお上記実施形態はインク消費量ではなく、インク残量に応じて行っても良い。
【0033】
上記実施形態では、インクカートリッジ66の取り外しは、インクカートリッジ66が水平な状態で行われることになるので、インクカートリッジの接続口48からのインク垂れを防ぐことができる。またインクカートリッジなどのインク供給部材は傾けた方が掴む部分が上にくるので大型サイズのプリンタなどでは、プリンタ自体の高さがあるので、上方へのインクカートリッジの引き抜きなどの操作には力が入りにくいのであるが、インクカートリッジの着脱時は、インクカートリッジは水平状態に設定され、インクカートリッジ使用時だけインク消費量に応じてインクカートリッジが傾くという構成を採用したことで、インクカートリッジの着脱の操作性が良くなっている。
【0034】
また、インク供給部材として図4に示すインク袋44を用いた場合、インク袋が水平の状態ではインク袋にほとんど圧力がかからず、インクがインク輸送チューブ34にスムーズに流れていかない場合でも、本実施形態では、インク袋44を斜めにし水頭値をあげる事により最初のインクの供給がスムーズになる。
上記実施形態では、インク輸送チューブ34やサブタンク42などに何もない状態(初期充填時など)のとき、インクカートリッジを傾けた状態にしてもよい。このようにすることで、インク供給部材2と針15及び接続口6との水頭差が大きくなるので、インク供給部材2を水平に置いた場合よりスムーズにインクが供給される。
上記実施形態では、プリンタをインクジェットプリンタに具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体など水頭差によって移動可能なものを含む)を噴射したり吐出したりする装置も含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明の要部の説明図である。
【図3】プリンタの概略説明図である。
【図4】インク供給部材の外観図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図9】本発明の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の説明図である。
【符号の説明】
【0036】
2 インク供給部材
4 サブタンク
6 接続口
8 印字ヘッド
10 キャッピング部材
12 吸引ポンプ
14 廃液ボトル
15 針
16 脚体
18 機体
20 Y軸レール
22 プラテン
26 ヘッド部
28 ヘッド部
30 カバー
32 インク容器収納部
34 インク輸送チューブ
36 インク供給チューブ
38 保持部材
38a 保持枠
38b ベース部
40 軸
42 インク
44 インク袋
46 袋体
48 接続口
50 マチ
52 折り目
54 板状部材
56 保持部材
58 インク袋収納体
60 つっかえ棒
62 軸
64 係止溝
66 インクカートリッジ
68 接続口
70 保持部材
72 カートリッジ収納体
74 回転軸
76 情報書込記憶手段
78 情報読み書き手段
80 データテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体側の液体供給部材から水頭値の違いによってサブタンクに液体を供給し、該サブタンクから液体供給チューブを介して液体を吐出ヘッドに供給し、吐出ヘッドから液体を媒体に吐出する液体吐出型のプリンタにおいて、前記機体側に保持部材を所定回転範囲で揺動可能に支持し、該保持部材に前記液体供給部材を装着可能としたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記保持部材の回転範囲を前記液体供給部材の底部が床面に対して略水平な状態から略垂直な状態となることができる角度に設定したことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記保持部材を回転駆動装置に連結し、該回転駆動装置によって前記保持部材を傾き揺動方向に駆動可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記液体供給部材内の液体量を測定するための液体量測定手段を設け、該液体供給部材内の液体量に応じて前記回転駆動装置を制御し、該回転駆動装置によって前記保持部材の傾斜角度を自動的に制御するようにしたことを特徴とする請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記保持部材の床面に対する傾きは、前記液体供給部材の装着時と、前記液体供給部材の交換時は、水平状態に設定されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記保持部材に、該保持部材の揺動角度を維持する揺動角維持機構を連係したことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記揺動角維持機構は、前記保持部材を傾斜した状態で脱着可能に係止する係止機構により構成したことを特徴とする請求項6に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記保持部材をモータからなる回転駆動装置によって揺動可能とし、該モータの停止時の励磁力によって前記保持部材の揺動角度を維持する揺動角維持機構を構成したことを特徴とする請求項3又は4に記載のプリンタ。
【請求項9】
前記液体供給部材が前記保持部材に対して取り外し自在な液体カートリッジであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項10】
前記液体供給部材は、一対の互いに対面する両面部を有する袋体から成り、該袋体の一方側の辺部に液体輸送チューブと接続するための接続口が設けられ、前記袋体に液体が充填された液体袋によって構成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項11】
前記液体供給部材は、前記両面部の各々の略全域に袋体表面を平坦に維持する平坦維持面が設けられた液体袋によって構成されていることを特徴とする請求項10に記載のプリンタ。
【請求項12】
機体側のインク供給部材から水頭値の違いによってサブタンクにインクを供給し、該サブタンクからインク供給チューブを介してインクを印字ヘッドに供給し、印字ヘッドからインクを吐出して印字媒体に印字を行うインク吐出型のプリンタにおいて、前記機体側に保持部材を所定回転範囲で揺動可能に支持し、該保持部材に前記インク供給部材を装着したことを特徴とするプリンタ。
【請求項13】
前記保持部材の回転範囲を前記インク供給部材が床面に対して略水平な状態から略垂直な状態となることができる角度に設定したことを特徴とする請求項12に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−290388(P2007−290388A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85745(P2007−85745)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000238566)MUTOHホールディングス株式会社 (29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】