説明

プリンタ

【課題】ストレージ装置を有するプリンタにおいて、衝撃からストレージ装置を防護する。
【解決手段】プリンタが有する保持部に対し、ロール紙の取り付け・取り外しを検出するためのセンサと、その際通過する経路上にセンサを設け、それぞれの検出状態により、衝撃が発生し得る限定された期間のみHDDの作動を制限する。2つの遮蔽センサのいずれか一方の開放状態が検出された場合には(S501)、プリンタがロール紙交換可能な状態であるかを識別し(S502)、交換可能な状態である場合には、ストレージ装置への記録を停止し、HDDをスタンバイモードに移行させる(S504)ことで衝撃に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HDDのように機械的な可動部を有するストレージ装置が内蔵されたプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、大判サイズ(例えばA0サイズ)に対応したプリンタでは、用紙サイズの大きさに対応して出力に用いられるプリントデータのサイズも膨大であるため、HDD(ハードディスクドライブ)を内蔵するものが多い。
【0003】
HDDは高速回転する磁気ディスクに対向して記録ヘッドが移動しながら書込みおよび読み出しを行う機械的な可動部を有する構造をもつため、特に動作中の衝撃や振動に対して脆弱である。そのため、例えばHDDの取り付け板と本体側固定部との間に保護用の防振部材や緩衝材等を挿入することにより、HDDが受ける衝撃および振動を抑制するようにしている。
しかしながら、大判サイズに対応したプリンタのように、発生する衝撃または振動が非常に大きい場合は緩衝機構の設計は難しくコスト高となり、緩衝しきれずにハードディスクの故障率の増加を招いてしまう虞もある。
【0004】
この課題に対して、特許文献1に開示されるプリンタでは、給紙カセットが開いている間中、HDDの作動を制限する構成としている。この提案は、給紙カセットが引き出されたときには、給紙カセットが戻される際に衝撃を発生する閉じ動作が次にあることが予測されることを利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−052786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、給紙カセットが開かれている間にHDDの作動を制限する方式では、給紙カセットが開かれたまま放置された場合には、ホストコンピュータからのデータ受信が停止し続けることとなる。このため、装置の使用効率の低下、およびホストコンピュータへの負荷の増大につながる。
【0007】
前述した大判サイズに対応したプリンタでは、ロール紙が用いられることが多い。ロール紙をプリンタに設置する場合には、ロール紙の軸の部分にホルダを取り付け、そのホルダごと保持部に取り付ける。しかし、A0等の大型サイズとなるとロール紙の重量が非常に大きくなるため、使用者がラフに取り付けを行なうと非常に大きな衝撃をストレージ装置に与えてストレージ装置の故障を招く可能性がある。
【0008】
本発明は上記課題を鑑みて、HDDのような機械的な可動部を持ったストレージ装置を内蔵したプリンタにおいて、ストレージ装置を衝撃から防護するための新規な手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、ロール紙にプリントを行なうプリンタであって、プリンタに内蔵され機械的な可動部を有するストレージ装置と、ロール紙の両側を回転可能に保持する保持部と、前記保持されたロール紙の両側の保持状態をそれぞれ検出する第1センサ及び第2センサと、前記第1センサ及び前記第2センサの検出に基づいて前記ストレージ装置のアクセスを制限するように制御する制御部とを有することを特徴とする。
好適には、前記制御部は、前記第1センサと前記第2センサの検出状態が異なる場合には、前記ストレージ装置のアクセスを制限する。
好適には、前記第1センサ及び前記第2センサはそれぞれ、所定のセット位置にロール紙のホルダがあるか否かを検出するセット位置センサを含む。
好適には、前記第1センサ及び前記第2センサはそれぞれ、前記セット位置センサと共にロール紙取り付け・取り外しを行う際のロール紙のホルダの通過方向を検出する通過センサを含む。
好適には、前記制御部は、少なくとも1つの前記セット位置センサが非検出状態となってから、少なくとも1つの前記通過センサにおいて判別された通過方向が用紙の取り外し方向であった場合には、前記複数の通過センサの全てが取り外し方向での検出状態となるか、前記セット位置センサの全てが再び検出状態となるまで、前記ストレージ装置へのアクセスを制限する。
好適には、前記制御部は、少なくとも1つの前記セット位置センサが非検出状態となってから、少なくとも1つの前記通過センサにおいて判別された通過方向が用紙の取り外し方向であった場合には、前記通過センサの全てが取り外し方向での検出状態となった後、予め定められた時間が経過するか、前記セット位置センサの全てが再び検出状態となるまで、前記ストレージ装置へのアクセスを制限する。
好適には、前記制御部は、少なくとも1つの前記通過センサにおいて判別された通過方向が用紙の取り付け方向であった場合には、前記通過センサの全てが取り付け方向での検出状態となった後、前記セット位置センサの全てが検出状態となるか、前記通過センサの全てが取り外し方向での検出状態となるまで、前記ストレージ装置へのアクセスを制限する。
好適には、前記制御部は、少なくとも1つの前記通過センサにおいて判別された通過方向が用紙の取り付け方向であった場合には、前記通過センサの全てが取り付け方向での検出状態となった後、前記セット位置センサの全てが検出状態となるか、前記通過センサの全てが取り外し方向での検出状態となった後、予め定められた時間が経過するまで、前記ストレージ装置へのアクセスを制限する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るプリンタによれば、複数のセンサの検出結果の組み合わせに基づいて、ストレージ装置の記憶および読み出しを選択的に制限するので、単一のセンサによる場合に比して、ストレージ装置のアクセスが制限される時間を限定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】前面給紙型プリンタの一例を示す外形図である。
【図2】背面給紙型プリンタの一例を示す外形図である。
【図3】システム構成の一例を示すブロック図である。
【図4】保持部の拡大図である。
【図5】HDDを防護するための制御手順を示すフローチャートである。
【図6】前面給紙型プリンタの保持部の拡大図である。
【図7】HDDを防護するための制御手順を示すフローチャートである。
【図8】HDDを防護するための制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。図1および図2は本発明の実施形態を示すプリンタの例である。
【0013】
図1は、装置の正面から給紙を行うタイプのプリンタ101の外観図である。大判のロール紙102を記録媒体として用いる。使用時にロール紙102の紙幅方向の両側端部にはホルダ103、104がそれぞれ取り付けられ、ロール紙102とホルダ103、104は実質的に一体物となる。ユーザはホルダ103の軸部を保持部105に、ホルダ104の軸部を保持部106に嵌めて、ロール紙102の両側を軸支させ回転可能に保持させる。そして、ユーザーはロール紙102の先端を引き出してプリンタの給紙口(不図示)へ挿入する。
【0014】
図2は、図1のものとは異なり、装置の背面から給紙を行うタイプのプリンタ201の外観図である。図1で示したプリンタ101と同様にロール紙202を記録媒体として用いる。ロール紙202の両端には、ホルダ203、204が固定される。
【0015】
ユーザーはホルダ203の軸部を保持部205に、ホルダ204の軸部を保持部206に嵌めて、ロール紙102の両側を軸支させ回転可能に保持させる。プリンタ201の保持部205,206には、装置上部の開口部から装置背面へロール紙202を誘導するためのガイド溝205a,206aが設けられている。給紙するときには、ユーザーはこれらガイド溝205a,206aに従ってロール紙202をスライドさせ(ロール紙202の自重で落下させ)、終点すなわちプリント可能な位置に到達したらロール紙202のセットが完了する。そして、ユーザーはロール紙202の先端を引き出してプリンタの給紙口(不図示)へ挿入する。ロール紙202の取り外し時には、ユーザーはロール紙202を、装置背面からガイド溝205a,206aに従って装置上部に移動させた後に取り外す。これらガイド溝205a,206aは背面給紙型であるプリンタ201において、ユーザーが用紙の設置時、装置の背面に回り、保持部の固定箇所を確認することなく前面から設置可能とする利便性向上のために配置される。
図1、図2のいずれのプリンタも、プリント機構と給紙機構を備えたプリントエンジン部、インクタンク、装置の制御系の制御ボード、及び機械的な可動部を有するストレージ装置であるHDD(ハードディスクドライブ)などが筐体内部に内蔵されている。
【0016】
図3は、図1又は図2に示したプリンタ101の制御系を示す。いずれのタイプのプリンタであっても制御系は同一である。図3において、プリンタ101の制御部ユニット301は、プリンタエンジン302と接続されて制御を行う。CPU303は、システム制御プログラムに基づき、プリンタ101の装置全体の制御を行う。ROM304は、プリンタ101全体の制御プログラムであるシステム制御プログラムを格納している。データの読み書きが可能なRAM305は、ROM304内のプログラムを展開し、システム制御プログラムの実行に使用される。なお、RAM305はプリントデータ受信時のバッファメモリおよびホストとの間で送受信される各種制御データを一時的に格納するためのバッファメモリとしても使用される。
【0017】
HDD307は二次記憶装置であって、フォントや制御プログラムの記憶手段やプリントデータの記憶エリアを提供する。HDDコントローラ306は、HDD307とのインターフェース機能を有し、CPU303からの指示に応じてRAM305内のプリントデータをDMA転送で読み出し、HDD307に格納し、またHDD307内のデータを読み出し、RAM305へ書き込む。なお、用紙のジャム等の発生によりプリントのやり直しを要する場合にホストからプリントデータを再送することなく出力可能とする。このために、ホストから受信したプリントデータには、常時HDD307に格納された後に画像処理部310によって、後述する画像処理が施される。
【0018】
HDD307は、磁性体を塗布した回転するディスクに記録ヘッドを用いてデータの読み書きを行う不揮発性の記録装置である。なお、HDD307は記録ヘッドを退避させることで衝撃に対して強い状態となるスタンバイモードを有している。HDD307はCPU303からの指示により、HDDコントローラ306からコマンドを発行することで即時スタンバイモードへ移行可能である。
【0019】
LANインターフェース308は、LAN309に接続され、ホストとなる装置からジョブデータを受信したり、プリンタ101のステータス情報、通知情報をホスト装置へと送信したりするために用いられる。LAN309およびLANインターフェース308は、Ethernet(登録商標)インターフェース規格に則って構成される。LANインターフェース308を介して受信したジョブデータは、CPU303の指示に応じてRAM305に格納される。
【0020】
画像処理部310は、CPU303の指示に応じてRAM305に保存されたプリントデータに対して、色空間処理や、ガンマ補正処理、誤差拡散法による量子化処理などの各種の処理を行い、プリンタエンジン部302が出力可能な二値化データを生成する。
【0021】
エンジン制御部311は、プリンタエンジン部302の制御を行い、画像処理部310で処理されたプリントデータをプリンタエンジン部302に転送する。エンジン制御部311はまた、記録媒体検出部312とも接続されており、記録媒体検出部312の状態変化を検出し、CPU303への通知を行う。
【0022】
プリンタエンジン部302は、プリント機構と給紙機構とからなり、インクジェット方式のプリントヘッド、紙搬送モータ、キャリッジモータ、および各種エラー検出用のセンサを含む(いずれも不図示)。プリントヘッドは、各色のインクを記録媒体に吐出することにより画像の形成を行う。紙搬送モータは、記録媒体となるメディアを搬送させる。キャリッジモータは、プリントヘッドをメディアの搬送方向に対して垂直に走査させる。プリンタエンジン部302の各部の動作は、エンジン制御部311からの制御に応じて実行される。エンジン制御部311は、プリントヘッド、紙搬送モータ、キャリッジモータを相互に駆動させ、プリントヘッドから吐出させたインクをメディア上の所望の位置に定着させることによりメディア上に所望の画像の形成を行う。
【0023】
記録媒体検出部312は、ロール紙102の設置状態を検出するためのフォトセンサや物理スイッチ等により構成されており、ロール紙の設置、および取り外し時の状態を検出してエンジン制御部311へと通知する。
【0024】
操作部インターフェース313は、操作部314に表示する画像データを操作部314に対して出力する。操作部インターフェース313はまた、操作部314から使用者が入力した情報をCPU303に伝える。操作部314は、装置に対する使用者による設定の入力を行う入力機能、および装置から使用者への通知を行うための表示装置を備えており、使用者への情報提示、および指示入力のために使用される。
【0025】
[実施例1]
以下、図1、図3と、図4の保持部105,106の拡大図、および図5のフローチャートを用いて、前面給紙型プリンタ101に対してロール紙102の取り付け・取り外しを行う際のHDD307を防護するための制御方法について説明する。なお、制御方法は図2のようなタイプのプリンタであっても同様である。
【0026】
図4は図1における保持部105,106の拡大図である。図3における記録媒体検出部312に対応した、保持されたロール紙の片側の端部の保持状態を検出する第1センサ、及び他方の片側の端部の保持状態を検出する第2センサが設けられている。具体的には第1センサは、保持部105に対応して設けられたセット位置センサである遮蔽センサ401である。遮蔽センサ401は、フォトセンサにより構成される。遮蔽センサ401は、その光路が用紙のセット時にホルダの中心軸によって遮蔽され、ロール紙がセットされると遮蔽状態が検出され(検出状態)、ロール紙取り外しされると開放状態が検出される(非検出状態)。遮蔽センサ401は、ロール紙がホルダ部105にプリント可能な位置(セット位置)に設置されたことを検出するため、給紙経路であるガイド溝105aの最深部、すなわち保持部105の最深部に配置されている。また、両側で保持されたロール紙の反対側にも、第2センサとしての上記と同様の遮蔽センサ402が保持部106のガイド溝106aの対応する位置に配置されている。
【0027】
図5は、本実施形態においてロール紙102の取り付け・取り外しを行う際に、遮蔽センサ401,402を用いてHDD307を防護するためのCPU303における制御手順を示すフローチャートである。まず、CPU303はステップS501において、遮蔽センサ401,402のいずれか一方が開放状態にあるかを識別し、いずれかが開放状態になるまでは通常動作を継続する。
【0028】
ステップS501において遮蔽センサ401,402のいずれか一方の開放状態が検出された場合には、CPU303は、プリンタ101がロール紙交換可能な状態であるかを識別する(S502)。ここでのロール紙交換可能な状態とは、対象となる給紙口に設置されたロール紙が出力に使用されていない、またはプリンタ101が非動作状態の時である。ステップS502において交換不可能な状態であった場合には、本来発生し得ない異常状態となるため、CPU303の処理により、操作部314が有する表示装置に異常状態を検出した旨を通知するため、エラーを表示して(S503)処理を終了する。
【0029】
ステップS502において交換可能な状態が検出された場合には、CPU303は、HDD307への記録を停止し、HDDコントローラ306からのコマンドによりHDD307をスタンバイモードに移行させる(S504)ことで衝撃に備える。
【0030】
次に、前記ステップS501で開放された遮蔽センサ401,402のいずれかが再び遮蔽される(S505)か、他方の開放が検出される(S506)まで、CPU303はHDD307をスタンバイモードのまま保持する。
【0031】
ステップS505において、開放されていた遮蔽センサ401,402の一方が再び遮蔽された場合には、ロール紙102がプリント可能な位置に設置された状態に戻されたと判別する。そして、HDD307を通常動作状態に戻し、記録を再開して(S507)、ステップS501に戻る。
【0032】
対して、ステップS506において開放されていた遮蔽センサ401,402の他方が開放状態である、または開放状態となった場合には、ロール紙102が十分に取り外された状態と判別し、HDD307を通常動作状態に戻して記録を再開する(S508)。
【0033】
前記、ロール紙102が十分に取り外された状態になると、CPU303は、開放されている遮蔽センサ401,402のいずれか一方が遮蔽されるまで(S509)はHDD307への記録を継続する。ステップS509において遮蔽が検出された場合には、CPU303は、HDD307への記録を停止し、再度スタンバイモードに移行させる(S510)。
【0034】
そして、ステップS509で遮蔽された遮蔽センサ401、または402が再び開放される(S511)か、他方の遮蔽が検出される(S512)までHDD307をスタンバイモードのまま保持する。
【0035】
ステップS511において、遮蔽されていた遮蔽センサ401,402の一方が再び開放された場合には、CPU303はロール紙102が再度取り外されたと判別し、HDD307を通常動作状態に戻し、記録を再開して(S513)、ステップS509に戻る。
【0036】
対して、ステップS512において遮蔽されていた遮蔽センサ401,402の他方が遮蔽状態である、または遮蔽状態となった場合には、ロール紙102がプリント可能に設置された状態と判別する。そして、HDD307を通常動作状態に戻して記録を再開する(S514)。
【0037】
以上に説明した制御により、ロール紙102の取り外しから再取り付けまでの一連の作業におけるHDD307の防護を実現することが可能となる。但し、この一連の作業に限らず、ロール紙の初期取り付け時であってもステップS508までの処理がスキップされS509から実行することで実現可能である。
以上のとおり、本実施例では、複数の遮蔽センサ401,402の検出結果の組み合わせに基づいて、HDD307の記憶および読み出しを選択的に制限する。すなわち、制御部は、第1センサと第2センサの検出状態が異なる場合には、HDD(ストレージ装置)のアクセスを制限する。そのため、単一のセンサによる場合に比して、HDDの作動が制限される時間を限定することが可能となる。
【0038】
[実施例2]
図2、図3、および図6の保持部205,206の拡大図、図7、図8のフローチャートを用いて、背面給紙型のプリンタ201に対してロール紙202の取り付けおよび取り外しを行う際にHDD307を防護するための制御方法について説明する。
【0039】
図6は図2における保持部205,206の拡大図である。図6に示す通り、保持部205には、第1センサとして、フォトセンサにより構成される遮蔽センサ601およびガイド溝205a内に倒れ方向による検出が可能な二方向検出タイプのスイッチである通過センサ602が配置されている。
【0040】
前記遮蔽センサ601は実施例1で用いたものと同一である。通過センサ602は、正逆方向に倒れることが可能なレバーを含むスイッチにより構成されている。通過センサ602は、ホルダの通過方向、すなわち通過がセット方向かイジェクト方向かによって異なる信号を受動的又は能動的に出力し、これらの信号に基づく通過方向の判別が可能にされている。ガイド溝内を通過するロール紙202の進行方向に順じてホルダ203の中心軸が当接してレバーが倒れ、その方向で通過センサ602の電気的な接続が切り替わる。レバーはロール紙202の通過後に弾性的に中立位置に復帰する。通過センサ602は、プリンタエンジン部302の給紙機構への用紙設置時における可動部分(本実施形態では、ロール紙102及びホルダ103,104)の経路上、すなわちガイド溝205a内に配置されている。なお通過センサ602は、ホルダ203の中心軸の通過に伴うその干渉によるレバーないしノブの一方向への倒伏姿勢を通過後も維持し、且つ当該倒伏姿勢が逆方向への倒伏アクションに対する待機姿勢となるシーソー式スイッチであっても良い。また、第2センサとして、同様の遮蔽センサ603および通過センサ604が、保持部206およびそのガイド溝206a内の対応する各位置に配置されている。
【0041】
図7は本実施形態においてロール紙202の取り外しを行う際に、前記遮蔽センサ601,603、および通過センサ602,604を用いてHDD307を防護するためのプリンタ201における制御手順を示すフローチャートである。なお、本フローチャートにおいてステップS701からS707までの制御に関しては実施例1で図5を用いて説明したステップS501からS507までの制御と同一となるため、本実施形態においてはステップS708以降の動作について説明する。
【0042】
ステップS706において遮蔽センサ601,603の両方が開放されたことを検出すると、CPU303は、通過センサ602,604のうち一方が上方向にONとなる(S708)か、再び遮蔽センサ601,603の両方が遮蔽されるのを待つ(S709)。
【0043】
ステップS709において再び遮蔽センサ601,603の両方が遮蔽された場合には、ロール紙202が取り外されずに戻されたと判断し、衝撃も発生し得ない状態であるため、HDD307を通常動作状態に戻し記録を再開し(S710)、S701に戻る。
【0044】
ステップS708において、通過センサ602,604のいずれか一方が上方向にONとなったことが検出された場合には、他方の通過センサの状態を確認し、同様に上方向にONとなるか(S711)、一方が再度下方向にONとなるのを待つ(S712)。ステップS712において上方向にONとなっていた通過センサが再度下方向にON状態に変化した場合には、処理はステップS709に進む。
【0045】
ステップS711において、他方の通過センサも上方向にONとなった場合には、CPU303は、取り外されたロール紙202が保持部205,206のガイド溝を十分に離れるのに要する所定時間の経過を待つ(S713)。所定時間が経過すると、ロール紙202がガイド溝205a,206aを十分に離れ、衝撃が発生し得ない状況となるため、CPU303はHDD307を通常動作状態に戻し、記録を再開する(S714)。
【0046】
図8は、本実施形態においてロール紙202の取り付けを行う際に、前記遮蔽センサ601,603、および通過センサ602,604を用いてHDD307を防護するためのプリンタ201における制御手順を示すフローチャートである。
【0047】
まず、CPU303は、ステップS801において通過センサ602,604のいずれか一方が下方向にONとなるまでは、通常動作を継続する。S801において、通過センサ602,604のいずれかが下方向にONとなった場合には、HDD307への記録を停止し、HDDコントローラ306からのコマンドによりHDD307をスタンバイモードに移行させる(S802)ことで衝撃に備える。
【0048】
次にCPU303は、前記ステップS801で下方向にON状態となった通過センサ602、または604の他方が下方向にON状態となるか(S803)、下方向にON状態となっていた通過センサが再度上方向にON状態となる(S804)まで待機する。ステップS804において、下方向にON状態となった通過センサが再度上方向にON状態になった場合には、CPU303は、ロール紙202の取り外し時にガイド溝205a,206aを十分に離れるのに要する所定時間待機する(S805)。所定時間が経過すると、CPU303はHDD307を通常動作状態に戻し、記録を再開して(S806)、ステップS801に戻る。
【0049】
ステップS803において、下方向にON状態となった通過センサの他方が下方向にON状態となった場合には、遮蔽センサ601,603の両方が遮蔽状態となるのを待つ(S807)。そして、遮蔽センサ601,603の両方が遮蔽状態となると、CPU303はHDD307を通常動作状態に戻し、記録を再開して(S808)処理を終了する。
【0050】
以上に説明したフロー制御により、ロール紙202の取り外しから再取り付けまでの一連の作業におけるHDD307の防護を実現することが可能となる。
以上のとおり、本実施例では、複数の遮蔽センサ601,603、及び複数の通過センサ602,604の検出結果の組み合わせに基づいて、HDD307の記憶および読み出しを選択的に制限する。すなわち、制御部は、第1センサと第2センサの検出状態が異なる場合にはHDD(ストレージ装置)のアクセスを制限する。単一のセンサによる場合に比して、HDDの作動が制限される時間を限定することが可能となる。
【0051】
なお、前述した各実施形態では、プリンタとしてインクジェット記録方式を採用したカラープリンタとしたが、これに限らず、レーザビームプリンタ等、他の記録方式によるプリンタや複写装置等に置き換えることも可能である。また、各実施形態では用紙としてロール紙102(ロール状記録媒体)を、またストレージ装置としてHDDを用いたが、本発明は他の種類の用紙および/またはストレージ装置を用いるプリンタにも適用できる。
【0052】
また、前述した各実施例では、機械的な可動部を有するストレージ装置としてHDDを例に挙げたがこれに限らない。交換可能なディスクメディアを保持して回転させるドライブ機構を備えたストレージ装置や、記録面に対して記録ヘッドを機械的に相対移動させる機構を備えた各種ストレージ装置を搭載したプリンタにも適用可能である。要は、機械的な可動部を持って振動に弱いストレージ装置であれば発明の効果を得ることができる。
【0053】
また、本実施形態において記録媒体検出部312は、フォトセンサにより構成される遮蔽センサとしたがこれに限らない。ロール紙102が保持部105,106のセット位置にプリント可能に設置されていることが検出できる他の構成のものを用いることができる。そのため、遮蔽センサ401,402,601,603を例えば用紙がセット位置にあるときにのみ押下される物理スイッチに置き換え、遮蔽センサによる遮蔽状態を物理スイッチの押下状態、開放状態を非押下状態として実施することも可能である。
【0054】
さらに、本実施形態においてはホルダの中心軸に当たる部分を検出するため、遮蔽センサを保持部の最深部に配置する構成としたが、遮蔽センサの位置は、用紙がセット位置に設置されていることを検出できれば、保持部の最深部でなくても良い。遮蔽センサ及び/又はセット位置センサは、ホルダ外枠部などホルダの他の部分、用紙設置の際に用紙と一体に移動する他の部材、または用紙自体を検出しても良い。遮蔽センサ及び/又はセット位置センサは、用紙の両側端部を検出することとしたが、用紙を含む可動部分のいずれかの部位を検出可能である限り、ガイド溝の外に設置されていても良い。
【0055】
また、第二の実施形態において、通過センサを上方向、つまり取り外し方向での通過後はロール紙が必ず取り外される前提としているが、これに限らず再度すぐに戻されることを考慮した制御としても良い。これらは本実施形態において説明した制御の組み合わせにより実現可能である。
【0056】
また、遮蔽センサおよび/または通過センサは3個以上であっても良い。さらに、第二の実施形態においては通過センサと遮蔽センサを用いたが、これに限らず、通知検出スイッチは移動方向の分かる手段であれば良く、例えば複数のセンサを設置すると共にそれらの通過順から判断しても良い。
【0057】
また、さらにはセンサの通過前後の所定時間のみHDDの作動を制限するような制御であっても、衝撃の与え得る時間を回避する十分な時間を確保できるのであれば実現可能である。
【0058】
また、本実施形態における待機時間である各所定時間は固定値でも、運転条件やユーザによる設定に応じて変更ないし動的に取得される可変値であっても良い。
【0059】
本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、前記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される前構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0060】
101 前面給紙型プリンタ
102,202 ロール紙
103,104,203,204 ロール紙ホルダ
105,106,205,206 保持部
201 背面給紙型プリンタ
301 制御部ユニット
302 プリンタエンジン
303 CPU
304 ROM
305 RAM
306 HDDコントローラ
307 HDD
308 LANインターフェース
309 LAN(ローカルエリアネットワーク)
310 画像処理部
311 エンジン制御部
312 記録媒体検出部
313 操作部インターフェース
314 操作部
401,402,601,603 遮蔽センサ
602,604 通過センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙にプリントを行なうプリンタであって、
プリンタに内蔵され機械的な可動部を有するストレージ装置と、
ロール紙の両側を回転可能に保持する保持部と、
前記保持されたロール紙の両側の保持状態をそれぞれ検出する第1センサ及び第2センサと、
前記第1センサ及び前記第2センサの検出に基づいて前記ストレージ装置のアクセスを制限するように制御する制御部と
を有することを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1センサと前記第2センサの検出状態が異なる場合には、前記ストレージ装置のアクセスを制限することを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第1センサ及び前記第2センサはそれぞれ、所定のセット位置にロール紙のホルダがあるか否かを検出するセット位置センサを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記第1センサ及び前記第2センサはそれぞれ、前記セット位置センサと共にロール紙取り付け・取り外しを行う際のロール紙のホルダの通過方向を検出する通過センサを含むことを特徴とする請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記制御部は、少なくとも1つの前記セット位置センサが非検出状態となってから、少なくとも1つの前記通過センサにおいて判別された通過方向が用紙の取り外し方向であった場合には、前記複数の通過センサの全てが取り外し方向での検出状態となるか、前記セット位置センサの全てが再び検出状態となるまで、前記ストレージ装置へのアクセスを制限することを特徴とする請求項4記載のプリンタ。
【請求項6】
前記制御部は、少なくとも1つの前記セット位置センサが非検出状態となってから、少なくとも1つの前記通過センサにおいて判別された通過方向が用紙の取り外し方向であった場合には、前記通過センサの全てが取り外し方向での検出状態となった後、予め定められた時間が経過するか、前記セット位置センサの全てが再び検出状態となるまで、前記ストレージ装置へのアクセスを制限することを特徴とする請求項4記載のプリンタ。
【請求項7】
前記制御部は、少なくとも1つの前記通過センサにおいて判別された通過方向が用紙の取り付け方向であった場合には、前記通過センサの全てが取り付け方向での検出状態となった後、前記セット位置センサの全てが検出状態となるか、前記通過センサの全てが取り外し方向での検出状態となるまで、前記ストレージ装置へのアクセスを制限することを特徴とする請求項4記載のプリンタ。
【請求項8】
前記制御部は、少なくとも1つの前記通過センサにおいて判別された通過方向が用紙の取り付け方向であった場合には、前記通過センサの全てが取り付け方向での検出状態となった後、前記セット位置センサの全てが検出状態となるか、前記通過センサの全てが取り外し方向での検出状態となった後、予め定められた時間が経過するまで、前記ストレージ装置へのアクセスを制限することを特徴とする請求項4記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−269464(P2010−269464A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121158(P2009−121158)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】